(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
一般的に、OLEDは、アノードとカソードとの間に配置された、及び、アノード及びカソードに電気的に接続された少なくとも一つの有機層を含む。電流が印加されたとき、アノードは有機層内部に正孔を注入し、カソードは電子を注入する。注入された正孔及び電子は各々反対に帯電された電極に向かって移動する。電子及び正孔が同じ分子上に局在するとき、励起されたエネルギー状態を有する局在化された電子−正孔対である「励起子」が形成される。光は励起子が光放射機構を経由して緩和するとき放射される。ある特定の場合には、励起子はエキシマー又はエキシプレックス上に局在化され得る。熱緩和等の非放射機構が起きる場合があるが、一般的には望ましくないと考えられる。
【0018】
図1は有機発光装置100を示す。図は必然的に原寸どおりに描かれていない。装置100は、基板110、アノード115、正孔注入層120、正孔輸送層125、電子阻止層130、発光層135、正孔阻止層140、電子輸送層145、電子注入層150、保護層155、及びカソード160を含んでよい。カソード160は第1の導電層162及び第2の導電層164を有する複合カソードである。装置100は記載された層を順次堆積することによって作製されてよい。
【0019】
基板110は所定の構造上の性質を提供する任意の適切な基板であってよい。基板110は柔軟であってよく、又は剛直であってよい。基板110は透明、半透明、又は不透明であってよい。プラスチック及びガラスは好ましい剛直な基板材料の例である。プラスチック及び金属ホイルは好ましい柔軟な基板材料の例である。基板110は回路作製を容易にするために半導体材料であってよい。例えば、基板110はその上に回路が作製されるシリコンウェハであってよく、その後のOLEDの基板上への堆積を制御することを可能にする。他の基板が使用されてよい。材料及び基板110の厚みは所定の構造及び光学的性質を得るように選択されてよい。
【0020】
アノード115は正孔を有機層に輸送するのに十分な導電性を有する任意の適切なアノードであってよい。アノード115の材料は好ましくは約4eVよりも高い仕事関数を有する(「高仕事関数材料」)。好ましいアノード材料は、酸化インジウムスズ(ITO)、及び酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化アルミニウム亜鉛(AlZnO)等の導電性金属酸化物、及び金属を含む。アノード115(及び基板110)は、底部発光装置を形成するため十分に透明であってよい。好ましい透明基板とアノードとの組み合わせは、商業的に入手可能である、ガラス又はプラスチック(基板)上に堆積されたITO(アノード)である。柔軟かつ透明な基板とアノードとの組み合わせは、米国特許第5,844,363号明細書及び6,602,540B2号明細書に開示され、その全体が参照によって組み込まれる。アノード115は不透明及び/又は反射性であってよい。反射性アノード115は一部の上部発光装置に関して好ましく、装置上部から放射される光の量を増加し得る。材料及びアノード115の厚みは所定の導電性及び光学的性質を得るように選択されてよい。アノード115が透明であるとき、特別な材料に関する厚みの範囲は所定の導電性を提供するのに十分な厚みであり、所定の透明度を提供するのに十分な薄さであってよい。他のアノード材料及び構造が使用されてよい。
【0021】
正孔輸送層125は正孔を輸送することができる材料を含んでよい。正孔輸送層130は真性(ドープされていない)、又はドープされてよい。ドーピングは導電性を増大するため用いられてよい。α−NPD及びTPDは真性の正孔輸送層の例である。pドープされた正孔輸送層の例は、全体が参照によって組み込まれるForrestらの米国特許出願公開第2003−0230980号明細書に開示されるように、モル比50:1でF
4−TCNQでドープされたm−MTDATAである。他の正孔輸送層が使用されてよい。
【0022】
発光層135はアノード115とカソード160との間を電流が通過するとき光を放射することができる有機材料を含んでよい。好ましくは、発光層135は、蛍光性放射材料が使用されてもよいが、燐光性の放射材料を含む。燐光性材料は、そのような材料に関連する高い発光効率のため、好ましい。発光層135は、電子、正孔、及び/又は励起子を捕獲し発光機構を経由して放射性材料から励起子が緩和する放射性材料でドープされた、電子及び/又は正孔を輸送することができるホスト材料も含んでよい。発光層135は輸送性及び放射性を兼ね備える単一の材料を含んでよい。放射性材料がドーパント又は主な成分のどちらであっても、発光層135は放射性材料の放射を調節するドーパント等の他の材料を含んでよい。発光層135は所定のスペクトルの光を、組み合わせて、放射することができる複数の放射性材料を含んでよい。燐光性発光材料の例としてIr(ppy)
3が挙げられる。蛍光発光材料の例として、DCM及びDMQAが挙げられる。ホスト材料の例としてAlq
3、CBP、及びmCPが挙げられる。放射性材料及びホスト材料の例はThompsonらの米国特許第6,303,238号明細書に開示され、その全体が参照によって組み込まれる。放射性材料は様々な方法で発光層135に含まれてよい。例えば、放射性低分子はポリマーに組み込まれてよい。これは、幾つかの方法で:個別に及び異なる分子種のどちらかとして低分子をポリマー内部にドーピングすることによって;又はコポリマーを形成するように低分子をポリマー主鎖内部に組み込むことによって;又は低分子をポリマーにペンダント基として低分子を結合することによって;実行されてよい。他の発光層材料及び構造が使用されてよい。例えば、低分子放射性材料はデンドリマーのコアとして存在してよい。
