【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
【文献】
ROELKENS et al.,Hybrid Silicon Lasers,Proc. SPIE7942, Optoelectronic Integrated Circuits Xlll,2011年 1月,Vol.7942,p.79420D-D9
【文献】
KUO et al.,High speed hybrid silicon evanescent electroabsorption modulator,Optics Express,米国,Optical Society of America,2008年 6月,Vol.16, No.13,p.9936-p.9941
【文献】
FANG et al.,Integrated AlGaInAs-silicon evanescent racetrack laser and photodetector,Optics Express,米国,Optical Society of America,2007年 3月,Vol.15, No.5,p.2315-p.2322
【文献】
CHOI et al.,A High-Q Wavelength Filter Based on Buried Heterostructure Ring Resonators Integrated With a Semiconductor Optical Amplifier,IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS,米国,IEEE,2005年10月,Vol.17, No.10,p.2101-p.2103
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記増幅器(1)はループの形状をしており、前記増幅器(1)の前記ループの単一の部分が前記シリコンベースの導波路(2)の前記第1の区画(4a)に面して配置されていることを特徴とする請求項1に記載のレーザ装置。
前記シリコンベースの導波路(2)は、前記第1の区画(4a)とは別個の、モードフィルタリングを行うための微小共振器(17)を形成している第2の区画(4b)を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のレーザ装置。
前記第2の区画(4b)は、前記第1の区画(4a)とは別個の前記シリコンベースの導波路(2)の第3の区画および第4の区画(4c、4d)に光学的に結合されるリングまたはディスクの形状をしたものであることを特徴とする請求項3に記載のレーザ装置。
前記シリコンベースの導波路(2)は、前記第1の区画(4a)とは異なる前記シリコンベースの導波路(2)の区画で半導体光増幅器と結合されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載のレーザ装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下で説明するレーザ装置は、特に、より優れた結合効率を有し、導波路の機能化を可能にするよりコンパクトな装置を実現するように前記導波路に形成されたモード変換器を備えるという点で先行技術と異なる。
【0022】
慣例により、所与の平面内に作られた光回路上では、横向き電気(transverse electric:TE)偏光状態および横向き磁気(transverse magnetic:TM)偏光状態は、TE状態では、電場は回路の平面に対して平行であり、磁場は回路の平面に対して垂直であり、TM状態では、磁場は回路の平面に対して平行であり、電場は回路の平面に対して垂直であるように定義される。実際、以下で説明する装置では、準TE偏光状態が好ましくは暗黙的に考慮されるべきであり、すなわち、電場の大部分がそのTE方向に偏光される。よって説明する装置の構造は、好ましくは、光波のTEモードまたは準TEモードの結合を可能にする。
【0023】
図2に、光子を生成し、それによって、増幅器1において伝搬し、増幅されることのできる光波を生成するように配置されているIII−V族ヘテロ構造を有する増幅器1を備えるレーザ装置を示す。光波は1つもしくは複数の光学モードで構成されうる。
【0024】
レーザ装置は、増幅器1に光学的に結合される導波路2をさらに備える。増幅器1と導波路2との間の光学的結合は、増幅器1で生成され、かつ/または増幅された光子が光波の形で増幅器1から導波路2へ、またはその反対に受け渡されることを可能にする。増幅器1は、導波路2の第1の区画4aの領域においてのみ前記導波路2に面して配置されている。
