(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも2つの別個の成分、少なくとも1つのアルコキシシラン末端化プレポリマーを含む第1成分および20℃において4.0〜9.5のpHを有する水性成分を含む第2成分を有する、特に創傷被覆材等の医療用品用のフォームを製造するための、イソシアネート不含有多成分系であって、水性成分が、デンプン、デンプン由来物、デキストリン由来物、多糖由来物、セルロース、セルロース由来物、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル化合物、ポリウレタン(会合性増粘剤)、無機増粘剤、及びその混合物から選択される増粘剤を含む、多成分系。
水性成分は、少なくとも1つの酸、1つの塩基、または1つの緩衝剤系を含み、緩衝剤系は、特に酢酸塩緩衝剤、リン酸塩緩衝剤、炭酸塩緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤、酒石酸塩緩衝剤、コハク酸緩衝剤、TRIS、HEPES、HEPPS、MES、ミカエリス緩衝剤、またはその混合物から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の多成分系。
アルコキシシラン末端化プレポリマーは、特にアミノアルコキシシランおよびイソシアネート末端化プレポリマーから調製されるアルコキシシラン末端化ポリウレタンプレポリマーを含み、イソシアネート末端化プレポリマーは、特にポリオール成分および脂肪族イソシアネート成分から調製されたことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の多成分系。
アルコキシシラン末端化ポリウレタンプレポリマーは、ポリエステルポリオールおよび/またはポリエーテルポリオールを含み、ポリエーテルポリオールにおけるエチレンオキシド単位の分率は、特に50重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下であることを特徴とする、請求項6に記載の多成分系。
アルコキシシラン末端化プレポリマーの重量平均は、500〜20000g/モル、好ましくは500〜6000g/モル、より特に2000〜5000g/モルであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の多成分系。
第1および/または第2成分は、インビボ条件下において一酸化窒素を放出する物質から特に選択される活性医療成分、ならびにビタミンまたはプロビタミン、カロテノイド、鎮痛剤、消毒剤、止血剤、抗ヒスタミン剤、抗菌性金属またはその塩、植物系創傷治癒促進剤物質または物質混合物、植物抽出物、酵素、成長因子、酵素阻害剤、およびその組み合わせの群から選択される物質を含むことを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の多成分系。
組成物の第1および第2成分は、互いに10:1〜1:10の容積比率、好ましくは1:1〜5:1、特に2:1〜3:1、より好ましくは約2.5:1の容積比率において存在することを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の多成分系。
第1および/または第2成分は、それぞれプロペラントガスを含み、プロペラントガスは、特にジメチルエーテル、アルカン、例えばプロパン、n-ブタン、およびイソブタン、ならびにこれらの混合物の群から選択されることを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の多成分系。
プロペラントガスは、第1成分および第2成分の両方に可溶であり、その溶解性は、1.5barの充填圧下、20℃の温度において少なくとも3重量%であり、導入されるプロペラントガスの量は、特にその溶解性に対応する量以下であることを特徴とする、請求項17および18のいずれかに記載の多室加圧缶。
【背景技術】
【0002】
噴霧可能な多成分系は従来技術から既知である。例えば、建築構造部門等において、空隙を満たすための噴霧可能なインサイチュフォームが存在する。これは、特に窓および扉のフレームと周囲のレンガ造りとの間の隙間および空洞を満たす際に特に適用され、良好な防湿特性および良好な断熱特性で知られている。この種の噴霧可能な組成物はさらに、配管ラインを防護するため、または技術的装置における空隙を満たすために用いられる。
【0003】
この上記のインサイチュフォームは、一般にポリウレタン(PU)フォームである。このフォームは、多量の遊離イソシアネート基を有する未架橋プレポリマーからなる組成物に基づく。遊離イソシアネート基は非常に反応性であり、水/湿気の存在下においてそれらを互いに反応させてプレポリマーからポリマーネットワークの構成を引き起こすのに、通常の気温で十分である。大気の湿度だけでなく、2以上のOH基を有するアルコール、対応するチオール、および第1級または第2級アミン、およびこれらの混合物も、上記のイソシアネートに対するあり得る共反応物である。ポリオールはこの使用のために特に一般的である。ポリオール/水との反応は、水素結合を形成し得る、そのため硬化フォーム中に部分的結晶構造を形成し得るウレタン/ウレア単位を生じさせる。この結果、フォーム硬度、圧縮強度、および引張強度は全て高められる。
【0004】
多成分系は、加圧缶に入れられることが多く、それが加圧缶から出る際にプレポリマーの発泡化を促進する液体発泡剤を付与される。さらに、プレポリマーのイソシアネート基は大気の湿度と反応して二酸化炭素を放出し、これは同じく発泡に寄与する。この反応において、関連するイソシアネート基はアミンに転化され、次にこれは更なるイソシアネート基と反応してポリマーネットワークを形成し得、すなわち架橋反応から失われない。
【0005】
ポリウレタン組成物は、1Kフォームまたは他には2成分(2K)フォームとして製造することができる。1Kフォームは、硬化のために大気の湿度の影響しか必要としないが、2Kフォームは、イソシアネート成分およびポリオール成分の別個の貯蔵および放出直前にのみそれらを互いに混合することを伴う。この混合工程は、ある方法においては、加圧缶の加圧本体において起き、フォームを放出するかどうかに関わらず重合反応が起きるため、この時その含有物を迅速に完全に使い尽くさなければならない。従って、この種の系は1.5Kフォームともよく言われる。
【0006】
別にあり得るのは、2室加圧缶の使用であり、ここでは、2つの成分が出口バルブの領域のみにおいて互いに混合される。1Kフォームと比べた2Kフォームの主な利点は、硬化反応がかなり速いことにあり、これは、大気の湿度の不存在下においてさえ反応が生じるためである。それに対して、1Kフォームの有する硬化速度は大気の湿度および大気の湿度が発泡材料に拡散する速度によって決定される。
【0007】
上記の多成分系には一般に、プレポリマー成分に加えて、例えばフォーム安定剤等の更なる助剤、および架橋反応を促進することを目的とする触媒も含まれる。後者の中で主に用いられるのは、有機チタンまたは有機錫化合物、例えばジブチル錫ジラウレート等である。
【0008】
完全硬化状態において、上記のポリウレタンフォームは、良好な機械的特性および断熱特性を有し、大部分の基材へ非常に良好に接着する。
【0009】
しかし、上記のポリウレタンフォームは、モノマージイソシアネート、創傷処置のためのそのフォームの使用に関して望まない現象をまだ含む。
【0010】
上記のスプレーフォームの危険潜在性を減少させるため、DE 4303848 A1には、モノマーイソシアネートを含まないか、またはこの化合物の多くにおいて低濃度しか有しないプレポリマーが記載されている。しかし、ここでは、医療用途に対して望ましくない遊離イソシアネート基をプレポリマーがなおも有し得るという、ある種のリスクが存在する。
【0011】
遊離イソシアネート基によって硬化しない重合性発泡性組成物は、上記の理由のために近年開発されている。例えば、US 6,020,389 A1には、アルコキシ-、アシルオキシ-、またはオシキモ(oximo)-末端化シリコーンプレポリマーを含むシリコーンフォームが開示されている。これらの化合物は、シロキサン基の縮合反応によって重合する。これらの化合物は、−1Kポリウレタンスプレーフォームのように−重合反応に対しては大気の湿度に依存するので、その効果時間が長いために不利である。従って完全硬化には、特に比較的厚い発泡層を有しては、長い時間がかかる。これは不便であるだけでなく、スプレー法によって形成されるフォーム構造が、その孔壁が進行中の重合反応を通してそれ自体の十分な強度を達し得る前に、再度部分的な崩壊を生じるという問題がある。
【0012】
WO 00/04069には、アルコキシシラン末端化ポリウレタンプレポリマーが開示されている。このプレポリマーは、2官能性イソシアネートとポリオールとの反応によって従来法において得られる、一般的なポリウレタン骨格を有する。プレポリマー鎖のそれぞれの末端基が遊離イソシアネート基を有することを確実とするために、過剰の多官能性イソシアネートが用いられる。このイソシアネート末端化プレポリマーを、次に更なる反応工程においてアミノアルキルトリアルコキシシランと反応させ、所望のアルコキシシラン末端化ポリウレタンプレポリマーが与えられる。アミノプロピルトリメトキシシランがこのために特に用いられる。それから得られるプレポリマーは、プロピレンスペーサーを通してポリウレタン骨格に結合したトリメトキシシラン末端化末端基を有する。ケイ素原子とポリウレタン骨格との間のプロピレン基のために、この種のシランはγ-シランとも言われる。
【0013】
