特許第6141838号(P6141838)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ インストラクション・ゲーエムベーハーの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6141838
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】クロマトグラフィー用複合材料
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/88 20060101AFI20170529BHJP
【FI】
   G01N30/88 201G
   G01N30/88 101M
   G01N30/88 101K
   G01N30/88 101L
   G01N30/88 201X
【請求項の数】9
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2014-519564(P2014-519564)
(86)(22)【出願日】2012年7月12日
(65)【公表番号】特表2014-521078(P2014-521078A)
(43)【公表日】2014年8月25日
(86)【国際出願番号】EP2012063718
(87)【国際公開番号】WO2013007793
(87)【国際公開日】20130117
【審査請求日】2015年7月1日
(31)【優先権主張番号】11173849.8
(32)【優先日】2011年7月13日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】11181413.3
(32)【優先日】2011年9月15日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】11181415.8
(32)【優先日】2011年9月15日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】11181414.1
(32)【優先日】2011年9月15日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】11181412.5
(32)【優先日】2011年9月15日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】11181411.7
(32)【優先日】2011年9月15日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505360395
【氏名又は名称】インストラクション・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァルツ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルター,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】アーレント,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】デーゲル,ビョルン
【審査官】 大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】 特表平07−509173(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/012302(WO,A1)
【文献】 特開昭63−045558(JP,A)
【文献】 特表2006−523831(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0211615(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 − 30/96
B01D 15/08
B01J 20/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質支持体と、該多孔質支持体の表面上の架橋ポリマーとを含み、
前記多孔質支持体の孔径[nm]と、前記架橋ポリマーの架橋度[%]との間の比が、〜20[nm/%]であり、
前記架橋度が、前記架橋ポリマーの架橋可能な基の総数に対して、5〜20%であり、
前記多孔質支持体は、ポリマー材料であり、
前記架橋ポリマーは、ポリアミンであり、化学的な付着点又は化学的なアンカーとして機能する官能基を有する、複合材料。
【請求項2】
前記多孔質支持体の比表面積が、1m/g〜1000m/gである請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記多孔質支持体の空隙率が、30〜80容量%である請求項1又は2に記載の複合材料。
【請求項4】
前記多孔質支持体の孔径が、少なくとも6nmである請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項5】
前記架橋ポリマーが、前記多孔質支持体に、共有結合しているか、又は、付着している請求項1〜のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項6】
前記架橋ポリマーの前記官能基は、試料との相互作用によって検体と結合可能な少なくとも1種の配位子で、少なくとも一部が置換されており、
前記相互作用が、疎水性相互作用、親水性相互作用、陽イオン交換、陰イオン交換、サイズ排除、及び/又は、金属イオンキレートからなる群より選択される請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載の複合材料の、クロマトグラフィーでの固定相としての使用。
【請求項8】
a)化学的な付着点又は化学的なアンカーとして機能する官能基を有する架橋可能なポリマーを準備することと、
b)前記ポリマーを多孔質支持体の表面に吸着させることと、
c)少なくとも1種の架橋剤によって、吸着された架橋可能なポリマーの架橋可能な基の総数に対して5〜20%の架橋を行い、架橋によって、前記多孔質支持体の孔径[nm]と、前記架橋したポリマーの架橋度[%]との間の比を、〜20[nm/%]にすることとを備え
前記架橋ポリマーは、ポリアミンであり、
前記多孔質支持体は、ポリマー材料である、請求項1〜のいずれか1項に記載の複合材料の製造方法。
【請求項9】
試料との相互作用によって検体に結合可能な少なくとも1種の配位子によって前記官能基を置換することをさらに備え、
前記相互作用は、前記ポリマーを吸着させる前もしくは後の相互作用、又は、前記ポリマーを架橋させる前又は後の相互作用であって、疎水性相互作用、親水性相互作用、陽イオン交換、陰イオン交換、サイズ排除、及び/又は、金属イオンキレートからなる群より選択される相互作用である請求項に記載の複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフィー用複合材料、及び、該複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機分子及び生体分子のためのクロマトグラフィー媒体は、試験試料との反応においてあり得る下記の種類の1つ又はそれ以上に従って分類されている。
−疎水性相互作用(逆相)
−親水性相互作用(順相)
−陽イオン交換
−陰イオン交換
−サイズ排除
−金属イオンキレート
【0003】
所定の分離問題に対して上記のクロマトグラフィー分類を慣習的に段階的に利用することは、産物純度の確実な改良に少しずつ反映され、操作時間や商品コストはいうまでもなく、各段階で最終的に著しく蓄積する産物ロスにも反映された。逐次的クロマトグラフィー工程の連続系をたった1つに減少させることが何回も証明されたことから、早期の段階で下流側にアフィニティークロマトグラフィーを導入することは、この要求への答えになり得る。
【0004】
アフィニティークロマトグラフィーは、しばしば、独自の種類とみなされる。また、化学的な点から、アフィニティークロマトグラフィーは、上記と同じ相互作用様式に基づく。アフィニティークロマトグラフィーの主要特性は、既知の分子認識対に通常基づく、事前検体の高い選択性である。
【0005】
従来のほとんどのクロマトグラフィーの吸着剤は、架橋ポリマーの薄膜で表面が覆われた固体支持材料からなる。架橋されたポリブタジエン、ポリスチレン、ポリシロキサン、ポリ (メタ)アクリレート、ポリアミドなどのポリマーは、過去に用いられてきた。これらポリマーは、主として、固体支持材料の下層部分(担体)の意図しない相互作用から被覆媒体を保護する、高密度の接触面を作る目的で、採用されてきた。そのような相互作用によって、吸着剤に対して分子が非特異的又は不可逆的に結合し得る一方で、固体支持材料の構成成分への、又は、配位子への化学的な結合は、試料又は溶離液のいずれかの活性成分によって劣化する。
【0006】
ポリマーで被覆された吸着剤は、上記に示したように、全てのクロマトグラフィー分類にて利用されるために、特に、疎水性相互作用及びサイズ排除のために、おおむね知られている。
【0007】
いわゆるテンタクル(触手)樹脂のように、内部で架橋していないが担体材料に直鎖又は分岐鎖のように付いているポリマー被覆が知られている。一方、アフィニティークロマトグラフィーは、通常、塊状ゲル相樹脂を用いて実施される。
【0008】
優れたゲル作製材料は、媒体に架橋した多糖類、ポリアクリルアミド、及びポリ(エチレン)オキシドである。しかしながら、これら媒体は、適用される圧力下で圧縮されやすく、撹拌、カラム充填、又は高い液体流速によって生じるせん断力に耐えられないことから、これら媒体の力学的耐性は、無機担体材料の耐性よりもかなり低い。従って、荒いHPLC工程環境と完全に互換するアフィニティー吸着剤は、希少である。
【0009】
ここ近年認識されてきたことは、固定相の力学的耐性は、吸着剤担体のバルク特性であり、吸着剤担体では、固定相と移動相との間の界面での薄層だけが、質量交換及び検体との相互作用に関与するということである。従って、力学的に非常に強固で寸法的に安定な3次元多孔質の中心部と、検体を結合させるための活性配位子を担持するゲル状の界面層との作用を組み合わせる考え方が提案され、これに関連した合成上の問題が、技術的に解決されている。そのようなハイブリッド材料としては、無機酸化物、又は、多孔性が低く密に架橋したポリマーのいずれかを土台にした、多孔性が高く、弱く架橋したポリマーが採用されている。
【0010】
方法論的には、材料は、中心材料に多孔質材料を塗布すること、又は、中心材料と架橋剤との存在下で極性モノマー、その前駆体、もしくはプレポリマーを直接的に重合させることによって作製される。後者の方法で作製される材料の大部分は、貫通孔を有さないか、又は、孔で満たされた形態を有することが、文献で記載されている。貫通孔を有さないフィルムは、検体と相互作用できる表面領域が制限されることが問題となり、従って、ポリマーフィルムの厚みのみに依存する低い結合性能が問題となる。一方で、孔で満たされたフィルムは、検体との相互作用において中心材料の内部孔容積が全て使えるという利点があり、これにより、通常、良好な結合性能がもたらされるが、孔内部での低い拡散物質移動速度、及び、移動相との低い交換速度論がもたらされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、配位子と検体とが優れた相互作用をする表面領域を提供する吸着剤材料であって、孔内にて拡散物質移動速度を有し、且つ移動相との交換速度論を有する吸着材料は、需要が未だにある。さらに、この体系は、固定相の破壊や損失をしばしば生じさせる、移動相及び検体の影響に対して安定であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って、本発明は、多孔質支持体と、多孔質支持体の表面の架橋ポリマーとを備える複合材料であって、多孔質支持体の孔径[nm]と、架橋ポリマーの架橋度との比(PSCL−比)が0.25〜20[nm/%]であり、架橋度が架橋ポリマーの架橋可能な基の総数に対して5〜20%である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
多孔質支持体の孔径[nm]と、架橋ポリマーの架橋度[%]との比は、より好ましくは0.5〜15であり、最も好ましくは1〜10である。
【0014】
他の実施形態では、多孔質支持体の孔径[nm]と、架橋ポリマーの架橋度[%]との比(PSCL−比)は、2〜20であり、好ましくは2〜10である。この範囲では、最良の結果が得られる。
【0015】