図2の例では、導波路2および増幅器1はオフセット面に配置されており、すなわち、増幅器1は導波路2の上方に位置し、導波路2および増幅器1は、光波が一方から他方に通過することを可能にする隣接面を備える。言い換えると、導波路2と増幅器1とを離間している距離は、光学的結合が強化されるような距離である。離間距離は、5nmから500nmの間に含まれうる。実際、離間距離が長いほど、結合長が大きくなり、したがって、すべては目的とする応用に依存する。長い装置は大量のパワーを放出することができるものになり、短い装置は、放出するパワーはより少ないが、よりコンパクトでエネルギー消費の低いものになる。導波路2はループを形成しており、ループ形状のレーザ空洞が定義されることを可能にする。よって光子は、時計回りおよび/または反時計回り方向にループを通過し、伝搬方向を変更する必要がなく、増幅器1により回転ごとにコヒーレントに増幅され、すなわちスケールアップされる。
【0025】
好ましくは、第1の区画4aの領域では、増幅器1と導波路2とは直線をなしており、光波の伝搬方向(矢印F
1および矢印F
2)に延びている。導波路2と増幅器1との長手方向軸は、
図2に示す軸A1の方向に平行である。
【0026】
III−V族ヘテロ構造が意味するのは、以下の非網羅的リスト、すなわち、InP、GaAs、InGaAlAs、InGaAsP、AlGaAsおよびInAsPの中から選択することのできる材料のこのヘテロ構造での使用である。
【0027】
図3に、利得媒体とも呼ばれる、導波路2に光学的に結合されるそのような増幅器1のヘテロ構造を示す。光波の経路は破線で表されている。ヘテロ構造は、好ましくはNドープされた(導波路2に対して近位の)第1のドープ層6と、好ましくはPドープされた第2のドープ層7との間に挟まれた量子素子5を有する層を含むスタックを含むことができる。第1のドープ層6は、Nドープされるときに、実質的には、InP、GaAs、InGaAsP、InGaAlAs、AlGaAsおよびInAsPの中から選択された材料を含むことができる。第2のドープ層7は、Pドープされるときに、InP、GaAs、InGaAsP、InGaAlAs、AlGaAsおよびInAsPの中から選択された材料を含むことができる。言い換えると、第1の層6および第2の層7に使用される材料は同じとすることができ、ドーピングだけが変化する。ドーピングは、当然ながら反転させることができ、すなわち、第1のドープ層6をPドープさせ、第2のドープ層7をNドープさせることができる。量子素子5の層は、正孔と電子とが再結合して光子を形成し、それによって増幅器1の領域において光波を生成することを可能にする量子井戸、すなわち量子箱を含むことができる。量子素子は、InP、GaAs、InGaAsP、InGaAlAs、AlGa、As、InAsPといった材料を含むことができる。増幅器1を完成するために、第1の層6および第2の層7は、通常、電流が生成され、増幅器1の電気ポンピングが行われることを可能にする関連付けられた電極(不図示)と電気的に接触している。
【0028】
図3では、ある生成光子は矢印F
1の方向に移動することができ、他の生成光子は矢印F
2の方向に移動することができる。
【0029】
導波路2と増幅器1とは、好ましくは、少なくとも第1の区画4aの領域において導波路2と増幅器1の両方と接触している誘電体層(明確にするために図示されていない)によって離間されている。第1の区画4aの領域では、導波路2を、誘電体層の誘電体材料で覆うことができる。誘電体材料、または導波路2と増幅器1とを離間する誘電体層を構成している材料は、好ましくは、例えば、1.4(シリカに近い屈折率)から2.2(Si
3N
4またはAl
2O
3に近い屈折率)までの間に含まれる低い屈折率を有する。誘電体層は、有利には、レーザ装置の製造を容易にし、増幅器1と導波路2との間の結合の効率を改善する。屈折率は、3次元の無限材料中を伝搬する光波を考慮するときに参照され、その伝搬速度は光速を屈折率で割ったものである。
【0030】
屈折率は、実効屈折率と区別されるべきである。実効屈折率は、実際には、特定の形状、例えば導波路中を伝搬する光波を考慮するときに参照される。そのような形状では、場が弱まり、これは、光波の伝搬速度も低下することを意味する。伝搬速度は光速を実効屈折率で割ったものと等しい。実効屈折率を計算するために有限要素法が使用される。
【0031】
第1の区画4aと増幅器1との間の光学的結合は、好ましくは第1の区画4aの長手方向の端部に形成された2つの結合区域Z
1およびZ
2(
図3)によって実現することができる。各結合区域Z
1、Z
2は、導波路の長手方向軸に沿った長さを有し、この長さは、結合長L
cの奇数倍であり、好ましくはL
cと等しい。
【0032】
直接結合を伴う(すなわち、前述のようなモード変換器を使用しない)ときの最適な結合効率(F)は、結合長L
cと呼ばれる特性距離の端部において第1のガイド部から第2のガイド部に(ここでは導波路2から増幅器1に、またその逆に)伝送されるパワーの部分として以下のように定義される。
【数1】
であり、
【数2】
であり、式中、λは、動作波長である。
【0033】
Δn
