(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記処理水返送工程による前記処理水の前記原水槽への返送を停止し、前記処理水を前記濾過工程で使用された濾過器に供給して、当該濾過器の逆流洗浄を行う逆洗工程を更に備える請求項5に記載の水処理装置の運転方法。
前記処理水の一部を分流し、分流された当該処理水を流通させながら水質を検査し、検査された前記処理水を処理水槽に返送する処理水の水質検査工程を更に備える請求項1〜7の何れか一項に記載の水処理装置の運転方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、通常の上水道が使用できない非常時などにおいて、応急的に地下水を取水して、飲用水を得ることが求められている。しかしながら、従来の技術では、停止している水処理装置を、緊急で立ち上げるには時間を要していた。また、RO膜は乾燥や微生物の繁殖等に弱く、劣化の懸念がある為、不定期に利用される水処理装置に適用することが困難であり、応急対応の装置には不向きであった。
【0005】
そこで、RO膜を備えた水処理装置において、緊急で装置を立ち上げる際に、処理水を提供するまでの時間を短縮することが可能であり、待機状態におけるRO膜の劣化を抑制することが可能な
水処理装置の運転方法
、及び飲用水を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、原水を貯留する原水槽と、原水槽に貯留された被処理水を昇圧する昇圧手段と、当該昇圧手段によって昇圧された被処理水を処理するRO膜と、当該RO膜を透過した処理水を貯留する処理水槽と、処理水を装置外へ給水する給水部と、処理水槽に貯留された処理水を原水槽へ返送可能な処理水返送手段と、RO膜を透過しなかった濃縮水(RO膜濃縮水)を原水槽へ返送可能な濃縮水返送手段と、を備える水処理装置を提供する。
【0007】
この水処理装置は、例えば飲用水を製造する場合には、原水を受入れて原水槽で貯留し、貯留された被処理水を昇圧手段によって昇圧し、昇圧された被処理水をRO膜によって処理することができる。水処理装置は、RO膜を透過した処理水を、飲用水として提供することができる。水処理装置は、例えば、非常時のみに飲用水を提供し、通常時は、飲用水を提供しない待機状態としてもよい。
【0008】
この水処理装置は、処理水を処理水槽に貯留し、貯留された処理水を処理水返送手段によって原水槽へ返送すると共に、RO膜を透過しなかった濃縮水を、濃縮水返送手段によって原水槽へ返送することができる。水処理装置は、返送された処理水及び濃縮水を原水槽で貯留し、貯留された被処理水を昇圧手段によって昇圧し、昇圧された被処理水をRO膜へ供給することができる。水処理装置は、RO膜を透過した処理水と、RO膜を透過しなかった濃縮水との両方を、再び、原水槽へ戻すことができる。これにより、水処理装置は、処理水及び濃縮水を循環させる循環運転を行うことで、RO膜に被処理水を供給し続けることができる。水処理装置は、処理水を飲用水として装置外へ給水しない待機状態において、循環運転を行うことで、水処理装置の管路を清潔に保ち、さらにRO膜の劣化を防止することができる。
【0009】
水処理装置は、昇圧手段の上流側に配置され、原水槽から供給された被処理水中の不純物を分離する濾過器と、処理水を濾過器に供給して、当該濾過器を逆流洗浄する逆洗手段と、を備える構成でもよい。これにより、処理水を利用して、濾過器を逆流洗浄することで、濾過器の機能を回復させることができる。
【0010】
水処理装置は、処理水槽内に次亜塩素酸を注入する次亜塩素酸注入手段と、RO膜の上流側で、被処理水に還元剤を注入する還元剤注入手段と、を備える構成でもよい。これにより、原水槽へ返送される処理水に次亜塩素酸を注入することができ、装置内の殺菌を行うことができる。また、RO膜の上流側に還元剤を注入することができるので、被処理水中の次亜塩素酸を還元剤により還元した後に、被処理水中をRO膜に供給できる。従って、RO膜の次亜塩素酸による劣化を抑制することができる。
【0011】
