(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の方法によれば、電気需要とともに熱需要を考慮して熱電供給装置を稼働し、得られた熱は、貯湯槽に貯めておくことで、熱と電気とを有効に利用することができる。
【0007】
一方、電力供給者(電力会社)からの電力供給量が不足することによる計画停電等が社会問題として認識されている。このため、電力需要家による節電の重要性が謳われている。これに対し、最近では、電力供給者が、電力の供給状況を公開し、電力不足時に電力需要家が節電することによる報酬を約束するデマンドレスポンスの取り組みが注目されている。
【0008】
デマンドレスポンスとは、例えば電力不足の状況下において、電力会社が需要家に電力使用量の削減を要請し、需要家がこれに応えることで電力の需給バランスを確保するものである。電力供給量に対する電力削減量はネガワットと呼ばれている。すなわち、ネガワットとは、通常時(電力使用量の削減の要請がない場合)における、その時間帯の平均電力使用量(電力会社から供給される電力)から、電力消費量低減要請を受けた後に低減させた電力である。通常、デマンドレスポンスは、所定量のネガワットを発生させることが可能な工場などの比較的大規模な需要家が主に対象となる。
【0009】
しかし、デマンドレスポンスは、このような大規模な需要家のみが対象ではなく、たとえば、アグリゲータと契約している小口需要家(例えば一般家庭)が個々に参加することも検討されている。ここで、アグリゲータとは、前述したネガワットを集める事業者を指す。
【0010】
比較的大規模な需要家と比較すると、個々の小口需要家が発生させるネガワットは、さほど大きいわけではない。そこで、アグリゲータは、これらネガワットを発生させることが可能な小口需要家を予め多数取りまとめて事前に契約しておく。また、アグリゲータは、電力会社からの要請に応じて、これらの小口需要家に参加を募り、必要なネガワットを発生させる。この結果、アグリゲータは、ネガワットの売却益を、協力してくれた小口需要家に配分することができる。
【0011】
このように、デマンドレスポンスは、必ずしも大口の需要家のみを対象とするのではなく、一般家庭であっても参加することが可能である。しかし、これまで、一般家庭がデマンドレスポンスに対応するための有効な方法は確立されていない。
【0012】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、例えば集合住宅を含む一般家庭などにおいてもデマンドレスポンスに対応可能な熱電供給装置の制御方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達するために第1の発明は、熱電供給装置の制御方法であって、過去の所定期間における時間ごとの熱需要の情報から、所定時間毎の使用熱量の推移である熱需要データを取得する工程aと、前記熱需要データに基づいて、将来の熱需要を予測し、当該熱需要の所定量以上を賄うように熱電供給装置の標準稼働時間を設定する工程bと、電力使用量低減要請情報を取得する工程cと、前記電力使用量低減要請情報と前記標準稼働時間とを比較する工程dと、前記電力使用量低減要請情報において電力使用量の低減が要求された時間が、前記標準稼働時間と異なっている場合に、前記標準稼働時間を補正し、前記電力使用量低減要請情報に基づく時間に前記熱電供給装置を稼働するように補正稼働時間を設定する工程eと、前記補正稼働時間での熱電供給装置の稼働によって生じた熱を、蓄熱槽に蓄熱する工程fと、を具備し、
前記工程bは、前記熱需要データから、各日毎に、所定時間毎における使用熱量があらかじめ設定した基準熱量を超え、かつ、一日の最大使用量となるピーク時間を取得する工程gと、各日毎の前記ピーク時間から、時間毎の頻度であるピーク時間分布を算出する工程hと、前記ピーク時間分布に対し、予め設定された基準時刻から遡って時間毎の頻度を累積し、設定された基準頻度を超える時刻である目標時刻を設定する工程iと、前記基準熱量を超える使用熱量を有する日に対して、各日毎の一日の使用熱量の総量を取得し、各日毎の総量の分布から標準使用熱量を算出する工程jと、前記目標時刻に対して前記標準使用熱量を確保することができるだけの熱を、前記蓄熱槽に蓄熱するように、前記熱電供給装置の前記標準稼働時間を設定する工程kと、を具備することを特徴とする熱電供給装置の制御方法である。
