(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ロジック部は、複数相の位置信号を検出し、前記無通電期間に前記複数相の位置信号のうち一相の位置信号の変化と、他の一相の位置信号の変化とに基づいて、前記パルス周期を算出することを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
前記ロジック部は、前記ロータの停止中に生成される前記位置信号に応じた通電パターンで強制転流を開始するように、前記ブラシレスDCモータの通電制御を行うことを特徴とする請求項4に記載のモータ駆動装置。
前記位置信号生成部は、ホールセンサまたはホールICからホール信号の入力を受けて前記位置信号を生成することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載のモータ駆動装置。
前記位置信号生成部は、モータコイルに生じる誘起電圧を監視して前記位置信号を生成することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載のモータ駆動装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、極数の少ないブラシレスDCモータ(2極や4極など)を始動する手法として、上記の強制転流方式を採用した場合には、(1)強制転流周波数の合わせ込みが困難である、(2)強制転流時の回転リップルによって始動不良が生じる、(3)強制転流時の回転リップルによる騒音が大きい、という課題があった。
【0007】
そのため、極数の少ないブラシレスDCモータを始動する手法としては、上記の強制転流方式ではなく、120°通電方式でロータの回転を開始し、途中から180°通電制御に切り替える方式が採用されていた。ただし、本方式を採用した場合には、120°通電方式でロータを回転させるときの駆動音(モータ始動音)が大きいという課題があった。
【0008】
本発明は、本願の発明者らにより見出された上記の問題点に鑑み、ブラシレスDCモータを静粛かつ円滑に始動することが可能なモータ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明に係るモータ駆動装置は、ブラシレスDCモータのロータ位置に応じた位置信号を生成する位置信号生成部と;前記ブラシレスDCモータを始動するに際して、所定の強制転流周波数に応じた相切替タイミングで強制転流を開始した直後に無通電期間を設け、ロータの惰性回転中に生成される前記位置信号に応じた相切替タイミングで通常転流を開始するように、前記ブラシレスDCモータの通電制御を行うロジック部と;を有する構成(第1の構成)とされている。
【0010】
なお、第1の構成から成るモータ駆動装置において、前記ロジック部は、前記ブラシレスDCモータの180°通電制御または150°通電制御を行う構成(第2の構成)にするとよい。
【0011】
また、第2の構成から成るモータ駆動装置にて、前記ロジック部は、強制転流期間から前記無通電期間へ移行した後、前記ロータの惰性回転中に生成される前記位置信号のパルス周期を検出することができた時点で、前記無通電期間から通常転流期間へ移行するように、前記ブラシレスDCモータの通電制御を行う構成(第3の構成)にするとよい。
【0012】
また、第3の構成から成るモータ駆動装置において、前記ロジック部は、前記ロータの停止中に生成される前記位置信号に応じた通電パターンで強制転流を開始するように、前記ブラシレスDCモータの通電制御を行う構成(第4の構成)にするとよい。
【0013】
また、第4の構成から成るモータ駆動装置において、前記ロジック部は、前記強制転流期間を可変制御する構成(第5の構成)にするとよい。
【0014】
また、第4または第5の構成から成るモータ駆動装置において、前記ロジック部は、前記強制転流周波数を可変制御する構成(第6の構成)にするとよい。
【0015】
また、第1〜第6いずれかの構成から成るモータ駆動装置において、前記位置信号生成部は、ホールセンサまたはホールICからホール信号の入力を受けて前記位置信号を生成する構成(第7の構成)にするとよい。
【0016】
また、第1〜第6いずれかの構成から成るモータ駆動装置において、前記位置信号生成部は、モータコイルに生じる誘起電圧を監視して前記位置信号を生成する構成(第8の構成)にするとよい。
【0017】
また、本発明に係る電子機器は、ブラシレスDCモータと、前記ブラシレスDCモータの駆動制御を行う上記第1〜第8いずれかの構成から成るモータ駆動装置と、を有する構成(第9の構成)とされている。
【0018】
なお、上記第9の構成から成る電子機器において、前記ブラシレスDCモータは、ロータの極数が2または4である構成(第10の構成)にするとよい。
【0019】
