(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コイン状の被検出体が通過する通過路が内部に形成されるとともに、励磁用コイルおよび検出用コイルと、前記励磁用コイルおよび前記検出用コイルが巻回されるコア体と、前記励磁用コイルおよび前記検出用コイルが電気的に接続される回路基板とを備え、
前記通過路を通過する前記被検出体の厚み方向の一方を第1方向とし、前記通過路を通過する前記被検出体の厚み方向の他方を第2方向とすると、
前記コア体は、前記第1方向側に配置され前記励磁用コイルが巻回される第1コアと、前記第2方向側に配置され前記検出用コイルが巻回される第2コアとを備え、
前記回路基板は、前記被検出体の通過方向における前記コア体の一方の面を覆っていることを特徴とするコイン状被検出体識別装置。
前記第1検出用コイルが巻回される第1コイル巻回部を有する略筒状の第1ボビンと、前記第2検出用コイルが巻回される第2コイル巻回部を有する略筒状の第2ボビンとを備え、
前記第1ボビンの内周側に、前記第1凸部、前記第2凸部および前記第3凸部が配置されるとともに、前記第2ボビンの内周側に、前記第3凸部が配置され、
前記第2コイル巻回部の少なくとも一部は、前記第1コイル巻回部の内周側に配置されていることを特徴とする請求項4記載のコイン状被検出体識別装置。
前記第1検出用コイルが巻回される略筒状の第1ボビンと、前記第2検出用コイルが巻回される略筒状の第2ボビンと、前記第1検出用コイルの両端側のそれぞれが接続される2本の第1端子ピンと、前記第2検出用コイルの両端側のそれぞれが接続される2本の第2端子ピンとを備え、
前記第1ボビンの前記第1方向側に前記第1検出用コイルが巻回され、前記第1ボビンの前記第2方向側に前記第1端子ピンが取り付けられ、
前記第2ボビンの前記第1方向側に前記第2検出用コイルが巻回され、前記第2ボビンの前記第2方向側に前記第2端子ピンが取り付けられていることを特徴とする請求項4から7のいずれかに記載のコイン状被検出体識別装置。
前記コア体は、プレス加工で形成された1枚の金属板で構成され、前記被検出体の通過方向がその厚み方向となるように配置されていることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のコイン状被検出体識別装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のメダルセレクタでは、メダル通路を用いてメダルを選別しているため、メダルセレクタが長年使用されてメダル通路を構成するガイドが摩耗すると、メダルの選別精度が低下する。したがって、このメダルセレクタが用いられるスロットマシンでは、スロットマシンが長年使用されてメダル通路を構成するガイドが摩耗すると、不正なメダルが使用されるおそれがある。
【0006】
一方、特許文献2に記載のコイン識別センサでは、材質・厚みセンサおよび径センサは、磁気式のセンサ(磁気センサ)であるため、非接触で、コインの材質、厚みおよび径を検出することができる。したがって、このコイン識別センサでは、コイン識別センサが長年使用されても、コインの識別精度の低下を防止することが可能である。そのため、このコイン識別センサをスロットマシン用のメダル識別装置に使用すれば、スロットマシンが長年使用されても、メダルの識別精度の低下を防止して、スロットマシンで不正なメダルの使用を防止することが可能になる。
【0007】
しかしながら、メダル識別装置に磁気センサを使用する場合、装置外部の電磁波に起因するメダルの識別精度の低下を抑制するための電磁シールドをメダル識別装置に設ける必要がある。したがって、メダル識別装置に磁気センサを使用すると、メダル識別装置の構成が複雑になるおそれがある。
【0008】
そこで、本発明の課題は、磁気センサを有するコイン状被検出体識別装置において、外部の電磁波に起因するコイン状の被検出体の識別精度の低下を抑制することが可能であっても、構成を簡素化することが可能なコイン状被検出体識別装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明のコイン状被検出体識別装置は、コイン状の被検出体が通過する通過路が内部に形成されるとともに、励磁用コイルおよび検出用コイルと、励磁用コイルおよび検出用コイルが巻回されるコア体と、励磁用コイルおよび検出用コイルが電気的に接続される回路基板とを備え、通過路を通過する被検出体の厚み方向の一方を第1方向とし、通過路を通過する被検出体の厚み方向の他方を第2方向とすると、コア体は、第1方向側に配置され励磁用コイルが巻回される第1コアと、第2方向側に配置され検出用コイルが巻回される第2コアとを備え、回路基板は、被検出体の通過方向におけるコア体の一方の面を覆っていることを特徴とする。
【0010】
本発明のコイン状被検出体識別装置では、励磁用コイルおよび検出用コイルが電気的に接続される回路基板が被検出体の通過方向におけるコア体の一方の面を覆っている。そのため、本発明では、被検出体の通過方向におけるコア体の一方側において、回路基板に形成される導体パターンを電磁シールドとして機能させることが可能になる。したがって、本発明では、被検出体の通過方向におけるコア体の一方側に別途、電磁シールドを設けなくても、被検出体の通過方向におけるコア体の他方側に、また、被検出体の通過方向に直交する方向で電磁シールドを設ければ、外部の電磁波に起因する被検出体の識別精度の低下を抑制することが可能になる。その結果、本発明では、外部の電磁波に起因する被検出体の識別精度の低下を抑制することが可能であっても、コイン状被検出体識別装置の構成を簡素化することが可能になる。
【0011】
本発明において、コア体は、被検出体の通過方向を厚み方向とする平板状に形成されていることが好ましい。このように構成すると、被検出体の通過方向に直交する方向に配置される電磁シールドを小型化することが可能になる。なお、この場合には、被検出体の通過方向におけるコア体の一方側に比較的大きな電磁シールドを設ける必要があるが、本発明では、回路基板に形成される導体パターンを電磁シールドとして機能させることが可能になるため、被検出体の通過方向におけるコア体の一方側に別途、大きな電磁シールドを設ける必要がない。
【0012】
本発明において、被検出体の通過方向から見たときに、回路基板の面積は、コア体の面積よりも広くなっており、回路基板は、コア体の略全域を覆っていることが好ましい。このように構成すると、被検出体の通過方向におけるコア体の一方側において、回路基板を用いて、外部からの電磁波の影響を効果的に低減することが可能になる。
【0013】
本発明において、たとえば、コイン状被検出体識別装置は、検出用コイルとして、第1検出用コイルと第2検出用コイルとを備え、被検出体の通過方向と被検出体の厚み方向とに直交する方向を直交方向とし、直交方向の一方を第3方向とし、直交方向の他方を第4方向とすると、第2コアは、通過路の第3方向端側に配置され第1コアに向かって突出する第1凸部と、通過路の第4方向端側に配置され第1コアに向かって突出する第2凸部と、第1凸部と第2凸部との間に配置され第1コアに向かって突出する第3凸部と、第1凸部の基端、第2凸部の基端および第3凸部の基端が繋がる基部とを備えている。
【0014】
本発明において、コイン状被検出体識別装置は、第1検出用コイルが巻回される第1コイル巻回部を有する略筒状の第1ボビンと、第2検出用コイルが巻回される第2コイル巻回部を有する略筒状の第2ボビンとを備え、第1ボビンの内周側に、第1凸部、第2凸部および第3凸部が配置されるとともに、第2ボビンの内周側に、第3凸部が配置され、第2コイル巻回部の少なくとも一部は、第1コイル巻回部の内周側に配置されていることが好ましい。
【0015】
このように構成すると、第1検出用コイルを用いて、主として被検出体の外径を識別し、第2検出用コイルを用いて、主として被検出体の材質や厚みを識別することが可能になる。したがって、被検出体の識別精度を高めることが可能になる。また、このように構成すると、第2コイル巻回部の少なくとも一部が第1コイル巻回部の内周側に配置されているため、コイン状被検出体識別装置が第1検出用コイルと第2検出用コイルとを備えている場合であっても、被検出体の厚み方向において、第2検出用コイルの少なくとも一部と第1検出用コイルとを略同じ位置に配置することが可能になる。したがって、被検出体の識別精度を高めることが可能になる。すなわち、被検出体の厚み方向において、第1検出用コイルと第2検出用コイルとが完全にずれていると、通過路を通過する被検出体に応じて出力される第1検出用コイルの出力信号の信号レベルと第2検出用コイルの出力信号の信号レベルとの組合せで被検出体を識別する際に、この組合せのばらつきが大きくなり、被検出体を識別する際の識別精度が低下するおそれがある。これに対して、被検出体の厚み方向において、第2検出用コイルの少なくとも一部と第1検出用コイルとが略同じ位置に配置されると、第1検出用コイルの出力信号の信号レベルと第2検出用コイルの出力信号の信号レベルとの組合せのばらつきを小さくすることが可能になるため、第1検出用コイルの出力信号と第2検出用コイルの出力信号とを用いて、被検出体を識別する際の識別精度を高めることが可能になる。