【0014】
このように、熱需要に応じて熱電供給装置を稼働するため、熱を有効に利用することができる。また、電力会社やアグリゲータからの電力使用量低減要請があった場合には、熱電供給装置の稼働時間を補正し、要請のあった時間に発電を行う。このため、発電電力に応じたネガワットを発生させることができる。
【0016】
また前記工程bが工程g、h、i、j、kを具備することで、各家庭における確率的に最も給湯需要が大きくなると判断されるタイミングに向けてお湯を貯めることができる。このため、高い確率でタイミング良く、お湯を利用することができる。各家庭において、最も大きな熱需要があるのは、風呂のタイミングであると考えられる。したがって、一日における時間毎の最大熱需要量が、風呂に必要な基準熱量未満である場合には、風呂を準備しなかった日であると判定することができる。したがって、風呂を使用しなかった日における熱需要のデータを排除することで、風呂を利用する際に最も良いタイミングを精度よく知ることができる。
【0017】
また、前記工程cは、ネットワークを介して前記電力使用量低減要請情報を取得し、前記工程dは、前記電力使用量低減要請情報において電力使用量の低減が要求された時間が、前記標準稼働時間と異なっている場合に、電力使用量の低減要請に対して対応が可能であることを、ネットワークを介して送信することもできる。
【0018】
このようにすることで、熱電供給システムが自動で電力使用量低減要請を取得することができる。また、対応の可否を自動でアグリゲータ等に送信することができる。
【0019】
第2の発明は、熱電供給システムであって、熱電供給装置と、前記熱電供給装置の稼働時間を制御する制御部と、過去の所定期間における時間ごとの熱需要の実績である熱需要データを記憶する記憶部と、前記熱電供給装置で生じた熱を蓄熱する蓄熱槽と、を具備し、前記制御部は、前記熱需要データに基づいて、熱需要の所定量以上を賄うように前記熱電供給装置の標準稼働時間を設定し、前記制御部は、電力使用量低減要請情報を取得すると、前記電力使用量低減要請情報と前記標準稼働時間とを比較し、前記電力使用量低減要請情報において電力使用量の低減が要求された時間が、前記標準稼働時間と異なっている場合には、前記標準稼働時間を補正し、前記電力使用量低減要請情報に基づく時間に前記熱電供給装置を稼働するように補正稼働時間を設定し、前記補正稼働時間での前記熱電供給装置の稼働によって生じた熱は、前記蓄熱槽に蓄熱され、
前記制御部は、前記熱需要データに対し、各日毎に、所定時間毎における使用熱量が、あらかじめ設定された基準熱量を超え、かつ、一日の最大使用量となるピーク時間を抽出し、各日毎の前記ピーク時間から、時間毎の頻度であるピーク時間分布を算出し、前記ピーク時間分布に対し、あらかじめ設定された基準時刻から遡って頻度を累積し、あらかじめ設定された基準頻度を超える時刻である目標時刻を設定し、前記基準熱量を超える使用熱量を有する日に対して、各日毎の一日の使用熱量の総量を取得し、各日毎の総量の分布から標準使用熱量を算出し、前記目標時刻に対して前記標準使用熱量を確保することができるだけの熱量を、前記蓄熱槽に貯めるように、前記熱電供給装置を制御するように、前記標準稼働時間を設定することを特徴とする熱電供給システムである。
【0020】
このようにすることで、デマンドレスポンスに対応した熱電供給システムを提供することができる。
【0022】
また、熱需要を高確率で予測可能であり、効率の良い制御が可能な熱電供給システムを提供することができる。
【0023】
通信部をさらに具備し、前記制御部は、前記通信部によって前記電力使用量低減要請情報を受信し、前記電力使用量低減要請情報において電力使用量の低減が要求された時間が、前記標準稼働時間と異なっている場合には、前記制御部は、電力使用量の低減要請に対して対応が可能であることを、前記通信部によって送信してもよい。
【0024】
