(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6141807
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】車両搭載用筐体
(51)【国際特許分類】
H02G 3/14 20060101AFI20170529BHJP
H02G 3/16 20060101ALI20170529BHJP
H05K 5/03 20060101ALI20170529BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
H02G3/14
H02G3/16
H05K5/03 D
B60R16/02 610A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-163566(P2014-163566)
(22)【出願日】2014年8月11日
(65)【公開番号】特開2016-39754(P2016-39754A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2016年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100145241
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康裕
(72)【発明者】
【氏名】元木 雅之
【審査官】
石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−281173(JP,A)
【文献】
実開平02−097819(JP,U)
【文献】
特開2011−244647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/14
B60R 16/02
H02G 3/16
H05K 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1底部と、該第1底部の周縁部に立設する第1壁部と、を有する第1筐体部材と、
第2底部と、該第2底部の周縁部に立設する第2壁部と、を有する第2筐体部材と、
を備え、前記第2壁部が前記第1壁部の内側に嵌合する車両搭載用の筐体であって、
前記第2壁部は、外面に掛合部と、前記掛合部と前記第2底部の間に当接阻止部を有し、
前記第1壁部は、前記掛合部と掛合する被掛合部を有する舌部を有し、
前記当接阻止部は、前記掛合部と前記被掛合部とが掛合した時に、前記舌部と前記第2底部の間に位置すると共に、前記当接阻止部の前記第2壁部からの高さは、前記舌部の前記第2壁部からの高さと略同じであり、
前記当接阻止部は、前記第2壁部から突起する突起部であり、
前記突起部は、前記突起部の頂部から前記第2底部に向けて傾斜面を有することを特徴とする
筐体。
【請求項2】
前記当接阻止部は、前記舌部の巾に相当する巾に亘り位置することを特徴とする請求項1に記載の筐体。
【請求項3】
内部に回路基板を備えることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の筐体。
【請求項4】
前記回路基板は、非接触充電を行うための基板であることを特徴とする請求項3に記載の筐体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に回路基板を含む車両搭載用筐体に関し、特に、別体に取り付けるための車両搭載用筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板を内部に有し、ケースとカバーを嵌合させた電気接続箱のような筐体においては、車両などの別体に取り付ける際に筐体が別体に衝突するなどして外力がかかり、この嵌合が外れてしまうことがあった。従来は、複数の嵌合方向を設けることで強固に嵌合する構成や、嵌合部を覆うなどの構成によりこの課題を解決してきた。
【0003】
例えば、特許文献1は、ハウジングを構成する2つの部材が互いに揺動するように相対変位することを防止することを目的とした電気接続箱を開示する。この電気接続箱では、ケースにはケース側嵌合壁部が設けられており、コネクタハウジングにはコネクタ側嵌合壁部が設けられている。ケースとコネクタハウジングとを組み付ける工程においては、両嵌合壁部同士は、ケースのうち弾性ロック片が形成された対向する二面と交差する方向から摺接するようになっている。この結果、ケースとコネクタハウジングとが組み付けられた状態においては、両嵌合壁部同士が互いに支持しあうことで、ケース及びコネクタハウジングが、弾性ロック片を支点として、ケースのうち弾性ロック片が形成された対向する二面と交差する方向について、互いに揺動することを防止する。
【0004】
また、特許文献2は、外圧が加わりにくく、信頼性及び作業性を向上させることを目的とした筐体を開示する。この筐体は、裏カバーが本体ケースに取り付けられるときには、裏カバーの側壁の内側に配置された係止爪の先端部が、本体ケースの側壁から内側に延びる平面部の内側縁部に係止する。すなわち、係合部位が本体ケース及び裏カバーの側壁の外部に露出することがないので、係合部位に外圧が加わりにくくなる。また、見返しが本体ケースに取り付けられると、見返しの舌片が、本体ケースの切欠部を完全に覆う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−189883号公報
【特許文献2】特開2007−298360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、嵌合を強固にする構成では別部材が必要となったり構造が複雑化したりする場合があり、嵌合部を覆う構成では電気接続箱全体の大きさが大きくなり、コスト面や小型化の弊害となっていた。