この材料が、移動相及び検体の影響に対して高い安定性を示し、また、孔内での高い拡散物質移動速度と、移動相との交換速度論とを示すことから、驚くべきことに、固体支持材料の孔径と、付着ポリマーの架橋度との比が有利であることを見いだした。PSCL−比が25を超える複合材料は、多孔質支持体の表面でポリマー材料を損失させ、従って、精製作用の低減をもたらすことを見いだした。一方、PSCL−比が0.25未満であることは、ポリマーフィルムの膨潤が制限されることから、精製作用の低減をもたらす。さらに、架橋度が高いことは、割れて多孔質支持体から脱離し得る硬いポリマーフィルムをもたらすことになる。
【0016】
多孔質支持体の孔径は、好ましくは少なくとも6nmであり、より好ましくは10〜200nmであり、最も好ましくは15〜100nmである。
【0017】
複合材料の一実施形態では、多孔質支持体は、1m2/g〜1000m2/g、より好ましくは30m2/g〜800m2/g、最も好ましくは20m2/g〜400m2/gの比表面積を有する。
【0018】
多孔質支持体は、30〜80容積%の空隙率、より好ましくは40〜70容積%、最も好ましくは50〜60容積%の空隙率を有する。空隙率は、DIN 66133に従った水銀圧入法によって測定する。多孔質支持体の孔径は、DIN 66133に従い水銀圧入法を用いた細孔充填によっても測定できる。比表面積は、DIN 66132に従いBET法を用いた窒素吸着によって測定できる。
【0019】
一実施形態では、多孔質支持体は、ポリマー材料である。好ましくは、ポリマー材料は、実質的に非膨潤性(好ましくは、非膨潤材料に対してせいぜい約5〜7容積%)である。このため、ポリマー材料は、高い架橋度を有することが最も好ましい。
【0020】
ポリマー材料は、ポリマー材料の総架橋基数に対して、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、最も好ましくは少なくとも30%の架橋度で架橋されている。ポリマー材料の架橋度は、好ましくは、最大で100%、より好ましくは80〜90%を超えない。
【0021】
多孔質支持体のポリマー材料は、好ましくは、汎用または表面修飾ポリスチレン(例えばポリ(スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー)、ポリスチレンスルフォン酸、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、多糖類(澱粉、セルロース、セルロースエステル、アミロース、アガロース、セファロース、マンナン、キサンタン、デキストランなど)、及び、その混合物からなる群から選択される。
【0022】
さらなる実施形態では、多孔質支持体は、無機材料である。好ましくは、無機材料は、ある種の無機鉱物酸化物であり、好ましくは、シリカ、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、フルオロシラン、マグネタイト、ゼオライト、ケイ酸塩(セライト、ケイ藻土)、雲母、ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、金属有機構造体(MOF)、セラミックス、制御された多孔質ガラス(例えば、製品名trisoperl)のようなガラス、アルミニウム、ケイ素、鉄、チタン、銅、銀、金などの金属、及び、グラファイトまたは非晶質炭素からなる群より選択される。
【0023】
多孔質支持体がポリマー材料であるか又は無機材料であるかにかかわらず、多孔質支持体は、不溶性支持体として機能する最小限の剛直性及び硬さを有する固体基材を提供し、また、固定相と移動相との間の分配プロセスのための、検体との相互作用の場(分子基盤としての場)である、両相の間の界面を広げるための基材であって、力学的強度及び摩耗を特に流動及び/又は加圧環境下で向上させるための基材を提供する。
【0024】
本発明の多孔質支持体は、均質又は不均質な構成物であってもよく、それゆえ、上記の材料の1種又は2種以上の構成物、特に多層複合材料である材料をも包含する。
【0025】
多孔質支持体は、粒子状材料であってもよく、好ましくは、5〜500μmの粒子径を有する。多孔質支持体は、膜のようなシート状材料又は繊維状材料であってもよい。従って、多孔質支持体の外表面は、平面状(板、シート、箔、盤、スライド、フィルター、膜、織物や不織布の布、紙)であってもよく、曲面状(凹面または凸面:球、ビーズ、粒、(中空)繊維、管、毛細管、小瓶、試験トレイのくぼみ)であってもよい。
【0026】
多孔質支持体の内表面の孔構造は、とりわけ、規則的な連続する毛細管状の溝、又は、不規則な(フラクタル)形状の空洞からなっていてもよい。微視的には、この構造は、製造方法に依存して、滑らかであっても粗くてもよい。孔の体系は、固体支持材料中を貫いて連続的に拡がっていてもよく、(分岐した)空洞で止まっていてもよい。移動相での溶媒和と、固定相の表面での保持力との間における検体の界面の平衡速度、及び、連続する流体分離系統の性能は、固体支持材料の孔を通した拡散による物質移動と、粒子及び孔の大きさの特徴的な分配とによって、主に決定付けられる。孔の大きさは、場合によっては、非対称で多様な、且つ/又は、空間的に(例えば、断面では)不均質な分布として、現れる。
【0027】
上述したように、多孔質支持体は、多孔質支持体の表面に架橋ポリマーを有する。架橋ポリマーは、多孔質支持体と共有結合で結合していてもよく、又は、多孔質支持体に付着していてもよい。好ましくは、架橋ポリマーは、多孔質支持体に付着している。
【0028】
架橋し得るポリマーとして好ましいポリマーは、アミノ基を有するポリマーの少なくとも1種を含む。ポリビニルアミンが特に好ましい。その他の適当なポリアミンとしては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミンなど、また、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸などの、アミノ基を含むもの以外の機能性高分子材料、また、ポリ(無水マレイン酸)、ポリアミドといったその前駆体ポリマー、又は、多糖類(セルロース、デキストラン、プルランなど)などが挙げられる。
【0029】
仮に、コポリマー(共重合体)が採用されるときには、好ましいコモノマーは、単純なアルケンモノマー、又は、ビニルピロリドンなどの極性を有する貧反応性モノマーである。
【0030】
吸収、気相堆積、液体や気体やプラズマ相からの重合、スピンコーティング、表面凝縮、ぬれ、ひたすこと、つけること、流体に当てること、スプレーすること、湿らせること、蒸発させること、電場又は圧力を利用すること、といった当業者に知られている全ての塗布方法によって、また、例えば、液晶、ラングミュア−ブロジェット膜、又は、多層膜などの分子自己集合に基づいた方法によって、ポリマーは、多孔質支持体に塗布される。従って、ポリマーは、単層もしくは多層として直接的に被覆されるか、又は、それぞれの層の上に個々の単層を段階的に並べたものとして直接的に被覆される。
【0031】
複合材料の好ましい実施形態では、架橋ポリマーの架橋度は、架橋ポリマーの架橋可能な基の総数に対して、少なくとも5%である。より好ましい架橋度は、架橋ポリマーの架橋可能な基の総数の数に対して、5〜30%であり、さらに好ましくは5〜20%であり、最も好ましくは10〜15%である。架橋度は、用いられる架橋剤の化学量論的な量によって容易に調整される。架橋剤のほぼ100%が反応して架橋を形成すると考えられる。これは、分析的手法によって確認できる。架橋度は、MAS−NMR分光法、及び、ポリマー量に対する架橋剤量の定量によって測定できる。斯かる方法は、最も好ましい。架橋度は、例えば、校正曲線を用いたC−O−C又はOHの振動に基づく赤外分光法(IR)によっても測定できる。いずれの方法も、当業者にとって標準的な分析方法である。
【0032】
ポリマーを架橋させるために用いる架橋剤は、好ましくは、ジカルボン酸、ジアミン、ジオール、ビスエポキシドからなる群より選択される。一実施形態では、架橋剤の少なくとも1種が、1〜20原子の長さを有する直鎖状の構造的に柔軟な分子である。
【0033】
用いられるポリマーの好ましい分子量は、限定されないが、5000〜50000g/molであり、特に、ポリビニルアミンに当てはまる。大きい表面積を有し、それゆえ、良好な物質移動動力学、良好な溶解性、良好な結合能を有する固体状態の材料が、本発明の吸着剤にて用いられるように、上記範囲の下限に近い分子量を有するポリマーは、担体の狭い孔であっても通り抜けることを示す。
【0034】
さらなる実施形態では、架橋ポリマーは、官能基を有する。“官能基”との用語は、多孔質支持体の表面における架橋ポリマーに属する、又は、ポリマー膜の調製のときに多孔質支持体の表面における架橋可能なポリマーに属する、区別された単純な化学的な一部分を意味する。従って、官能基は、検体に結合する配位子としてはたらくことができ、又は、化学的な付着点もしくはアンカーとしてはたらくことができる。官能基は、好ましくは、少なくとも1種の弱い結合及び/又は少なくとも1種のヘテロ原子を含み、より好ましくは、求核試薬又は求電子試薬としてはたらく基を含む。
【0035】
好ましい官能基は、第1級、第2級のアミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、又はエステル基である。周囲媒体の酸性度/塩基性度に応じて、アミノ基は、プロトン化したアンモニウムイオンとして存在することができ、カルボキシ基は、脱プロトン化したカルボン酸イオンとして存在することができる。
【0036】
さらなる好ましい実施形態では、架橋ポリマーの官能基は、少なくとも1つ型の配位子で、少なくとも部分的に置換/誘導体化されている。配位子は、試験体との相互作用によって検体を結合させるために用いられ、相互作用は、疎水性相互作用、親水性相互作用、陽イオン交換、陰イオン交換、サイズ排除、及び/又は、金属イオンキレートからなる群より選択される。
【0037】
配位子の性質は、精製される検体に影響され、変動する。配位子は、置換されていても、又は、置換されていなくてもよく、直鎖状、分岐鎖状、環状の脂肪族基、芳香族基、又は、複素環式芳香族基であってもよい。好ましくは、例えば配位子は、N、O、P、S原子などのヘテロ原子、及び、検体分子と相互作用することができる同様の原子を有する。
【0038】
分離プロセスを助けるために官能基が相互作用することが完全に排除されるわけではないが、配位子と反対に、官能基は、最初は検体と相互作用するように設計されていない。
【0039】
好ましい実施形態では、本発明は、固体支持材料を含む複合材料をも提供する。この複合材料では、表面が下記の一般式(I)の残基を有し、
【化1】
残基は、式(I)の破線で表される共有結合の一重結合(単結合)を介して、固体支持材料自体の表面、又は、固体支持材料の表面上のポリマー膜の表面のいずれかの官能基に付いており、
記号及び符号は、下記の意味を有する:
Lは、(n+1)価の炭素原子数1〜30の直鎖状脂肪族炭化水素基、又は、(n+1)価の炭素原子数3〜30の分岐鎖状もしくは環状脂肪族炭化水素基であり、
上記炭化水素基の1つ又は複数のCH2部分は、CO、NH、O、又はSで置換されていてもよく、
上記炭化水素基の1つ又は複数のCH部分は、Nで置換されていてもよく、
上記炭化水素基は、2炭素原子間に1つ又は複数の二重結合を有していてもよく、
1つ又は複数の水素原子は、D、F、Cl、又はOHで置換されていてもよく;
Arは、それぞれ独立して、6〜28の芳香族環状原子を有する、単環式もしくは多環式の1価の芳香族環系であり、1つ又は複数の水素原子が、D、F、Cl、OH、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、NH2、−NO2、−B(OH)2、−CN、又は−NCで置換されていてもよく、
nは、LへのAr部分の結合数を表す符号であり、1、2、又は3である。
【0040】