硬化反応において、γ-シランは水と反応してアルコールを放出し、これによってSi-O-Siネットワークを形成し、プレポリマーを硬化する。γ-シランはイソシアネート末端化ポリウレタンプレポリマーと比べて毒性的にあまり不適当ではないが、これは、それでもやはり硬化反応の進行が比較的遅いという不利な点を有する。この不利な点は、γ-シラン系組成物を多量の架橋触媒、例えばポリウレタンプレポリマーのためにも用いられるジブチル錫ジラウレート等と混合することによって、部分的にのみ補うことができる。しかし、これは場合によってこのような組成物の保存期限に悪影響を有する。
【0014】
比較的多量の架橋触媒でさえγ-シランの低い反応性を完全に補うことができないため、より反応性の化合物種が探し求められてきた。このような化合物は例えばWO 02/066532 A1から知られている。そこに記載されているプレポリマーは、またシラン末端化ポリウレタンプレポリマーである。上記のγ-シランとの本質的な違いは、プロピレン基よりもむしろ、メチレンスペーサーがポリウレタン骨格とケイ素原子との間に挿入されていることである。そのため、このシランはα-シランとも呼ばれる。ケイ素原子からのポリウレタン骨格のより高い極性のウレア基への距離がより短いことが、ケイ素原子上のアルコキシ基の反応性を増加させ(α効果)、その結果、アルコキシシラン基の加水分解および次の縮合反応が非常に高い速度で進行する。
【0015】
しかし、α-シランおよびγ-シランの両方に影響する不利な点は、これらのプレポリマーから噴霧可能なフォームを製造することが極めて難しいことである。特に、加圧缶から放出でき、大きな孔容積を有するルーズ(loose)孔構造を生じさせるスプレーフォームの供給は、実際には実現できない。この理由は、ポリウレタンフォームと対照的に、架橋反応中の水の作用が気体状の反応生成物(例えばポリウレタンフォームを用いてCO
2)を生成しないためである;代わりに、アルコール、例えばメタノールまたはエタノール等を放出する。しかし、気体状の反応生成物とは異なり、これらの化合物は発泡効果を発揮することができず、そのため加圧缶から噴霧されたフォームは、実質的に硬化する前にそれ自体崩壊し得る。さらに、フォーム安定剤の使用によってこの効果を無効にする可能性は制限される。
【0016】
この問題はEP 1829908 A1によって対処され、ここでは2Kシランプレポリマーに基づく系を提案されている。この系においては、第1成分において、例えばシラン末端化ポリウレタンプレポリマー等のシランプレポリマー、触媒としてジブチル錫ジラウレート、および比較的多量の炭酸カルシウムが用いられる。第2成分は高濃度のクエン酸水溶液からなる。この2Kフォームの発泡のために、2つの成分を互いに混合し、スプレー塗布機によって所望の場所に放出する。この系を用いて、第2成分に存在する水がシランプレポリマーの架橋反応を引き起こし、炭酸カルシウムは、高濃度のクエン酸溶液の作用下において、CO
2を放出する。ポリウレタンプレポリマーから知られるように、二酸化炭素は、放出されたプレポリマー混合物の発泡をもたらす。
【0017】
しかし、この系は、高濃度のクエン酸溶液が約1〜2のpHを有し、その結果腐蝕性または少なくとも刺激性を奏するという不利な点を有する。特に加圧缶からスプレーする場合には、エアロゾルが形成され得、それによって使用者の目、皮膚、および−とりわけ−気道を刺激する。さらに、クエン酸の腐蝕性または刺激性可能性は組成物の塗布に対する範囲にかなりの制限を課す。例えばこのような組成物を医療分野における噴霧可能な創傷被覆材として直接皮膚に、特に負傷した皮膚または負傷した身体部位に塗布することは考えられない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に関してイソシアネート不含有とは、イソシアネート含有成分を0.5重量%未満含む系をいう。
【0022】
驚くべきことに、水性成分によっておよび上記のpHレベルにおいて、アルコキシシラン末端化プレポリマーが非常に短い時間内に硬化することができ、そのためこのような組成物を、2室または多室加圧缶(マルチチャンバー加圧缶)に適用することができ、プロペラントガスを用いて発泡させて安定な微細気泡フォームを与えることができることが明らかになった。この種の加圧缶において、本発明の多成分系の2つの成分は、発泡直前まで互いに別個にし、そのため水捕捉剤または他の安定剤の添加なしでさえ良好な保存期限が必要とされるであろう。多成分系を加圧缶から放出する場合、成分が出口バルブの近くにおいて適切に混合する。缶にも存在するプロペラントガスは、生じる第1および第2成分の混合物が、加圧缶を出てすぐに発泡化することを意味する。その場合、本発明の多成分系の高い硬化速度は、発泡が生じた直後に程度の差はあるが、混合物は自己サポート性のフォーム構造を形成し、そのためフォーム崩壊が、一般に数分かかる完全な硬化の前に生じることは実際にはもはやあり得ないことを意味する。言い換えれば、本発明は、ガス発生反応物、例えば炭酸カルシウムおよびクエン酸の組み合わせ等の更なる追加の必要が全くなく高い孔容積のポリマーフォームを得ることができる2Kシランフォーム系を提供する。
【0023】
本発明の多成分系を、多様な分野に用いることができる。これは、例えば、上記のポリウレタンフォームおよびα-/γ-シランフォームが提案される全ての応用分野、例えば建築構造分野、パイプの断熱、または他に機械における空隙の充填に適当である。
【0024】
驚くべきことに、本発明の多成分系は、毒性または刺激性化合物を含まないため、医療分野においても使用できることがさらに明らかになった。
【0025】
本発明の系の更なる利点はここに表され、水性成分の穏和なpH範囲、20℃においてpH 4.0〜9.5であることにある。これにより、例えば、本発明の多成分系を人または動物の皮膚に直接塗布することが可能となる。
【0026】
皮膚適合性をさらに改善するために、水性成分は好ましくは4.5〜8.0、より好ましくは5.0〜6.5のpHを有し得る。このpH範囲内において、敏感性肌においてさえも皮膚炎の例は実際には全く存在しない。同時に、第1および第2成分の混合後、多成分系は上記の高い速度で硬化する。
【0027】
医療分野の使用として、例えば、インサイチュで製造できる創傷被覆材の提供が挙げられる。このため、本発明の多成分系を、2つの成分の混合後に、皮膚損傷またはある種類の損傷にスプレーまたは塗布することができる。発泡多成分系は、例えば創傷組織等の有機組織への顕著な接着を示さず、その多孔質構造によってさらにそれが創傷分泌液または血液を吸収することが可能となる。これに対する理由は、本発明の多成分系は、上記の条件下においてスプレー放出した場合に、少なくともある程度は連続気泡構造を形成し、そのため吸収性であるためと考えられる。
【0028】
本発明の多成分系の更なる利点は、上記の医療用途において、シランプレポリマーのポリマー骨格の化学的性質および/または鎖長の選択を通して、生成するポリマーフォームの硬さを変えることができることにおいても見られる。上記のパラメーターに加えて、他の手段を、フォームの硬さを変更するために用いてもよく、例えば架橋度等によって行う。従って、非常に軟質でそのために曲げやすいポリマーフォーム、またはサポート性質を有する硬質ポリマーフォームを形成することができる。従って、医療分野の使用は直接の創傷処置のみに限定されない;それどころか、例えば骨折、靱帯損傷、捻挫等の場合における四肢の固定も可能である。さらに、化粧品部門における応用が同じくあり得る。
【0029】
加圧缶における本発明の多成分系の提供によって使いやすい実現性が示されるが、それにもかかわらず本発明はこれに限定されない。従って、本発明の多成分系は、−2つの成分の混合後−流し込み組成物(pouring composition)としても容易に用いることができる。
【0030】
上記のpH範囲は、原理上、任意のあり得る方法において設定してよい。従って、水性成分には少なくとも1つの酸、1つの塩基、または1つの緩衝剤系が含まれてよいが、緩衝剤系の添加が好ましい。例えば、一方は水性成分に酸を含み、他方は水性成分に緩衝剤系を含む、本発明の2つの多成分系の間の比較によって、与えられたpHに対して、緩衝剤系を有する多成分系が改善された特性を有し、より具体的にはより微細な気泡フォームを形成することが示される。
【0031】
考えられる酸として、少なくとも部分的に水溶性であり、同時にpHを酸の範囲に移す有機および無機化合物が挙げられる。このような化合物として、いくつか例を挙げると、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、またはリン酸等の鉱酸が挙げられる。用いられる有機酸として、例えばギ酸、酢酸、種々のα-クロロ酢酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸等を挙げることができる。上記の化合物の混合物を用いてもよい。
【0032】
本発明によって用いることができる塩基は、同じく有機および無機系であってよく、少なくとも部分的に水溶性であってよく、pHを塩基の範囲に移す。いくつか例を挙げると、例えば、水酸化ナトリウムまたはカリウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物、およびアンモニアが挙げられる。適当な有機塩基として、例えば第1級、第2級および第3級脂肪族または脂環族アミンならびに芳香族アミン等の窒素含有化合物が挙げられる。具体的には、単に例として、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、メチルジエタノールアミン(MDEA)、ピペリジンおよびピリジンを挙げることができる。さらに、上記の化合物の混合物を同じく用いてよい。