このようにすることで、デマンドレスポンスへの参加可否を自動で受信及び送信可能な熱電供給システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、例えば集合住宅を含む一般家庭などにおいても熱電供給装置の本来の省エネ性を損なうことなくデマンドレスポンスに対応可能な熱電供給装置の制御方法等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1は、熱電供給システム1を示すブロック図である。熱電供給システム1は、例えば一般家庭などの小口の電力使用者に設置される。なお、小口の電力使用者としては一般家庭には限られない。また、一般家庭には、集合住宅も含む。熱電供給システム1は、主に、燃料電池3、制御装置5、蓄熱槽9等からなる。燃料電池3は、ガスなどの燃料によって発電を行うとともに、発電に伴って発熱する熱を回収する部位である。なお、以下の実施の形態では、熱電供給装置として燃料電池3の例を示すが、燃料電池3以外のガスエンジンなどを用いた、他の熱電供給システムにも本発明は適用可能である。
【0028】
燃料電池3で回収された熱は、お湯となって蓄熱槽9に貯められる。このようにして貯められたお湯は、各需要者(各家庭)で使用することができる。ここで、蓄熱槽9に貯められたお湯は、時間とともに温度が低下する。また、蓄熱槽9が満タンの状態では、それ以上お湯を作ることができない場合がある。この状態では、発電を行っても、その際の熱を有効に利用することができない。
【0029】
一方で、蓄熱槽9に十分にお湯が貯められていない状態で、熱需要がある場合には、不足する熱量に対し、バックアップ用の給湯器等によってお湯を作る必要がある。したがって、エネルギー消費量が増大し、発電時に生成される熱が有効に利用されない。したがって、蓄熱槽9には、各家庭でのお湯の需要(本発明では熱需要とする)に合わせてお湯を貯めることが望ましい。
【0030】
制御装置5は、燃料電池3の運転を制御する。
図2は、制御装置5を示すハードウェア構成図である。制御装置5は、例えばコンピュータであり、制御部13、記憶部15、メディア入出力部17、通信制御部19、入力部21、表示部23、周辺機器I/F部25等から構成され、それらがバス27を介して接続される。
【0031】
制御部13は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成される。CPUは、記憶部15、ROM、記録媒体等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス27を介して接続された各装置を駆動制御し、制御装置5が行う処理を実現する。
【0032】
ROMは、不揮発性メモリであり、コンピュータのブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持している。RAMは、揮発性メモリであり、記憶部15、ROM、記録媒体等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、制御部13が各種処理を行う為に使用するワークエリアを備える。
【0033】
記憶部15は、HDD(ハードディスクドライブ)やSSD(フラッシュSSD)(ソリッドステートドライブ)であり、制御部13が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS(オペレーティングシステム)等が格納される。プログラムに関しては、OS(オペレーティングシステム)に相当する制御プログラムや、後述の処理に相当するアプリケーションプログラムが格納されている。これらの各プログラムコードは、制御部13により必要に応じて読み出されてRAMに移され、CPUに読み出されて各種の手段として実行される。また、記憶部15には、本発明において用いられる、各種データが保管される。
【0034】
メディア入出力部17(ドライブ装置)は、データの入出力を行い、例えば、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、CDドライブ(−ROM、−R、RW等)、DVDドライブ(−ROM、−R、−RW等)、MOドライブ等のメディア入出力装置を有する。