【0016】
本発明において、第1検出用コイルは、第1凸部、第2凸部および第3凸部がその内周側に配置されるように筒状に巻回され、第2検出用コイルは、第3凸部がその内周側に配置されるように筒状に巻回され、基部の第1方向側の端面を基部端面とし、基部端面の、第1凸部の第3方向側端面よりも第3方向側を第1基部端面とし、基部端面の、第2凸部の第4方向側端面よりも第4方向側を第2基部端面とし、基部端面の、第1凸部と第3凸部との間を第3基部端面とし、基部端面の、第2凸部と第3凸部の間を第4基部端面とすると、第1基部端面と第2基部端面とは、被検出体の厚み方向において同じ位置に配置され、第3基部端面と第4基部端面とは、被検出体の厚み方向において同じ位置に配置されるとともに、第3基部端面および第4基部端面は、第1基部端面および第2基部端面よりも第2方向側に配置されていることが好ましい。
【0017】
このように構成すると、第1検出用コイルを用いて、主として被検出体の外径を識別し、第2検出用コイルを用いて、主として被検出体の材質や厚みを識別することが可能になる。したがって、被検出体の識別精度を高めることが可能になる。また、このように構成すると、たとえば、第1検出用コイルが巻回される第1ボビンが第1基部端面および第2基部端面に当接するように配置されていても、被検出体の厚み方向において、第3基部端面および第4基部端面と、第1ボビンとの間に隙間が形成される。したがって、この隙間を利用して、第2検出用コイルの端部が接続される端子ピンを回路基板に対して垂直に配置することが可能になる。その結果、第2検出用コイルと回路基板とを電気的に接続するための構成を簡素化することが可能になる。
【0018】
本発明において、コイン状被検出体識別装置は、第1検出用コイルが巻回される略筒状の第1ボビンと、第2検出用コイルが巻回される略筒状の第2ボビンとを備え、第1ボビンは、第1検出用コイルが巻回される第1コイル巻回部と、第1コイル巻回部の第1方向端に繋がるように形成され第1ボビンの外周側へ広がる第1鍔部と、第1コイル巻回部の第2方向端に繋がるように形成され第1ボビンの外周側へ広がる第2鍔部とを備え、第2ボビンは、第2検出用コイルが巻回される第2コイル巻回部と、第2コイル巻回部の第1方向端に繋がるように形成され第2ボビンの外周側へ広がる第3鍔部と、第2コイル巻回部の第2方向端に繋がるように形成され第2ボビンの外周側へ広がる第4鍔部とを備え、被検出体の厚み方向における第1鍔部の厚みは、被検出体の厚み方向における第2鍔部の厚みよりも薄くなっており、被検出体の厚み方向における第3鍔部の厚みは、被検出体の厚み方向における第4鍔部の厚みよりも薄くなっていることが好ましい。
【0019】
このように構成すると、第1鍔部の厚みが第2鍔部の厚みよりも薄くなっており、第3鍔部の厚みが第4鍔部の厚みよりも薄くなっているため、第1コイル巻回部に巻回される第1検出用コイルと第2コイル巻回部に巻回される第2検出用コイルとが、励磁用コイルが巻回される第1コアにより近い位置に配置される。したがって、励磁用コイルが発生させる磁界の中の磁束密度が高い箇所に第1検出用コイルと第2検出用コイルとを配置することが可能になり、その結果、被検出体の識別精度を高めることが可能になる。また、このように構成すると、第2鍔部の厚みが第1鍔部の厚みよりも厚くなっているため、第1検出用コイルの端部が接続される端子ピンが回路基板に対して垂直に配置されるように、端子ピンを第2鍔部に取り付けることが可能になる。同様に、第4鍔部の厚みが第3鍔部の厚みよりも厚くなっているため、第2検出用コイルの端部が接続される端子ピンが回路基板に対して垂直に配置されるように、端子ピンを第4鍔部に取り付けることが可能になる。
【0020】
本発明において、コイン状被検出体識別装置は、第1検出用コイルが巻回される略筒状の第1ボビンと、第2検出用コイルが巻回される略筒状の第2ボビンと、第1検出用コイルの両端側のそれぞれが接続される2本の第1端子ピンと、第2検出用コイルの両端側のそれぞれが接続される2本の第2端子ピンとを備え、第1ボビンの第1方向側に第1検出用コイルが巻回され、第1ボビンの第2方向側に第1端子ピンが取り付けられ、第2ボビンの第1方向側に第2検出用コイルが巻回され、第2ボビンの第2方向側に第2端子ピンが取り付けられていることが好ましい。
【0021】
このように構成すると、第1ボビンの第1方向側に第1検出用コイルが巻回され、第2ボビンの第1方向側に第2検出用コイルが巻回されているため、第1検出用コイルと第2検出用コイルとが、励磁用コイルが巻回される第1コアにより近い位置に配置される。したがって、励磁用コイルが発生させる磁界の中の磁束密度が高い箇所に第1検出用コイルと第2検出用コイルとを配置することが可能になり、その結果、被検出体の識別精度を高めることが可能になる。
【0022】
本発明において、コイン状被検出体識別装置は、励磁用コイルが巻回される略筒状の励磁側ボビンと、励磁用コイルの両端側のそれぞれが接続される2本の励磁側端子ピンとを備え、第1コアは、通過路の第3方向端側に配置され第1凸部に向かって突出する第4凸部と、通過路の第4方向端側に配置され第2凸部に向かって突出する第5凸部と、第4凸部と第5凸部との間に配置され第3凸部に向かって突出する第6凸部とを備え、励磁側ボビンの内周側に、第4凸部、第5凸部および第6凸部が配置され、励磁側ボビンの第2方向側に励磁用コイルが巻回され、励磁側ボビンの第1方向側に励磁側端子ピンが取り付けられていることが好ましい。
【0023】
このように構成すると、第4凸部、第5凸部および第6凸部が内周側に配置される励磁側ボビンの第2方向側に励磁用コイルが巻回されているため、第1コア内で磁路が短絡するのを抑制して、第1凸部と第4凸部との間、第2凸部と第5凸部との間、および、第3凸部と第6凸部との間の磁束密度を高めることが可能になる。したがって、第1凸部と第4凸部との間、第2凸部と第5凸部との間、および、第3凸部と第6凸部との間を通過する被検出体の識別精度を高めることが可能になる。
【0024】
本発明において、コア体は、プレス加工で形成された1枚の金属板で構成され、被検出体の通過方向がその厚み方向となるように配置されていることが好ましい。このように構成すると、コア体の構成を簡素化することが可能になる。また、一般に、プレス加工で形成されたコア体の厚さは薄いため、このように構成すると、複数の被検出体が連続で第1コアと第2コアとの間を通過する場合であっても、連続で通過する複数の被検出体の間の、検出用コイルからの出力信号の変動量を大きくすることが可能になる。したがって、複数の被検出体が連続で第1コアと第2コアとの間を通過する場合であっても、複数の被検出体のそれぞれの真贋等を適切に識別することが可能になる。
【0025】
本発明において、被検出体の通過方向と被検出体の厚み方向とに直交する方向を直交方向とし、直交方向の一方を第3方向とし、直交方向の他方を第4方向とすると、コア体は、第1コアと、第2コアと、第1コアの第3方向の端部と第2コアの第3方向の端部とを繋ぐ第1連結コアと、第1コアの第4方向の端部と第2コアの第4方向の端部とを繋ぐ第2連結コアとを有する環状に形成されていることが好ましい。このように構成すると、励磁用コイルが発生させる磁束の、コア体からの漏れを低減することが可能になる。したがって、コア体に効率の良い磁気回路を形成することが可能になる。また、このように構成すると、コア体を磁気シールドとして機能させることが可能になり、外部磁界に起因する被検出体の識別精度の低下を抑制することが可能になる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明では、磁気センサを有するコイン状被検出体識別装置において、外部の電磁波に起因するコイン状の被検出体の識別精度の低下を抑制することが可能であっても、装置の構成を簡素化することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0029】
