(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記固定ステージの厚さT1を2〜10mmの範囲内の値とするとともに、前記可動ステージの厚さT2を2〜10mmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載のステージ機構。
前記ガイド部材が複数設けてあるとともに、各ガイド部材に使用される前記金属片が複数の湾曲した金属片であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のステージ機構。
前記送りネジが、前記ナット部材を第1のナット部材とした場合に、当該第1のナット部材とは別の第2のナット部材によって、前記ネジ止め部材に対して回転可能に固定されているとともに、当該第2のナット部材が、内部に送りネジ固定部材を有し、当該送りネジ固定部材が、前記送りネジの通過孔を有する円筒状の樹脂部材であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のステージ機構。
前記第2のナット部材が、当該第2のナット部材の表面から内部に貫通するように設けられた接着剤注入孔を有するとともに、前記第2のナット部材と、前記送りネジとが、接着剤注入孔から注入された接着剤によって固定されていることを特徴とする請求項5に記載のステージ機構。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態は、
図1(a)〜(c)に例示するように、固定ステージ11と、当該固定ステージ11の表面に沿ってスライドする可動ステージ12と、を含むステージ機構10であって、
固定ステージ11の側面に固定されたナット部材16と、可動ステージ12の側面に固定されたネジ止め部材17と、ナット部材16のネジ溝に沿って回転移動するとともにネジ止め部材17に対して回転可能に固定されてなる送りネジ15と、から構成された送り機構部品14と、
固定ステージ11の上面に設けられた第1のガイド溝20bと、可動ステージ12の下面に設けられた第2のガイド溝(図示せず)と、第1のガイド溝20bおよび第2のガイド溝に嵌合する金属片(図示せず)と、から構成されたガイド部材と、
固定ステージ11と、可動ステージ12とを上下方向に連結するとともに、2つの部材間の摺接力を調整するための押圧ボルト部材(図示せず)と、
を備え、かつ、
固定ステージ11の厚さをT1mmとし、可動ステージ12の厚さをT2mmとし、送りネジ15のネジ溝を有するネジ部15bの直径をT3mmとした場合に、下記関係式(1)を満足することを特徴とするステージ機構10である。
(T1+T2)/T3≦4 (1)
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の実施形態のステージ機構10について、具体的に説明する。
【0020】
1.基本動作
まず、
図1(a)〜(c)を用いて、本発明のステージ機構10の基本動作を説明する。
すなわち、本発明のステージ機構10は、ステージ機構10の側方に、送り機構部品14が設けてあり、かかる送り機構部品14は、固定ステージ11の側面に固定されたナット部材16と、可動ステージ12の同一側の側面に固定されたネジ止め部材17と、送りネジ15と、から構成される。
また、送りネジ15は、ネジ止め部材17に対して回転可能に固定されている一方、ナット部材16に対しては螺合していることから、送りネジ15を手動もしくはモーター等により回転させると、その回転力がナット部材16に伝達される。
このとき、ナット部材16は、送りネジ15からの回転力に追従して回転しようとするが、ナット部材16は、固定ステージ11の側面に固定されているため、回転不能となっている。
したがって、送りネジ15の回転運動は、ネジ止め部材17を介して送りネジ15に固定されている可動ステージ12のスライド運動に変換されることになるため、可動ステージ12を送りネジ15の送りに同期させて、その軸心方向に沿って往復移動させることができる。
また、送りネジ15の回転を停止することで、可動ステージ12は、その位置に正確に停止することができる。
なお、
図1(a)は、可動ステージ12を固定ステージ11に対して最も後退させた状態のステージ機構10の斜視図であり、
図1(b)は、可動ステージ12を固定ステージ11に対して最も進行させた状態のステージ機構10の斜視図である。
また、
図1(c)は、