水処理装置は、処理水槽内に次亜塩素酸を注入する次亜塩素酸注入手段と、昇圧手段の上流側で、被処理水に還元剤を注入する還元剤注入手段と、を備える構成でもよい。これにより、原水槽へ返送される処理水に次亜塩素酸を注入することができ、装置内の殺菌を行うことができる。また、昇圧手段の上流側に還元剤を注入することができるので、注入された還元剤は、昇圧手段によって拡散されて、被処理水中における次亜塩素酸を均一に還元することができる。従って、RO膜の次亜塩素酸による劣化をより好適に抑制することができる。
【0012】
水処理装置は、被処理水の一部を分流し、分流された当該被処理水を流通させながら水質を検査する被処理水の水質センサを更に備え、当該水質センサによって検査された被処理水を原水槽に返送する構成でもよい。これにより、循環する水の流量を減らすことなく、水質の管理を行うことができる。また、水処理装置では、殆どの領域が水で満たされており、検査後の水を合流可能な場所が限られているが、内部が大気圧に近い原水槽に注入することで、検査後の水を廃棄することなく循環させることができる。
【0013】
水処理装置は、処理水の一部を分流し、分流された当該処理水を流通させながら水質を検査する処理水の水質センサと、を更に備え、当該水質センサによって検査された処理水を処理水槽に返送する構成でもよい。これにより、循環する水の流量を減らすことなく、水質の管理を行うことができる。また、水処理装置では、殆どの領域が水で満たされており、検査後の水を合流可能な場所が限られているが、内部が大気圧に近い処理水槽に注入することで、検査後の水を廃棄することなく循環させることができる。
【0014】
水処理装置は、昇圧手段の上流側に配置され、原水槽から供給された被処理水中の不純物を分離する濾過器を、砂濾過装置及び/又は膜濾過装置とする構成でもよい。これにより、RO膜に供給する被処理水から不純物を好適に除去することができる。
【0015】
水処理装置は、原水槽に供給される原水に次亜塩素酸を注入する第二の次亜塩素酸注入手段を備える構成でもよい。これにより、原水を殺菌した上で原水槽に供給することができるため、水処理装置の管路をより清潔に保つことができる。
【0016】
本発明は、原水を原水槽に受入れて貯留し、原水槽に貯留された被処理水を、RO膜を用いて処理し、RO膜を透過した処理水を装置外へ給水可能な水処理装置の運転方法において、原水槽に貯留された被処理水を昇圧する昇圧工程と、昇圧工程で昇圧された被処理水を、RO膜を用いて処理する逆浸透膜処理工程と、RO膜を透過した処理水を前記原水槽へ返送する処理水返送工程と、RO膜濃縮水を原水槽へ返送する濃縮水返送工程と、を備える水処理装置の運転方法を提供する。
【0017】
本発明の水処理装置の運転方法では、原水槽で貯留された被処理水を昇圧し、昇圧された被処理水をRO膜によって処理する。この運転方法では、RO膜を透過した処理水が、原水槽に返送されると共に、RO膜を透過しなかった濃縮水も、原水槽に返送される。返送された処理水及び濃縮水は、原水槽で貯留され、再び昇圧されてRO膜に供給される。水処理装置の運転方法では、RO膜を透過した処理水と、RO膜を透過しなかった濃縮水との両方を、原水槽へ戻すことができる。これにより、処理水及び濃縮水を循環させる循環運転を行うことで、RO膜に被処理水を供給し続けることができる。水処理装置の運転方法では、処理水を飲用水として装置外へ給水しない待機状態において、循環運転を行うことで、RO膜の劣化を防止することができる。
【0018】
処理水返送工程では、処理水に次亜塩素酸を注入し、次亜塩素酸が注入された処理水を返送し、被処理水をRO膜に供給する前に被処理水に還元剤を注入してもよい。これにより、原水槽へ返送される処理水に次亜塩素酸を注入することができ、装置内の殺菌を行うことができる。また、被処理水は、注入された還元剤により次亜塩素酸を還元された後に、RO膜へ供給されるので、RO膜の次亜塩素酸による劣化が好適に抑制される。
【0019】
処理水返送工程では、処理水に次亜塩素酸を注入し、次亜塩素酸が注入された処理水を返送し、原水槽に貯留された被処理水を昇圧する前に被処理水に還元剤を注入してもよい。これにより、原水槽へ返送される処理水に次亜塩素酸を注入することができ、装置内の殺菌を行うことができる。また、注入された還元剤は、昇圧工程によって拡散されるので、被処理水中の次亜塩素酸は還元剤により均一に還元される。還元剤により次亜塩素酸を均一に還元した被処理水がRO膜に供給されるので、RO膜の次亜塩素酸による劣化がさらに好適に抑制される。
【0020】
