特許第6141517号(P6141517)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6141517
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】脂肪細胞標的非ウイルス性遺伝子伝達体
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/08 20060101AFI20170529BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20170529BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20170529BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20170529BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20170529BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20170529BHJP
【FI】
   C07K7/08ZNA
   C07K7/06
   A61K37/02
   A61K31/713
   A61P3/04
   C12N15/00 G
【請求項の数】15
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2016-508854(P2016-508854)
(86)(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公表番号】特表2016-518365(P2016-518365A)
(43)【公表日】2016年6月23日
(86)【国際出願番号】KR2014002718
(87)【国際公開番号】WO2014171646
(87)【国際公開日】20141023
【審査請求日】2015年11月27日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0041402
(32)【優先日】2013年4月16日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515276668
【氏名又は名称】アイユーシーエフ−エイチワイユー(インダストリー−ユニバーシティ コーオペレーション ファウンデーション ハンヤン ユニバーシティ)
【氏名又は名称原語表記】IUCF−HYU (INDUSTRY−UNIVERSITY COOPERATION FOUNDATION HANYANG UNIVERSITY)
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム・ヨンヒ
(72)【発明者】
【氏名】イム・クワンソク
(72)【発明者】
【氏名】ウォン・ヨンウク
(72)【発明者】
【氏名】キム・チャンギョン
【審査官】 福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−517790(JP,A)
【文献】 特表2002−502376(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0203288(US,A1)
【文献】 Nature Medicine,2004年,Vol.10, No.6,p.625-632
【文献】 Pharmaceuticals,2010年,Vol.3,p.961-993
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00−15/90
C07K 1/00−19/00
CA/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1で表示されるアミノ酸配列からなる脂肪細胞標的配列(ATS)及びR9(arginine)ペプチドを含有する脂肪細胞標的遺伝子伝達体。
【請求項2】
前記脂肪細胞標的配列及びR9(arginine)ペプチドは、プロヒビチン(prohibitin)と結合されることを特徴とする、請求項1に記載の脂肪細胞標的遺伝子伝達体。
【請求項3】
前記R9(arginine)ペプチドは、Cys―(D―R)9―Cys構造を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の脂肪細胞標的遺伝子伝達体。
【請求項4】
前記脂肪細胞は、分化した成熟肥満脂肪細胞であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の脂肪細胞標的遺伝子伝達体。
【請求項5】
前記脂肪細胞は、分化してから9日〜11日経過した成熟した肥満脂肪細胞であることを特徴とする、請求項に記載の脂肪細胞標的遺伝子伝達体。
【請求項6】
配列番号1で表示されるアミノ酸配列からなる脂肪細胞標的配列(ATS)、R9(arginine)ペプチド、及び脂肪細胞標的遺伝子として肥満及び肥満由来代謝症候群治療遺伝子を含有する複合体。
【請求項7】
前記脂肪細胞標的配列及びR9(arginine)ペプチドは、プロヒビチン(prohibitin)と結合されることを特徴とする、請求項に記載の複合体。
【請求項8】
前記R9(arginine)ペプチドは、Cys―(D―R)9―Cys構造を有することを特徴とする、請求項6又は7に記載の複合体。
【請求項9】
前記肥満及び肥満由来代謝症候群治療遺伝子は、DNA又はRNAiであることを特徴とする、請求項6〜8のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項10】
前記RNAiは、siRNA又はshRNAであることを特徴とする、請求項に記載の複合体。
【請求項11】
前記複合体は、200nm以下の直径を有することを特徴とする、請求項6〜10のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項12】
前記複合体は、3:1〜8:1の電荷比率(+/−)を有することを特徴とする、請求項6〜11のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項13】
前記脂肪細胞は、分化した成熟肥満脂肪細胞であることを特徴とする、請求項6〜12のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項14】
前記脂肪細胞は、分化してから9日〜11日経過した成熟した肥満脂肪細胞であることを特徴とする、請求項13に記載の複合体。
【請求項15】
請求項6〜14のいずれか1項に記載の複合体を有効成分として含有する肥満又は肥満由来代謝症候群治療用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪細胞を標的とする非ウイルス性遺伝子伝達体及びこれを用いた肥満及び肥満由来代謝症候群治療システムに関する発明である。より具体的に、本発明は、脂肪標的配列(ATS)―R9(arginine)ペプチドを含む、分化した肥満(成熟)脂肪細胞を直接ターゲッティングする非ウイルス性遺伝子伝達体に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
通常的なタンパク質治療の代用として多様な遺伝子治療技法が発達してきたが、これには依然として解決すべき重要な課題が存在する。遺伝子治療の主要な課題の一つは、最小細胞毒性を有して原形質膜(動物細胞)及び核膜を介した効率的な遺伝子流入(influx)を達成することにある。
【0003】
遺伝子治療システムは、大きく、ウイルス性ベクター―媒介システム及び非ウイルス性ベクター―媒介システムに分類することができる。レトロウイルス(retrovirus)又はアデノウイルス(adenovirus)などを用いて製造したウイルス性ベクターは、細胞内への高い形質注入(トランスフェクション、transfection)効率を有するという長所を有するが、in vivoでの免疫原性の問題及び遺伝子組換えなどの内在的問題を有する。このようなウイルス性ベクターの安定性問題を克服するために、多様な重合体性遺伝子伝達システムが伝統的なウイルス性ベクター―ベースの遺伝子伝達方法に対する代案として発達してきた。しかし、重合体性ベクターは、エンドソーム脱出(endosomal escape)及び核偏在化(nuclear localization)などの細胞内トラフィッキング(trafficking)障壁を有するという問題を有する。
【0004】
一方、合成ペプチドに基づいた遺伝子伝達システムは、低いpHでエンドソーム膜内での漏出をもたらすことによってDNAを凝縮させ、また、エンドソーム脱出を促進するので、重合体性遺伝子伝達システムと関連する前記問題を克服することができる。このような理由により、多様な合成ペプチドがin vitroで様々な細胞株における遺伝子伝達を促進するものとして開発されてきた。しかし、これにも、in vivo適用において毒性及び血清不安定性などの問題が存在する。
【0005】
上述したように、ウイルス性ベクターの場合は、免疫反応、自己複製、体内安定性などの問題があり、一般的な重合体性高分子ベクターの場合は、生体適合性が低下し、その結果、細胞及び生体毒性が大きく、核酸伝達効率が低いという問題がある。
【0006】
これと関連して、短い陽イオン性ペプチドを用いたベクターに対する研究が進められているが、この場合、細胞外空間でのDNAが不安定であるという問題があり、また、DNAとの複合体の安定性及び遺伝子発現の水準などが不十分であるという問題が存在する。
