(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6141763
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】特殊鋼酸洗設備の溶液からの硝酸およびフッ化水素酸の取得もしくは回収方法
(51)【国際特許分類】
C01B 21/46 20060101AFI20170529BHJP
C01B 7/19 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
C01B21/46 A
C01B7/19 D
【請求項の数】9
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-505273(P2013-505273)
(86)(22)【出願日】2011年4月18日
(65)【公表番号】特表2013-525242(P2013-525242A)
(43)【公表日】2013年6月20日
(86)【国際出願番号】AT2011000188
(87)【国際公開番号】WO2011130760
(87)【国際公開日】20111027
【審査請求日】2014年4月18日
(31)【優先権主張番号】A640/2010
(32)【優先日】2010年4月20日
(33)【優先権主張国】AT
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512272580
【氏名又は名称】キー テクノロジーズ インドゥストリーバウ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】key technologies Industriebau GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ゲアハート フリートゥム
(72)【発明者】
【氏名】ヘアベアト クラウスナー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルフリート ショコール
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン シュトレク
【審査官】
増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭64−021089(JP,A)
【文献】
特開昭62−167205(JP,A)
【文献】
特開2000−264609(JP,A)
【文献】
特開平09−188502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 15/00 − 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸の溶液からの、ならびに/または酸の金属塩を含んでいる溶液からの、前記酸の取得もしくは回収方法であり、以下の工程、
a)乾燥した金属塩および気体状の酸を得るため、前記酸の分解温度を下回る温度での前記溶液のスプレードライ、ここではそのために必要なエネルギーは、気体状の熱媒体を介して運ばれる、
b)前記工程a)で形成された気体状の酸の吸収、および
c)前記工程a)で形成された乾燥した金属塩の分離、
を含み、
前記工程a)における気体状の熱媒体が空気であり、かつ、前記工程a)において、前記溶液と前記気体状の熱媒体は並流で送られる前記方法。
【請求項2】
d)金属酸化物および気体状の酸を得るため、400〜900℃の範囲にある温度での前記工程a)で得られた乾燥した金属塩の焙焼、の工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
e)前記工程d)で形成された気体状の酸の吸収、の工程をさらに含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程a)における気体状の熱媒体の温度が、180〜500℃の範囲にあることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記工程a)における気体状の熱媒体の温度が、300〜400℃の範囲にあることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記工程d)における温度が500〜800℃の範囲にあることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記工程d)における温度が650〜750℃の範囲にあることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記工程b)において得られる気体状の酸の吸収が、水中で行われることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記工程e)において得られる気体状の酸の吸収が、水中で行われることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特殊鋼酸洗設備に由来する酸の溶液からの、ならびに/または酸の金属塩、好ましくはFe、Cr、Niのフッ化物および場合により硝酸塩を含んでいる溶液からの、前記酸の取得もしくは回収方法に関する。
【0002】
特に硝酸溶液およびフッ化水素酸溶液からの、もしくは鋼材処理からの金属含有の硝酸溶液およびフッ化水素酸溶液からの酸の回収方法は、先行技術において公知である。この方法の概要は、EP0296147に記載されている。
【0003】
例えば、OE335251またはEP0984078にも記載の通り、結晶化法を使用することができる。この方法では、金属含有の酸溶液が蒸発濃縮され、前記酸がこのようにして留去され、飽和限度の超過の場合に、金属塩、主にフッ化物が蒸留塔底部において晶出される。前記金属塩を分離し、母液を前記留去された酸といっしょにして、再び循環路に返送する。しかしそれと同時に、金属塩の含有量は再生された酸洗溶液中に残留し、前記含有量は使用にしたがって限界溶解度に達するまでさらに増加する。それによって、酸洗スラッジ形成が明らかに高まり、前記溶液の酸洗挙動への影響は解決がつかない。再生時に分離される金属塩結晶は、この方法では乾燥した流動性の状態で得られない。該金属塩結晶は、水に溶けた金属塩の含分(母液)をなおも有し、ならびに費用のかかる洗浄工程によってしか取り出すことができない多少とも高い酸含有量を有しているため「湿っている」。
【0004】
前記含まれている、もしくは付着している水に溶けた金属塩の含分が、周知の通り、設備部材の腐食の原因である、電解質として作用するため、前記結晶の後処理は、したがって問題があり、その搬送およびさらなる処理のためには特別の耐食性の設備を必要とする。さらに、前記「湿っている」結晶は、一般に搬送性が劣ることを特徴としている。