【0033】
本発明によって用いられる緩衝剤系は一般に、弱酸およびその共役塩基の混合物またはその逆を含む。両性電解質を用いてもよい。本発明の目的に対して用いられる緩衝剤は、特に酢酸塩緩衝剤、リン酸塩緩衝剤、炭酸塩緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤、酒石酸塩緩衝剤、コハク酸緩衝剤、TRIS、HEPES、HEPPS、MES、ミカエリス緩衝剤、またはその混合物から選択される。しかし、本発明は上記の系に限定されない。原理上、特許請求されたpH範囲に設定できるように調節可能な任意の緩衝剤系を用いることができる。
【0034】
本発明の多成分系の更なる実施態様において、緩衝剤系の濃度は0.001〜2.0モル/l、特に0.01〜0.5モル/lである。一方では十分な緩衝能が付与され、他方では水性成分からの緩衝剤の結晶化が通常の貯蔵条件下において生じないため、これらの濃度は特に好ましい。結晶化した成分は加圧缶の混合装置またはノズルを詰まらせ得るため、このような結晶化は、例えば加圧缶における使用に害を及ぼす。
【0035】
さらに好ましくは、緩衝能は少なくとも0.01モル/l、特に0.02〜0.1モル/lである。
【0036】
本発明に関して、水性成分の粘度を、2室加圧缶の混合装置においてシラン末端化プレポリマーと混合するその能力を促進するために、適合させることが有利であり得る。従って、23℃における水性成分の動的粘度は10〜4000mPas、特に300〜1000mPasであり得る。粘度は、実際には、18s
-1の回転数でAnton Paar Germany GmbH社(Ostfildern、独国)製の回転粘度計を用いて、DIN 53019に従って23℃において回転粘度測定によって測定することができる。
【0037】
本発明の多成分系のある特に好ましい実施態様によれば、水性成分は増粘剤を含んでよい。増粘剤を用いることで、一方では上記の粘度に設定することができる。増粘剤の更なる利点は、ある程度それはフォームにおける安定化特性を有し、そのため自己サポート性を達成するまでフォーム構造の維持をもたらすことができることである。
【0038】
さらに、驚くべきことに、増粘剤、さらに特にデンプン系またはセルロース系増粘剤の添加は、水相において一連の市販のプロペラントガスを溶解させる効果を有することが明らかになった。シランプレポリマーを含む第1成分におけるこれらのプロペラントガスの溶解性はあまり問題とならない傾向にあるため、これは多室加圧缶の各室におけるプロペラントガスと第1および/または第2成分との間の相分離を妨げる。従って、プロペラントガスおよび第1成分、ならびに/またはプロペラントガスおよび第2成分は、これらが加圧缶を出る前に、非常に大部分は均一な混合物で存在する。缶に別個に保持されるこの2つの第1および第2成分の混合後、加圧缶の混合ノズルにおいて、混合物に溶解したプロペラントガスは、加圧缶から出た後にこの混合物の実質的な発泡を引き起こし、そうして微細気泡フォームを製造する。従って、特定の利点を有して用いられる増粘剤は、デンプン、デンプン由来物、デキストリン由来物、多糖由来物、例えばグアルガム、セルロース、セルロース由来物、特にセルロースエーテルおよびセルロースエステル、ポリアクリル酸に基づく有機完全合成増粘剤、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸化合物またはポリウレタン(会合性増粘剤)および無機増粘剤、例えばベントナイト(betonite)またはシリカ、またはその混合物から選択される。具体例として、例えばNa塩の形状におけるメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースが挙げられる。
【0039】
本発明による第1成分に存在するシラン末端化プレポリマーは、原理上、全ての種のポリマー骨格、およびその混合物も含んでよい。ある好ましい実施態様によれば、アルコキシシラン末端化プレポリマーはアルコキシシラン末端化ポリウレタンプレポリマーを含む。この場合におけるポリウレタン骨格は様々な構造を有してよい。そのため、一方では、ジイソシアネートとジオールとの反応によってポリマー骨格を製造し、そのポリマー骨格に多くの内部ウレタン基を付与することができる。反応レジームから生じる末端イソシアネート基を、次にアミノアルキルアルコキシシランと反応させる。このようにして、シラン末端化プレポリマーが得られ、鎖長に応じて比較的硬質のフォームの製造が可能となる。
【0040】
本発明の意味においてポリウレタンプレポリマーは、その主鎖に例えばポリエーテル基および/またはポリエステル基のみを有し、その鎖末端にイソシアネート基を有するポリマー骨格も含む。この種のポリマー骨格は、対応するシラン末端化プレポリマーが十分に低い粘度を有し、そのため容易に発泡するため、特に医療用途に適当である。その一方、ポリマー骨格におけるウレタン基またはウレア基は、これらが場合によりかなり粘度を増加させるため、あまり好ましくない。
【0041】
本発明によって用いることができるポリエーテルポリオールは、例えば、ポリウレタン化学においてそれ自体既知であり、例えばカチオン性開環によるテトラヒドロフランの重合によって得ることができるポリテトラメチレングリコールポリエーテルである。同じく適当であるのは、スチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドおよび/またはエピクロロヒドリンと2以上の官能価を有するスターター分子との既知の従来の付加物である。これに関連して用いることができるスターター分子は、従来技術から既知の全ての化合物、例えば水、ブチルジグリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、プロピレングリコール、ソルビトール、エチレンジアミン、トリエタノールアミンおよび1,4-ブタンジオール等である。好ましいスターター分子は、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコールおよびブチルジグリコールである。
【0042】
ポリマー骨格におけるポリエーテルおよび/またはポリエステル単位の別の利点は、生成するフォームの親水性をこのように要求に適合させることができ、このフォームに例えば血液または創傷分泌液等の液体に対する改善された吸収性を付与できることである。それにもかかわらず、この場合、ポリエーテルにおけるエチレンオキシド単位の分率が高すぎるレベルに設定しないことが有益であり、これは、さもなければこれが創傷被覆材の重大な膨潤をもたらすためである。そのため、本発明の組成物のある好ましい実施態様は、ポリエーテルポリオールにおけるエチレンオキシド単位の分率が50重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下であるように規定される。エチレンオキシド基の下限値は、例えば約5重量%にあり得る。これに関わらず、エチレンオキシド単位を有さないポリエーテルポリオールを用いるともできる。
【0043】
ポリエステルポリオールに関する限り、これは単官能性または多官能性、特に2官能性であってよい。
【0044】
本発明の目的に対して用いることができるポリエーテルポリオールおよび/またはポリエステルポリオールは、脂肪族単位から構成されてよく、または他に芳香族基を有してもよい。
【0045】
反対に、用いられるイソシアネートまたは多官能性イソシアネートに関して、これらは脂肪族基のみを有することが特に好ましい。言い換えれば、本発明によれば、好ましくは芳香族イソシアネートを用いない。芳香族イソシアネートは健康に対するより大きな潜在的脅威の元であるため、これは利点である。従って、上記の種の医療用途では、特に、このような化合物を含むべきでない。
【0046】
原理上、本発明のアルコキシシラン末端化プレポリマーの製造に適当であるのは、当業者にそれ自体既知である≧2のNCO官能価を有する芳香族、芳香脂肪族、脂肪族または脂環族ポリイソシアネートである。このようなポリイソシアネートの例は、1,4-ブチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,2,4-および/または2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、異性体ビス(4,4'-イソシアナトシクロヘキシル)メタンまたは任意の所望の異性体含有量のそれらの混合物、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-および/または2,6-トリレンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、2,2'-および/または2,4'-および/または4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-および/または1,4-ビス(2-イソシアナトプロプ-2-イル)ベンゼン(TMXDI)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(XDI)、C1〜C8アルキル基を有するアルキル2,6-ジイソシアナトヘキサノエート(リシンジイソシアネート)、ならびに4-イソシアナトメチル-1,8-オクタンジイソシアネート(ノナントリイソシアネート)およびトリフェニルメタン4,4',4''-トリイソシアネートである。
【0047】
上記のポリイソシアネートに加えて、ウレトジオン、イソシアヌレート、ウレタン、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはオキサジアジントリオン構造の修飾ジイソシアネートまたはトリイソシアネートを部分的に用いてもよい。