【0007】
さらに、特定細胞へのターゲッティング能力を保有し、DNAの標的細胞内への流入及び複合体からのDNAの遊離を円滑にし、目的遺伝子発現の水準を高めることができる特定細胞特異的な遺伝子伝達ベクターの開発が必要である。
【0008】
これと関連して、脂肪細胞、特に成熟(mature)した肥満脂肪細胞は、最終的に分化した細胞であるので、形質注入(トランスフェクション)が非常に難しい。以前の研究においては電気穿孔が使用されてきたが、トランスフェクション効率はわずか約10%程度であると報告されている。さらに、in vivo遺伝子伝達システムにおける前記方法では、脂肪組織選択的標的伝達が試みられたことがない。
【0009】
そこで、本発明者等は、非ウイルス性遺伝子伝達システムを研究した結果、特定ペプチド及び脂肪細胞標的配列(adipocyte targeting sequence、ATS)ペプチド複合体が成熟脂肪細胞内に発現されているプロヒビチンと結合し、肥満脂肪細胞を直接ターゲッティングし、伝達した各遺伝子の発現を促進させることによって、肥満及び肥満由来代謝症候群などを治療できる機構を最初に確認し、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の主要な目的は、脂肪細胞を標的とする(ターゲッティングする)遺伝子伝達体及びこれに目的とする遺伝子が結合された複合体を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、前記遺伝子伝達体を用いて肥満及び肥満由来代謝症候群治療用遺伝子を伝達することにある。
【0012】
本発明の更に他の目的は、肥満及び肥満由来代謝症侯群の予防又は治療用薬学的組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために、本発明は、脂肪細胞標的配列(ATS)及びR9(arginine)ペプチドを含有する、脂肪細胞標的遺伝子伝達体を提供する。
【0014】
このとき、前記脂肪細胞標的配列及びR9(arginine)ペプチドは、プロヒビチン(prohibitin)と結合されて脂肪細胞内に内在化されるという特徴を有する。
【0015】
特に、前記R9(arginine)ペプチドは、Cys―(D―R)9―Cys構造を有することが好ましく、前記脂肪細胞標的配列は、配列番号1で表示されるアミノ酸配列からなり得る。
【0016】
前記脂肪細胞は、分化した成熟肥満脂肪細胞であることを特徴とするが、特に、分化してから9日〜11日経過した成熟した肥満脂肪細胞であることが好ましい。
【0017】
また、本発明は、脂肪細胞標的配列、R9(arginine)ペプチド、及び脂肪細胞標的遺伝子として肥満及び肥満由来代謝症候群治療遺伝子を含有する複合体を提供する。
【0018】
すなわち、前記遺伝子伝達体に、肥満及び肥満由来代謝症候群治療遺伝子として、例えば、DNA、siRNA、shRNAなどが結合された形態に関し、各構成に対する説明は、遺伝子伝達体の場合と同一であるが、このとき、前記肥満治療遺伝子としては、siRNA又はshRNAなどのiRNAを使用することが最も好ましい。
【0019】
前記肥満及び肥満由来代謝症候群治療遺伝子複合体は、200nm以下の直径を有するナノサイズのものであって、特に、3:1〜8:1の電荷比率(+/−)を有する場合、優れたトランスフェクション効率を有し、5:1〜8:1の電荷比率(+/−)を有することがさらに好ましい。細胞膜が陰電荷を帯びているので、遺伝子伝達複合体が全体的に陽電荷を帯びているときに伝達効率に優れる。これは、複合体が陰電荷を帯びる場合は細胞膜を容易に通過し得ない一方、複合体が陽電荷を帯びる場合は電荷対電荷反応によって細胞膜を容易に通過し得るためである。また、電荷量は、細胞膜透過能に影響を及ぼすが、電荷量が高いほど細胞膜を通過し得る能力も大きくなる。
【0020】
また、本発明は、脂肪細胞標的配列;R9(arginine)ペプチド;及び脂肪細胞標的遺伝子として肥満及び肥満由来代謝症候群治療遺伝子を含有する複合体を有効成分として含有する肥満及び肥満由来代謝症候群治療用組成物を提供する。このときも、肥満及び肥満由来代謝症候群治療遺伝子としては、DNA又はiRNA、例えば、siRNA、shRNAなどを使用することができる。
【0021】
本発明のATS―R9は、脂肪組織流入血管でプロヒビチンと結合し、続いて脂肪細胞内に内在化させるが、これを簡略に説明すると、まず、プロヒビチンを通じて成熟脂肪組織流入血管のターゲッティング及び結合がなされた後、血管を通過して脂肪細胞内への内在化がなされる。そのため、脂肪細胞、特にプロヒビチンを多く発現している分化した成熟肥満脂肪細胞を特定標的としてターゲッティングし、目的遺伝子を伝達することができる。
【0022】
また、本発明は、高いトランスフェクション効率、低い細胞毒性、高い目的遺伝子発現効率を有するので、効果的な非ウイルス性脂肪細胞標的遺伝子伝達システムとして使用することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るATS―R9ペプチド構造体は、分化後、脂肪細胞におけるプロヒビチンの過剰発現機構を通じて成熟した肥満脂肪細胞を直接ターゲッティングし、遺伝子を伝達できる特異的機能及び効果を有し、肥満に対する遺伝子治療に非常に有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明のATS―R9オリゴ―ペプトプレックスによる脂肪細胞への遺伝子伝達メカニズムを示した模式図である。
図2】3T3―L1脂肪細胞分化程度に対するOil Red O染色結果及び定量分析結果を示すグラフである。
図3】脂肪細胞に対するATS―R9の特異的な結合親和度を確認するために時間の経過に伴うATS―R9の細胞内分布(内在化)を確認した結果である。
図4】脂肪細胞に対するATS―R9の特異的な結合親和度を確認するために時間の経過に伴うATS―R9の細胞内分布(内在化)を確認した結果である。
図5】3T3―L1脂肪細胞分化程度によるプロヒビチン分布結果である。
図6】肥満マウスと比較して、非―肥満マウスと筋肉細胞に対するプロヒビチン発現結果を比較したウエスタンブロット結果である。
図7】ATS―R9のDNA凝縮及び保護能力に対するゲル遅延分析及びマウス血清における分解(degradation)テスト結果である。
図8】ATS―R9/DNAオリゴ―ペプトプレックスのゼータポテンシャル及び平均直径を測定した結果である。
図9】ATS―R9/DNAオリゴ―ペプトプレックスの毒性評価のための細胞生存能の分析結果である。
図10】オリゴ―ペプトプレックスのトランスフェクション効率の比較結果である。
図11】食餌誘導肥満(diet―induced obesity、DIO)マウスを用いて脂肪組織に対するATS―R9のターゲッティング効果を確認した結果である。
図12】ATS―R9の標的効率(homing ability)をR9の場合と比較して、in vivoでATS―R9の標的効率を確認した結果である。
図13】ATS―R9の標的効率(homing ability)をR9の場合と比較して、in vivoでATS―R9の標的効率を確認した結果である。
図14】ATS―R9のin vivo内の遺伝子発現効果を確認した結果である。
図15】ATS―R9のin vitro及びin vivoでのsh―RNA伝達と脂肪細胞へのサイレント遺伝子伝達能を確認した結果である。
図16】sh―FABP4―ATS―R9オリゴ―ペプトプレックス処理後の体重減少効果を確認した結果である。
図17】sh―FABP4―ATS―R9オリゴ―ペプトプレックス処理後のインスリン及びグルコース耐性(tolerance)変化を確認した結果である。
図18】sh―FABP4―ATS―R9オリゴ―ペプトプレックス処理後のインスリン及びグルコース耐性(tolerance)変化を確認した結果である。
図19】PEIとリポフェクタミン(lipofectamin)を比較群として本発明のATS―R9の遺伝子伝達能を比較したグラフである。
図20】脂肪細胞の分化前と分化後の遺伝子伝達効能を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明で使用される用語に対する定義は、以下の通りである。
【0026】
「遺伝子」は、タンパク質コーディング又は転写時に又は他の遺伝子発現の調節時に機能的役割を有する任意の核酸配列又はその一部を意味する。遺伝子は、機能的タンパク質をコーディングする全ての核酸又はタンパク質をコーディング又は発現する核酸の一部のみからなり得る。核酸配列は、エクソン、イントロン、開始又は終了領域、プローモーター配列、他の調節配列又は遺伝子に隣接した特有の配列内に遺伝子異常を含むことができる。
【0027】
「ポリヌクレオチド(polynucleotide)」又は「核酸(nucleic acid)」という用語は、リボヌクレオチドのみならず、ジオキシリボヌクレオチドなどの様々な長さのヌクレオチド重合体を意味する。この用語は、分子の1次的構造のみを意味し、したがって、二重又は単一鎖のDNA又はRNAを意味する。また、これは、変形の公知の類型、例えば、当該分野で知られている標識(label)、メチル化、「caps」、類似体の一つ或いはそれ以上の自然発生のヌクレオチド置換、脱結合(例:methyl phosphonate、phosphotriester、phosphoamidate、carbarnateなど)と結合(例:phosphorothioate、phosphorodithioateなど)、タンパク質(例:ヌクレアーゼ、毒素、抗体、信号ペプチド(signal peptide)、poly―Llysineなど)などの付属物を含むこと、挿入物(例:アクリジン、Psolalenなど)を有すること、キレート(例:金属原素、放射性金属原素、ホウ素、酸化金属原素など)を有すること、アルキル化合物を有すること、変形した結合(例:alpha anomeric核酸など)を有すること、また、ポリヌクレオチドの非変形を含むヌクレオチド間の変形を意味する。一般に、本発明によって提供される核酸部分は、ゲノム(genome)の破片と短いオリゴヌクレオチド結合子又は一連のオリゴヌクレオチド、微生物又はウイルスオペロン(operon)や真核細胞遺伝子から誘導された調節因子(regulatory element)を含む組換え転写単位で発現できる合成核酸を提供する特有の各ヌクレオチドで固められる。