【0023】
電子輸送層145は電子を輸送することができる材料を含んでよい。電子輸送層145は真性(非ドープ)又はドープされてよい。ドーピングは導電性を増大するために使用されてよい。Alq
3は真性電子輸送層の一例である。n−ドープされた電子輸送層の例は、その全体が参照によって組み込まれるForrestらの米国特許出願公開第2003−02309890号明細書に開示されるように、モル比1:1でLiドープされたBPhenである。他の電子輸送層が使用されてよい。
【0024】
カソード160は従来技術で知られる任意の適切な材料又は材料の適切な組み合わせであってよく、カソード160が電子を伝達して装置100の有機層内部にそれらを注入することができるようにする。カソード160は透明又は不透明であってよく、反射性であってよい。金属及び金属酸化物は適切なカソード材料の例である。カソード160は単一の層であってよく、又は複合構造を有してよい。
図1は金属薄膜層162及びより厚みがある導電性金属酸化物層164を有する複合カソード160を示す。複合カソード中で厚い層164として好ましい材料はITO、IZO、及び当技術分野で知られる他の材料を含む。その全体が参照によって組み込まれる米国特許第5,703,436号明細書、米国特許第5,707,745号明細書、米国特許第6,548,956B2号明細書、及び米国特許第6,576,134B2号明細書は、上部を覆う透明な、導電性の、スパッタ蒸着されたITO層を備えるMg:Ag等の金属の薄膜層を有する複合カソードを含むカソードの例を開示する。下部に位置する有機層と接触しているカソード160の部分は、それが単一層カソード160、複合カソードの金属薄膜層162、又は特定の他の部分のどれであろうと、好ましくは約4eVよりも低い仕事関数を有する材料(「低仕事関数材料」)で作られる。他のカソード材料及び構造が使用されてよい。
【0025】
発光層を離れる電荷キャリア(電子又は正孔)及び/又は励起子の数を低減するために阻止層が使用されてよい。電子阻止層130が発光層135と正孔輸送層125との間に配置されてよく、電子が正孔輸送層125の方向に発光層135を離れることを阻止する。同様に、正孔阻止層140が発光層135と電子輸送層145との間に配置されてよく、正孔が電子輸送層145の方向に発光層135を離れることを阻止する。阻止層は励起子が発光層から拡散により出て行くことを阻止するためにも使用されてよい。阻止層の理論及び使用は、その全体が参照によって組み込まれるForrestらの米国特許第6,097,147号明細書、及び米国特許出願公開第2003−02309890号明細書に詳細に記載される。
【0026】
ここで、当業者には理解されるであろうが、用語「阻止層」は、層が電荷キャリア及び/又は励起子を必ず完全に阻止することを示すのではなく、層が装置を通過する電荷キャリア及び/又は励起子の移動を十分に阻害するバリアを提供することを意味する。装置内にそのような阻止層が存在することは、阻止層を持たない同様の装置と比較して実質的に高い効率をもたらすだろう。同様に、阻止層は放射をOLEDの所定の領域に制限するために使用されてよい。
【0027】
一般的に、注入層は電極又は有機層等の一つの層からの隣接する有機層内部への電荷キャリアの注入を改良し得る材料からなる。注入層は電荷輸送機能を果たしてもよい。装置100において、正孔注入層120はアノード115から正孔輸送層125内部への正孔注入を改良する任意の層であってよい。CuPcはITOアノード115、及び他のアノードから正孔注入層として使用され得る材料の一例である。装置100において、電子注入層150は電子輸送層145内部への電子注入を改良する任意の層であってよい。LiF/Alは、隣接する層からの電子輸送層内部への電子注入層として使用され得る材料の一例である。他の材料、又は材料の組み合わせが注入層として使用されてよい。特定の装置の構成に依存して、注入層が装置100において示されるものとは異なる位置に配置されてよい。注入層の更なる例は、全体が参照によって組み込まれるLuらの米国特許出願第09/931,948号明細書に提供される。正孔注入層は、例えばPEDOT:PSS等、スピンコートされたポリマー等溶液が堆積された材料を含んでよく、又は例えばCuPc又はMTDATA等気相蒸着された低分子であってよい。
【0028】
正孔注入層(HIL)は、アノードから正孔注入材料内部への効率のよい正孔注入を提供できるように、アノード表面を平滑にし、又は濡らしてよい。正孔注入層はここに記載された相対的なイオン化ポテンシャル(IP)エネルギーによって規定されるような、HILの一つの側面に隣接するアノード層及びHILの他方の側面上の正孔輸送層に好ましく適合するHOMO(最高被占分子軌道)エネルギー準位を有する電荷キャリア成分を有してもよい。「電荷キャリア成分」は実際に正孔を輸送するHOMOエネルギー準位に寄与する材料である。この成分はHILのベース材料であってよく、又はドーパントであってよい。ドープされたHILの使用によって、ドーパントがその電気的性質に関して選択され、ホストが濡れ性、柔軟性、靭性等そのモルフォロジー的性質に関して選択されることが可能になる。HIL材料に関して好ましい性質は、正孔がアノードからHIL材料内部に効率的に注入され得るようなものである。特に、HILの電荷キャリア成分は好ましくはアノード材料のIPと比較して約0.7eVを超えずに大きいIPを有する。さらに好ましくは、電荷キャリア成分はアノード材料と比較して約0.5eVを超えずに大きいIPを有する。同様な考察をその内部に正孔が注入される任意の層に適用する。HIL材料は、そのようなHIL材料が従来の正孔輸送材料の正孔伝達性よりも実質的に低い正孔伝達性を有してよいという点で、OLEDの正孔輸送層内で典型的に使用される従来の正孔輸送材料とさらに相違する。本発明のHILの厚みは、アノード層表面の平滑化又は濡れを助けるため十分に厚くてよい。例えば、10nm程度に小さいHIL厚みは非常に平滑なアノード表面に関して許容できるだろう。しかしながら、アノード表面は非常に粗い傾向があるので、場合によっては最大50nmのHILの厚みが望ましいだろう。