【0048】
この化合物は、好ましくは専ら脂肪族的および/または脂環族的に結合したイソシアネート基を有し、混合物に対して2〜4、好ましくは2〜2.6、より好ましくは2〜2.4の平均NCO官能価を有する、上記の種のポリイソシアネートまたはポリイソシアネート混合物である。
【0049】
本発明の多成分系のある特に好ましい実施態様によれば、アルコキシシラン末端化プレポリマーはα-シラン基を含む。これに関して、存在するアルコキシシラン末端化プレポリマーが専らα-シラン基を有することも挙げられる。α-シラン基により、既に上述したように、メチレンスペーサーが、ケイ素原子およびポリマー骨格の間またはその第1電子共与原子(例えばN原子またはO原子)の間に存在することが意味される。このようなシランは、縮合反応に関して特に反応性であることで知られている。このため、本発明に関して、重金属系架橋触媒、例えば有機チタネートまたは有機錫(IV)化合物等の使用を全くなしで済ませることができる。これは、特に本発明の組成物に対する医療分野の使用の場合において利点となる。
【0050】
さらに好ましくは、用いられるアルコキシシラン末端化プレポリマーのα-シラン基は、トリエトキシ-α-シラン基である。これは、よく用いられるメトキシ-α-シランの場合におけるメタノールの代わりに、架橋反応中に比較的安全なエタノールが放出される点で有利である。トリメトキシ-α-シランの反応性およびそれにより硬化速度はトリエトキシ-α-シランのそれより高いが、トリエトキシ-α-シランの反応性は、その組成物が数分以内に、一部の場合には1分未満後でさえ、完全に硬化するのには十分高い。
【0051】
用いられるアルコキシシラン末端化プレポリマーのα-シラン基がジエトキシ-α-シラン基であることが同じく好ましい。
【0052】
さらに好ましくは、アルコキシシラン末端化プレポリマーの重量平均は、500〜20000g/モル、好ましくは500〜6000g/モル、特に2000〜5000g/モルである。上記の分子量は、特にポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールに関して有利である;また、それらから製造することができる本発明の硬化組成物を、非常に軟質から非常に硬質まで、調節することができる。例えば非常に軟質の硬化組成物が必要である場合、ポリエーテルポリオールを有するアルコキシシラン末端化プレポリマーの重量平均が2000g/モルより高い、好ましくは20000g/モル以下、特に少なくとも3000g/モル、より好ましくは少なくとも3200g/モル、非常に好ましくは3500〜6000g/モルであることが有利である。ポリエステルポリオールを有するプレポリマーを用いて同等の強度の硬化組成物を製造するためには、2000g/モル以下、特に300〜1500g/モルのアルコキシシラン末端化プレポリマーの重量平均が妥当である。
【0053】
ポリオールの平均分子量は、次のように測定する:まず、エステル化および次にアルコール性水酸化カリウム標準溶液を用いた過剰のエステル化試薬の逆滴定によって実験的にOH価を測定する。ポリオールのグラム当たりのKOHのmgでOH価を出す。このOH価から、式「平均分子量=56×1000×OH官能価/OH価」によって平均分子量を計算する。
【0054】
本発明の目的に対して、さらに第2水性成分がポリウレタン分散体を含んでもよい。本発明の目的に対して、これは、例えば市販のポリウレタン分散体を用いてよいが、その濃度は、更なる水により下げられ、上記した可能であることによって上記のpH範囲にされ得ることを意味する。ポリウレタン分散体と組み合わせた、上記のpH値の別の利点は、この範囲において一般にポリウレタン分散体中のポリマー粒子の凝固がないことにある;言い換えれば、この条件下において、分散体は保存安定性である。驚くべきことに、ポリウレタン分散体の使用により、水性成分における市販のプロペラントガスの溶解性の更なる増加が可能となることが明らかになった。従って、特に好ましいのは、ポリウレタン分散体および上記の種の増粘剤の使用である。
【0055】
ポリウレタン分散体として、市販の全てのポリウレタン分散体を用いることが原理上可能である。しかし、ここではまた、芳香族不含有のイソシアネートから調製されたポリウレタン分散体を用いることが有利であるが、これは、これらが特に医療用途にあまり不適当ではないためである。さらに、ポリウレタン分散体は他の成分を含んでもよい。特に好ましくは、ポリウレタン分散体は5〜65重量%、特に20〜60重量%のポリウレタンを含む。
【0056】
本発明の多成分系の発展において、ポリウレタン分散体におけるポリウレタンの重量平均は、10000〜1000000g/モル、特に20000〜200000g/モルであり、それぞれ23℃でテトラヒドロフランにおいてポリスチレンスタンダードに対してゲルパーミエーションクロマトグラフィによって測定される。このようなモル質量を有するポリウレタン分散体は、これらが、保存安定性であり、さらに加圧缶中に出す際の第2成分におけるプロペラントガスの高い溶解性を生むポリウレタン分散体を示すため、特に有利である。
【0057】
本発明の多成分系のある特に好ましい実施態様によれば、第1および/または第2成分は、活性医療および/または化粧品成分を含む。多くの活性医療成分は化粧品の効果も有するため、活性成分のこれら2つの群の間の境界線は、明確に規定されない。
【0058】
この多成分系において、更なる成分、すなわち第3または第4成分の形の活性成分を付与し、多成分系の塗布直前まで第1および第2成分とそれらを混合しないことが同じくあり得る。しかし、個別の成分の数が上がるために多成分系の複雑さが増えるので、用いられる活性成分が第1および第2成分の両方と不溶性である場合にのみ、一般にこの手段は意味をなす。
【0059】
例えば、活性成分は、純粋な活性成分として、またはカプセル化形状で、時間を遅らせた放出を達成するために、存在してよい。
【0060】
あり得る活性化粧品成分として、特にスキンケア性質を有するもの、例えば活性保湿または肌沈静(skin-calming)成分が挙げられる。
【0061】
本発明の目的に有用な活性医療成分は、多様な種およびクラスの活性成分を含む。
【0062】
この種の活性医療成分は、例えば、インビボ条件下において一酸化窒素を放出する成分、好ましくはL-アルギニンまたはL-アルギニン含有またはL-アルギニン放出成分、より好ましくはL-アルギニン塩酸塩を含んでよい。プロリン、オルニチンおよび/または他の生体起源中間体、例えば生体ポリアミン(スペルミン、スペルミチン、プトレッシンまたは生体活性人工ポリアミン)等を用いてもよい。このような成分は、創傷治癒を高めることで知られているが、一方で、その連続的で、実質的に均一な放出速度は特に創傷治癒をもたらす。
【0063】
本発明によって用いることができる更なる活性成分は、ビタミンまたはプロビタミン、カロテノイド、鎮痛剤、消毒剤、止血剤、抗ヒスタミン剤、抗菌性金属またはその塩、植物系創傷治癒促進剤物質または物質混合物、植物抽出物、酵素、成長因子、酵素阻害剤、およびその組み合わせの群から選択される少なくとも1つの物質を含む。
【0064】
適当な鎮痛剤は、特に非ステロイド系の鎮痛剤、特にサリチル酸、アセチルサリチル酸およびその由来物、例えばAspirin(登録商標)、アニリンおよびその由来物、アセトアミノフェン、例えばParacetamol(登録商標)、アントラニル酸およびその由来物、例えばメフェナム酸、ピラゾールまたはその由来物、例えばメタミゾール、Novalgin(登録商標)、フェナゾン、Antipyrin(登録商標)、イソプロピルフェナゾン、および、非常に好ましくは、アリール酢酸およびその由来物、ヘテロアリール酢酸およびその由来物、アリールプロピオン酸およびその由来物、およびヘテロアリールプロピオン酸およびその由来物、例えばIndometacin(登録商標)、Diclophenac(登録商標)、Ibuprofen(登録商標)、Naxoprophen(登録商標)、Indomethacin(登録商標)、Ketoprofen(登録商標)、Piroxicam(登録商標)である。
【0065】
成長因子として、特に次のものが挙げられる:aFGF(酸性線維芽細胞成長因子)、EGF(表皮)成長因子)、PDGF(血小板由来成長因子)、rhPDGF-BB(ベカプレルミン)、PDECGF(血小板由来内皮細胞成長因子)、bFGF(塩基性線維芽細胞成長因子)、TGF α;(トランスフォーミング成長因子α)、TGF β(トランスフォーミング成長因子β)、KGF(ケラチノサイト成長因子)、IGF1/IGF2(インスリン様成長因子)、およびTNF(腫瘍壊死因子)。
【0066】
適当なビタミンまたはプロビタミンとして、特に脂溶性または水溶性ビタミン類ビタミンA、レチノイドの群、プロビタミンA、カロテノイドの群、特にβ-カロテン、ビタミンE、トコフェロールの群、特にα-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール、およびα-トコトリエノール、β-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、およびδ-トコトリエノール、ビタミンK、フィロキノン、特にフィトメナジオンまたは植物系ビタミンK、ビタミンC、L-アスコルビン酸、ビタミンB 1、チアミン、ビタミンB2、リボフラビン、ビタミンG、ビタミンB3、ナイアシン、ニコチン酸およびニコチンアミド、ビタミンB5、パントテン酸、プロビタミンB5、パンテノールまたはデクスパンテノール、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンH、ビオチン、ビタミンB9、葉酸、およびその組み合わせが挙げられる。