【0028】
「ベクター(vector)」という用語は、他の核酸をそれと連関した場所に運搬できる核酸分子を意味する。「発現ベクター(expression vector)」という用語は、ベクターによって運搬されたそれぞれの組換え遺伝子によって暗号化されたニューリチン(Neuritin、CPG15)タンパク質を合成できるプラスミド、コスミド(cosmid)又はファージ(phage)を含む。好ましいベクターは、連関した核酸の自己複製と発現が可能なものである。
【0029】
「トランスフェクション(transfection)」は、培養動物細胞に核酸(DNA、PNAなど)を直接導入し、細胞内で遺伝形質を発現させる方法を意味する。対象が植物細胞であるときは、細胞壁を除去し、原形質体に導入する場合も多い。この方法で発癌機構、感染、免疫、発生、情報伝達などの医学、生物学の様々な問題に細胞水準で接近できるようになった。導入した核酸は、目的とする遺伝子をプラスミドなどの媒介体に入れて導入することが一般的な方法である。導入した遺伝子が細胞で安定化された場合は、染色体に挿入された場合が多かった。核酸を導入した細胞を形質導入体という。形質注入効率が非常に低いので、効率を高めるために様々な方法が開発された。そのうち、リン酸カルシウム共沈法、DEAE―デキストラン処理法、電気穿孔法、再分布法(リポソームという人空膜とDNA複合体を製造するための細胞とを融合させる方法)などがある。
【0030】
「ゼータポテンシャル(zeta potential)」とは、帯電した粒子の表面に付いている不可動水分と粒子から容易に離れ得る可動水分の拡散二重層における陽電荷密度差から由来する電気力学的な電位差を意味する。細胞表面と周辺培養液との間の電気的電位差又はゼータ電位で示すこともある。
【0031】
「電荷比率」は、遺伝子伝達体として機能している複合体において、陰電荷を有するDNAが静電引力を通じて陽電荷の担体又はキャリア(carrier)と結合するときに使用された各電荷量の比率を意味する。複合体が製造された後、全体的な電荷が陽電荷であるときに伝達効率がよいが、これは、細胞膜が陰電荷を帯びているためである。
【0032】
「アミノ酸」及び「アミノ酸残基」は、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、及び変形したアミノ酸を意味する。別途に言及されない限り、アミノ酸に対する全ての言及は、一般に又は名称によって、特異的にD及びL立体異性体(構造がこのような立体異性体の形態を許容する場合)の両方に対する言及を含む。天然アミノ酸には、アラニン(Ala)、アルギニン(Arg)、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)、システイン(Cys)、グルタミン(Gln)、グルタミン酸(Glu)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、リシン(Lys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、プロリン(Pro)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、トリプトファン(Trp)、タイロシン(Tyr)及びバリン(Val)が含まれる。非天然アミノ酸には、N―末端アミノ基又は側鎖基上で化学的に変形した、又は、可逆的又は非可逆的に遮断された変形アミノ酸残基、例えば、N―メチル化D及びLアミノ酸又は側鎖官能基が他の官能基に化学的に変形した残基が含まれる。
【0033】
「前駆細胞(progenitor cell)」は、自己複製能及び分化能(differentiation potency)を有する未分化細胞であるが、最終的に分化する細胞の種類が既に決定されている究極的に分化した細胞である。前駆細胞は、分化経路が予定されているが、一般に成熟した完全に分化した細胞のマーカーを発現しないか、成熟した完全に分化した細胞としては機能しない。したがって、前駆細胞は、関連細胞タイプに分化するが、正常状態では非常に多様な細胞タイプを形成することはできない。本発明においては、脂肪細胞に分化する脂肪前駆細胞を使用する。
【0034】
「分化(differentiation)」は、細胞が分裂・増殖して成長する間、互いに構造や機能が特殊化する現象、すなわち、生物の細胞、組織などがそれぞれに与えられた役割をするために形態や機能が変化していくことをいう。本発明においては、分化がなされた成熟した(matured)脂肪細胞を対象とする。
【0035】
「ルシフェラーゼ(luciferase)」は、ルシフェリンの酸化を促進し、化学エネルギーを光エネルギーに転換させ、光を発散させる酵素であって、生体内で連続的及び実時間的に発現を測定し、目的の各物質に対する効果を検証できるようにするリポーター遺伝子(reporter gene)としての機能をする。ホタル(firefly)又はツチボタル(glow―worm)などの昆虫体から直接収得したり、このような酵素を暗号化する組換えDNA切片を含む微生物からの発現によって収得することができる。
【0036】
「担体又はキャリア(carrier)」は、生物体内にある活性物質が他の物質と結合して存在する場合、又は、細胞膜を介した物質の移動である運搬体輸送を担当する高分子物質を総称する。担体の例としては、非制限的に、リン酸塩、クエン酸塩及び他の有機酸などの緩衝剤、アスコルビン酸などの抗酸化剤、低分子量ポリペプチド(約10残基未満)、血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリンなどのタンパク質、ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリシンなどのアミノ酸、単糖類、二糖類及びグルコース、マンノース又はデキストリンを含む他の炭水化物、EDTAなどのキレート化剤、マンニトール又はソルビトールなどの糖アルコール、ナトリウムなどの塩―形成反対イオン(salt―forming counterion)、及び/又はTWEEN、ポリエチレングリコール(PEG)及びPLURONICSなどの無イオン界面活性剤を含む。
【0037】
「治療」は、臨床結果を含んで有利な又は所望の結果を得るための接近法である。疾患、障害又は病態の「治療」又は「緩和」は、障害を治療しない場合と比較して、病態、障害又は疾患状態の程度及び/又は好ましくない臨床症候が少なくなり/少なくなるか、経時的な進行推移が遅くなるか長くなることを意味する。例えば、肥満治療において、体重減少、例えば、少なくとも5%の体重減少は、好ましい治療結果の例である。本発明の目的のために、有利であるか好ましい臨床結果は、検出可能又は検出不能とは関係なく、1つ以上の症状の軽減又は改善、疾患程度の縮小、疾患の安定化した(すなわち、悪化していない)状態、疾患進行の遅延又は減速、疾患状態の改善又は緩和、及び鎮静(部分的又は全体的)を含むが、これに限定されることはない。「治療」は、治療を受けない場合に予想される生存と比較して、生存を延長させることも意味し得る。また、治療は、1回用量の投与によって発生する必要がなく、一連の用量の投与時に度々発生する。したがって、治療上の有効量、緩和に十分な量、又は疾患、障害又は病態の治療に十分な量を1回以上の投与で投与することができる。
【0038】
「疾患(disorder)」という用語は、本発明の遺伝子導入動物モデルを使用して同定される分子を用いて治療することから利益を得られるいずれかの状態である。これは、哺乳類を疑問の疾患にかかりやすくする各病理学的条件を含む慢性と急性疾患又は各疾病を含む。本明細書で取り扱う各疾病の例は、これに制限されることはないが、肥満、代謝症侯群症状などである。
【0039】
「治療上の有効量」は、治療される障害の症状の軽減が含まれる、研究員、獣医、医師又はその他臨床医学者によって追求される組織、システム、対象又は人間における生物学的又は医学的応答を導出する組成物内の活性化合物の量を意味する。
【0040】
「予防的有効量」は、肥満又は肥満関連障害、病態又は疾患危険のある対象における肥満又は肥満関連障害、病態又は疾患の発病を防止するために、研究員、獣医、医師又はその他臨床医学者によって追求される組織、システム、対象又は人間における生物学的又は医学的応答を導出する組成物内の活性化合物の量を意味する。
【0041】
「遺伝子治療(gene therapy)」は、突然変異を起こした遺伝子を訂正することによって遺伝病を治療したり、遺伝子或いはRNAiを用いてタンパク質発現を調節することによって疾病を治療することをいう。すなわち、患者の細胞に外部から正常遺伝子を移植し、その細胞の表現型を変化させることによって病気を治療する方法である。現在、人の精子、卵子、受精卵に対する遺伝子治療においては全世界的に倫理問題が提起されているが、1993年代に遺伝子治療臨床研究に関する指針を指定した後、遺伝子治療時代に突入した。遺伝子の治療には、体内に遺伝子を移入する遺伝子ベクター、システムの研究が必須である。