図1(a)に示すステージ機構10を送り機構部品14側から眺めた正面図である。
【0021】
2.関係式(1)
また、本発明のステージ機構10は、
図1(a)〜(c)に示すように、固定ステージ11の厚さをT1mmとし、可動ステージ12の厚さをT2mmとし、送りネジ15のネジ溝を有するネジ部15bの直径をT3mmとした場合に、下記関係式(1)を満足することを特徴とする。
(T1+T2)/T3≦4 (1)
この理由は、本発明のステージ機構10であれば、ステージ機構10の側方に所定の送り機構部品14を設けたことから、実質的に、固定ステージ11および可動ステージ12の厚さが制限されないため、送りネジ15の直径(通常、2〜5mm)の4倍以下の超薄型ステージ機構とすることができるためである。
【0022】
但し、ステージ機構10の側方に所定の送り機構部品14を設けた場合、送りネジ15の回転により生じる可動ステージ12の推進力が、可動ステージ12の片側面のみに負荷されることになるため、ステージ機構10の上方から眺めた場合に、固定ステージ11に対して、可動ステージ12が水平面内において回転する現象、すなわちヨーイング現象が発生し易くなる。
この点、本発明のステージ機構10であれば、後述するように、所定のガイド部材および所定の押圧ボルト部材を備えることから、送り機構部品14をステージ機構10の側方に設けているにもかかわらず、ヨーイングの発生を効果的に抑制することができる。
したがって、本発明であれば、ヨーイングの発生を効果的に抑制し、ワークの移動を精密に行うことができる超薄型ステージ機構を実現することができる。
なお、ステージ機構10の機械的強度を考慮して、上述したT1、T2およびT3が、下記関係式(1´)を満足することがより好ましく、下記関係式(1´´)を満足することがさらに好ましい。
1.5≦(T1+T2)/T3≦3 (1´)
2≦(T1+T2)/T3≦2.5 (1´´)
【0023】
また、送りネジ15におけるネジ部15bの直径T3が、通常、2〜5mmであることを考慮すると、固定ステージ11の厚さT1および可動ステージ12の厚さT2の合計を4〜20mmの範囲内の値とすることが好ましく、6〜18mmの範囲内の値とすることがより好ましく、8〜16mmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、本発明のステージ機構の実施品の写真を、
図2(a)〜(b)に示す。
これらの写真に示すように、本発明のステージ機構によれば、超薄型ステージを実現することが可能であり、具体的には、鉛筆の直径と同程度の厚さ(約8mm)とすることが可能である。
【0024】
3.固定ステージ
図1(a)〜(c)に示すように、固定ステージ11の形態としては、全体的に平板状であれば特に制限されるものではなく、通常、平板状の略直方体とすることが好ましい。
また、その寸法としては、縦幅(送りネジ15の軸心方向の幅)を2〜10cmの範囲内の値、横幅を2〜10cmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0025】
また、固定ステージ11の厚さT1を2〜10mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、固定ステージ11の厚さをかかる範囲内の値とすることにより、より薄型のステージ機構10を得ることができるためである。
すなわち、固定ステージ11の厚さT1が2mm未満の値となると、固定ステージ11の機械的な強度が過度に低下して、後述するガイド部材や押圧ボルト部材を設けた際に、微妙な歪みが生じ易くなる場合があるためである。一方、固定ステージ11の厚さT1が10mmを超えた値となると、超薄型のステージ機構10を得ることが困難になる場合があるためである。
したがって、固定ステージ11の厚さT1を3〜9mmの範囲内の値とすることがより好ましく、4〜8mmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0026】
また、固定ステージ11の構成材料は、特に制限されるものではないが、通常、アルミニウム(アルマイト処理アルミニウムを含む。)、銅、黄銅、鉄、ニッケル、マグネシウム、タングステン、セラミック、高分子樹脂材料等の少なくとも一つであることが好ましい。
特に、アルマイト処理アルミニウムであれば、軽量性、耐食性、耐久性、加工性、熱伝導性、装飾性、および経済性等に優れていることから、固定ステージ11の構成材料として好適である。