(n+1)価の炭素原子数1〜30の直鎖状脂肪族炭化水素基、又は、(n+1)価の炭素原子数3〜30の分岐鎖状もしくは環状脂肪族炭化水素基は、下記の群のうちの1種である:メチレン、エチレン、n-プロピレン、iso-プロピレン、n-ブチレン、iso-ブチレン、sec-ブチレン(1-メチルプロピレン)、tert-ブチレン、iso-ペンチレン、n-ペンチレン、tert-ペンチレン(1,1-ジメチルプロピレン)、1,2-ジメチルプロピレン、2,2-ジメチルプロピレン(ネオペンチレン)、1-エチルプロピレン、2-メチルブチレン、n-ヘキシレン、iso-ヘキシレン、1,2-ジメチルブチレン、1-エチル-1-メチルプロピレン、1-エチル-2-メチルプロピレン、1,1,2-トリメチルプロピレン、1,2,2-トリメチルプロピレン、1-エチルブチレン、1-メチルブチレン、1,1-ジメチルブチレン、2,2-ジメチルブチレン、1,3-ジメチルブチレン、2,3-ジメチルブチレン、3,3-ジメチルブチレン、2-エチルブチレン、1-メチルペンチレン、2-メチルペンチレン、3-メチルペンチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロヘプチレン、シクロオクチレン、2-エチルヘキシレン、トリフルオロメチレン、ペンタフルオロエチレン、2,2,2-トリフルオロエチレン、エテニレン、プロペニレン、ブテニレン、ペンテニレン、シクロペンテニレン、ヘキセニレン、シクロヘキセニレン、ヘプテニレン、シクロヘプテニレン、オクテニレン、又は、シクロオクテニレン、
前記脂肪族炭化水素基の1つ又は複数のCH2部分は、CO、NH、O、又はSで置換されていてもよく、
前記脂肪族炭化水素基の1つ又は複数のCH部分は、Nで置換されていてもよく、
前記脂肪族炭化水素基は、2炭素原子間に1つ又は複数の二重結合を有していてもよく、
1つ又は複数の水素原子は、D、F、Cl、又はOHで置換されていてもよい。
【0041】
Lは、好ましくは炭素原子数1〜20の、より好ましくは炭素原子数1〜10の(n+1)価の直鎖状脂肪族炭化水素基であり、好ましくは炭素原子数3〜20の、より好ましくは炭素原子数3〜10の(n+1)価の分岐鎖状又は環状の脂肪族炭化水素基であり、
前記脂肪族炭化水素基の1つ又は複数のCH2部分は、CO、NH、O、又はSで置換されていてもよく、
前記脂肪族炭化水素基の1つ又は複数のCH部分は、Nで置換されていてもよく、
前記脂肪族炭化水素基は、2炭素原子間に1つ又は複数の二重結合を有していてもよく、
1つ又は複数の水素原子は、D、F、Cl、又はOHで置換されていてもよい;
【0042】
Lは、さらにいっそう好ましくは、
- (C1-10-アルキレン) -,
- (C1-6-アルキレン) -NH-,
-C(O) -,
-C(O)-NH-,
-C(O) -CH (OH) -,
-C(O) -NH-NH-C (O) O-,
-C(O) - (C1-12-アルキレン) -,
-C(O) -NH- (C1-6-アルキレン) ,
-C(O) - (C1-12-アルキレン) -C(O) -,
-C(O) - (C1-12-アルキレン) -NH-C(O) O-,
-C(O) - (C1-6-アルキレン) -C(O) -NH-,
-C(O) - (C1-6-アルキレン) -C(O) -NH- (C1-6-アルキレン) -,
-C(O) -O- (C1-6-アルキレン) -,
-C(O) - (C1-6-アルキレン) -Y-,ただし、YがNH, O 又は S,
-C(O) - (C1-3-アルキレン) -O- (C1-3アルキレン) -C(O) -NH-,
-C(O) - (C1-3-アルキレン) -O- (C1-3アルキレン) -C(O) -NH- (C1-6-アルキレン) -,
-C(O) - (C1-6-アルキレン) -C(O) -NH- (C1-6-アルキレン) -NH-C(O) -NH-,-CH2-CH (OH) -CH2- (OCH2CH2)m-O-,ただし、mが1, 2, 3, 4, 5 又は 6;
- (C1-6-アルキレン)-Y-(C1-6-アルキレン) -,ただし、YがS, O, NH 又は -S(O2) -,
-C(O) -(CH(CH2CH(CH3)2) ) -NH-C(O) -,
-C(O) -NH- (C1-6-アルキレン) -NH-C(O) -,
-C(O) - (C1-6-アルキレン) -NH-C(O) - (CH (CH2CH (CH3) 2) ) -NH-C(O) -,
【化2】
からなる群より選択されるn価の結合単位である。
【0043】
Lは、さらに好ましくは、
-C(O) -,
-C(O)CH2-,
-C(O)CH2CH2-,
-C(O)CH2CH2CH2-,
-C(O)-CH=CH-,
-C(O)CH (OH) -,
-C(O)CH (CH3) -,
-C(O)CH2O-,
-C(O)NH-,
-C(O)NHCH2-,
-C(O)NHCH (CH3) - ,
-CH2CH2-,
-(CH2)4-NH-,
-C(O)CH2CH2C(O) -,
-C(O)CH2CH2C(O)-NH-,
-C(O)CH2CH2C(O) NHCH2-,
-C(O)CH2CH2C(O) NHCH2CH2-,
-C(O)CH2CH2C(O) NHCH2CH2CH2-,
-C(O)CH2CH2C(O)NHCH2CH2NHC(O)NH-,
-C(O)OCH2-,
-C(O)OCH2CH2-,
-C(O)CH2S-,
-C(O)CH2OCH2C(O) HCH2-,
-CH2CH2S(O) 2CH2CH2-,
-CH2CH (OH) CH2OCH2CH2OCH2CH (OH) CH2-,
-CH2CH (OH) CH2 (OCH2CH2) 5O-,
-C(O)(CH2) 10-,
-C(O)(CH (CH2CH (CH3) 2) ) -NH-C(O) -,
-C(O)(CH2CH2CH2) -NH-C(O) - (CH (CH2CH (CH3) 2) ) -NH-C(O) -,
【化3】
である。
【0044】
Lは、さらにより好ましくは、
-C(O)-,
-CH2CH2- ,
-C(O) NH-,
-C(O)NHCH2-,
-C(O)CH2O-,
-C(O)CH2CH2-,
-C(O)CH2CH2CH2-,
-C(O)CH2CH2C(O)NH-,
-(CH2)4-NH-,
-C(O)CH2CH2C(O) NH-CH2-,
-C(O)CH2CH2C(O) NH-CH2CH2,
-C(O)CH2CH2C(O) NHCH2CH2NHC(O) NH-,
-C(O)OCH2-,
-C(O)CH2OCH2C(O) NHCH2-,
-CH2CH (OH) CH2 (OCH2CH2) 5 O-,
-C(O)- (CH(CH2CH(CH3) 2) ) -NH-C (O) - ,
-C(O)CH (OH) -,
-C(O)CH (CH3) -,
-C(O)NHCH(CH3) -,
-C(O)- (CH2CH2CH2) -NH-C (O) - ( CH ( CH2CH ( CH3 ) 2 ) ) -NH-C(O) -,
【化4】
であり、
Lの上記すべての定義において破線は、固体支持材料、又は、ポリマー膜及びArの官能基への結合を示し、
上記に挙げたすべての結合Lにおいては、自由な末端線を有する最初の元素は、この位置で固体支持材料に結合していることが好ましい。
【0045】
Lは、-C(O)- 、-CH2CH2-、-C(O)CH2O-、又は、-C(O)NH-であり、この単位が、それ自体のカルボニル基を介して官能基に結合していることがさらに好ましく、-C(O) 及び -C(O)NH-が最も好ましい。
【0046】
本発明において、1価の単環式又は多環式の芳香族環系は、芳香族環系としての、炭素原子数6〜28の芳香族環系が好ましい。“芳香族環系”との用語において、系は、必ずしも芳香族基のみを有するわけではなく、1以上の芳香族単位が、sp3混成のC、O、N等や−C(O)−といった短鎖の非芳香族単位(Hではない原子が<10%、好ましくはHではない原子が<5%)と結合したり、この非芳香族単位が間に配されていたりしてもよい系であると理解される。これらの芳香族環系は、単環式であっても多環式であってもよく、即ち、芳香族環系は、1つの(例えば、フェニル)、2つの(例えば、ナフチル)、縮合した又は縮合していない複数の(例えば、ビフェニル)芳香族環を含んでいてもよく、縮合した環と、共有結合でつながった環とが組み合わさったものであってもよい。この環系の芳香族原子は、D、F、Cl、OH、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、NH2、−NO2、−B(OH)2、−CN、又は−NCで置換されていてもよい。
【0047】
好ましい芳香族環系は、例えば、フェニル、ビフェニル、トリフェニル、ナフチル、アントラシル、ビナフチル、フェナントリル、ジヒドロフェナントリル、ピレン、ジヒドロピレン、クリセン、ペリレン、テトラセン、ペンタセン、ベンツピレン、フルオレン、インデン、フェロセニルである。
【0048】
Arは、置換されていても置換されていなくてもよい、6〜14の芳香環元素を有する1価の芳香族環系であることが好ましい。Arは、フェニル、ナフチル、アントラシル、ピリルであることがより好ましい。Arの水素原子が置換されていないか、又は、Arの水素原子の1つ又は複数がF又はCNの1つ又は複数で置換されていることが、さらに好ましい。Arは、パーフルオロ芳香族環系、望ましくはパーフルオロフェニルであることがさらにより好ましい。代わりに、Arは、1つの−CNで置換されていてもよい。この場合、Arは、−CNで置換されたフェニルであってもよく、Lの位置に対してパラ位であることが好ましい。
【0049】
式(I)の残基は、好ましい態様では、好ましく及び最も好ましく意図するLと、最も好ましく意図するArとのすべての組み合わせとなり得る。
【0050】
さらに、nは、1又は2であることが好ましく、Lが2価の結合基となるように1であることがさらに好ましい。
【0051】
本発明の他の実施形態は、固体支持材料を備える複合材料を提供し、固体支持材料の表面が下記一般式(II)の残基を有し:
【化5】
残基は、式(II)の破線によって示される共有結合の一重結合(単結合)を介して、固体支持材料自体の表面、又は、固体支持材料の表面上のポリマー膜の表面のいずれかに付いており;
式(II)の記号及び符号は、下記の意味を有する:
Lは、(q+1)価の炭素原子数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、又は、(q+1)価の炭素原子数3〜20の分岐鎖状もしくは環状脂肪族炭化水素基であり、
上記炭化水素基の1つ又は複数のCH2部分は、CO、NH、O、又はSで置換されていてもよく、
上記炭化水素基の1つ又は複数のCH部分は、Nで置換されていてもよく、
上記炭化水素基は、2炭素原子間に1つ又は複数の二重結合を有していてもよく、
1つ又は複数の水素原子は、D、F、Cl、又はOHで置換されていてもよく;
Arは、それぞれ独立して、6〜28、好ましくは6〜20、より好ましくは6又は20の芳香族環状原子を有する、単環式もしくは多環式の(p+1)価の芳香族環系、又は、
5〜28、好ましくは5〜14、より好ましくは5の芳香族環状原子を有する、単環式もしくは多環式の(p+1)価のヘテロ芳香族環系であり、
芳香族環系又はヘテロ芳香族環系の1つ又は複数の水素原子が、残基R1で置換されていてもよく;
Psは、それぞれ独立して、脱プロトン性基又はアニオン基のいずれかであり、
1は、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、D、F、Cl、Br、−CN、−NC、−NO2、及び、カルボン酸、リン酸、ボロン酸のC1-6アルキルエステルから選択され;
pは、1、2、又は3であり、好ましくは1又は3であり、最も好ましくは1であり;
qは、1又は2であり、好ましくは1である。
【0052】
(q+1)価の炭素原子数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、又は、(q+1)価の炭素原子数3〜20の分岐鎖状もしくは環状脂肪族炭化水素基は、好ましくは、下記の群のうちの1つである:メチレン、エチレン、n-プロピレン、iso-プロピレン、n-ブチレン、iso-ブチレン、sec-ブチレン(1-メチルプロピレン)、tert-ブチレン、iso-ペンチレン、n-ペンチレン、tert-ペンチレン(1,1-ジメチルプロピレン)、1,2-ジメチルプロピレン、2,2-ジメチルプロピレン(ネオペンチレン)、1-エチルプロピレン、2-メチルブチレン、n-ヘキシレン、iso-ヘキシレン、1,2-ジメチルブチレン、1-エチル-1-メチルプロピレン、1- エチル-2-メチルプロピレン、1,1,2-トリメチルプロピレン、1,2,2-トリメチルプロピレン、1-エチルブチレン、1-メチルブチレン、1,1-ジメチルブチレン、2,2-ジメチルブチレン、1,3-ジメチルブチレン、2,3-ジメチルブチレン、3,3-ジメチルブチレン、2-エチルブチレン、1-メチルペンチレン、2-メチルペンチレン、3-メチルペンチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロヘプチレン、シクロオクチレン、2-エチルヘキシレン、トリフルオロメチレン、ペンタフルオロエチレン、2,2,2-トリフルオロエチレン、エテニレン、プロペニレン、ブテニレン、ペンテニレン、シクロペンテニレン、ヘキセニレン、シクロヘキセニレン、ヘプテニレン、シクロヘプテニレン、オクテニレン、又はシクロオクテニレン、