【0042】
「薬」とは、参照量、水準、値、数、頻度、パーセント、寸法、サイズ、量、重量又は長さに対して30%、25%、20%、25%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%又は1%程度に変化する量、水準、値、数、頻度、パーセント、寸法、サイズ、量、重量又は長さを意味する。
【0043】
本明細書を通じて、文脈で別途に必要でない限り、「含む」という用語は、提示された段階又は元素、或いは段階又は元素の群を含むが、任意の他の段階又は元素、又は各段階又は各元素の群が排除されないことを内包するものと理解しなければならない。
【0044】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0045】
本発明は、核酸(nucleic acid)の細胞内伝達(transfection)に関する。特に、脂肪細胞を直接標的とする(ターゲッティングする)伝達体を用いて、脂肪細胞標的遺伝子としてDNA、siRNA及びshRNAなどの肥満及び肥満由来代謝症侯群治療用遺伝子伝達に関する。
【0046】
本発明は、一観点において、脂肪細胞標的配列(adipocyte targeting sequence、ATS)及びポリ(オリゴ―アルギニン)、特にR9(arginine)ペプチドを含む脂肪細胞標的遺伝子伝達体に関する。すなわち、本発明は、脂肪細胞標的配列(ATS)及び還元性ポリ(オリゴ―アルギニン)を含む非ウイルス性遺伝子伝達ベクターに関する発明である。
【0047】
非ウイルス性遺伝子伝達ベクターは、ウイルスを利用せずに遺伝子を細胞内に運搬するキャリアを総称する意味を有し、遺伝子を構成する核酸が陰電荷を帯びる性質を用いて陽イオン上の陽イオン部位と核酸上の陰イオン部位との電気的相互作用を用いて核酸をコーティングする形態のベクターが代表的な例である。
【0048】
本発明のポリ(オリゴ―アルギニン)は、ポリ(オリゴ―L―アルギニン)及びポリ(オリゴ―D―アルギニン)を含み、そのうち、ポリ(オリゴ―D―アルギニン)であることが好ましい。高分子量ポリ(オリゴ―D―アルギニン)は、DNAの凝縮を効果的に促進し、安定した複合体及びDNAの細胞内への内在化を形成し、内在化後には、複合体が二硫化結合の還元によってエンドソームから細胞質空間に脱出するようになる。
【0049】
本発明の還元性ポリ(オリゴ―D―アルギニン)は、二硫化物で架橋された末端システインを含む陽イオン性オリゴマーで構成されたことが好ましいが、これに制限されることはない。システインは、隣接する他のシステイン分子と二硫化架橋(cross―linking)を形成するスルフヒドリル基を含有する唯一のアミノ酸であって、二硫化物で架橋された末端システイン以外のタンパク質伝達ドメイン(PTD)部分は任意の陽イオン性ペプチドになり得る。さらに、好ましくは、本発明の還元性ポリ(オリゴ―D―アルギニン)は、Cys―(D―R)9―Cys反復単位で構成することができる。このような還元性ポリ(オリゴ―D―アルギニン)は、Cys―(D―R)9―Cys反復単位の末端システイン―チオール基のDMSO酸化過程によって製造することができ、還元試薬によってCys―(D―R)9―Cysに断片化することができる。
【0050】
すなわち、本発明の還元性ポリ(オリゴ―アルギニン)は、9個のアルギニン(R9)で構成された、さらに好ましくは、Cys―(D―R)9―Cys構造を有することを特徴とする。このようにCysが両側末端に位置することによって、オリゴペプトプレックス(ペプチド複合体、peptoplex)の効果的な凝縮及びこれによる複合体の中性電荷特性を保有できるようになる。
【0051】
本発明の遺伝子伝達体は、前記R9(arginine)及び脂肪細胞標的配列(adipocyte targeting sequence、ATS)を含む。すなわち、R9(arginine)が脂肪細胞標的配列(ATS)と結合している構造を含む(ATS―R9)。
【0052】
脂肪細胞標的配列(adipocyte targeting sequence、ATS)は、公知のATS配列を利用[Nature medicine、2004 June]しても構わないが、配列番号1で表示されるアミノ酸配列からなることが好ましく、これに制限されることはない。
【0053】
配列番号1:CKGGRAKDC
【0054】
本発明のATS―R9は、脂肪細胞内プロヒビチン(prohibitin)と結合することを特徴とする。
【0055】
プロヒビチン(Prohibitin)は、脂肪細胞を支持する血管の内皮細胞で過剰発現される受容体であって、成熟脂肪細胞及び前駆脂肪細胞の全てに存在するATS受容体である。そのため、プロヒビチン発現位置及び発現水準を確認するために、その抗体の代わりにATSとの結合能を測定することができる。
【0056】
プロヒビチンは、特に肥満で重要な役割をするが、脂肪組織血管で高く発現され、分化した脂肪細胞で分化前と比較して核及びミトコンドリアから原形質膜に移動して分布する特性は、プロヒビチンが肥満に対する潜在的なバイオマーカーになり得ることを示唆する。前記プロヒビチンは、前駆脂肪細胞で原形質膜に少なく分布し、相対的に核及びミトコンドリアに高く位置するが、分化した脂肪細胞では核及びミトコンドリアに位置していたプロヒビチンが原形質膜に移動して高く発現される。すなわち、プロヒビチンは、分化の進行と共に過剰発現される。
【0057】
本発明のATS―R9は、プロヒビチン―媒介メカニズムを通じて脂肪細胞内に位置するようになる。すなわち、脂肪細胞ターゲッティングではATSが重要な役割をし、目的遺伝子発現程度は、脂肪細胞内でのプロヒビチン発現水準に依存的である。
【0058】
特に、前記プロヒビチンは、分化前の脂肪細胞よりも分化後の成熟脂肪細胞で過剰発現されるので、本発明のATS―R9は、分化した成熟肥満脂肪細胞を直接ターゲッティングする機能を有する。実験例1でこれを確認することができる。特に、分化してから9日〜11日経過した成熟した肥満脂肪細胞に対するターゲッティング能に最も優れる。本発明において、「成熟脂肪細胞」と「肥満脂肪細胞」は同一の意味を有する用語であって、これらは混用されている。
【0059】
したがって、本発明は、肥満脂肪細胞を標的とする(ターゲッティングする)遺伝子伝達体を用いて脂肪細胞内の特定遺伝子を効率的に伝達する方法及び関連システムに関する。このような肥満脂肪細胞を標的とする特定遺伝子として、公知の肥満及び肥満由来代謝症候群治療遺伝子を使用することができる。
【0060】
また、本発明は、他の観点において、脂肪細胞標的配列(ATS);R9(arginine)ペプチド;及び脂肪細胞標的遺伝子として肥満及び肥満由来代謝症候群治療遺伝子を含有する複合体に関し、前記遺伝子伝達体に目的遺伝子が結合された構成に関する。
【0061】
本発明の標的細胞としては、脂肪細胞に分化できる前駆脂肪細胞に該当する細胞を使用することもできるが、成熟脂肪細胞(肥満脂肪細胞、白色脂肪細胞、茶色脂肪細胞など)をターゲッティングすることが最も好ましい。
【0062】
前駆脂肪細胞には、脂肪細胞に直接分化できる細胞の他、脂肪細胞を含む多種の細胞への分化能を維持している間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell)や間質細胞(stromal cell)が含まれる。前記各細胞は、人間又は非人間哺乳動物の脂肪組織などから採取した初期培養細胞であってもよく、株化された培養細胞株であってもよい。
【0063】
脂肪組織の採取源としては、皮下脂肪や内臓脂肪が例示されるが、これらに限定されることはない。脂肪組織の採取によって個体に与える機能障害のおそれが小さいものが、標的細胞の採取源として非常に適している。また、間葉系幹細胞や間質細胞は、骨髓やその他の組織から採取することができる。
【0064】
一方、本発明の複合体が伝達する肥満及び肥満由来代謝症候群治療遺伝子は、目的の脂肪細胞内で発現させることが好ましい任意の遺伝子を挿入することができ、DNAとRNA及びこれらの合成類似体を包括する。例えば、ポリペプチド(酵素、ホルモン、成長因子、サイトカイン、レセプター、構造タンパク質など)、アンチセンスRNA、リボザイム、デコイ、RNA干渉を起こすRNAなどをコーディングする遺伝子が例示される。その例としては、gDNA、cDNA、pDNA、mRNA、tRNA、rRNA、siRNA、miRNA、アンタゴミアなどを挙げることができる。これらは、自然に存在したり合成することができ、サイズにおいてオリゴヌクレオチドから染色体まで多様なサイズで存在し得る。これら遺伝子は、人間、動物、植物、バクテリア、ウイルスなどから起源する。これらは、当分野で公知の方法を用いて獲得することができる。
【0065】
前記遺伝子によってコーディングされるポリペプチドは、各種ホルモン、組織接合性抗原、細胞付着タンパク質、サイトカイン、各種抗体、細胞受容体、細胞内又は細胞外酵素及びこれらの切片などを含むことができる。また、肥満及び肥満由来代謝症候群治療遺伝子発現調節因子、例えば、転写プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、オペレーター、ターミネーター、アテニュエーター及びその他の発現調節因子などを含むことができる。
【0066】
本発明において、前記肥満及び肥満由来代謝症候群治療遺伝子としては、好ましくは、肥満及び肥満由来代謝症侯群の治療又は診断と関連するポリペプチドをコーディングする遺伝子を含む。特に、肥満及び肥満由来代謝症候群治療遺伝子は、肥満疾患に対する遺伝子治療効果を有するRNA干渉(RNAi)であることが好ましい。
【0067】
