特許第6141656号(P6141656)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6141656ナノミスト回収装置及びナノミスト回収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6141656
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】ナノミスト回収装置及びナノミスト回収方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/18 20060101AFI20170529BHJP
   B01D 53/38 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   B01D53/18 150
   B01D53/38 120
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-40443(P2013-40443)
(22)【出願日】2013年3月1日
(65)【公開番号】特開2014-168727(P2014-168727A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2015年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【弁理士】
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】立本 豪
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−182014(JP,A)
【文献】 特開昭64−67226(JP,A)
【文献】 特開平08−173756(JP,A)
【文献】 特開平11−062553(JP,A)
【文献】 特開2000−93726(JP,A)
【文献】 特開2010−234335(JP,A)
【文献】 特開2011−78928(JP,A)
【文献】 特開2011−251250(JP,A)
【文献】 特開2012−245467(JP,A)
【文献】 特開2013−31825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00−9/22
B01D 45/00−45/18
B01D 47/00−47/18
B01D 53/14−53/18
B01D 53/34−53/85
B04C 1/00−11/00
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、臭気成分を吸着したナノミストとガスを導入するナノミスト導入口及び回収水供給部を介して前記ナノミストを回収するための回収水を導入する回収水導入口を有し、前記ナノミスト導入口から導入される前記ナノミストと前記回収水導入口から導入される前記回収水とをせん断作用により接触及び混合させるナノミスト−回収水接触部と、
前記ナノミスト−回収水接触部からのミストをサイクロンで回収する回収部と、を備える、ことを特徴とする、ナノミスト回収装置。
【請求項2】
前記臭気成分を吸着する前のナノミスト及び前記回収水はpH5.8以上pH8.6以下であることを特徴とする、請求項1に記載のナノミスト回収装置。
【請求項3】
前記ナノミスト回収装置は、さらに、前記ナノミスト回収装置から放出される排水のpHを測定するセンサを備え、
前記回収水供給部は、さらに、前記センサによるpH測定値に基づいて前記回収水の供給量を調節する回収水供給量調節機を備える、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のナノミスト回収装置。
【請求項4】
臭気成分を吸着したナノミストの回収方法であって、
少なくとも、臭気成分を吸着したナノミストとガスを導入するステップと、
前記ナノミストを回収するための回収水を導入するステップと、
前記ナノミストと前記回収水とをせん断作用により接触及び混合させる接触混合ステップと、
前記接触混合ステップを経たミストをサイクロンで回収する回収ステップと、を含む、ことを特徴とする、ナノミスト回収方法。
【請求項5】
臭気成分を吸着する前のナノミスト及び前記回収水はpH5.8以上pH8.6以下であることを特徴とする、請求項4に記載のナノミスト回収方法。
【請求項6】
前記回収ステップ後の排水のpHを測定する測定ステップを更に含み、
前記測定ステップによるpH測定値に基づいて前記回収水の導入量を調節する回収水供給量調節ステップを更に含む、