【0029】
その後の作製プロセスの間、下部に存在する層を保護するため保護層が使用されてよい。例えば、金属又は金属酸化物上部電極を作製するのに使用される方法は有機層に損傷を与える可能性があり、そのような損傷を低減又は排除するために保護層が使用されてよい。装置100において、カソード160を作製する間保護層155が下部に存在する有機層への損傷を低減し得る。好ましくは、保護層はそれが輸送するキャリアタイプ(装置100においては電子)に関して高いキャリア移動度を有して、装置100の動作電圧を有意に増大させないようにする。CuPc、BCP、及び様々な金属フタロシアニンは保護層に使用され得る材料の例である。他の材料又は材料の組み合わせが使用されてよい。保護層155の厚みは、好ましくは、有機保護層160が堆積された後に起こる作製プロセスに起因する、下部に存在する層への損傷が小さいか、又は損傷を与えないように十分に厚く、さらに装置100の動作電圧を有意に増大しないようあまり厚くない。保護層155はその導電性を高めるためにドープされてよい。例えば、CuPc又はBCP保護層160はLiでドープされてよい。保護層のより詳細な説明は、その全体が参照によって組み込まれるLuらの米国特許出願第09/931,948号明細書に見出されるだろう。
【0030】
図2はインバーテッドOLED200を示す。この装置は、基板210、カソード215、発光層220、正孔輸送層225、及びアノード230を含む。装置200は記載された層を順次堆積することによって作製されてよい。最も一般的なOLED構成がアノード上に配置されたカソードを有するので、装置200はアノード230の下方に配置されたカソード215を有し、装置200は「インバーテッド」OLEDと呼ばれてよい。装置100に関して記載されたものと同じ材料が装置200の対応する層において使用されてよい。
図2は装置100の構造から如何に幾つかの層が省略され得るか一つの例を提供する。
【0031】
図1及び2において説明された単純な層構造は非制限的な例示によって提供され、本発明の実施形態が様々な他の構造と関連して使用されてよいことは理解される。記述される特定の材料及び構造は全くの例示であり、他の材料及び構造が使用されてよい。機能的OLEDが、設計、性能、及びコスト因子に基づき、様々な方法で記述された様々な層を組み合わせることによって実現され得る、又は層は完全に省略され得る。明確に記載されていない他の層が含まれてもよい。明確に記載されていない他の材料が使用されてよい。ここに提供される例の多くが単一の材料を含むとして様々な層を記述するが、ホストとドーパントの混合物又はより一般的には混合物等、材料の組み合わせが使用されてよいことは理解される。同様に、層は様々な副層を有してよい。ここで様々な層に与えられる名前は厳密な制限を意図していない。例えば、装置200において、正孔輸送層225は正孔を輸送し、かつ発光層220内部に正孔を注入し、正孔輸送層又は正孔注入層として記載されてよい。一つの実施形態において、OLEDはカソードとアノードとの間に配置された「有機層」を有するとして記載されてよい。この有機層は単一の層を含んでよく、又は例えば
図1及び
図2に関して記載されたような様々な有機材料の複数層をさらに含んでよい。
【0032】
その全体が参照によって組み込まれるFriendらの米国特許第5,247,190号明細書に開示されるようなポリマー材料からなるOLED(PLED)等、明確に記載されていない構造及び材料が使用されてもよい。さらなる例によって、単一の有機層を有するOLEDが使用されてよい。例えばその全体が参照によって組み込まれるForrestらの米国特許第5,707,745号明細書に記載されるようにOLEDは積層されてよい。OLED構造は
図1及び2に説明される単純な層構造から逸脱してよい。例えば、その全体が参照によって組み込まれるForrestらの米国特許第6,091,195号明細書に記載されるようなメサ構造、及び/又はBulovicらの米国特許第5,834,893号明細書に記載されるようなピット構造等、基板はアウトカップリングを改良するため角度を有する反射性表面を含んでよい。
【0033】