前記脂肪族炭化水素基の1つ又は複数のCH2部分は、CO、NH、O、又はSで置換されていてもよく、
前記脂肪族炭化水素基の1つ又は複数のCH部分は、Nで置換されていてもよく、
前記脂肪族炭化水素基は、2炭素原子間に1つ又は複数の二重結合を有していてもよく、
1つ又は複数の水素原子は、D、F、Cl、又はOHで置換されていてもよい。
【0053】
Lは、好ましくは炭素原子数1〜20の、より好ましくは炭素原子数1〜10の(n+1)価の直鎖状脂肪族炭化水素基であり、好ましくは炭素原子数3〜20の、より好ましくは炭素原子数3〜10の(n+1)価の分岐鎖状又は環状の脂肪族炭化水素基であり、
前記脂肪族炭化水素基の1つ又は複数のCH2部分は、CO、NH、O、又はSで置換されていてもよく、
前記脂肪族炭化水素基の1つ又は複数のCH部分は、Nで置換されていてもよく、
前記脂肪族炭化水素基は、2炭素原子間に1つ又は複数の二重結合を有していてもよく、
1つ又は複数の水素原子は、D、F、Cl、又はOHで置換されていてもよい。
【0054】
(q+1)価の直鎖状脂肪族炭化水素基において、1つ又は複数のCH2部分は、−C(O)で置換されていることが好ましく、1つのCH2部分のみが置換されていることがさらに好ましい。1つのCH2部分は、NHで置換されていることがさらに好ましく、−C(O)−の隣が置換されていることがよりさらに好ましい。
【0055】
Lは、好ましくは、
-(C1-1O-アルキレン) -,
-(C1-6-アルキレン) -NH-,
-C(O) -,
-C(O)-NH-,
-C(O)-CH (OH) -,
-C(O)-NH-NH-C (O) O-,
-C(O)- (C1-12-アルキレン) -,
-C(O)- (C2-1O-アルキレン) -,
-C(O)-NH- (C1-6-アルキレン) ,
-C(O)- (C1-12-アルキレン) -C (O) -,
-C(O)- (C1-12-アルキレン) -NH-C (O) O-,
-C(O)- (C1-6-アルキレン) -C (O) -NH-,
-C(O)- (C1-6-アルキレン) -C (O) -NH- (C1-6-アルキレン) -,
-C(O)-CH (CH2CH2CH2NHC ( =NH ) NH2 ) NHC (O) -,
-C(O)-O- (C1-6-アルキレン) -,
-C(O)- (C1-6-アルキレン) -Y-,ただし、YがNH, O 又は S,
-C(O)- (C1-3-アルキレン) -O- (C1-3アルキレン) -C (O) -NH-,
-C(O)- (C1-3-アルキレン) -O- (C1-3アルキレン) -C (O) -NH- (C1-6-アルキレン) -,
-C(O)- (C1-6-アルキレン) -C (O) -NH- (C1-6-アルキレン) -NH-C (O) -NH-,-CH2-CH (OH) -CH2- (OCH2CH2)m-O-,ただし、mが1, 2, 3, 4, 5 又は 6;
- (C1-6-アルキレン)-Y-(C1-6-アルキレン) -,ただし、Yが S, O, NH 又は -S(O2)-,
-C(O) -(CH(CH2CH(CH3)2) ) -NH-C(O) -,
-C(O) -NH- (C1-6-アルキレン) -NH-C (O) -,
-C(O) - (C1-6-アルキレン) -NH-C (O) - (CH (CH2CH (CH3) 2) ) -NH-C (O) -,
-CH2CH (OH) CH2OCH2CH2OCH2CH (OH) CH2-
【化6】
からなる群より選択される。
【0056】
Lは、より好ましくは、
-C(O) -,
-C(O) CH2-,
-C(O) CH2CH2-,
-C(O) CH2CH2CH2-,
-C(O) -CH=CH-,
-C(O) CH (OH) -,
-C(O) CH (CH3) -,
-C(O) CH2O-,
-C(O)NH-,
-C(O)NHCH2-,
-C(O) NHCH ( CH3 ) - ,
-CH2CH2-,
-(CH2) 4-NH-,
-C(O) CH2CH2C (O) -,
-C(O) CH2CH2C (O) -NH-,
-C(O) CH2CH2C (O) NHCH2-,
-C(O) CH2CH2C (O) NHCH2CH2-,
-C(O) CH2CH2C (O) NHCH2CH2CH2-,
-C(O) CH2CH2C (O)NHCH2CH2NHC (O)NH-,
-C(O) OCH2-,
-C(O) OCH2CH2-,
-C(O) CH2S-,
-C(O) CH2OCH2C (O) HCH2-,
-CH2CH2S (O) 2CH2CH2-,
-CH2CH (OH) CH2OCH2CH2OCH2CH (OH) CH2-,
-CH2CH (OH) CH2 (OCH2CH2) 5O-,
-C(O) (CH2) 1O-,
-C(O) (CH (CH2CH (CH3) 2) ) -NH-C (O) -,
-C(O) (CH2CH2CH2) -NH-C (O) - (CH (CH2CH (CH3) 2) ) -NH-C (O) -,
-C(O) -CH (CH2CH2CH2NHC ( =NH ) NH2 ) NHC (O) -
【化7】
からなる群より選択される。
【0057】
Lは、さらにより好ましくは、
-C(O)-,
-CH2CH2- ,
-C(O) NH-,
-C(O)NHCH2-,
-C(O)CH2O-,
-C(O)CH2CH2-,
-C(O)CH2CH2CH2-,
-C(O)CH2CH2C(O)NH-,
-(CH2)4-NH-,
-C(O) CH2CH2C(O) NH-CH2-,
-C(O) CH2CH2C(O) NH-CH2CH2,
-C(O) CH2CH2C(O) NHCH2CH2NHC(O) NH-,
-C(O)OCH2-,
-C(O) CH2OCH2C(O) NHCH2-,
-CH2CH (OH) CH2 (OCH2CH2) 5 O-,
-C(O) - (CH(CH2CH(CH3) 2) ) -NH-C(O) - ,
-C(O) CH (OH) -,
-C(O) CH (CH3) -,
-C(O)NHCH(CH3) -,
-C(O) - (CH2CH2CH2) -NH-C(O) - ( CH ( CH2CH ( CH3 ) 2 ) ) -NH-C(O) -,
-C(O) -CH (CH2CH2CH2NHC ( =NH ) NH2 ) NHC(O) -
【化8】
であり、
式(II)のLのすべての定義において破線は、固体支持材料、又は、ポリマー膜及びArの官能基への結合を示し、
上記に挙げたすべての結合Lにおいては、自由な末端線を有する最初の元素は、この位置で固体支持材料に結合していることが好ましい。
【0058】
Lは、-C(O)-、-C(O)-CH (CH2CH2CH2NHC(=NH)NH2)NHC(O) -、-CH2CH2-、-C(O)CH2O-、又は、
【化9】
であり、
この単位は、そのカルボニル原子、最も好ましくは-C(O)-、を介して官能基に結合している。
【0059】
本発明において、6〜28、好ましくは6〜20、より好ましくは6又は20の芳香族環状原子を有する、単環式もしくは多環式の(p+1)価の芳香族環系は、好ましくは6〜28の炭素原子、より好ましくは6〜20の炭素原子、最も好ましくは6又は20の炭素原子を芳香族環状原子として有する芳香族環系である。“芳香族環系”との用語において、系は、必ずしも芳香族基のみを有するわけではなく、1以上の芳香族単位が、sp3混成のC(例えばCH2)、O、N等や-C(O)-といった短鎖の非芳香族単位(Hではない原子が<10%、好ましくはHではない原子が<5%)と結合したり、この非芳香族単位が間に配されていたりしてもよい系であると理解される。これらの芳香族環系は、単環式であっても多環式であってもよく、即ち、芳香族環系は、1つの(例えば、フェニル)、2つの(例えば、ナフチル)、縮合した又は縮合していない複数の(例えば、ビフェニル)芳香族環を含んでいてもよく、縮合した環と、共有結合でつながった環とが組み合わさったものであってもよい。
【0060】
好ましい芳香族環系は、例えば、フェニル、ビフェニル、トリフェニル、ナフチル、アントラシル、ビナフチル、フェナントリル、ジヒドロフェナントリル、ピレン、ジヒドロピレン、クリセン、ペリレン、テトラセン、ペンタセン、ベンツピレン、フルオレン、インデン、及びフェロセニルである。
【0061】
Arは、フェニル、ナフチル、アントラシル、ピリル、又はペリレニル(perylyl)であることが好ましく、フェニル及びナフチルがより好ましい。符号pの定義に従い、Arは、互いに同じであっても異なっていてもよい1つ、2つ、又は3つのPs基で置換されていてもよい。pが2又は3のときには、Ps基が同じであるか、又は、Ps基が-COOH及び-SO3Hの組み合わせであることが好ましい。
【0062】
本発明において5〜28、好ましくは5〜14、最も好ましくは5の芳香族環状原子を有する、単環式もしくは多環式の(p+1)価のヘテロ芳香族環系は、好ましくは5〜28の炭素原子、より好ましくは5〜14の炭素原子、最も好ましくは5の炭素原子を芳香族環状原子として有する芳香族環系である。ヘテロ芳香族環系は、N、O、S、及びSeから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む(残りの原子は炭素)。“芳香族環系”との用語において、系は、必ずしも芳香族基及び/又はヘテロ芳香族基のみを有するわけではなく、1以上の(ヘテロ)芳香族単位が、sp3混成のC、O、N等や-C(O)-といった短鎖の非芳香族単位(Hではない原子が<10%、好ましくはHではない原子が<5%)と結合したり、この非芳香族単位が間に配されていたりしてもよい系であると理解される。これらのヘテロ芳香族環系は、単環式であっても多環式であってもよく、即ち、ヘテロ芳香族環系は、1つの(例えば、ピリジル)、又は、2つもしくはそれ以上の、縮合した又は縮合していない芳香族環を含んでいてもよく、縮合した環と、共有結合でつながった環とが組み合わさったものであってもよい。
【0063】
好ましいヘテロ芳香族環系は、例えば、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、 1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、テトラゾール、フラン、チオフェン、セレノフェン、オキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、などの五員環、また、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、 1,2,3-トリアジン、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,3,5-テトラジンなどの六員環、また、インドール、イソインドール、インドリジン、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、プリン、ナフトイミダゾール、フェナントルイミダゾール、ピリドイミダゾール(pyridimidazole)、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール(naphthoxazole)、アントロオキサゾール(anthroxazole)、フェナントルオキサゾール(phenanthroxazole)、イソオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、キノリン、イソキノリン、プテリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、ベンゾイソキノリン、アクリジン、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンゾピリダジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、フェナジン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルバゾール、フェナントリジン、フェナントロリン、チエノ[2,3b]チオフェン、チエノ[3,2b]チオフェン、ジチエノチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ベンゾチアジアゾールチオフェン(benzothiadiazothiophene)などの縮合基、又は、これらの基の組み合わせである。さらにより好ましくは、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ピリジンである。