ことを特徴とする、請求項4又は5に記載のナノミスト回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノミスト回収装置及びナノミスト回収方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水処理施設や、工場の排水処理施設、ゴミ処理場や産業廃棄物処理施設等では、硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチル、及び二硫化メチルを含む硫黄化合物や、アンモニアやトリメチルアミンを含む窒素化合物のような、臭気成分(悪臭物質)が発生する。これらの臭気成分が施設の近隣に漏れ出ると、臭気公害の原因となる。
【0003】
そこで、各施設は臭気成分を排気ガスから除去するために、種々の対策を講じている。そのような対策には、例えば、活性炭吸着法、生物脱臭法、及び薬液洗浄法による脱臭処理がある。しかしながら、これらの方法による脱臭処理は、ランニングコスト面とメンテナンス面で改善の余地があった。
【0004】
近年、ガス中の臭気成分をミストに吸着させて脱臭する技術が提案されてきた(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のナノミスト回収装置は、界面活性剤を含む水をミストに霧化して臭気成分を吸着させ、静電気、冷却及びサイクロンを用いてミストを回収することによって脱臭する。このようなナノミスト回収装置によれば、臭気ガスに含まれる臭気成分を効率よく速やかにミストに吸収して脱臭することができる。
【0005】
また、ガス中に含まれるミスト成分を回収するためにスクラバーを用いた空気浄化システムも提案されてきた(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載の空気浄化システムによれば、スクラバーを用いて不要なミスト成分を除去することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−234335号公報
【特許文献2】特開2005−205094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、特許文献1に記載のような、静電気を用いたミストの回収方法では、原理的に回収の副産物としてオゾンが発生するため、オゾン臭に対する更なる対策が必要であった。また、冷却によりミストを回収するには、装置規模が大きい上に、回収に時間を要し、回収効率にも改善の余地があった。さらに、特許文献2に記載のような、スクラバーを用いるシステムは規模が大きく、小型化の余地があった。
【0008】
したがって、かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、副産物を生じることなく、迅速かつ効率的にナノミストを回収することができる、コンパクトなナノミスト回収装置及びナノミスト回収方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために、鋭意研究を行い、臭気成分を吸着したナノミストを回収するための装置構成において、回収水とナノミストとを混合させ、その後、サイクロンでミストを捕集することによって、臭気成分を吸着したナノミストを、副産物を生じることなく、迅速かつ効率的に回収することができることに着目し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のナノミスト回収装置は、少なくとも、臭気成分を吸着したナノミストとガスを導入するナノミスト導入口及び回収水供給部を介して前記ナノミストを回収するための回収水を導入する回収水導入口を有し、前記ナノミスト導入口から導入される前記ナノミストと前記回収水導入口から導入される前記回収水とをせん断作用により接触及び混合させるナノミスト−回収水接触部と、前記ナノミスト−回収水接触部からのミストをサイクロンで回収する回収部と、を備える、ことを特徴とするものである。このように、臭気成分を吸着したナノミストを回収水と接触及び混合させて、さらに、サイクロンで回収することで、副産物を生じることなく、コンパクトな装置構成で、迅速かつ効率的にナノミストを回収することができる。
【0011】
また、本発明に係るナノミスト回収装置においては、臭気成分を吸着する前のナノミスト及び前記回収水はpH5.8以上pH8.6以下であることが好ましい。pH5.8以上pH8.6の中性水を用いることで、簡易な構成で、ナノミストによる脱臭効果を達成することができる。
【0012】
また、本発明に係るナノミスト回収装置においては、前記ナノミスト回収装置は、さらに、前記ナノミスト回収装置から放出される排水のpHを測定するセンサを備え、前記回収水供給部は、さらに、前記センサによるpH測定値に基づいて前記回収水の供給量を調節する回収水供給量調節機を備えることが好ましい。このような構成とすることで、ナノミスト回収装置から放出される排水のpHが適正値となるように制御することが可能になる。