特に記載されない限り、様々な実施形態の任意の層は任意の適切な方法によって堆積されてよい。有機層に関して、好ましい方法はその全体が参照によって組み込まれる米国特許第6,013,982号明細書及び米国特許第6,087,196号明細書に記載されるような熱蒸発、インクジェット、その全体が参照によって組み込まれるForrestらの米国特許第6,337,102号明細書に記載されるような有機気相蒸着(OVPD)、及びその全体が参照によって組み込まれる米国特許出願第10/233,470号明細書に記載されるような有機気相ジェットプリンティング(OVJP)による堆積を含む。他の適切な堆積法はスピンコーティング及び他の溶液ベース工程を含む。溶液ベース工程は、好ましくは窒素又は不活性雰囲気で実行される。他の層に関して、好ましい方法は熱蒸発を含む。好ましいパターニング法はマスクを通した堆積、その全体が参照によって組み込まれる米国特許第6,294,398号明細書及び米国特許第6,468,819号明細書に記載されるような冷溶接、及びインクジェット及びOVJP等の堆積法の幾つかと関連するパターニングを含む。他の方法が使用されてもよい。堆積される材料はそれが特定の堆積方法に影響を及ぼさないようにするために修飾されてよい。例えば、分岐又は非分岐の、及び好ましくは少なくとも三つの炭素を含む、アルキル基及びアリール基等の置換基が溶液処理され易くするために低分子内で使用されてよい。20又はそれ以上の炭素を有する置換基が使用されてよく、3〜20炭素が好ましい範囲である。非対称材料は再結晶の傾向が低いため、非対称構造を有する材料は対称な構造を有するものより良好な溶液処理性を有し得る。デンドリマー置換基は低分子が溶液処理を受け易くするために使用されてよい。
【0034】
本発明の実施形態により作製された装置は、フラットパネルディスプレイ、コンピュータモニター、テレビ、看板、内部又は外部照明及び/又は信号のライト、ヘッドアップディスプレイ、完全に透明なディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、レーザプリンター、電話、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、カムコーダ、ビューファインダ、マイクロディスプレイ、車両、大面積壁、劇場又はスタジアムスクリーン、又は標識を含む幅広い消費者製品に組み込まれてよい。パッシブマトリックス及びアクティブマトリックスを含む様々な制御機構が本発明により作製された装置を制御するのに使用されてよい。多くの装置が人間に快適である温度範囲、18℃から30℃等、及びより好ましくは室温(20〜25℃)、における使用を意図される。
【0035】
ここに記載される材料及び構造はOLED以外の装置における用途を有してよい。例えば、有機太陽電池及び有機光検知器等の他のオプトエレクトロニック装置がこの材料及び構造を採用してよい。より一般的には、有機トランジスタ等の有機装置がこの材料及び構造を採用してよい。
【0036】
多くの場合、空気界面における内部反射、端部放射、発光層又は他の層内部の消散、装置の発光層又は他の層(すなわち、輸送層、注入層等)内の導波路効果、及び他の効果に起因して、OLED内部の発光層中で生じる光の多くの部分は装置から離脱しない。OLEDによって生成された及び/又は放射された光は、「空気モード」(光は基板を通過する等装置の視野表面から放射される)、又は「導波モード」(光は導波路効果によって装置内部にトラップされる)等の様々なモードであると記述され得る。「有機モード」(光が一つ又は複数の有機層内部にトラップされる)、「電極モード」(電極内部にトラップされる)、及び「基板モード」又は「ガラスモード」(基板内部にトラップされる)等、特定のモードはその内部に光がトラップされる一つ又は複数の層に関して記載され得る。典型的なOLEDにおいて、発光層によって生成される光の最大50−60%が導波モードでトラップされ、したがって装置を出ることができない可能性がある。加えて、典型的なOLEDにおいて発光層によって放射される光の最大20−30%がガラスモードに留まり得る。このように、典型的なOLEDのアウトカップリング効率は約20%の低さである。
【0037】
OLEDのアウトカップリング効率を改良するため、OLED電極の一つ又は両方に平行な方向に、低屈折率を有する透明材料の領域が放射性材料を含む領域の近傍に配置されてよい。これらの領域は放射性材料によって放射される光がガラスモード又は空気モードに入るようにして、最終的に装置を離れる放射光の比率を増大する。
【0038】
これらの装置内に低屈折率材料を周期的に埋め込むことによって、見るスペクトルが歪むことなく、上部及び透明発光OLEDの外部量子効率が2から3倍増大すると考えられる。透明発光OLEDは実質的に透明な上部及び底部電極を有するOLEDを示すことは理解される。上部発光OLEDは上部(透明)電極を通ってのみ光を放射することを意図したOLEDを示すことも理解される。
【0039】
図3Aは低屈折率領域310を有する例示的な装置300の側方概略図を示す。装置は、基板304、電極301及び303、及び、一つ以上の放射性材料305の領域及び透明な低屈折率材料310の領域を有する層302を含む。
図3Aに示される装置がここに記載される様々な他の層及び構造も含んでよいことは理解される。
【0040】
低屈折率材料は、好ましくは基板の屈折率よりも低い屈折率を有する材料を含み、より好ましくはそれは基板の屈折率よりも0.15から0.4低く、これは空気モード及び/又はガラスモードに変換される導波モードの光の量を増大させ得る。低屈折率材料は屈折率1.0から1.3であることが好ましく、1.0から1.05であることがさらに好ましい。OLEDにおいて使用される有機材料は典型的には約1.5−1.7の屈折率を有するので、低屈折率材料は装置において使用される有機材料の屈折率よりも低い屈折率を有することが多い。低屈折率領域において、テフロン(登録商標)、エアロゲル、SiO
2及びTiO
2膜の等級品、及び、SiO
