特許第6141661号(P6141661)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6141661-窓ガラス用断熱シート 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6141661
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】窓ガラス用断熱シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/24 20060101AFI20170529BHJP
   C03C 17/32 20060101ALI20170529BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   B32B3/24 Z
   C03C17/32 C
   B32B7/02 105
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-57427(P2013-57427)
(22)【出願日】2013年3月20日
(65)【公開番号】特開2014-180825(P2014-180825A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2016年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】390003562
【氏名又は名称】株式会社ニトムズ
(73)【特許権者】
【識別番号】000199979
【氏名又は名称】川上産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083404
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100166752
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 典子
(72)【発明者】
【氏名】日下部 直己
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−348169(JP,A)
【文献】 特開2007−160709(JP,A)
【文献】 実開昭57−165794(JP,U)
【文献】 特開2011−251426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 3/24
B32B 7/02
C03C 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空気断熱層を有するベースシートを有し、上記ベースシートの一方の面には、紫外線吸収性を有する紫外線吸収シートが貼り合わせられている窓ガラス用断熱シートにおいて、
上記ベースシートの他方の面は窓ガラスに水貼り可能な水貼り性を有しているとともに、
上記紫外線吸収シートは、紫外線吸収材を含まない2枚の保護フィルムを、紫外線吸収材が添加された粘着剤層によって1枚のシート体となるように接合してなることを特徴とする窓ガラス用断熱シート。
【請求項2】
上記紫外線吸収シートは、熱ラミネートによって上記ベースシートに一体的に貼り合わせられていることを特徴とする請求項1に記載の窓ガラス用断熱シート。
【請求項3】
上記保護フィルムの一方の内面には、赤外線光を遮蔽するアルミ蒸着膜が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の窓ガラス用断熱シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓ガラスに貼り付けることで、室内と室外の熱移動を抑える窓ガラス用断熱シートに関し、さらに詳しく言えば、外から室内に向けて照射される紫外線や赤外線を遮断する窓ガラス用断熱シートに関する。
【背景技術】
【0002】
夏場や冬場などの室内と室外の温度差が大きい時期においては、その温度勾配を駆動力として、室内と室外との間で熱が移動しやすい。特に住居における熱移動の大部分は、窓ガラスから行われる。そこで、窓ガラスからの熱移動を減らすための窓ガラス用断熱シートが提供されている。
【0003】
例えば特許文献1に記載されているように、この断熱シートは、内部に空気断熱層(キャップ層)を有するベースシートを備え、ベースシートの一方の面に水を吹き付けて窓ガラスに貼り付けることで、窓ガラスからの熱移動を抑える(断熱する)ことができるようになっている。
【0004】
また、特許文献1は、室内に照射される紫外線量を減らすため、ベースシートの他方の面に紫外線吸収材を練り込んだ紫外線吸収シートを一体的に貼り合わせている。これによれば、窓ガラスを透過する太陽光成分から紫外線を吸収することができる。
【0005】
しかしながら、紫外線吸収シートの紫外線吸収率をほぼ100%まで高めようとした場合、紫外線吸収シートの母材となるプラスチック樹脂に大量の紫外線吸収材を添加しなくてはならず、その結果、シートの厚さが厚くなってしまう。
【0006】
さらに、紫外線吸収シートをベースシートに熱ラミネートによって貼り合わせると、紫外線吸収シート(PET)とベースシート(PE)とが異種材料であるため、両方の収縮率の違いによって、四隅にカールが生じてしまう。そのため、水貼りしにくいばかりでなく、水貼りした後に、断熱シートの四隅が捲り上がってしまうため好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−348169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、上述した課題を解決するため、本発明は、カールなどを生じることなく、長期間にわたって安定して貼り付けておくことができる窓ガラス用断熱シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明は以下に示すいくつかの特徴を備えている。すなわち、内部に空気断熱層を有するベースシートを有し、上記ベースシートの一方の面には、紫外線吸収性を有する紫外線吸収シートが貼り合わせられている窓ガラス用断熱シートにおいて、上記ベースシートの他方の面は窓ガラスに水貼り可能な水貼り性を有しているとともに、上記紫外線吸収シートは、紫外線吸収材を含まない2枚の保護フィルムを、紫外線吸収材が添加された粘着剤層によって1枚のシート体となるように接合してなることを特徴としている。