【0027】
4.可動ステージ
図1(a)〜(c)に示すように、可動ステージ12の形態についても、固定ステージ11の形態と同様に、特に制限されるものではなく、通常、平板状の略直方体とすることが好ましい。
また、その寸法についても、固定ステージ11の寸法と同様に、縦幅(送りネジ15の軸心方向の幅)を2〜10cmの範囲内の値、横幅を2〜10cmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0028】
また、可動ステージ12の厚さT2を2〜10mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、可動ステージ12の厚さをかかる範囲内の値とすることにより、より薄型のステージ機構10を得ることができるためである。
すなわち、可動ステージ12の厚さT2が2mm未満の値となると、可動ステージ12の機械的な強度が過度に低下して、後述するガイド部材や押圧ボルト部材を設けた際に、微妙な歪みが生じ易くなる場合があるためである。一方、可動ステージ12の厚さT2が10mmを超えた値となると、超薄型のステージ機構10を得ることが困難になる場合があるためである。
したがって、可動ステージ12の厚さT2を3〜9mmの範囲内の値とすることがより好ましく、4〜8mmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0029】
また、可動ステージ12は、
図1(a)〜(b)に示すように、その表面側に、例えば、直径1〜5mmのワーク固定用貫通孔12aが1つまたは2つ以上設けてあることが好ましい。
この理由は、かかるワーク固定用貫通孔12aを用いて、所定ワークをステージ機構10に対して強固に取り付けることができるためである。
また、かかるワーク固定用貫通孔12aを用いて、
図3に示すように、ステージ機構10に対してさらに別のステージ機構10を取り付けることができ、ワークを2次元方向に移動させることも可能となるためである。
この点、本発明のステージ機構10は、超薄型ステージ機構であることから、
図3に示すように複数のステージ機構10を重ねた使用態様とした場合であっても、可動ステージ12にワークを搭載する際に、可動ステージ12の上方における搭載スペースを容易に確保することができる。
なお、可動ステージ12の構成材料については、特に制限されるものではないが、固定ステージ11の場合と同様の観点から、特に、アルマイト処理アルミニウムを用いることが好ましい。
【0030】
5.送り機構部品
図1(a)〜(c)に示すように、本発明のステージ機構10は、固定ステージ11の側面に固定されたナット部材16と、可動ステージ12の側面に固定されたネジ止め部材17と、ナット部材16のネジ溝に沿って回転移動するとともにネジ止め部材17に対して回転可能に固定されてなる送りネジ15と、から構成された送り機構部品14を備えることを特徴とする。
以下、かかる送り機構部品14について、ナット部材16、ネジ止め部材17および送りネジ15に分けて、具体的に説明する。
【0031】
(1)ナット部材
図1(a)〜(c)に示すように、ナット部材16は、固定ステージ11の側面に固定されることを特徴とする。
また、ナット部材16を固定ステージ11の側面に対して固定する態様は特に制限されるものではないが、例えば、
図4に示すように、ナット部材16をホールド部材16fに挿入するとともに固定ネジ16gおよび接着剤等によりこれらを固定した上で、ホールド部材16fをボルト等により固定ステージ11の側面に固定することが好ましい。
なお、
図4は、
図1(a)に示すステージ機構10のA−A断面図である。
【0032】
また、ナット部材16の形態としては、送りネジ15と螺合可能、つまり、送りネジ15が、ナット部材16のネジ溝に沿って回転移動可能な態様であれば特に制限されるものではないが、例えば、
図4に示すように、送りネジ15の軸心方向を長軸とし、これに沿った方向にネジ孔を有する円柱形または多角柱形の部材とすることが好ましい。
また、その寸法としては、通常、軸心方向の長さを2〜30mmの範囲内の値、幅を2〜30mmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0033】
また、ナット部材16の構成材料としては、特に限定されるものではないが、特殊用途鋼鋼材であるSUS、SUH、SUJ、SUP、SUMや、工具鋼鋼材であるSK、SKS、SKD、SKT、SKH等の少なくとも一つであることが好ましい。