【0013】
上記目的を達成するための本発明のナノミスト回収方法は、臭気成分を吸着したナノミストの回収方法であって、少なくとも、臭気成分を吸着したナノミストとガスを導入するステップと、前記ナノミストを回収するための回収水を導入するステップと、前記ナノミストと前記回収水とをせん断作用により接触及び混合させる接触混合ステップと、前記接触混合ステップを経たミストをサイクロンで回収するステップと、を含むことを特徴とする。このような方法により、副産物を生じることなく、迅速かつ効率的にナノミストを回収することができる。
【0014】
また、本発明に係るナノミスト回収方法においては、臭気成分を吸着する前のナノミスト及び前記回収水はpH5.8以上pH8.6以下であることが好ましい。このような方法により、簡易に、ナノミストによる脱臭効果を達成することができる。
【0015】
また、本発明に係るナノミスト回収方法においては、前記回収ステップ後の排水のpHを測定する測定ステップを更に含み、前記測定ステップによるpH測定値に基づいて前記回収水の導入量を調節する回収水供給量調節ステップを更に含むことが好ましい。このような方法により、ナノミスト回収装置から放出される排水のpHが適正値となるように制御することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、副産物を生じることなく、迅速かつ効率的にナノミストを回収することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態によるナノミスト回収装置を付設した脱臭設備の概略構成図である。
図2図1に示すナノミスト回収装置のナノミスト−回収水接触部の構成の一例を説明するための図である。
図3図1に示すナノミスト回収装置のナノミスト−回収水接触部の構成の他の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明によるナノミスト回収装置の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本発明のナノミスト回収装置は、下水処理場及びゴミ処理場等で生じる臭気ガスに含まれる臭気成分を吸着したナノミストを回収するために用いられるものである。なお、本発明によるナノミスト回収方法は、本発明の実施形態によるナノミスト回収方法の説明から明らかになる。
【0019】
本発明の一実施形態によるナノミスト回収装置は、少なくとも臭気成分を吸着したナノミストを導入するナノミスト導入口と、ナノミストを回収するための回収水を導入する回収水導入口と、を有し、ナノミストと回収水とを接触及び混合させるナノミスト−回収水接触部と、ナノミスト−回収水接触部からのミストをサイクロンで回収する回収部と、を備えることを特徴とする。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態によるナノミスト回収装置を付設した脱臭設備の概略構成図である。ナノミスト回収装置1は、ナノミスト−回収水接触部2及び回収部3を備える。ナノミスト−回収水接触部2は、臭気成分を吸着したナノミストが導入されるナノミスト導入口4と、回収水を導入する回収水導入口5とを備える。回収部3は、ナノミスト−回収水接触部2を経たミストをサイクロンで回収する。回収部3は、遠心力で臭気ガスからミストを分離するサイクロン室6と、サイクロン室6で分離したミストを回収して貯留する回収ミスト貯留槽9を有する。さらに、ナノミスト−回収水接触部2は、図2及び図3を参照して構成を説明する、右回転のミキシングエレメント22と、左回転のミキシングエレメント30とを備えることが好ましい。
【0021】
図2及び図3は90°回転型のミキシングエレメントの斜視図である。ミキシングエレメント22及び30はそれぞれ筒状の管23及び31と、この管23及び31内にそれぞれ内設された螺旋状の羽根体24,25及び32,33とを有する。この羽根体24,25及び32,33はそれぞれ時計方向(右回転)及び反時計方向(左回転)へ端部間で90°だけねじられており、この羽根体24,25及び32,33により複数の通路26,27及び通路34,35が形成されて、管23及び31の内部が区画される。これらの通路26,27及び通路34,35は、羽根体24,25及び32,33相互の隙間を介して管23及び31の全長に亘って連通し、開口部28及び36にそれぞれ通じている。更に、羽根体24,25及び32,33は、孔29及び37を有する。
【0022】
ナノミスト回収装置1は、ナノミストに臭気成分を吸着させるための機構に付随して使用されることで、その機能を発揮するものである。以下、ナノミストに臭気ガスに含まれる臭気成分を吸着させるための機構を構成する各構成要素について説明するとともに、本実施形態に係るナノミスト回収装置1の動作の一例を説明する。
