(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
腹膜腔及び膀胱を有する患者についての使用において、アルブミンを含有する腹膜透析液による腹膜透析に基づいて体から毒素及び老廃物を除去するためのシステムであって:
該腹膜透析液を含み、かつ該腹膜透析液を該患者の腹膜に供給するように構成されたタンク;
該患者の腹膜に植え込まれるように構成された腹膜カテーテル;
該患者の膀胱に植え込まれるように構成された膀胱カテーテル;
電気モータに接続された容積式ギヤポンプと、第1のバッテリ、第1の送受信機、及び第1の誘導充電回路に接続された第1の制御装置とを収容しているハウジングを有する植え込み装置であって、該腹膜内の該腹膜透析液を該腹膜カテーテル及び該膀胱カテーテルを介して該患者の膀胱にポンプ輸送するように構成されている、該植え込み装置;
第2の送受信機及び第2の誘導充電回路に接続された第2の制御装置を有する充電及び通信システムであって、該第1及び第2の送受信機を介して該植え込み装置と無線通信し、かつエネルギーを該第2の誘導回路から該第1の誘導回路に無線で転送して該第1のバッテリを充電するように構成されている、該充電及び通信システム;
該充電及び通信システムとは別のコンピュータ上で実行されるように構成された監視及び制御ソフトウェアであって、動作パラメーターを該充電及び通信システムを介して該植え込み装置に伝達して、該モータ及び該ギヤポンプの動作を制御するように構成されている、該監視及び制御ソフトウェア;を備える、前記システム。
前記透析液タンク及び前記植え込み装置に接続されたタンクカテーテルを更に備え、前記ポンプが、前記腹膜透析液を該タンクから該タンクカテーテル及び前記腹膜カテーテルを介して前記患者の腹膜にポンプ輸送するように更に構成されている、請求項2記載のシステム。
前記植え込み装置と通信可能な第1の弁及び第2の弁を更に備え、該第2の弁が、前記腹膜透析液が前記タンクから前記腹膜にポンプ輸送されるときに前記膀胱から該腹膜への流れを防止するよう作動するように構成され、該第1の弁が、該腹膜透析液が該腹膜から該膀胱にポンプ輸送されるときに該腹膜から該タンクへの流れを防止するよう作動するように構成されている、請求項6記載のシステム。
前記透析液タンク及び前記植え込み装置に接続されたタンクカテーテルを更に備え、前記ポンプが、前記腹膜透析液を該タンクから該タンクカテーテル及び前記腹膜カテーテルを介して前記患者の腹膜にポンプ輸送するように更に構成されている、請求項8記載のシステム。
前記植え込み装置と通信可能な第1の弁及び第2の弁を更に備え、該第2の弁が、前記腹膜透析液が前記タンクから前記腹膜にポンプ輸送されるときに前記膀胱から該腹膜への流れを防止するよう作動するように構成され、該第1の弁が、該腹膜透析液が該腹膜から該膀胱にポンプ輸送されるときに該腹膜から該タンクへの流れを防止するよう作動するように構成されている、請求項9記載のシステム。
前記第2の誘導回路がコイルを備え、かつ前記ハンドピースが、前記植え込み装置に整合するように該ハンドピースを外部から位置合わせしやすいように構成されている、請求項11記載のシステム。
前記第1の制御装置が、前記監視及び制御ソフトウェアによって伝達される動作パラメーターに応答して、所定期間の間、前記モータ及び前記ギヤポンプを自動的に作動させて液体を所定量移動させるようにプログラムされている、請求項1記載のシステム。
前記第1の制御装置が、前記モータ及び前記ギヤポンプを自動的に作動させて、ポンプ輸送の間、液体を高流速で移動させるようにプログラムされており、これにより前記腹膜カテーテル及び前記膀胱カテーテルが掃除されて閉塞のリスクが低減される、請求項13記載のシステム。
前記第1の制御装置が、前記モータ及び前記ギヤポンプをチックモードで定期的に作動させて、実質的に液体を前記膀胱カテーテルを通過させることなく、起こり得る閉塞を軽減するようにプログラムされている、請求項1記載のシステム。
前記第1の制御装置が、前記モータ及び前記ギヤポンプをジョグモードで作動させて該ギヤポンプの閉塞を解除するようにプログラムされており、該モータが、順方向と逆方向との間で迅速に交互して動作する、請求項1記載のシステム。
前記植え込み装置が、呼吸数、液体温度、液体粘度、前記腹膜内の液体圧力、及び前記膀胱内の液体圧力を測定するように構成されたセンサを更に備え、かつ該センサによって行われた測定に対応するデータを保存するように構成されている、請求項1記載のシステム。
前記充電及び通信システムが、前記植え込み装置に保存された前記データを、前記第1及び第2の送受信機を介して該充電及び通信システム内に配設されたメモリに無線でダウンロードするように構成されている、請求項17記載のシステム。
前記監視及び制御ソフトウェアが、有線接続又は無線接続を用いて、前記充電及び通信システムと定期的に通信して前記メモリに保存された前記データを回収するように構成されている、請求項18記載のシステム。
前記監視及び制御ソフトウェアが、所定閾値よりも高い測定呼吸数、液体温度、又は液体粘度の少なくとも1つの上昇に基づいて前記患者の健康の変化を検出して、該患者の健康において該検出された変化についての情報をユーザーに視覚的に表示するように更に構成されている、請求項19記載のシステム。
前記監視及び制御ソフトウェアが、前記検出された患者の健康の変化に基づいて前記植え込み装置の動作パラメーターを変更するように更に構成されている、請求項20記載のシステム。
前記変更された動作パラメーターが:前記腹膜透析液の量、該腹膜透析液を前記患者の腹膜内に維持できる期間、及び該腹膜透析液が該患者の腹膜から前記膀胱に除去される頻度;の少なくとも1つを含む、請求項21記載のシステム。
前記植え込み装置がUVランプを備え、前記第1の制御装置が、前記腹膜透析液を該UVランプからの光に十分な時間曝露して、1つ以上の病原菌のコロニーの成長を抑制するように構成されている、請求項1記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(V. 発明の詳細な説明)
本発明の実施態様は、肝不全、特にCLIFを治療するための人工肝臓システム及び方法を提供する。人工肝臓システム及び方法は、透析液が、腹膜腔に導入され、そこで毒素及び老廃物が体から腹膜を通って透析液中に拡散するという点で腹膜透析に基づいている。しかしながら、本システム及び方法は、透析液を外部装置にポンプ輸送するのではなく、尿と共に排泄するために皮下植え込みポンプによって透析液を患者の膀胱にポンプ輸送する。従って、患者は、例えば、Sullivanに付与された米国特許第7,169,303号に記載されているように、病院又は他の施設を訪問して高性能の体外透析プロセスを受ける必要がないし、Curtinに付与された米国特許第8,012,118号に記載されているように、外部ポンプ及び交換可能なカートリッジを装着する必要もないため、患者の利便性が大幅に改善される。好ましくは、腹膜透析液は、水不溶性又は水に溶けにくい毒素又は老廃物に結合できるアルブミンで強化される。加えて、本システム及び方法は、患者の血液量を低減し、かつ腹水を除去することができ、従って患者の快適性が向上し、患者が、CLIFに関連した1つ以上の合併症を発症するリスクが軽減される。
【0038】
以下により詳細に説明されるように、好ましい実施態様は、液体を腹膜腔から膀胱に移動させるにように特別に構成されたポンプを備え、かつ患者の健康に関連した動作パラメーターを監視及び記録する複数のセンサを備えた植え込み装置を含む。外部に保持される充電及び通信システムが、植え込み装置を定期的に充電し、かつ該装置と通信し、記録された動作パラメーターを該装置からダウンロードする。治療を行う医師のコンピュータの監視及び制御ソフトウェアが、充電及び通信システムから記録された動作パラメーターを受信し、該記録された動作パラメーターに反映されている患者の健康についての医師の認識に基づいて、該医師が、植え込み装置の動作を変更することができる。任意に、監視及び制御ソフトウェアは、記録された動作パラメーターに基づいて感染の予測又は検出に関して医師に警告するように構成することができる。植え込み装置はまた、任意に、感染を抑制するように構成された1つ以上の紫外線(UV)ランプも備えることができる。
【0039】
(システム及び方法の概要)
図1Aを参照すると、本発明の人工肝臓システム10の選択された構成要素の概要が示されている。
図1Aでは、システムの構成要素は、相対的にも絶対的にも縮尺通りには示されていない。人工肝臓システム10は、植え込み装置20、外部充電及び通信システム30、ソフトウェアをベースとした監視及び制御システム40、及び腹膜透析液タンク45を含む。例示されている実施態様では、監視及び制御システム40は、担当医が使用する通常のラップトップコンピュータにインストールされ、このコンピュータ上で実行される。患者の診察中に、植え込み装置20に保存された検査データをダウンロードするため、又は該植え込み装置の操作パラメーターを調整するために、充電及び通信システム30が無線又はケーブルで監視及び制御システム40に接続される。監視及び制御システム40は、充電及び通信システム30から回収されたデータを、医師又は該充電及び通信システム30が後にアクセスする遠隔サーバーにアップロードして保存するように構成することもできる。
【0040】
植え込み装置20は、皮下に植え込まれるように構成されたハウジング21を有する電気機械ポンプを備えている。