【0035】
通信制御部19は、通信制御装置、通信ポート等を有し、コンピュータとネットワーク間の通信を媒介する通信インタフェースであり、ネットワークを介して、例えば、制御部13によって熱使用量や電力使用量低減要請情報を取得し、または各種情報を送信することができる。
【0036】
入力部21は、データの入力を行い、例えば、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、テンキー等の入力装置を有する。入力部21を介して、コンピュータに対して、操作指示、動作指示、データ入力等を行うことができる。
【0037】
表示部23は、CRTモニタ、液晶パネル等のディスプレイ装置、ディスプレイ装置と連携してコンピュータのビデオ機能を実現するための論理回路等(ビデオアダプタ等)を有する。
【0038】
周辺機器I/F(インタフェース)部15は、コンピュータに周辺機器を接続させるためのポートであり、周辺機器I/F部25を介してコンピュータは周辺機器とのデータの送受信を行う。
【0039】
バス27は、各装置間の制御信号、データ信号等の授受を媒介する経路である。なお、制御装置5としては、上記構成をすべて含むものに限定されるものではなく、本発明の機能を奏するために必要な構成のみを有すればよい。
【0040】
なお、燃料電池3で発電された電気は、家庭において利用することができる。また、燃料電池3には、図示を省略した水道配管が接続され、必要に応じて水が供給され、生成されたお湯が蓄熱槽9に貯められる。
【0041】
次に、本発明の熱電供給システム1の制御方法について説明する。
図2は、熱電供給システム1の制御方法を示すフローチャートである。まず、制御部13は、1日の所定時間毎(例えば1時間毎)の使用熱量(使用湯量)の推移である熱需要データを日々取得する。得られた熱需要データは、記憶部15に保存される。制御装置5は、記憶部15に保存された、過去の所定期間(例えば1か月)の日々の熱需要データを取得する(ステップ101)。なお、使用開始から所定期間経過前は、予め設定された標準的な基準熱需要データを適用しても良い。
【0042】
次に、制御部13は、熱需要データに基づいて熱需要の所定量以上を賄うように、燃料電池3の標準稼働時間を設定する(ステップ102)。例えば、過去の熱需要データから、最も熱(湯)を使用する時刻を求め、この時刻までに所定量以上の熱(湯)を貯めることができるように、燃料電池3の標準稼働時間を設定する。ここで、標準稼働時間とは、燃料電池3の稼働を開始する時刻および稼働時間を含むものである。
【0043】
具体的な、標準稼働時間の設定手順の一例を
図4に示す。まず、制御部13は、取得した日毎の熱需要データに対して、基準熱量を超え、かつ、1日の最大熱使用量となる時間を、日毎に抽出する(ステップ201)。
図4は、家庭における熱需要の推移の一例を示す図であり、基準熱量を5MJ(図中A)とする例を示す。なお、以下の説明では、熱需要等を「MJ」で示すが、使用お湯量「L」に置き換えても良い。
【0044】
基準熱量は、各家庭における風呂の使用時に最低限必要な熱量とする。すなわち、通常、家庭において一度に最も多くの熱(お湯)を使用するのは、風呂の使用時である。したがって、風呂の使用に合わせて蓄熱槽9にお湯を貯めることで、効率良く熱を利用することができる。本発明では、風呂の容量と湯温とから風呂使用時に最低限必要な熱量を基準熱量として設定し、一日のいずれの時間でも基準熱量に達しなかった日は、風呂を使用しなかったものとして熱需要データから排除する。このようにすることで、風呂以外の比較的少量の熱利用の影響を省くことができる。
【0045】
図5に示す例では、基準熱量を超え、かつ、一日の最大使用熱量(ピーク時間)となるのは、18時〜19時となる。このようにして、所定期間の日毎において、風呂を使用した日だけを判別し、風呂を使用した時間を抽出することができる。
【0046】
次に、制御部13は、得られた日毎のピーク時間の分布を算出する(ステップ202)。