(コイン状被検出体識別装置の概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるコイン状被検出体識別装置1の斜視図である。
図2は、
図1に示すコイン状被検出体識別装置1の底面図である。
図3は、
図1に示すコイン状被検出体識別装置1からケース体3および回路基板6を取り外した状態を底面側から示す斜視図である。
図4は、
図3に示す状態から励磁用コイル8、検出用コイル9およびボビン20、21を取り外した状態の斜視図である。
【0030】
本形態のコイン状被検出体識別装置1は、コイン状の被検出体であるメダル2の真贋を識別したり、真のメダル2が良品であるのかそれとも不良品であるのか(すなわち、真のメダル2に摩耗や変形等が生じて不良品になっているのか否か)を識別したりするための装置であり、スロットマシン(図示省略)に搭載されて使用される。すなわち、本形態のコイン状被検出体識別装置1は、スロットマシンのメダル投入口から投入されたメダル2の真贋等を識別するための装置である。したがって、以下では、本形態のコイン状被検出体識別装置1を「メダル識別装置1」とする。このメダル識別装置1は、
図1〜
図3に示すように、ケース体3と、ケース体3に収容される磁気センサ4とを備えている。また、メダル識別装置1の内部には、メダル2が通過する通過路5が形成されている。メダル2は、磁性を有する金属材料で形成されている。また、メダル2は、円板状に形成されている。
【0031】
以下の説明では、
図1等に示すように、互いに直交する3方向のそれぞれをX方向、Y方向およびZ方向とし、X方向を左右方向、Y方向を前後方向、Z方向を上下方向とする。また、X1方向側を「右」側、X2方向側を「左」側、Y1方向側を「前」側、Y2方向側を「後(後ろ)」側、Z1方向側を「上」側、Z2方向側を「下」側とする。本形態では、メダル2は、上側から下側に向かって通過路5を通過する。すなわち、上下方向は、通過路5を通過するメダル2の通過方向である。
【0032】
ケース体3は、樹脂材料で形成されている。また、ケース体3は、ケース体3の上面を構成する上面部3aと、ケース体3の前後左右の4つの側面を構成する側面部3bとを有する略直方体の箱状に形成されている。ケース体3の下面は開口している。ケース体3の下面の開口部分は、カバー部材7によって覆われている(
図9、
図10参照)。このカバー部材7は、薄い平板状に形成されている。また、ケース体3の内部の下端側には、回路基板6が固定されている(
図2参照)。上面部3aには、メダル2が通過するスリット状の通過孔3cが形成されている。回路基板6にも、メダル2が通過するスリット状の通過孔6aが形成されている。また、カバー部材7にも、メダル2が通過するスリット状の通過孔(図示省略)が形成されている。カバー部材7に形成される通過孔および通過孔3c、6aは、通過路5に繋がっている。ケース体3には、通過孔3cへメダル2を案内するためのガイド部材(図示省略)が固定されている。なお、
図2では、カバー部材7の図示を省略している。
【0033】
上面部3aの上面には、平板状に形成される薄い金属板(図示省略)が固定されている。また、側面部3bを構成する4つの側面の前後左右の外側面にも、平板状に形成される薄い金属板(図示省略)が固定されている。これらの金属板は、磁性を有する金属材料で形成されており、メダル識別装置1の外部の電磁波から磁気センサ4を保護するための電磁シールドとして機能している。ケース体3のより具体的な構成については後述する。
【0034】
磁気センサ4は、
図3、
図4に示すように、励磁用コイル8と、検出用コイル9、10と、励磁用コイル8および検出用コイル9、10が巻回されるコア体としての環状コア11とを備えている。励磁用コイル8および検出用コイル9、10は、回路基板6に電気的に接続されている。環状コア11は、磁性材料によって形成されている。たとえば、環状コア11は、フェライト、アモルファス、パーマロイ等の鉄系の磁性材料によって形成されている。また、環状コア11は、薄い平板状に形成されている。たとえば、環状コア11の厚さは、0.5mm程度となっている。以下、磁気センサ4の具体的な構成について説明する。
【0035】
(磁気センサの構成)
図5は、
図3に示す環状コア11の斜視図である。
図6は、
図3に示す環状コア11の底面図である。
図7は、
図1に示すコイン状被検出体識別装置1の回路ブロック図である。
図8は、
図7に示す検出用コイル9からの出力信号に基づいて生成されるコイル出力信号SG1および検出用コイル10からの出力信号に基づいて生成されるコイル出力信号SG2を説明するための図である。
【0036】
磁気センサ4は、上述のように、励磁用コイル8と、検出用コイル9、10と、環状コア11とを備えている。また、磁気センサ4は、励磁用コイル8が巻回される励磁側ボビンとしてのボビン20と、検出用コイル9が巻回される第1ボビンとしてのボビン21と、検出用コイル10が巻回される第2ボビンとしてのボビン22と、励磁用コイル8の両端部のそれぞれが接続される励磁側端子ピンとしての2本の端子ピン23と、検出用コイル9の両端部のそれぞれが接続される第1端子ピンとしての2本の端子ピン24と、検出用コイル10の両端部のそれぞれが接続される第2端子ピンとしての2本の端子ピン25とを備えている。
【0037】
本形態では、環状コア11の厚み方向と上下方向とが一致するように、メダル識別装置1が配置されており、メダル2は、上述のように、上側から下側に向かって通過路5を通過する。すなわち、本形態では、環状コア11の厚み方向とメダル2の通過方向とが一致している。また、前後方向は、通過路5を通過するメダル2の厚み方向である。なお、本形態の左右方向は、メダル2の通過方向とメダル2の厚み方向とに直交する直交方向である。また、前方向は、メダル2の厚み方向の一方である第1方向であり、後ろ方向は、メダル2の厚み方向の他方である第2方向であり、右方向は、直交方向の一方である第3方向であり、左方向は、直交方向の他方である第4方向である。
【0038】
環状コア11は、環状に形成されている。具体的には、環状コア11は、左右方向に細長い略四角環状に形成されている。この環状コア11は、環状コア11の前側部分を構成するとともに左右方向と平行に配置される略直線状の第1コア12と、環状コア11の後ろ側部分を構成するとともに第1コア12と平行に配置される略直線状の第2コア13と、第1コア12の右端と第2コア13の右端とを繋ぐとともに前後方向と平行に配置される直線状の第1連結コア14と、第1コア12の左端と第2コア13の左端とを繋ぐとともに第1連結コア14と平行に配置される直線状の第2連結コア15とから構成されている。本形態の環状コア11は、プレスの打ち抜き加工によって形成されており、第1コア12と第2コア13と第1連結コア14と第2連結コア15とは一体で形成されている。すなわち、環状コア11は、プレス加工で形成された1枚の金属板によって形成されている。
【0039】
第1コア12と第2コア13とは、同形状に形成されており、第1連結コア14と第2連結コア15とは、同形状に形成されている。また、環状コア11は、
図6に示すように、前後方向における環状コア11の中心位置を通過する左右方向に平行な中心線CL1に対して線対称な形状に形成されるとともに、左右方向における環状コア11の中心位置を通過する前後方向に平行な中心線CL2に対して線対称な形状に形成されている。
【0040】
第1コア12には、第2コア13に向かって(すなわち、後ろ側に向かって)突出する凸部12a、12b、12cが形成されている。凸部12a〜12cの前端(すなわち、凸部12a〜12cの基端)は、第1コア12の基部12dに繋がっている。凸部12a〜12cは、長方形状に形成されている。凸部12a〜12cの後端面(すなわち、先端面)は、左右方向と平行になっており、凸部12a〜12cの左右の端面は、前後方向と平行になっている。また、凸部12a〜12cの後端面は、前後方向において同じ位置に配置されている。左右方向における凸部12cの幅は、凸部12a、12bの幅よりも狭くなっている。
【0041】
凸部12aは、右端側に配置され、凸部12bは、左端側に配置され、凸部12cは、凸部12aと凸部12bとの間に配置されている。具体的には、凸部12cは、左右方向における凸部12cの中心と第1コア12の中心とが一致するように配置され、凸部12aと凸部12bとは、中心線CL2を対称軸とする線対称の位置に配置されている。凸部12aと凸部12bとは同形状に形成されており、第1コア12は、中心線CL2に対して線対称な形状に形成されている。本形態の凸部12aは、第4凸部であり、凸部12bは、第5凸部であり、凸部12cは、第6凸部である。