【0064】
しかしながら、Arは、(p+1)価の単環式又は多環式の芳香族環系であることが好ましい。
【0065】
他の実施形態では、本発明は、固体支持材料を含む複合材料を提供し、固体支持材料の表面は、下記一般式(III)の残基を有し:
- - - - - -L――――X 式(III)
残基は、式(III)の破線で表される共有結合の一重結合(単結合)を介して、固体支持材料がポリマー膜を有するか否かによって、固体支持材料自体の表面、又は、固体支持材料の表面上のポリマー膜の表面のいずれかの官能基に付いており、
式(III)の記号及び符号は、下記の意味を有する:
Lは、共有結合の一重結合(単結合)、又は、-C(O)-、-S(O)2-、 -CH2CH(OH)-、及び-C(O)NH-からなる群より選択される2価の単位であり、
Xは、炭素原子数1〜30の直鎖状脂肪族炭化水素基、又は、炭素原子数3〜30の分岐鎖状もしくは環状脂肪族炭化水素基であり、
上記炭化水素基の1つ又は複数の、好ましくは1つのCH2部分は、O、S、-S(O)2-、-C(O)NH-、又は-C(S)NH-で置換されていてもよく、
1つ又は複数の水素原子は、F、Cl、Br、−CN、又は−NCで置換されていてもよく、
上記炭化水素基は、2炭素原子間に1つ又は複数の二重結合を有していてもよい。
【0066】
1価の炭素原子数1〜30の直鎖状脂肪族炭化水素基、又は、1価の炭素原子数3〜30の分岐鎖状もしくは環状脂肪族炭化水素基は、下記の基のうちの1種であり:
メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル(1-メチルプロピル)、tert-ブチル、iso-ペンチル、n-ペンチル、tert-ペンチル(1,1-ジメチルプロピル)、1,2-ジメチルプロピル、2,2- ジメチルプロピル(ネオペンチル)、1-エチルプロピル、2-メチルブチル、n-ヘキシル、iso-ヘキシル、1,2-ジメチルブチル、1-エチル-1-メチルプロピル、1-エチル-2-メチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチルブチル、1-メチルブチル、1,1-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、 n-ヘプチル、n -オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n -ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、1-ヘキシルノニル、n-ヘキサデシル、1-ヘキシル-デシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、n-ノナデシル、-(CH220CH3、-(CH221CH3、-(CH222CH3、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、2-エチルヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、又はシクロオクテニル、
上記炭化水素基の1つ又は複数、好ましくは1つのCH2部分は、O、S、-S(O)2-、-C(O)NH-、又は-C(S)NH-で置換されていてもよく
1つ又は複数の水素原子は、F、Cl、Br、-CN、又はNCで置換されていてもよく、F及び-CNが好ましい。
【0067】
好ましくは、Xは、1価の炭素原子数1〜22の直鎖状脂肪族炭化水素基、又は、1価の炭素原子数3〜20の分岐鎖状もしくは環状脂肪族炭化水素基であり、
上記炭化水素基の1つ又は複数、好ましくは1つのCH2部分は、O、S、-S(O)2-、-C(O)NH-、又は-C(S)NH-で置換されていてもよく;
1つ又は複数の水素原子は、F、CI、Br、-CN、又は-NCで置換されていてもよく;及び/又は、
上記炭化水素基は、2炭素原子間に1つ又は複数の二重結合を有していてもよい。
【0068】
さらに好ましくは、Xは、それぞれ、炭素原子数1〜22又は炭素原子数3〜22の、直鎖状脂肪族炭化水素基、又は、分岐鎖状脂肪族炭化水素基であり、よりさらに好ましくは、Xは、炭素原子数1〜22の直鎖状脂肪族炭化水素基である。上述したように、1つ又は複数の、好ましくは1つのCH2部分は、O、S、-S(O)2-、-C(O)NH-、又は-C(S)NH-で置換され、1つ又は複数の水素原子は、F、CI、Br、-CN、又は-NCで置換されていてもよく、F及び-CNが好ましい。
【0069】
しかしながら、より好ましくは、上記の脂肪族炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル(炭化水素)である。本発明では、アルキルとは、ヘテロ原子がないものである。
【0070】
直鎖状のアルキルは、nが1〜22を示す式-(CH2)nCH3で表される基を意味するC1〜C22アルキルであることが好ましく、nが6〜15であることがより好ましく、8〜13であることがさらに好ましく、11であることが最も好ましい。
【0071】
分岐鎖状のアルキルは、少なくとも1つの第3級(tertiary)又は第4級(quaternary)の炭素原子が存在する基を意味するC3〜C22アルキルであり、斯かる炭素原子が、さらなる別の炭素原子又はLのいずれかに結合していることが好ましい。
【0072】
分岐鎖状のアルキルの好ましい例は、iso-プロピル、iso-ブチル、sec-ブチル(1-メチルプロピル)、tert-ブチル、iso-ペンチル、tert-ペンチル(1,1-ジメチルプロピル)、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル(ネオペンチル)、1-エチルプロピル、2-メチルブチル、iso-ヘキシル、1,2-ジメチルブチル、1-エチル-1-メチルプロピル、1-エチル-2-メチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチルブチル、1-メチルブチル、1,1-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1-ヘキシルノニル、及び1-ヘキシル-デシルである。
【0073】
炭化水素基の1つ又は複数のCH2部分が、O、S、-S(O)2-、-C(O)NH-、又は-C(S)NH-で置換されている場合には、CH2部分と置換基とを合わせたすべての基に対して、最高でCH2部分の30モル%が、これらの基の1種又は複数種、好ましくは1種で置換されていることが望ましい。これらの基の好ましい例は、- (C1-C6アルキレン) -Y-(C1-C15アルキル) 、又は、- (C1-C6アルキレン) -O- (CH2CH2 O) h- (C1-C15アルキル)であり、YがO、S、又は-S(O)2であり、C1-C6アルキレンは、mが1〜6である-(CH2)m-単位を意味し、C1-C15アルキルは、kが1〜15であり、hが1〜20である-(CH2)k-CH3基を意味する。
【0074】
上述したように、Lは、-C(O)-、-S(O)2-、-CH2CH(OH)-、及び、-C(O)NH-からなる群、好ましくは-C(O)-、-S(O)2-、及び-CH2CH(OH)- からなる群、さらに好ましくは-C(O)-及び-S(O)2-からなる群、最も好ましくは-C(O)-からなる群より選択される、共有結合の一重結合、又は、二重結合単位を示す。
【0075】
本発明の複合材料の一実施形態では、望ましくは、Lが-C(O)-であり、Xは、それぞれ、炭素原子数1〜22又は炭素原子数3〜22の、直鎖状脂肪族炭化水素基、又は、分岐鎖状脂肪族炭化水素基であり、好ましくは直鎖状脂肪族炭化水素基であり、Xは、直鎖状のC1-C22アルキル又は分岐鎖状のC3-C22アルキルであることがより好ましく、直鎖状のC1-C22アルキルであることがさらに好ましく、C6-C15アルキルがよりさらに好ましく、C8-C13アルキルがよりいっそう好ましく、C11アルキルが最も好ましい。
【0076】
さらなる実施形態では、本発明は、固体支持材料を含む吸着剤を提供し、固体支持材料の表面は、下記一般式(IV)の残基を含み:
【化10】
残基は、式(IV)の破線で表される共有結合の一重結合(単結合)を介して、固体支持材料の表面、又は、固体支持材料の表面上のポリマー膜の表面のいずれかの官能基に付いており、
式(IV)の記号及び符号は、下記の意味を有する:
Lは、共有結合の一重結合(単結合)、又は、(h+1)価の炭素原子数1〜30の直鎖状脂肪族炭化水素基、又は、(h+1)価の炭素原子数3〜30の分岐鎖状もしくは環状脂肪族炭化水素基であり、
上記炭化水素基の1つ又は複数のCH2部分は、-C(O)-、-C(O)NH-、O、S、又は、-S(O)2-で置換されていてもよく、
1つ又は複数の水素原子は、D、F、Cl、又はOH、好ましくはOHで置換されていてもよく;
Bは、有機カチオン基、又は、プロトン化する有機基であり、
hは、LへのPB部分の結合数を表す符号であり、1、2、又は3であり、より好ましくは1又は2であり、最も好ましくは1あり、
Lが一重結合を表す場合には、hが1であり、PBが、PB基の炭素原子を介して官能基に結合している。
【0077】
B基は、有機カチオン基、又は、プロトン化する有機基であり、即ち、溶液中でカチオン基になる基である。好ましくは、斯かる基は、水溶液中で6〜8の範囲のpHにてカチオンの態様、即ち、プロトン化した態様で存在する。有機基との用語としては、水素及び炭素を含む基のみでなく、アミンなどの窒素及び水素を含む基も認められる。
【0078】
B基は、アミンの態様にて少なくとも1つの窒素原子を含む基であることが好ましい。アミンは、第1級、第2級、第3級、又は第4級アミンであってもよい。第2級、第3級、又は第4級アミンである場合の残基は、C1-6アルキル基であることが好ましい。
【0079】
B基は、下記の基であることがより好ましい:
【化11】
1は、それぞれ独立して、H又はC1-6アルキル、好ましくはH又はCH3であり、より好ましくは、R1は、それぞれが同じであり、また、R2は、それぞれ独立して、C1-6アルキル、好ましくはCH3であり、より好ましくは、R2は、同じであり;
【化12】
1は、それぞれ独立して、H又はC1-6アルキルであり、N(R12基の各R1は、他の基の各R1とともに、互いに独立して、pが2、3、4、又は5の-(CH2)p-単位を形成していてもよく;
c)−N(R32又は−[N(R33+、ただし、R3が、H、C1-6アルキル、単環式もしくは多環式の芳香族環系、又は、単環式もしくは多環式のヘテロ芳香族環系;
d)上記c)で定義したR3で4位にて置換されたピロリジン、ピペリジン、モルホリン、又はピペラジンであり、ピペラジンがより好ましく、R3が−CH3であるピペラジンが最も好ましい。
e)-NH- (C1-6アルキレン) -NH2、より好ましくはn=1、2、3、4、5、又は6の-NH- ( CH2 ) n-NH2
【0080】
本発明では、PB基が下記の基のいずれかであることが特に好ましい。
【化13】
【0081】
(h+1)価の炭素原子数1〜30の直鎖状脂肪族炭化水素基、又は、(h+1)価の炭素原子数3〜30の分岐鎖状もしくは環状脂肪族炭化水素基は、好ましくは、下記の基のいずれかである:
メチレン、エチレン、n-プロピレン、iso-プロピレン、n-ブチレン、iso-ブチレン、sec-ブチレン(1-メチルプロピレン)、tert-ブチレン、iso-ペンチレン、n-ペンチレン、tert-ペンチレン(1,1-ジメチルプロピレン)、1,2-ジメチルプロピレン、2,2-ジメチルプロピレン(ネオペンチレン)、1-エチルプロピレン、2-メチルブチレン、n-ヘキシレン、iso-ヘキシレン、1.2-ジメチルブチレン、1-エチル-1-メチルプロピレン、1-エチル-2-メチルプロピレン、1,1,2-トリメチルプロピレン、1,2,2-トリメチルプロピレン、1-エチルブチレン、1-メチルブチレン、1,1-ジメチルブチレン、2,2-ジメチルブチレン、1,3-ジメチルブチレン、2.3-ジメチルブチレン、3,3-ジメチルブチレン、2-エチルブチレン、1-メチルペンチレン、2-メチルペンチレン、3-メチルペンチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロヘプチレン、シクロオクチレン、2-エチルヘキシレン、トリフルオロメチレン、ペンタフルオロエチレン、2,2,2-トリフルオロエチレン、エテニレン、プロペニレン、ブテニレン、ペンテニレン、シクロペンテニレン、ヘキセニレン、シクロヘキセニレン、ヘプテニレン、シクロヘプテニレン、オクテニレン、又はシクロオクテニレン、ここで、