また、本発明に係る車両は、上記第9または第10の構成から成る電子機器を有する構成(第11の構成)とされている。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るモータ駆動装置によれば、ブラシレスDCモータを静粛かつ円滑に始動することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<ブロック図>
図1は、3相ブラシレスDCモータを備えた電子機器の一構成例を示すブロック図である。本構成例の電子機器Xは、半導体装置1と、ドライバ2と、3相ブラシレスDCモータ3(以下ではモータ3と略称する)と、ホールセンサ4と、を有する。
【0023】
半導体装置1は、モータ3の駆動制御を行うモータ駆動装置(いわゆるモータドライバIC)であり、位置信号生成部11と、ロジック部12と、プリドライバ13と、チャージポンプ14と、を有する。
【0024】
位置信号生成部11は、モータ3のロータ位置に応じた位置信号(HU、HV、HW)を生成する回路ブロックであり、モータ3の各相(U相、V相、W相)毎に一つずつ設けられたヒステリシス付きのホールコンパレータ11U、11V、11Wを含む。ホールコンパレータ11U、11V、11Wは、各相のホールセンサ4U、4V、4Wから各々入力される正負極性のホール信号(HU+/HU−、HV+/HV−、HW+/HW−)を各々差動増幅することにより、上記の位置信号(HU、HV、HW)を生成する。
【0025】
ロジック部12は、その基本的な動作として、位置信号(HU、HV、HW)に応じた相切替タイミングで転流を行うように各相のプリドライバ駆動信号(uh/ul、vh/vl、wh/wl)を生成してモータ3の180°通電制御を行う。また、ロジック部12は、外部入力される回転速度制御信号S1に応じてモータ3の回転速度を変化するように各相のプリドライバ駆動信号をPWM[pulse width modulation]制御する。なお、ロジック部12は、回転速度制御信号S1としてアナログ電圧とパルス幅変調信号の入力を受け付けることができる。また、ロジック部12は、強制転流周波数制御信号S2に応じて強制転流周波数(モータ3の始動時に実施される強制転流の周波数)を可変制御する。また、ロジック部12は、強制転流期間制御信号S3に応じて強制転流期間(強制転流中の通電パターン数)を可変制御する。
【0026】
なお、ロジック部12は、新規なモータ始動シーケンスにより、モータ3を静粛かつ円滑に始動することが可能である。この点については、後ほど詳細に説明する。
【0027】
プリドライバ13は、ロジック部12から入力される各相のプリドライバ駆動信号(uh/ul、vh/vl、wh/wl)に所定の信号処理(レベルシフト処理や波形整形処理など)を施すことにより、各相のドライバ駆動信号(UH/UL、VH/VL、WH/WL)を生成し、これを外付けのドライバ2に出力する。
【0028】
チャージポンプ14は、電源電圧VCCから昇圧電圧VG(プリドライバ電源電圧)を生成し、これをプリドライバ13に出力する。
【0029】
なお、半導体装置1には、上記構成要素のほか、内部基準電圧生成部、スタンバイ制御部、進角制御部、ソフトスタート制御部、基準クロック発振器、キャリア周波数発振器、各種保護部(過電圧保護部、過電流保護部、温度保護部、ロック保護部など)が集積化されているが、ここでは詳細な説明を割愛する。
【0030】
ドライバ2は、各相のドライバ駆動信号(UH/UL、VH/VL、WH/WL)に応じて、各相の通電信号(U、V、W)を生成するパワー出力段であり、パワートランジスタ21〜26(MOSFET[metal oxide semiconductor field effect transistor]やIGBT[insulated gate bipolar transistor]など)を含む。上側パワートランジスタ21、23、25のドレインは、いずれも、電源電圧VCCの印加端に接続されている。上側パワートランジスタ21、23、25のソース及びバックゲートと、下側パワートランジスタ22、24、26のドレインは、それぞれモータ3の各相端子に接続されている。下側パワートランジスタ22、24、26のソース及びバックゲートは、いずれも接地端に接続されている。なお、本構成例では、全てのパワートランジスタ21〜26としてNチャネル型を用いているが、上側パワートランジスタ21、23、25としてはPチャネル型を用いることも可能である。この場合には、半導体装置1のチャージポンプ14を省略することができる。
【0031】
モータ3は、