図1Bを参照して更に詳細に説明されるように、植え込み装置20は、腹膜カテーテル23に接続された入口ポート22及び膀胱カテーテル25に接続された出口ポート24を有する電動機械ギヤポンプを備えることができ、腹膜透析液が、タンク45から患者の腹膜に別個に供給される。腹膜カテーテル23は、ポンプ入口23に接続されるように構成された第1の(近位)端部及び腹膜腔内に留置されるように構成された第2の(遠位)端部を有する管を備えている。膀胱カテーテル25は、ポンプ出口24に接続されるように構成された第1の(近位)端部及び患者の膀胱壁から挿入されて膀胱内に固定されるように構成された第2の(遠位)端部を有する管を備えている。好ましい実施態様では、両方のカテーテルは、医療用シリコーンから形成され、該カテーテルを所定の位置に維持するためにポリエステルカフ(不図示)をそれらの遠位端部に備えている。腹膜カテーテル23及び膀胱カテーテル25は、不完全な装着及び偶発的な分離のリスクを低減するように構成されたコネクタ26を用いてポンプハウジング21に接続され、不完全な装着のリスクを低減する独特の断面を更に有することができる。
【0041】
タンク45は、アルブミン含有腹膜透析液(本明細書では、透析液、腹膜透析液、又は液体とも呼ばれる)をカテーテル46によって患者の腹膜腔に送達するように構成され、該カテーテル46は、
図2A〜
図2Bを参照して以下に更に説明される腹膜カテーテルの構造に類似した構造を有し得る。
図1Bを参照して以下に更に説明される実施態様では、カテーテル46の近位端部は、使用済みタンクを新しいタンクに患者が容易に取り替えることができる適切な連結器によって外部タンク45に取り外し可能に接続されるように構成することができ、該カテーテル46の遠位端部は、患者の腹膜内に植え込まれるように構成することができ、該カテーテル46が患者の皮膚を通過している部位での組織の内部成長を促進する組織カフ(不図示)を備えている。カテーテル46の遠位端部には、
図2Bを参照して以下に説明される孔又は開口のような複数の孔又は開口を画定することができる。タンク45は、腹膜透析液を任意の適切な機構によって腹膜腔に送達することができる。例えば、外部ポンプを使用してタンク45から腹膜への液体の流れを促進しても良いし、又はタンクを腹膜の位置よりも物理的に高くして、重力により腹膜透析液がカテーテル46を介して腹膜に流れるようにしても良い。
図1C〜
図1Eを参照して以下に説明される他の実施態様では、代わりに、タンクカテーテル46の遠位端部を、植え込み装置20の入口ポート22に取り付けることができ、そして植え込み装置20を、腹膜透析液をタンクカテーテル46及び腹膜カテーテル23を介して腹膜腔にポンプ輸送するように構成することができる。このような実施態様では、タンク45は、外部型にしても良いし、又は植え込み型にしても良く、植え込み装置45は、液体がタンクから腹膜にポンプ輸送されるときに、液体が膀胱から腹膜にポンプ輸送されるのを防止する1つ以上の能動弁又は受動弁を備えることができる。
【0042】
透析液の成分として、例えば、十分な量の毒素及び老廃物が腹膜を介して透析液に拡散するのに十分な濃度の電解質及びアルブミンを含み得る。特に、アルブミンは、好ましくは、水不溶性又は水に溶けにくい毒素又は老廃物に結合して、これらの膀胱を介した体内からの除去を促進するのに十分な濃度で供給される。透析液の他の成分として、重炭酸ナトリウム(ただし、塩化ナトリウム又は乳酸ナトリウムも適切に使用することができる)及びグルコースを含み得る。
【0043】
好ましくは、植え込み装置20は、患者の肝臓及び他の器官の健康を維持又は改善するために十分な量の老廃物及び毒素を透析液に拡散させるのに十分な時間を与える選択された時間間隔で、腹膜透析液を腹膜から膀胱に大量に移動させるように構成される。例えば、比較的多い量(例えば、1〜2.5リットル)を、比較的長い時間間隔(例えば、4〜8時間毎)で移動させることができる。他の実施態様では、植え込み装置20は、ある間隔(例えば、10〜20分毎)で短時間(例えば、10秒)、液体を腹膜から膀胱に移動させるように構成することができる。このような短時間であるが頻繁な間隔は、カテーテル23及び25の内部ルーメンへの物質の堆積を防止し、組織の内部成長のリスクを低減することが期待される。植え込み装置20の液体回路は、好ましくは、約1〜2.5リットル/時間の平均流量となるように構成することができるが、必要に応じて、これよりも遥かに多い流量にも、少ない流量にもすることができる。以下に詳細に説明されるように、1日のポンプ輸送量の上限及び下限を含むポンプ輸送の時間及び量、並びに透析液が腹膜腔内に維持される時間は、必要に応じて特定の患者に対して、監視及び制御システム40を用いて医師がプログラムすることができる。
【0044】
加えて、更に後述されるように、植え込み装置20は、膀胱が更なる液体を収容する十分な空間を有すると判断されるまで該液体の該膀胱へのポンプ輸送が実施されないように、腹膜腔及び膀胱の両方の圧力を監視する圧力センサを備えている。患者に不快感を与えないために、植え込み装置10は、任意に、夜間に又は該植え込み装置に設けられた加速度計が患者が眠っている(従って、恐らく膀胱が排尿することができない)ことを示す時にポンプ輸送しないようにプログラムすることができる。植え込み装置20は、好ましくは、ポンプによって尿が膀胱から腹膜腔に流れないようにする多数の別個の安全機構を備え、これにより感染症を伝播するリスクが低減される。
【0045】
なお
図1Aを参照すると、好ましい形態の外部充電及び通信システム30は、ベース31及びハンドピース32を備えている。この実施態様では、ハンドピース32は、制御装置、無線送受信機、誘導充電回路、バッテリ、充電の質の表示器、及びディスプレイを備え、かつ該バッテリを充電するためにベース31に着脱可能に装着される。ベース31は、ハンドピース32が該ベース31に装着されたときに、通常の120 Vの電力を適切なDC電流に変換して該ハンドピース32を充電するための変換器及び回路を備えることができる。代替の実施態様では、ハンドピース32は、このような回路及び着脱式電源コードを備えることができ、これにより該ハンドピースを通常の120 Vのコンセントに直接差し込んでバッテリを充電することができる。好ましい実施態様では、植え込み装置20及びハンドピース32はそれぞれ、メモリに保存された装置識別子を備え、該患者の特定の植え込み装置20のみを作動させるために、患者に与えられるハンドピース32が符号化される。
【0046】
ハンドピース32は、好ましくは、多機能ボタン34、ディスプレイ35、複数の発光ダイオード(LED、不図示)、及び誘導コイル部分36を有するハウジング33を備えている。多機能ボタン34により、患者が、植え込み装置20に限られた数のコマンドを入力することができ、ディスプレイ35により、所望のコマンドが入力されたかを視認することができる;該ディスプレイは、バッテリ状態も表示する。誘導コイル部分36は、エネルギーをハンドピース32から転送して植え込み装置20のバッテリを充電するために使用される誘導コイルを収容している。LEDは、発光するとハウジング33の材料を通して見ることができ、各行に2つのLEDとして3行に配置することができ、かつハンドピース32内に収容された制御回路及び誘導充電回路に接続されている。以下に更に詳述されるように、LEDは、植え込み装置20の再充電中にハンドピース32と該植え込み装置との間で達成される誘導結合の程度を発光して反映するように配置することができる。別法では、LEDを取り止めて、誘導結合の状態を示すアナログ表示をディスプレイ35に表示しても良い。
【0047】
以下に更に詳述されるように、ハンドピース32内に収容された制御回路は、誘導充電回路、バッテリ、LED、及び無線送受信機に接続され、かつ植え込み装置20からの情報を保存するメモリを備えている。ハンドピース32はまた、好ましくは、患者が診療所に訪問したときに該ハンドピースの監視及び制御システム40への接続を可能にするデータポート、例えば、USBポートも備えている。別法では、ハンドピース32は、例えば、ブルートゥース又はIEEE802.11無線規格に適合した無線チップを備えることができ、これによりハンドピースと監視及び制御システム40との直接の又はインターネットを介した無線通信が可能となる。
【0048】
監視及び制御システム40は、主に医師が使用することを目的としたものであり、通常のコンピュータ、例えば、
図1Aに例示されているラップトップ上で実行されるように構成されたソフトウェアを備えている。該ソフトウェアにより、医師が、充電及び通信システム30及び植え込み装置20の動作を設定し、監視し、かつ制御することができる。以下に詳細に説明されるように、該ソフトウェアは、ポンプの動作、例えば、毎日又はモータ作動毎の液体の目標輸送量、ポンプの作動間隔、並びに腹膜腔圧、膀胱圧値から、ポンプ圧、及びバッテリ温度に対する上限を設定及び制御するルーチンを含み得る。システム40はまた、特定の期間(例えば、夜間)は液体を移動させないように、又は患者が眠っている場合はポンプの作動を延期するように、充電/制御システム30を介して植え込み装置20に命令を出して、植え込み装置20の動作を制御することができる。システム40は、例えば、即時コマンドを植え込み装置に送信してポンプを始動又は停止させる、或いは該ポンプ又は関連カテーテルの閉塞を除去するために該ポンプを逆回転で又は高出力で運転させるように更に構成することができる。システム40のソフトウェアは、ポンプ動作に関連したリアルタイムデータ、及び植え込み装置20の動作中に保存されるイベントログをダウンロードするように構成することもできる。ダウンロードデータ、例えば、患者の体温、呼吸数、及び/又は液体粘度の測定値に基づいて、システム40のソフトウェアを、感染症の予測もしくは検出、並びに/又はポンプの動作における流量、量、時間、及び/もしくは頻度の調整を必要とし得る患者の健康の変化を医師に知らせるように任意に構成することができる。最後に、システム40は、任意に、安全なインターネットチャンネルを通じて患者のハンドピース32から生の動作データ又はフィルタリングされた動作データを遠隔受信するように構成することができる。
