【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の組成を有するCu−Fe−P系銅合金母板の表面に形成された加工変質層と、その加工変質層の表面に形成されたAgめっき層或いはNiめっき層の光沢度との関係につき、鋭意検討した結果、加工変質層の厚みと結晶粒径と表面粗さの比{(Rz=最大高さ粗さ)/(Rq=二乗平均平方根粗さ)}とが、それぞれに適正な範囲内である場合にのみ、加工変質層の表面に均質で良好な光沢度を有するAgめっき層或いはNiめっき層が形成されることを見出した。
また、上述のCu−Fe−P系銅合金母板は、溶解鋳造、熱間圧延、熱処理、仕上げ冷間圧延をこの順で含む工程で銅合金母板を製造するに際して、仕上げ冷間圧延の前或いは後に、ライン速度を
30〜1
00mm/minとして、ワイヤー直径が0.
4〜0.6mmである回転型ワイヤーブラシにて、押付け圧力を
5〜15KPa、回転数を500〜2500rpmとして、仕上げ冷間圧延の前或いは後の銅合金板の表面を機械研磨することにより、上述の最適な加工変質層が得られ、その表面上にAgめっき或いはNiめっきを施した際に、均質で良好な光沢度を有するAgめっき層或いはNiめっき層が得られることも見出した。
【0007】
即ち、本発明の光沢度に優れためっき付き銅合金板は、Fe;1.8〜2.4質量%、P;0.01〜0.08質量%、Zn;0.1〜0.5質量%、残部がCuおよび不可避的不純物である組成を有し、
イオンミリングシステム(日立ハイテクノロジーズ社IM4000)を用いて試料の表面の横断面を研磨し、圧延方向に平行な断面を走査型電子顕微鏡(FE−SEM)にて観察して測定した、表面の加工変質層の厚みが0.3〜0.5μmであり、結晶粒径が0.05〜0.3μmであり、前記加工変質層の表面の最大高さ粗さ(Rz)と表面の二乗平均平方根粗さ(Rq)との比(Rz/Rq)が6.6〜7.9である銅合金母板と、前記加工変質層の上に形成された光沢度が570を超えるAgめっき層或いは光沢度が250を超えるNiめっき層とを有することを特徴とする。
本発明で使用する銅合金母板の基本組成は、Fe;1.8〜2.4質量%、P;0.01〜0.08質量%、Zn;0.1〜0.5質量%、残部がCuおよび不可避的不純物からなる。
Feは、銅の母相中に分散する析出物粒子を形成して強度及び耐熱性を向上させる効果があるが、その含有量が1.5質量%未満では析出物の個数が不足し、その効果を奏功せしめることができない。一方、2.4質量%を超えて含有すると、強度及び耐熱性の向上に寄与しない粗大な析出物粒子が存在してしまい、耐熱性に効果のある析出物粒子が不足してしまうことになる。このため、Feの含有量は1.5〜2.4質量%の範囲内とすることが好ましいが、1.8〜2.4質量%が本発明の範囲である。
Pは、Feと共に銅の母相中に分散する析出物粒子を形成して強度及び耐熱性を向上させる効果があるが、その含有量が0.008質量%未満では析出物粒子の個数が不足し、その効果を奏功せしめることができない。一方、0.08質量%を超えて含有すると、強度及び耐熱性の向上に寄与しない粗大な析出物が存在してしまい、耐熱性に効果のあるサイズの析出物粒子が不足してしまうことになると共に導電率及び加工性が低下してしまう。このため、Pの含有量は0.008〜0.08質量%の範囲内とすることが好ましいが、0.01〜0.08質量%が本発明の範囲である。
Znは、銅の母相中に固溶して半田耐熱剥離性を向上させる効果を有しており、0.01質量%未満ではその効果を奏功せしめることができない。一方、0.5質量%を超えて含有しても、更なる効果を得ることが出来なくなると共に母層中への固溶量が多くなって導電率の低下をきたす。このため、Znの含有量は0.01〜0.5質量%の範囲内とすることが好ましいが、0.1〜0.5質量%が本発明の範囲である。
【0008】
銅合金母板の表面に形成される加工変質層が、その表面に形成されるめっきの性状に大きな影響を及ぼすことは周知であるが、Fe;1.
8〜2.4質量%、P;0.0
1〜0.08質量%、Zn;0.
1〜0.5質量%、残部がCuおよび不可避的不純物である組成を有する銅合金板において、その表面の加工変質層の厚みが0.
3〜0.5μmであり、結晶粒径が0.05〜0.
