特許第6141818号(P6141818)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6141818
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】並列インバータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20170529BHJP
【FI】
   H02M7/48 E
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-234572(P2014-234572)
(22)【出願日】2014年11月19日
(65)【公開番号】特開2015-100262(P2015-100262A)
(43)【公開日】2015年5月28日
【審査請求日】2014年11月19日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0140305
(32)【優先日】2013年11月19日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】593121379
【氏名又は名称】エルエス産電株式会社
【氏名又は名称原語表記】LSIS CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】パク チョン チェ
【審査官】 小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−147334(JP,A)
【文献】 特開2002−345252(JP,A)
【文献】 特開2008−086127(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0218320(US,A1)
【文献】 特表2000−513560(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/061055(WO,A2)
【文献】 特開2006−333625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列に接続される少なくとも二つ以上のインバータを制御するための制御装置において、
前記少なくとも二つ以上のインバータで一つの同期信号を共有して運転情報を各々伝送する制御部と、
前記少なくとも二つ以上のインバータの出力電流を各々検出する検出部と、
前記少なくとも二つ以上のインバータに各々前記制御部の運転情報を伝送する少なくとも二つ以上のインターフェース部と、を含み、
各前記インターフェース部は、
前記制御部から伝送される電気信号を光信号に変換して前記インバータに伝達して、前記インバータから受信される光信号を電気信号に変換して前記制御部に伝達し、
前記制御部は、前記インターフェースを介して各々の前記インバータに同期信号を共有する運転情報を同時に伝送し、前記検出部により検出される各々の前記インバータの出力電流の誤差に対して比例積分(PI)制御を行うことを特徴とする、制御装置。
【請求項2】
前記運転情報は、電圧指令及び運転指令を含むことを特徴とする、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記少なくとも二つ以上のインターフェース部に所定通信方式によって前記運転情報を伝送することを特徴とする、請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記所定通信方式は、制御領域ネットワーク(CAN)方式であることを特徴とする、請求項に記載の制御装置。
【請求項5】
各々のインバータは、
前記運転情報によりパルス幅変調(PWM)波形を生成する複数のセル制御部と、
前記複数のセル制御部各々に接続されて、前記PWM波形によりモータに提供する電圧を生成する複数のパワーセルと、を含むことを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記セル制御部は、接続されたパワーセルのデータを前記制御部に伝送することを特徴とする、請求項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記パワーセルのデータは、前記パワーセルの出力電流、DC−リンク電圧、及びトリップ情報を含むことを特徴とする、請求項に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並列インバータ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、インバータの容量を拡大するために使う方法で、パワー素子の電圧及び電流容量を増大して新しい製品を設計する方法と既存開発されている製品を並列に構成して設計する方法がある。産業用インバータの場合、パワー素子の制限された電圧及び電流容量により大容量インバータを開発することには限界があるので、最近並列構造インバータが多く設計されている。
【0003】
並列構造のインバータの場合、出力電圧の同期を正確に合わせることがカギであり、このために様々な技術が開発された。
【0004】
一般に、並列構造のインバータの運転は、一つのマスター(master)制御器と複数のスレーブ(slave)制御器で構成される。
【0005】
図1は、従来並列インバータシステムの構成図であり、従来並列インバータシステムの制御部100は、マスター制御部110とスレーブ制御部120で構成される。この時、スレーブ制御部120は、並列運転時スレーブとして動作するが、インバータB320を単独運転する場合にはマスター制御部で動作する。
【0006】
並列構造のインバータで、出力端電圧を同じ大きさと位相で制御することが最も重要で、大きさと位相誤差によって発生する循環電流を防止するために出力端に並列リアクタ400が用いられる。高圧インバータの場合、リアクタ設置による出力電圧降下の問題を避けるために結合リアクタ(coupled reactor)410が用いられる。
【0007】
図1のようなインバータシステムで、単位インバータ運転の場合には各々の制御部110、120が、対応するインバータA200とインバータB300を制御するが、並列運転の場合、マスター制御部110が、全体システムを制御して、通信モジュールを介してスレーブ制御部120と常時通信する。