【0049】
ここで
図1B〜
図1Eに戻り、慢性肝不全に苦しんでいる患者に植え込まれた植え込み装置20及び透析液タンク45の様々な可能な構成の平面図を以下に説明する。
図1B〜
図1Eに例示されている植え込まれた装置20及び透析液タンク45を含むシステム10を用いて慢性肝不全に苦しんでいる患者を治療する方法を、
図1Fを参照して以下に更に詳細に説明する。
【0050】
特に、
図1Bは、植え込み装置20が、皮下、好ましくは、
図1Aに例示されている充電及び通信システム30によって容易に充電することができ、かつ該充電及び通信システム30と容易に通信できるように腹膜12によって画定された患者の腹膜11の外部であるが、対象の皮膚13の下に植え込まれる実施態様を例示している。装置20は、適切なコネクタ(不図示)を介して腹膜カテーテル23及び膀胱カテーテル25に接続されている。腹膜カテーテル23は、患者の腹膜11に植え込まれるように構成され、好ましくは、
図2A〜
図2Bを参照して以下に更に詳細に説明されるような開口53を備えている。膀胱カテーテル25は、患者の膀胱13に植え込まれるように構成され、好ましくは、
図3A〜
図3Bを参照して以下に更に詳細に説明されるような、該膀胱13内のカテーテルの外端部を固定するアンカーを備えている。
【0051】
図1Bに例示されているように、透析液タンク45は、体外に配置され、カテーテル46を介して腹膜腔に流体接続されている。カテーテル46は、コネクタ47を介してタンク45に接続され、該コネクタ47は、患者が簡単にタンク45を定期的に交換できるように構成されている。カテーテル46は、好ましくは、寸法及び密度を開口53と同様にすることができる開口53’を備え、該開口53’により、透析液が、比較的拡散して腹膜11に流れることができる。例示されている実施態様では、外部ポンプ48は、透析液をタンク45から腹膜11に所望の速度で流すように構成されている。例えば、タンク45は、
図1Dを参照して以下に更に説明されるベルト57に配設することができ、該ベルト57は、ポンプ48を備えている。ポンプ48は、植え込み装置20と無線通信して透析液の患者の腹膜への送達を調整するように構成することができる。代替の一実施態様では、透析液タンク45は、重力により透析液が、該タンク45から腹膜11に所望の速度で流れるように該腹膜の上に配置される。いずれの実施態様でも、タンク45は、好ましくは、十分な量の毒素及び老廃物が透析液中に拡散して患者の肝臓及び/もしくは他の器官の健康を維持又は改善できるように透析液を腹膜11に十分に満たすのに適した量、速度、及び頻度で該腹膜に液体を供給する。このような量、速度、及び頻度は、植え込み装置20が使用済み透析液(毒素及び老廃物を含む)を腹膜腔から患者の膀胱13に除去する際の量、速度、及び頻度とほぼ同じにすることができる。
【0052】
あるいは、
図1Cに例示されているように、透析液タンク45は、例えば、
図1Dを参照して以下に更に説明されるベルト57を用いて患者の体外に配置することができ、かつカテーテル46’及びコネクタ47を介して植え込み装置20に接続することができる。植え込み装置20は、透析液をタンク45からカテーテル46’及び23を介して腹膜11にポンプ輸送し、後に該透析液を該腹膜11から該カテーテル23及び25を介して膀胱13にポンプ輸送するように構成されている。特に、植え込み装置20の入口22は、カテーテル23及び46’の両方が接続されている第1の弁49を備え、該植え込み装置20の出口24は、カテーテル25が接続されている第2の弁49’を備えている。ポンプの動作中、植え込み装置20は、液体が膀胱から腹膜腔に誤ってポンプ輸送されないように弁49及び49’を制御する。例えば、液体をタンク45から腹膜11にポンプ輸送する際は、植え込み装置20は、弁49’を適切に作動させることによってカテーテル25との流体連通を遮断することができ、弁49を適切に作動させることによってカテーテル46’と23との間の流体連通を確立することができ、そして第1の方向に回して液体をタンク45からカテーテル46’及び23を介してポンプ輸送することができる。次いで、液体が所定時間、腹膜腔内に存在した後に、植え込み装置20は、弁49を適切に作動させることによってカテーテル46’との流体連通を遮断してカテーテル23との流体連通を確立し、弁49’を適切に作動させることによってカテーテル25との流体連通を確立し、そして液体が該カテーテル23及び25を介して膀胱13にポンプ輸送されるように第2の方向(第1の方向とは反対方向)に回すことによって、該液体を患者の該膀胱13にポンプ輸送することができる。カテーテル23、25、及び46’に沿って適切に配設され、かつ植え込み装置20、例えば、
図4に例示されている弁制御装置86を介して制御可能に作動される任意の所望の数の弁によって弁49及び49’の機能を果たすことができることを理解されたい。特定の構造では、1つ以上の受動弁(植え込み装置20によって制御されない)の使用が適切であり得、例えば、弁49’は、液体の膀胱から該装置20への流れを防止する、カテーテル25に沿って配設された、受動逆止め弁とすることができる。
【0053】
図1Dは、
図1B及び1Cに例示されているタンク45を患者の体に取り外し可能に固定することができるベルト57を例示している。ベルト57は、小袋(複数可)58、可撓性バンドの材料59、ファスナー59’、及び任意のポンプ48を備えている。小袋(複数可)58は、腹膜透析液を含む1つの長い連続した小袋を備えても良いし、あるいは別法として、カテーテルによって互いに連結された複数の小袋を備えても良く、コネクタ47を介してカテーテル46又は46’に接続することができる。好ましくは、小袋(複数可)58は、1日または1回の治療サイクルに十分な量、例えば、1〜2. 5リットルの透析液を保持し、かつ1回用及び容易に交換できるように構成することもできるし、又は滅菌可能及び補充可能にすることができる。小袋(複数可)58は、可撓性バンドの材料59の長さに沿って概ね線形に配置することができ、かつ、例えば、スナップ、ボタン、及びフックパイルファスナー(hook- and-pile fastener)などによって薄いバンドの材料を用いて、適切な機構によって該バンドの材料に固定することができる。可撓性バンドの材料59は、限定されるものではないが、患者の服の下側に目立たないように適合し得る伸縮性のフィットする材料を含む任意の適切な織物から形成することができる。ファスナー59’は、患者がベルト57を繰り返し装着できるように構成され、かつ、例示されているように、例えば、スナップ(複数可)、バックル、ジッパー、又はフックパイルファスナーを備えることができる。
【0054】
任意のポンプ48(バッテリなどの電源を含む、不図示)は、例えば、
図1Bを参照して上記説明されたように、透析液の腹膜への流れを促進するように構成されている。ポンプ48は、新しい透析液のタンクから腹膜への送達と使用済み透析液の腹膜から膀胱への除去を調整するために植え込み装置20と通信する無線送受信機を備えることができる。加えて、又は別法として、
図4及び
図5Bを参照して以下に説明されるような紫外線(UV)源をベルト57に設けることができ、該紫外線源は、カテーテル46もしくは46’に進入する前又は進入するときに液体を照射するように構成することができる。
【0055】
図1Eは、
図1B〜
図1Dの構成の代替の構成を例示し、この構成では、透析液タンク45’は、代わりに患者の体内、例えば、腹膜11内に植え込まれている。植え込み装置20は、カテーテル46、23、及び25並びに弁49及び49’を用いて、
図1Dを参照して上記説明されたように透析液をタンク45から腹膜11にポンプ輸送し、そして後に該透析液を該腹膜11から膀胱13にポンプ輸送するように構成されている。しかしながら、
図1Dに例示されているように透析液タンク45をベルト47に配設する、又は
図1Bを参照して上記説明されたようにタンク45を腹膜よりも高い位置に配置するのではなく、
図1Eに例示されている実施態様は、透析液タンク45’を腹膜腔内に配設して、患者が該タンクを定期的に満たすことができるポート45’’及びポートカテーテル46’を設けることによって該患者の利便性を更に向上させることができる。例示されている一実施態様では、ポート45’’は、内部タンク45’の補充用の新しい透析液を含む別個の外部タンク(不図示)に接続された針を患者が刺入することができる可撓性のセルフシール膜を備えている。
【0056】
図1A〜
図1Eに例示されているような人工肝臓システムを使用する方法を、
図1Fを参照して以下に説明する。
【0057】
図1Fに例示されている方法1000は、アルブミン含有透析液を、患者の体内又は体外にあるタンクから腹膜腔に導入するステップ(ステップ1010)を含む。例えば、
図1B及び
図1Dを参照して上記説明されたように、外部ポンプ又は重力を利用して透析液を導入することができる。又は、
図1C及び
図1Eを参照して上記説明されたように、植え込み装置20及び該植え込み装置20と通信する1つ以上の弁を使用して透析液を導入することができる。透析液が腹膜から除去されるときに十分な量の毒素及び老廃物を除去できるように十分な量の透析液が導入される。
【0058】
次いで、毒素及び老廃物が、例えば、腹膜を介して透析液中に拡散し、従って患者の血中のこれらの毒素及び老廃物のレベルが低下する(ステップ1020)。特に、透析液中のアルブミンが、水不溶性又は水に溶けにくい毒素及び老廃物に結合し、従って、アルブミンを含まない透析液と比較してこのような毒素及び老廃物の体外への輸送を促進すると考えられる。
【0059】