上記炭化水素基の1つ又は複数のCH2部分は、-C(O)-、-C(O)NH-、O、S、又は、-S(O)2-で置換されていてもよく、
1つ又は複数の水素原子は、D、F、Cl、又はOH、好ましくはOHで置換されていてもよい。
【0082】
置換されている場合には、Lの1つのみ又は2つのCH2部分が、-C(O)、-C(O)NH-、O、S、又は、-S(O)2- で置換されていることが好ましく、好ましくは直接隣り合っていない2つのCH2部分がそれぞれ-C(O)-で置換されていることがより好ましい。
【0083】
置換されている場合には、Lの1つの水素原子のみがD、F、Cl、又はOH、好ましくはOHで置換されていることがさらに好ましい。
【0084】
好ましくは、Lは、(h+1)価の炭素原子数1〜20、より好ましくは炭素原子数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、又は、(h+1)価の炭素原子数3〜20、より好ましくは炭素原子数3〜10の分岐鎖状もしくは環状脂肪族炭化水素基であって、斯かる基の1つ又は複数のCH2部分が、-C(O)、-C(O)NH-、O、S、又は、-S(O)2-で置換され、1つ又は複数の水素原子が、D、F、Cl、又はOH、好ましくはOHで置換されている。
【0085】
さらなる他の実施形態では、本発明は、固体支持材料を含む吸着剤を提供し、固体支持材料の表面が下記一般式(V)の残基を含み:
【化14】
残基は、固体支持材料がポリマー膜を有するか否かによって、式(V)の破線で表される共有結合の一重結合(単結合)を介して、固体支持材料の表面、又は、固体支持材料の表面上のポリマー膜の表面のいずれかの官能基に付いており、
式(V)の記号及び符号は、下記の意味を有する:
Lは、(h+1)価の炭素原子数1〜30の直鎖状脂肪族炭化水素基、又は、(h+1)価の炭素原子数3〜30の分岐鎖状もしくは環状脂肪族炭化水素基であり、
上記炭化水素基の1つ又は複数のCH2部分は、CO、NH、O、又は、Sで置換されていてもよく;
上記炭化水素基の1つ又は複数のCH部分は、Nで置換されていてもよく;
上記炭化水素基は、2炭素原子間に1つ又は複数の二重結合を含み;
1つ又は複数の水素原子は、D、F、Cl、又はOHで置換されていてもよく;
Psは、それぞれ独立して、脱プロトン化する基又はアニオン基のいずれかであり;
hは、1、2、又は3であり、より好ましくは1又は2であり、最も好ましくは1である。
【0086】
(h+1)価の炭素原子数1〜30の直鎖状脂肪族炭化水素基、又は、(h+1)価の炭素原子数3〜30の分岐鎖状もしくは環状脂肪族炭化水素基は、下記の基のいずれかであることが好ましい:
メチレン、エチレン、n-プロピレン、iso-プロピレン、n-ブチレン、iso-ブチレン、sec-ブチレン(1-メチルプロピレン)、tert-ブチレン、iso-ペンチレン、n-ペンチレン、tert-ペンチレン(1,1-ジメチルプロピレン)、1,2-ジメチルプロピレン、2,2-ジメチルプロピレン(ネオペンチレン)、1-エチルプロピレン、2-メチルブチレン、n-ヘキシレン、iso-ヘキシレン、1,2-ジメチルブチレン、1-エチル-1-メチルプロピレン、1-エチル-2-メチルプロピレン、1,1,2-トリメチルプロピレン、1,2,2-トリメチルプロピレン、1-エチルブチレン、1-メチルブチレン、1,1-ジメチルブチレン、2,2-ジメチルブチレン、1,3-ジメチルブチレン、2,3-ジメチルブチレン、3,3-ジメチルブチレン、2-エチルブチレン、1-メチルペンチレン、2-メチルペンチレン、3-メチルペンチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロヘプチレン、シクロオクチレン、2-エチルヘキシレン、トリフルオロメチレン、ペンタフルオロエチレン、2,2,2-トリフルオロエチレン、エテニレン、プロペニレン、ブテニレン、ペンテニレン、シクロペンテニレン、ヘキセニレン、シクロヘキセニレン、ヘプテニレン、シクロヘプテニレン、オクテニレン、又はシクロオクテニレン。
【0087】
好ましくは、Lは、(h+1)価の炭素原子数1〜20、より好ましくは炭素原子数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、又は、(h+1)価の炭素原子数3〜20、より好ましくは炭素原子数3〜10の分岐鎖状もしくは環状脂肪族炭化水素基であり、
上記炭化水素基の1つ又は複数のCH2部分は、CO、NH、O、又は、Sで置換されていてもよく;
上記炭化水素基の1つ又は複数のCH部分は、Nで置換されていてもよく;
上記炭化水素基は、2炭素原子間に1つ又は複数の二重結合を含み;且つ、
1つ又は複数の水素原子は、D、F、Cl、又はOHで置換されていてもよい。
【0088】
結合単位Lは、好ましくは、
- (C1-10-アルキレン) -,
- (C1-6-アルキレン) -NH-,
-C(O) -,
-C(O)-NH-,
-C(O)-CH (OH) -,
-C(O)-NH-NH-C(O) O-,
-C(O)-(C1-12-アルキレン) -,
-C(O)-NH- (C1-6-アルキレン) ,
-C(O)-(C1-12-アルキレン) -C(O) -,
-C(O)-(C1-12-アルキレン) -NH-C(O) O-,
-C(O)-(C1-6-アルキレン) -C(O) -NH-,
-C(O)-(C1-6-アルキレン) -C(O) -NH-(C1-6-アルキレン) -,
-C(O)-O-(C1-6-アルキレン) -,
-C(O)-(C1-6-アルキレン) -Y-,ただし、YがNH、O、又はS、
-C(O)-(C1-3-アルキレン) -O-(C1-3アルキレン) -C(O) -NH-,
-C(O)-(C1-3-アルキレン) -O-(C1-3アルキレン) -C(O) -NH-(C1-6-アルキレン) -、
-C(O)-(C1-6-アルキレン) -C(O) -NH-(C1-6-アルキレン) -NH-C(O)-NH-、
-CH2-CH (OH) -CH2- (OCH2CH2)m-O-,ただし、mが1, 2, 3, 4, 5 又は 6;
-(C1-6-アルキレン) -Y-(C1-6-アルキレン) -,ただし、YがS, O, NH 又は -S (O2) -,
-C(O)-(CH(CH2CH(CH3)2) ) -NH-C(O) -,
-C(O)-NH- (C1-6-アルキレン) -NH-C(O) -,
-C(O)-(C1-6-アルキレン) -NH-C(O) -(CH (CH2CH (CH3) 2) ) -NH-C(O) -,
【化15】
からなる群より選択される。
【0089】
Lは、より好ましくは、
-( C1-6-アルキレン)-、
-C(O)-( C1-6-アルキレン)-C(O)NH-( C1-6-アルキレン)-、
-C(O)-( C1-6-アルキレン)-、
-C(O)-CH(NH(C(O)OC(CH3)3))-( C1-3-アルキレン)-、
-C(O)CH(NH2)( C1-3-アルキレン)-、
-C(O)-CH(NH(C(=NH)(NH2)))-( C1-6-アルキレン)-、
-C(O)-( C1-3-アルキレン)-C(=CH2)-、
-C(O)C(=CH2)-( C1-3-アルキレン)-、
-C(O)CH=CH-、
-C(O)-( C1-3-アルキレン)-CH(OH)-( C1-3-アルキレン)-、
-C(O)-( C1-3-アルキレン)CH=CH-、
-C(O)-( C1-3-アルキレン)CH(CH2OH)-、
-C(O)-( C1-3-アルキレン)-C(=CH2)-、
【化16】
からなる群より選択される。
【0090】
Lは、さらに好ましくは、
-CH2CH2CH2- 、
-C(O)CH2-、
-C(O)CH2CH2-、
-C(O)CH2CH2CH2-、
-C(O)CH2CH2C(O)NHCH2CH2-、
-C(O)-CH (NH2) CH2-、
-C(O)-CH (NH (C(O) OC (CH3) 3) ) CH2-、
-C(O)CH2OCH2-、
-C(O)CH2C(=CH2)-、
-C(O)C(=CH2)CH2-、
-C(O)CH=CH-、
-C(O)CH2CH (OH) CH2-、
-C(O)CH2CH=CH-、
-C(O)CH2CH (CH2OH) -、
-C(O)CH2C(=CH2)-、
【化17】
からなる群より選択され、
上記に挙げたすべての結合部分Lにおける破線は、固体支持材料、又は、ポリマー膜及びPsの官能基への結合を示し、
上記に挙げたすべての結合Lにおいては、自由な末端線を有する最初の元素は、この位置で固体支持材料に結合していることが好ましい。
【0091】
Lは、-C(O)-( C1-6-アルキレン)-であることがさらに好ましく、-C (O) CH2CH2- であることが最も好ましい。
【0092】
Ps基は、アニオン基又は脱プロトン化する基であり、即ち、溶液中でアニオン基になる基である。これらの基は、6〜8のpH範囲にて、すべてが又は一部がアニオン基として存在することが好ましい。しかしながら、Ps基は、比較的強い塩基によって分離する水素原子を含む極性基であってもよく、これら水素原子は、好ましくは、ヘテロ原子に結合する。
【0093】
本発明は、さらに、クロマトグラフィー、特にアフィニティークロマトグラフィーにおいて、上述したような固定相としての複合材料の使用を目的とする。
【0094】
本発明の複合材料は、有機分子(有機化合物)の精製のため、又は、ある有機分子からの溶液の精製のために使用され得る。即ち、本発明は、さらに、有機分子の精製のため、又は、有機分子からの溶液の精製のための、本発明の複合材料の使用に関する。
【0095】
“精製”との用語は、分離すること、又は、濃度を上げること、及び/又は、上記有機分子を含む混合物から有機分子を精製することを包含するとみなされる。
【0096】
換言すると、本発明は、本発明の複合材料を使用することによって、不要な有機分子を溶液から分離することを含んだ、有機分子の精製方法をも目的とする。
【0097】
有機分子の精製又は有機分子(有機化合物)の分離のための本発明の複合材料の使用、又は、本発明の吸着剤を使用することによって有機分子を精製する方法、もしくは有機分子を溶液から分離する方法は、下記の工程を備える:
(i)本発明の複合材料、又は、本発明の方法によって製造された複合材料を含むクロマトグラフィーカラムに、液中に溶解又は分散された有機分子を含有する粗混合物を適用すること、
(ii)溶離液を用いることによってカラムから有機分子を溶離させること。
【0098】
工程(ii)で用いられる溶離液は、有機分子の精製に必要とされる状況に応じて、工程(i)にて用いられる液体と同じ溶媒であってもよく、異なっていてもよい。工程(i)の液体、又は、工程(ii)の溶離液としては、クロマトグラフィー分野において利用される様々な種類の溶媒や緩衝体系が用いられ得る。本発明では、溶媒は、純水、メタノールやエタノールなどの低分子のアルコール、又はアセトニトリルといった水溶性有機溶媒と水との混合物、又は、メタノールやエタノールなどの低分子アルコールとしばしば組み合わされる水性緩衝体系である。有機酸塩及び有機酸は、ギ酸ナトリウム又はアスコルビン酸とギ酸ナトリウムとの組み合わせといった緩衝剤として用いられる。
【0099】
本発明の吸着剤によって精製される有機分子は、好ましくは、薬学的に活性な化合物である。
【0100】
有機分子は、好ましくは500〜200000g/mol、より好ましくは500〜150000g/mol、最も好ましくは500〜2500g/molの範囲の分子量を有する。
【0101】
本発明の使用/工程で用いられる特に好ましい有機分子は、パートリシン(partricine)、タクロリムス、イリノテカン、ボグリボース、及びその誘導体であり、最も好ましい有機分子は、下記の構造を有する:
【化18】
【化19】
【0102】
さらには、本発明の吸着剤は、溶液からエンドトキシン(内毒素)を分離するために使用することができる。本発明にて用いられる“エンドトキシン”との用語は、生化学物質の分野に関連する。エンドトキシンは、ヒトにおいて様々な生理的反応を開始させ得る、細菌の分解生成物である。エンドトキシンは、グラム陰性菌又は藍藻の細胞外膜(OM)の成分である。化学的な観点では、エンドトキシンは、親水性の多糖成分と、親油性の脂質成分とで構成されるリポ多糖(LPS)である。エンドトキシンの起源である細菌と対照的に、エンドトキシンは、熱的に非常に安定であり、滅菌に耐える。現段階で最も感度の良いエンドトキシンの測定方法は、アメリカカブトガニから単離された変形細胞の溶解物における凝固カスケードの活性によって行われる。この試験は、いわゆるLAL−テストとして一般的に知られている。
【0103】