中でも、SUS303、SUS440、SKS、SKDを用いることが特に好ましい。
【0034】
また、
図4に示すように、ナット部材16が、内部にバックラッシュ吸収部材16aを有することが好ましい。
この理由は、ナット部材16がかかるバックラッシュ吸収部材16aを有することにより、可動ステージ12がスライドしている間には、所定のすべり性を発揮しつつ応力を吸収して、当該可動ステージ12のスライドを阻害することなく、その横揺れや捩れ等を防止することができ、ひいては、ヨーイングの発生をより効果的に抑制することができるためである。
一方、可動ステージ12を固定する際には、適度に変形して、可動ステージ12のバックラッシュを抑制し、かつ、固定した後には、十分に固化して、同様に可動ステージ12等に発生する応力を吸収し、強固に固定状態を保持することができ、所謂「ロック性」を得ることができるためである。
【0035】
また、
図5(a)〜(b)に示すように、バックラッシュ吸収部材16aが、送りネジ15の通過孔16bを有する円筒状の樹脂部材であることが好ましい。
この理由は、バックラッシュ吸収部材16aをこのように構成することにより、バックラッシュ吸収部材16aを容易にナット部材16の内部に収容することができるとともに、通過孔16bの直径を調整することにより、送りネジ15に対するバックラッシュ吸収部材16aの接触圧力を、適宜、調整することができるためである。
また、上述した通過孔16bの直径としては、送りネジ15におけるネジ部15bの外径から、ネジ溝におけるピッチ幅を差し引いた値とすることが好ましい。
また、ナット部材16の内部にバックラッシュ吸収部材16aを収容する方法としては、
図5(a)〜(b)に示すように、ナット部材16のネジ孔の一部を切削等して、バックラッシュ吸収部材16aを収容するためのスペース16cを形成し、当該スペース16cに対してバックラッシュ吸収部材16aを収容することが好ましい。
また、
図5(a)〜(b)に示すように、スペース16cの出口部分には、折り返し部16dを設けることが好ましい。
この理由は、かかる折り返し部16dを設けることにより、バックラッシュ吸収部材16aをスペース16cに対して安定的に収容および固定することができるためである。
なお、
図5(a)は、ナット部材16の軸心を通る面でナット部材16を切断した場合の断面図であり、
図5(b)は、
図5(a)に示すナット部材16の斜視図である。
【0036】
また、バックラッシュ吸収部材16aの構成材料としては、有機樹脂成分とすることが好ましく、例えば、アミド樹脂(ナイロン樹脂)、ウレタン樹脂、エステル樹脂、カーボネート樹脂、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ゴム系樹脂(天然ゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)等)、イミド樹脂、アミド−イミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、エアネート樹脂、グアナミン樹脂、尿素樹脂、およびフェノール樹脂の少なくとも一つの樹脂材料から構成してあることが好ましい。
この理由は、このような熱可塑性樹脂材料や熱硬化性樹脂材料からなるバックラッシュ吸収部材16aであれば、バックラッシュ吸収部材16aの成形性やバックラッシュ吸収性等が高まり、さらに優れた可動ステージ12の移動性や固定性を得ることができるためである。
また、特に、アミド樹脂(ナイロン樹脂)、ウレタン樹脂、およびゴム系樹脂の少なくとも一つであれば、可動ステージ12の移動性と、固定性とのバランスをさらに良好にすることができ、かつ、耐久性等にも優れることから、より好適な構成材料として挙げることができる。
【0037】
次いで、
図6(a)〜(c)を用いて、ナット部材16の具体的な態様について説明する。
ここで、
図6(a)は、内部にバックラッシュ吸収部材16aを有する2つのナット部材16を、バックラッシュ吸収部材16aが収容されている側同士が向かい合うように配置し、かつ、それぞれのナット部材16に対して送りネジ15が螺合している状態を示した断面図である。
また、
図6(b)は、
図6(a)に示す2つのナット部材16の部分拡大図である。
さらに、
図6(c)は、内部にバックラッシュ吸収部材16aを有する2つのナット部材16を、バックラッシュ吸収部材16aが収容されている側が同じ側(図面においては右側)となるように配置し、かつ、それぞれのナット部材16に対して送りネジ15が螺合している状態を示した断面図である。