2ナノロッドの層等様々な低屈折率材料が使用されてよい。シリカ、カーボン、アルミナ、及び他のエアロゲル等、様々なエアロゲルが従来技術において知られる。例えば、シリカエアロゲルは液体アルコールをシリコンアルコキシド前駆体と混合して二酸化シリコンゾルゲルを形成することによって作ることができる。その後アルコールはゲルから除かれ、従来技術で知られる様々な技術を用いて気体で置換される。屈折率は開始溶液の比率を変えることによって制御され得るので、ゾルゲル法を用いて調製されるエアロゲルは特定の構成において好ましい。同様に低屈折率材料は透明であることが好ましい。ここで使用されるように、材料は「透明」であり、もしも、低屈折率層及び領域に関して記載されるスケール及び寸法において、電極におおよそ平行な方向の低屈折率層又は領域を通過する光に関する全光学的損失は約50%未満である。低屈折率材料は非放射材料であってもよい。
【0041】
説明のために、
図3Aは、光がOLED内の放射性材料によって放射されるとき様々な起こり得る結果を表すよう例示的な光線320、330、340を示す。放射性材料によって生成される特定の光330は装置を直接出るだろうが、導波モードで生成された光320は典型的には発光層を出ることができないだろう。
図3Aに示される光学的例に基づく光線において、そのような光320は、発光層界面に決して入射しない、電極に垂直な方向に対して十分に大きな角度で発光層内部を移動するとしてモデル化され得る。同様に、導波モード光340は発光層界面に入射するが、全内部反射を受けるのに十分な高い角度θを有する光線であるとしてモデル化され得る。そのような光は通常装置300の上部又は底部のどちらからも放射されないが、側面から放射され得る。しかしながら、発光領域の隣にある低屈折率領域は、通常装置によって放射されないであろう光、又は装置の側部からのみ放射される光が装置の視野表面を通って出ることを可能にするだろう。
図3Aに示されるように、低屈折領域に入る光は屈折され、装置を直接出る(320)か、又はその後電極で反射される(340)ことが可能になる。すなわち、低屈折率領域を通過する光は導波モードから空気モードに変換されてよく、装置から放射されることが可能となる。
【0042】
図3Aは低屈折率領域310と隣接する有機領域305との間の境界を電極及び基板に垂直な平坦な界面であるとして示しているが、常にそうであるわけではない。例えば、低屈折率領域及び/又は有機領域に関して粗い境界、又は基板に垂直ではない境界をもたらす様々な堆積方法が使用されてよい。
図3Bは、低屈折率領域310と隣接する有機領域305との間の境界が電極301及び303に対して正確に垂直ではない装置の一部の例を示す。特定の構成が説明されたが、領域が、示されたものとは異なる様々な断面を有してよいことは理解されるだろう。一般的に、隣接する領域305、310の間の境界は装置の電極におおよそ垂直であることが好ましい。ここで、もしも境界と表面に垂直な平面との間の角度が20°以下である場合、二つの隣接する領域の間の境界は表面に対して「おおよそ垂直」である。したがって、
図3Bにおいて、記載された角度350が20°以下であるとき、領域305と310との間の境界は電極303に対しておおよそ垂直である。
図3Cに説明されるように、隣接する領域の間の境界は粗くてもよい。そのような構成において、もしも最も適合する平面355と装置表面に対して垂直である平面との間の角度が20°以下である場合、領域は表面に対して「おおよそ垂直」である。このように、
図3Cに示される領域305、310の間の境界は、最も適合する平面355と電極303に対して垂直である平面との間の角度が20°以下である場合、電極303に対しておおよそ垂直である。ここで記述される図面は概して原寸どおりに描かれていないと理解されるが、
図3B−3Cに記載される特徴が説明のために誇張されていることは特に理解されるだろう。
【0043】
図3Dに示されるように、低屈折率領域は電極及び/又は他の層の間で部分的に伸ばされてよい。例えば、低屈折率材料310は電極303上に堆積されてよい。低屈折率材料は様々なパターンで、グリッドで、及び前述された他の構造で堆積されてよい。一つ又は複数の有機材料305はその後電極303及び低屈折率領域310上に堆積されてよく、平坦ではない表面を備えた有機層をもたらす。電極301又は他の層が有機層305の上に堆積されて、結果として得られる表面が同様に平坦ではなくなるようにされてよく、又は電極301若しくは他の層が平滑な表面を形成するように堆積されてよい。平滑層360又は他の層が平面である表面を生成するよう堆積されてもよい。
【0044】
低屈折率領域は装置内部で様々な構成で配列されてよい。低屈折率材料がグリッド状に配置されることは好ましいであろう。ここで使用されるように、「グリッド」は材料の繰り返しパターンを示す。
図4A−4Bは装置内部での使用に関する低屈折率材料及び領域の例示的な配列を示す。
図4Aは六角形グリッドに配置される低屈折率材料410の上面図を示す。
図4Bは長方形グリッドに配置される低屈折率材料410の上面図を示す。
図4A−4Bに示される構造はOLED内部で電極の一つ又は両方に平行な平面内に配置されてよい。そのような装置は
図3Aに説明される装置と同等の断面を有してよい。発光領域420は放射性材料、電荷輸送及び/又は阻止材料、及びここに記載された他の構造及び層を含んでよい。グリッドの各繰り返し部分がほぼ同じ寸法を有することが好ましいが、グリッド部分は様々な寸法を有してよい。規則正しいパターンに関して、すなわち放射性材料の領域が各々同じ寸法を有する低屈折率領域によって囲まれる場合、グリッドは幅421によって特徴付けられ得る。例えば、規則的な長方形グリッドは上から見たとき正方形である放射性領域を有する。他のグリッドタイプ、三角形又は八角形等、並びに他のパターン及び構造が使用されてもよい。