そこで、本発明は、車両搭載用筐体を別体に取り付ける際に、簡単な構造で容易に嵌合が外れることを防止する車両搭載用筐体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、第1底部と、その第1底部の周縁部に立設する第1壁部と、を有する第1筐体部材と、第2底部と、その第2底部の周縁部に立設する第2壁部と、を有する第2筐体部材と、を備え、第2壁部が第1壁部の内側に嵌合する車両搭載用の筐体であって、第2壁部は、外面に掛合部と、掛合部と第2底部の間に当接阻止部を有し、第1壁部は、掛合部と掛合する被掛合部を有する舌部を有し、当接阻止部は、掛合部と被掛合部とが掛合した時に、舌部と第2底部の間に位置すると共に、当接阻止部の第2壁部からの高さは、舌部の第2壁部からの高さと略同じであ
り、当接阻止部は、第2壁部から突起する突起部であり、突起部は、突起部の頂部から第2底部に向けて傾斜面を有することを特徴とする筐体が提供される。
これによれば、別体に取り付ける際に、簡単な構造で容易に嵌合が外れることを防止
し、金型作成費用が低廉となり、別体の一部が舌部に当接することを回避しやすくなる。
【0010】
さらに、当接阻止部は、舌部の巾に相当する巾に亘り位置することを特徴としてもよい。
これによれば、別体の一部が舌部に当接することを完全に防止することができる。
【0011】
さらに、内部に回路基板を備えることを特徴としてもよい。
これによれば、車両搭載用筐体を電気接続箱として提供することができる。
【0012】
さらに、回路基板は、非接触充電を行うための基板であることを特徴としてもよい。
これによれば、車両搭載用筐体をセンターコンソールに設置し、携帯電話やスマートフォンなどを充電する電気接続箱として提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、車両搭載用筐体を別体に取り付ける際に、簡単な構造で容易に嵌合が外れることを防止する車両搭載用筐体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る第一実施例の車両搭載用筐体の分解斜視図。
【
図2】本発明に係る第一実施例の車両搭載用筐体における、掛合している部分の拡大縦断面図。
【
図3】本発明に係る第一実施例の車両搭載用筐体における、掛合している部分の拡大斜視図。
【
図4】本発明に係る第一実施例の変形例における、掛合している部分の拡大斜視図。
【
図5】従来技術の車両搭載用筐体を別体に取り付ける際の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、図面を参照しながら、本発明に係る各実施例について説明する。まず、
図5を参照し、従来技術の車両搭載用筐体1Zを別体の車両の取り付け場所PLに取り付ける場合について説明する。
【0016】
最近の車両においては、車両搭載用筐体1Zの電気接続箱を取り付けるためのスペースとなる取り付け場所PLは、車両搭載用筐体1Z自体の大きさとあまり変わらない大きさであることが多い(本図(A)参照)。従って、取り付ける際に車両搭載用筐体1Zが取り付け場所PLの周囲に衝突するなどして外力がかかる場合がある。
【0017】
例えば、本図(B)では、内部に回路基板30Zを有し、筐体本体20Zとカバー10Zから構成される車両搭載用筐体1Zを示している。筐体本体20Zの壁部22Zは凸状の掛合部221Zを有し、カバー10Zの壁部12Zは孔状の被掛合部122Zを有しており、掛合部221Zが被掛合部122Zに嵌まり込み、筐体本体20Zとカバー10Zの両者が固定されている。筐体本体20Zの壁部22Zがカバー10Zの壁部12Zの内側に嵌合しているため、カバー10Zの壁部12Zの下端が、筐体本体20Zの壁部22Zの外面より突出している状態となる。このような車両搭載用筐体1Zを取り付け場所PLの上方から取り付け場所PLに取り付けようとする場合、カバー10Zの壁部12Zの下端が、取り付け場所PLの上端の角に衝突して外力が加わると、掛合部221Zと被掛合部122Zの掛合が外れてしまう場合がある。以下に説明する実施例では、簡単な構造によりかかる問題を解消するものである。
【0018】
<第一実施例>
図1乃至
図3を参照して、本実施例に係る車両搭載用筐体1を説明する。本実施例の車両搭載用筐体1は、車両内に取り付けられる電気接続箱1である。電気接続箱1は、ケーブル等を介して車両内の電源や車載電装品(いずれも図示せず)と内部に有する回路基板とを接続する。なお、回路基板上に搭載される電子部品は、図においては省略する。電気接続箱1は、車内のセンターコンソール、ドア、エンジンルームなどいずれの箇所にも取り付けられることが可能である。車内のセンターコンソールに設置される電気接続箱における内部の回路基板は、携帯電話やスマートフォンなどを充電するための非接触充電を行うための基板であってもよい。これにより、運転中に携帯電話等を充電することができる。なお、非接触充電を行うための基板は公知のものであってよい。
【0019】
電気接続箱1は、矩形の回路基板30と、合成樹脂製の2つの部材、すなわち回路基板30を開口側から収容する筐体本体20(第2筐体部材)および筐体本体20の開口側を嵌め込むカバー10(第1筐体部材)とから構成される。カバー10は、内部の回路基板30を塵埃等から保護すると共に回路基板30の交換などのために、筐体本体20と着脱自在に固定される。
【0020】