【0008】
マスター制御部110は、出力電圧同期のためにスレーブ制御部120に同期信号を伝送する。
【0009】
図2は、図1のマスター制御部110がスレーブ制御部120に伝送する同期信号と、これによるインバータA及びインバータBのPWMキャリアを示した例示図である。
【0010】
マスター制御部110が伝送した同期信号は、スレーブ制御部120が受信し、スレーブ制御部120は、パルス幅変調(Pulse Width Modulation、PWM)キャリアカウンターをリセットして同期を合わせる。
【0011】
6600Vマルチレベル高圧インバータの場合、一つのインバータに18個の単相インバータであるパワーセル200、300で構成される。各々のパワーセルは、セル制御部210、310が制御部100から様々な情報(指令の大きさと位相、運転指令など)を受信して運転する。
【0012】
しかし、図1のようなシステムでは、出力電圧の同期のためにマスター制御部110とスレーブ制御部120との間に同期信号送受信のためのハードウェアインターフェースを必要とする。この方法は、PWM同期が略一致するが、回路上に信号遅延が発生する可能性があって、周辺回路から発生するノイズの影響を受け得る問題点がある。
【0013】
一方、ソフトウェア同期アルゴリズムによって同期を行うこともできるが、この場合にもCPUの制御周期だけの同期誤差が生じ得る問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明が解決しようとする技術的課題は、並列構造の高圧インバータにおいて一つの制御部を利用して同期運転を行うことによって、インバータ制御の信頼性を確保する並列インバータ制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記のような技術的課題を解決するために、並列に接続される少なくとも二つ以上のインバータを制御するための本発明の一実施形態の制御装置は、前記少なくとも二つ以上のインバータで一つの同期信号を共有して運転情報を各々伝送する制御部と、前記少なくとも二つ以上のインバータの出力電流を各々検出する検出部と、前記少なくとも二つ以上のインバータで各々前記制御部の運転情報を伝送する少なくとも二つ以上のインターフェース部と、を含んでもよい。
【0016】
本発明の一実施形態において、前記制御部は、前記少なくとも二つ以上のインバータの出力電流の誤差に対する比例積分(PI)制御を行って前記運転情報を修正してもよい。
【0017】
本発明の一実施形態において、前記運転情報は、電圧指令及び運転指令を含んでもよい。
【0018】
本発明の一実施形態において、前記制御部は、前記少なくとも二つ以上のインターフェース部に所定通信方式によって前記運転情報を伝送してもよい。
【0019】
本発明の一実施形態において、前記所定通信方式は、制御領域ネットワーク(CAN)方式であってもよい。
【0020】
本発明の一実施形態において、各インターフェース部は、前記制御部から伝送される電気信号を光信号に変換して前記インバータに伝達して、前記インバータから受信される光信号を電気信号に変換して前記制御部に伝達してもよい。
【0021】
本発明の一実施形態において、各インバータは、前記運転情報によりパルス幅変調(PWM)波形を生成する複数のセル制御部と、前記複数のセル制御部各々に接続されて、前記PWM波形によりモータに提供する電圧を生成する複数のパワーセルと、を含んでもよい。
【0022】
本発明の一実施形態において、前記セル制御部は、接続されたパワーセルのデータを前記制御部に伝送してもよい。
【0023】
本発明の一実施形態において、前記パワーセルのデータは、前記パワーセルの出力電流、DC−リンク電圧及びトリップ情報を含んでもよい。
【発明の効果】
【0024】
このような本発明の一実施形態によると、一つのマスター制御部を利用することによって同期信号を授受する別途のハードウェアなしに複数のインバータの並列運転ができる。
【0025】
また、本発明は、電流誤差を最小化して並列運転時に発生し得る循環電流を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】従来並列インバータシステムの構成図である。
図2図1のPWM同期を示す例示図である。
図3】本発明の一実施形態に係る並列インバータシステムを概略的に説明するための構成図である。
図4図3のマスター制御部とインバータを詳細に説明するための一例示図である。
図5】本発明のマスター制御部から各インバータに伝送する同期信号を説明するための一例示図である。
図6図3のインバータシステムの出力電流波形を説明するための一例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、多様な変更を加えることができて種々の実施形態を持つことができるが、特定実施形態を図面に例示して詳細な説明に詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるあらゆる変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されなければならない。
【0028】
以下、添付図面を参照して本発明に係る好ましい一実施形態を詳細に説明する。
【0029】
図3は、本発明の一実施形態に係る並列インバータシステムを概略的に説明するための構成図である。
【0030】
図面に示したように、本発明の一実施形態のシステムは、単一制御装置10によりインバータA20及びインバータB30を制御することができる。並列に接続されたインバータA20とインバータB30の出力は、モータ50に伝達され、モータ50を駆動することができる。
【0031】
インバータ20、30の出力端とモータ50の入力端との間にはリアクタ40が配置されて、インバータ20、30の大きさと位相の誤差によって発生する循環電流を防止することができる。高圧インバータの場合、リアクタ40の設置による出力電圧降下の問題を避けるために、結合リアクタ41が並列に配置されて用いられる。
【0032】
図4は、図3のマスター制御部とインバータを詳細に説明するための一例示図である。
【0033】
図面に示したように、本発明の制御装置10は、マスター制御部11と電流検出部15、及び光インターフェース部16、17を含んでもよい。
【0034】