【0045】
ある場合には、グリッドの特定の形状が、最終的な装置の所定の品質に基づいて選択され得る。例えば
図5Aは、屈折率の範囲に対する、
図4A及び4Bに示されるグリッドに配置される低屈折率材料を有する装置における空気モード及びガラスモードに変換される光の量のシミュレートされた値を示す。データは、約5μmの幅の有機発光領域、約0.8μmの幅の低屈折率領域、及び100nmの厚みの上部ITO電極を有する装置に関してシミュレートされた。正方形グリッド(垂直ハッチング)及び六角形グリッド(塗りつぶし)を有する装置内で最終的に空気モードに変換される光の量、及び正方形グリッド(水平ハッチング)及び六角形グリッド(斜線ハッチング)を有する装置内で最終的にガラスモードに変換される光の量が示される。低屈折率領域が約1.7−1.8の屈折率(510)を有するとしてモデル化されるとき、レベルは従来のOLED、すなわち低屈折率領域を持たないもの、におけるレベルに近づく。OLEDに典型的に使用される有機材料が約1.7−1.8の屈折率を有し得るので、これは予期されることである。
【0046】
図5Bは屈折率1.03を有する低屈折率材料の六角形グリッドを有する装置に関するシミュレートされた放射を示す。放射領域の幅は5μm、低屈折率領域の幅は0.8μm、及び電極は100nmのITO層である。低屈折率領域が使用されるとき(水平ハッチング)、示されるように、装置のアウトカップリング効率は0.44に増大し得る。視野表面上に配置された理想的なマイクロレンズを有するOLED(クロスハッチング)が概して約0.32のアウトカップリング効率を有する一方、そのような装置において測定された値は概して約0.26である。従来のOLED(ハッチングなし)に関して、モデル化された装置のアウトカップリング効率は約0.17である。
【0047】
図5Aに示されるように、低屈折率領域の屈折率が増大するので、より多くの光がガラスモードに変換され、より少量が空気モードに変換される。特定の場合において、基板−空気界面を有機層平面と平行ではないように変え、それによって多くの光をガラスモードから空気モードに変換されるようにするのは有効であり得る。このように、低屈折率領域はガラスモードから空気モードへの変換を増大する構成で相乗的効果を有し得る。特に、低屈折率領域は光を有機モードからガラスモードに変換することができ、ガラスモードの光は基板構成又は組成に起因して空気モードに変換され得る。例えば、
図6Aに示されるマイクロレンズシート610は基板に隣接して配置されてよく、又は基板はマイクロレンズ又はマイクロレンズシートを含んでよい。センチメータスケールの半球ガラスレンズ、又は基板−空気界面において粗くされた表面を有する基板等、他の構成が使用されてよい。基板は異なる屈折率を有する材料等、異なる材料を含んでもよい;これは空気モードに変換されるガラスモードの光の量も増大し得る。
図6Bに示されるように、エアロゲル又はテフロン(登録商標)等低屈折率材料の薄層620が基板304と電極303との間に配置されてもよい。この層はさらに他の方法でガラスモードの光を電極又は有機モード、最終的に低屈折率領域に入りガラスモード光になる、に向け得る。
【0048】
図7及び8は、視野角に対して、
図5Bの装置と同じ基本構造を有する装置によって放出される光の計算された比率を示す。
図7は、屈折率が1.03(クロスハッチング)、1.2(ハッチングなし)、及び1.29(塗りつぶし)である低屈折率材料の六角形グリッドを有する、マイクロレンズを備えた装置によって放射される光の比率を示す。記載されるように、装置のアウトカップリング効率は0.60程度であり得る。
図8は、従来のOLED(ハッチングなし)、理想的なマイクロレンズを有するOLED(クロスハッチング)、理想的なマイクロレンズ及び屈折率が1.29である低屈折率材料の六角形グリッドを有するOLED(塗りつぶし)、に関して放射される光の割合を示す。
【0049】
図9及び10は、放射角に対する放射された光の計算された比率を示す。装置は前述されたものと同じ構造、並びにITO電極と放射性材料との間に挿入された低屈折率材料の薄層、及び放射性材料の隣接する領域を分離する低屈折率領域を有する。
図9は従来のOLED(ハッチングなし)によって、及び屈折率1.2を有する低屈折率材料の六角形グリッド及び屈折率1.29を有するテフロン(登録商標)AFの挿入層を有するOLED(クロスハッチング)によって、放射される光を示す。
図10は、
図9と同じ構造を有する装置に関する放射を示すが、ただし屈折率1.29を有する低屈折率材料を備える。
図9及び10に示される装置のアウトカップリング効率は0.32(屈折率1.29の低屈折率材料)から0.34(屈折率1.2)であり得る。
【0050】
低屈折率材料の薄膜は、基板−空気界面における全内部反射を受ける光の量を低減することによって、基板内の光の角度分布を変えるよう働き得る。
図11及び12は、低屈折率層がない場合、及び屈折率1.29を有する材料の低屈折率層を有する場合の各々の、ガラス基板内の光の角度分布を示す。分布は、従来のOLED(1110、1120)、及び屈折率1.03(1120、1220)、1.02(1130、1230)、及び1.3(1130、1230)を有する低屈折率層を備えるOLEDに関して示される。
【0051】
同じ装置内で
図6Aに示されるマイクロレンズシート及び
図6Bに説明される低屈折率層を使用することは有効であり得る。そのような装置のアウトカップリング効率は最大0.59であり得る。