eff,Lは、結合が存在しない(各ガイド部が個別に得られる)場合の第1のガイド部および第2のガイド部によってサポートされるモードの実効屈折率間の差である。これらの誘導モードをローカルモードという。
【0034】
Δn
eff,Sは、2つの並置されたガイド部を備える結合構造によってサポートされるモードの実効屈折率間の差である。これら2つのスーパモードは、反対称の構築によるものである。その場合、対称および反対称(anti−symmetri)のスーパモードが参照されることになる。この物理量は2つのガイド部を離間する距離に依存する。この物理量は結合長L
cと伝送パワー比とを条件づける。
【0035】
光波のモードは前記で定義した電磁場の空間構成(TEまたは準TE成分)に対応する。通常、光波は複数のモードを含む。単一モードが意味するのは、モードのうちの1つだけが光学的に結合されるということである。システムがレーザの場合と同様に結合されるときに、スーパモードが参照される。固有モードは、ローカルモードとも呼ばれ、個別に得られた導波路2と増幅器1とのモードである。スーパモードは、ローカルモードの線形結合である。
【0036】
一方のガイド部から他方へのパワー伝送は調和過程であり、したがって可逆的であることに留意すべきである。公称パワーP
0が第1のガイド部に注入され、パワーが収集され、または位置zで第2のガイド部に送られるとことを考慮すると、これは以下のように表される。
【数3】
関係式(3)によれば、第1のガイド部から第2のガイド部へのパワー伝送は、特性結合長の奇数倍に対して最適であることが認められる。
【0037】
先行技術では、光波の光学モードは主にシリコン導波路内に閉じ込められ、III−V族ヘテロ構造によって提供される利得を損なう。実際には光学モードの微小部分が量子井戸を覆う。
【0038】
本レーザ装置では、導波路を機能化するために、第1の区画とは別個の導波路2の他の区画に自由にアクセスできる状態を残すように増幅器1と導波路2とのオーバーラップ長を最小化して第1の区画4aの長さを制限することが望ましい。
【0039】
よって、先行技術と比べて、良好な光学的結合を保証するのに十分な増幅器1と導波路2との間のオーバーラップを可能にするように導波路2を延在させると同時に、導波路を機能化するために導波路の一部を空いた状態にしておくことが可能である。
【0040】
第1の区画4aの、したがって、導波路2の長さが制限されることを可能にする
図4に示す実施形態によれば、レーザ装置は、第1のモード変換器8aと、第2のモード変換器8bとを備える。モード変換器8a、8bは、各々、導波路2において導波路2の第1の区画4aのそれぞれの端部に光学的結合を行うように形成されている。モード変換器8a、8bは、前述のような少なくとも1つの結合区域Z
1、Z
2が形成されて、増幅器1内に閉じ込められた光波のモードを最適なやり方で導波路2に漸進的に伝送し、またその逆が行われることを可能にする。モード変換器8a、8bは、有利には、導波路2においてのみ形成され、それによって、レーザ装置の製造を容易にし、良好なパワー性能を有する増幅器が保持されることを可能にする。その場合モード変換器は、95%超の結合効率を有する、先行技術のものよりコンパクトな装置を製造することを可能にする。さらに、この結合は、先行技術とは異なり、ヘテロ構造の量子井戸の利得を最大限利用することを可能にする。
【0041】
モード変換器8a、8bは、導波路2と増幅器1との寸法決定に対する制約を回避して結合を最適化する。実際、導波路2と増幅器1とを可能な限り効率よく光学的に結合するために、同一の実効屈折率を有する導波路2および増幅器1を製作することが可能である(直接結合)。しかし、そのような製作は、実現の困難な完璧な位置合わせおよび寸法決定を意味する。
【0042】
導波路の幅が伝搬軸A1の方向に不変である(モード変換器なしの)直接結合の場合には、100%の光波の光学的結合を得るためには実効屈折率が厳密に同一である必要があり、これにより、導波路2と増幅器1との実効屈折率を一致させるために、第1の区画4aの領域における導波路2の幅と増幅器1の幅との定義に対する制約が課される。第2の制約は、最適な結合は、前述のビート長または結合長Lcである正確な距離にわたってのみ達成されうることである。長さがLcより短い場合、結合が完全に行われないことになる。長さがLcより長い場合、結合は距離Lcにわたって行われ、モードは残りの距離では部分的に結合しないことになる(長さL=2*Lcでは、モードはその初期状態に戻る)。したがって、効率のよい光学的結合の確率を高めるために、1より大きいLcの奇数倍が使用されがちになる。
【0043】
その場合、導波路2の形状を、製作が行われるときに導入される光学的幾何学的変動に関してロバスト結合を得るように検討することができる。したがってモード変換器8a、8bは、一方では可能な設計上の欠陥を軽減し、他方では、好ましくは単純に結合長Lcと等しい長さにわたる最適な光学的結合を保証するために存在する。モード変換器8a、8bを形成するために、前記第1の区画4aの少なくとも一部分にわたって、第1の区画4aの幅は、第1の区画4aの両側で導波路2の幅より短い。生成された短縮部は、第1のモード変換器8aおよび第2のモード変換器8bの形状を定義する。