本発明の使用/工程で用いられる有機分子としてさらに好ましいものは、パートリシン、チオコルヒコシド、又はその誘導体であり、下記の構造を有する有機分子が最も好ましい:
【化20】
【0104】
本発明の使用/工程で用いられる有機分子として好ましいものは、エベロリムス、又はエベロリムスの誘導体であり、より好ましくは、下記構造のエベロリムスである:
【化21】
【0105】
本発明の使用/工程で用いられる有機分子として好ましいものは、パクリタキセル、10-D-アセチル-バッカチンIII、モンテルカスト、ドセタキセル、スガマデクス、ペンタマイシン、及び、フルオコルトロン、又はこれら分子誘導体であり、最も好ましい分子は、次の構造である。
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【0106】
加えて、本発明の使用/工程で用いられる有機分子として好ましいものは、エピルビシン、ボグリボース、及びその誘導体であり、エピルビシン及びボグリボースは、下記の構造を有する。
【化29】
【0107】
本発明は、下記の工程を有する、上述した複合材料の製造方法をも目的としている:
a)官能基を有する架橋可能なポリマーを用意すること、
b)多孔質支持体の表面に前記ポリマーを吸着させること、
c)少なくとも1種の架橋剤によって吸着させた架橋可能なポリマーの所定部分を架橋させること。
【0108】
多孔質支持体の孔径[nm]と架橋ポリマーの架橋度との比[PSCL比]が0.25〜20、好ましくは0.5〜15、最も好ましくは1〜10となるように、ポリマーの架橋度は、多孔質支持体の孔径に合わせて調整される。
【0109】
ポリマーの吸着は、自発的な吸着、気相堆積、液体や気体やプラズマ相からの重合、スピンコーティング、表面凝縮、ぬれ、ひたすこと、つけること、流体に当てること、スプレーすること、湿らせること、蒸発させること、電場又は圧力を利用すること、といった当業者に知られているあらゆる被覆方法であって、自然発生的な推進力のもとで生じるか又は手動で実施される被覆方法によって技術的に実行され、また、例えば、液晶、ラングミュア−ブロジェット膜、又は、多層膜などの分子自己集合に基づいた方法によって実行される。従って、ポリマーは、ポリマー膜として、多層となって直接的に被覆されるか、又は、それぞれの層の上に個々の単層を段階的に並べたものとなって被覆される。自発的に促進されるか人工的に促進されるかに関わらず、単一点又は複数点の“吸着”は、いずれの場合でも、支持体の表面に物理的に接触する、ポリマー溶液から始まる被覆工程の最初(未完成)の手順としてみなされる。吸着は、少なくとも弱い物理的ないくらかの引力の存在、又は、―支持体及び/又はポリマーに補完的な機能が存在する場合には―、むしろ、固体表面と各単一ポリマー鎖との間の非共有結合的な所定の化学力の存在を必要とし、多層が吸着されるときには、少なくとも準安定な集合体を形成するために垂直方向に積層された、同じか又は異なるポリマー間の所定の化学力を必要とする。反対符号の電荷間における静電気力は、しばしばこの目的のために利用され、担体の表面電荷は、ゼータ電位によって与えられる。最初の吸着は、後に、より大きい二次元的又は三次元的な配列及び/又は密度へと変わることができる、緩くて不規則な態様で起こり得る。これは、個々の表面部位にて吸着と脱離との間における安定状態の平衡の結果としての、表面でのポリマー鎖のいくらかの運動性のためであるともいえ、また、例えば、アニーリングによって発達するともいえる。鎖の物理的な絡み合いによる基本的な立体的(エントロピー)安定性に加えて、隣接する官能基間の共有結合のさらなる導入によって、吸着された集合体の安定性をさらに増加させることが、通常、必要とされる。さらに増加した安定性を達成するために、ポリマー膜の鎖は、さらに、下側の担体材料に共有結合で結合してもよい。
【0110】
多孔質支持体の表面に、架橋可能なポリマーが吸着した後、架橋工程が引き続いて行われる。少なくとも1種の架橋剤は、好ましくは、ジカルボン酸、ジアミン、ジオール、及びビス-エポキシドからなる群より選択される。一実施形態では、少なくとも1種の架橋剤は、1〜20個の間の原子長さの、直鎖状で立体構造的に柔軟な分子である。
【0111】
架橋可能なポリマーは、ポリマー膜の態様で吸着される。“ポリマーの膜”又は“ポリマー膜”との用語は、少なくとも1層、通常は数層又は10数層の架橋可能なポリマーの分子層の、二次元、好ましくは三次元の合成された又は生合成されたポリマーの網(ネットワーク)を意味する。そのような(誘導体化された、又は、されていない)ポリマーの網は、それ自体、当業者に知られた手順によって調製される。ポリマーの膜は、化学的に均質な組成であってもよく、又は、不規則に絡み合うかもしくは並んだ状態(層ごと)で、少なくとも2つの異なる種のポリマー鎖(例えば、ポリアクリル酸及びポリアミド)が互いに混ざり合って構成されていてもよい。
【0112】
“鎖”との用語は、通常、最も長い連続する主たる鎖のことであり、また、ポリマーの分岐でもあり、この鎖に沿って官能基が付いている。この用語は、吸着剤の調製中にて採用されるときに、溶解、吸着、又は結合したポリマーの主鎖の総長さを示すために用いられ、また、架橋ポリマーの網の絡み部(ノット)の間にある鎖部分を示すためにも用いられる。後者の場合、個々の鎖の長さを知ることが困難である。
【0113】
多孔質支持材料として多孔質ポリマーが用いられると、ここで述べるように、支持材料の上に被覆されたポリマーの膜が、多様な化学的組成(構成)を有することとなる。この多様さは、官能基の存在、種類、もしくは密度、比較的小さい分子量、又は、比較的低い架橋度に起因し得る。これらのあらゆるパラメータは、疎水性の増大、溶媒の膨潤性/拡散性、生体適合性にも、また、被覆された表面での非特異的な吸着の減少にも影響する。
【0114】
好ましいポリマー膜は、アミノ基を含有する少なくとも1種のポリマーを含む。ポリビニルアミンは、特に好ましい。他の好適なポリアミンとしては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミンなど挙げられ、また、アミノ基を含有するもの以外にも機能性ポリマーとして、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、また、ポリ(無水マレイン酸)、ポリアミドなどのポリマー前駆体、又は、セルロース、デキストラン、プルラン等の多糖類が挙げられる。
【0115】
コポリマー(共重合体)が採用されるときには、好ましいコモノマーは、単純なアルケンモノマー、又は、ビニルピロリドンなどの貧反応性の極性モノマーである。
【0116】
用いられるポリマーの好ましい分子量は、限定されないが、5000〜50000g/molであり、特にポリビニルアミンに当てはまる。良好な物質移動動力学、良好な溶解性、良好な結合能を有し、大きい表面積を有する固体状態の材料が、本発明の複合材料にて用いられるように、上記範囲の下限に近い分子量を有するポリマーは、担体の狭い孔であっても通り抜けることを示す。
【0117】
架橋可能なポリマーは、吸着され、そして、架橋され、必要に応じて、配位子で誘導体化される前又は後に、吸着層として多孔質支持体の表面に結合される。得られた複合材料のポリマー膜の含有量は、複合材料の総質量に対して、約5%〜30質量%の範囲であってもよく、好ましくは約15%〜20質量%である。十分に実用的な複合材料のポリマー含有量の厳密な値は、誘導体化の程度、配位子の分子量、及び、選択された多孔質支持体の比重にも影響されるであろう。これらの値は、比較的小さいナノ領域の膜厚みに相当する。
【0118】
被覆されたポリマー膜は、膨潤又は収縮する能力をまだ保持しており、実際の膜厚みは、用いられる溶剤の種類に強く影響される。
【0119】
ポリマー膜の架橋度は、架橋できる官能基数に対して、5%〜30%であってもよい。特に好ましい架橋は、官能基の縮合による架橋であるが、ラジカルや光化学など、ポリマー化学にて知られるあらゆる他の方法が利用され得る。しかしながら、架橋結合は、架橋剤を添加することなく、ポリマーに含まれる官能基間で直接的に形成されもする。これは、特に、互いに潜在的な反応性を示す少なくとも2つの異なる官能基を有するコポリマー又は混合されたポリマーが採用されたときに、可能であり、例えば、官能基として、活性化された後に互いにアミド結合を形成できるアミン基とカルボン酸基とがある。好ましい架橋としては、例えば、アミド結合、ウレタン結合、尿素結合、又は、第二級/第三級アミン結合などのC−N結合が挙げられ、また、好ましい架橋は、活性化されたカルボン酸基又はエポキシ基のいずれかとアミンとの反応によって形成され得る。
【0120】
層の分子中及び分子間の架橋は、二次元又は好ましくは三次元の安定なポリマーネットワークを形成し、“包み込まれた”多孔質支持体からポリマーが脱離することを防ぐ。
【0121】
架橋は、従来知られるあらゆる方法によって実施され、この方法には、ポリマー鎖のあらゆるところでの、電気化学的、光誘導、又は電離放射誘導の方法といったラジカル種の発生に基づく非選択的な方法も含まれるのであるが、架橋工程は、好ましくは、例えば、官能基との縮合反応を受けるように設計された架橋剤を用いて、架橋基間のみにて実施される。[アルファ]、[オメガ]二価の縮合剤など、1〜20の原子の長さを有する直鎖状で立体配座的に柔軟な分子は、架橋に好ましい。また、異なる長さ及び/又は異なる反応性及び/又は異なる鎖剛直性を有する1種又は2種以上の架橋剤が、好ましくは、連続した工程にて採用される。
【0122】
架橋は、剛直な材料へと導いてしまう完全な様式では実行されないが、いずれのときでも所定の程度のみで実行される。即ち、利用されるポリマー官能基と関連して、添加される架橋剤と当量の部分(化学量論的な割合)によって容易に制御される、ポリマー官能基の所定部分によって、架橋は、実行される。
【0123】
この観点で適当な架橋剤は、ジカルボン酸、ジアミン、ジオール、及びビスエポキシドを含み、例えば、1,10-デカンジカルボン酸やエチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDGE)である。4,4'-ビフェニルジカルボン酸は、剛直な架橋剤として有用である。
【0124】
ポリマー膜と支持体表面との間ではなくポリマー膜間のみで安定な架橋を達成させるべく、架橋剤は、型板(テンプレート)へでも下側の多孔質支持体へでもなく、ポリマーの官能基へと確実に反応させるために優先的に選択される。
【0125】
いずれにしても、適当な数で後者の型のさらなる架橋を行うことは、吸着剤の特性を必ずしも大きく変えるものではない。
【0126】
代わりに、反対の電荷の官能基間のイオン対を用いること、又は、多価イオンで補完することなどにより、架橋は、非共有結合性のものにできる。
【0127】
本明細書では、“架橋度”との用語は、架橋に利用される官能基の総数に対する、架橋反応で形成される架橋の最大数として与えられる。好ましくは、二価の試薬が架橋のために用いられたときには、これにより、架橋度は、架橋反応に関与する架橋剤の量と、架橋に利用されるポリマーの官能基数(このような場合、1つの架橋の形成あたり2つの官能基が必要とされる)とのモル比を示し、これにより、ほぼ本明細書で想定する比で定量的に反応が進行すると考えられる。原理的には、鎖間及び鎖内での架橋が形成されること、及び、非架橋の末端側鎖(部分的に反応する架橋剤から)が形成されることの両方が可能である。
【0128】
これに対して、“結合(grafting)”(グラフト化)との用語は、好ましくは多孔質支持体の上の官能基によって形成された、多孔質支持体の表面への単一ポリマー鎖の共有結合の定着を意味する。各ポリマー鎖が、鎖に沿った任意の少なくとも一部位で定着していれば十分である。膜のより良好な安定性は、突出したポリマーの環が表面で形成されるような多点結合によって達成される。しかしながら、後者の方法は、ポリマー鎖の三次元的柔軟性を減少させる。鎖に沿った官能基/配位子の複数又は単数が反対側の末端にて優先的に付着している鎖であって、完全にのびた長さの鎖が、表面から外側へ向くようにして、鎖末端を介した単一点の付着が実現されることが好ましい。結合したポリマーの実際の構造は、ランダムならせん状であり得るが、表面での高密度な結合を使用すること、及び、適当な溶媒を使用することによって、膨潤を導くこととなり、また、架橋によってさらに安定化されるポリマーブラシの形成におけるような、分散的相互作用による隣接する鎖間の配向自己集合性現象を導くこととなる。
【0129】