図6は、所定期間における、最大熱需要時間の分布の一例を示す図である。例えば、過去1カ月(30日)の熱需要データから、風呂を使用した28日分を判別し、28日分のピーク時間の時間毎の頻度(風呂使用日全体に占める割合)を算出する。
図6に示す例では、18時〜19時に風呂を使用する日が最も多いことを示す。
【0047】
次に、制御部13は、ピーク時間分布(
図6)に対して、予め設定された基準時刻から遡って時間毎の頻度を累積し、設定された基準頻度を超える時刻を目標時刻として設定する(ステップ203)。
図7は、
図6に対して、基準時刻および目標時刻を設定する方法を示す図である。
【0048】
図7では、基準時刻を4時(図中B)に設定した例を示す。基準時刻とは、日毎の熱の利用量が最も少なくなる領域で設定される。基準時刻は、予め設定してもよく、または、例えば、
図5に示すように、日毎の熱需要を取得して、所定期間における時間毎の熱需要量を重ねた場合に、熱需要が最も小さくなる時刻を設定してもよい。すなわち、基準時刻は、一日の熱需要の基点となる時刻であり、基準時刻〜基準時刻までの24時間を、熱需要に対する一日として定義することとなる。したがって、基準時刻前後において、熱需要量が大きいと、次に示す目標時刻を正確に算出することができなくなる。
【0049】
制御部13は、設定された基準時刻Bから、時間を遡ってピーク時間分布の時間毎の頻度を累積する。
図7に示す例では、4時から遡って、0時〜1時の約5%、22時〜23時の約10%・・・と累積する。本実施例では、全体の80%を超えるまで時間を遡って累積を繰り返す。
図7では、累積頻度が80%を超えるのが18時(図中C)となる。この累積頻度が所定値を超えた時刻を目標時刻として設定する。
【0050】
なお、目標時刻を決める累積頻度は、80%に限られるものではないが、累積頻度を小さくすると、実際に最も多くの熱需要がある時刻に対して目標時刻を遅い時間に誤って設定する恐れがあり(例えば
図7では、19時〜20時に設定される恐れがある)、前述したように、バックアップ用の給湯器等を使用する可能性が増大する。一方、累積頻度を高くし過ぎると、イレギュラーな使用時刻までも考慮するため(例えば
図7では、16時に設定される恐れがある)、蓄熱槽9における熱損失が増大(回収した熱の利用効率を低く)する恐れがある。したがって、累積頻度は、各家庭における日々のばらつきや分布形状なども考慮して適宜設定する必要がある。
【0051】
次に、制御部13は、基準熱量を超える熱使用量がある日(すなわち風呂を使用した日)に対して、日毎の総使用熱量(給湯需要)を取得する。さらに、この総熱使用量の分布を算出する(ステップ204)。
図8は、総熱使用量の分布の一例を示す図である。制御部13は、この分布から標準使用熱量を算出する。標準使用熱量は、例えば、最小値または最大値から累積して50%を超える量を標準使用熱量とすればよい(中央値)。または、分布の最頻値を標準使用熱量としても良く、分布の平均値を標準使用熱量としてもよい。
図8は、最小値側から50%を超える点を標準使用熱量D(25MJ/日)とした例を示す図である。
【0052】
次に、制御部13は、得られた目標時刻と標準使用熱量から、目標時刻に標準使用熱量の湯が貯まるように、燃料電池3の標準稼働時間を設定する(ステップ205)。
図9は、目標時刻18時(図中C)に標準使用熱量である25MJの熱需要(図中D)があるとして標準稼働時間(図中E)を設定した例を示す図である。制御部13は、目標時刻に標準使用熱量を貯めることができるように、燃料電池3を制御する。具体的には、所定時間前に燃料電池3を起動し、必要熱量を蓄熱槽9に貯留する。
【0053】
このようにすることで、最も熱使用量の大きいと考えられる時間までに、必要な量の熱を貯留することができる。なお、燃料電池3は、起動してすぐには、発電および熱回収を行うことができない。また、起動直後には大きなエネルギーを消費する。したがって、燃料電池3の起動と停止とを繰り返すよりも、一度に必要量を連続して生成する方が、燃料電池3は効率良く熱を貯めることができる。
【0054】