図13は様々な装置構造に関する放射角に対する放射される光の比率を示す。値は従来のOLED(ハッチングなし)、理想的なマイクロレンズを備えたOLED(クロスハッチング)、屈折率1.29を有する低屈折率領域、薄い低屈折率層、及びマイクロレンズシートを備えたOLED(斜線クロスハッチング)、及び、マイクロレンズシート及び屈折率1.29を有する低屈折率材料の領域を備えた低屈折率領域を有するOLED(塗りつぶし)に関して示される。
【0052】
図18は低屈折率領域1810を有する例示的装置1800を示す。装置は、基板1804、電極1801及び1803、及び一つ以上の放射性材料1805の領域及び低屈折率材料1810の領域を有する層1802を含む。
図18に示される装置がここに記載される様々な他の層及び構造も含んでもよいことは理解されるだろう。
【0053】
低屈折率材料は、空気モード及び/又はガラスモードに変換される導波モードの光の量を増大し得るので、好ましくは放射性材料の屈折率よりも低い屈折率を有する材料を含む。低屈折率材料は1.0から3.0の屈折率を有することが好ましく、1.0から1.50がより好ましい。上述されたような様々な低屈折率材料が低屈折率領域に関して使用され得る。
【0054】
図19A−19Cは、有機層に埋め込まれた低屈折率グリッド(LIG)を備えた例示的装置を示す。グリッドの周期(低屈折率領域の間の間隔)はマイクロメータのオーダーであり、放射される光の波長よりも大きくてよい。この周期性は高い比率の導波モードの光が低屈折率領域に入ることを可能にし、該低屈折率領域はそこから光が装置を出る基板の垂線に向かう方向に光を向けなおすと考えられる。LIGの周期性(約5−20μm)が放射される光の波長よりも大きなオーダーであるため、増大効果は波長と独立であるとも考えられる。これは、取り出される光の放射スペクトルに実質的に歪みがないので、幅広いスペクトルで特徴付けられる白色発光TOLEDに関して有効であり得る。同様にLIGの周期性はTOLEDピクセル(約195から380μm)よりも一つ以上のオーダー小さく、したがってLIGのパターンとTOLEDのピクセルとの間の配列に影響を及ぼさないと考えられる。
【0055】
さらに、Cuiらの「Optimization of Light Extraction from OLEDs,」Optics Express Vol.15,No.8(Apr.16,2007)に報告されるように、このTOLED内のLIGの埋め込みは特定の装置において見られる格子形成の効果を排除するとも考えられる。
【0056】
説明のため、
図18は、TOLED内の放射性材料によって光が放射されるとき、様々な起こり得る結果を表すよう例示的光線1820,1825,1830、及び1835を示す。導波モードで生成された光1830は典型的には発光層を出ることができないだろう。
図18に示される光線に基づく光学的例において、そのような光1830は放射層界面に決して入射しないであろう電極垂線に対して十分大きな角度で発光層内部を移動するとしてモデル化されてよい。同様に、導波モード光1835は発光層界面に入射する光線としてモデル化され得るが、ただし全内部反射を受ける十分に高い角度θにおいてである。そのような光は装置1800の上部又は底部のどちらからも通常発光されないだろうが、側部表面からは発光され得る。しかしながら、発光領域の隣の低屈折率領域は、通常装置によって発光されないであろう光、又は装置の側部からのみ発光されるであろう光が装置の視野表面を通って出ることを可能にする。
図18に示されるように、低屈折率領域に入る光は基板に垂直な方向に屈折され、直接(1830)又は電極から反射した後(1835)装置を出ることが可能になる。すなわち、低屈折率領域を通って通過する光は導波モードから空気モードに変換され、装置から発光されることを可能にする。加えて、LIGは透明装置の装置上部(1820)から、又は装置底部(1825)からの発光によって直接出る光に影響を与えない。
【0057】
低屈折率材料1810は電極1801上に堆積されてよい。低屈折率材料は様々なパターン、グリッド、及びここに記載される他の構造で堆積されてよい。一つ以上の有機材料1805は電極1803及び低屈折率領域1810の上に堆積されてよく、平坦ではない表面を備えた有機層をもたらす。電極1803若しくは他の層が、結果として得られる表面もまた平坦ではないように、有機層1805上に堆積されてよく、又は、電極1803若しくは他の層が、平滑な表面を形成するように堆積されてよい。
【0058】
図18は電極と基板とに垂直である平坦な界面が存在するように低屈折率領域1810と隣接する有機領域1805との間に境界を示すが、これは、例えば
図3B及び3Cに示されるように、常にそうでなくてよい。
【0059】
図19A−19Cは有機層に埋め込まれたLIG1910を有する例示的なTOLED装置1900を示す。装置はガラス基板1901、ITO電極1902、カソード1904、及び一つ以上の有機層1905及びLIG1910の領域を有する層1903を含む。
図19Bは電極1902及び1904に平行な平面内で配向した長方形グリッドに配列されたLIG1910を有する装置1900を示す。
図19Aは装置1900の上面図を示す。
図19Cはそのような装置の斜方からの図、及び断面(側面図)を示す。有機層1905は放射性材料、電荷輸送及び/又は阻止材料、及びここに記載される他の構造及び層を含んでよい。LIG1910の各繰り返し部分がほぼ同じ寸法を有することが好ましいであろうが、グリッド部分が様々な寸法を有してよい。例えば、規則的な長方形グリッドは上から見たとき正方形の発光領域を有する。三角形又は八角形等、他のグリッドタイプ、並びに様々な他のパターン及び構造が使用されてもよい。