【0042】
左右方向において、凸部12aと第1連結コア14との間には、隙間が形成され、凸部12bと第2連結コア15との間には、隙間が形成されている。また、左右方向において、凸部12aと凸部12cとの間には、隙間が形成され、凸部12bと凸部12cとの間には、隙間が形成されている。上述のように、第1コア12は、中心線CL2に対して線対称な形状に形成されており、凸部12aと第1連結コア14との隙間と、凸部12bと第2連結コア15との隙間とは同じ大きさとなっており、凸部12aと凸部12cとの隙間と、凸部12bと凸部12cとの隙間とは同じ大きさになっている。
【0043】
また、凸部12aと凸部12cとの間の基部12dの後端面12eと、凸部12bと凸部12cとの間の基部12dの後端面12fとは、前後方向に直交する平面状に形成されるとともに、前後方向において同じ位置に配置されている。凸部12aと第1連結コア14との間の基部12dの後端面12gと、凸部12bと第2連結コア15との間の基部12dの後端面12hとは、前後方向に直交する平面状に形成されるとともに、前後方向において同じ位置に配置されている。また、後端面12e、12fは、後端面12g、12hよりも前側に配置されている。
【0044】
上述のように、第2コア13は、第1コア12と同形状に形成されており、中心軸CL1を対称軸とする線対称の位置に配置されている。第2コア13には、第1コア12に向かって(すなわち、前側に向かって)突出する凸部13a、13b、13cが形成されている。凸部13a〜13cの後端(すなわち、凸部13a〜13cの基端)は、第2コア13の基部13dに繋がっている。凸部13a〜13cは、凸部12a〜12cと同形状に形成されており、凸部13a〜13cの前端面(すなわち、先端面)は、前後方向において同じ位置に配置されている。
【0045】
左右方向において、凸部13aは、凸部12aと同じ位置に配置され、凸部13bは、凸部12bと同じ位置に配置され、凸部13cは、凸部12cと同じ位置に配置されている。すなわち、凸部13aは、凸部12aに向かって突出し、凸部13bは、凸部12bに向かって突出し、凸部13cは、凸部12cに向かって突出している。第1コア12と同様に、第2コア13は、中心線CL2に対して線対称な形状に形成されている。本形態の凸部13aは、第1凸部であり、凸部13bは、第2凸部であり、凸部13cは、第3凸部である。
【0046】
また、左右方向において、凸部13aと第1連結コア14との間には、隙間が形成され、凸部13bと第2連結コア15との間には、凸部13aと第1連結コア14との隙間と同じ大きさの隙間が形成されている。また、左右方向において、凸部13aと凸部13cとの間には、隙間が形成され、凸部13bと凸部13cとの間には、凸部13aと凸部13cとの隙間と同じ大きさの隙間が形成されている。
【0047】
また、凸部13aと凸部13cとの間の基部13dの前端面13eと、凸部13bと凸部13cとの間の基部13dの前端面13fとは、前後方向に直交する平面状に形成されるとともに、前後方向において同じ位置に配置されている。凸部13aと第1連結コア14との間の基部13dの前端面13gと、凸部13bと第2連結コア15との間の基部13dの前端面13hとは、前後方向に直交する平面状に形成されるとともに、前後方向において同じ位置に配置されている。また、前端面13e、13fは、前端面13g、13hよりも後ろ側に配置されている。本形態の前端面13e〜13hは、基部端面である。また、前端面13gは、第1基部端面であり、前端面13hは、第2基部端面であり、前端面13eは、第3基部端面であり、前端面13fは、第4基部端面である。
【0048】
前後方向における凸部12a〜12cと凸部13a〜13cとの間は、通過路5となっている。通過路5は、左右方向に細長い長方形状に形成されている。上述のように、ケース体3には、通過孔3cへメダル2を案内するためのガイド部材が固定されている。このガイド部材は、凸部12a、13aの右端面と凸部12b、13bの左端面との間で、メダル2が通過するように、メダル2を通過孔3cへ案内している。すなわち、凸部12a、13aの右端面と凸部12b、13bの左端面との左右方向の距離L1(
図6参照)は、通過路5の左右方向の幅と等しくなっている。また、通過路5の左右方向の幅は、メダル2の外径よりも大きくなっている。すなわち、距離L1は、メダル2の外径よりも大きくなっている。具体的には、通過路5の左右方向の幅は、スロットマシンのメダル投入口から投入されることが想定されるメダル2であって、最も大きな外径を有するメダル2の外径よりも大きくなっており、この最も大きな外径を有するメダル2の外径よりも距離L1は大きくなっている。
【0049】
また、凸部12c、13cは、左右方向における通過路5のどの位置をメダル2が通過しても、前後方向から見たときに、凸部12c、13cの全体がメダル2と重なるように形成され、また、配置されている。すなわち、凸部12a、13aの右端面または凸部12b、13bの左端面と、メダル2の外周端とが一致するように、メダル2が通過路5を通過したとしても、前後方向から見たときに、凸部12c、13cの全体がメダル2と重なるように、凸部12c、13cが形成され配置されている。
【0050】
さらに、前後方向における凸部12a〜12cと凸部13a〜13cとの距離L2(より具体的には、前後方向における凸部12a〜12cの後端面と凸部13a〜13cの前端面との距離L2、
図6参照)は、左右方向における凸部12a、13aの右端面と第1連結コア14の左端面との距離L3(
図6参照)、および、左右方向における凸部12b、13bの左端面と第2連結コア15の右端面との距離L4(
図6参照)よりも短くなっている。また、前後方向における凸部12cと凸部13cとの距離L2は、凸部12cと凸部13aとの最短距離(すなわち、凸部12cの右端面の後端と凸部13aの左端面の前端との最短距離)、および、凸部12cと凸部13bとの最短距離(すなわち、凸部12cの左端面の後端と凸部13bの右端面の前端との最短距離)よりも短くなっている。
【0051】
また、左右方向における凸部12a、13aの右端面と凸部12b、13bの右端面との距離L5、および、左右方向における凸部12a、13aの左端面と凸部12b、13bの左端面との距離L6は、メダル2の外径よりも小さくなっている。具体的には、距離L5、L6は、スロットマシンのメダル投入口から投入されることが想定されるメダル2であって、最も小さな外径を有するメダル2の外径よりも小さくなっている。
【0052】
ボビン20は、鍔付きの略四角筒状に形成されており、励磁用コイル8が巻回されるコイル巻回部20a(
図10参照)と、2個の鍔部20b、20cとを備えている。鍔部20bは、ボビン20の外周側へ広がるように形成されており、コイル巻回部20aの後端に繋がっている。鍔部20cは、ボビン20の外周側へ広がるように形成されており、コイル巻回部20aの前端に繋がっている。鍔部20b、20cは、励磁用コイル8の巻崩れを防止する機能を果たしている。
【0053】
鍔部20b、20cの上面および下面は、上下方向に直交する平面状に形成され、鍔部20b、20cの右側面および左側面は、左右方向に直交する平面状に形成されている。前後方向における鍔部20bの厚みは、前後方向における鍔部20cの厚みよりも薄くなっている。左右方向における鍔部20bの幅と、左右方向における鍔部20cの幅とは等しくなっている。上下方向における鍔部20bの高さと、上下方向における鍔部20cの高さとは等しくなっている。
【0054】
ボビン20の内周側には、
図3に示すように、補強用の2個の壁部20dが形成されている。2個の壁部20dは、左右方向に直交する平板状に形成されている。また、2個の壁部20dは、左右方向に所定の間隔をあけた状態で配置されている。壁部20dは、ボビン20の内周側において上下方向の全域および前後方向の全域に形成されている。
【0055】
ボビン20は、その内周側に凸部12a〜12cが配置されるように第1コア12に取り付けられている。左右方向において、凸部12aは、ボビン20の右端部分と右側に配置される壁部20dとの間に配置され、凸部12bは、ボビン20の左端部分と左側に配置される壁部20dとの間に配置され、凸部12cは、2個の壁部20dの間に配置されている。鍔部20cの前端面は、第1コア12の後端面12g、12hに当接している。凸部12a〜12cの先端側は、鍔部20bの後端面よりも後ろ側へわずかに突出している。