図2で示すように、4極の永久磁石を有するロータ31と、各々にコイルが巻き回された3スロットのステータ32U、32V、32Wを含む構造とされている。なお、極数とスロット数との組み合わせは、4極3スロットに限定されるものではなく、他の組み合わせ(2極3スロットや4極6スロットなど)を採用することも可能である。特に、モータ3として、極数の少ないブラシレスDCモータ(2極や4極など)が使用される場合には、モータ始動の静粛性や円滑性を高める上で、後述するモータ始動シーケンスが有効に機能する。ただし、モータ3として、極数の多いブラシレスDCモータ(12極や16極など)を使用することも何ら妨げられるものではない。
【0032】
ホールセンサ4は、
図2で示すように、各相のステータ32U、32V、32Wに対して電気角で同位相となる位置に各々設けられた各相のホールセンサ4U、4V、4Wを含み、ロータ31の磁界を検出してアナログ電圧信号(ホール信号)を生成する。なお、ホールセンサ4に代えて矩形波信号を生成するホールICを用いても構わない。この場合、半導体装置1のホールコンパレータ11U、11V、11Wを省略することもできる。ただし、ホールセンサとホールICいずれの外部接続にも対応するためには、半導体装置1にホールコンパレータ11U、11V、11Wを設けておくことが望ましい。
【0033】
<180通電制御>
図3は、180°通電時におけるドライバ駆動信号(UH/UL、VH/VL、WH/WL)と通電信号(U、V、W)の挙動を示すタイムチャートである。また、
図4は、180°通電時におけるホール信号(HU+/HU−、HV+/HV−、HW+/HW−)と位置信号(HU、HV、HW)の挙動を示すタイムチャートである。
【0034】
電気角0°〜60°(フェイズ(1))では、ドライバ駆動信号UH、VL、WHがハイレベルとされ、ドライバ駆動信号UL、VH、WLがローレベルとされるので、パワートランジスタ21、24、25がオンとなり、パワートランジスタ22、23、26がオフとなる。その結果、通電信号U、Wがハイレベルとなり、通電信号Vがローレベルとなるので、モータ3にはU相とW相からV相端子に向けて駆動電流が流れる。このとき、位置信号HU、HWはハイレベルとなり、位置信号HVはローレベルとなる。
【0035】
電気角60°〜120°(フェイズ(2))では、ドライバ駆動信号UH、VL、WLがハイレベルとされ、ドライバ駆動信号UL、VH、WHがローレベルとされるので、パワートランジスタ21、24、26がオンとなり、パワートランジスタ22、23、25がオフとなる。その結果、通電信号Uがハイレベルとなり、通電信号V、Wがローレベルとなるので、モータ3にはU相からV相とW相に向けて駆動電流が流れる。このとき、位置信号HUはハイレベルとなり、位置信号HV、HWはローレベルとなる。
【0036】
電気角120°〜180°(フェイズ(3))では、ドライバ駆動信号UH、VH、WLがハイレベルとされ、ドライバ駆動信号UL、VL、WHがローレベルとされるので、パワートランジスタ21、23、26がオンとなり、パワートランジスタ22、24、25がオフとなる。その結果、通電信号U、Vがハイレベルとなり、通電信号Wがローレベルとなるので、モータ3にはU相とV相からW相に向けて駆動電流が流れる。このとき、位置信号HU、HVはハイレベルとなり、位置信号HWはローレベルとなる。
【0037】
電気角180°〜240°(フェイズ(4))では、ドライバ駆動信号UL、VH、WLがハイレベルとされ、ドライバ駆動信号UH、VL、WHがローレベルとされるので、パワートランジスタ22、23、26がオンとなり、パワートランジスタ21、24、25がオフとなる。その結果、通電信号Vがハイレベルとなり、通電信号U、Wがローレベルとなるので、モータ3にはV相からU相とW相に向けて駆動電流が流れる。このとき、位置信号HVはハイレベルとなり、位置信号HU、HWはローレベルとなる。
【0038】
電気角240°〜300°(フェイズ(5))では、ドライバ駆動信号UL、VH、WHがハイレベルとされ、ドライバ駆動信号UH、VL、WLがローレベルとされるので、パワートランジスタ22、23、25がオンとなり、パワートランジスタ21、24、26がオフとなる。その結果、通電信号V、Wがハイレベルとなり、通電信号Uがローレベルとなるので、モータ3にはV相とW相からU相に向けて駆動電流が流れる。このとき、位置信号HV、HWはハイレベルとなり、位置信号HUはローレベルとなる。
【0039】
電気角300°〜360°(フェイズ(6))では、ドライバ駆動信号UL、VL、WHがハイレベルとされ、ドライバ駆動信号UH、VH、WLがローレベルとされるので、パワートランジスタ22、24、25がオンとなり、パワートランジスタ21、23、26がオフとなる。その結果、通電信号Wがハイレベルとなり、通電信号U、Vがローレベルとなるので、モータ3にはW相からU相とV相に向けて駆動電流が流れる。このとき、位置信号HWはハイレベルとなり、位置信号HU、HVはローレベルとなる。
【0040】
このように、180°通電方式では、互いに120°ずつ位相をずらしながら、通電信号(U、V、W)の論理レベルが180°毎に切り替えられる。なお、