3μmであり
、加工変質層の表面の最大高さ粗さ(Rz)と表面の二乗平均平方根粗さ(Rq)との比(Rz/Rq)が6.
6〜
7.9であると、その表面に形成されたAgめっき層或いはNiめっき層のめっき光沢度が良好となり、圧延方向のGoodway方向とBadway方向での光沢度の差が少なくなり、光沢度の均質化が促進される。
加工変質層の厚みを0.1μm未満とするのは製造技術的に難しく、0.5μmを超えると、充分な光沢度が得られない。
本発明では、加工変質層の厚みの範囲は0.3〜0.5μmである。結晶粒径が0.05μm未満では、均質性に乏しくなり、0.5μmを超えると充分な光沢度が得られない。
本発明では、結晶粒径の範囲は0.05〜0.3μmである。表面粗さ比(Rz/Rq)が6.5未満では、均質性に乏しくなり、8.0を超えると充分な光沢度が得られない。
本発明では、表面粗さ比(Rz/Rq)の範囲は6.6〜7.9である。
本発明では、表面の加工変質層の厚み及び結晶粒径は、銅合金板の圧延方向に平行な断面をFE−SEMによる観察から測定した。
発光ダイオードを用いたLEDチップ等への適用では、リードフレーム自体に均質で高い光沢度が求められ、めっきとしては、Agめっき或いはNiめっきが特に好ましいが、用途に応じては、Ni−Auめっき、Ni−Pd−Auめっき等でも支障はない。
【0009】
本発明の光沢度に優れためっき付き銅合金板は、前記銅合金母板が更にNi;0.003〜0.5質量%及びSn;0.003〜0.5質量%を含有することを特徴とする。
Niは、母相中に固溶して強度を向上させる効果を有しており、0.003質量%未満ではその効果を奏功せしめることができない。一方、0.5質量%を超えて含有すると導電率の低下をきたす。このため、Niを含有する場合には、0.003〜0.5質量%の範囲内とすることが好ましい。
Snは、母相中に固溶して強度を向上させる効果を有しており、0.003質量%未満ではその効果を奏功せしめることができない。一方、0.5質量%を超えて含有すると導電率の低下をきたす。このため、Snを含有する場合には、0.003〜0.5質量%の範囲内とすることが好ましい。
【0010】
本発明の光沢度に優れためっき付き銅合金板は、前記銅合金母板が更にAl、Be、Ca、Cr、Mg及びSiのうちの少なくとも1種以上を含有し、その含有量の合計が0.0007〜0.5質量%に設定されていることを特徴とする。
これらの元素は、銅合金板の様々な特性を向上させる役割を有しており、用途に応じて選択的に添加することが好ましい。
【0011】
本発明のCu−Fe−P系銅合金母板の製造方法は、溶解鋳造、熱間圧延、熱処理、仕上げ冷間圧延をこの順で含む工程で前記銅合金母板を製造するに際して、前記仕上げ冷間圧延の前或いは後に、ライン速度を
30〜1
00mm/minとして、ワイヤー直径が0.
4〜0.6mmである回転型ワイヤーブラシにて、押付け圧力を
5〜15KPa、回転数を500〜2500rpmとして、前記仕上げ冷間圧延の前或いは後の銅合金板の表面を機械研磨することを特徴とする。
本発明では、銅合金母板の表面に形成される加工変質層は、仕上げ冷間圧延の前或いは後の銅合金板の表面を機械研磨することにより調整され、特に、回転型ワイヤーブラシ(ワイヤー直径:0.
4〜0.6mm、回転数:500〜2500rpm)を使用し、仕上げ冷間圧延の前或いは後の銅合金板(ライン速度:
30〜1
00mm/min)の表面を押圧して機械研磨(押付け圧力:
5〜15KPa)することにより、表面の加工変質層の厚みを0.
3〜0.5μmとし、結晶粒径を0.05〜0.
3μmとし、表面粗さ(Rz)と表面粗さ(Rq)との比(Rz/Rq)を6.
6〜
7.9とすることができる。
回転型ワイヤーブラシはホイル型或いはカップ型であることが好ましく、縦方向から押圧し、必要に応じて回転型ワイヤーブラシ自体をライン上の銅合金板の幅方向に往復移動させて機械研磨を施しても良い。
上述の機械研磨の条件の何れか一つでも範囲を外れると、目的とする加工変質層は得られない。
また、この機械研磨により形成された加工変質層に影響を及ぼさないように酸洗液にて酸洗処理しても良い。