次いで、透析液が、植え込み装置を用いて腹膜腔から膀胱にポンプ輸送される(ステップ1030)。このようなポンプ輸送は、肝臓及び/又は他の器官の健康を維持する、更には改善するために十分な量の毒素及び老廃物を体から取り出すのに十分な時間、透析液が腹膜内に存在した後で行うことができる。
【0060】
図1Aを参照して上記簡単に説明され、かつ
図8A〜
図9を参照して以下に詳細に説明されるような充電及び通信システムを用いて、エネルギーを植え込み装置に無線送信し、該装置からデータを受信することができる(ステップ1040)。例えば、植え込み装置は、患者の健康及び該装置の動作を反映するパラメーターを記録することができ、該パラメーターを、充電及び通信システムに伝達することができる。
【0061】
次いで、データ、例えば、植え込み装置によって記録されるパラメーターが、監視及び制御ソフトウェアに供給され(ステップ1050)、該監視及び制御ソフトウェアは、充電及び通信システムと通信し、治療を行う医師の制御下である。
【0062】
これらのパラメーターに基づいて、患者の健康を、該ソフトウェアを用いて評価することができ、そして医師は、透析液が膀胱に除去されるまで植え込み装置が該透析液を腹膜腔内に維持する際の流量、量、時間、又は頻度のあらゆる変更を遠隔から伝達することができる(ステップ1060)。このような伝達は、充電及び通信システムを介して行うことができる。
【0063】
図1A〜
図1Fの人工肝臓システム及び方法の選択された構成要素の更なる詳細を、
図2A〜
図15を参照して以下に説明する。
【0064】
(腹膜カテーテル及び膀胱カテーテル)
図2A及び
図2Bを参照すると、本発明の原理に従って構成された例示的な腹膜カテーテル50が示されている。腹膜カテーテル50は、
図1A〜
図1Eを参照して上記説明された腹膜カテーテル23に対応し、好ましくは、複数の壁貫通孔53を備えた入口(遠位)端部52及び出口(近位)端部54を有する医療用シリコーンからなる管51を備えている。腹膜カテーテルは、好ましくは、約40cmの流さL1を有し、入口端部52から約24cmの流さL2に亘って複数の孔53が広がっている。孔53は、好ましくは、
図2Bに示されているように、周方向に約90度ずれていて、長手方向に約8 mm〜10 mm離隔して配置されている。好ましい一実施態様では、29個の孔53が、各行に7個の孔として4行に配置され、各位置で腹膜カテーテルの壁を1回のみを貫通し、該孔は、2.0〜2.5 mmの大きさを有する。腹膜カテーテル50は、好ましくは、組織の内部成長を軽減するためにルーメンの遠位端部から約7〜10 mmの距離まで挿入される固形シリコーンプラグ55、及び該カテーテルの表面に配設される又は該カテーテルの内部に埋め込まれる放射線不透過性ストリップ56を備え、該ストリップは、カテーテルの全長に亘って延在し、蛍光透視画像又はX線画像で該カテーテルを可視化することができる。腹膜カテーテル50はまた、カテーテルの周囲組織への付着を促進して該カテーテルを所定の位置に固定するために、孔53から離れた部分にポリエステルカフ(不図示)を備えることもできる。
【0065】
別法では、腹膜カテーテル50の入口端部52は、螺旋構造及び非外傷性先端部を有することができ、孔53が、閉塞のリスクを低減するために管の全長に亘って分布している。更なる代替として、入口端部52は、閉塞のリスクを更に低減するために、米国特許第4,657,530号に開示されているような拡径部、米国特許出願公開第2009/0318844号の
図9〜
図16に開示されているようなリザーバを備えることができ、これらの特許文献はそれぞれ、引用により全容が本明細書中に組み込まれている。入口端部52はまた、例えば、米国特許第4,240,434号に示されているように、ダックビル弁を端部に設けることができ、これにより、カテーテル50の出口端部を植え込み装置20から取り外して、ロッドを該カテーテルの出口端部から該入口端部のダックビル弁の中に通すことによって、該カテーテルをインサイチュウ(in situ)で掃除することができる。
【0066】
入口端部52はまた、近傍の組織壁へのカテーテルの付着を促進するためにポリエステルカフを備えることもでき、これにより、カテーテルの入口端部が所定の位置に確実に維持される。出口端部54はまた、腹膜カテーテルの出口端部を植え込み装置20に固定するコネクタを備えることもできる。好ましい一実施態様では、腹膜カテーテルの遠位端部は、内部成長カフまで、通常の16Fのピールアウェイシースを通過できるように構成することができる。加えて、腹膜カテーテルの長さは、体腔の底部に沿って確実に延在するように選択することができ、該腹膜カテーテルは、捻れ運動に十分に耐えて、植え込み時又は植え込み後に捻れたり捩れたりしない。
【0067】
図3Aを参照すると、
図1A〜
図1Eの膀胱カテーテル25に対応する、本発明の膀胱カテーテル60の第1の実施態様が示されている。膀胱カテーテル60は、好ましくは、螺旋構造64を含む出口(遠位)端部63及び入口(近位)端部62を有する医療用シリコーンからなる管61、並びにポリエステル内部成長カフ65を備えている。膀胱カテーテル60は、入口端部62から螺旋構造64の先端部の単一出口まで延びた、一般に「ピグテール」設計と呼ばれる単一内部ルーメンを備えている。入口端部62は、膀胱カテーテルの入口端部を植え込み装置20に固定するコネクタを備えても良いし、又は特定の患者に適合するように切断できる長さを有しても良い。一例では、膀胱カテーテル60は、約45 cmの長さL3を有することができ、カフ65が、螺旋構造64から約5〜6cmの長さL4の位置に配置される。膀胱カテーテル60を、螺旋構造64を直線状にしてスタイレットに装着し、該スタイレットを用いて出口端部63及び螺旋構造64を患者の膀胱壁を通過させる低侵襲性技術を用いて植え込むことができる。スタイレットが抜去されると、螺旋構造64が、
図3Aに示されているコイル形状に戻る。膀胱カテーテル60の出口端部63が患者の膀胱内に配置されると、カテーテルの入口端部62を植え込み装置20に接続できるように、カテーテルの残りの部分がトンネル技術を用いて植え込まれる。螺旋構造64は、膀胱の周囲組織が十分に治癒して内部成長カフ65が取り込まれて膀胱カテーテルが所定の位置に固定される前に、出口端部63が膀胱から偶発的に抜けてしまうリスクを低減することができる。
【0068】
好ましい実施態様では、膀胱カテーテル60は、従来のピールアウェイシースを通過できるように構成されている。膀胱カテーテル60は、好ましくは、植え込み時又は植え込み後に捻れたり捩れたりしないように捻れ運動に十分に耐える。好ましい実施態様では、腹膜カテーテル50及び膀胱カテーテル60は、植え込み装置20への接続中に誤って入れ替わらないように、好ましくは、異なる色であり、異なる外形(例えば、四角と丸)を有する、又は異なる接続特性を有する。任意に、膀胱カテーテル60は、その入口端部62と出口端部63との間の中間に配設される内部ダックビル弁を備えることができ、これにより、たとえ膀胱カテーテルが植え込み装置20のポンプ出口から偶発的に抜けたとしても、かつ/又は植え込み装置20のポンプが、腹膜透析液をタンク45から患者の腹膜腔内に導入するように作動したとしても、尿が膀胱から腹膜腔内に流れることはない。
【0069】
代替の実施態様では、腹膜カテーテル及び膀胱カテーテル装置は、体腔間の感染の広がりを抑制するために1つ又は幾つかの抗感染症薬を含むことができる。使用することができる抗感染症薬の例として、例えば、静菌性物質、殺菌物質、1つ以上の抗生物質放出物質(antibiotic dispenser)、抗生物質溶出物質、及び細菌の付着を防止するコーティング、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。加えて、植え込み装置20は、
図4及び
図5Bを参照して以下に更に説明されるように、存在し得るあらゆる病原菌を死滅させ、従って感染症の発症を防止するよう腹膜カテーテル及び/又は膀胱カテーテル内の液体を照射するように構成されたUVランプを備えることができる。
【0070】
別法では、別個のカテーテルを備えるのではなく、腹膜カテーテル50と膀胱カテーテル60が共通の壁を共用することができ、これは、膀胱と腹膜腔が共通の壁を共用し、これにより単一デュアルルーメンチューブの挿入が容易になるため、便利であり得る。加えて、腹膜カテーテル又は膀胱カテーテルの一方又は両方を、それらの長さの一部又は全長に沿って編組リボン又は編組ワイヤを用いて補強する、或いは複数のリボン又はワイヤを該カテーテルの内部に埋め込む又はその表面に一体化させて補強することができる。編組又はワイヤは、ステンレス鋼などの金属、ニチノールなどの超弾性金属、又は様々な適切なポリマーから形成することができる。このような補強は、タンク45に接続されたカテーテル46に使用することもできる。
【0071】
図3Bを参照すると、本発明の膀胱カテーテルの第2の実施態様が示されており、同様の構成要素には、同一の参照符号にシングルクォテーションが付されている。膀胱カテーテル60'は、好ましくは、入口端部62'、出口端部63'、及びポリエステル内部成長カフ65'を有する医療用シリコーンからなる管61'を備えている。この実施態様によると、出口端部63'は、マルコー構造(malecot structure)66を備え、該マルコー構造は、カテーテルの出口端部63'が留置後に偶発的に抜けてしまうリスクを低減するためにカテーテルの軸から遠ざかる横方向に拡張する4つの弾性ウイング67を例示的に含む。入口端部62'は、膀胱カテーテルの入口端部を植え込み装置20に固定するコネクタを備えても良いし、又は特定の患者に適合するように切断できる長さを有しても良い。
【0072】