図4では、導波路の幅は、軸A1に対して垂直な寸法d1で定義され、導波路2によって形成されたループの平面に含まれる。言い換えると、導波路2の平面に形成された導波路2の区画において、該区画は、第1の区画4aの領域において短縮部を含む。
【0044】
モード変換器による断熱結合の場合には、導波路2の幅は、モード変換器8a、8bの一端部では、導波路の実効屈折率が(その一部については伝搬方向に沿って不変である)増幅器の実効屈折率より低くなるように設計される。モード変換器のもう一方の端部の導波路の幅については、逆の推論が適用される。よって、モード変換器全体に沿ってみると、導波路2の実効屈折率は、増幅器2の実効屈折率より低くなり、増幅器2の実効屈折率と等しくなり、最後には増幅器2の実効屈折率より高くなり、またはその逆になる。このようにして、光パワーを、導波路から増幅器へ、または増幅器から導波路へ、漸進的に、可逆的に結合することができる。
【0045】
モード変換器8a、8bの別の利点は、結合がある長さから効率的になること、およびこの長さを上回る設計によれば結合は実質的に同一のままになることである。モード変換器は、例えば、単に、関与する光学的結合区域Z
1、Z
2についてLc以上である長さを使用することによって、(方向性結合の場合に見つかるはずの)結合長の精度に関連した問題を回避する。この原理は、
図5で左から右に示されており、
図5では、可変断面の導波路2は、その横方向の寸法d1の変動に対応してFの方向(考察される光波の伝搬方向)に広がる形状を有する。導波路2の上方に配置された増幅器1は一定の断面のものである。光波は、前記光波の変位Fの方向に対して垂直な断面(a)、(b)、(c)の領域において破線で表されており、前記端面はそれぞれ矢印F
c1、矢印F
c2、矢印F
c3で指示されている。光波は、最初に、増幅器に閉じ込められ(a)、次いで、導波路の断面は漸進的に(d1の方向に)広がり、実効屈折率は相互に近づき、光波は少しずつ導波路に結合されて(b)、ついには、結合長L
c全体にわたって完全に結合される(c)(最初に、導波路2の実効屈折率は増幅器1の実効屈折率よりも低く、次いで、導波路2の実効屈折率との位相整合が行われて導波路2の実効屈折率が増幅器1の実効屈折率と等しくなり、次いで、導波路2の実効屈折率は増幅器1の実効屈折率より大きくなる)。導波路2の適切なパターン形成が、レーザ装置が、モード変換により利用可能な利得の完全な利用を可能にする。これが可能なのは、レーザ装置の中央部分(2つのモード変換器8a、8bの間の部分)においては、電磁場(すなわち光波モード)は主に能動区域(増幅器媒体)に閉じ込められており、量子井戸とのオーバーラップが最大であり、それによって、モード利得を増強し、レーザ装置の閾値を先行技術と比べて低減させることができるからである。その場合、このモード変換は断熱的(エネルギー損失なし)であり、基礎をなすフォトニック回路への最適な結合を保証する。
図5には、増幅器1に閉じ込められ、導波路2と結合する光波が示されており、同じ構造を使用した逆の動作(導波路に閉じ込められ、増幅器と結合する光波)も可能である。
【0046】
好ましくは、
図6に示すように、各モード変換器8a、8bは、増幅器1から導波路2への結合が行われるときの回折過程によって生成される損失を制限するように配置された第1の部分P
1を備えることができ、この過程は可逆的であり、同じことが導波路2から増幅器1への結合時にも行われる。この第1の部分P
1は(図の右へ向かって)広がるものとすることができ、この部分P
1では、導波路2の2つの側面9a、9bを離間する距離は、数ミクロン(mm)(典型的には約10μm、好ましくは2μmから20μmの間に含まれる)の長さd
2にわたって、l
1とl
2との間で変動し、好ましくは、l
1=500nmおよびl
2=700nmである。側面9a、9bは、好ましくは、ループが形成されている平面に対して垂直な面に形成される。その場合、モード変換器8bは、その広がり方向に第1の部分P
1の後に続いて位置する、最適化収集部分と呼ばれる第2の部分P
2を含むことができる。この第2の部分P
2は、好ましくは、増幅器1から導波路2に、またはその逆に光波を完全に結合するのに必要な結合長Lcとほぼ等しい長さを有する。また第2の部分P
2も、好ましくは、第1の部分P
1と同じ方向に広がっている。この第2の部分P
2上では、導波路2の2つの側面9a、9bを離間する最小寸法l
2を700nmとすることができ、2つの側面9a、9bを離間する最大寸法l
3を1100nmとすることができる。第2の部分P
2から続いて、2つの側面を離間する距離は、導波路2の最大横寸法l