【0056】
励磁用コイル8は、コイル巻回部20aに巻回されている。すなわち、励磁用コイル8は、凸部12a〜12cがその内周側に配置されるように、ボビン20を介して凸部12a〜12cに巻回されている。具体的には、
図3に示すように、凸部12a〜12cの上下両面、凸部12aの右端面および凸部12bの左端面を覆うように、励磁用コイル8が凸部12a〜12cに巻回されている。端子ピン23は、ボビン20の鍔部20cに固定されている。2本の端子ピン23は、鍔部20cの左右両端側のそれぞれに固定されている。また、端子ピン23は、下側へ突出するように、かつ、上下方向と平行になるように鍔部20cに固定されている。端子ピン23の下端側は、回路基板6に固定されており(
図10参照)、励磁用コイル8は、端子ピン23を介して回路基板6に電気的に接続されている。上述のように、前後方向における鍔部20bの厚みは、前後方向における鍔部20cの厚みよりも薄くなっている。そのため、本形態では、ボビン20の後端側に励磁用コイル8が巻回され、ボビン20の先端側に端子ピン23が取り付けられている。
【0057】
ボビン21は、ボビン20と同様に形成されている。すなわち、ボビン21は、鍔付きの略四角筒状に形成されており、検出用コイル9が巻回されるコイル巻回部21a(
図10参照)と、2個の鍔部21b、21cとを備えている。鍔部21bは、ボビン21の外周側へ広がるように形成されており、コイル巻回部21aの前端に繋がっている。鍔部21cは、ボビン21の外周側へ広がるように形成されており、コイル巻回部21aの後端に繋がっている。鍔部21b、21cは、検出用コイル9の巻崩れを防止する機能を果たしている。本形態のコイル巻回部21aは、第1コイル巻回部であり、鍔部21bは、第1鍔部であり、鍔部21cは、第2鍔部である。
【0058】
鍔部21b、21cの上面および下面は、上下方向に直交する平面状に形成され、鍔部21b、21cの右側面および左側面は、左右方向に直交する平面状に形成されている。前後方向における鍔部21bの厚みは、前後方向における鍔部21cの厚みよりも薄くなっている。左右方向における鍔部21bの幅と、左右方向における鍔部21cの幅とは等しくなっており、上下方向における鍔部21bの高さと、上下方向における鍔部21cの高さとは等しくなっている。また、ボビン21の内周側には、
図3に示すように、補強用の2個の壁部21dが形成されている。2個の壁部21dは、左右方向に直交する平板状に形成され、左右方向に所定の間隔をあけた状態で配置されている。
【0059】
ボビン21は、その内周側に凸部13a〜13cが配置されるように第2コア13に取り付けられている。左右方向において、凸部13aは、ボビン21の右端部分と右側に配置される壁部21dとの間に配置され、凸部13bは、ボビン21の左端部分と左側に配置される壁部21dとの間に配置され、凸部13cは、2個の壁部21dの間に配置されている。鍔部21cの後端面は、第2コア13の前端面13g、13hに当接している。凸部13a〜13cの先端側は、鍔部21bの前端面よりも前側へわずかに突出している。
【0060】
検出用コイル9は、コイル巻回部21aに巻回されている。すなわち、検出用コイル9は、凸部13a〜13cがその内周側に配置されるように、ボビン21を介して凸部13a〜13cに巻回されている。具体的には、
図3に示すように、凸部13a〜13cの上下両面、凸部13aの右端面および凸部13bの左端面を覆うように、検出用コイル9が凸部13a〜13cに巻回されている。端子ピン24は、ボビン21の鍔部21cに固定されている。2本の端子ピン24は、鍔部21cの左右両端側のそれぞれに固定されている。また、端子ピン24は、下側へ突出するように、かつ、上下方向と平行になるように鍔部21cに固定されている。端子ピン24の下端側は、回路基板6に固定されており(
図9、
図10参照)、検出用コイル9は、端子ピン24を介して回路基板6に電気的に接続されている。上述のように、前後方向における鍔部21bの厚みは、前後方向における鍔部21cの厚みよりも薄くなっている。そのため、本形態では、ボビン21の前端側に検出用コイル9が巻回され、ボビン21の後端側に端子ピン24が取り付けられている。本形態の検出用コイル9は、第1検出用コイルである。
【0061】
ボビン22は、鍔付きの略四角筒状に形成されている。ボビン22の左右方向の幅は、ボビン21の左右方向の幅よりも狭くなっている。ボビン22の上下方向の高さは、ボビン21の上下方向の高さよりも低くなっている。ボビン22の前後方向の幅は、ボビン21の前後方向の幅よりも広くなっている。ボビン22は、検出用コイル10が巻回されるコイル巻回部22a(
図10参照)と、2個の鍔部22b、22cとを備えている。鍔部22bは、ボビン22の外周側へ広がるように形成されており、コイル巻回部22aの前端に繋がっている。鍔部22cは、ボビン22の外周側へ広がるように形成されており、コイル巻回部22aの後端に繋がっている。鍔部22b、22cは、検出用コイル10の巻崩れを防止する機能を果たしている。本形態のコイル巻回部22aは、第2コイル巻回部であり、鍔部22bは、第3鍔部であり、鍔部22cは、第4鍔部である。
【0062】
鍔部22b、22cの上面および下面は、上下方向に直交する平面状に形成され、鍔部22b、22cの右側面および左側面は、左右方向に直交する平面状に形成されている。前後方向における鍔部22bの厚みは、前後方向における鍔部22cの厚みよりも薄くなっている。本形態では、前後方向における鍔部22cの厚みは、前後方向における前端面13e、13fと前端面13g、13hとの距離と略等しくなっている。左右方向における鍔部22bの幅と左右方向における鍔部22cの幅とは等しくなっており、上下方向における鍔部22bの高さと、上下方向における鍔部22cの高さとは等しくなっている。
【0063】
ボビン22は、その内周側に凸部13cが配置されるように第2コア13に取り付けられている。鍔部22cの後端面は、第2コア13の前端面13e、13fに当接している。凸部13cの先端側は、鍔部22bの前端面よりも前側へわずかに突出している。また、コイル巻回部22aは、ボビン21の内周側に配置されている。本形態では、ボビン21の鍔部21bの厚さと鍔部22bの厚さとが等しくなっている。また、ボビン21の鍔部21cの後端面と前端面13g、13hとが当接し、かつ、鍔部22cの後端面と第2コア13の前端面13e、13fとが当接している状態では、鍔部21bの前端面と鍔部22bの前端面とが前後方向において略同じ位置に配置され、コイル巻回部22aの後端と鍔部21cの後端面とが前後方向において略同じ位置に配置されている(
図10参照)。そのため、コイル巻回部22aは、ボビン21のコイル巻回部21aの内周側および鍔部21cの内周側に配置されている。すなわち、コイル巻回部22aの前端側の一部は、コイル巻回部21aの内周側に配置されている。
【0064】
検出用コイル10は、コイル巻回部22aに巻回されている。すなわち、検出用コイル10は、凸部13cがその内周側に配置されるように、ボビン22を介して凸部13cに巻回されている。具体的には、
図4に示すように、凸部13cの上下両面、右端面および左端面を覆うように、検出用コイル10が凸部13cに巻回されている。端子ピン25は、ボビン22の鍔部22cに固定されている。2本の端子ピン25は、鍔部22cの左右両端側のそれぞれに固定されている。また、端子ピン25は、下側へ突出するように、かつ、上下方向と平行になるように鍔部22cに固定されている。端子ピン25の下端側は、回路基板6に固定されており(
図9、
図10参照)、検出用コイル10は、端子ピン25を介して回路基板6に電気的に接続されている。上述のように、前後方向における鍔部22bの厚みは、前後方向における鍔部22cの厚みよりも薄くなっている。そのため、本形態では、ボビン22の前端側に検出用コイル10が巻回され、ボビン22の後端側に端子ピン25が取り付けられている。本形態の検出用コイル10は、第2検出用コイルである。なお、上述のように、コイル巻回部22aの後端と鍔部21cの後端面とが前後方向において略同じ位置に配置されており、鍔部22cは、ボビン21の後端面より後ろ側に配置されている。そのため、端子ピン25は、ボビン21に接触しない。
【0065】