マルコー構造66は、好ましくは、スタイレットがカテーテルのルーメンに挿入されるときに、ウイング67が実質的に閉じた細い構造に変形するように構成されている。このようにして、膀胱カテーテル60'をスタイレットに装着することができ、低侵襲性技術を用いて、出口端部63'及びマルコー構造66を該スタイレットを用いて患者の膀胱壁を通過させることができる。スタイレットが抜去されると、マルコー構造のウイング67は、
図3Bに示されている拡張形状に戻る。膀胱カテーテル60'の出口端部63'が、患者の膀胱に結合されると、該カテーテルの残りの部分が、該カテーテルの入口端部62'を植え込み装置20に結合できるようにトンネル技術を用いて植え込まれる。マルコー構造66は、膀胱の周囲組織が十分に治癒して内部成長カフ65'が取り込まれる前に、出口端部63'が膀胱から偶発的に抜けてしまうリスクを低減することができる。
図3Aの実施態様では、
図3Bの膀胱カテーテルは、従来のピールアウェイシースを通過できるように構成することができ、好ましくは、植え込み時又は植え込み後に捻れたり捩れたりしないように捻れ運動に十分に耐える。
【0073】
(植え込み装置)
ここで
図4を参照すると、本発明の植え込み装置20の機能ブロックを表現する略図が示されている。植え込み装置20は、制御回路を備え、該制御回路は、データバスによって不揮発性メモリ71、例えば、フラッシュメモリ又は電気的消去・書き込み可能読出し専用メモリ、及び揮発性メモリ72に接続されたプロセッサ70として例示されている。プロセッサ70は、電気モータ73、バッテリ74、誘導回路75、無線送受信機76、UVランプ85、並びに湿度センサ77、複数の温度センサ78、加速度計79、複数の圧力センサ80、及び呼吸数センサ81を含む複数のセンサに電気的に接続されている。誘導回路75は、充電及び通信システム30から送信されるエネルギーを受信するためにコイル84に電気的に接続され、送受信機76は、アンテナ82に接続され、また、後述するように充電及び通信システム30の送受信機と通信するように構成されている。任意に、誘導回路75はまた、赤外線発光ダイオード83に接続することもできる。モータ73は、専用制御装置を備えることができ、該制御装置は、プロセッサ70からのコマンドを理解して、該コマンドに応答してモータ73を作動させる。任意に、プロセッサ70は、弁制御装置86と更に通信する。
図4に示されている構成要素の全ては、
図5Aに示されているように、小型の密封生体適合性ハウジング内に収容されている。
【0074】
プロセッサ70は、モータ73によって生成される信号、センサ77〜81、及び送受信機76から受信するコマンドに応答して該モータ73の動作を制御する不揮発性メモリ71に保存されたファームウエアを実行する。プロセッサ70はまた、送受信機76を介したメッセージの送受信、及びバッテリ74を充電する誘導回路75の動作も制御する。加えて、プロセッサ70は、モータ73内に配設されたホール効果センサによって生成される信号を受信し、該信号は、後述されるように、ギヤポンプのギヤの方向及び回転、従ってポンプ輸送される液体の量及び該液体の粘度を計算するために使用される。プロセッサ70は、好ましくは、低出力モードの動作を含み、内部クロックを備え、これにより、該プロセッサは、定期的に起動して、ポンプ輸送、ポンプのチックモード(pump tick mode)、又は通信/充電機能を制御することができ、かつ/又は起動してハンドピース32から送受信機76が受信するコマンドを処理することができる。一実施態様では、プロセッサ70は、Texas Instruments社, Dallas, Texasから入手可能なMSP430ファミリーの1つであるマイクロコントローラーユニットを備え、
図4に示されている不揮発性メモリ、揮発性メモリ、及び無線送受信機要素を含み得る。加えて、プロセッサ70で実行されるファームウエアは、充電及び通信システム30を介して植え込み装置20に送られるコマンドに直接応答するように構成することができる。プロセッサ70はまた、後述されるように、モータ72(及びあらゆる関連するモータ制御装置)の動作及びセンサ77〜81を監視し、かつイベントログ及びアラームを含む、植え込み装置の動作を反映するデータを保存するように構成されている。従って、充電及び通信システムが、次に植え込み装置に無線接続されるときに、データが該充電及び通信システムに報告される。好ましい実施態様では、プロセッサ70は、ポンプを作動させる前は最大で1秒に80個のログエントリー、植え込みシステムが活発にポンプ輸送しているときは1秒に約8個のログエントリー、そしてポンプ輸送されていないときは1時間に約1個のログエントリーを生成する。
【0075】
不揮発性メモリ71は、好ましくは、フラッシュメモリ又はEEPROMを含み、かつ植え込み装置20の一意の装置識別子、プロセッサ70で実行されるファームウエア、植え込み装置の動作に関する構成設定値データ、並びに任意である、送受信機76及び/又は誘導回路75、及び別個のモータ制御装置(存在する場合)で実行されるコーディングを保存する。不揮発性メモリ71に保存されるファームウエア及び設定値データは、充電及び通信システム30を介して制御/監視システム40によって供給される新たな命令を用いて更新することができる。揮発性メモリ72は、プロセッサ70に接続され、該プロセッサの動作を支援し、かつ植え込み装置20の動作中に収集されたデータ及びイベントログ情報を保存する。揮発性メモリ72はまた、充電及び通信システム30に送信される情報及び該充電及び通信システムから受信する情報のバッファとしても機能する。
【0076】
送受信機76は、好ましくは、無線周波数送受信機を含み、かつ充電及び通信システム30のハンドピース32内に配設された同様の送受信回路を用いてアンテナ76を介して双方向通信するように構成されている。送受信機76はまた、低出力動作モードを備えることができ、これにより定期的に起動して、受信メッセージを待ち受け、かつ植え込み装置に割り当てられた一意の装置識別子を含むメッセージのみに応答する。別法では、送受信機76が、関連する充電及び通信システム30のハンドピース32内の対応する送受信機と通信するだけであるため、該送受信機76は、植え込み装置の誘導回路75が作動しているときにのみデータを送信又は受信するように構成することができる。加えて、送受信機76は、植え込み装置から送信されるメッセージ又は該植え込み装置が受信するメッセージを傍受又は偽造できないように暗号化ルーチンを利用することができる。
【0077】
誘導回路75は、コイル84に接続され、かつ充電及び通信システム30のハンドピース32内の対応する誘導回路によって生成される磁場に曝露されたときに植え込み装置のバッテリ74を再充電するように構成されている。一実施態様では、誘導回路75は、該誘導回路75が作動しているときに赤外線信号を発する任意である赤外線LED 83に接続されている。該赤外線信号は、充電及び通信システム30のハンドピース32が受信して、該ハンドピースの植え込み装置に対する位置合わせを支援し、これにより植え込み装置に対する電磁結合及びエネルギー伝達が改善される。
【0078】
本発明の一態様によると、誘導回路75は、任意に、バッテリ74を再充電するだけではなく、ポンプの閉塞を解除するために「ブースト」モード又はジョグ/振動モードのモータ73に直接エネルギーを供給するように構成することができる。特に、モータ73が、例えば、腹膜透析液中のタンパク質によって形成される障害物によって停止したことをプロセッサ70が検出する場合は、アラームをメモリに保存することができる。植え込み装置20が、充電及び通信システム30と次に通信するときに、アラームがハンドピース32に送られ、かつ患者に、多機能ボタン34を押す選択肢を与えることができ、この押圧により、誘導回路75から過電圧がモータ73に一定時間加えられてポンプの閉塞が解除される。別法では、多機能ボタンを押すと、プロセッサ70が一連のコマンドを実行し、これにより、例えば、モータ73が逆方向及び順方向に交互に回転することによって、該モータがジョグ又は振動して閉塞が解除される。このような動作モードは、通常の動作中に予想されるよりも多くのエネルギーを消費し得るため、このような処置中は、誘導回路75を介して供給されるエネルギーでモータを駆動すると有利である。
【0079】
バッテリ74は、好ましくは、人体に植え込まれたときに長く持続する、例えば、最大3年間動作することができ、これにより植え込み装置20を交換する再手術の必要性を最小限にするリチウムイオン電池又はリチウムポリマー電池を含む。好ましい一実施態様では、バッテリ74は、3.6 Vの公称電圧、新品時に150 mAhの静電容量、2年使用後に約120 mAhの静電容量を有する。好ましくは、バッテリ74は、ポンプ輸送するときは280 mA;送受信機が充電及び通信システム30と通信するときは25 mA;プロセッサ70及び関連回路が作動しているが、ポンプ輸送も通信もしていないときは8 mA;そして植え込み装置が低出力モードのときは0.3 mAの電流をモータ73に供給する。より好ましくは、バッテリ74は、各充電サイクルの間に10秒間の少なくとも450 mAh及び25ミリ秒間の1 Aの最小電流を可能にする容量にするべきである。
【0080】
モータ73は、好ましくは、後述されるように、ギヤポンプとして動作する一組の浮動ギヤを駆動するスプライン出力軸を有するブラシレス直流モータ又は電子整流モータである。モータ73は、該モータの動作を制御する、プロセッサ70とは別個の専用モータ制御装置を備えることができる。モータ73は、モータの位置及び回転方向を決定するための複数のホール効果センサ、好ましくは2つ以上のホール効果センサを備えることができる。プロセッサ70は、植え込み装置20が遭遇し得る高湿度のせいで、たとえホール効果センサの全て又は一部が故障したとしても、精度は低下するもののモータ73を作動させるプログラミングを備えることができる。