図3ないし
図4では、図示を簡単とすべく、上側ドライバ駆動信号UH、VH、WHと下側ドライバ駆動信号UL、VL、WLが互いの論理反転信号として描写されているが、実際には、貫通電流の防止を目的として、上側ドライバ駆動信号UH、VH、WHがローレベルとなってから下側ドライバ駆動信号UL、VL、WLがハイレベルとなるように、ないしは、下側ドライバ駆動信号UL、VL、WLがローレベルとなってから上側ドライバ駆動信号UH、VH、WHがハイレベルとなるように、所定のデッドタイム(上下パワートランジスタの同時オフ時間)が設けられる。
【0041】
<モータ始動シーケンス>
図5は、ロジック部12によるモータ始動シーケンスの一例を示すタイムチャートであって、縦軸はモータ3の回転数を示しており、横軸は時間を示している。
【0042】
ロジック部12は、モータ3の始動に際して、強制転流期間T1から無通電期間T2を経て通常転流期間T3に至るように、モータ3の180°通電制御を行う。
【0043】
まず、ロジック部12は、強制転流期間T1(時刻t11〜t12)において、ロータ31の停止中に生成される位置信号(HU、HV、HW)からロータ31の初期位置を検出し、これに応じた通電パターンでモータ3の強制転流を開始するように、モータ3の180°通電制御を行う。
【0044】
例えば、ロータ31の停止中に生成される位置信号(HU、HV、HW)の論理パターンが(H、L、H)である場合には、
図3ないし
図4のフェイズ(1)に相当することから、ロジック部12は、フェイズ(1)での通電パターンを起点として、所定の強制転流周波数に応じた相切替タイミングで、ドライバ駆動信号(UH/UL、VH/VL、WH/WL)の通電パターンを順次切り替えていくことにより、モータ3の強制転流を行う。
【0045】
ところで、従来のモータ始動シーケンスでは、モータの回転速度が所定値に達するまで強制転流制御を継続した後、180°通電制御への切り替えが行われていた。そのため、モータ特性に応じて強制転流周波数を合わせ込んでおかなければ、モータの始動不良(
図6を参照)や騒音を生じるおそれがあった。
【0046】
一方、今回提案するモータ始動シーケンスにおいて、強制転流期間T1に実施されるモータ3の強制転流は、モータ3を継続的に回転させるためのものではなく、ロータ31にある程度の回転力を与えることにより、位置信号(HU、HV、HW)がロータ位置に応じて周期的に変動する状態を生み出すためのものである。
【0047】
従って、今回提案するモータ始動シーケンスでは、強制転流期間T1が非常に短い期間(好ましくは電気角の一周期(360°)よりも短い期間)に設定されており、モータ3の強制転流はその開始直後に終了される。
【0048】
なお、強制転流期間T1の長さ(通電パターン数)については、強制転流期間制御信号S3を用いて任意に調整することができる。また、強制転流周波数についても、強制転流周波数制御信号S2を用いて任意に調整することができる。ただし、先にも述べた通り、強制転流期間T1において実施されるモータ3の強制転流は、モータ3を継続的に回転させるためのものではないので、強制転流周波数の合わせ込みについては、必ずしも厳密に行う必要はない。
【0049】
強制転流期間T1が経過した後、ロジック部12は、無通電期間T2(時刻t12〜t13)において、モータ3の強制転流を停止し、ロータ31を惰性で回転させる。ロータ31が惰性で回り続けている間、位置信号(HU、HV、HW)は、ロータ位置に応じて周期的に変動する。
【0050】
なお、3相の位置信号(HU、HV、HW)のうち、第1相の位置信号にパルスエッジが生じてから第2相の位置信号にパルスエッジが生じるまでの時間(パルス周期)は、ホール周期Tの1/6に相当する。従って、位置信号(HU、HV、HW)のパルス周期を検出すれば、ホール周期Tを逆算することができる。
【0051】
例えば、位置信号HUの立上りエッジ直前に無通電期間T2が開始された場合、ホール周期Tを検出するためには、位置信号HUの立上りエッジから位置信号HWの立下りエッジまでの時間をカウントすることになる。従って、無通電期間T2は、位置信号HUの立上りエッジ直前から少なくとも位置信号HWの立下りエッジ直後まで継続すれば足りる。
【0052】
一方、位置信号HUの立上りエッジ直後に無通電期間T2が開始された場合、ホール周期Tを検出するためには、位置信号HWの立下りエッジから位置信号HVの立上りエッジまでの時間をカウントすることになる。従って、無通電期間T2は、位置信号HUの立上りエッジ直後から少なくとも位置信号HVの立上りエッジ直後まで継続する必要がある。
【0053】