図7に示すように、励磁用コイル8を構成する導線の一端には、交流電源26が接続され、励磁用コイル8を構成する導線の他端は接地されている。検出用コイル9を構成する導線の一端は、増幅回路27、整流回路28およびレベル調整回路29を介してMPU(Micro Processing Unit)30に接続され、検出用コイル9を構成する導線の他端は接地されている。検出用コイル10を構成する導線の一端は、増幅回路31、整流回路32およびレベル調整回路33を介してMPU30に接続され、検出用コイル10を構成する導線の他端は接地されている。レベル調整回路29とMPU30との間には、コンパレータ35が並列に接続されている。増幅回路27、31、整流回路28、32、レベル調整回路29、33、MPU30およびコンパレータ35は、回路基板6に実装されている。
【0066】
磁気センサ4では、交流電源26から供給される電力によって励磁用コイル8が環状コア11の内周側に交流磁界を発生させている状態でメダル2が通過路5を通過すると、環状コア11の内周側の交流磁界が変動する。環状コア11の内周側の交流磁界が変動すると、検出用コイル9からの出力信号の信号レベルおよび検出用コイル10からの出力信号の信号レベルが変動する。
【0067】
上述のように、検出用コイル9を構成する導線の一端は、増幅回路27、整流回路28およびレベル調整回路29を介して、MPU30に接続されており、検出用コイル9からの出力信号に基づいて生成されるアナログ状のコイル出力信号SG1がレベル調整回路29からMPU30へ入力される。同様に、検出用コイル10を構成する導線の一端は、増幅回路31、整流回路32およびレベル調整回路33を介してMPU30に接続されており、検出用コイル10からの出力信号に基づいて生成されるアナログ状のコイル出力信号SG2がレベル調整回路33からMPU30へ入力される。
【0068】
本形態では、励磁用コイル8が交流磁界を発生させている状態でメダル2が通過路5を通過すると、コイル出力信号SG1、SG2の信号レベルが大きくなるように、磁気センサ4の回路が構成されている。たとえば、1枚のメダル2が磁気センサ4を通過すると(すなわち、1枚のメダル2が通過路5を通過すると)、
図8に示すように信号レベルが変動するコイル出力信号SG1、SG2がMPU30へ入力される。
【0069】
また、上述のように、凸部12a、13aの右端面と凸部12b、13bの左端面との左右方向の距離L1は、通過路5の左右方向の幅と等しくなっており、検出用コイル9は、凸部13a〜13cの上下両面、凸部13aの右端面および凸部13bの左端面を覆うように、ボビン21を介して凸部13a〜13cに巻回されている。そのため、検出用コイル9からの出力信号に基づくコイル出力信号SG1の信号レベルは、通過路5を通過するメダル2の材質、厚みおよび外径の影響によって変動する。
【0070】
一方、凸部12c、13cは、凸部12a、13aと凸部12b、13bとの間に配置されるとともに、左右方向における通過路5のどの位置をメダル2が通過しても、前後方向から見たときに、凸部12c、13cの全体がメダル2と重なるように形成され配置されており、検出用コイル10は、凸部13cに巻回されている。そのため、検出用コイル10からの出力信号に基づくコイル出力信号SG2の信号レベルは、主として、通過路5を通過するメダル2の材質および厚みの影響によって変動する。
【0071】
ここで、コイル出力信号SG1、SG2の信号レベルは、メダル識別装置1の周囲温度の変動等の影響によって変動することがある。本形態では、メダル識別装置1の周囲温度の変動等が生じても、コイル出力信号SG1、SG2の信号レベルがMPU30での測定可能範囲から外れてしまうのを防止するため、コイル出力信号SG1、SG2の信号レベルが定期的に調整されている。具体的には、コイル出力信号SG1の信号レベルに基づいてMPU30から出力されレベル調整回路29に入力されるレベル調整信号に基づいて、レベル調整回路29がコイル出力信号SG1の信号レベルを定期的に調整し、コイル出力信号SG2の信号レベルに基づいてMPU30から出力されレベル調整回路33に入力されるレベル調整信号に基づいて、レベル調整回路33がコイル出力信号SG2の信号レベルを定期的に調整している。
【0072】
また、本形態では、MPU30は、コイル出力信号SG1の信号レベルが所定の閾値以上となっているときに、コイル出力信号SG1、SG2の信号値を取得する。具体的には、まず、コンパレータ35が、レベル調整回路29から入力されるコイル出力信号SG1の信号レベルと閾値とを比較し、比較結果をMPU30へ出力する。また、MPU30は、コイル出力信号SG1の信号レベルが閾値以上となっているときのコイル出力信号SG1、SG2の信号値を取得する。
【0073】
メダル2の種類によって、その材質、厚さおよび径等が変わるため、通過路5を通過するメダル2の種類に応じて、コイル出力信号SG1の信号レベルのピーク値P1、および、コイル出力信号SG2の信号レベルのピーク値P2が変わる。そのため、MPU30は、ピーク値P1とピーク値P2とに基づいて、通過路5を通過するメダル2が、メダル識別装置1が搭載されるスロットマシンで使用されるべき真のメダルであるか否かを識別する。具体的には、MPU30は、ピーク値P1が所定の範囲内にあり、かつ、ピーク値P2が所定の範囲内にある場合に、通過路5を通過するメダル2が、メダル識別装置1が搭載されるスロットマシンで使用されるべき真のメダルであると識別する。すなわち、MPU30は、ピーク値P1とピーク値P2との組合せによって、通過路5を通過するメダル2が、メダル識別装置1が搭載されるスロットマシンで使用されるべき真のメダルであるか否かを識別する。
【0074】
なお、励磁用コイル8が交流磁界を発生させている状態でメダル2が通過路5を通過したときに、コイル出力信号SG1、SG2の信号レベルが小さくなるように、磁気センサ4の回路が構成されても良い。この場合には、たとえば、コイル出力信号SG1、SG2の信号レベルのボトム値に基づいて、通過路5を通過するメダル2が、メダル識別装置1が搭載されるスロットマシンで使用されるべき真のメダルであるか否かが識別される。
【0075】
(回路基板およびケース体の構成)
図9は、
図2のE−E断面の断面図である。
図10は、
図2のF−F断面の断面図である。
図11は、
図2に示す回路基板6の底面図である。
図12は、
図2に示すケース体3の底面図である。
【0076】
回路基板6は、ガラスエポキシ基板等のリジット基板であり、略長方形の平板状に形成されている。上述のように、回路基板6には、通過孔6aが形成されている。また、回路基板6には、MPU30等が実装されている。
図11に示すように、回路基板6には、端子ピン23〜25の下端側部分が挿通されて固定される6個の固定孔6bが形成されている。また、回路基板6には、銅箔等の導電性材料からなる導体パターンが形成されている。
【0077】
上述のように、ケース体3は、上面部3aと側面部3bとを有する略直方体の箱状に形成されている。また、ケース体3の下面は開口しており、この開口部分はカバー部材7によって覆われている。また、ケース体3の下端側には、回路基板6が固定され、上面部3aには、通過孔3cが形成されている。ケース体3の内部には、ボビン20〜22を介して励磁用コイル8および検出用コイル9、10が巻回された環状コア11と回路基板6とが収容されている。
【0078】
ケース体3の内側には、ボビン20、21の上面が当接するボビン当接面3dと、環状コア11の外周側部分が当接可能なコア支持面3eと、回路基板6が固定される基板固定面3fとが形成されている。また、ケース体3の内側には、端子ピン23〜25とケース体3との干渉を防止するための8個の逃げ部3gが形成されている。
【0079】
ボビン当接面3dは、上下方向に直交する平面状に形成されている。本形態では、上面部3aの下面が、ボビン当接面3dとなっており、下側から見たときのボビン当接面3dの形状は、通過孔3cを囲む細長い四角環状となっている。
図10に示すように、ボビン当接面3dには、ボビン20の鍔部20b、20cの上面、および、ボビン21の鍔部21b、21cの上面が当接している。具体的には、鍔部20b、20cの上面の全体、および、鍔部21b、21cの上面の全体がボビン当接面3dに当接している。
【0080】
コア支持面3eは、上下方向に直交する平面状に形成されている。また、コア支持面3eは、ボビン当接面3dよりも下側に形成されるとともに、ボビン当接面3dよりもケース体3の外周側に形成されており、下側から見たときのコア支持面3eの形状は、ボビン当接面3dを囲む細長い四角環状となっている。コア支持面3eには、