【0060】
図20A−20Cは屈折率が1.03である低屈折率材料の長方形グリッドを有する装置に関するシミュレートされた発光を示す。低屈折率領域の厚みは100nmであり、有機層の厚みは100nmであり、底部ITO電極の厚みは120nmである。
図20Cは、LIGの厚みが有機層の厚みと同じであるとき増大が最適化されることを示す。LIGの厚みが減少すると、増大比は減少するだろう。
【0061】
図20Aは、有機層及びITO層内の吸収よりも前にLIGに入ることによって導波モードのさらなる光が取り出されるので、有機領域の幅(w
org)が減少すると増大比が増加することを示す。
図20Aは、さらなる光が有機層に再度入ることなく導波モードから取り出されるので、LIGの幅(w
LIG)が増加すると増大比が増加することも示す。
【0062】
実際的な理由から、そのようなシミュレートされた発光において、有機層の幅は、装置が要求される輝度を実現するのに有効な発光領域が十分に存在することを保証するため、小さすぎることはできない。
図20A−20Cにおいて、LIGの幅は1μmであり、有機層は6μmであり、70%を超える有効発光領域を与える。
図20BはLIGの屈折率が減少するにしたがって上部発光OLEDのアウトカップリング効率が増加することを示す。LIGの屈折率が増加するとき、より多い光がガラスモードに変換され、より少ない光が空気モードに変換される。
【0063】
図21は、基板に隣接して配置されたマイクロレンズシート610を有する例示的装置を示し、又は基板がマイクロレンズ又はマイクロレンズシートを含んでよい。
図20Bは、シミュレートされた光の増加を、LIGを備えた(無地)、及びLIGとマイクロレンズとを備えた(斜線)上部発光OLEDに関する屈折率に対して示す。そのような装置のアウトカップリング効率は約2−3倍増加され得る。
【0064】
最終的に空気モードに変換され装置から放射される光の量は、電極の厚み、低屈折率領域の幅、及び/又は発光領域の幅等、装置の他の構造的特徴を変えることによって、さらに影響され得る。
図14−17は、様々な装置パラメータの変化に関するシミュレーション結果を示す。他に特に示さない限りは、各々の装置は1D周期グリッドの幅0.8μmの低屈折率領域、幅4μmの有機発光領域、厚み100nmのITO電極、及び屈折率1.03の低屈折率材料を備えてモデル化された。
図14は、70から150nmの厚み範囲での、ITO厚みに応じた空気モード(正方形)及びガラスモード(円)の光の比率を示す。
図15は低屈折領域の幅が500から1200nmまで変化するときの各モードの光の比率を示す。
図16は、有機領域が4μmから10μmであるときの各モードの光の比率を示す。
図17は、正方形及び六角形グリッドに関して、低屈折率材料の屈折率が1から1.75における各モードの光の比率を示す。値は、理想的な1D周期性グリッド1710、正方形グリッド1720、及び六角形グリッド1730に対する空気モードに関して、及び理想的な1D周期性グリッド1740、正方形グリッド1750、及び六角形グリッド1760に対するガラスモードに関して示される。点線楕円で示される値は従来のOLEDに関するものと同じである。
図14−17において示される構造に関して、従来のOLEDは、空気モードに関して約0.17及びガラスモードにおいて0.26の比率を典型的に示す。
【0065】
ここで記載される様々な実施形態は説明のみを目的としており、本発明の範囲を制限することを意図しないことは理解される。例えば、ここに記載される多くの材料及び構造は、本発明の精神から逸脱することなく、他の材料及び構造で置き換えられてよい。本発明が効果を奏する理由に関する様々な理論が制限を意図しないことは理解される。例えば、電荷移動に関する理論は制限を意図しない。
【0066】
材料の定義
ここで、短縮形は以下の材料を示す。
CBP:4,4’−N,N−ジカルバゾール−ビフェニル
m−MTDATA:4,4’、4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン
Alq
3:8−トリス−ヒドロキシキノリンアルミニウム
Bphen:4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン
F
4−TCNQ:テトラフルオロ−テトラシアノ−キノジメタン
Ir(ppy)
3:トリス(2−フェニルピリジン)−イリジウム
BCP:2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン
CuPc:銅フタロシアニン
ITO:酸化インジウムスズ
NPD:N,N’−ジフェニル−N−N’−ジ(1−ナフチル)−ベンジジン
TPD:N,N’−ジフェニル−N−N’−ジ(3−トリル)−ベンジジン
mCP:1,3−N,N−ジカルバゾール−ベンゼン
DCM:4−(ジシアノエチレン)−6−(4−ジメチルアミノスチリル−2−メチル)−4H−ピラン
DMQA:N,N’−ジメチルキナクリドン
PEDOT:PSS:ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)水性分散液
【0067】
本発明は特定の例及び好ましい実施形態に関して記載されるが、本発明がこれらの例及び実施形態に制限されないことは理解される。したがって当業者には明らかであるようにクレームに記載された本発明はここに記載された特定の例及び好ましい実施形態の様々な変形を含む。