【0067】
有用な消毒剤は、殺菌性、殺バクテリア性、静バクテリア性、殺菌性(fungicidal)、殺ウィルス性、ウィルス抑止性および/または一般に殺微生物性効果を有するあらゆる剤である。
【0068】
特に適当であるのは、レゾルシノール、ヨウ素、ヨウ素-ポビドン、クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、ベンゾイル酸、過酸化ベンゾイルまたは塩化セチルピリジニウムの群から選択されるその化合物である。さらに、消毒剤としての使用にまた適当であるのは、特に抗菌性金属である。用いることができる抗菌性金属として、特に銀、銅、または亜鉛、およびその塩、酸化物、または錯体で、その組み合わせまたはそれ自体が挙げられる。
【0069】
本発明に関して植物系活性創傷治癒促進剤成分として、特にカモミールの抽出物、ハマメリス抽出物、例えばハマメリスバージニア、カレンジュラ抽出物、アロエ抽出物例えばアロエベラ、アロエバーバデンシス、アロエフェロックスオーダー、またはアロエバルガリス、緑茶抽出物、海藻抽出物、例えば紅藻類または緑藻類抽出物、アボカド抽出物、ミルラ抽出物、例えばモツヤクジュ(Commophora molmol)、竹抽出物、およびその組み合わせが挙げられる。
【0070】
活性成分の量は、主として医療的な必要容量によって、および本発明の組成物の他の成分との相溶性によっても導かれる。
【0071】
本発明の多成分系は、さらに他の助剤と混合してもよい。このためのあり得るその例として、フォーム安定剤、チキソトロープ剤、酸化防止剤、光防護剤、乳化剤、可塑剤、顔料、フィラー、パック安定化添加物、殺生物剤、補助溶媒、および/または流動制御剤が挙げられる。
【0072】
適当なフォーム安定剤として、例えばアルキルポリグリコシドが挙げられる。これは、当業者に既知の技術によって、比較的長鎖のモノアルコールと単糖、二糖または多糖との反応を通して得ることができる(Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、John Wiley & Sons、第24巻、第29頁)。比較的長鎖のモノアルコールは、必要に応じて分岐状であってもよく、アルキル基において好ましくは4〜22個のC原子、好ましくは8〜18個のC原子、好ましくは10〜12個のC原子を有する。比較的長鎖のモノアルコールの具体例として、1-ブタノール、1-プロパノール、1-ヘキサノール、1-オクタノール、2-エチルヘキサノール、1-デカノール、1-ウンデカノール、1-ドデカノール(ラウリルアルコール)、1-テトラデカノール(ミリスチルアルコール)、および1-オクタデカノール(ステアリルアルコール)が挙げられる。上記の比較的長鎖のモノアルコールの混合物を用いてもよい。
【0073】
これらのアルキルポリグリコシドは、好ましくはグルコース由来の構造を有する。特に好ましくは式(I)のアルキルポリグリコシドを用いる。
式(I)
【化1】
【0074】
好ましくは、mは6〜20、より好ましくは10〜16の数である。
【0075】
アルキルポリグリコシドは、好ましくは20未満、より好ましくは16未満、非常に好ましくは14未満のHLB価を有し、ここでHLB価は、式HLB=20・Mh/M〔式中、Mhは分子の親水性部分のモル質量であり、Mは分子全体のモル質量である〕を用いて計算される(Griffin、W.C.:HLBによる界面活性剤の分類、J. Soc. Cosmet. Chem. 1、1949年)。
【0076】
更なるフォーム安定剤として、従来のアニオン性、カチオン性、両性、および非イオン性界面活性剤、ならびにその混合物が挙げられる。好ましくは、アルキルポリグリコシド、EO/POブロックコポリマー、アルキルまたはアリールアルコキシレート、シロキサンアルコキシレート、スルホコハク酸のエステルおよび/またはアルカリまたはアルカリ土類金属アルカノエートを用いる。特に好ましくは、EO/POブロックコポリマーを用いる。
【0077】
さらに、生成するフォームのフォーム特性を改善するために、従来の1価および多価アルコール、およびその混合物を用いてよい。これらは、1価または多価のアルコールまたはポリオール、例えばエタノール、プロパノール、ブタノール、デカノール、トリデカノール、ヘキサデカノール、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、デカンジオール、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、単官能性ポリエーテルアルコールおよびポリエステルアルコール、ポリエーテルジオールおよびポリエステルジオールである。
【0078】
化学反応がそれぞれの成分と生じなければ、これらのフォーム安定剤を、第1成分および/または、好ましくは第2成分に添加してよい。これらの化合物の全量は、本発明の多成分系に基づいて、特に0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%である。
【0079】
本発明の多成分系の第1および第2成分の比率は、重合が完了し、第1成分の定量的またはほぼ定量的な転化を含むように、互いに設定することが有利である。従って、例えば、本発明の多成分系の第1および第2成分は、互いに容積比率が1:10〜10:1、好ましくは互いに容積比率が1:1〜5:1、特に2:1〜3:1、より好ましくは約2.5:1において存在する。
【0080】
本発明はさらに、特に創傷被覆材の形状における、造形品を提供し、これは、本発明による多成分系の第1および第2成分を混合し、生成する混合物を完全に重合させることによって得ることができる。
【0081】
混合物は、好ましくは室温で5分以下の時間内、非常に好ましくは3分以内、特に好ましくは1分以内に完全に重合する。
【0082】
本発明の目的に対して、完全な重合とは、ただスキンが外側に形成されるだけではない;すなわち、造形品の外側表面がもはや粘着質でないだけではなく、プレポリマーは非常に大部分が完全に反応することを意味すると理解される。製造された造形品を、指で数秒間十分にへこませ、その後、指の圧を取り除くと元の状態に自動的に戻る場合に、これが本発明における事実であることが確かめられる。
【0083】
この種の素早い硬化は、特に医療用途、具体的には噴霧可能な発泡性創傷被覆材として本発明の多成分系を使用するのに有利である。これは、患者が創傷被覆材を迅速に包帯において包み込み、機械的荷重をかけることができることを最初の段階において可能となるのは、本発明の組成物の極めて素早い硬化だけであるからである。その結果、長い待ち時間を避けることができる。
【0084】
従って、本発明はさらに創傷被覆材としての本発明の多成分系の反応生成物の使用、特に発泡反応生成物の使用を提供する。この種の創傷被覆材の利点は、フォーム構造が、創傷分泌液の吸収を可能とするだけでなく、同時に殴打等に対する創傷への機械的保護も提供することである。創傷上の衣服圧でさえ、フォーム構造によって部分的に吸収される。
【0085】
噴霧された創傷被覆材はさらに、理想的に通常不規則な創傷の外形に適合し、それによって、不適切な創傷被覆材のフィットによる圧痛から非常に大部分が免れる創傷の被覆が確かとなる。さらに、本発明によって製造される創傷被覆材は、時間のかかるサイズおよび形状への切断の必要がないため、従来の創傷被覆材を使用するケアと比較して創傷ケアに必要な時間を短くする。
【0086】
本発明はさらに、出口バルブおよび混合ノズルを有し、本発明の多成分系を含む多室加圧缶に関し、ここで多成分系の第1および第2成分を、別個に多室加圧缶の1つの第1室および1つの第2室に導入し、第1および/または第2室に、それぞれの場合において、過大気圧下においてプロペラントガスを充填し、ここで第1および第2室におけるプロペラントガスは同一または異なってよい。
【0087】
第1室および/または第2室に少なくとも1.5barの圧力を充填する場合が特に好ましい。
【0088】
この目的に特に適当な2室加圧缶は、例えば出願番号PCT/EP2011/063910およびPCT/EP2011/063909を有する現在まだ出版されていないPCT出願から知られ、この内容は本明細書に援用される。
【0089】
本発明の多室加圧缶の更なる実施態様によれば、プロペラントガスは、第1および第2成分の両方に可溶であり、その溶解性は、少なくとも1.5barの充填圧下、20℃の温度において少なくとも3重量%であり、導入されるプロペラントガスの量は、特に、その溶解性に対応する量以下である。これは、スプレー放出したフォームが一貫した品質にあることを確かにするが、これは、スプレー操作の開始においてプロペラントガスのみが1つの室から出て、それにより第1および第2成分の間の混合比率が最適でなくなることが事実ではないためである。これに特に適当な多成分系は、水性成分において上記の増粘剤の1つおよび/またはポリウレタン分散体を含む。
【0090】
加圧缶の室におけるプロペラントガスの溶解性のために第1/第2成分およびプロペラントガスの間において相分離が生じないという更なる利点がある。従って、加圧缶を作動させ、第1および第2成分を混合させる場合にのみ、プロペラントガスが出て、この方法においてこの混合物を発泡させる。本発明の多成分系の非常に素早い硬化時間は、プロペラントガスによって製造されるフォーム構造が「固まり(freeze)」、それ自体崩壊しないという効果を有する。
【0091】