回路基板30を収容する筐体本体20は、矩形の回路基板30よりひと回り大きく形成され、回路基板30の端面が第2壁部22に当接しないようになっている。また、筐体本体20(第2筐体部材20)は、第2底部21および第2壁部22の両方に亘って設けられるリブ23を有する。リブ23は、第2底部21と第2壁部22とが互いに直角をなすように維持するための補強材として機能すると共に、その上端231に回路基板30を載置するものとしても機能する。
【0021】
カバー10(第1筐体部材10)は、第1底部11と第1底部11の周縁部に立設する第1壁部12とを有する。また、筐体本体20(第2筐体部材20)は、第2底部21と第2底部21の周縁部に立設する第2壁部22とを有する。通常設置された時に上側となるカバー側からの塵埃等(特に液体)の侵入を防止するため、カバー10は、筐体本体20の開口側に取り付けられる際、筐体本体20の第2壁部22が第1壁部の内側に嵌合するように取り付けられる。カバー10の第1壁部12の内面と筐体本体20の第2壁部22の外面とは、塵埃などの侵入を防止するため密着させて固定される。
【0022】
カバー10の第1壁部12は、カバー10と筐体本体20を固定した時に、第2底部21の方へ延在する舌部121を複数有する。本実施例のカバー10は、矩形の短辺に1つずつ、長辺に3つずつ、合計8つの舌部121を有する。むろん、これに限定されないが、バランスよく固定するためには、それぞれ対称的に舌部121を設けることが好ましい。舌部121の第1底部11からの立ち上がり高さは、適宜定められるが、カバー10と筐体本体20を固定した時に第2底部21まで達することはない。舌部121のそれぞれは、その先端の近傍に、後述する第2壁部22の掛合部221と掛合する孔状の被掛合部122を有する。被掛合部122の孔の形状および大きさは、掛合部221に対応して適宜定められる。
【0023】
筐体本体20の第2壁部22は、その外面側に、被掛合部122と掛合する掛合部221と、掛合部221と第2底部21の間に当接阻止部222とを有する。掛合部221は、第2壁部22の外面OS2から突出する凸状部を構成しており、その凸状部は、その頂部から第2壁部22の上端方向へはなだらかな傾斜面を有し、下端方向へは第2壁部22へほぼ垂直をなして接続される。その垂直をなす面が、被掛合部122の孔の内周面と掛合することで、しっかりと固定される。なお、当接阻止部222が第2壁部22から突起する凸状の突起部とすることで、金型作成費用が低廉となる。
【0024】
カバー10は、弾性のある合成樹脂から形成されているので、取り付ける際に掛合部221の傾斜面が舌部121を押し広げ、掛合部221が孔状の被掛合部122に達した時に元に戻ることで掛合部221が被掛合部122に嵌る。掛合部221が被掛合部122に嵌った結果、掛合部221は、被掛合部122の内周面に掛合する。なお、筐体本体20とカバー10の固定方法は、これに限定されず、例えば、筐体本体側に凹部を、カバーの舌部に凸部を設けて互いを固定してもよい。
【0025】
当接阻止部222は、掛合部221と被掛合部122とが掛合した時に、舌部121の先端と第2底部21の間に位置する。当接阻止部222の位置は、舌部121の先端に近接している方が好ましい。また、当接阻止部222の第2壁部22からの高さHは、舌部121の外面OS1の第2壁部22からの高さ、即ち舌部121の厚さとほぼ同じである。かかる当接阻止部222は、電気接続箱1を別体に取り付ける際、取り付け場所に衝突などして何かが舌部121に当接して外力が加わることを阻止することができる。これによれば、別体に取り付ける際に、当接阻止部222という簡単な構造で容易に嵌合が外れることを防止することができる。
【0026】
また、当接阻止部222は、掛合部221と第2底部21との間には位置しないことが好ましい。本実施例では、当接阻止部222は、1つの掛合部221に対して2か所に設けられ、そのそれぞれが舌部121の先端と第2底部21の間に位置すると共に、掛合部221と第2底部21との間には位置しないように設けられている。これによれば、第1筐体部材10と第2筐体部材20を取り外す際、第1壁部12と第2壁部22の間に工具などを挿入しやすくなり、容易に取り外すことができる。
【0027】
なお、突起部を構成する当接阻止部222は、突起部の頂部から第2底部21に向けて傾斜面を有することが好ましい。かかる当接阻止部222は、電気接続箱1を別体に取り付ける際、取り付け場所に衝突などして何かが舌部121に当接することをこの傾斜面を滑ることで回避しやすくなる。
【0028】
<第一実施例の変形例>
図4は、本実施例における当接阻止部の変形例を示す。当接阻止部以外はまったく同じなので説明を省略する。上記実施例においては、当接阻止部は1つの掛合部に対して2か所に、掛合部と第2底部との間には位置しないように設けられていたが、本変形例では、1つの当接阻止部222’が、舌部121の巾に相当する巾に亘り位置している。かかる当接阻止部222’は、電気接続箱1を別体に取り付ける際、取り付け場所に衝突などして何かが舌部121に当接して外力が加わることを完全に阻止することができる。これによれば、別体に取り付ける際に、当接阻止部222’という簡単な構造で容易に嵌合が外れることを完全に防止することができる。
【0029】
なお、本発明は、例示した実施例に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
【符号の説明】
【0030】
1 車両搭載用筐体(電気接続箱)
10 第1筐体部材(カバー)
11 第1底部
12 第1壁部
121 舌部
122 被掛合部
20 第2筐体部材(筐体本体)
21 第2底部
22 第2壁部
221 掛合部
222 当接阻止部(突起部)
223 傾斜面
23 リブ
231 上端
30 回路基板
OS1 舌部の外面
OS2 第2壁部の外面
H 第2壁部からの高さ
PL 取り付け場所