上記を鑑みると、3相の位置信号(HU、HV、HW)からホール周期Tを検出するために必要な無通電期間T2は、T/6<T2<T/3の範囲で変動することが分かる。一方、3相の位置信号(HU、HV、HW)のうち、いずれか1相の位置信号からホール周期Tを検出する場合には、無通電期間T2がT/2<T2<Tの範囲で変動する。無通電期間T2が短いほどロータ31の回転速度が低下しにくいことから、ホール周期Tの検出には、3相全ての位置信号(HU、HV、HW)を用いることが望ましいと言える。
【0054】
その後、ロジック部12は、位置信号(HU、HV、HW)のパルス周期Tを検出することができた時点で、無通電期間T2から通常転流期間T3(時刻t13〜)へ移行し、上記のパルス周期Tに応じた相切替タイミングで通常転流を開始するように、モータ3の180°通電制御を行う。そして、時刻t13以降も、ロジック部12は、電気角60°毎に位置信号(HU、HV、HW)のパルス周期Tの更新を行い、最新のパルス周期Tに応じた相切替タイミングで転流を行うように、モータ3の180°通電制御を継続する。
【0055】
上記で説明したように、ロジック部12は、モータ3の始動に際して、所定の強制転流周波数に応じた相切替タイミングで強制転流を開始した直後に無通電期間を設け、ロータ31の惰性回転中に生成される位置信号(HU、HV、HW)に応じた相切替タイミングで通常転流を開始するように、ブラシレスDCモータ3の通電制御を行う。
【0056】
このようなモータ始動シーケンスによれば、強制転流による起動不良や騒音を解消することができるので、極数の少ないモータ3を静粛かつ円滑に始動することが可能となる。
【0057】
<車両への適用>
図7は、種々の電子機器を搭載した車両の一構成例を示す外観図である。本構成例の車両Yは、バッテリ(不図示)から電源電圧VCCの供給を受けて動作する種々の電子機器X11〜X18を搭載している。なお、
図7における電子機器X11〜X18の搭載位置については、図示の便宜上、実際とは異なる場合がある。
【0058】
電子機器X11は、エンジンに関連する制御(インジェクション制御、電子スロットル制御、アイドリング制御、酸素センサヒータ制御、及び、オートクルーズ制御など)を行うエンジンコントロールユニットである。
【0059】
電子機器X12は、HID[high intensity discharged lamp]やDRL[daytime running lamp]などの点消灯制御を行うランプコントロールユニットである。
【0060】
電子機器X13は、トランスミッションに関連する制御を行うトランスミッションコントロールユニットである。
【0061】
電子機器X14は、車両Yの運動に関連する制御(ABS[anti-lock brake system]制御、EPS[electric power steering]制御、電子サスペンション制御など)を行うボディコントロールユニットである。
【0062】
電子機器X15は、ドアロックや防犯アラームなどの駆動制御を行うセキュリティコントロールユニットである。
【0063】
電子機器X16は、エアーコンディショナ、ワイパー、電動ドアミラー、パワーウィンドウ、ダンパー(ショックアブソーバー)、電動サンルーフ、及び、電動シートなど、標準装備品やメーカーオプション品として、工場出荷段階で車両Yに組み込まれている電子機器である。
【0064】
電子機器X17は、車載A/V[audio/visual]機器、カーナビゲーションシステム、及び、ETC[electronic toll collection system]など、ユーザオプション品として任意で車両Yに装着される電子機器である。
【0065】
電子機器X18は、車載ブロア、オイルポンプ、ウォーターポンプ、バッテリ冷却ファンなど、高耐圧系モータを備えた電子機器である。
【0066】
上記した電子機器X11〜X18のうち、ブラシレスDCモータを備える電子機器については、適宜、先に説明した電子機器Xの構成及びモータ始動手法を採用することができる。特に、エンジン音を一切生じない電気自動車や、車両停止時にエンジンを停止するアイドリングストップ車では、車両に搭載された電子機器の発するモータ始動音すらも運転者や同乗者の耳障りとなり得るが、先に説明した電子機器Xであれば、ブラシレスDCモータを静粛かつ円滑に始動することができるので、車内を静粛に保つことが可能となる。
【0067】
<その他の変形例>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。例えば、モータ駆動装置の用途については、車載用以外にも、様々な用途(例えば白物家電用)が考えられる。また、静音化に優れたモータ通電方式については、180°通電方式以外にも、150°通電方式などが考えられる。また、ロータ位置検出手法については、ホールセンサやホールICを用いる手法以外にも、モータコイルに生じる誘起電圧を監視する手法が考えられる。
【0068】
このように、上記の実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。