一方、本発明によれば、特に熱使用量の大きな風呂使用を考慮し、この時間までに、一日の標準使用熱量を貯留するため、効率良く熱を利用することができる。なお、目標時刻前であっても、燃料電池3の起動後には、徐々に熱の回収によってお湯が生成される。このため、目標時刻前であっても、蓄熱槽9内に貯められた分のお湯は使用することができる。
【0055】
なお、電力の逆潮流がない場合には、制御部13は、稼働時間における家庭の電力需要をも考慮して、この電力需要を超えない範囲で燃料電池3を稼働して発電を行う。したがって、標準稼働時間は、熱需要とともに電力需要も考慮して設定する必要がある。一方、逆潮流がある場合には、燃料電池を最大出力となるように稼働すればよい。以上のようにして、熱需要データに基づいた燃料電池3の標準稼働時間が決定される(ステップ102)。
【0056】
次に、制御部13は、電力会社、電力小売事業者またはアグリゲータから電力消費量低減要請情報を取得する(ステップ103)。電力消費量低減要請情報は、通信制御部19を介してネットワークから自動で取得してもよく、または、その他の方法で取得した情報を、制御装置5に人間又は他の装置等によって入力してもよい。ここで、電力消費量低減要請情報は、要請対象となる時間と電力量、地域などの情報を含む。デマンドレスポンスとは、電力消費量低減要請情報に対して電力使用量(電力会社から供給される電力)を低減することを指す。
【0057】
制御部13は、取得した電力消費量低減要請情報から、電力使用量低減の要請がある時間を特定し、標準稼働時間と比較する(ステップ105)。電力使用量低減の要請がある時間が、すでに標準稼働時間として、燃料電池が稼働予定である場合には、燃料電池3の制御によるネガワットの創出が困難である。このため、制御部13は、デマンドレスポンスへの参加ができない旨を電力会社やアグリゲータ等に送信する。
【0058】
一方、電力使用量低減の要請がある時間が、標準稼働時間とは異なっている場合には、制御部13は、デマンドレスポンスへの参加が可能である旨を電力会社やアグリゲータ等に送信する。また、制御部13は、電力使用量低減の要請がある時間に、燃料電池を稼働するように、標準稼働時間を補正し、補正稼働時間を設定する(ステップ106)。ここで、補正稼働時間とは、補正後における燃料電池3の稼働を開始する時刻および稼働時間を含むものである。
【0059】
図10は、13時から15時までの2時間に対して、電力使用量低減要請があった場合に、補正稼働時間を設定する一例を示す図である。前述した標準稼働時間(図中E)が、15時〜18時であった場合に、13時〜15時の電力使用量低減の要請があるとすると、電力使用量低減要請時間(図中F)には、標準稼働時間における非稼働時間が含まれる。すなわち、電力使用量低減要請時間は標準稼働時間とは異なっている。この場合には、制御部13は、標準稼働時間を補正し、電力使用量低減要請時間に燃料電池が稼働するように補正稼働時間(図中G)を設定する。これにより、燃料電池3の稼働予定時間は、13時から16時に補正される。この際、発生熱量は補正前後で同一となるように、稼働時間帯を補正する。
【0060】
制御部13は、以上のようにして設定された補正稼働時間に燃料電池3を稼働する(ステップ107)。この際、標準稼働時間よりも燃料電池3の稼働開始時刻が前倒しとなったため、目標時刻よりも早くに標準使用熱量が発生する。したがって、本発明では、熱需要よりも先行されて得られた熱(湯)は、蓄熱槽9に貯められる。
【0061】
なお、電力消費量低減要請情報が取得されなかった場合や、要請に応答することができない場合には、制御部13は、標準稼働時間に燃料電池3を稼働する。このように、本発明では、デマンドレスポンスに対応した燃料電池3の制御を行うことができる。
【0062】
ここで、本発明では、目標時刻に標準使用熱量を貯留するように標準稼働時間が設定されるため、目標時刻前にお湯が使用された場合であって、蓄熱槽9に蓄えられたお湯が不足する場合には、バックアップ用の給湯器等が用いられる。この際、当初の制御通りに蓄熱槽9にお湯が貯められると、すでに使用した熱量だけ、過剰に標準使用量を超えた量のお湯を貯めることとなる。したがって、本発明では、制御装置5が、時間毎の熱使用量を取得し、その日の累積熱使用量を算出し、目標時刻以前においてすでに使用した熱量を、標準使用熱量から差し引いて再補正を行うことが望ましい。