【0038】
図6(a)〜(c)に示すように、2つのナット部材16を使用することにより、ナット部材16の全体をダブルナット構造とすることができる。
かかるダブルナット構造とは、
図6(a)〜(c)に示すように、2つのナット部材16の接触部分付近を境界線として、ナット部材16のネジ山を、送りネジ15のネジ山に対して、両側から押圧できるような構造を意味する。
かかるダブルナット構造を有するナット部材16であれば、送りネジ15と、ナット部材16との間における「がた」の発生を効果的に抑制することができるため、バックラッシュ吸収部材16aによる応力吸収効果と相まって、すぐれた可動ステージ12の移動性および固定性を得ることができ、ひいては、ヨーイングの発生をより効果的に抑制することができるためである。
【0039】
また、
図6(a)〜(c)に示すように、バックラッシュ吸収部材16aと、送りネジ15との間に潤滑剤封入部16eを設けるとともに、当該潤滑剤封入部16eに潤滑剤が封入してあることが好ましい。
この理由は、潤滑剤封入部16eに潤滑剤を封入することにより、送りネジ15を送る際の精度がより向上することから、一段と効果的にヨーイングの発生を抑制することができるためである。
すなわち、潤滑剤封入部16eに封入された潤滑剤を、送りネジ15が移動するごとにバックラッシュ吸収部材16aと送りネジ15との接触面や、ナット部材16のネジ部と送りネジ15との接触面に供給することができる。
また、同時に、バックラッシュ吸収部材16aと送りネジ15との接触面や、ナット部材16のネジ部と送りネジ15との接触面に供給されていた潤滑剤を、送りネジ15が移動するごとに潤滑剤封入部16eに回収することができる。
したがって、潤滑剤封入部16eを設けることにより、送りネジ15を送る際の精度を長期にわたって効果的に向上させることができる。
【0040】
また、
図6(a)〜(c)に示すように、2つのナット部材16を使用することにより、2つのナット部材16の接触部分に、潤滑剤封入部16eを設けることが好ましい。
この理由は、2つのナット部16の接触部分には、ナット部材16におけるバックラッシュ吸収部材16aおよび折り返し部16dによって囲まれてなる空間が自然に生じることから、かかる空間をそのまま潤滑剤封入部16eとして利用することができるためである。
また、潤滑剤封入部16eに対して潤滑剤を封入する方法としては、まず、送りネジ15を1つ目のナット部材16に対して螺合した後、ナット部材16を通過して露出した送りネジ15のネジ部15bに対して潤滑剤を塗布する。
次いで、潤滑剤が塗布された状態の送りネジ15に対して、2つ目のナット部材16を、1つ目のナット部材16と接触するまで螺合することで、潤滑剤封入部16eに対して効率的に潤滑剤を封入することができる。
【0041】
(2)ネジ止め部材
図1(a)〜(c)に示すように、ネジ止め部材17は、可動ステージ12の側面に固定されることを特徴とする。
また、ネジ止め部材17を可動ステージ12の側面に対して固定する態様は特に制限されるものではないが、
図1(a)〜(c)に示すように、ネジ止め部材17をボルト等により直接的に可動ステージ12の側面に固定することが好ましい。
【0042】
また、ネジ止め部材17の形態としては、送りネジ15を回転可能に固定できる態様であれば特に制限されるものではないが、例えば、
図4に示すように、送りネジ15の軸心方向と直交する面を有するとともに、当該面に送りネジ15を貫通させるための貫通孔を有する板状部を有することが好ましい。
また、貫通孔の寸法としては、通常、直径を2〜5mmの範囲内の値、長さを2〜10mmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0043】
また、ネジ止め部材17の構成材料としては、特に限定されるものではないが、特殊用途鋼鋼材であるSUS、SUH、SUJ、SUP、SUMや、工具鋼鋼材であるSK、SKS、SKD、SKT、SKH等の少なくとも一つであることが好ましい。
中でも、SUS303、SUS440、SKS、SKDを用いることが特に好ましい。
【0044】
また、
図4に示すように、送りネジ15が、上述したナット部材16を第1のナット部材16とした場合に、当該第1のナット部材16とは別の第2のナット部材18によって、ネジ止め部材17に対して回転可能に固定されていることが好ましい。