水処理装置の運転方法は、昇圧工程の前に実行され、被処理水中の不純物を分離する濾過工程を更に備えていてもよい。これにより、昇圧工程及び逆浸透膜処理工程の前段において、被処理水中の不純物を分離することができる。
【0021】
水処理装置の運転方法は、処理水返送工程による処理水の原水槽への返送を停止し、処理水を濾過工程で使用された濾過器に供給して、当該濾過器の逆流洗浄を行う逆洗工程を更に備えていてもよい。これにより、処理水を利用して、濾過器を逆流洗浄することで、濾過器の機能を回復させることができる。
【0022】
水処理装置の運転方法は、被処理水の一部を分流し、分流された当該被処理水を流通させながら水質を検査し、検査された被処理水を原水槽に返送する被処理水の水質検査工程を更に備えていてもよい。これにより、循環する水の流量を減らすことなく、水質の管理を行うことができる。また、水処理装置では、殆どの領域が水で満たされており、検査後の水を合流可能な場所が限られているが、内部が大気圧に近い原水槽に注入することで、検査後の水を廃棄することなく循環させることができる。
【0023】
水処理装置の運転方法は、処理水の一部を分流し、分流された当該処理水を流通させながら水質を検査し、検査された処理水を処理水槽に返送する処理水の水質検査工程を更に備えていてもよい。これにより、循環する水の流量を減らすことなく、水質の管理を行うことができる。また、水処理装置では、殆どの領域が水で満たされており、検査後の水を合流可能な場所が限られているが、内部が大気圧に近い処理水槽に注入することで、検査後の水を廃棄することなく循環させることができる。
【0024】
水処理装置の運転方法は、処理水返送工程による処理水の返送を停止すると共に、濃縮水返送工程による濃縮水の返送を停止し、処理水及び濃縮水を装置外へ排出せずに、原水の原水槽への受入れを開始し、昇圧工程及び逆浸透膜処理工程を実行し当該逆浸透膜処理工程で処理された処理水を装置外へ給水することができる。これにより、非常時に処理水を飲用水として直ちに供給することができる。
【0025】
水処理装置の運転方法は、処理水返送工程による処理水の返送を停止すると共に、濃縮水返送工程による濃縮水の返送を停止し、処理水及び濃縮水を装置外へ排出した後又は排出と同時に、原水の原水槽への受入れを開始し、昇圧工程及び逆浸透膜処理工程を実行し当該逆浸透膜処理工程で処理された処理水を装置外へ給水することができる。処理水を装置外へ給水する前に水処理装置内の処理水及び濃縮水を排水した後又は排水と同時に、新たな原水を受入れて飲用水の製造を行うことができる。これにより、飲用水の利用者に安心感を与えることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の
水処理装置の運転方法
、及び飲用水を製造する方法によれば、待機状態におけるRO膜の劣化を抑制しつつ、緊急で装置を立ち上げる際に、処理水を提供するまでの時間を短縮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明による水処理装置及び水処理装置の運転方法の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0029】
図1に示す水処理装置10は、例えば非常時において、原水に逆浸透膜処理を施すことで飲用水を製造することができる装置である。水処理装置10は、通常時は、待機状態とし、非常時のみ飲用水を製造することとしてもよい。原水として、例えば地下水、貯水池に貯留された水などを使用することができる。
【0030】
水処理装置10は、取得した原水を貯留可能な原水槽11を備えている。原水槽11は、水を貯留可能な容器である。原水槽11には、例えば、通気管が接続され、内部は大気圧に維持されている。
【0031】
原水槽11は、原水を受け入れるための取水配管21が接続されている。原水は、取水配管21を通り、原水槽11内に供給される。取水配管21には、原水の受入れを停止可能な開閉弁41が設けられている。開閉弁41(流量調整部)が閉止されることで、原水の受入れが停止される。
【0032】
水処理装置10は、原水槽11内に次亜塩素酸を注入可能な注入管22(第2の次亜塩素酸注入手段)を有する。次亜塩素酸の注入管22は、取水配管21に接続されていてもよく、原水槽11に接続されていてもよい。
【0033】