【0081】
好ましい実施態様では、モータ73は、ギヤを駆動して150 ml/分の公称流量を供給し、3000 RPMで水30 cmの圧力水頭に対して約1 mNmのトルクを加えることができる。この実施態様では、モータは、好ましくは、50 ml/分の流量に対応する1000 RPMから260 ml/分の流量に対応する5000 RPMでギヤを駆動するように選択される。モータは、好ましくは、非固形腹水タンパク様物質を粉砕するために、500 mA、3 Vで少なくとも3 mNm、より好ましくは6 mNmの停動トルクを有する。上記のように、モータはまた、好ましくは、誘導回路75によって直接電力が供給される場合は、例えば、5 Vでのブーストモードの動作を支援する。モータ73はまた、好ましくは、ギヤポンプの閉塞を解除するジョグ又は振動処置の一部として逆回転で駆動することができる。
【0082】
本発明の一態様によると、プロセッサ70は、自動的かつ定期的に起動してポンプチックモードに入るようにプログラムすることができる。この動作モードでは、ギヤポンプは、プロセッサ70が低出力モードに戻る前に、ホール効果センサによる測定で僅かに、例えば、約120度順方向に回転する。好ましくは、この間隔は、約20分毎であるが、監視及び制御システムを用いて医師が調整することができる。このポンプチックモードは、高いタンパク質含量を有し得る腹膜透析液が部分的に固化して、ギヤポンプを閉塞させるのを防止することが期待される。
【0083】
加えて、プロセッサ70はまた、バッテリのみで動作しているときにギヤポンプの閉塞を解除するジョグ又は振動モードに入るようにプログラムすることもできる。充電及び通信システム30のハンドピースを用いて植え込み装置を充電するときに利用できるブーストモードと同様に、ジョグ又は振動モードでは、モータが、ギヤを順方向と逆方向との間で迅速に交互して動作して、ギヤポンプ内又は液体流路の他の部分におけるタンパク様蓄積物を粉砕する又はほぐす。特に、この動作モードでは、エネルギーが供給された後の一定期間(例えば、1秒)の間に始動しない場合は、運動の方向を短時間逆転させ、次いで再び逆転させて所望の方向にモータを回転させる。モータがなお回転しない場合は(例えば、ギヤポンプの故障のために)、回転方向を一定期間(例えば、更に10ミリ秒)の間、再び逆転させる。それでもモータが順方向に回転できない場合は、該モータの逆方回転間の時間間隔を短縮して、該モータがより高い出力を発生できるようにし、これによりギヤが振動動作する。モータが4秒を超えて順方向に回転しない場合は、ジョグモードの動作が停止されて、アラームがイベントログに書き込まれる。モータが順方向に回転できなかった場合は、プロセッサ70が、次の計画されている液体輸送の前に逆方向チックを導入する。逆方向チックは、チック(例えば、モータ軸の約120度の順方向運動)と同様であるが、逆方向であり、順方向に回転する前にモータを逆方向に強制的に回転させようとするものであり、これによりモータが推進力を得ることができるはずである。
【0084】
センサ77〜81は、湿度、温度、加速度、圧力、及び呼吸数を継続的に監視し、監視及び制御システム40に後に伝達するために対応するデータをメモリ71内に保存するプロセッサ70に対応する信号を供給する。特に、湿度センサ77は、植え込み装置の構成要素が、予想される動作限界の範囲内で確実に動作するように、該植え込み装置のハウジング内の湿度を測定するために配置される。湿度センサ77は、好ましくは、20%〜100%の範囲内の湿度を高精度で検出して報告することができる。1つ以上の温度センサ78をハウジング内に配設して、植え込み装置、特にバッテリ74の温度を、該バッテリが充電中に過熱しないように監視することができ、また別の1つ以上の温度センサ78を、入口62に進入する液体に接触するように配設し、これにより、例えば、患者の健康の評価に使用される該液体の温度を監視することができる。加速度計79を配置して、例えば、患者が眠っているか否かを決定するために、好ましくは少なくとも2つの軸に沿った植え込み装置の加速度を測定して非活動期間を検出する。この情報は、患者が排尿を望まないときにはポンプが絶対に作動しないようにプロセッサ70に供給される。
【0085】
植え込み装置20は、好ましくは、プロセッサの作動期間中に継続的に監視される多数の圧力センサ80を備えている。
図6Aを参照して以下に説明されるように、本発明の植え込み装置は、好ましくは、4つの圧力センサ:腹膜腔内の圧力を測定するセンサ、周囲圧力を測定するセンサ、ギヤポンプの出口の圧力を測定するセンサ、及び膀胱内の圧力を測定するセンサを備えている。これらのセンサは、好ましくは、3 Vで50 mW未満の電力消費で450 mBar〜1300 mBar(45 kPa〜130 kPa)の絶対圧力を測定するように構成されている。好ましくは、ポンプ出口及び膀胱内の圧力を測定するセンサ及び流入体腔内の圧力を測定するセンサは、尿及び/又は使用済み透析液のギヤポンプへの逆流を防止するダックビル弁の前後に配置され、これにより該ダックビル弁の前後の圧力低下に基づいた流量計算が可能となる。
【0086】
呼吸数モニタ81は、例えば、患者の健康の評価に使用するために、患者の呼吸数を測定するように構成されている。別法では、患者の呼吸数は、1つ以上の圧力センサ80の出力、例えば、呼吸の際に腹膜腔を定期的に圧迫する横隔膜によって生じる周囲圧力又は該腹膜腔内の圧力の変化に基づいて測定することができる。
【0087】
患者の健康を測定する任意の所望の数の追加のセンサを、プロセッサ70と通信可能に設けることもでき、該追加のセンサは、メモリ71に保存され、監視及び制御システム40に伝達される記録可能なパラメーターを出力し、これを医師が使用して患者の健康を評価することができることに留意されたい。例えば、腹膜透析液中の1つ以上の毒素又は老廃物のレベルを監視するように構成された化学センサ又は生化学センサを設けることができる。
【0088】
好ましい実施態様では、プロセッサ70は、所定量の液体が所定時間、腹膜腔内に存在した後に、所定の頻度で該液体を腹膜腔から膀胱にポンプ輸送するようにプログラムされている。このような量、時間、及び頻度は、好ましくは、十分な量の毒素及び老廃物が腹膜を介して液体中に拡散して患者の肝臓及び他の器官の健康を維持又は改善するのに十分である。この量、時間、及び頻度は、患者の肝臓、腎臓、及び/又は他の器官の健康、患者の活動及び習慣、毒素及び老廃物の腹膜透過性、並びに透析液の浸透圧特性に基づいて選択することができる。例えば、医師は、まず、患者の健康及び習慣についての該医師の認識に基づいた最初の時間、量、及び頻度を用いてプロセッサ70をプログラムすることができ、後に、該患者の健康の変化についての医師の認識、例えば、植え込み装置20によって測定され、そして監視及び制御ソフトウェア40を介して該医師に送られるパラメーターの経時変化に基づいて時間、量、及び頻度を変更するように最初のプログラミングを調整することができる。
【0089】
他の実施態様では、プロセッサ70は、腹膜内の圧力が第1の所定値を超え、かつ膀胱内の圧力が第2の所定値未満であって膀胱が過度に満たされていない場合にのみ、液体を腹膜腔から該膀胱にポンプ輸送するようにプログラムされている。患者の海抜ゼロ地点から高所への移動を考慮するために、周囲圧力測定値を使用して腹膜圧の差圧値を計算することができる。この方法では、低い大気圧を考慮するために、ポンプが始動する設定圧力を下げることができる。同様に、周囲圧力を使用して、膀胱圧の所定値を調整することができる。この方法では、高所にいるときは患者がより低い圧力で膀胱に不快を感じることがあるため、ポンプ輸送が停止する閾値圧力を下げることができる。
【0090】
任意に、制御装置70は、UVランプ85と通信可能であり、該UVランプ85は、腹膜透析液が腹膜腔に供給される前及び後の両方で該液体中の病原菌を照射して死滅させるように構成されている。UVランプ85は、好ましくは、UV-Cスペクトル範囲(約200〜280nm)、特に約250〜265nmの範囲の光を生成し、このスペクトル範囲の光は、微生物のDNAの核酸を分解するため、「殺菌スペクトル」とも呼ばれる。低圧水銀ランプは、253.7nm付近に放出ピークを有し、UVランプ85に使用するのに適切であり得る。あるいは、UVランプ85は、AlGaAs又はGaNをベースとすることができるUV発光ダイオード(LED)としても良い。
【0091】
制御装置70の制御下で、UVランプ85は、腹膜透析液中に存在し得る病原菌を死滅させるのに十分な予め選択された時間、植え込み装置に進入するすべての該腹膜透析液を照射する。特に、該装置を通る液体の流量は、病原菌のコロニーの成長を抑制する十分な量のUV光で該液体を照射するように選択する(例えば、予めプログラムする)ことができる。例えば、約5,500〜7,000μWs/cm
2の253.7nmのUV光の量は、大腸菌(E. coli)、プロテウス属(Proteus spp.)、クレブシエラ属(Klebsiella spp.)、セラチア属(Serratia spp.)、レプトスピラ属(Leptospirosis spp.)、スタフィロコッカス族(Staphylococcus haemolyticus)、及び腸球菌(Enterococci)を含む多数の生物を100%死滅させるのに十分である。クレブシエラ属(Kliebsiella spp.)、エンテロバクター属(Enterobacter spp.)、シュードモナス属(Psuedomonas spp.)、及び淋菌(Neisseria gonorrhoeae)を含む他の生物を100%死滅させるのにはより高い量、例えば、約8,500〜12,000μWs/cm