RNA干渉(RNAi)は、二本鎖の短い干渉RNA(siRNA)によって対象遺伝子の発現を特異的に下方調節させることを含む自然的な機構である。RNAiを媒介するRNAi試薬のタイプに対する例としては、例えば、siRNA、miRNA(マイクロRNA)又は小型ヘアピンRNA(shRNA)がある。
【0068】
そのため、本発明は、更に他の観点において、脂肪細胞標的配列(ATS)、R9(arginine)ペプチド、及び肥満及び肥満由来代謝症候群治療遺伝子を含有する複合体を含有する肥満又は肥満由来代謝症候群組成物に関する。
【0069】
上述したように、前記肥満及び肥満由来代謝症候群治療遺伝子は、肥満疾患に対する遺伝子治療効果を有する遺伝子、例えば、RNAiであることが好ましい。
【0070】
前記RNAiの投与に効果的な投与量及び計画は、経験的に決定することができ、当業者が容易に決定することができる。単一又は多重投与量を使用することができる。
【0071】
一方、本発明において、「肥満又は肥満由来代謝症候群」は、一般に身体質量指数(BMI)が30を超えるものと定義されるが、本出願の目的のためには、BMIが30未満である各対象を含めて、体重増加の防止が必要であるか、これを望む全ての対象が「肥満」の範疇に含まれる。
【0072】
前記遺伝子は、陰イオンに帯電した巨大な高分子鎖の形態で存在するので、遺伝子単独で存在するときは、比較的体積が大きいランダムコイルの形態を帯びており、遺伝子の細胞内への伝達が難しく、サイズが小さいナノ粒子の形態に製造しなければならない。このために、本発明においては、ATS―R9を用いて前記遺伝子との静電相互作用を通じてナノサイズの複合体を形成している。このときに使用される生分解性結合は、溶解化加水分解(solubilization hydrolysis)、又は酵素又は生物体などの作用によってそれほど複雑でない中間物質又は最終産物への転換が可能な結合をいう。特に、二硫化結合をしている本発明のATS―R9は、脂肪細胞内に流入すると、低分子に切れて目的遺伝子を遊離できるようになる。
【0073】
脂肪細胞内の前記物質を伝達するための本発明の伝達体及び複合体は、次のような長所を有する。
【0074】
(1)脂肪細胞ターゲッティングにおいて、本発明の「ATS―R9」のうちATSが重要な役割をする。
【0075】
本発明のATS―R9伝達体は、脂肪細胞で発現する「プロヒビチン(prohibitin)」との結合を通じて脂肪組織内皮細胞をターゲッティングする。すなわち、ATSが脂肪細胞をターゲッティングし、プロヒビチン―媒介メカニズムを通じて前記脂肪細胞内に内在化する。特に、プロヒビチンが過剰発現する分化後の成熟肥満細胞が対象として最も好ましい。
【0076】
本発明の一実施例においては、free―ATSを前処理した場合、ルシフェラーゼ遺伝子発現が減少することを確認した。これは、ATS―R9オリゴ―ペプトプレックスがプロヒビチンとの結合を通じて細胞内に入っていくことを意味する。本発明のATS―R9は、PEI及びR9より優れたトランスフェクション及び遺伝子発現効率を示した。
【0077】
効率的な遺伝子伝達システムのために、担体は、核膜(nuclear membrane)を通過しなければならなく、核に遺伝子のカーゴ(cargo)を伝達しなければならない。ATS―R9は、成熟脂肪細胞の核におけるプロヒビチンの高い発現のため核を迅速に通過する。これは、プロヒビチンターゲッティングモイエティ(moiety)であるATSが脂肪細胞での効率的なターゲッティング及び選択的遺伝子発現に非常に重要であることを強く示唆する。すなわち、プロヒビチンは、成熟脂肪細胞の選択的な形質転換のための潜在的なターゲットになる。
【0078】
(2)本発明の「ATS―R9」は、伝達された肥満及び肥満由来代謝症候群治療遺伝子の発現効率(transgene expression efficiency)を向上させる。
【0079】
本発明のATS―R9のトランスフェクション効率は、3:1の電荷比率以上でATS―R9と遺伝子の凝縮がよく起こるので、3:1〜8:1の電荷比率(+/−)、さらに好ましくは、5:1〜8:1の電荷比率(+/−)を有する方がよい。特に、一具体例において、本発明の伝達体は、電荷比率5:1で最も高い遺伝子トランスフェクション効率を示した。
【0080】
本発明において、前記電荷比率とは、遺伝子の構成成分中のリン酸(phosphate)が陰電荷を帯びており、伝達体の構成成分中のアルギニンが陽電荷を帯びているが、遺伝子が有している陰電荷の基準を1とした後、反応させる伝達体の量を3倍〜8倍高めて遺伝子と反応させる比率を意味する。すなわち、3:1〜8:1の電荷比率を有することは、目的遺伝子より伝達体の量を3倍〜8倍に大きく構成することをいう。
【0081】
これは、細胞膜が陰電荷を帯びているので、遺伝子伝達複合体が全体的に陽電荷を帯びているときに伝達効率に優れるためである。複合体が陰電荷を帯びる場合は細胞膜を容易に通過し得ない一方、複合体が陽電荷を帯びる場合は電荷対電荷反応で容易に細胞膜を通過し得る。また、電荷量は、細胞膜透過能に影響を及ぼすが、電荷量が高いほど細胞膜を通過し得る能力も大きくなる。
【0082】
一方、脂肪細胞の分化程度がトランスフェクション効率に影響を及ぼし得るが、本発明のATS―R9は、分化してから10日まで漸進的にトランスフェクション効率を増加させる。分化程度及び分化した脂肪細胞の数が増加するほどプロヒビチンが上方調節されるので、ATS―R9のトランスフェクション効率を強化させる。一実施例を通じて、分化してから9日〜11日経過した成熟した肥満脂肪細胞に対するトランスフェクション効率が最も高いことを確認した。
【0083】
このように、本発明の複合体は、脂肪細胞内でのプロヒビチン発現水準に依存して目的遺伝子を発現する。
【0084】
特に、通常的に使用されている陽イオン担体PEIと比較して、本発明のATS―R9は、遥かに高い遺伝子発現効率を有する。すなわち、ATS―R9によってさらに効果的なDNA凝縮能力を示し、適正な電荷比率で血清でDNAが分解(degradation)されないように保護する。
【0085】
(3)本発明の「ATS―R9」は、DNAと結合してナノサイズの複合体を形成し、正(positive)のゼータポテンシャル値を有する。
【0086】
ATS―R9は、例えば、DNAと結合する場合、相対的に低いN/P比率(polymernitrogen(+)/pDNA phosphate(−))で静電気的相互作用によってより効果的にDNAを濃縮するという長所を有する。すなわち、中性条件で陽性電荷を示し、効果的にDNAをナノサイズに濃縮することができ(約200nm以下)、電荷比率1以上の正(positive)のゼータポテンシャルを有することができる。これは、本発明のオリゴペプチドが両末端にCys構造を含んでいるためである。
【0087】
上述したように、複合体が陰電荷を帯びる場合は同一の陰電荷を有する細胞膜を容易に通過し得ない一方、複合体が陽電荷を帯びる場合は電荷対電荷反応で容易に細胞膜を通過し得るので、本発明の正(positive)のゼータポテンシャル値を有する特性は遺伝子伝達効率に優れることを意味する。
【0088】
(4)本発明の「ATS―R9」は、細胞毒性が低い。
【0089】
通常の高分子陽イオン担体PEIなどと比較して、本発明のATS―R9は著しく低い細胞毒性を示す。本発明の一実施例において、ATS―R9は、毒性のPEIと比較して電荷比率9まで非毒性を示し、実施していた全ての電荷比率で細胞生存能が90%以上を示した。
【0090】
要するに、本発明のATS―R9は、脂肪組織血管でプロヒビチンと結合し、続いて、脂肪細胞、特に分化した成熟肥満脂肪細胞内に効果的に内在化させる。すなわち、ATS―R9のin vivo位置化は、プロヒビチンを通じた脂肪組織血管のターゲッティング及び結合;血管通過;及び脂肪細胞内への内在化の3段階として簡単に説明することができる。
【0091】
また、本発明は、高いトランスフェクション効率、低い細胞毒性、高い目的遺伝子発現効率を有するので、効果的な非ウイルス性肥満及び肥満由来代謝症候群治療遺伝子伝達システムとして使用することができる。
【実施例】
【0092】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。これら実施例は、本発明を例示するためのものに過ぎなく、本発明の範囲がこれら実施例によって制限されるものと解釈されないことは、当業界で通常の知識を有するた者にとって自明であろう。
【0093】
[細胞培養]
DMEM(Dulbecco’s Modified Eagle Medium)、グルコース、FBSをWelGENE(韓国)から購入し、インスリン及び及び3―isobutyl―1―methylxanthine(IBMX)をWako(日本)から、デキサメタゾン及びOil Red OをSigma―Aldrich(米国)から購入した。3T3―L1前駆脂肪細胞(preadipocyte)を韓国細胞株銀行から購入し、その分化を誘導した。
【0094】
前駆脂肪細胞をグルコース、10%のFBS、1%のペニシリン及びストレプトマイシンが補充された完全培地で37℃、5%のCO大気下で培養した。各細胞を週3回継代培養した。
【0095】
脂肪細胞の分化のために、シーディングしてから4日目に各細胞を完全培地、10μg/mLのインスリン、1μMのデキサメタゾン(Dexamethasone)及び0.5mMのIBMXを含有する分化誘導培地で72時間処理した。分化培地を完全培地及び10μg/mLのインスリンを含有する脂肪細胞維持培地に取り替えた。培地は2日ごとに取り替えた。
【0096】
[ペプチド準備]