原水槽11は、配管23を介して、砂ろ過器12(濾過器)に接続されている。配管23には、砂ろ過器12に供給される被処理水を送水するためのポンプ13が接続されている。被処理水は、原水槽11に貯留されていた水である。原水槽11に貯留された被処理水は、ポンプ13によって送水されて砂ろ過器12に供給される。
【0034】
砂ろ過器12は、被処理水中の固形物(不純物)を取り除くものである。砂ろ過器12は、濾材としての砂を容器内に収容している。被処理水は、砂ろ過器12の上部側から供給され、砂層を通過し、所定の大きさの固形物が取り除かれて、下部側から排出される。水処理装置10は、砂ろ過器12に代えて、その他の濾過器(膜濾過装置)を備える構成でもよい。その他の濾過器としては、MF膜(Microfiltration)、UF膜(Ultra filtration)等が挙げられる。
【0035】
砂ろ過器12の下部側には、固形物が取り除かれた被処理水が送水される配管24が接続されている。砂ろ過器12は、配管24を介して、プレフィルタ14に接続されている。砂ろ過器12を通過した被処理水は、配管24内を流通し、プレフィルタ14に供給される。プレフィルタ14は、砂ろ過器12の砂が流出した場合に、被処理水中に含まれる砂を除去する。プレフィルタ14は、砂を除去可能な濾材を容器内に有する。
【0036】
プレフィルタ14には、プレフィルタ14内を通過した被処理水を送水する配管25が接続されている。プレフィルタ14は、配管25を介して混合器15に接続されている。プレフィルタ14を通過した被処理水は、配管25内を流通し、混合器15に供給される。
【0037】
配管25には、還元剤を注入可能な注入管26(還元剤注入手段)が接続されている。還元剤は、被処理水中に含まれる次亜塩素酸を中和するものである。還元剤としては、SBS(NaHSO
3、重亜硫酸ソーダ)を用いることができる。
【0038】
また、配管25には、分散剤を注入可能な注入管27(分散剤注入手段)が接続されている。分散剤は、RO膜でのカルシウムの析出、シリカの析出を抑えるために注入されている。注入管27は、例えば、注入管26の下流側に設けられている。
【0039】
混合器15は、被処理水を混合するものであり、被処理水中に含まれる還元剤及び分散剤が拡散されて、濃度の均一化が図られる。
【0040】
混合器15には、混合器15内を通過した被処理水を送水する配管28が接続されている。混合器15は、配管28を介してRO膜設備16に接続されている。混合器15から排出された被処理水は、配管28に接続された高圧ポンプ17(昇圧手段)によって昇圧されてRO膜設備16に供給される。高圧ポンプ17は、被処理水を浸透圧よりも大きな圧力まで昇圧する。
【0041】
RO膜設備16は、被処理水を逆浸透膜処理するものであり、容器内にRO膜を備えている。RO膜設備16は、RO膜を透過した処理水と、RO膜を透過しなかった濃縮水(RO膜濃縮水)とに分けられる。水処理装置10は、複数のRO膜設備16を備え、上流側のRO膜設備16から送水された濃縮水を下流側のRO膜設備16に供給してもよい。
【0042】
RO膜設備16には、処理水が送水される配管29が接続されている。RO膜設備16は、配管29を介して処理水槽18に接続されている。RO膜設備16から送水された処理水は、配管29内を流通し、処理水槽18に供給される。
【0043】
RO膜設備16には、濃縮水が送水される配管30が接続されている。配管30は、水処理装置10の下水配管31に接続されている。下水配管31は、水処理装置10から排出される水(不要な水)を装置10外へ排出する配管である。配管30と下水配管31と間には、開閉弁42が設けられている。濃縮水を装置10外へ排水しない場合には、開閉弁42が閉じられている。
【0044】
処理水槽18は、処理水を貯留可能な容器である。処理水槽18には、例えば、通気管が接続され、内部は大気圧に維持されている。
【0045】
処理水槽18には、処理水槽18に貯留された処理水が送水される配管32が接続されている。配管32は、装置10外の受水槽に接続されている。例えば、処理水を飲用水として提供する場合には、処理水槽18に貯留された処理水は、装置10外の受水槽に供給される。配管32には、処理水を送水するための送水ポンプ19が接続されている。
【0046】