【0023】
水槽11は、水を貯蔵する。水槽11に貯蔵された水は、霧化部15に対して霧化用水として、ナノミスト−回収水接触部2に対して回収水として供給される。水槽11は、20℃でのpHがpH5.8以上pH8.6以下の中性水を貯蔵することができる。中性水のpHは、好ましくは、pH6.5以上である。このような中性水に由来する、臭気成分を吸着する前のナノミストのpHは中性である。
【0024】
霧化部15は、静電霧化又は超音波霧化により水を霧化してナノミストを生成する。本例では、霧化部15は静電霧化を実施することとして説明する。この場合、霧化部15は、プラス電極13及びマイナス電極14を備え、水槽11からポンプ(P)16により循環貯留槽17に送出され、循環貯留槽17からポンプ18により送りこまれた霧化用水である水を静電霧化する。霧化部15は、プラス電極13及びマイナス電極14の間に高電圧を印加して放電させるための、図1に示さない電源を備える。霧化部15は、プラス電極13側から供給される霧化用水にレイリー分裂を生じさせて霧化させることでナノオーダーのミスト(ナノミスト)を生成する。なお、本明細書において、ナノオーダーとは1μm未満、特に、100nm以下の粒子径をいう。一般に、静電霧化により生成されるナノミストの粒子径は、10nm以上30nm以下、あるいは20nm以上30nm以下である。また、超音波霧化により生成されるナノミストの粒子径は100nm以下であり、且つ100nm付近の粒子径のミストが超音波霧化により生成されるナノミストの大部分を占める。なお、霧化部15が超音波霧化を実施する場合には、霧化部15はプラス電極13及びマイナス電極14を備えず、超音波振動子を霧化用水の入った水槽(図示しない)内に配置して構成される。このとき、超音波振動子面から水面までの距離を30mm〜40mmとすることで、良好な霧化効率を達成することができる。ナノミストは、ラジカル(OH)のような活性種により臭気成分を酸化分解するとともに、表面張力により臭気成分を吸着させる作用があると考えられる。
【0025】
混合部19は、霧化部15により生成されたナノミストと、外部、例えばナノミスト回収装置1の外部から導入した脱臭対象の臭気ガス(原臭)とを混合することで、ナノミストに臭気ガス中の臭気成分を吸着させて、さらに吸着済みの臭気ガスでナノミストを搬送させる。混合部19は、ナノミストが自由拡散することができる構成であればよく、ナノミスト及び臭気ガスの接触を促進するための、例えば攪拌部材のような構成を有する必要は無い。混合部19は、例えば、臭気ガス及びナノミストの流路を阻害するように構成された複数の板状部材を備えても良い。このような板状部材により、臭気ガス及びナノミストの移動距離を長くすることができる。この移動過程において水滴化したナノミストや、霧化部15によってナノミスト化しきれなかった霧化用水は、ナノミスト脱臭塔20の筒状内壁及び混合部19を経て循環貯留槽17に至り、貯留される。
【0026】
混合部19内を移動する間に、ナノミスト及び臭気ガスが混合されて、臭気ガス中の臭気成分がナノミストに吸着される。ここで、下水処理で生じる臭気ガスに含まれる臭気成分は、主に、硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチル、及び二硫化メチルを含む硫黄化合物や、アンモニアやトリメチルアミンを含む窒素化合物である。
【0027】
ナノミスト導入口4は、混合部19を経た、臭気成分を吸着したナノミスト及び臭気ガスを、ナノミスト−回収水接触部2に導入する。なお、混合部19において、臭気ガス中の臭気成分の100%がナノミストに吸着された場合には、ナノミスト導入口4は、(臭気を含まない)ガスと臭気成分を吸着したナノミストを導入することになる。
【0028】
回収水導入口5は、ポンプ21により酸性電解水貯留槽12Aから送出された回収水を、回収水供給量調節機41及び回収水供給部40を介してナノミスト−回収水接触部2に導入する。ナノミスト導入口4により導入された臭気成分を吸着したナノミスト及び臭気ガスは、回収水導入口5により導入された回収水と接触する。好ましくは、回収水導入口5は、例えばシャワーノズル等の液体を水滴状にして滴下することができる部材を備え、導入される回収水を水滴状とし、シャワーリングにより回収水を導入することができる。このように、回収水導入口5において、水滴状の回収水を導入することで、臭気成分を吸着したナノミストとの接触面積を大きくすることが可能となり、回収水の水滴にナノミストを効率的に吸収させることができるようになる。
【0029】