ローダミンB結合されたATS(CKGGRAKDC)ペプチド、FITC結合されたATS―R9(CKGGRAKDRRRRRRRRRC)及びR9(CRRRRRRRRRC)ペプチドをPeptron(Daejoen、Korea)社から入手した。凍結・乾燥したペプチドを脱イオン水に溶かした後、使用前まで−20℃で保管した。
【0097】
ペプチド分子量は、以下の通りであった:ATS:937、Rhodamine B ATS:1361、ATS―R9:2341、FITC―ATS―R9:2844、R9:1628
【0098】
[Oil Red O染色」
脂肪細胞分化をOil Red O染色で確認した。
【0099】
Oil Red O溶液を準備するために、0.7gのOil Red Oパウダーを200mLのイソプロパノールに溶かして一晩中撹拌した後、0.22μmのシリンジフィルターを介してろ過した。Oil Red O溶液を脱イオン水と6:4の比率で混合してOil Red Oワーキング溶液を製造し、これを0.22μmのシリンジフィルターを介してろ過した。
【0100】
細胞染色のために、各細胞をPBS(Phosphate Buffered Saline)で濯ぎ、3.7%のホルムアルデヒドを含有するPBSで常温で1時間固定させた。固定後、各細胞を60%イソプロパノールで洗浄し、クリーンベンチで乾燥させた。これを完全に乾燥させた後、各細胞をOil Red Oワーキング溶液で染色して15分間培養した。
【0101】
各細胞を脱イオン水で4回洗浄し、イメージを顕微鏡でキャプチャーした。
【0102】
脂肪細胞分化の定量分析のために、100%のイソプロパノールで蓄積されたOil Red Oを細胞から除去し、520nmで吸光度を測定した。
【0103】
[共焦点顕微鏡用サンプル製作]
Cellmask Deep RedをInvitrogenから購入し、DAPI―Fluoromount―GをSouthern Biotechから購入した。3T3―L1前駆脂肪細胞、H9c2及びHEK293細胞を6ウェルプレートに置いたカバースリップ上で成長及び分化させた。
【0104】
シーディングしてから24時間後、各細胞に対してFITC結合ATS―R9(25μg/mL)を処理し、これらを15分〜72時間範囲で時間依存的方式で培養した。
【0105】
培養後、培養培地を取り替え、各細胞をPBSで3回洗浄した後、3.7%のホルムアルデヒドで固定させた。プラズマメンブレインをCellmask Deep Redで染色し、各細胞を再びPBSで洗浄した後、核染色のためにDAPIの存在下でマウンティングさせた。各イメージをCarl Zeiss共焦点顕微鏡でキャプチャーした。
【0106】
[競争分析(competition assay)]
競争分析(competition assay)のために、3T3―L1前駆脂肪細胞と成熟脂肪細胞(10日目)に対して自由ATS(free―ATS)(100μg/mL)を処理した。培養してから6時間後、各細胞をFITC―ATS―R9オリゴ―ペプトプレックスで処理して24時間培養した。H9c2及びHEK293細胞株を対照群として使用した。H9c2及びHEK293細胞に対してFITC結合されたATS―R9(25μg/mL)オリゴ―ペプトプレックスを処理し、これを24時間培養した。
【0107】
[ゲル遅延分析(Gel retardation assay)]
1μgのルシフェラーゼプラスミドDNA(p―β―Luci、Promega(USA)から入手)、脱イオン水及びATS―R9(電荷比率:0.25、0.5、1、3、5、7、及び9)を30分間常温で培養してオリゴペプトプレックス(oligo―peptoplexes)を製作し、0.8%のアガロースゲルで0.5%のTBE緩衝溶液下で25分間電気泳動を行った(100V)。
【0108】
Naked DNAを対照群として使用し、DNA凝縮効率を分枝型PEI(25KDa、Sigma、USA)と比較した。
【0109】
[ゼータポテンシャル及びサイズ測定]
5μgのルシフェラーゼプラスミドDNA(p―β―Luci)、脱イオン水及びATS―R9(電荷比率:0.5、1、3、5、7、及び9)を30分間常温で培養し、オリゴペプトプレックス(oligo―peptoplexes)を製作した。前記オリゴペプトプレックスの平均直径及び表面ゼータポテンシャルは、Zetasizer―Nano ZS(Malvern Instruments、UK)を備えたDLSを使用して測定した。
【0110】
[in vitroトランスフェクション効率]
ルシフェラーゼ分析キットをPromega(USA)から購入し、DCタンパク質分析キット及び小血清アルブミンスタンダードをBio―Rad Laboratories(USA)から購入した。前駆脂肪細胞3T3―L1及び分化した脂肪細胞を24ウェルプレートにシーディングした。
【0111】
電荷比率5でATS―R9及び2μgのルシフェラーゼプラスミドDNAを混合することによって、オリゴ―ペプトプレックスを製作した。R9及びPEIポリプレックスを電荷比率5で対照群として使用した。各細胞は、シーディングしてから24時間後にトランスフェクションした。
【0112】
培養してから72時間後、各細胞をPBSで洗浄し、150μlの1x cell溶解バッファー試薬を20分間処理した。細胞溶解物を擦り落として収得し、これを1.5mLのマイクロチューブに移した後、13,000rpmで3分間遠心分離した。
【0113】
細胞溶解物の蛍光度(luminescence)を20秒integrationで96―ウェルプレート光度計(Berthold Detection Systems、Germany)で測定し、細胞タンパク質のmg当たりのRLU(relative luminescence units)値で表現した。小血清アルブミンスタンダードを使用するDCタンパク質分析キットでタンパク質を決定した。
【0114】
[in vitro細胞毒性分析]
細胞生存能をMTT[3―(4,5―dimethylthiazol―2―yl)―2,5―diphenyltetrazolium bromide]分析法で測定した。
【0115】
3T3―L1分化した各脂肪細胞を24ウェルプレートで培養させ、各脂肪細胞(10日目)を、規定された電荷比率でルシフェラーゼプラスミドDNA、プレーンDMEM、ATS―R9で製作したオリゴ―ペプトプレックスで処理した。PEIポリプレックスを対照群として使用した。
【0116】
トランスフェクションしてから48時間後、50μlのMTT試薬及び500μlの培地を各ウェルに添加し、これを3時間37℃で培養した。前記各培養培地を除去し、500μlのジメチルスルホキシド(DMSO)を各ウェルに添加し、これを常温で20分間培養した。吸光度を570nmで測定した。
【0117】
[マウスモデルでの肥満誘導]
3週齢のC57BL/6JマウスをCentral Lab Animal Inc.(Korea)から購入した。最初の2週間は、50%の正常食餌及び脂肪から60kcal%のローデント食餌(rodent diet)で飼育した。マウスに対する高脂肪食餌比率を漸次増加させ、7週に開始した;前記各マウスを脂肪から60kcal%で高脂肪食餌でのみ飼育した。14週後、各マウスは肥満になった(体重>45g)。
【0118】
[in vivo脂肪標的(fat homing)]
FITC結合されたATS―R9(10mg/mL)及びFITC―R9(10mg/mL)をPBSに希釈し、最終濃度を1.5mg/mLとし、肥満マウスに尾静脈注射で100μlのペプチドを注入した。
【0119】
Cellvizio(Mauna Kea Technologies、France)により、注入した直後、他の器官の血管でペプチド位置化(localization)が観察された。
【0120】
[実施例1]:3T3―L1前駆脂肪細胞の分化
3T3―L1脂肪細胞分化過程を図2に示した。
【0121】
3T3―L1前駆脂肪細胞を脂肪細胞分化用培地で培養したとき、細胞形態は、徐々に細胞質で示す丸い形状及び大きな脂質ドロップレット(droplet)の脂肪細胞の形態に変化した。前記細胞領域の約90%が脂質ドロップレットで充填された(図2b)。
【0122】
そして、中性脂質を選択的に染色できるので、脂肪細胞分化を確認するために広く使用されるOil red O染色の結果、細胞培養群集の95%が成熟脂肪細胞に分化することを観察した(図2c)。高いOil Red O蓄積は、より高い脂肪細胞分化を示す。
【0123】
さらに、定量分析のために、分化した各脂肪細胞を5日〜14日間Oil Red Oで染色した。蓄積されたOil Red Oを溶出させ、これを分光光度計で520nmで定量した。その結果を図2dに示した。Oil Red O蓄積は、細胞分化時間の経過に伴って増加した。時間依存的方法で増加するOil Red Oの量は、前駆脂肪細胞が時間の経過と共に継続して成熟脂肪細胞に分化していることを意味する。
【0124】
[実施例2]:ATS―R9の脂肪細胞内への内在化能
ATS―R9の細胞内への内在化程度をモニターするために、FITC―標識されたATS―R9(FITC―ATS―R9)で成熟脂肪細胞及び前駆脂肪細胞を処理し、担体の細胞内伝達を確認した。
【0125】
10日目に脂肪細胞に分化した3T3―L1に対してFITC―コンジュゲートされたATS―R9(25μg/mL)を処理し、規定された時間になるまでインキュベートした。プラズマメンブレインをCellmask Deep Redで染色し、核をDAPIでカウンター染色した。ブルーチャンネル(for DAPI)を白色で描写し、ATS―R9の核位置化を示した。イメージを共焦点レーザースキャニング顕微鏡でキャプチャーした。スケールバー(Scale Bar):10μm。
【0126】