また、配管32には、開閉弁43(給水量調節部)が設けられている。処理水を飲用水として提供する場合には、開閉弁43が開放されて、処理水は配管32を通り、装置10外の受水槽に供給される。開閉弁43の弁の開度を調節することで、装置10外への飲用水の給水量を調整することができる。
【0047】
ここで、本実施形態の水処理装置10は、処理水槽18に貯留された処理水を原水槽11へ返送する処理水返送手段50と、RO膜設備16から排出された濃縮水を原水槽11へ返送する濃縮水返送手段60とを備えている。水処理装置10は、処理水及び濃縮水を原水槽11へ返送することができ、原水槽11に返送され水を再度、RO膜設備16に供給し、処理水及び濃縮水を循環させる循環運転を実行することができる。すなわち、水処理装置10は、飲用水を製造しない待機状態において、循環運転を実行することができる。
【0048】
処理水返送手段50は、配管32から分岐された処理水返送配管51を有する。処理水槽18は、配管32及び処理水返送配管51を介して、原水槽11に接続されている。配管32と処理水返送配管51との間には、開閉弁44が設けられている。開閉弁44が開放され、開閉弁43が閉じられた状態において、処理水槽18から原水槽11へ、処理水が返送される。処理水槽18に貯留された処理水は、送水ポンプ19によって送水され、配管32及び処理水返送配管51を通り、原水槽11へ供給される。
【0049】
濃縮水返送手段60は、配管30から分岐された濃縮水返送配管61を有する。RO膜設備16の濃縮水の出口は、配管30及び濃縮水返送配管61を介して、原水槽11に接続されている。配管30と濃縮水返送配管61との間には、開閉弁45が設けられている。開閉弁45が開放され、開閉弁42が閉じられた状態において、RO膜設備16から原水槽11へ濃縮水が返送される。RO膜設備16から排出された濃縮水は、配管30及び濃縮水返送配管61を通り、原水槽11へ供給される。水処理装置10は、例えば、濃縮水を貯留可能な貯留槽を備えている構成でもよい。RO膜設備16から排出された濃縮水を貯留した後に、原水槽11へ送水してもよい。
【0050】
また、水処理装置10は、処理水槽18内に次亜塩素酸を注入可能な注入管33(次亜塩素酸注入手段)を有する。次亜塩素酸を処理水槽18内に供給することで、処理水返送配管51内を流れる処理水を消毒することができる。水処理装置10を循環する処理水の水質を維持することができる。
【0051】
水処理装置10は、処理水を砂ろ過器12に供給して、砂ろ過器12の逆流洗浄を行う逆流洗浄手段70を備えていてもよい。逆流洗浄手段70は、処理水返送配管51から分岐された逆洗用配管71を有する。処理水槽18は、配管32、処理水返送配管及び逆洗用配管71を介して、砂ろ過器12の出口側12bに接続されている。逆洗用配管71は、砂ろ過器12の出口側12bに接続された、配管24に接続されている。
【0052】
配管24には、開閉弁46が設けられている。逆洗用配管71は、開閉弁46よりも砂ろ過器12側に接続されている。また、逆洗用配管71には、開閉弁47が設けられている。処理水返送配管51には、逆洗用配管71との分岐点より下流側(原水槽11側)に開閉弁48が設けられている。開閉弁47が開放され、開閉弁46,48が閉じられた状態において、処理水が処理水返送配管51から砂ろ過器12の出口側12bに供給される。
【0053】
砂ろ過器12の入口側12aは、配管23から分岐された下水配管31に接続されている。下水配管31には、開閉弁49が設けられている。また、配管23には、下水配管31との分岐点より上流側(送水ポンプ13と砂ろ過器12との間)に逆止弁が設けられている。逆止弁は、砂ろ過器12側から送水ポンプ13側への水の流入を防止する。開閉弁49が開放された状態において、砂ろ過器12の入口側12aから排水された洗浄後の水が、下水配管31を通り、装置10外へ廃棄される。
【0054】
砂ろ過器12の出口側12bに処理水を供給して逆流洗浄を行うことにより、砂ろ過器12の砂がまき上がり、砂上に堆積していた固形物、砂に付着していた固形物などが、水流によって取り除かれる。固形物を含む排水は、砂ろ過器12の入口側12から排出される。これにより、砂ろ過器12の機能を回復させることができる。
【0055】
次に、
図2を参照して、水処理装置10の水質センサについて説明する。水処理装置10は、被処理水の水質を検査する水質センサ81、及び処理水の水質を検査する水質センサ82を備えている。