好ましくは、架橋反応と同様な穏やかな縮合反応によって結合が達成されるが、酸化誘発方法や放射線誘発方法などのラジカルイオン、イオン、又はラジカルを伝搬することを行う方法も、利用される。選択される方法は、容易性、型、及び、担体の機能の程度に影響される。原則として、結合は、2つの異なる技術によって達成され、第1の技術は、その場の重合によって表面から平行なポリマーを作るために、表面に結合したモノマー又は開始剤を使い、一方、第2の技術では、均質媒体中、即ち、表面がない状況で、ポリマー鎖をまず完全な長さに合成し、続いて、さらなる工程にて表面にポリマーを結合する。本発明の吸着剤が結合操作によって調製されたとき、及び、吸着剤が本発明の系統的実施形態を構成するときには、後者の技術が好ましい。
【0130】
本発明の好ましい実施形態では、ポリマー膜は、共有結合によって内部にて架橋されているのであれば、下側の担体材料とは結合されていない、即ち、共有結合でつながっていない。即ち、好ましくは、ポリマー膜は、物理的及び/又は化学的吸着のみによって担体材料に付いている。
【0131】
従って、“結合(binding)”との用語は、物理的及び/又は化学的な吸着を包含する。複合材料の化学的及び力学的な安定性は、架橋されたポリマーによる担体との物理的なすべての絡み合いに起因する。ポリマー膜の厚み及び密度は、固体ポリスチレンスルホン酸の場合ではフェニル基やスルホン酸基など、多孔質支持体の表面における高極性又は高反応性の官能基を、接近から守るために十分であり、この接近は、試薬によって開裂されやすいか、又は、この接近は、分離される混合物の不純物であって検体に付随する不純物、もしくは、検体との、不確定で再生不可能な不可逆的な相互作用を受けやすい。
【0132】
上述したように、架橋可能なポリマーは、官能基を含み、この官能基は、ポリマーを吸着させる前もしくは後、又は、ポリマーを架橋する前又は後に、少なくとも1種の配位子によって置換/誘導体化されてもよい。
【0133】
主鎖又は側鎖に少なくとも1種の官能基を含むポリマーは、均質又は不均質媒体中でその官能基にて配位子によって容易に誘導体化できるため、好ましい。さらに、固体状態又は溶解状態でのポリマーの様々な特性、及び、多孔質支持体に自発的に吸着したり、恒久的に付着したりするポリマーの特質は、その官能基によって決定される。高分子電解質が、本明細書で具体的に説明されている。
【0134】
統計的配列、ブロック配列の有無に関わらず、機能性単位及び非機能性単位を含むコポリマーも、この点において実現可能である。
【0135】
好ましい官能基は、第1級及び第2級の、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、又はそのエステルである。周囲の媒体の酸性/塩基性によって、アミノ基は、プロトン化されたアンモニウムイオンとして存在でき、カルボキシ基が脱プロトン化されたカルボン酸イオンとして存在できる。
“官能基”との用語は、多孔質支持体のポリマー膜にある、又は、膜の吸着によって調製中の上記表面のポリマーにある、単純で特有な化学部分であり、この官能基は、化学的接続点又は化学的アンカーとしてはたらき、それゆえ、固体支持材料又はこの材料を覆うポリマー膜が少なくとも膨潤した状態では、化学的な付加又は置換反応による液相又は固相の誘導体化に影響されやすく、架橋にも影響されやすい。従って、官能基は、少なくとも1種の弱い結合であり、及び/又は、少なくとも1種のヘテロ原子であって、優先的に求核的もしくは求電子的に挙動する基であることが好ましい。反応性に乏しい官能基を、誘導体化前に活性化させることを要してもよい。これらは、ポリマー鎖と吸着剤の残基との間の構造的なつながりを形成し、また、架橋網(ネットワーク)のつなぎ目(ノット)も形成する。
【0136】
配位子に対して、官能基は、そもそも検体と相互作用するために設計されておらず(副成分の反発力によって分離工程において官能基が相互作用したり補完したりすることを完全に排除することができないが)、所定の化学反応の分子サイズ領域を有する表面範囲を提供するために設計され、分子サイズ領域は、実際の相互作用残基(誘導体化)へと変わり得るか、又は、共有結合の形成(ポリマー架橋及び結合)において用いられ得る。
本明細書における“接続”又は“つながり”との用語は、直接的に形成された共有結合も、多数の原子を含有する列をなした連続構造による拡がった共有結合の列も包含する。吸着剤又は検体に存在し、公知で特定の機能をいずれも果たさない、他の化学的部分であって、単純な二原子分子断片にまで減った部分は、単に“基”と称する。
【0137】
一連の官能基は、別個であるが同質の複数の単位として扱われ、その化学的な挙動は、主に、予測でき再現性がある基の特性のみによって測定され、ごくわずかには、官能基が付いている材料によって、又は、材料のうえの官能基の実際の位置によって測定される。そのような官能基としては、わずかにしか述べないが、アミノ基、ヒドロキシ基、チオール基、カルボン酸基、またはカルボン酸エステル基が挙げられる。官能基は、複合材料の全体にあり、従って、材料表面の大部分にわたって一様に分布している。好ましい官能基は、しばしば弱酸又は弱塩基の性質を示し、それゆえ、膜を形成するポリマーに、両性電解質の性質を与える。ポリマーにおける官能基は、関連するモノマーの重合中に導入されるか、又は、担体への吸着前又は後の続く官能基変換(ポリマーと類似の反応)によって導入される。ポリマー膜は、官能基の変換を完了する前に止めた場合には、異なるモノマーが共重合されときに、又は、異なるポリマーが互いに積層されるか混ざり合ったネットワークであるときに、2種又はそれ以上の種類の官能基を含む。好ましい官能基は、第1級又は第2級のアミノ基である。特に好ましいものは、第1級アミノ基である。
【0138】
“誘導体化”との用語は、中間体又は最終の実用吸着剤を製造するために、複合材料の表面に特定の配位子を導入することができる化学反応を意味し、その製造は、配位子又はその前駆体を含む適当な誘導体化剤を用いてその官能基を置換すること、又は、その官能基に誘導体化剤を添加することによって行う。反応性を有する官能基であって異なる官能基への官能基の変換は、その条件によっても行うことができるであろう。
【0139】
配位子の“前駆体”は、最終的な配位子へと脱保護されるか変換される、マスクされた又は保護された化学部分を包含するものであり、脱保護又は変換は、誘導体化工程にて表面又はポリマーで結合の形成の後や形成と同時に起こる。例えば、ポリマーが第1級又は第2級のアミノ基を含み、誘導体化がこれら基のアミド結合形成を経て行われるときには、残基に含まれることになるさらなる第1級又は第2級のアミン部分は、まず、誘導体化剤の例えばBoc誘導体やFmoc誘導体として保護されるべきである。さらに、表面やポリマー官能基と、誘導体化剤の反応部との間における誘導体化反応にて形成される結合が、検体の認識の役割を担う新たな化学的部分を形成することとなるときには、それぞれの配位子は、誘導体化の後にのみ完全に性能発現するようであり、また、一部のみ又はその一部の機能改質が、誘導体化剤の前駆体として含まれる。このような場合、前駆体部分の一部(取り除かれる基)は、誘導体化反応中に分離もし得る(縮合反応における水分子など)。
【0140】
誘導体化(同様に、架橋)は、それぞれ、いずれでも官能基の“特定部分”にて実施される少なくとも1つの工程、必要に応じて複数の工程である。即ち、 ―異なる官能基と試薬との反応性を考慮すれば― 誘導体化されていないポリマーに存在する各種官能基の目標とする所定割合分は、選択された各配位子によって誘導体化された官能基へといずれも変換する。均質で再現性ある誘導体化された吸着剤を得るためには、誘導体化剤の計算された適当な量をポリマーと反応させる。誘導体化剤をしばしば過剰に用いることによって、完全な誘導体化(誘導体化度=100%)も行われるが、これは、必須のことではない。
“配位子”との用語は、特有の化学的部分、又は、明確に区別でき通常は繰り返して並ぶ化学的部分の配列であり、格子におけるCHもしくはCH2繰り返し単位によるわずかなファンデルワールス接触、又は、吸着剤表面のポリマー鎖よりも親和力が強い限りでは、この配列は、ナノスケールで複合体へと集合できる(それ自体、又は、それ自体の一部、又は、同じもしくは異なる種類の配位子のクラスター(集合物)内)、同じもしくは異なる種のもの、又は、少なくとも1種の補完的な構造に対して高い及び/又は選択的な親和力を有する場所、又は、少なくとも1種の検体の領域である。固体/液体界面でのそのような場所は、生体高分子などの特定の相互作用の説明で例えれば、“結合部位”といわれている。
従って、配位子は、完全な合成物、又は天然物、又は、断片、又はそれらの組み合わせ物であってもよいが、化学合成及び/又は誘導体化の影響を受けやすい。配位子は、1以上の特異的な化学的部分(例えば、疎水性相互作用や分散相互作用に関与できるアルキル単位又はアルキレン単位などの、化学的に非反応性の部分を含む)を包含する。
【0141】
保護基によって、配位子の置換基やポリマー膜の官能基を一時的に誘導体化することが可能である。従って、上記の官能基又は置換基は、1種又は2種以上の配位子の導入中に、各誘導体化剤によって、ときどき起こる意図しない反応から保護される。この誘導体化剤は、制御できない残基の集積や、分岐などの高次の置換パターンを引き起こすものである。さらなる残基がいったん導入されると、保護基は、通常、再び取り除かれる。
【0142】
本発明がいくつかの例によって示されるが、この例は、本発明の内容を限定するものではない。
【実施例】
【0143】
概要
4チャンネルの低圧勾配ポンプ(LPG 580、LPG 680、又はLPG 3400)、自動サンプラー(Gina 50、ASI-100、又はWPS-300)、6チャネルカラムスイッチングバルブ(Besta)、カラムオーブン、ダイオードアレイ紫外光検出器(UVD 170U、UVD 340S、又はVWD 3400)から構成される、Dionex社(以前はGynkotek社)製の高速液体クロマトグラフィーシステム。
【0144】
試験例1及び試験例2で用いられた複合材料は、いずれも、架橋されたポリビニルアミンの膜で覆われたスルホン化ポリスチレン−ジビニルベンゼン共重合体の多孔質支持体(平均粒径35μm、平均孔径100nm)を基にしたものであった。いずれのクロマトグラフィー測定においても、特に言及しない限り、実際のベッドサイズが33.5 × 4 mmの標準的なステンレス鋼HPLCカラム内で吸着剤を使用した。20バールの圧力下で水−メタノール(1:1)の懸濁物を流動沈降させることによってカラムを充填した。
【0145】
(試験例1)比較例
架橋されたポリビニルアミンは、2%の架橋度であった。従って、PSCL比は、50である。1:1の水−メタノール比で流動させて5時間使用した後、架橋ポリマーの約60%の重合成分が溶離液で認められた。従って、25よりも大きいPSCL比によって、不安定な複合材料が得られることとなる。
【0146】
(試験例2)本発明の実施例
架橋されたポリビニルアミンは、10%の架橋度であった。従って、PSCL比は、10である。1:1の水−メタノール比で流動させて5時間使用した後、溶離液では、架橋ポリマーの重合成分が認められなかった。従って、PSCL比が10であることによって、安定な複合材料が得られることとなる。
【0147】
さらに、上記の多孔質支持体と同じ多孔質支持体で試験例を行い、PSCL比が25のときに固定相の損失が始まることが示された。
【0148】
【表1】
【0149】
(試験例3)本発明の実施例
本試験例では、無機支持体としてのシリカゲルを用いた。孔径は、30nmであり、粒子径は、10μmであった。支持体は、ポリビニルアミンで被覆され、架橋度10%で架橋された。従って、PSCL比は、3である。得られた相は、30%エチルアセトン及び70%ヘキサンの移動相で定組成のHPLC運転にてモクソール(Moxol)の保持に関して調査された。モクソールは、0.74のk’値で溶離した。不純物であるバットモックス(Batomox)及びビスモックス(Bismox)は、0.43〜0.47のk’値で溶離し、MoxOHは、1.23のk’値で溶離した。この試験例では、モクソールが良好に分離される結果となった。
【0150】
(試験例4)比較例
本試験例では、無機支持体としてのシリカゲルを用いた。孔径は、10nmであり、粒子径は、10μmであった。支持体は、ポリビニルアミンで被覆され、架橋度50%で架橋された。従って、PSCL比は、0.20である。試験例3と同様にして行った実験では、k’値が0.51であり、対応する不純物の分離が不十分であった。
加えて、高度に架橋されたポリマー膜の膨潤挙動が制限されたこと(非常に剛直なポリマーを作り出す)により、ポリマー膜が初期に割れて多孔質支持体の表面から剥がれ始めた。
PSCL比が0.25〜20にて安定な複合材料が得られ、この複合材料が固定相の損失なく非常に優れた精製能力を発揮することを上記の試験例が示している。