この理由は、かかる第2のナット部材18により、送りネジ15を、ネジ止め部材17に対して所定の圧力で押圧することができることから、送りネジ15を、ネジ止め部材17に対してより安定的に回転可能な状態で固定することができ、ひいては、ヨーイングの発生をより効果的に抑制することができるためである。
【0045】
また、
図4に示すように、第2のナット部材17が、内部に送りネジ固定部材18aを有するとともに、当該送りネジ固定部材18aが、送りネジ15の通過孔を有する円筒状の樹脂部材であることが好ましい。
この理由は、第2のナット部材18が内部に所定の送りネジ固定部材18aを有することにより、送りネジ15に対して第2のナット部材18をより安定的に固定することができるためである。
したがって、送りネジ15のネジ止め部材17に対する圧力をより厳密に調整することがきることから、送りネジ15を、ネジ止め部材17に対してさらに安定的に回転可能な状態で固定することができ、ひいては、ヨーイングの発生をさらに効果的に抑制することができる。
なお、送りネジ固定部材17の具体的な構成は、第1のナット部材16におけるバックラッシュ吸収部材16aと同様にすることができ、第2のナット部材18における送りネジ固定部材18aの収容形態も、第1のナット部材16におけるバックラッシュ吸収部材16aの収容形態と同様にすることができる。
【0046】
また、
図4に示すように、第2のナット部材18が、当該第2のナット部材18の表面から内部に貫通するように設けられた接着剤注入孔18bを有するとともに、第2のナット部材18と、送りネジ15とが、接着剤注入孔18bから注入された接着剤によって固定されていることが好ましい。
この理由は、接着剤注入孔18bから注入された接着剤により、送りネジ15に対して第2のナット部材18をより確実に固定することができるためである。
したがって、送りネジ15のネジ止め部材17に対する圧力をより安定的に保持することができることから、送りネジ15を、ネジ止め部材17に対してより一段と安定的に回転可能な状態で固定することができ、ひいては、ヨーイングの発生をより一段と効果的に抑制することができる。
【0047】
また、
図4に示すように、送りネジ15の頭部15aとネジ止め部材17との間、および第2のナット部材18とネジ止め部材17との間に、それぞれワッシャー19を介在させることが好ましい。
この理由は、これらのワッシャー19を介在させることにより、送りネジ15の頭部15aと、ネジ止め部材17との間、および第2のナット部材18とネジ止め部材17との間における摩擦を低減し、ネジ止め部材17を送りネジ15の頭部15aおよび第2のナット部材18によって所定の圧力で挟み込みつつも、安定的に送りネジ15およびこれに固定された第2のナット部材18を回転させることができるためである。
【0048】
(3)送りネジ
図1(a)〜(c)に示すように、送りネジ15は、第1のナット部材16のネジ溝に沿って回転移動するとともにネジ止め部材17に対して回転可能に固定されていることを特徴とする。
すなわち、送りネジ15は、第1のナット部材16に対しては螺合する一方、ネジ止め部材17に対しては、螺合することなく、回転可能に固定されている。
【0049】
また、
図4(a)〜(c)に示すように、送りネジ15は、ネジ回し等と係合する凹部を有する頭部15aと、第1のナット部材16のネジ溝に沿って回転しながら進入または後退するためのネジ溝を有するネジ部15bと、からなる。
また、送りネジ15におけるネジ部15bの直径T3については、送りネジ15の機械的強度を維持しつつ、ステージ機構10の薄型化を図る観点から、通常、2〜5mmの範囲内の値とすることが好ましく、2.5〜4.5mmの範囲内の値とすることがより好ましく、3〜4mmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、送りネジ15におけるネジ部15bの長さについては、通常、10〜100mmの範囲内の値とすることが好ましい。
なお、送りネジ15は、モーター等を用いて回転動作させることも好ましいが、より簡易な構成とすべく、ネジ回しや六角レンチ等を用いて、手動で回転動作させることが好ましい。
【0050】
6.ガイド部材
図7(a)〜(b)に示すように、本発明のステージ機構10は、固定ステージ11の上面に設けられた第1のガイド溝20bと、可動ステージ12の下面に設けられた第2のガイド溝20cと、第1のガイド溝20bおよび第2のガイド溝20cに嵌合する金属片20aと、から構成されたガイド部材20を備えることを特徴とする。