図12に示すように、第1コア12の基部12dと、第2コア13の基部13dと、第1連結コア14の右端側部分と、第2連結コア15の左端側部分とが当接可能となっている。
【0081】
基板固定面3fは、上下方向に直交する平面状に形成されている。また、基板固定面3fは、コア支持面3eよりも下側に形成されるとともに、コア支持面3eよりもケース体3の外周側に形成されており、下側から見たときの基板固定面3fの形状は、コア支持面3eを囲む細長い四角環状となっている。基板固定面3fには、回路基板6の外周側部分が固定されている。
【0082】
回路基板6は、その厚み方向が上下方向と一致するように基板固定面3fに固定されており、
図9、
図10に示すように、基板固定面3fに固定される回路基板6は、環状コア11の下面を覆っている。上下方向から見たときに、回路基板6の面積は、環状コア11の面積よりも広くなっており、回路基板6は、環状コア11の下面の略全域を覆っている。具体的には、
図2、
図11に示すように、上下方向から見たときに、凸部12a〜12c、13a〜13cの先端部分は、通過孔6aの中に配置されており、回路基板6は、上下方向から見たときに、凸部12a〜12c、13a〜13cの先端部分を除く環状コア11の下面の全域を覆っている。
【0083】
図12に示すように、8個の逃げ部3gのうちの4個の逃げ部3gは、ボビン当接面3dに形成され、残りの4個の逃げ部3gは、ボビン当接面3dとコア支持面3eとの境界部分に形成されている。逃げ部3gは、上側へ窪むように形成されている。
【0084】
本形態では、ボビン20の鍔部20b、20cの上面とボビン当接面3dとが当接し、かつ、ボビン21の鍔部21b、21cの上面とボビン当接面3dとが当接することで、励磁用コイル8および検出用コイル9、10が巻回された環状コア11が、上下方向においてケース体3に対して位置決めされている。なお、環状コア11の外周側部分は、わずかな隙間を介してコア支持面3eと対向しているか、あるいは、コア支持面3eに軽く当接している。
【0085】
ケース体3の内部には、図示を省略する軟質の樹脂が充填されている。すなわち、カバー部材7とケース体3とによって構成されるケース体3の内部の空間には、樹脂が充填されている。具体的には、ケース体3の内部の、回路基板6よりも上側の空間のみに樹脂が充填されている。あるいは、ケース体3の内部の、回路基板6よりも上側の空間および回路基板6よりも下側の空間の両方に樹脂が充填されている。この樹脂は、通過路5および通過孔3c、6aをメダル2が支障なく通過できる程度に充填されている。
【0086】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、ケース体3の基板固定面3fに固定される回路基板6は、環状コア11の下面を覆っている。また、本形態では、上下方向から見たときに、回路基板6の面積は、環状コア11の面積よりも広くなっており、回路基板6は、環状コア11の下面の略全域を覆っている。そのため、本形態では、環状コア11の下側において、回路基板6に形成される導体パターンを電磁シールドとして機能させることが可能になる。したがって、本形態では、環状コア11の下側に別途、電磁シールドを設けなくても、環状コア11の上側、および、環状コア11の前後左右の両側に電磁シールドを設ければ、外部の電磁波に起因するメダル2の識別精度の低下を抑制することが可能になる。その結果、本形態では、外部の電磁波に起因するメダル2の識別精度の低下を抑制することが可能であっても、メダル識別装置1の構成を簡素化することが可能になる。
【0087】
なお、本形態では、環状コア11が、平板状に形成され、その厚み方向と上下方向とが一致するように配置されているため、側面部3bを構成する4つの側面の前後左右の外側面に固定される金属板(すなわち、電磁シールド)を小型化することが可能になる一方で、環状コア11の下側に比較的大きな電磁シールドを設ける必要がある。しかし、本形態では、回路基板6に形成される導体パターンを電磁シールドとして機能させることが可能になるため、環状コア11の下側に別途、大きな電磁シールドを設ける必要がない。
【0088】
本形態では、略四角環状に形成される環状コア11に励磁用コイル8および検出用コイル9、10が巻回されている。そのため、X方向とY方向とから構成されるXY平面内において任意の方向を向いている外部磁界の中にメダル識別装置1が配置されたとしても、外部磁界に起因する磁路は、通過路5に形成されない。たとえば、磁力線の向きが後ろ方向を向いている外部磁界(
図13中の矢印)の中にメダル識別装置1が配置されたとしても、
図13に示すように、外部磁界に起因する磁路は、通過路5に形成されない。すなわち、本形態では、環状コア11を磁気シールドとして機能させることが可能になり、その結果、メダル識別装置1の外部磁界に起因するメダル2の識別精度の低下を抑制することが可能になる。なお、上下方向(Z方向)を向いている外部磁界の中にメダル識別装置1が配置されたとしても、上下方向は、検出用コイル9、10の感磁方向と直交しているため、メダル識別装置1は、外部磁界の影響を受けにくい。
【0089】
また、本形態では、略四角環状に形成される環状コア11に励磁用コイル8および検出用コイル9、10が巻回されているため、励磁用コイル8が発生させる磁束の、環状コア11からの漏れを低減することが可能になる。したがって、本形態では、環状コア11に効率の良い磁気回路を形成することが可能になる。
【0090】
本形態では、検出用コイル9からの出力信号に基づくコイル出力信号SG1の信号レベルは、通過路5を通過するメダル2の材質、厚みおよび外径の影響によって変動し、検出用コイル10からの出力信号に基づくコイル出力信号SG2の信号レベルは、主として、通過路5を通過するメダル2の材質および厚みの影響によって変動する。そのため、本形態では、検出用コイル9を用いて、主として、メダル2の外径を識別し、検出用コイル10を用いて、主としてメダル2の材質や厚みを識別することが可能になる。したがって、本形態では、メダル2の識別精度を高めることが可能になる。
【0091】
本形態では、コイル巻回部22aの前端側の一部は、コイル巻回部21aの内周側に配置されており、検出用コイル10の前端側の一部と検出用コイル9とが前後方向において同じ位置に配置されている。そのため、本形態では、メダル2の識別精度を高めることが可能になる。すなわち、前後方向において、検出用コイル9と検出用コイル10とが完全にずれていると、通過路5を通過するメダル2の種類に応じて出力される検出用コイル9からの出力信号に基づくコイル出力信号SG1の信号レベルのピーク値P1と検出用コイル10からの出力信号に基づくコイル出力信号SG2の信号レベルのピーク値P2との組合せでメダル2を識別する際に、この組合せのばらつきが大きくなり、ピーク値P1、P2を用いてメダル2を識別する際の識別精度が低下するおそれがある。これに対して、前後方向において、検出用コイル10の前端側の一部と検出用コイル9とが前後方向において同じ位置に配置されていると、ピーク値P1とピーク値P2との組合せのばらつきを小さくすることが可能になる。したがって、本形態では、ピーク値P1、P2を用いて、メダル2の識別精度を高めることが可能になる。
【0092】
本形態では、第2コアの前端面13e、13fは、第2コアの前端面13g、13hよりも後ろ側に配置されており、ボビン21の鍔部21cの後端面と前端面13g、13hとが当接し、かつ、ボビン22の鍔部22cの後端面と第2コア13の前端面13e、13fとが当接しているときに、鍔部22cは、ボビン21の後端面より後ろ側に配置されている。そのため、本形態では、鍔部22cに取り付けられる端子ピン25を、ボビン21に接触させることなく、回路基板6に対して垂直に配置することができる。したがって、本形態では、検出用コイル10と回路基板6とを電気的に接続するための構成を簡素化することが可能になる。
【0093】
本形態では、前後方向におけるボビン21の鍔部21bの厚みは、前後方向における鍔部21cの厚みよりも薄くなっており、ボビン21の前端側に検出用コイル9が巻回されている。また、本形態では、前後方向におけるボビン22の鍔部22bの厚みは、前後方向における鍔部22cの厚みよりも薄くなっており、ボビン22の前端側に検出用コイル10が巻回されている。すなわち、本形態では、励磁用コイル8が巻回される第1コア12の凸部12a〜12cにより近い位置に検出用コイル9、10が配置されている。そのため、本形態では、励磁用コイル8が発生させる磁界の中の磁束密度が高い箇所に検出用コイル9、10を配置することが可能になり、その結果、メダル2の識別精度を高めることが可能になる。