maxと等しくなるまで増加して、概ね長方形の断面を有する導波路2を形成することができる。図示しない代替の実施形態によれば、l
maxはl
3と等しくすることができる。導波路の領域では、2つのモード変換器8a、8bの第1の部分P
1は近位にあり、長手方向軸A1に対して概ね平行な反対の2方向(光波の伝搬方向)に広がっている。モード変換器8a、8bは、好ましくは一定の断面の部分10で離間されていることが好ましく、部分10の領域において2つの側面9a、9bを離間する距離はl
1以下である。光波の伝搬方向の部分10の幅は、光波を部分10の近傍にある増幅器に閉じ込めるように、導波路2と増幅器1との間のいかなる光学的結合も妨げ、または大幅に制限する。言い換えると、2つのモード変換器8a、8b間の横寸法は、導波路の実効屈折率を増幅器の実効屈折率よりも低くして光学的結合を妨げることができるように選択され、この距離は通常、500nm以下である。
【0047】
図7から
図9に示す特定の実施形態によれば、導波路2の第1の区画4aは、好ましくは、その頂点11が増幅器1に対して近位の銃眼の形状をした、光波の伝搬方向に対して垂直な方向の(
図7の(断面A−A)断面(
図8)を有する少なくとも1つの部分を備える。銃眼は、頂点11、銃眼の頂点11を側壁12a、12bの両側に形成された銃眼の底部13a、13bに接ぐ側壁12a、12bによって定義することができる。言い換えると、少なくとも局所的には、導波路2は基部14を備えることができ、基部14の上に、前記基部14と共に銃眼の形状を定義する突起部15が形成されている。突起部15は特に、頂点11および側壁12a、12bの形状が定義されることを可能にする。銃眼を形成する基部14および突起部15は、同じ材料で形成することもでき、異なる材料で形成することもできる。異なる材料を使用する場合には、これは製作レベルでの利点となる。というのはその場合、基部14上に、銃眼を形成するように設計された、例えば非晶質シリコンなどでできた突起部15を生成し、それによって追加のエッチング工程を回避することが可能になるからである。そのような導波路の使用は、増幅器と接続し、導波路2の最大横寸法l
maxよりも短い側壁12a、12bの領域における横寸法を有する銃眼が形成されることを可能にする。これは、特に、側壁を離間する距離が増幅器の領域において、500nmから1100nmの間に含まれるときに、増幅器1と導波路2との単一モード結合を強化する。
【0048】
この特定の実施形態では、モード変換器8a、8bは前述のように形成され、違いは、基部14が不変の寸法を有すること、およびモード変換器8a、8bを形成するのは、側壁12a、12bを離間する距離の変動であること(前述の側面に適用される寸法は、したがって、このモードでは側壁に適用される)だけである。
【0049】
銃眼の頂点11および銃眼の側壁12a、12bは、好ましくは、増幅器の領域においては誘電体材料の層で覆われている。「領域において」が意味するのは、「第1の区画4aの領域において」ということである。
【0050】
導波路2のこの銃眼構造は、当分野では「リッジ導波路」とも呼ばれる。第1の区画4aの領域のリッジ導波路は、銃眼を形成する基部および突起部だけを備えていてよい。リッジ導波路では、モードの実効屈折率はより高い。また、構造的に、リッジの幅を狭くして単一モード結合を強化することによって導波路がサポートするモードの数を減らすこともより容易である。
【0051】
図8では、増幅器1の領域において銃眼の頂点11および側壁12a、12bを覆っている誘電体材料層16をSiO
2で作ることができる。この誘電体材料層16は、レーザ装置の光電子特性(特に熱的成分および光学的成分)を調整することによりレーザ装置の効率を改善する。誘電体材料層16による、少なくともその頂点11およびその側壁12a、12bの領域における銃眼の封入は、銃眼のパターン形成が行われるときに生じる表面の粗さと結び付けられる伝搬損失を低減させる。実際、導波路2の外表面が粗れてざらついているほど、特に、導波路2と増幅器1との間の光学的結合が生じるときに導波路2内を伝搬する光波は、より多く導波路2の外部で拡散する傾向にあり、それによってレーザ装置の効率が制限される。その場合誘電体材料層16は、屈折率差を低減し、導波路2の凸凹を埋めることによって拡散の影響を制限する。また誘電体材料層16は、レーザ装置が利得区域(量子井戸を含む区域)の外部で拡散されるように動作しているときに、レーザ装置によって生成される熱の一部を使用可能にする熱導体の役割を果たすため、レーザ装置の効率が改善されることも可能にする。したがって好ましくは、良好な熱伝導材料が選択されるべきである。レーザ装置にとって有害なこれら2つの影響の低減は、レーザ装置の効率が相乗的に大幅に改善することを可能にする。誘電体材料層16としてのSiO
2、Al
2O
3、TiO
2、SiON、HfO
2、Si
3N