ナノミスト−回収水接触部2は、上述したとおり、右回転のミキシングエレメント22と、左回転のミキシングエレメント30とを備えることが好ましい。ナノミスト導入口4を介して導入された臭気成分を吸着したナノミスト及び臭気ガスは、回収水導入口5から導入された回収水と並流し、羽根体24,25及び32,33、孔29及び37を通流しながら、分割、合流、水平、及び垂直方向のせん断作用により接触及び混合(接触混合)される。このようにして、ナノミスト−回収水接触部2において臭気ガス、ナノミスト、及び回収水を接触させることにより、回収水によるナノミスト吸収効率が向上し、また、ナノミスト間の衝突頻度が増加するだけではなく、臭気ガス中の臭気成分がナノミストに吸着することも促進することができる。
【0030】
ナノミスト−回収水接触部2は、例えば、回収水及びナノミストの接触混合時間、ナノミストの流速、ナノミストに対する回収水の体積比率等のパラメータを調整することができる。これらのパラメータは、回収水とナノミストとの接触効率を適正にするために適宜調整することができる。
【0031】
ナノミストを吸収した回収水は、ナノミスト−回収水接触部2の下部にたまって排水となる。ナノミスト−回収水接触部2は下部においてナノミスト脱臭塔20と連通しており、ナノミスト−回収水接触部2の下部にたまった排水は、ナノミスト脱臭塔20の下部に備えられる回収ミスト貯留槽9に流入する。そして、任意のタイミングでポンプ10により、回収ミスト貯留槽9内にたまった排水を放出する。好ましくは、ナノミスト回収装置1は、ナノミスト回収装置1から放出される排水のpHを測定するセンサ12を備え、回収水供給部40は、さらに、センサ12による排水のpHの測定値に基づいて回収水供給部40からの回収水の供給量を調節する回収水供給量調節機41を備える。このような構成とすることにより、センサ12による排水のpHが環境基準を満たさない場合には、回収水の量を増量して、排水のpHが適正値となるように制御することが可能になる。また、ナノミスト回収装置1は、図示しないpH調整用薬剤添加部をさらに備え、センサ12による排水のpHの測定値に基づいて回収ミスト貯留槽9に薬剤を添加することにより、排水のpHを調整することも可能である。かかる構成により、排水のpHを微調整することができる。
【0032】
一方、ナノミスト−回収水接触部2で酸性電解水に吸着されず、依然としてミスト状態を保っているミストは、回収部3のサイクロン室6に送出される。サイクロン室6は、ナノミスト−回収水接触部2から導入したミストをサイクロン効果により分離するとともに水滴状態とする。回収ミスト貯留槽9は、分離され水滴状態となり、ナノミスト脱臭塔20の内壁を流下する水滴を貯留する。ここで、本発明者らは、ナノミスト−回収水接触部2において、接触及び混合されることにより、ナノミストの粒子が互いに衝突し、また回収水の水滴と接触することで、回収部3に送出される時点においてミストの粒子径が霧化部15により生成された直後の時点よりも大きくなっていることが想定されることに着目した。
【0033】
従来、サイクロンはナノオーダーのミストの回収には不向きであり、回収効率が著しく悪いとされてきた。しかし、ナノミスト−回収水接触部2を経たミストは、もはやナノオーダーではなく、マイクロオーダーに成長していることが想定される。マイクロオーダーのミストは、サイクロン方式でも効率的に回収することができる。よって、本発明者らは、本実施形態によるナノミスト回収装置において、ナノミスト−回収水接触部2でナノオーダーからマイクロオーダーに成長したミストを、回収部3のサイクロン室6においてサイクロンで回収する構成に至った。
【0034】
このように、本実施形態によるナノミスト回収装置1は、ナノミスト−回収水接触部2におけるナノミスト同士の衝突及びナノミストと回収水の接触により回収しきれなかったミストについて、サイクロン室6でサイクロン効果によりナノミスト脱臭塔20の壁面に付着させて流下させることで、ミストを回収する。このため、本実施形態によるナノミスト回収装置1は、コンパクトな装置構成で、臭気成分を吸着したナノミストの回収効率を飛躍的に向上させることができる。さらに、本実施形態によるナノミスト回収装置1は、回収時に静電方式を利用しないため、オゾン等の副産物を生じるおそれがなく、副産物対策が不要である。
【0035】
そして、ブロワ(B)8は、回収部3を経た臭気ガスを大気中に放出する。この時点で、臭気ガス中の臭気成分は原臭と比較して大幅に低減されており、大気中に放出しても悪臭公害を引き起こすおそれは少ない。
【0036】
以上、本発明の一実施形態によるナノミスト回収装置及びナノミスト回収方法の例を説明したが、本発明のナノミスト回収装置及びナノミスト回収方法は、上記例に限定されることは無く、適宜変更を加えることができる。具体的には、上記第1実施形態では、ナノミスト−回収水接触部2はミキシングエレメントにより構成されるものとして記載したが、ミキシングエレメントに代えて、エジェクターを備えることにより、ナノミスト−回収水接触部2を構成することももちろん可能である。この場合、ナノミスト−回収水接触部2は、回収水導入口5から導入される回収水と、ナノミスト導入口4から導入されるナノミストとをエジェクター内で接触及び混合させて、ナノミストを回収水に取り込ませることができる。