増粘剤および分散体の両方がある程度フォームにおける安定化特性を有するため、上記の効果は、水性成分における上記の種の増粘剤および/またはポリウレタン分散体の使用によって増幅される。少なくとも3重量%のプロペラントガスの溶解性が、供給される混合物の十分な発泡を確実とするのに有利である。それぞれの場合において、生成する特定の混合物の全量を基準として、第1成分のプロペラントガス含有量は、好ましくは10〜40重量%、より好ましくは15〜25重量%であり、第2成分のプロペラントガス含有量は、3〜20重量%であり、より好ましくは5〜15重量%である。缶に導入し、および/または個々の成分に溶解させるプロペラントガスの量は、フォーム構造に影響を与えるために使用してもよい。そのため、プロペラントガスのより多い量は一般に、組成物の場合において、より低い密度のフォームをもたらす。
【0092】
特に好ましくは、プロペラントガスは、ジメチルエーテル、アルカン、例えばプロパン、n-ブタン、イソブタン、ならびにこれらの混合物から選択される。これらのプロペラントガスは、これらがシランプレポリマーを含む第1成分に非常に溶解性であることが明らかになったため、特に有利である。第2水性成分における溶解性に関して、上記のプロペラントガスは、水性成分、特に上記の増粘剤および/またはポリウレタン分散体を用いた水性成分に十分に溶解性である。上記のプロペラントガスの中で、アルカンが特に好ましいが、これは、ジメチルエーテルと対照的に、これは開放創に接触して患者にあまり灼熱感をもたらさないためである。
【0093】
本発明の更なる対象は、発泡または未発泡ポリマー造形品、特に創傷被覆材等のシート状造形品を製造するための本発明の多成分系の使用に関する。
【0094】
ここで本発明を、例となる実施態様を参照してより具体的に説明する:
【実施例】
【0095】
一般:
以下のあらゆる量、比率および百分率は、他に規定されない限り、組成物の重量および全量、または全重量に基づく。
【0096】
他に記載されない限り、全ての分析方法は、23℃の温度における測定に関する。
【0097】
方法:
固体含有量は、秤量した試料を125℃において一定重量まで加熱することによって測定される。一定重量において、固体含有量を確認するために再度試料を秤量する。
【0098】
他に明確に記述されない限り、NCO含有量は、DIN-EN ISO 11909によって電位差測定で測定した。
【0099】
遊離のNCO基に対するモニタリングは、IR分光法(2260cm
-1におけるバンド)によって行った。
【0100】
報告される粘度は、18s
-1の回転数においてAnton Paar Germany GmbH(Ostfildern、独国)製の回転粘度計によって、DIN 53019に従って23℃において回転粘度測定を用いて測定した。
【0101】
分散体の貯蔵安定性は、室温における貯蔵によって、調製後6ヶ月間にわたってテストした。
【0102】
破断点伸びは、DIN 53504に従って測定した。
【0103】
フォームの膨潤度は、予め確認した容積のフォーム試料を、DIN EN 13726-1、パート3.2によって調製されるような過剰のテスト溶液Aにおいて30分間、20℃で貯蔵することによって測定した。次に試料を溶液から取り出し、フォーム容積を再度確認し、最初の容積についてこの容積を評価した。
【0104】
最大可溶プロペラントガス量は、Pamasol Willi Maeder AG, CH製の「エアロゾルにおける光学チェック用の試験管(test glasses for optical checks on aerosols)」において20℃で測定した。最大可溶プロペラントガス量は、調査下における物質/混合物に対するプロペラントガスの重量比率に関し、プロペラントガスがただ恒久的(>1時間)に第2相を形成できないときにすぐに達した。
【0105】
ショアー硬度は、HPE II;Heinrich Bareiss Pruefgeraetebau GmbH(Oberdischingen、独国)製のショアー000硬度テスターを用いて測定した。テスト装置をフォームの表面設置し、3秒後に試料の硬度を自動的に確かめた。
【0106】
混合物は、出願番号PCT/EP2011/063910およびPCT/EP2011/063909を有する現在まだ出版されていないPCT出願に記載された方法で充填された2Kスプレー装置を用いて発泡した。
【0107】
用いた物質および略号:
HDI: ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート
Desmodur(登録商標)N 3300: HDI三量体、NCO含有量21.8±0.3重量%(Bayer MaterialScience AG、Leverkusen、独国)
Desmodur(登録商標)XP 2599: エーテル基を含み、HDIに基づく脂肪族プレポリマー、NCO当量約700g(Bayer MaterialScience AG、Leverkusen、独国)
Desmodur(登録商標)XP 2617: HDIに基づく大部分が直鎖状のNCOプレポリマー、NCO含有量12.5±1.0重量%(Bayer MaterialScience AG、Leverkusen、独国)
Geniosil(登録商標)XL 926: [(シクロヘキシルアミノ)メチル]トリエトキシシラン(Wacker Chemie AG、Munich、独国)
P/B 3.5: 20℃において3.5barのガス圧力を与えるようなプロパンおよびイソブタンの混合物
P/B 4.5: 20℃において4.5barのガス圧力を与えるようなプロパンおよびイソブタンの混合物
DME: ジメチルエーテル
Walocel CRT 30G: カルボキシメチルセルロース、ナトリウム塩(Dow Deutschland Anlagengesellschaft mbH、Schwalbach、独国)
Tegostab B 8408: 非加水分解性のポリエーテルポリジメチルシロキサンコポリマー(Evonik Industries AG、Essen、独国)
【0108】
次の実施例によってシラン末端化プレポリマーの調製を説明される。
【0109】
実施例1:シラン末端化プレポリマーSTP1の調製
グリセロールから出発して調製した、71%のエチレンオキシド重量分率および26%のプロピレンオキシド重量分率を有する、0.1mbarの圧力下で100℃において6時間予め乾燥した4680g/モルのモル質量を有するポリアルキレンオキシド1000gと、1000gのHDIおよび1gの塩化ベンゾイルの混合物を、80℃において3時間にわたって滴下混合し、この滴下後に12時間攪拌した。130℃および0.1mbarにおける薄膜蒸留によって過剰のHDIを除去した。これにより、2.42%のNCO含有量および3500mPasの粘度を有するプレポリマーが与えられた。
【0110】
次に、200gの生成したプレポリマーを、30〜40℃において10分間にわたって、31.7gのGeniosil XL 926と混合した。30℃においてさらに60分攪拌後、NCOプレポリマーのSTPへの完全転化を、IR分光法によって検出することができた。これにより、粘性の無色液体が与えられた。
【0111】
実施例2:シラン末端化プレポリマーSTP2の調製
ブチルジグリコールから出発して調製した、79%のエチレンオキシド重量分率および14%のプロピレンオキシド重量分率を有する、0.1mbarの圧力下で100℃において2時間予め乾燥した2250g/モルのモル質量を有するポリアルキレンオキシド1125gと、390gのDesmodur N 3300を、80℃において滴下混合し、滴下後に、3.67%のNCO含有量に達するまで80℃において攪拌を行った。
【0112】
次に、5.0gの生成したプレポリマーを、室温において10分間にわたって、1.2gのGeniosil XL 926と混合した。さらに30分攪拌後、NCOプレポリマーのSTPへの完全転化を、IR分光法によって検出することができた。これにより、粘性の無色液体が与えられた。
【0113】
実施例3:シラン末端化プレポリマーSTP3の調製
ブチルジグリコールから出発して調製した、79%のエチレンオキシド重量分率および14%のプロピレンオキシド重量分率を有する、0.1mbarの圧力下で100℃において2時間予め乾燥した2250g/モルのモル質量を有するポリアルキレンオキシド394gと、490gのDesmodur XP 2599を、80℃において滴下混合し、滴下後に、2.22%のNCO含有量に達するまで80℃において攪拌を行った。
【0114】
次に、70gの乾燥ジエチルエーテル中の51.8gの生成したプレポリマー溶液を、室温において10分間にわたって、7.5gのGeniosil XL 926と混合した。さらに30分攪拌後、NCOプレポリマーのSTPへの完全転化を、IR分光法によって検出することができた。これにより、粘性の無色液体が与えられた。
【0115】
実施例4:シラン末端化プレポリマーSTP4の調製
55gの乾燥アセトン中の50gのDesmodur XP 2617の溶液を、30℃において30分間にわたって、42gのGeniosil XL 926と混合した。40℃においてさらに30分攪拌後、NCOプレポリマーのSTPへの完全転化が、IR分光法によって検出された。これにより、粘性の無色液体が与えられた。
【0116】
実施例5:シラン末端化プレポリマーSTP5の調製
1,2-プロピレングリコールから出発して調製した、47%のエチレンオキシド重量分率および49%のプロピレンオキシド重量分率を有する、0.1mbarの圧力下で80℃において1時間予め乾燥した2000g/モルのモル質量を有するポリアルキレンオキシド800gおよび塩化ベンゾイル2.8gの混合物を、80℃において45分間にわたって、1000gのHDIと滴下混合し、その後、2時間混合した。過剰のHDIを、130℃および0.4mbarにおいて薄膜蒸留によって除去した。これにより、3.43%のNCO含有量および1250mPasの粘度を有するプレポリマーが与えられた。