4といった材料は、これらの熱的影響および光学的影響を低減するのに特に適した候補である。好ましくは、導波路2全体が、通常は支持基板で支持され、誘電体材料層16で覆われている。言い換えると、一実施態様によれば、銃眼の底部も誘電体材料層16で覆われている。またこの原理は、
図2〜
図4および
図6の導波路2にも適用することができ、その場合導波路も誘電体材料によって覆われる。
【0052】
導波路2は、好ましくは、例えば、アモルファスや、あるいはドープ結晶シリコンさえもといったシリコン基部で形成される。導波路2が機能化されるべきである場合、シリコンは、新しい光学的機能を追加するようにドープされる。一般には、例えば、Si
3N
4、SiON、あるいはAl
2O
3さえもといった窒化化合物など、中程度の屈折率を有する材料も使用することができる。シリコンは3.5前後に位置する屈折率を有し、シリカは1.4から1.5の間に含まれる屈折率を有し、そのため、中程度の屈折率が意味するのは、好ましくは、1.8から3の間に含まれる屈折率である。基部14および突起部15が異なる材料で作られる場合には、基部14はシリコンで作成することができ、突起部15は、好ましくは、窒化化合物で作成される。
【0053】
図10に示すように、レーザ装置に追加することのできる機能の1つは、第1の区画4aとは別個の導波路2の第2の区画4bの領域に形成された、光波のモードフィルタリングを行うための微小共振器17である。微小共振器17の目的は、好ましくは、増幅器1によって生成される光子によって構成される単一の光学モードに有利に働くことである。その場合微小共振器17は、円形のレーザ空洞の特定のモードを増強することができるフィルタの役割を果たす。したがって微小共振器17は、第3の区画4cと第4の区画4dとの間に配置され、少なくとも1つの考慮される光学モードを通すように、これら第3の区画4cおよび第4の区画4dに光学的に結合される。各区画は、光子の伝搬方向と適合し、光子が一方の区画から他方の区画に通過することを可能にするように配置される。
【0054】
特定のモードを増強するために、第3の区画4cおよび第4の区画4dに対して微小共振器17の寸法を、共振器17が第3の区画4cおよび第4の区画4dの実効屈折率とは異なる実効屈折率を有するようにすることが可能である。当業者はこれらの実効屈折率を、当業者がレーザ装置の要件仕様に従って増強しようとする光波のモードに従って、望み通りに調整することができる。
【0055】
この寸法決定は、装置の設計段階で行うことができる。しかし、この解決法は、装置が常に同じモードを増強するだけに制限されることになることを意味する。よって、ある特定の用途では、例えば、波長を調整することが求められてもよく、これにより、次いで、選択のモードを増強することができるように装置を適合させる必要が生じる。この要件を満たすために、微小共振器は、その実効屈折率の変調システムを備えることができる。微小共振器はドープ型とすることができ、その実効屈折率は、例えば、キャリア注入またはキャリア空乏化によって変動しうる。そのような変調システムは、PドープおよびNドープのシリコン基部を有する微小共振器17を形成することによって実装することができる。その場合、それぞれ、PドーピングおよびNドーピングと関連付けられた電極を形成することによって、これらの電極をバイアスすることにより、微小共振器17を変更することによって微小共振器17の実効屈折率を変動させることが可能である。微小共振器17の実効屈折率を変動させることによって、微小共振器17の第3の区画4cおよび第4の区画4dとの光学的結合の特性は変更される。
【0056】
図10から
図12に示す特定に実施形態によれば、導波路2の第2の区画4bは、第1の区画4aとは別個の導波路2の第3の区画4cおよび第4の区画4dにそれぞれ結合されるリングまたはディスクの形状をしたものである。第3の区画と第4の区画とは、好ましくは、平行である。製作レベルではマイクロディスクの方がより実施が容易であるが、当業者は、用途に従って適切な構造(ディスク/リング)を選択するであろう。
【0057】
微小共振器17の特定の実施形態によれば、第2の区画4b、第3の区画4cおよび第4の区画4dは、同じ平面Pl
1に形成される(
図11)。位置変形によれば、第3の区画4cおよび第4の区画4dは、第2の区画4bを含むオフセット面Pl
2と平行な、同じ平面Pl
1に形成される(
図12)。
図11および
図12には、2つの代替の実施形態が
図10のB−Bに沿った断面図で表されている。その場合、第2の区画4bは、共振器と第3の区画4cおよび第4の区画4dとの光学的結合を行うように、第3の区画4cと第4の区画4dとにそれぞれ面した部分を含む。(
図12では、これらの部分は第3の区画4aおよび第4の区画4dの上方に配置されている)。
【0058】
第2の区画4b、第3の区画4cおよび第4の区画4dが同じ平面に形成される場合には、これらの区画は、好ましくは、シリコン基部から形成される。