図2では、処理水槽18に貯留された処理水を検査する場合について示している。なお、原水槽11に貯留された被処理水を検査する場合も同様の構成であるため、
図2では、被処理水を検査する場合の構成については、括弧内に符号を付している。
【0056】
処理水の水質センサ82に供給される処理水は、配管32から分岐された配管83を通り、水質センサ82に供給される。配管83には、送水ポンプ84が接続されている。処理水槽18に貯留された処理水は、配管32を通り、処理水の一部が分流されて配管83内に流入する。分流された処理水は、送水ポンプ84によって送水されて水質センサ82に供給される。
【0057】
水質センサ82には、検査後の処理水を送水する配管85が接続されている。水質センサ82は、配管85を介して処理水槽18に接続されている。検査後の処理水は、配管85を通り、処理水槽18へ戻される。これにより、検査後の処理水を廃棄することなく、処理水槽18に戻すことができる。そのため、新たな原水を受入れることなく、循環運転による流量を維持することができる。
【0058】
被処理水の水質センサ81に供給される処理水は、配管23から分岐された配管83を通り、水質センサ81に供給される。配管83には、送水ポンプ84が接続されている。原水槽11に貯留された被処理水は、配管23を通り、被処理水の一部が分流されて配管83内に流入する。分流された被処理水は、送水ポンプ84によって送水されて水質センサ81に供給される。
【0059】
水質センサ81には、検査後の被処理水を送水する配管85が接続されている。水質センサ81は、配管85を介して原水槽11に接続されている。検査後の被処理水は、配管85を通り、原水槽11へ戻される。これにより、検査後の被処理水を廃棄することなく、原水槽11に戻すことができる。そのため、新たな原水を受入れることなく、循環運転による流量を維持することができる。
【0060】
なお、水質センサ81,82にとしては、水のPH値を測定するPH計、水の濁り度合や水の色を測定する濁度計・色度計、水に含まれる塩分を測定する残塩計などが挙げられる。
【0061】
次に、水処理装置10の運転方法について説明する。水処理装置10は、通常時において飲用水を製造しない待機状態となり、例えば上水道が使用できない非常時において飲用水を製造する給水状態となる。
【0062】
図3は、水処理装置10の運転方法の手順を示す工程図である。水処理装置10の運転方法では、原水の受入工程(ステップS1)、スタートアップ工程(ステップS2)、循環運転工程(ステップS3)、濃縮水の排水工程(ステップS4)、逆流洗浄工程(ステップS5)、濃縮水及び処理水の排水工程(ステップS6)、飲用水製造工程(ステップS7)を実行する。
【0063】
原水の受入工程S1では、水処理装置10は、原水の受入を行う。水処理装置10は、例えば原水として、地下水を汲み上げ、原水槽11に貯留する。このとき、次亜塩素酸を注入しながら、原水を受入れる。
【0064】
スタートアップ工程S2では、原水槽11に貯留された被処理水(原水)に対して逆浸透膜処理を開始して、処理水を貯留する。
図4は、スタートアップ工程における手順を示す工程図である。スタートアップ工程S2は、具体的には、ろ過工程(ステップS11)、還元剤注入工程(ステップS12)、分散剤注入工程(ステップS13)、混合工程(ステップS14)、昇圧工程(ステップS15)、逆浸透膜処理工程(ステップS16)、及び処理水貯留工程(ステップS17)を実行する。スタートアップ工程S2では、処理水が一定量分、貯留されるまで、原水の受入が継続されている。
【0065】
ろ過工程S11では、砂ろ過器12を用いて被処理水中の固形物を除去する。原水槽11に貯留された被処理水は、配管23を通り砂ろ過器12に供給され、固形物が除去される。砂ろ過器12から送水された処理水は、配管24を通りプレフィルタ14に供給される。砂ろ過器12から砂が流出した場合には、プレフィルタ14によって被処理水中の砂が除去される。
【0066】
還元剤注入工程S12では、被処理水中に還元剤を注入する。還元剤は、注入管26を通じて、配管25内に注入される。分散剤注入工程S13では、被処理水中に分散剤を注入する。分散剤は、注入管27を通じて、配管25内に注入される。