マスター制御部11は、中央処理装置(central processing unit、CPU)12及びCAN通信部13、14を含んでもよい。
【0035】
インバータA、B20,30は、複数のパワーセル22、32で構成されて、各パワーセル22、32は、セル制御部21、31により制御できる。
【0036】
インバータA20とインバータB30は、別途の同期線なしに制御領域ネットワーク(Controller Area Network、CAN)通信でマスター制御部11と常時通信することができる。ただし、これは例示的なもので、インバータA20とインバータB30が、CAN通信方式によって通信することに限定されるのではなく、種々の通信方式が適用される。
【0037】
インバータA20とインバータB30が、マスター制御部11から運転情報(指令電圧の大きさと位相及び運転指令など)を受信すると、各々のセル制御部21、31は、内部演算を通じてPWM波形を出力することになる。
【0038】
尚、セル制御部21、31は、セルで収集した各種データ(出力電流、DC−リンク電圧、各種トリップ情報を含む)をマスター制御部11に制御周期毎に伝送することができる。
【0039】
また、マスター制御部11は、セル制御部21、31から受信した情報を集めて並列運転に必要な機能を行うことができる。
【0040】
各々のパワーセル22、32は、マスター制御部11と光ケーブルに接続されてCAN通信を行うことができる。CAN通信部13、14は、CPU12とインバータA、B20、30との間のデータを送受信し、光インターフェース部16、17は、マスター制御部11からインバータA、B20,30に伝送されるCAN通信のためのデータを光信号に変換し、インバータA、B20,30からマスター制御部11に伝送されるCAN通信のための光信号を電気信号に変換することができる。
【0041】
従来の並列構造のインバータでは、PWM同期のためにマスター制御部110からスレーブ制御部120に別途の同期線を利用して同期信号を伝送し、スレーブ制御部120では受信した同期信号を利用してマスター制御部110と同期しているが、本発明では単一マスター制御部11を用いるため、別途の同期線を必要とせずCAN通信部13、14に一つの同期信号を共有してセル制御部21、31に指令電圧の大きさと位相を同時に伝送することができる。セル制御部31は、光ケーブルを介して受信した同期信号を利用してインバータB30のPWMカウンターをリセットして同期することができる。
【0042】
図5は、本発明のマスター制御部から各インバータに伝送する同期信号を説明するための一例示図である。
【0043】
図5において、Pはマスター制御部11からCAN通信部13、14を介してインバータA20とインバータB30のセル制御部21、31に伝送するデータの波形を示し、この時、データは、同期信号と各種指令情報を含む。
【0044】
Qは、セル制御部21、31からマスター制御部11に伝送するセルのデータ(出力電流、DC−リンク電圧、各種トリップ情報を含む)を示す。この時、Rは、インバータA20の信号で、Sは、インバータB30の信号である。また、T及びUは、各々RとSを拡大した拡大波形を示す。
【0045】
インバータA20とインバータB30のPWM出力が同じ値を出力する場合にも、ハードウェア的な偏差によって出力電流に誤差が発生する可能性があるが、この場合、電流検出部15がインバータA20及びインバータB30の最終出力電流(I)を検出してマスター制御部11に提供することができる。
【0046】
マスター制御部11は、二つの電流誤差に対して比例積分(Proportional−Integral)制御を行って、最終PWM波形を出力することができる。このような本発明によって電流誤差を最小化して並列運転時発生し得る循環電流を減少することができる。
【0047】
図6は、図3のインバータシステムの出力電流波形を説明するための一例示図である。図面で、Mは各インバータ20、30の電流で、Nはインバータの電流を合わせた最終電流である。
【0048】
本発明の単一マスター制御部11を利用した並列インバータ運転を通じて、従来の並列構造のインバータ制御での信頼性及びコスト上昇に対する問題点を解決することができる。
【0049】
即ち、本発明では、一つのマスター制御部11を利用することによって、同期信号を授受する別途のハードウェアなしに複数のインバータの並列運転ができる。マスター制御部11のCAN通信部13、14を利用して複数のセル制御部21、31に電圧指令及び運転指令を伝送すると、各々のセル制御部21、31は自らの演算によってPWM波形を生成して電力セル22、32を駆動することができる。
【0050】
この時、同じPWMを出力してもハードウェア的な偏差によって出力電流に誤差が発生する可能性があるが、この場合、インバータA20とインバータB30の出力電流を検出して、二つの出力電流の電流誤差に対するPI制御を行って、電圧指令及び運転指令を修正することによって、各々のセル制御部21、31が最終PWM波形を出力することができる。
【0051】
即ち、本発明は、電流誤差を最小化して並列運転時発生し得る循環電流を減少させることができる。
【0052】
以上では、二つのインバータ(インバータA20、インバータB30)が並列に接続される構造に対して説明したが、本発明がこれに限定されるのではない。即ち、2つ以上のインバータの並列構造に対して本発明が適用できる。
【0053】
以上、本発明に係る実施形態が説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当分野で通常の知識を有する者であれば、これらから多様な変形及び均等な範囲の実施形態が可能である点を理解するであろう。従って、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲によって定まらなければならない。
【符号の説明】
【0054】
10 制御装置
11 マスター制御部
12 中央処理装置(central processing unit、CPU)
13、14 CAN通信部
15 電流検出部
16、17 光インターフェース部
20、30 インバータ
21、31 セル制御部
22、32 パワーセル
40 リアクタ
41 結合リアクタ
50 モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6