【0059】
第3の区画4cおよび第4の区画4dが、第2の区画4bを含むオフセット面に対して平行な同じ面に形成される場合(
図12)には、第3の区画4cおよび第4の区画4dは、好ましくはシリコンベースのものであり、微小共振器17を形成する第2の区画4bは、III−V族ヘテロ構造と同様に形成される。微小共振器17は、好ましくは、同じ製作工程の間に製造されるように、増幅器1と同じ平面に形成される。III−V族微小共振器17の利点は、利得の改善を可能にすることである。加えて、この応用によれば、微小共振器17のIII−V族材料の領域において、光子を吸収するように電圧を印加することが可能である。光子の吸収は、有利には、超高速の情報符号化を可能にする。よって、共振器内変調を備えるレーザ装置を製造することが可能である。
【0060】
別の実施形態によれば、微小共振器17はフォトニック結晶である。フォトニック結晶は、例えばシリコンでできた固体区画にパターンを形成することによって得ることができる。
図13および
図14に、好ましくは、導波路が形成されている平面に対して概ね垂直な、バー18の形状をしたパターン形成を示す。これらのバー18は、部分的にエッチングされ(
図14)、または全面的にエッチングされた(
図13)スラブから得ることができる。スラブが全面的にエッチングされる場合には、バー18は、第2の区画4bの厚さ全体にわたって相互に離間されており、スラブが部分的にエッチングされる場合には、バー18は、前記バーと同じ材料で形成された基部19によって結合されており、バー18および基部19は単一の部品として形成されている。
図13および
図14の微小共振器17は、第3の区画4cおよび第4の区画4dに光学的に結合される。
【0061】
図15に示す代替の実施形態によれば、フォトニック結晶において、光波を、第3の区画4cと第4の区画4dとにそれぞれ送る前に光波を蓄積することのできる空き区域を追加することが可能である。
図15では、共振器17の空き区域17aは、2つのフォトニック結晶格子17b、17cの間に位置している。この空き区域17aは、バーのラインを省くことによって形成することができる。
【0062】
図15の一変形が
図19に示されている。この変形では、フォトニック結晶はフォトニック結晶17bの中央に位置する空洞17dを含む。
【0063】
前述の微小共振器は特に、モードフィルタリングが行われ、Q値が高められることを可能にする。応用によれば、微小共振器は、単一モードレーザ装置の製造も可能にする。微小共振器は、好ましくは、約20μmから30μmの寸法を有する。
【0064】
フォトニック結晶のバーは、正方形、三角形などとすることのできるメッシュによって配置することができる。
図13から
図15では、バーは、正方形メッシュの形状で、すなわち、行と列からなる行列として配置されている。その場合、行は第3の区画4cおよび第4の区画4dの方向を向いている。行(
図15)、または行の一部(
図19)の省略によって空き区域を形成することができる。一変形によれば、隣接する2行は、2本のバーを互い違いに配置するように形成される。
【0065】
以上ではフォトニック結晶をバーまたは基部と関連付けられたバーであるものとして定義したが、フォトニック結晶は、例えば固体シリコン区画に形成された、貫通していても、していなくてもよい正孔によって形成することもできる。
【0066】
前述の特徴と組み合わせて適用できる代替の実施形態を示す
図16では、増幅器1は、ループの形状をしており、増幅器1のループの単一部分が、導波路2の第1の区画4aに面して配置されている。
図16では、導波路2と関連付けられたループおよび増幅器1と関連付けられたループは、概ね平行な平面に形成されており、導波路2と増幅器1との部分的オーバーラップを得るように移動されている。これは、増幅器1のループの部分が第1の区画4aの領域において導波路2と光学的結合を行うと同時に、増幅器を、その長さおよびそのループ形状によって良好なパワー性能で保持することを可能にする。増幅器のループ形状は、バーニア効果、すなわち、単一モードレーザ装置を実現するために2つの光波のモードを一致させることを可能にする。光波の単一モードを増強するために、ループに、同一の実効屈折率で異なる長さ、または異なる実効屈折率で同一の長さを持たせることができる。
【0067】
図17に示す別の機能化によれば、導波路2に光学的に結合される半導体光増幅器20を、導波路2の(区画4aとは別個の)利用可能な区画に追加することができる。そのような半導体光増幅器(SOA)20は、その唯一の目的が光波信号を増幅することであり、そのためには、単純な電気ポンピングを行いさえすればよいため、増幅器1よりも短い長さのものとすることができる。またそのような半導体光増幅器(SOA)20は、情報が変調されること、すなわち、例えば、SOAに制御電圧を印加し、それを調整することによる電子吸収などによって符号化されることを可能にする。SOAは、光子を生成するように設計された増幅器1のモード変換器と同様にSOAと関連付けられたモード変換器を使用して導波路2に結合することができる。また半導体光増幅器20に結合された導波路2の区画も、前述の銃眼形状の断面を有する。SOA20は、増幅器1のスタックと同一のスタックによって形成することができる。SOAの使用は