【0117】
次に、498gの生成したプレポリマーを、30〜40℃において15分間にわたって、104.5gのGeniosil XL 926と混合した。30℃においてさらに60分攪拌後、NCOプレポリマーのSTPへの完全転化を、IR分光法によって検出することができた。これにより、粘性の無色液体が与えられた。
【0118】
実施例6:シラン末端化プレポリマーSTP6の調製
1,2-プロピレングリコールから出発して調製した、13%のエチレンオキシド重量分率および86%のプロピレンオキシド重量分率を有する、0.1mbarの圧力下で80℃において1時間予め乾燥した4000g/モルのモル質量を有するポリアルキレンオキシド1032gおよび塩化ベンゾイル1.8gの混合物を、80℃において30分間にわたって、650gのHDIと滴下混合し、その後、4時間攪拌を行った。
【0119】
過剰のHDIを、130℃および0.03mbarにおいて薄膜蒸留によって除去した。これにより、1.82%のNCO含有量および2100mPasの粘度を有するプレポリマーが与えられた。
【0120】
次に、207.5gの生成したプレポリマーを、30〜40℃において15分間にわたって、24.8gのGeniosil XL 926と混合した。30℃においてさらに30分攪拌後、NCOプレポリマーのSTPへの完全転化を、IR分光法によって検出することができた。これにより、9300mPasの粘度を有する無色のSTPが与えられた。
【0121】
実施例7:シラン末端化プレポリマーSTP7の調製
グリセロールから出発して調製した、13%のエチレンオキシド重量分率および85%のプロピレンオキシド重量分率を有する、0.1mbarの圧力下で80℃において1時間予め乾燥した4800g/モルのモル質量を有するポリアルキレンオキシド398gおよび塩化ベンゾイル0.7gの混合物を、80℃において30分にわたって、315gのHDIと滴下混合し、その後、2時間攪拌した。過剰のHDIを、140℃および0.07mbarにおいて薄膜蒸留によって除去した。これにより、2.10%のNCO含有量を有するプレポリマーが与えられた。
【0122】
次に、200gの生成したプレポリマーを、30〜40℃において10分にわたって、27.6gのGeniosil XL 926と混合した。30℃においてさらに60分攪拌後、NCOプレポリマーのSTPへの完全転化を、IR分光法によって検出することができた。これにより、粘性の無色液体が与えられた。
【0123】
実施例8:シラン末端化プレポリマーSTP8の調製
1,2-プロピレングリコールから出発して調製した、92%のプロピレンオキシド重量分率を有する、0.1mbarの圧力下で80℃において1時間予め乾燥した1000g/モルのモル質量を有するポリアルキレンオキシド201gおよび塩化ベンゾイル0.8gの混合物を、80℃において30分間にわたって、588gのHDIと滴下混合し、その後、2時間攪拌した。過剰のHDIを、140℃および0.05mbarにおいて薄膜蒸留によって除去した。これにより、6.09%のNCO含有量を有するプレポリマーが与えられた。
【0124】
次に、200gの生成したプレポリマーを、30〜40℃において10分間にわたって、80gのGeniosil XL 926と混合した。30℃においてさらに60分攪拌後、NCOプレポリマーのSTPへの完全転化を、IR分光法によって検出することができた。これにより、粘性の無色液体が与えられた。
【0125】
実施例9:シラン末端化プレポリマーSTP9の調製
5mbarの圧力下で80℃において30分間予め乾燥した、ジエチレングリコールおよびアジピン酸に基づく、1000g/モルのモル質量を有するポリエステルポリオール189gおよび塩化ベンゾイル0.9gの混合物を、70〜80℃において40分間にわたって、477gのHDIと滴下混合し、その後、2時間攪拌した。過剰のHDIを、140℃および0.05mbarにおいて薄膜蒸留によって除去した。これにより、5.81%のNCO含有量および6100mPasの粘度を有するプレポリマーが与えられた。
【0126】
次に、160gの生成したプレポリマーを、30〜40℃において15分間にわたって、61gのGeniosil XL 926と混合した。30℃においてさらに30分攪拌後、NCOプレポリマーのSTPへの完全転化を、IR分光法によって検出することができた。これにより、粘性の無色液体が与えられた。
【0127】
実施例10:シラン末端化プレポリマーSTP10の調製
トリメチロールプロパンから出発して調製した、13%のエチレンオキシド重量分率および83%のプロピレンオキシド重量分率を有する、0.1mbarの圧力下で80℃において1時間予め乾燥した3825g/モルのモル質量を有するポリアルキレンオキシド423gおよび塩化ベンゾイル0.8gの混合物を、80℃において30分間にわたって、420gのHDIと滴下混合し、その後、2時間攪拌した。過剰のHDIを、130℃および0.03mbarにおいて薄膜蒸留によって除去した。これにより、2.84%のNCO含有量を有するプレポリマーが与えられた。
【0128】
次に、200gの生成したプレポリマーを、30〜40℃において10分間にわたって、37gのGeniosil XL 926と混合した。30℃においてさらに60分攪拌後、NCOプレポリマーのSTPへの完全転化を、IR分光法によって検出することができた。これにより、粘性の無色液体が与えられた。
【0129】
実施例11:シラン末端化プレポリマーSTP11の調製
実施例5によって調製したNCOプレポリマー270gおよび実施例6によって調製したNCOプレポリマー1349gの混合物を、30〜40℃において30分間にわたって、217gのGeniosil XL 926と滴下混合し、生成物を30℃においてさらに30分間攪拌した。NCOプレポリマーのSTPへの完全転化が、IR分光法によって検出された。生成物は、粘性の無色液体であった。
【0130】
次の実験において、フォームについての硬化テストの結果が記載される。2つの成分の同時の放出は、Adchem GmbH(Wendelstein、独国)製のMAH 0.5-0.7T静的ミキサーを用いて行われた。
【0131】
実施例12:緩衝剤溶液を有するSTP硬化
33gのDMEを100gのプレポリマーSTP6に溶解させた。
【0132】
KH
2PO
4およびNa
2HPO
4からの一般的な文献の調製のような、pH 5.0に設定したリン酸塩緩衝剤100mlを、6.6gのWalocel CRT 30Gを用いて、約500〜600mPasの粘度に調節した。1.9gのTegostab B 8408の添加後、3.2gのP/B 3.5を水性混合物に溶解させた。
【0133】
2つの成分を、それぞれ個別に、圧縮空気を用いて操作される2Kスプレー装置の1つの室にそれぞれ導入し、ここで、スプレー装置の室は、互いに対して2.5(STP)対1(緩衝剤溶液)の容積比率を有した。この容積比率における両成分の同時の放出は、その構造によって確実となり、混合が起きる静的ミキサーによって生じた。約5秒以内の発泡および完全硬化によって、中程度の空隙率の親水性フォームが得られた。
【0134】
実施例13:緩衝剤溶液を有するSTP硬化
33gのDMEを100gのプレポリマーSTP6に溶解させた。
【0135】
KH
2PO
4およびNa
2HPO
4からの一般的な文献の調製のような、pH 5.5に設定したリン酸塩緩衝剤100mlを、6.6gのWalocel CRT 30Gを用いて、約500〜600mPasの粘度に調節した。1.1gのTegostab B 8408の添加後、3.2gのP/B 3.5を水性混合物に溶解させた。
【0136】
2つの成分を、それぞれ個別に、圧縮空気を用いて操作される2Kスプレー装置の1つの室にそれぞれ導入し、ここで、スプレー装置の室は、互いに対して2.5(STP)対1(緩衝剤溶液)の容積比率を有した。この容積比率における両成分の同時の放出は、その構造によって確実となり、混合が起きる静的ミキサーによって生じた。約5秒以内の発泡および完全硬化によって、親水性微細気泡フォームが得られた。水の吸収について、フォームは10〜20容積パーセント膨潤した。
【0137】
実施例14:緩衝剤溶液を有するSTP硬化
33gのDMEを100gのプレポリマーSTP11に溶解させた。
【0138】
KH
2PO
4およびNa
2HPO
4からの一般的な文献の調製のような、pH 5.5に設定したリン酸塩緩衝剤100mlを、6.6gのWalocel CRT 30Gを用いて、約500〜600mPasの粘度に調節し、3.2gのP/B 3.5を水性混合物に溶解させた。
【0139】
2つの成分を、それぞれ個別に、圧縮空気を用いて操作される2Kスプレー装置の1つの室にそれぞれ導入し、ここで、スプレー装置の室は、互いに対して2.5(STP)対1(緩衝剤溶液)の容積比率を有した。この容積比率における両成分の同時の放出は、その構造によって確実となり、混合が起きる静的ミキサーによって生じた。約15秒間にわたる発泡および完全硬化によって、粗い気泡フォームが得られ、これは、12mmの層厚みにおいて28.1%の破断点伸びを有した。
【0140】
実施例15:緩衝剤溶液を有するSTP硬化
33gのP/B 3.5を100gのプレポリマーSTP6に溶解させた。
【0141】
KH
2PO
4およびNa
2HPO
4からの一般的な文献の調製のような、pH 6.1に設定したリン酸塩緩衝剤100mlを、6.6gのWalocel CRT 30Gを用いて約500〜600mPasの粘度に調節した。1.9gのTegostab B 8408の添加後、3.2gのP/B 3.5を水性混合物に溶解させた。