【0005】
熱加水分解法も、例えばAT412001、EP0296147またはEP1038991に記載されている通り、先行技術から公知である。この方法では、金属含有の酸溶液は、それ自体またはすでに酸の一部が気化した後にすでに濃縮された形で、例えばAT412001またはEP1038991に記載の通り、本質的に450〜900℃の温度にて単ゾーン式または多ゾーン式のスプレー焙焼反応器内で処理される。前記方法の欠点は、この種類の熱処理によって、残留している硝酸の大部分が分解されてNOおよびNO
2になることである。したがって前記方法では、追加的な措置、例えばEP0296147に記載の通り、追加的な酸化工程がとられない場合、硝酸の回収率は約60%に制限されている。前記方法では、過酸化水素がNO
xの酸化処理のために必要であり、該処理は、回収された硝酸の収率を上げるため、追加的な必要の酸化塔内で行われる。
【0006】
本発明の目的は、特殊鋼酸洗設備に由来する酸の溶液からの、および/または酸の金属塩、好ましくは鉄塩、クロム塩、ニッケル塩を含んでいる溶液からの、前記酸、特に硝酸およびフッ化水素酸の取得もしくは回収する代替方法を供することであり、この方法では硝酸および水をすでに、場合により後続する焙焼工程または熱加水分解工程の前に、硝酸の分解なしに穏やかに分離し、結晶形の乾燥した流動性の金属塩を生成する。
【0007】
それによって、先行技術において公知の方法に対して、
1)硝酸の回収率は、形成されたNO
xからの硝酸の生成に対する追加的な措置を必要とせずに、約50%から95%を超すまでに高められ、
2)したがって排ガス中のNO
xの形成が事実上回避され、それによって投資、費用および設備の投入がはるかに少なくなる、それというのは排ガスからNO
xを除去するための費用の高い方法(例えばDenox法による)が不要だからである、
3)乾燥した流動性の金属フッ化物の取得が可能になり、特に(液体の)電解質の不在のゆえに腐食に対する措置がほとんど必要ないため、後続する方法工程は簡単かつ経済的に実施でき、
4)その後特別に処理されなければならない金属含有の母液は得られず、または再生された酸溶液に添加する場合に、酸洗溶液はすでに「最低限の」金属含有量が含まれている結果となる、
5)乾燥した金属塩の焙焼の場合に流動助剤(Foerderzusatz)の添加を必要とせず、
6)フッ化物への酸化物添加が不必要であるため、一方では焙焼工程において著しいエネルギー節約になり、他方では著しく小さい特異的な設備規模になる。
【0008】
前記目的は、酸の溶液からの、および/または酸の金属塩を含んでいる溶液からの、前記酸、特に硝酸およびフッ化水素酸の本発明による取得もしくは回収方法によって達せられ、以下の工程、
a)乾燥した金属塩および気体状の酸を得るため、前記酸の分解温度を下回る温度での前記溶液のスプレードライ、ここではそのために必要なエネルギーは、気体状の熱媒体を介して運ばれる、
b)前記工程a)で形成された気体状の酸の吸収、
c)前記工程a)で形成された乾燥した金属塩の分離、
場合により、
d)金属酸化物および気体状の酸を得るため、400〜900℃の範囲にある温度での前記工程a)で得られた乾燥した金属塩の焙焼、
e)前記工程d)で形成された気体状の酸の吸収、
を含む。
【0009】
本発明の有利な実施態様において、前記方法工程a)における気体状の熱媒体の温度は180〜500℃の範囲に、好ましくは300〜400℃の範囲にあり、よりさらに好ましくは約350℃である。このため、前記スプレードライの間、約160℃で分解し始める硝酸の分解温度は超えられないため、NO
xは形成されない。
【0010】
前記スプレードライから出る金属塩、主に相応の金属のフッ化物は、乾燥して流動性がある。
【0011】
本発明のさらなる有利な実施態様において、前記スプレードライ法で得られる乾燥した金属塩、主にフッ化物が、熱加水分解して、例えば回転炉内で水蒸気の供給下に、金属酸化物となる前記焙焼工程d)における温度は、500〜800℃の範囲に、好ましくは650〜750℃の範囲にあり、よりさらに好ましくは約700℃である。前記焙焼工程からの生成物は、相応の金属酸化物および気体状の酸、主にフッ化水素酸であり、該酸は後続の工程において吸収される。
【0012】
本発明の別のさらなる有利な実施態様において、前記方法工程b)またはe)で得られる気体状の酸、つまり硝酸およびフッ化水素酸の吸収は、水中で行われる。このように再生された酸を、気体状の酸を前記スプレードライヤーもしくは焙焼反応器の後の1つ以上の吸収過程において溶解させることで、蒸気相のみから回収する。同時に、酸含有量を水蒸気の排出によって高めることができる。
【0013】
本発明のより優れた理解のために、本発明を以下に
図1を用いて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明による方法の実施のための図式的な設備。
【0015】
再生設備は、混酸タンク2から供給されるスプレードライヤー1からなる。該スプレードライヤーにおいて、予熱された空気3(180℃〜500℃)、好ましくは約350℃の空気を導入し、混酸を一流体ノズルまたは二流体ノズル(図示せず)を用いて該スプレードライヤー1内に噴霧する。該スプレードライヤーから約140℃で出る排ガスは主に硝酸からなり、該硝酸をクエンチ後に後続の吸収塔4において酸洗工程(図示せず)からの洗浄水を用いて洗い落とす。こうして得られた硝酸を、酸洗工程で再利用するため、前記吸収塔4からタンク5に圧送する。
【0016】
前記スプレードライヤー1の底部にて、乾燥した流動性の金属塩、主にフッ化物を出して、後続の焙焼反応器6に導入する。そのためには、図示される通り、例えば間接的に加熱された回転管を使用し、焙焼反応のための相応する組成の蒸気と空気とからなる混合気体を焙焼空間に導入し、約700℃で焙焼する(熱加水分解)。
【0017】
前記の場合に生じる金属酸化物を、酸化物容器7に送る。
【0018】
前記の場合に生じる気体状の酸は、主にフッ化水素酸(HF)からなり、さらなる吸収塔8に導通し、酸洗工程で再び使用するために、そこから水溶液としてタンク9に圧送する。
【0019】
前記吸収塔4、8の塔頂を介して、水蒸気、ならびに場合により微量のNO
xおよびHFを排出し、これらを必要な場合に公知の方法で処理し、相応の環境規則の遵守の下で環境に放出することができる。
【符号の説明】
【0020】
1 スプレードライヤー、 2 混酸タンク、 3 予熱された空気、 4 吸収塔、 5 タンク、 6 焙焼反応器、 7 酸化物容器、 8 吸収塔、 9 タンク