2が必要であろう。しかしながら、コロニーの成長を抑制するのに十分な量は、少なくすることができる。例えば、大腸菌(E. coli)の成長を抑制するためには3000μWs/cm
2のみが必要であるが、100%死滅させるには6,600μWs/cm
2を必要とし得る。制御装置70は、UVランプ85の強度、UVランプ85が使用されるハウジングの部分(例えば、
図5Bを参照して以下に説明される上部93)内の反射条件、UVランプに曝露される管の構造、管とUVランプとの間の距離、及びUVランプ85によって放射されるスペクトルに対する標的病原菌の影響の受けやすさに基づいて1つ以上の標的病原菌のコロニーの成長を抑制するのに十分な管を通る流量を設定するように予めプログラムすることができる。
【0092】
更に
図4を参照すると、一部の実施態様では、プロセッサ70は、弁制御装置86と通信可能にすることもできる;あるいは、弁制御装置86は、プロセッサ70の一部とすることができる。弁制御装置86は、タンクと腹膜と膀胱との間の腹膜透析液の流れを制御するために使用することができる全ての弁の作動を制御する。例えば、
図1C及び
図1Eを参照して上記説明されたように、植え込み装置20は、外部タンク又は内部タンクから腹膜に腹膜透析液をポンプ輸送すると共に、該液体の膀胱へのアクセスを遮断し、従って該液体の該膀胱から該腹膜への誤ったポンプ輸送を回避するよう弁49及び49’を作動させるように構成することができ;かつ、腹膜から膀胱に腹膜透析液をポンプ輸送すると共に、該液体のタンクへのアクセスを遮断し、従って該液体の腹膜からタンクへの誤ったポンプ輸送を回避するよう弁49及び49’を作動させるように構成することができる。弁制御装置86は、このような方式で、又は特定の弁の構成に基づいた任意の他の適切な方式で弁49及び49’の作動を調整することができる。
【0093】
ここで
図5A及び
図5Bを参照すると、植え込み装置90の例示的な実施態様の更なる詳細が示されている。
図5Aでは、ハウジング91は、透明として示されているが、当然、ハウジング91が不透明な生体適合性プラスチック及び/又は金属合金材料を含むことを理解されたい。
図5Bでは、ハウジング91の下部92が上部ハウジング93から取り外され、植え込み装置内に水分が蓄積するのを防止するために使用されるガラスビーズ/エポキシ充填材料を含んでいない植え込み装置が示されている。
図5A及び
図5Bでは、モータ94が、
図6及び
図7を参照して詳細に説明されるギヤポンプハウジング95に接続されている。
図4を参照して上記説明された電子部品が、可撓性回路基板96に配設され、該可撓性回路基板は、支持部材97の周りに延在し、かつ該支持部材に固定されている。コイル98(
図4のコイル84に対応する)が、基板のフラップ99に配設され、該コイルは、可撓性ケーブル部101によってフラップ100上の電子部品に接続されている。支持部材97は、上部ハウジング93に固定され、かつバッテリ102(
図4のバッテリ74に対応する)を保持するキャビティを画定している。ハウジング91の下部92は、該ハウジング91の上部93と該下部92が互いに固定された後に、水分が蓄積し得るハウジング内の空間を縮小するためにガラスビーズ/エポキシ混合物を注入するポート103を備えている。
【0094】
ハウジング91はまた、患者に植え込まれると植え込みポンプの動きを抑制するように設計された機能構造、例えば、植え込み装置を周囲組織に確実に固定する縫合孔を備えることができる。ハウジング91は、皮下植え込み後の植え込み装置の周囲組織への付着を促進するポリエステル内部成長パッチを更に備えることができる。
【0095】
加えて、植え込み装置は、閉塞防止剤、例えば、腹水の特にタンパク様成分を標的とする酵素溶出剤、尿の特にタンパク様成分及び付着促進成分を標的とする酵素溶出剤、化学溶出表面、タンパク様成分の付着を防止するコーティング、及びこれらの組み合わせを、任意に含むことができる。このような作用物質は、使用される場合は、システムの様々な構成要素の中に入れて一体にする、又は該構成要素の表面にコーティングすることができる。
【0096】
図5Bに例示されているように、上部ハウジング93は、任意に、
図4を参照して上記更に説明されたUVランプ85を備える。上部ハウジング93内で、腹膜透析液を誘導する流路88が、ほぼ線形に延在しても良いし、あるいは別法として、UVランプ86に同時に曝露され得る液体の量が増加し、従って流量の増加が可能となるように1つ以上の曲線部もしくは曲り部を備えても良い。例えば、流路88は、UVランプ86に同時に曝露することができる液体の量を増加させるためにほぼ螺旋、ほぼ正弦波、又はほぼ「S字」曲線を有することができる。上部ハウジング93は、管の照射を促進し、かつ潜在的なUV光曝露から患者を保護するために、反射コーティング87、例えば、白色コーティング、例えば、ZnO又は他の拡散反射面もしくはLambertian反射面を更に備えることができる。
【0097】
ここで
図6A〜
図6Dを参照すると、ギヤポンプ及び流路の更なる詳細が示されている。
図6A〜
図6Dでは、同様の構成要素は、
図5A及び
図5Bと同じ参照符号を用いて識別される。
図6Aは、ギヤポンプハウジング95及び上部ハウジング93、並びに植え込み装置内の流路の構成要素とモータ94とのアセンブリを示す組立分解図である。上部ハウジング93は、好ましくは、入口ニップル102、出口ニップル103、圧力センサ104a〜104d、マニホールド105、及びねじ106を収容する開口及び通路を備えるように成形又は機械加工することができる高強度プラスチック又は金属合金材料を含む。ニップル102及び103は、好ましくは、高強度生体適合性金属合金から機械加工され、出口ニップル103は、弾性ダックビル弁108を収容する通路107を更に備えている。出口ニップル103は、圧力センサ104aを収容する側面凹部109を更に備え、該圧力センサは、患者の膀胱(又は腹膜腔)内の圧力に対応する、膀胱カテーテルの入口端部の圧力を測定するように配置される。
【0098】
また、ここで
図6B及び
図6Cを参照すると、入口ニップル102は、開口110内に配設され、該開口110は、圧力センサ104bの開口111及びマニホールド105に結合される開口112を備えた上部ハウジング93に通路を形成する。圧力センサ104bは、腹膜腔内の圧力に対応する、腹膜カテーテルの出口端部の圧力を測定するように配置される。ダックビル弁107を含む出口ニップル103は、側面凹部108が開口114に整合して圧力センサ104aの電気接点へのアクセスを可能にするように上部ハウジング93の開口113内に配設される。開口113は、圧力センサ104cの開口116及びマニホールド105に結合される開口117を備えた通路115を形成する。上部ハウジング93は、好ましくは、圧力センサ104dを収容する開口119を備えた通路を形成する開口118を更に備えている。圧力センサ104dは、周囲圧力を測定し、このセンサの出力は、上記のように差圧を計算するために使用される。上部ハウジングは、入口ニップル102に接続される腹膜カテーテル及び出口ニップル103に接続される膀胱カテーテルを保持するコネクタ26(
図1Aを参照)を収容するノッチ120を更に備えている。上部ハウジング93は、マニホールド105を収容する凹部121、及び支持部材97(
図5Bを参照)が接続されるペグ122を更に備えている。
【0099】
図6A及び
図6Dに示されているように、マニホールド105は、好ましくは、流入路及び流出路を上部ハウジング93を介してギヤポンプに接続する2つの別個の流路(このような流路は
図5Bに88として示されている)を有する成形弾性要素を備えている。第1の通路は、入口124及び出口125を備え、第2の通路は、入口126及び出口127を備えている。入口124は、腹膜流路の開口112(
図6Cを参照)に接続され、出口127は、膀胱流路の開口117に接続される。マニホールド105は、上部ハウジング93の構造を単純にし、かつ複雑な非線形流路を備えた構成要素を鋳造又は機械加工する必要性をなくすことによって、植え込み装置の製造性を改善するように構成されている。任意のUVランプ86及び表面87(
図6A〜
図6Dには不図示)は、モータ94が液体をハウジング93内でポンプ輸送するときに該液体が十分に照射されるように、該ハウジング93内でマニホールド105に対して適切な位置に配設することができる。
【0100】
ここで
図6A、
図7A、及び
図7Bを参照すると、モータ94は、そのスプライン軸131が軸受132を通過するように相手ねじ130を用いてギヤポンプハウジング95に接続される。本発明のギヤポンプは、Oリングシール135及びプレート136によってギヤポンプハウジング95内に封入された互いに噛合するギヤ133及び134を備えている。ギヤポンプは自給式である。プレート136は、マニホールド105の出口125に結合する開口137及び入口126に結合する開口138を備えている。モータ94のスプライン軸131は、ギヤ133の開口139内に挿入されて該ギヤと浮動係合する。スプライン軸とギヤとの相互作用を、
図7Bを参照して以下に説明する。
【0101】
図7Aは、
図6Aのギヤポンプハウジング95の表側を示し、該ギヤハウジングは、ギヤ133及び134を収容する大きさの凹部140、並びにOリングシール135を収容する溝141を備えている。ギヤ133及び134は、スプライン軸131が開口142内に挿入されて、ギヤ133のキー付き開口139内で浮動するように凹部140内に収容されている。ギヤ133及び134は、凹部140の壁143に対して僅かな公差(例えば、0.2 mm)で該凹部内に収容されるような寸法であるが、液体の粘度が許す限り自由に回転する。プレート136の開口137及び138(