【0067】
混合工程S14では、被処理水中の還元剤及び分散剤を混合して、被処理水中の還元剤の濃度及び分散剤の濃度を均一化させる。混合工程S14では、被処理水を混合器15に供給して、被処理水中の還元剤及び分散剤の混合を行う。
【0068】
昇圧工程S15では、高圧ポンプ17を用いて、被処理水を昇圧する。昇圧工程S15では、混合器15から排出された被処理水を高圧ポンプ17に供給し、逆浸透膜処理に必要な圧力まで昇圧する。
【0069】
逆浸透膜処理工程S16では、RO膜設備16を用いて逆浸透膜処理を行う。逆浸透膜処理工程S16では、高圧ポンプ17で昇圧された被処理水をRO膜設備16に供給し、被処理水を、RO膜を透過した処理水と、RO膜を透過しなかった濃縮水とに分離する。
【0070】
処理水貯留工程S17では、処理水を処理水槽18に貯留する。処理水貯留工程S17では、RO膜設備16から排出された処理水を処理水槽18に供給する。このとき、RO膜設備16から排出された濃縮水は、装置10外へ排出される。また、処理水貯留工程S17では、処理水槽18への次亜塩素酸の注入を行う。
【0071】
スタートアップ工程S2は、処理水槽18に処理水が一定量、貯留されるまで実行される。処理水が一定量、貯留された後、循環運転工程S3に進む。
【0072】
循環運転工程S3では、濃縮水及び処理水を原水槽11へ戻し、循環運転を実行する。
図5は、循環運転工程における手順を示す工程図である。循環運転工程S3は、具体的には、ろ過工程(ステップS11)、還元剤注入工程(ステップS12)、分散剤注入工程(ステップS13)、混合工程(ステップS14)、昇圧工程(ステップS15)、逆浸透膜処理工程(ステップS16)、処理水貯留工程(ステップS17)、処理水返送工程(ステップS21)、及び濃縮水返送工程(ステップS22)を実行する。循環運転工程S3は、一定期間、継続される。循環運転工程S3を実行する際には、原水の受入を停止する。また、処理水の装置外への給水を停止している状態である。
【0073】
ろ過工程(ステップS11)、還元剤注入工程(ステップS12)、分散剤注入工程(ステップS13)、混合工程(ステップS14)、昇圧工程(ステップS15)、逆浸透膜処理工程(ステップS16)、処理水貯留工程(ステップS17)は、スタートアップ工程S2と同じであるためここでの説明は省略する。
【0074】
循環運転工程S3では、処理水貯留工程S17の後に、処理水返送工程S21を実行する。処理水返送工程S21では、処理水槽18に貯留された処理水を原水槽11へ返送する。処理水は、送水ポンプ19によって送水され、処理水返送配管51を通り、原水槽11に供給される。
【0075】
循環運転工程S3では、RO膜設備16から排出された濃縮水を原水槽11返送する濃縮水返送工程S22を実行する。濃縮水は、濃縮水返送配管61を通り、原水槽11に供給される。
【0076】
原水槽11に返送された処理水及び濃縮水は、再度、砂ろ過器12へ供給されて、ろ過工程S11が実行される。同様に、ステップS12〜S17、S21、S22が繰り返し実行される。これにより、水処理装置10の待機状態において、処理水及び濃縮水を循環させる循環運転を行うことができる。この循環運転により、RO膜に水を供給し続けることができるので、RO膜の劣化を抑制することができる。
【0077】
濃縮水の排水工程S4では、循環運転を停止して濃縮水の排水を行う。例えば、1ヶ月間の循環運転の継続後、飲用水の製造を実行しない場合には、ステップS4に進む。
【0078】
濃縮水の排水工程S4では、処理水槽18に砂ろ過器12に逆洗可能な水量が貯水されるまで、濃縮水を廃棄する。このとき、処理水の原水槽11への返送、及び濃縮水の原水槽11への返送は、停止されている。RO膜設備16から排出された濃縮水は、装置外へ廃棄される。RO膜設備16から排出された処理水は、処理水槽18に貯留される。
【0079】
逆流洗浄工程S5は、処理水を砂ろ過器12へ供給して、砂ろ過器12の逆流洗浄を行う。処理水を砂ろ過器12の出口側12bに供給し、砂ろ過器12からの排水は、入口側12aから排出して、装置外へ廃棄する。これにより、砂ろ過器12の機能を回復させることができる。
【0080】
逆流洗浄工程S5の実行後、再び、スタートアップ工程S2を実行する。水処理装置10の待機状態において、飲用水を製造しない場合には、ステップS2〜S5を繰り返す。