【0037】
また、上記実施形態において、水槽11を電解水生成部として構成することも可能である。水槽11が電解水生成部である場合、水槽11は、水を電解して電解水を生成し、内部に酸性電解水貯留槽及びアルカリ性電解水貯留槽を有し、それぞれに酸性電解水及びアルカリ性電解水を貯留する。さらに、この場合、水槽11は、水を電解する電解槽と、電解槽の電極に電圧を加える電源とを備える。水槽11は、例えば、水道水、地下水、雨水、及び二次処理水を分解して電解水を生成することができる。水槽11は、酸性電解水の水素イオン(H)濃度を高く、アルカリ性電解水の水酸化物イオン(OH)濃度を高くすることで、20℃でのpHを、酸性電解水についてはpH0以上pH5.8以下とし、アルカリ性電解水についてはpH8.6以上pH14以下とすることができる。
【0038】
霧化用水がアルカリ性電解水である場合、ナノミスト−回収水接触部2の回収水導入口5は、ポンプ21により水槽11の酸性電解水貯留槽から送出された酸性電解水を、ナノミスト−回収水接触部2に導入する。そして、ナノミスト−回収水接触部2内で、アルカリ性電解水から生成されたナノミストと、回収水である酸性電解水とが接触及び混合されることで排水が中性となる。さらに、制御装置42がセンサ12により測定された排水のpHが適正範囲を超えたと判定した場合には、制御装置42は、回収水供給量調節機41の動作を制御して、脱臭効果に悪影響が出ない範囲で、回収水の供給量を増減させて、排水のpHを適正範囲に維持することができる。
【0039】
このような構成のナノミスト回収装置において、アルカリ性電解水を霧化用水として用いることで、単位量当りのナノミストに対する臭気成分の吸着効率が中性水を霧化用水とした場合と比較して向上する。これは、臭気成分に含まれる、硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチル、二硫化メチルを含む硫黄化合物や、及びアンモニアやトリメチルアミンを含む窒素化合物等は、それら自体が酸性であるため、アルカリ性のナノミストに対して吸着性が高いからである。単位量当りのナノミストに対する臭気成分の吸着効率が高いので、霧化用水及び回収水に中性水を用いた場合よりも、使用する水の量(酸性電解水及びアルカリ性電解水の総量)を低減することができる。特に、霧化用水としてアルカリ性電解水を使用し、回収水として酸性電解水を使用した場合には、ナノミストが回収水に取り込まれやすくなる。よって、ナノミスト−回収水接触部2における気液接触時間を霧化用水及び回収水に中性水を用いた場合と同じ長さとすると、少ない量の回収水で十分にナノミストを溶け込ませることができるため、回収水の量を少なくすることができる。さらに、回収水が少量でも十分な脱臭効果を奏することができるため、ナノミスト回収装置をさらに小型化することが可能となる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0041】
図1に示すナノミスト回収装置を用いて、下水処理により生じる悪臭成分を含む臭気ガスを脱臭処理した。霧化部により供給した供給霧化量(g/分)、ナノミスト−回収水接触部におけるナノミストに対する回収水の体積比率、ナノミストの流速(m/秒)、及びナノミスト−回収水接触部における接触混合時間(秒)は表1に示す値とし、除去効果を評価した。なお、使用したナノミスト回収装置に備えられるミキシングエレメントは、株式会社ミューカンパニーリミテド製ミュースクラバー(管内径40mm、MS−40 V−101)により構成される。除去効果の評価は、臭気ガス(原臭)の臭気レベルと、ナノミスト−回収水接触部から排出された直後のガスの臭気レベルとを比較することにより実施した。臭気レベルは、新コスモス電機株式会社製ニオイセンサにより測定した。
【0042】
【表1】
【0043】
表1に示すような条件で処理行った場合、除去性能が75%以上となり良好な結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のナノミスト回収装置及びナノミスト回収方法によれば、副産物を生じることなく、コンパクトな構成で、迅速かつ効率的にナノミストを回収することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 ナノミスト回収装置
2 ナノミスト−回収水接触部
3 回収部
4 ナノミスト導入口
5 回収水導入口
6 サイクロン室
12 センサ
40 回収水供給部
41 回収水供給量調節機
図1
図2
図3