【0142】
2つの成分を、それぞれ個別に、圧縮空気を用いて操作される2Kスプレー装置の1つの室にそれぞれ導入し、ここで、スプレー装置の室は、互いに対して2.5(STP)対1(緩衝剤溶液)の容積比率を有した。この容積比率における両成分の同時の放出は、その構造によって確実となり、混合が起きる静的ミキサーによって生じた。約20秒以内の発泡および完全硬化によって、親水性微細気泡フォームが得られた。
【0143】
実施例16:緩衝剤溶液を有するSTP硬化
33gのDMEを100gのプレポリマーSTP6に溶解させた。
【0144】
KH
2PO
4およびNa
2HPO
4からの一般的な文献の調製のような、pH 6.5に設定したリン酸塩緩衝剤100mlを、6.6gのWalocel CRT 30Gを用いて約500〜600mPasの粘度に調節した。1.9gのTegostab B 8408の添加後、3.2gのP/B 3.5を水性混合物に溶解させた。
【0145】
2つの成分を、それぞれ個別に、圧縮空気を用いて操作される2Kスプレー装置の1つの室にそれぞれ導入し、ここで、スプレー装置の室は、互いに対して2.5(STP)対1(緩衝剤溶液)の容積比率を有した。この容積比率における両成分の同時の放出は、その構造によって確実となり、混合が起きる静的ミキサーによって生じた。約25秒以内の発泡および完全硬化によって、親水性微細気泡フォームが得られた。
【0146】
実施例17:緩衝剤溶液を有するSTP硬化
33gのP/B 3.5を100gのプレポリマーSTP6に溶解させた。
【0147】
KH
2PO
4およびNa
2HPO
4からの一般的な文献の調製のような、pH 7.0に設定したリン酸塩緩衝剤100mlを、6.5gのWalocel CRT 30Gを用いて約500mPasの粘度に調節した。次に3.2gのP/B 3.5をこの水性混合物に溶解させた。
【0148】
2つの成分を、それぞれ個別に、圧縮空気を用いて操作される2Kスプレー装置の1つの室にそれぞれ導入し、ここで、スプレー装置の室は、互いに対して2.5(STP)対1(緩衝剤溶液)の容積比率を有した。この容積比率における両成分の同時の放出は、その構造によって確実となり、混合が起きる静的ミキサーによって生じた。約120秒以内の発泡および完全硬化によって、中程度の空隙率のフォームが得られ、その表面はまだわずかに粘着質であった。
【0149】
実施例18:緩衝剤溶液を有するSTP硬化
33gのP/B 3.5を100gのプレポリマーSTP6に溶解させた。
【0150】
KH
2PO
4およびNa
2HPO
4からの一般的な文献の調製のような、pH 8.0に設定したリン酸塩緩衝剤100mlを、6.6gのWalocel CRT 30Gを用いて約500〜600mPasの粘度に調節した。1.9gのTegostab B 8408の添加後、3.2gのP/B 3.5を水性混合物に溶解させた。
【0151】
2つの成分を、それぞれ個別に、圧縮空気を用いて操作される2Kスプレー装置の1つの室にそれぞれ導入し、ここで、スプレー装置の室は、互いに対して2.5(STP)対1(緩衝剤溶液)の容積比率を有した。この容積比率における両成分の同時の放出は、その構造によって確実となり、混合が起きる静的ミキサーによって生じた。約3〜4分以内の発泡および完全硬化によって、親水性微細気泡フォームが得られた。
【0152】
実施例19:緩衝剤溶液を有するSTP硬化
28gのP/B 3.5を100gのプレポリマーSTP6に溶解させた。
【0153】
Na
2CO
3およびNaHCO
3からの一般的な文献の調製のような、pH 9.2に設定した炭酸塩緩衝剤100mlを、6.6gのWalocel CRT 30Gを用いて約500〜600mPasの粘度に調節した。1.9gのTegostab B 8408の添加後、3.1gのP/B 3.5を水性混合物に溶解させた。
【0154】
2つの成分を、それぞれ個別に、圧縮空気を用いて操作される2Kスプレー装置の1つの室にそれぞれ導入し、ここで、スプレー装置の室は、互いに対して2.5(STP)対1(緩衝剤溶液)の容積比率を有した。この容積比率における両成分の同時の放出は、その構造によって確実となり、混合が起きる静的ミキサーによって生じた。約10分以内の発泡および完全硬化によって、親水性の粗い気泡フォームが得られた。
【0155】
実施例20:緩衝剤溶液を有するSTP硬化
33gのP/B 3.5を100gのプレポリマーSTP6に溶解させた。
【0156】
クエン酸および水酸化ナトリウムからの一般的な文献の調製のような、pH 5.8に設定したクエン酸塩緩衝剤100mlを、6.6gのWalocel CRT 30Gを用いて約500〜600mPasの粘度に調節した。1.9gのTegostab B 8408の添加後、3.2gのP/B 3.5を水性混合物に溶解させた。
【0157】
2つの成分を、それぞれ個別に、圧縮空気を用いて操作される2Kスプレー装置の1つの室にそれぞれ導入し、ここで、スプレー装置の多は、互いに対して2.5(STP)対1(緩衝剤溶液)の容積比率を有した。この容積比率における両成分の同時の放出は、その構造によって確実となり、混合が起きる静的ミキサーによって生じた。約10秒以内の発泡および完全硬化によって、親水性微細気泡フォームが得られた。
【0158】
実施例21:緩衝剤溶液を有するSTP硬化
28gのP/B 3.5を100gのプレポリマーSTP6に溶解させた。
【0159】
コハク酸および水酸化ナトリウムからの一般的な文献の調製のような、pH 5.5に設定したコハク酸緩衝剤100mlを、6.6gのWalocel CRT 30Gを用いて約500〜600mPasの粘度に調節した。3.1gのP/B 3.5を水性混合物に溶解させた。
【0160】
2つの成分を、それぞれ個別に、圧縮空気を用いて操作される2Kスプレー装置の1つの室にそれぞれ導入し、ここで、スプレー装置の室は、互いに対して2.5(STP)対1(緩衝剤溶液)の容積比率を有した。この容積比率における両成分の同時の放出は、その構造によって確実となり、混合が起きる静的ミキサーによって生じた。約20秒以内の発泡および完全硬化によって、軟質の微細気泡フォームが得られた。
【0161】
実施例22:水性酸を用いたSTP硬化
33gのP/B 3.5を100gのプレポリマーSTP6に溶解させた。
【0162】
水を用いた希釈によってpH 5.0に調節したリン酸100mlを、6.6gのWalocel CRT 30Gを用いて約500〜600mPasの粘度に調節した。1.9gのTegostab B 8408の添加後、3.2gのP/B 3.5を水性混合物に溶解させた。
【0163】
2つの成分を、それぞれ個別に、圧縮空気を用いて操作される2Kスプレー装置の1つの室にそれぞれ導入し、ここで、スプレー装置の室は、互いに対して2.5(STP)対1(緩衝剤溶液)の容積比率を有した。この容積比率における両成分の同時の放出は、その構造によって確実となり、混合が起きる静的ミキサーによって生じた。約90秒以内の発泡および完全硬化によって、適度な空隙率の親水性フォームが得られた。
【0164】
実施例23:水性酸を用いたSTP硬化
33gのDMEを100gのプレポリマーSTP11に溶解させた。
【0165】
水を用いた希釈によってpH 5.5に調節した硫酸100mlを、6.8gのWalocel CRT 30Gを用いて860mPasの粘度に調節した。1.4gのN-メチルジエタノールアミンの添加後、3.1gのP/B 3.5を水性混合物に溶解させた。
【0166】
2つの成分を、それぞれ個別に、圧縮空気を用いて操作される2Kスプレー装置の1つの室にそれぞれ導入し、ここで、スプレー装置の室は、互いに対して2.5(STP)対1(緩衝剤溶液)の容積比率を有した。この容積比率における両成分の同時の放出は、その構造によって確実となり、混合が起きる静的ミキサーによって生じた。約60秒の間の発泡および完全硬化によって、23.6ショアー000の硬度および8mmの層厚みに対して約34%の破断点伸びを有するフォームが得られた。
【0167】
実施例24:水性酸を用いたSTP硬化
33gのDMEを100gのプレポリマーSTP11に溶解させた。
【0168】
水を用いた希釈によってpH 5.5に調節した乳酸100mlを、6.6gのWalocel CRT 30Gを用いて730mPasの粘度に調節した。3.1gのP/B 3.5を水性混合物に溶解させた。
【0169】
2つの成分を、それぞれ個別に、圧縮空気を用いて操作される2Kスプレー装置の1つの室にそれぞれ導入し、ここで、スプレー装置の室は、互いに対して2.5(STP)対1(緩衝剤溶液)の容積比率を有した。この容積比率における両成分の同時の放出は、その構造によって確実となり、混合が起きる静的ミキサーによって生じた。約90秒の間の発泡および完全硬化によって、20.3ショアー000の硬度および8mmの層厚みに対して約36%の破断点伸びを有するフォームが得られた。
【0170】
EP 1829908、実施例1による比較実施例:
この比較実験が有する目的は、本発明の組成物を従来技術から既知の2K系−この場合においてはEP 1829908の実施例1−と比較することである。2Kスプレー装置を用いて、本発明で用いたSTP6または11と同時に成分2(水8部、クエン酸13部)を放出しようとしたとき、まだ静的ミキサー中において混合物は完全硬化が起き、それを詰まらせた。そのため、塗布は不可能であった。
【0171】
さらに、成分2は、水8部およびクエン酸13部の組成物に基づいて、約1のpHを有し、この系を用いたpH敏感性の塗布、例えば医療用途等を不可能とする。さらに、使用者にとって、このpHは、塗布中に炎症の潜在的リスクを示す。