【0081】
例えば、非常時において、飲用水を製造する必要が生じた場合には、ステップS6及びS7を実行する。ここでは、循環運転工程S3の実行中に、ステップ6及びS7に移行する場合について説明する。
【0082】
循環運転中に、飲用水を製造することが求められた場合には、濃縮水及び処理水の排水工程S6に進む。濃縮水及び処理水の排水工程S6では、循環運転を停止して濃縮水及び処理水の排水を行う。処理水槽18に貯留されていた処理水は、下水配管31を通り、装置外へ排出される。排水工程S6は、処理水槽18が空になるまで実行される。
【0083】
濃縮水及び処理水の排水工程S6の実行後、飲用水の製造工程S7が実行される。飲用水の製造工程S7では、原水を原水槽11に貯留した後、ステップS11〜S17を実行する。処理水槽18に貯留された処理水は、飲用水として装置外へ給水される。RO膜設備16から排出された濃縮水は、下水配管31を通り、装置外11へ廃棄される。
【0084】
また、飲用水を装置外へ提供する場合には、処理水中に中和剤が供給されて、pHを調整したのちに装置外へ給水される。
【0085】
また、循環運転工程S3及び飲用水製造工程S7の実行中には、処理水の水質検査及び被処理水の水質検査が実行されている。処理水の一部は、分流されて水質センサ82に供給される。検査後の処理水は、処理水槽18に戻される。被処理水の一部は、分流されて水質センサ81に供給される。検査後の被処理水は、原水槽11に戻される。
【0086】
このような水処理装置10及び運転方法によれば、処理水及び濃縮水を循環させる循環運転を行うことで、RO膜に被処理水を供給し続けることができる。水処理装置10は、処理水を飲用水として装置外へ給水しない待機状態において、循環運転を行うことで、水処理装置10の管路を清潔に保ち、さらに、RO膜の劣化を防止することができる。また、非常時において、飲用水の製造工程に移行する場合には、速やかに飲用水の製造を実行することができる。
【0087】
また、水処理装置10は、処理水槽18内に次亜塩素酸を注入する注入管33(次亜塩素酸注入手段)と、RO膜設備16の上流側で、被処理水に還元剤を注入する注入管26(還元剤注入手段)と、を備えている。これにより、原水槽11へ返送される処理水に次亜塩素酸を注入することができ、装置10内の殺菌を行うことができる。また、RO膜設備18の上流側に還元剤を注入することができるので、被処理水中の次亜塩素酸を還元剤により還元した後に、被処理水をRO膜設備16に供給できる。従って、RO膜の次亜塩素酸による劣化を抑制することができる。
【0088】
また、水処理装置10は、原水槽11に供給される原水に次亜塩素酸を注入する注入管22(第二の次亜塩素酸注入手段)を備えている。これにより、原水を殺菌した上で原水槽11に供給することができるため、水処理装置10の管路をより清潔に保つことができる。
【0089】
以上、本発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態では、非常時に飲用水を製造する水処理装置について説明しているが、常時飲用水を製造する水処理装置10に本発明を適用してもよい。例えば、水処理装置10の下流側の装置において、保全作業を行う場合などに、飲用水の製造を中止して、処理水及び濃縮水を循環させてもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、処理水及び濃縮水を別々に原水槽11へ返送しているが、処理水及び濃縮水を合流させた後に、原水槽11へ返送してもよい。
【0091】
また、上記実施形態の運転方法では、ステップS6において処理水の排水を実施しているが、処理水を装置外へ排出せずに原水の原水槽11への受入れを開始し、昇圧工程S15及び逆浸透膜処理工程S16を実行し、当該逆浸透膜処理工程S16で処理された処理水を装置10外へ給水してもよい。
【0092】
また、上記実施形態の運転方法では、ステップS6において処理水及び濃縮水を装置外へ排水した後に、原水の原水槽11への受入れを開始しているが、処理水及び濃縮水の装置外への排水と同時に、原水の原水槽11への受入れを開始し、昇圧工程S15及び逆浸透膜処理工程S16を実行し、当該逆浸透膜処理工程S16で処理された処理水を装置10外へ給水してもよい。