図17の実施形態だけに限定されず、SOAは、実際には、前述の、また以下で説明するすべての実施形態および変形で使用することができる。
【0068】
図2、
図10、
図16、
図17に示すように、ループ形状の導波路2は、レーザビームの形状をした導波路2内を伝搬する光波の一部を取り出すために出力導波路3に結合することができる。次いでレーザビームを、出力導波路3を介して、レーザビームを使用することのできる装置に、例えば、レーザビームが関連付けられた遠隔装置に送られることを可能にする光ファイバに伝送することができる。
【0069】
図2、
図10、
図16、
図17では、レーザビームは、出力導波路3に接続されたビーム分割器21によって導波路2のループから取り出される。
図2には、マルチモード干渉計(MMI)である分割器21が詳細に示されている。MMIは入力ビームがN個の出力ビームに分割されることを可能にする。使用されるMMIは、1995年4月の「Journal of Lightwave Technology」、第13巻、第4号、615〜627頁に記載されている、Lucas B.Soldanoら著、文献「Optical Multi−mode Interference Devices Based on Self−Imaging: Principles and Application」に記載されている種類のMMIとすることができる。明確にするために、その他の
図10、
図16、
図17では、参照符号21は、たとえMMIが関与しているとしても、単にブロックで表されている。
【0070】
図18に示す異なる実施形態に適用可能なビーム分割器21の一変形によれば、出力導波路3およびループ形状の導波路2は、同じ平面に形成されており、2つの概ね平行な区画の領域におけるその光学的結合を可能にする理想距離だけ離間されている。この理想距離は、結合率、すなわち、光子の回転ごとに収集されるパワー、したがって、アセンブリのQ値が固定されることを可能にする。この分割器は、MMIの代わりにすべての実施形態に適用することができる。
【0071】
導波路2と増幅器1とは、異なる基板上に製造することができる。その場合基板は、例えば分子結合によって相互に結合される。導波路は、好ましくは、SOI基板上に形成される。
【0072】
導波路2と増幅器1の様々な設計寸法決定は、例えば、RSOFT(著作権)ソフトウェアシーケンスなどを使用したシミュレーション法によって得ることができる。例えば、固有モードおよび伝搬定数を算出するために、または同等のやり方で関連付けられた実効屈折率を算出するために、RSOFT(著作権)FEMSIMモジュールの有限要素法を使用することができる。結合効率は、RSOFT(著作権)BeamPropモジュールで定義されるビーム伝搬法(Beam Propagation Method:BPM)を使用して計算することができる。
【0073】
図18に示す一変形によれば、出力導波路3は、光ファイバ(不図示)と結合されるように設計されたナノ構造化出力アレイ22を備える。このアレイ22は、光波の伝搬方向に対して垂直に、言い換えると、出力導波路3の長手方向軸に対して垂直に、出力導波路に形成されたトレンチによって形成することができる。アレイ22を定義するために、RSOFT(著作権)Fullwaveモジュールの時間領域差分(Finite−Difference Time−Domain:FDTD)法を使用することができる。
【0074】
また出力導波路3は、入射レーザビームが測定されることを可能にする制御フォトダイオード23も備えることができる。
図18では、このフォトダイオード23はアレイ22の反対側にある。
【0075】
出力導波路3は、導波路3と導波路2との間の結合区域Z
3と、レーザ装置の出力との間(
図18ではアレイ22の前)に配置された、情報を符号化するための変調器24をさらに備えることができる。そのような変調器24は、例えば、電子吸収またはマッハツェンダ型のものとすることができる。変調器はIII−V族材料および/またはシリコンを含むことができる。
【0076】
変調器24およびアレイ22は、MMIの出力部で実装することができる。
【0077】
前述のレーザ装置は、多重化、逆多重化、変調、スペクトルルーティングなどといった複雑な光ビーム管理機能が同じチップ上で統合されることを可能にする。これらの機能は、(ミリメートル規模の)超短距離の光リンク、または数キロメートルに及びうる長距離光リンクに専用のものとすることができる。これらの光学的機能は、相互接続バススループットの増加から生じる問題を解決することができる。