その結果、ATS―R9は、3T3―L1脂肪細胞内に非常に速く内在化した。15分及び1時間以内に、それぞれ細胞質及び核内に到逹し、48時間まで強い蛍光信号を維持した。
【0127】
これは、上述したプロヒビチンを通じて脂肪細胞をターゲッティングする能力に起因する。3T3―L1成熟脂肪細胞への内在化(internalization)上で、前記融合ペプチドは核膜を迅速に通過する。すなわち、ATS―R9は、非常に速く各細胞に伝達された。時間の経過に伴うATS―R9の細胞内分布を図3に示した。
【0128】
成熟脂肪細胞では、ATS―R9は15分以内に細胞質に、1時間以内に核に到逹し、48時間停留状態を維持した。その一方、前駆脂肪細胞では、ATS―R9は24時間後に停留状態を維持し、核への移動は48時間後に観察された。
【0129】
このような成熟脂肪細胞及び前駆脂肪細胞におけるATS―R9吸収パターン及び分配の差は、プロヒビチン水準及び位置の差と関連していることが分かる。
【0130】
[実施例3]:競争分析(Competition assay)
ATS―R9の脂肪細胞ターゲッティングに対するATSの影響を確認するために競争分析を行った。
【0131】
3T3―L1前駆脂肪細胞及び成熟脂肪細胞を10日目にfree―ATSで処理し、6時間受容体を遮断させた。
【0132】
各細胞をfree―ATS存在又は不存在下で培養した。全ての各細胞をFITC―ATS―R9/pLuc複合体で処理した[FITC―ATS―R9/pLuc複合体をオリゴ―ペプトプレックスと称する(オリゴ―ペプチド/DNA複合体)]。
【0133】
このとき、脂肪細胞に対するATS―R9の特異的な結合親和度を確認するために、プラズマメンブレイン上でプロヒビチンを発現しないHEK293及びH9c2細胞を対照群として使用した。各細胞をFITC結合されたATS―R9オリゴ―ペプトプレックスで処理し、これを24時間培養した。
【0134】
その結果を図4に示した。free―ATS(ATS不存在)の前処理で、ATS―R9オリゴ―ペプトプレックス内在化が抑制された;これは、ATS―R9オリゴ―ペプトプレックスがプロヒビチンを通じて細胞内に内在化することを示唆する。
【0135】
3T3―L1前駆又は成熟脂肪細胞において、free―ATS存在下で培養したグループは、free―ATS不存在下で培養したグループと比較して著しく低い水準のFITC強度を示した(図4a及び図4c)。これは、少量のFITC―ATS―R9が細胞膜を透過して細胞内に内在化されるためである。二つのグループ間のFITC強度における差は、free―ATS存在下の前―培養によるプロヒビチンの遮断から起因する。free―ATSと結合するプロヒビチンは、自由にATS―R9/pLucオリゴ―ペプトプレックスと相互作用しないので、結果的にオリゴ―ペプトプレックスの内在化が減少する。類似する結果が前駆脂肪細胞で観察された。しかし、蛍光度強度の差は、成熟脂肪細胞で観察される差より少なかった。このような結果は、成熟脂肪細胞で発見されるプロヒビチン水準と前駆脂肪細胞で発見されるプロヒビチン水準とが異なることから起因する。
【0136】
また、プロヒビチンを発現しないHEK293及びH9c2細胞では、同一量のペプチド及び同一の培養時間で処理した脂肪細胞と比較して、少量のペプチドがHEK293及びH9c2細胞内に位置した(図4b)。弱いFITC強度が前記各細胞株で観察されたので、非常に少ない量のATS―R9/DNAオリゴ―ペプトプレックスがこれら細胞に内在化されると見なされる。
【0137】
さらに、これら各結果は、ATS―R9が、分化状態とは関係なく各脂肪細胞をターゲッティングし、各脂肪細胞を認知し、プロヒビチン―媒介メカニズムを通じて細胞内に内在化することを示した。すなわち、これら各結果を通じて、ATS―R9の結合親密度は脂肪細胞特異的であるという特性を確認することができた。
【0138】
[実験例1]:分化程度による脂肪細胞ターゲッティング能の確認
脂肪細胞の分化程度によるプロヒビチン発現の位置及び量を確認するために、二つのタイプの脂肪細胞をローダミンB―標識されたATS(RhoB―ATS)で処理した。ATSの高いプロヒビチン結合能力のため、プロヒビチンを確認するための抗体の代わりにATSを使用することができる。
【0139】
該当の実験を通じて、成熟脂肪細胞及び前駆脂肪細胞に存在するATS受容体であるプロヒビチンが分化程度によって異なる様相で分布することが発見された。
【0140】
具体的な結果を図5に示した。すなわち、分化前の脂肪細胞(前駆脂肪細胞)と分化後の脂肪細胞(肥満脂肪細胞)におけるATSのターゲッティング能を確認することができた。
【0141】
プロヒビチン結合されたATSを免疫沈降分析法によって確認し(図5a)、3T3―L1前駆脂肪細胞及び成熟脂肪細胞におけるプロヒビチン分布化を染色結果を通じて確認した(それぞれ図5b及び図5c)。図5bを通じて、分化した肥満脂肪細胞にATSが効果的に伝達されることを確認することができ、図5cを通じて、ATSのリガンドであるプロヒビチンの発現差を確認することができる。
【0142】
このように、プロヒビチンは、成熟脂肪細胞では、原形質膜、細胞質、核で高く発現され、前駆脂肪細胞では、一次的に細胞質で低い発現水準を示した。このようなプロヒビチン分布の差は、成熟脂肪細胞及び前駆脂肪細胞で細胞内ATS―R9伝達及び分布メカニズムが異なることを意味する。
【0143】
したがって、分化前の脂肪細胞では、ATSによる脂肪細胞ターゲッティング効率がそれほど高くないが、分化後の肥満細胞では、ATSによる脂肪細胞ターゲッティング効率が非常に高く示される。
【0144】
[比較例1]:非―肥満(成熟)脂肪細胞及び筋肉細胞におけるプロヒビチン発現確認
本発明の融合オリゴ―ペプトプレックスが肥満脂肪細胞特異的な特性を有していることをより明確に確認するために、非―肥満マウスにおけるプロヒビチン発現様相と、筋肉細胞におけるプロヒビチン発現様相とを比較して分析した。このとき、ウエスタンブロット方法を用いた。そして、その結果を図6に示した。
【0145】
特に、図6aから分かるように、非―肥満マウスと肥満マウスにおけるプロヒビチン発現様相でも大きな差を示し、図6bから分かるように、筋肉細胞におけるプロヒビチン発現様相でも明確に大きな差を示した。すなわち、非―肥満脂肪細胞よりも肥満脂肪細胞でプロヒビチンの発現が増加し、筋肉組織とは異なり、肥満脂肪細胞ではプロヒビチンが細胞膜特異的に発現されることも確認した。そのため、細胞膜におけるプロヒビチン発現が特異的に増加する場合、本発明の脂肪細胞へのターゲッティング効率も共に増加することが分かった。
【0146】
[実施例5]:オリゴ―ペプトプレックスの物理的及び生物的特性
陽イオン性ポリマー/DNA複合体の生化学的特性は、細胞吸収能、カーゴ(cargo)安定性、細胞毒性及びトランス遺伝子発現に影響を及ぼす主要な要素の一つである。ATS―R9のDNA凝縮及び保護能力をゲル遅延分析及びマウス血清における分解(degradation)テストによって試験した。
【0147】
5―1.ゲル遅延分析及び血清保護分析(Serum protection assay)
ATS―R9の凝縮効能を分枝型PEI(25kDa)の場合と比較した。
【0148】
オリゴ―ペプトプレックスをルシフェラーゼプラスミドDNA(p―β―Luci)、脱イオン水及びATS―R9又はPEIで規定された電荷比率で製作し、これを30分間室温で培養した。
【0149】
また、オリゴ―ペプトプレックスを規定された電荷比率で製造し、最終濃度50%(vol/vol)でマウス血清を前記ポリプレックスに添加し、サンプルを37℃で2時間培養した。
【0150】
血清培養後、ポリプレックスからのDNAの脱錯体化(decomplexation)のために、リン酸―緩衝された食塩水(pH7.4、0.5mol/LのNaCl)中のヘパリンを0.01mol/LのEDTA存在下でサンプルに添加し、これを1時間培養した。各サンプルを0.8%のアガロースゲルにローディングした。
【0151】
その結果、ATS―R9及びPEIのいずれにおいても、電荷比率3以上でDNA移動が観察されなかった。これは、DNAの完全な凝縮が起こることを意味する(図7a)。そして、ATS―R9は、適切な電荷比率で血清で分解からDNAを保護する一方、naked DNAはテスト条件で完全に分解された(図7b)。
【0152】
言い換えると、ATS―R9は、プラスミドDNAを効率的に凝縮することができ、血清分解から保護される。そして、DNAと複合体の形成後には、陽性に帯電したより小さい複合体を形成し、細胞によって効率的に内在化することができる。
【0153】
5―2.ゼータポテンシャル及びサイズ測定
次に、ATS―R9/DNAオリゴ―ペプトプレックスのゼータポテンシャル及び平均直径をDLS(dynamic light scattering)を用いて測定した。
【0154】
その結果、図8に示したように、ゼータポテンシャルは、電荷比率3以上で正(positive)の値を示し、平均直径は、電荷比率1以上で200nm未満であった。
【0155】
5―3.細胞生存能分析
また、ATS―R9/DNAオリゴ―ペプトプレックスの毒性を試験した。10日目に脂肪細胞に分化した3T3―L1にオリゴ―ペプトプレックスを形質転換した。48時間後、細胞生存能をMTT分析で測定した(n=6)。
【0156】
その結果、図9に示したように、分化した各脂肪細胞は、電荷比率9まで90%以上の細胞生存能を示し、これは、毒性PEIと比較して、オリゴ―ペプトプレックスが分化した脂肪細胞に対して非毒性であることを意味する。
【0157】
[実施例6]:トランスフェクション効率
6―1.最適な電荷比率
トランスフェクション効率の最適な電荷比率を検討した。
【0158】