この理由は、かかるガイド部材20を備えることにより、後述する押圧ボルト部材22の効果と相まって、送り機構部品14をステージ機構10の側方に設けているにもかかわらず、ステージ機構10の厚さを保持したまま、ヨーイングの発生を効果的に抑制することができるためである。
【0051】
より具体的には、
図7(a)に示すように、固定ステージ11の上面に対し、送りネジ15の軸心方向と平行になるように、第1のガイド溝20bを形成する。
また、
図7(a)に示すように、可動ステージ12の下面に対しても、送りネジ15の軸心方向と平行になるように、第2のガイド溝20cを形成し、
図7(b)に示すように、かかる第2のガイド溝20cの中に、所定長さの金属片20aを圧入することによって、可動ステージ12の下面に金属片20aの一部が突出した構成とする。
次いで、可動ステージ12の下面において一部突出した状態の金属片20aが、固定ステージ11の上面に形成された第1のガイド溝20bに対して圧入されるように、可動ステージ12と、固定ステージ11とを重ね合わせる。
これにより、
図8(a)〜(b)に示すように、金属片20a、その下側に設けられた第1のガイド溝20bおよび上側に設けられた第2のガイド溝20cによってガイド部材20が構成されることから、かかるガイド部材20に沿って、可動ステージ12が固定ステージ11に対して円滑にスライド可能となり、かつ、ヨーイングの発生を効果的に抑制することができる。
なお、
図7(a)は、
図1(a)に示すステージ機構10の分解図であり、
図7(b)は、金属片20aが圧入された状態の可動ステージ12を、下面が上に来るように180°回転させた状態を示す斜視図である。
また、
図8(a)は、
図1(a)に示すステージ機構10のB−B断面図であり、
図8(b)は、
図1(a)に示すステージ機構10のC−C断面図である。
【0052】
また、
図9に示すように、ガイド部材20が複数設けてあるとともに、各ガイド部材20に使用される金属片20aが複数の湾曲した金属片20aであることが好ましい。
この理由は、ガイド部材20をこのように構成することにより、より効果的にヨーイングの発生を抑制することができるためである。
すなわち、金属片20aを上面視した場合の平面形状を、緩やかな円弧を描くように湾曲させた形状とすることにより、金属片20aを第1のガイド溝20bおよび第2のガイド溝20cに対して、容易に圧入することができるとともに、圧入した後には、第1のガイド溝20bおよび第2のガイド溝20cの内壁を、その局所的な接触点において強固に押圧し、より効果的にヨーイングの発生を抑制することができるためである。
さらに、ガイド部材20が複数(
図9においては2つ)設けてあるとともに、各ガイド部材20に使用される金属片20aが複数であることにより、湾曲した金属片20aと、第1のガイド溝20bおよび第2のガイド溝20cの内壁との局所的な接触点が増加することから、さらに効果的にヨーイングの発生を抑制することができる。
【0053】
また、
図9に示すように、湾曲した金属片20aと、第1のガイド溝20bおよび第2のガイド溝20cの内壁との局所的な接触点が、ステージ機構10の内側よりも外側の方に多くなるように金属片20aを配置することが好ましい。
この理由は、このように湾曲した金属片20aを配置することにより、湾曲した金属片20aと、第1のガイド溝20bおよび第2のガイド溝20cの内壁との局所的な接触点が、ステージ機構10の四隅近傍に位置するようになり、かつ、その四隅近傍においてステージ機構10の外側方向へのテンションが生じるため、一段と効果的にヨーイングの発生を抑制することができるためである。
なお、
図9に示すように、送りネジ15を矢印X方向に進行させた場合には、送りネジ15と可動ステージ12とを連結しているネジ止め部材17を中心として、矢印X´方向のヨーイングが発生し、送りネジ15を矢印Y方向に退行させた場合には、矢印Y´方向のヨーイングが発生することになる。
なお、
図9は、金属片20aが圧入された状態の可動ステージ12を、下面が上に来るように180°回転させた状態を示す上面図である。
【0054】
次いで、
図8(a)〜(b)を用いて、金属片20aの長さと、第1のガイド溝20bおよび第2のガイド溝20cの長さの関係を説明する。
まず、金属片20aの長さLa(金属片が複数の場合には、金属片の長さの合計を意味する。以下において同様。)は、第2のガイド溝20cの長さLcと一致させることが好ましい。