【0063】
例えば、
図11に示す例では、
図10の制御を行う上で、目標時刻前に、燃料電池3により得られる熱量が不足して、約5MJの熱をバックアップ用の給湯器等によって得た場合を示す。この場合には、目標時刻に貯留すべき熱量を再補正して制御する。具体的には、標準使用熱量が25MJであるのに対し、バックアップ用の給湯器で供給した5MJを差し引いて(図中矢印H)、目標時刻までに20MJの熱を貯留するように制御する。このようにすることで、過剰に熱を貯留することを防止することができる。
【0064】
例えば、補正稼働時間(13時〜16時)をさらに補正して、必要な熱量が生成された段階で燃料電池3の稼働を停止する(図に示す例では、例えば約15時半に停止する)。このようにすることで、過剰な熱を発生させることを抑制することができる。
【0065】
なお、このような再補正は、電力使用量低減要請時間内には行わず、電力使用量低減要請時間には、必ず燃料電池3が稼働するように、上記補正が行われる。また、このような再補正は、時間毎に随時行っても良く、燃料電池の起動時に一度補正を行うようにしても良い。また、時間毎の熱使用量と基準熱量とを比較し、目標時刻前の風呂の使用の有無を判定してもよい。
【0066】
この場合において、目標時刻前に風呂をすでに使用した場合には、目標時刻には、風呂を使用することがない。このため、前述した通り、すでに使用した熱量を標準使用熱量から単純に差し引けばよい。一方、目標時刻までに風呂がまだ使用されていないと判断された場合には、目標時刻に貯留される熱量が、少なくとも風呂の使用量(基準熱量)以下とならないように、標準使用熱量を再補正する。このようにすることで、より正確な熱需要の予測を行うことができる。
【0067】
以上説明したように、本実施形態の熱電供給システム1によれば、デマンドレスポンスに対応可能な燃料電池3の制御が可能である。したがって、例えば一般家庭などの小口の電力需要者であっても、家庭用の燃料電池3を用いて、デマンドレスポンスに参加することができる。多数の家庭が参加することで、一定量以上のネガワットを発生させることができる。したがって、電力不足などの問題に対して、各家庭も参加可能な社会を構築可能である。
【0068】
特に、通常、電力が不足するのは、工場や店舗などで電力を大量に消費する昼過ぎであることが多い。一方、例えば一般家庭では、この時間帯の電力需要はむしろ低い場合が多い。したがって、通常であれば、家庭での電力消費量および熱需要が増加する夕方から夜にかけての時間帯に、各家庭の燃料電池3が稼働することが多い。これに対し、本発明では、電力不足が予想される昼の時間帯に、燃料電池3をあえて稼働させることで、たとえ逆潮流がない場合であっても、少なくとも各家庭での電気需要を低減させることができる。このような対応を多数の需要者が行うことで、大きなネガワットを創出することができる。
【0069】
また、各家庭における日々の熱需要ばらつきについて、特に風呂の使用時間を考慮して、最も適切なタイミングで燃料電池3を制御することができる。また、目標時刻前に使用した熱量を標準使用熱量から差し引いて、目標時刻に貯留すべき熱量を設定するため、過剰に熱を貯留することを防止することができる。
【0070】
また、電力使用量低減要請に対して、各家庭の熱電供給システムが自動的に参加の可否を判断して、対応可能な電力量を送信するため、アグリゲータは、即座にネガワットの試算を行うことができる。
【0071】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0072】
例えば、前述の実施形態では、アグリゲータが多数の小口需要者と契約し、得られたネガワットを電力会社等(電力小売業者)に対して販売する形態について説明したが、本発明はこれに限られない。アグリゲータは、多数の小口需要者とともに、少数の大口需要者と契約し、小口需要者から得られたネガワットを大口需要者や他の電力小売事業者に販売することもできる。
【0073】
また、標準稼働時間を設定する方法は、前述した例には限られず、公知の他の方法で、電気需要および熱需要を考慮して設定すればよい。