成熟脂肪細胞を分化してから10日目にp―β―Luciで電荷比5でATS―R9、R9及びPEIによってトランスフェクションし、72時間後、ルシフェラーゼ分析キットでルシフェラーゼ遺伝子発現を測定した。
【0159】
その結果、ATS―R9のオリゴ―ペプトプレックスのトランスフェクション効率は、電荷比率5でR9及びPEIと比較して高く表れた(図10a)。すなわち、ATS―R9は、同一の電荷比率でR9及びPEIと比較して高い形質転換効率を有する。形質転換及び遺伝子発現効率は、脂肪細胞分化時間の経過に伴って増加した。
【0160】
6―2.最適な時期
そして、トランスフェクションの最適時期を調査するために、3T3―L1分化した各脂肪細胞を異なる分化日付にルシフェラーゼプラスミドDNA(p―β―Luci)で電荷比率5でATS―R9及びPEIによってトランスフェクションした。ルシフェラーゼ遺伝子発現は、ルシフェラーゼ分析キットによって72時間後に測定した。
【0161】
その結果、分化してから9日及び10日目により高い遺伝子発現を示し、これは、成熟脂肪細胞のトランスフェクションに適していることを示唆する(図10b)
【0162】
[実施例7]:インビボ(in vivo)脂肪ターゲッティング(fat homing)実験
食餌誘導肥満(diet―induced obesity、DIO)マウスを用いてin vivo実験を行った。脂肪組織に対するATS―R9のターゲッティングを観察するために、FITC―ATS―R9を肥満マウスに尾静脈を通じて投与した。プローブ基盤の共焦点レーザーエンドマイクロスコピー(pCLE、Cellvizio)を用いて追跡を可視化した。
【0163】
肝、腎臓及び他の脂肪パッド脈管(fat pad vasculature)に対して観察した結果、ATS―R9が脂肪パッド脈管(fat pad vasculature)で凝集された。他の器官では、ATS―R9は血管に沿ってのみ浮遊し、凝集は観察されなかった(図11)。
【0164】
そして、脂肪パッド脈管でFITC―コンジュゲートされたATS―R9及びR9の脂肪ターゲッティング(Fat homing)を比較した結果、ATS―R9(R9ではない)のみが脂肪パッド脈管で凝集された。すなわち、R9を投与すると、脂肪血管で凝集は観察されなかったが、内皮(endothelium)上の凝集は観察された(図12)。
【0165】
また、水平に切断した血管の分析のために、脂肪パッドの微細血管イメージをプローブから血管まで固定された距離で収得した。ATS―R9処理は、高く蓄積された蛍光強度を内皮の縁部で生成した一方、R9処理は全体の血管領域にわたって蛍光強度を生成させた(図13)。すなわち、脂肪パッド微細血管(fat pad microvessel)でFITC―コンジュゲートされたATS―R9及びR9の脂肪ターゲッティングを比較した結果、ATS―R9は脂肪パッド微細血管(fat pad microvessel)で結合するが、R9の場合は結合が観察されなかった。
【0166】
これは、ATS―R9が脂肪血管と結合し、血管の内皮(endothelium)で凝集を形成したためである。その一方、ATS―R9は、肝及び腎臓でATS―R9―内皮相互作用の代表的な結合又は凝集なしで血管に沿って継続して動く。
【0167】
このような結果から分かるように、ATS―R9は、脂肪組織脈管と選択的に結合できるが、血管及び脂肪組織の微細血管のみで凝集され、肝や腎臓などの他の器官では凝集されない。また、脂肪組織におけるATS―R9結合パターンは、通常の単純アルギニン結合構造体と完全に異なっている。
【0168】
[実施例8]:インビボ(in vivo)での遺伝子発現
まず、in vivo上の脂肪組織内にATS―R9が内在化することを確認した。
C57BL/6J肥満マウスに尾静脈を通じてFITC―コンジュゲートされたATS―R9を注入し、Rhodamine―コンジュゲートされたレクチンを注入することによって血管染色を行った。
【0169】
固定された脂肪組織部分を多光子共焦点レーザースキャニング顕微鏡を用いてイメージ化して観察した結果、ATS―R9は、血管を通じて透過し、脂肪細胞内に漸次内在化することを観察した(図14a)。白色の矢印は、脂肪細胞内に内在化するFITC―ATS―R9を示す(Scale Bar:50μm)。
【0170】
次に、免疫蛍光分析を通じて、脂肪組織内へのFITC―ATS―R9誘導能(ターゲット能、homing)を確認した。
【0171】
FITC―コンジュゲートされたATS―R9を肥満マウスC57BL/6Jに注入し、固定された脂肪組織部分をビオチン―コンジュゲートされた抗―FITC抗体と共に培養した。Cy3―コンジュゲートされたExtrAvidinをその信号増幅に使用した。多光子共焦点レーザースキャニング顕微鏡を用いてイメージ化して観察した結果、図14bに示したように、脂肪組織内にFITC―ATS―R9が誘導(homing)されることを確認した。
【0172】
最後に、in vivo遺伝子発現を確認するために、Red Fluorescence Protein(RFP)発現プラスミドをFITC―ATS―R9で濃縮し、オリゴ―ペプトプレックスを肥満マウスC57BL/6Jに注入した。何ら処置もしていないマウスを対照群として使用した。多光子共焦点レーザースキャニング顕微鏡を用いてイメージ化して観察した結果、RFP遺伝子発現が明確に確認された(図14c)。
【0173】
[実施例9]:sh―RNA及びサイレント遺伝子伝達能
本発明のATS―R9がin vitro及びin vivoでsh―RNA伝達と脂肪細胞へのサイレント遺伝子伝達において優れた効果を有するか否かを確認しようとした。
【0174】
まず、2μgのfabp4 sh―RNAを、ATS―R9、PEI及びリポフェクタミンによって3T3―L1成熟脂肪細胞にトランスフェクションさせ、遺伝子サイレンシング効率をRT―PCRで測定した。GAPDHを内生性対照群として使用した。その結果、Fabp4遺伝子サイレンシング効率は70%以上であった(図15)。
【0175】
9―1.体重減少効果
また、sh―FABP4処理後、体重減少も確認された(図16)。
【0176】
C57BL/6Jマウスに対しては、8週間、毎週2回ずつ30μgのsh―FABP4をATS―R9と共に処理し、オリゴ―ペプトプレックスを皮下に注射した。sh―Luciを対照群として使用した。
【0177】
その結果、sh―FABP4―ATS―R9オリゴ―ペプトプレックス処理されたグループは、8週後、体重の約20%が減少した。
【0178】
9―2.インスリン及びグルコース耐性(tolerance)テスト
また、インスリン及びグルコース耐性を観察した。
【0179】
8週間、毎週2回でC57BL/6Jマウスに対してsh―FABP4―ATS―R9オリゴ―ペプトプレックスを処理した。オリゴ―ペプトプレックスを皮下投与によって投与した。sh―Luciを対照群として使用した。
【0180】
sh―FABP4―ATS―R9オリゴ―ペプトプレックス処理されたグループが8週後にインスリン及びグルコースに対してさらに敏感になることも確認された(図17及び図18
【0181】
すなわち、本発明のATS―R9がin vitro及びin vivoでsh―RNA伝達と脂肪細胞へのサイレント遺伝子伝達において効果的なだけでなく、肥満及び肥満由来代謝症候群治療用遺伝子を伝達するときに体重を減少させ、さらに、インスリン及びグルコース敏感度を改善させた。
【0182】
[比較例2]:遺伝子伝達能の比較
(1)他の伝達体の脂肪細胞への遺伝子伝達能
PEIとlipofectaminを比較群とし、肥満脂肪細胞への遺伝子luciferase伝達能力を評価し、これを図19に示した。
【0183】
その結果、他の伝達体であるPEIとlipofectaminに比べて、ATS―R9の場合に肥満脂肪細胞への伝達効能に優れることを確認した。
【0184】
(2)脂肪細胞の分化前の分化後による遺伝子伝達能
脂肪細胞の分化前と分化後の遺伝子伝達効能を比較した結果を図20に示した。
【0185】
これを通じて、脂肪細胞の分化が進められて肥満脂肪細胞になっていくことによって、本発明のATS―R9の遺伝子伝達効能が増加することを確認することができた。
【0186】
(3)配列特異性による遺伝子伝達能
伝達遺伝子としてluciferaseを使用し、脂肪ターゲッティング配列としてScrambled ATSを使用して肥満脂肪細胞への遺伝子伝達効能を比較した。
その結果、図21で確認できるように、ATSの配列をスクランブルして伝達した場合、遺伝子伝達能力が確実に低下することを確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0187】
これら各結果を通じて、本発明のATS―R9ペプチド構造体が、分化後の脂肪細胞におけるプロヒビチンの過剰発現機構を通じて、成熟した「肥満脂肪細胞」を直接ターゲッティングし、遺伝子を伝達できる特異的機能及び効果を確認できるので、肥満に対する遺伝子治療方法に非常に有用に使用することができる。
図1
図2
図3
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図5
図6
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図8
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図11
図12
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図15
図16
図17
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図19
図20
図21