この理由は、金属片20aが第2のガイド溝20cの両末端にまで配置されていないと、ヨーイングの発生を十分に抑制することが困難になる場合があるためである。
したがって、このように構成した場合、金属片20aは、第2のガイド溝20cの内では全く移動しないことになるため、金属片20aを、第2のガイド溝20cに対して接着剤等によって完全に固定してもよい。
【0055】
また、金属片20aの長さLa、すなわち第2のガイド溝20cの長さLcは、長くなる程より効果的にヨーイングの発生を抑制することができるが、逆に、長くなる程移動ステージ12の移動距離は制限されることになる。
これは、
図8(a)から理解されるように、可動ステージ12を、金属片20aが固定ステージ11の外部にはみ出すまで移動させてしまうと、金属片20aによる第1のガイド溝20bの内壁への押圧が失われ、ガイド部材20の機能が失われてしまうためである。
したがって、可動ステージ12の移動距離は、可動ステージ12における第2のガイド溝20cが形成されていない部分の距離Lc´に制限されることになる。
よって、ヨーイングの発生を効果的に抑制しつつ、可動ステージ12の移動距離を十分に得る観点から、金属片20aの長さLa、すなわち第2のガイド溝20cの長さLcは、可動ステージ12の長さL1の70〜95%の範囲内とすることが好ましく、80〜90%の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0056】
また、第1のガイド溝20bは、固定ステージ11の両端を切り抜くように全体にわたって形成してあることが好ましい。
すなわち、第1のガイド溝20bの長さLbは、固定ステージ11の長さ(=可動ステージ12の長さ)L1と等しいことが好ましい。
この理由は、上述したように、可動ステージ12の移動距離は、可動ステージ12における第2のガイド溝20cが形成されていない部分の距離Lc´に制限されるが、仮に、第1のガイド溝20bが固定ステージ11の両端まで形成されていない場合には、可動ステージ12の移動距離がさらに制限されることになるためである。
【0057】
また、金属片20aの厚さTaについては、第1のガイド溝20bの深さTbと、第2のガイド溝20cの深さTcの合計と実質的に等しくすることが好ましく、通常、0.5〜5mmの範囲内の値とすることが好ましく、1〜3mmの範囲内の値とすることがより好ましい。
したがって、第1のガイド溝20bの深さTbおよび第2のガイド溝20cの深さTcは、それぞれ0.25〜2.5mmの範囲内の値とすることが好ましく、0.5〜1.5mmの範囲内の値とすることがより好ましい。
また、
図8(b)に示すように、金属片20aの幅Waについては、第1のガイド溝20bの幅Wbおよび第2のガイド溝20cの幅Wcと実質的に等しくすることが好ましく、通常、0.5〜5mmの範囲内の値とすることが好ましく、1〜3mmの範囲内の値とすることが好ましい。
したがって、第1のガイド溝20bの幅Wbおよび第2のガイド溝20cの幅Wcも同様の数値範囲とすることが好ましい。
【0058】
7.押圧ボルト部材
図7(a)に示すように、本発明のステージ機構10は、固定ステージ11と、可動ステージ12とを、上下方向に連結するとともに、2つの部材間の摺接力を調整するための押圧ボルト部材22を備えることを特徴とする。
この理由は、かかる押圧ボルト部材22を備えることにより、上述したガイド部材20の効果と相まって、送り機構部品14をステージ機構10の側方に設けているにもかかわらず、ステージ機構10の厚さを保持したまま、ヨーイングの発生を効果的に抑制することができるためである。
【0059】
より具体的には、
図8(b)に示すように、固定ステージ11の下面の一部に、押圧用くり抜き部23を設けて、圧縮バネ22aおよびワッシャー22bを介して、押圧ボルト部材22を下方からねじ込み、固定ステージ11と、可動ステージ12と、を上下方向に圧接させる。
また、押圧用くり抜き部23は、送りネジ15の軸心方向と平行な方向に、可動ステージ12の移動距離分の長さを有していることから、可動ステージ12は、固定ステージ11対して圧接したまま、送りネジ15の送りに同期して移動することができる。
したがって、押圧ボルト部材22のねじ込み量を変えて、圧縮バネ22aの圧縮具合を調整することにより、固定ステージ11と、可動ステージ12との間の摺接力を調整することができる。