【0010】
上記紫外線吸収シートは、熱ラミネートによって上記ベースシートに一体的に貼り合わせられていることを特徴としている。
【0011】
上記保護フィルムの一方の内面には、赤外線光を遮蔽するアルミ蒸着膜が設けられていることを特徴としている。
【0013】
これによれば、紫外線吸収材を含まない2枚の保護フィルムを、紫外線吸収材が添加された粘着剤層によって1枚のシート体に成形し、その紫外線吸収シートをベースシートに熱ラミネートしたことにより、紫外線吸収率が高く、かつ、薄い紫外線吸収シートが得られるとともに、カールが生じにくく、長期間にわたって安定して貼り付けておくことができる断熱シートが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る窓ガラス用断熱シートの要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0016】
図1に示すように、この窓ガラス用断熱シート1は、内部に空気断熱層21を有するベースシート2と、ベースシート2の一方の面(図1では上面)に一体的に貼り合わせられる紫外線吸収シート3とを備えている。
【0017】
ベースシート2は、凹凸が形成された仕切りフィルム22と、上記仕切りフィルム22の両面を挟むようにして一体的に貼り合わせられる外フィルム23および内フィルム24とを備え、それらが一体的に形成されている。
【0018】
この実施形態において、仕切りフィルム22はポリエチレンフィルムからなり、円柱状の凸部が所定間隔をもって千鳥状に配置された、いわゆるエアキャップフィルムが用いられ、その両面を外フィルム23と内フィルム24とで挟み込んで一体化することで、空気断熱層21を有するベースシート2が形成される。
【0019】
外フィルム23は、合成樹脂フィルムであって、一方の面(図1では上面)は、熱ラミネートによって仕切りフィルム22に一体的に貼り付けられている。この実施形態において、外フィルム23の他方の面(図1では下面)は、外フィルム23を図示しない窓ガラスに水貼りすることができる水貼り性を備えている。なお、熱ラミネートに変えて粘着剤や接着剤を用いて接合してもよい。
【0020】
この実施形態において、外フィルム23は、ポリオレフィン系樹脂が用いられている。これにより、外フィルム23の親水性がよくなり、外フィルム23の表面に水を塗って窓ガラスに貼り付ける、いわゆる水貼りが可能となる。なお、窓ガラスに水を塗布して、そこに外フィルム23を貼り合わせてもよい。
【0021】
この他に、外フィルム23に水貼り性を持たせるためには、例えば外フィルム23の表面にコロナ放電加工を施し、マイクロボイドを形成してさらに水貼り性を向上させるなどしてもよい。
【0022】
内フィルム24には、合成樹脂フィルムが用いられており、一方の面(図1では下面)は熱ラミネートによって仕切りフィルム22に貼り付けられている。内フィルム24の他方の面(図1では上面)には、紫外線吸収シート3が一体的に貼り合わされている。なお、熱ラミネートに変えて粘着剤や接着剤を用いて接合してもよい。
【0023】
紫外線吸収シート3は、2枚の保護フィルム31,32同士を粘着剤層33を介して貼り合わせたものからなり、この粘着剤層33に所定の紫外線吸収材が配合されている。
【0024】
この実施形態において、一方(図1では上面側)の保護フィルム31は、傷に強いPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムが用いられており、他方(図1では下面側)の保護フィルム32は、ベースシート2との接合性を考慮してPE(ポリエチレン)フィルムが用いられている。
【0025】
粘着剤層33は、ポリエステル系ウレタン粘着剤が用いられており、そこに紫外線吸収材が所定量配合されている。この実施形態において、粘着剤層33はポリエステル系ウレタン粘着剤が用いられているが、これ以外のアクリル系やゴム系、シリコン系の粘着剤や接着剤が用いられてもよい。ウレタン系粘着剤に関するより具体的な説明は、日本粘着テープ工業会より2005年発行の「粘着ハンドブック(第3版)」の第2章2.3.5に記載の(ウレタン系粘着剤)の項目を参照されたい。
【0026】
この粘着剤に対して紫外線吸収材が10wt%配合されている。紫外線吸収材は、有害な紫外線を吸収して、フリーラジカルの生成を防止するベンゾフェノン系やベンゾトリアゾール系、サリチレート系、シアノアクリルレート系の紫外線吸収材が用いられるが、これ以外の紫外線吸収材が用いられてもよく、粘着剤層33を透過する光から99%以上の紫外線を吸収可能な量の紫外線吸収材が配合されていればよい。なお、より具体的な紫外線吸収材については、株式会社産業調査会1993年発行の「実用プラスチック辞典」の第2章,第2節C(光安定剤)の項目を参照されたい。
【0027】
これによれば、粘着剤層33に紫外線吸収材を配合したことにより、フィルムに添加した場合よりも全体の厚さを薄く形成することができるばかりでなく、粘着剤層33を介して保護フィルム31,32同士を貼り合わせているため、寸法変化を極力
小さくすることができる。
【0028】
紫外線吸収シート3は、ベースシート2の内フィルム24に熱ラミネートによって一体的に貼り合わされている。これによれば、紫外線吸収シート3の保護シート32とベースシート2の内フィルム24とがともにポリエチレン製であることにより、熱ラミネートした際に伸縮率の違いによって、シートの四隅に発生するカールを抑えることができ、長期間にわたって安定して窓ガラスに貼り付けておくことができる。
【0029】
一方の保護フィルム(PETフィルム)31には、赤外線を遮蔽するためのアルミ蒸着膜34が形成されている。アルミ蒸着膜34は、スパッタリング等によって保護フィルム31の表面に形成された薄膜であって、この例では粘着剤層33に対向する面に形成されている。アルミ蒸着膜34の具体的な形成方法や厚さなどは仕様に応じて任意に変更されてよい。
【0030】
この例において、アルミ蒸着膜34は、一方の保護フィルム31側に設けられているが、他方の保護フィルム32側に設けられていてもよい。さらには、両方の保護フィルム31,32に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 窓ガラス用断熱シート
2 ベースシート
3 紫外線吸収シート
31,21 保護フィルム
33 粘着剤層
34 アルミ蒸着膜
図1