【0094】
本形態では、前後方向におけるボビン20の鍔部20bの厚みは、前後方向における鍔部20cの厚みよりも薄くなっており、ボビン20の後端側に励磁用コイル8が巻回されている。すなわち、本形態では、第2コア13の凸部13a〜13cにより近い位置に励磁用コイル8が配置されている。したがって、本形態では、第1コア12内で磁路が短絡するのを抑制して、凸部12aと凸部13aとの間、凸部12bと凸部13bとの間、および、凸部12cと凸部13cとの間の磁束密度を高めることが可能になる。その結果、本形態では、凸部12a〜12cと凸部13a〜13cとの間に形成される通過路5を通過するメダル2の識別精度を高めることが可能になる。
【0095】
本形態では、環状コア11は、プレス加工で形成された1枚の金属板によって形成されており、環状コア11の厚さは薄くなっている。そのため、本形態では、複数のメダル2が連続で通過路5を通過する場合であっても、連続で通過する複数のメダル2の間で、検出用コイル9、10からの出力信号に基づくコイル出力信号SG1、SG2の信号レベルの低下量を大きくすることが可能になる。すなわち、
図14(A)に示すように、環状コア11の厚さが厚い場合には、
図14(B)に示すように、連続で通過する複数のメダル2の間で、検出用コイル9、10からの出力信号に基づくコイル出力信号SG1、SG2の信号レベルの低下量が小さくなるが、
図14(C)に示すように、環状コア11の厚さが薄い場合には、
図14(D)に示すように、連続で通過する複数のメダル2の間で、検出用コイル9、10からの出力信号に基づくコイル出力信号SG1、SG2の信号レベルの低下量を大きくすることが可能になる。したがって、本形態では、複数のメダル2が連続で通過路5を通過する場合であっても、複数のメダル2のそれぞれの真贋等を適切に識別することが可能になる。
【0096】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0097】
上述した形態では、上下方向から見たときに、回路基板6の面積は、環状コア11の面積よりも広くなっている。この他にもたとえば、上下方向から見たときに、回路基板6の面積が、環状コア11の面積と等しくなっていても良いし、環状コア11の面積より小さくなっていても良い。また、上述した形態では、コイル巻回部22aの前端側の一部がコイル巻回部21aの内周側に配置されているが、コイル巻回部22aの全部がコイル巻回部21aの内周側に配置されても良い。また、コイル巻回部22aの全体が、前後方向において、コイル巻回部21aとずれた位置に配置されても良い。
【0098】
上述した形態では、第1コア12の後端面12e、12fは、後端面12g、12hよりも前側に配置されている。この他にもたとえば、後端面12e、12fと後端面12g、12hとが前後方向において同じ位置に配置されても良い。同様に、上述した形態では、第2コア13の前端面13e、13fは、前端面13g、13hよりも後ろ側に配置されているが、前端面13e、13fと前端面13g、13hとが前後方向において同じ位置に配置されても良い。
【0099】
上述した形態では、ボビン20の鍔部20bの前後方向の厚さは、鍔部20cの前後方向の厚さよりも薄くなっている。この他にもたとえば、鍔部20bの前後方向の厚さは、鍔部20cの前後方向の厚さと同じであっても良いし、鍔部20cの前後方向の厚さより厚くても良い。同様に、上述した形態では、ボビン21の鍔部21bの前後方向の厚さは、鍔部21cの前後方向の厚さよりも薄くなっているが、鍔部21bの前後方向の厚さは、鍔部21cの前後方向の厚さと同じであっても良いし、鍔部21cの前後方向の厚さより厚くても良い。また、上述した形態では、ボビン22の鍔部22bの前後方向の厚さは、鍔部22cの前後方向の厚さよりも薄くなっているが、鍔部22bの前後方向の厚さは、鍔部22cの前後方向の厚さと同じであっても良いし、鍔部22cの前後方向の厚さより厚くても良い。
【0100】
上述した形態では、励磁用コイル8は、ボビン20を介して凸部12a〜12cに巻回されている。この他にもたとえば、所定の絶縁処理を行っているのであれば、励磁用コイル8は、凸部12a〜12cに直接、巻回されても良い。同様に、検出用コイル9は、ボビン21を介して凸部13a〜13cに巻回され、検出用コイル10は、ボビン22を介して凸部13cに巻回されているが、検出用コイル9は、凸部13a〜13cに直接、巻回されても良いし、検出用コイル10は、凸部13cに直接、巻回されても良い。
【0101】
上述した形態では、第1コア12と第2コア13と第1連結コア14と第2連結コア15とが一体で形成されている。この他にもたとえば、第1コア12、第2コア13、第1連結コア14および第2連結コア15の少なくともいずれか1つが別体で形成され、第1コア12と第2コア13と第1連結コア14と第2連結コア15とが一体化されても良い。すなわち、環状コア11は、一体で形成されていなくても良い。また、上述した形態では、環状コア11は、プレス加工で形成された1枚の金属板によって形成されているが、環状コア11は、たとえば、磁性材料で形成される金属箔と、この金属箔が貼り付けられる薄い樹脂製の補強板とから構成されても良い。
【0102】
上述した形態では、磁気センサ4は、環状に形成される環状コア11を備えている。この他にもたとえば、磁気センサ4は、環状コア11に代えて、第1コア12、第2コア13、第1連結コア14および第2連結コア15の少なくともいずれか1箇所にギャップ(切れ目)が形成されたコア体を備えていても良い。この場合には、ギャップは非磁性材料で埋められても良い。
【0103】
上述した形態では、凸部12a〜12cは、長方形状に形成されている。この他にもたとえば、凸部12a〜12cは、後ろ側に向かうにしたがって左右方向の幅が狭く、または、広くなる台形状に形成されても良い。同様に、凸部13a〜13cは、長方形状に形成されているが、凸部13a〜13cは、前側に向かうにしたがって左右方向の幅が狭く、または、広くなる台形状に形成されても良い。
【0104】
上述した形態では、第1コア12に3個の凸部12a〜12cが形成されている。この他にもたとえば、第1コア12に形成される凸部の数は、1個または2個であっても良いし、4個以上であっても良い。同様に、上述した形態では、第2コア13に3個の凸部13a〜13cが形成されているが、第2コア13に形成される凸部の数は、2個または4個以上であっても良い。
【0105】
上述した形態では、環状コア11は、略四角環状に形成されている。この他にもたとえば、環状コア11は、円環状、楕円環状または長円環状に形成されても良い。また、環状コア11は、四角環状以外の多角環状に形成されても良い。
【0106】
上述した形態では、磁気センサ4は、2個の検出用コイル9、10を備えている。この他にもたとえば、磁気センサ4が備える検出用コイルの数は、1個であっても良いし、3個以上であっても良い。この場合には、検出用コイルの数に応じて、第2コア13に凸部が形成されれば良い。
【0107】
上述した形態では、メダル識別装置1は、スロットマシンに搭載されて使用されている。この他にもたとえば、メダル識別装置1は、メダル購入機やメダル計数機に搭載されて使用されても良い。また、上述した形態では、スロットマシンで使用されるメダル2を識別するためのメダル識別装置1を例に、本発明のコイン状被検出体識別装置の実施例を説明しているが、本発明が適用されるコイン状被検出体識別装置は、たとえば、ゲーム機で使用されるメダル等の他のコイン状の被検出体を識別するための装置であっても良い。
また、本発明におけるコイン状の被検出体は、スロットマシンやゲーム機等で使用されるメダルに限定されず、硬貨であっても良い。なお、メダル購入機は、現金を入れてメダルを購入するための装置であり、スロットマシン間やホール入口に設置されている。また、メダル計数機は、各スロットマシンから集まるメダルの数を数えるための装置である。このメダル計数機は、たとえば、所定台数のスロットマシンに対して1台設置されており(たとえば、島ごとに設置されており)、メダル計数機が設置された島を構成する複数のスロットマシンから集まったメダル2の数を数える。また、メダル計数機は、たとえば、島ごとに集まったメダル2をさらに集めて、その数を数える一括集中処理機である。また、メダル計数機は、たとえば、メダル2を景品に換えるためにメダル2の数を数える装置である。