図6Aを参照)は、ギヤ133の時計回りの方向(上から見て)の回転により、開口137を介してギヤポンプハウジング内に液体を引き込む吸引力が発生し、次いで該液体が開口138から排出されるように、ギヤ133と134との接合部の上に位置している(
図7Aの点線で示されている)。同様に、モータ94がギヤ133を反時計回りの方向(上から見て)に駆動すると、ギヤポンプが、開口138を介してギヤポンプハウジング内に液体を引き込み、次いで該液体を開口137を介して排出する。従って逆流である。
【0102】
図7Bの簡易モデルに示されているように、ギヤ134は、軸を有していないが、代わりに凹部140のその部分内で自由に浮動する。スプライン軸131は、ギヤ133が該スプライン軸131に対して浮動するように、ギヤ133のキー付き開口139に係合する。有利なことに、この構成により、ポンプの効率及び製造性が改善され、製造上のばらつきの影響及び熱効果が軽減されることによりモータ94の電力消費が低減される。特に、製造公差又は熱膨張差から生じる、モータ軸の偏心又は真直度における僅かなばらつきにより、ギヤが凹部140の内面又はギヤ134に付着することはない。代わりに、軸131の回転中に、該軸131の表面の異なる各部分とキー付き開口139とが互いに接触して、回転トルクがギヤ133に継続的に伝達される。しかしながら、軸の偏心、製造公差のばらつき、又は構成要素の熱膨張差から生じるエネルギーを無駄にする力は低減される。加えて、この浮動係合により、ギヤが横方向に移動して粒子状物質を収容できるため、該粒子状物質がギヤと壁143との間に付着を生じさせるリスクが低減される。
【0103】
ギヤ133及び134は、噛合するローブ144を備え、該ローブは、係合並びに係合が解除されるときに、実質的にバイパス流が一切発生することなく液体を確実に移動させる。この方式では、ギヤ133及び134によって輸送される液体の量及び粘度を、モータ94内に配設されたホール効果センサによって検出されるモータの回転数を監視することによって計算することができる。
図7A及び
図7Bに更に示されているように、ギヤポンプハウジング95の凹部140は、互いに接続された実質的に円形の2つのローブを備えている。この構成により、ギヤ133及び134が、凹部の壁143に対して、及び互いに対して適切に維持される。好ましい実施態様では、2つのローブが交わるように形成された尖端部145が、各ローブの中心から引かれた半径に対して接線を成すように構成されている。有利なことに、このように尖端部を構成することにより、ギヤ133及び134が壁143に衝当する可能性が低くなる。
【0104】
(充電及び通信システム)
図8A、
図8B、及び
図9を参照して、本発明の充電及び通信システム150(
図1Aのシステム30に対応する)をここで詳細に説明される。好ましい一実施態様では、充電及び通信システム150は、ハンドピース151及びベース31を備えている(
図1Aを参照)。ベース31は、ハンドピース151を再充電するためのクレードルを提供し、好ましくは、該ハンドピースが該ベースに装着されたときにハンドピース151を充電するために通常の120 Vの電源を適切な直流電流に変換する変換器及び回路を備えている。別法では、ハンドピース151は、該ハンドピースのバッテリを充電するための回路、及び着脱式電源コードを備えることができる。この実施態様では、ハンドピース151は、充電のために通常の120 Vのコンセントに直接差し込むことができ、該ハンドピースを使用して植え込み装置を再充電する場合は、電源コードは取り外される。
【0105】
図9に示されているように、ハンドピース151は、制御装置152を備え、該制御装置は、不揮発性メモリ153(例えば、EEPROM又はフラッシュメモリのいずれか)、揮発性メモリ154、無線送受信機155、誘導回路156、バッテリ157、表示器158、及びディスプレイ159に接続されたマイクロコントローラーユニットのプロセッサとして例示されている。制御装置152、メモリ153及び154、並びに無線送受信機155は、1つのマイクロコントローラーユニット、例えば、Texas Instruments社, Dallas, Texasが販売するMPS430ファミリーのマイクロプロセッサに組み込むことができる。送受信機155は、植え込み装置20に対して情報を送受信するためのアンテナ160に接続されている。バッテリ157は、コネクタ161に接続され、該コネクタは、該バッテリを充電するためにベース31のコネクタに取り外し可能に接続される。ポート162、例えば、USBポート又は同等の無線回路は、ハンドピース151と監視及び制御システムとの間で情報が交換できるように制御装置152に接続されている。誘導回路156は、コイル163に接続されている。入力装置164は、好ましくは、多機能ボタンであり、同様に、患者が限られた数のコマンドを入力できるように制御装置152に接続されている。表示器158は、ハンドピースと植え込み装置との間で達成された電荷結合の状態を発光して示し、従って充電中の該ハンドピース151の該植え込み装置に対する位置の最適化に役立つ複数のLEDを例示的に備えている。好ましい一実施態様では、表示器158が省かれ、代わりとして、コイル163と84との結合による充電の質を示すバー表示がディスプレイ159に表示される。
【0106】
好ましい実施態様では、ハンドピース151は、対応する植え込み装置20とのみ通信するように、該植え込み装置の不揮発性メモリ71に保存された装置識別子に対応する不揮発性メモリ153に保存された装置識別子を備えている。診療所での使用のために構成可能なハンドピースは、植え込み装置に問い合わせて該装置の一意の装置識別子を要求して、監視及び制御システム40の装置識別子を患者の植え込み装置の識別子に変更して患者のハンドピースを模倣する能力を有し得る。この方法では、患者が診療所を訪れたときに自身のハンドピース151を持参するのを忘れたとしても、医師が植え込み装置の設定を調整することができる。
【0107】
制御装置152は、植え込み装置の通信及び充電を制御する不揮発性メモリ153に保存されたファームウエアを実行する。制御装置152はまた、診療所訪問中に、ポート162を介した監視及び制御システム40への後の再送信のために、植え込み装置からハンドピース151にアップロードされるデータ、例えば、イベントログを転送及び保存するように構成されている。別法では、ハンドピース151は、診療所訪問中に、診療所内の指定された無線アクセスポイントを認識して、監視及び制御システム40と無線通信するように構成することができる。更なる別法として、ベース31は、自動的にダイアルして、ハンドピース151に保存された情報、例えば、アラーム情報を安全な接続によって医師のウエブサイトにアップロードするための電話回線を備えることができる。
【0108】
制御装置152は、好ましくは、低出力動作モードを有し、かつ該制御装置が定期的に起動して植え込み装置と通信してデータを記録する又は充電機能を果たすように内部クロックを備えている。制御装置152は、好ましくは、植え込み装置の近傍に配置されると起動して通信及び充電機能を実行し、かつ入力装置164を用いて入力されたコマンドを送信するように構成されている。制御装置152は、植え込み装置から受信した情報を評価して、アラームメッセージをディスプレイ159上に作成するためのプログラムを更に有することができる。制御装置152はまた、入力装置164を用いて入力されたコマンドを植え込み装置に送信し、このようなコマンドの実行中、例えば、閉塞を解除するためのギヤポンプのブースト又はジョグ/振動動作中の植え込み装置の動作を監視するためのファームウエアも有することができる。加えて、制御装置152は、植え込み装置の再充電中の誘導回路156の動作、バッテリ74の充電状態の表示、並びにバッテリ157の充電の制御及び充電状態の情報の表示を含む、ハンドピース151の様々な電力操作を制御し、監視する。
【0109】
不揮発性メモリ153は、好ましくは、フラッシュメモリ又はEEPROMを含み、かつ関連する植え込み装置の一意装置識別子、制御装置152によって実行されるファームウエア、構成設定値、及び任意である、送受信機155及び/又は誘導回路156で実行されるコーディングを保存する。不揮発性メモリ153に保存されたファームウエア及び設定値データを、ポート162を介して制御/監視システム40によって供給される情報を用いて更新することができる。揮発性メモリ154は、制御装置152に接続され、該制御装置の動作を支援し、かつ植え込み装置20からアップロードされたデータ及びイベントログ情報を保存する。
【0110】
加えて、好ましい実施態様では、不揮発性メモリ153は、監視及び制御システムと通信しなくても、充電及び通信システムによる一部の最初のスタートアップ機能の実行を可能にするプログラミングを保存する。特に、メモリ153は、「自給式モード」の動作において、充電及び通信システムのみを用いて植え込み時に植え込み装置の試験を可能にするルーチンを含み得る。この場合、医師がポンプを手動で始動することができるボタンを設けることができ、ディスプレイ159を使用して、ポンプ輸送セッションが正常に行われているか否かをフィードバックする。また、充電及び通信システムのディスプレイ159を使用して、医師による植え込み装置、腹膜カテーテル、又は膀胱カテーテルの位置の調整に役立つように設計されたエラーメッセージを表示することができる。これらの機能は、好ましくは、植え込み装置の最初の植え込みの後に無効にされる。
【0111】
送受信機155は、好ましくは、例えば、ブルートゥース又はIEEE802.11無線規格に適合した無線周波数送受信機を含み、アンテナ160を介して、植え込み装置内に配設された送受信機回路76と双方向通信するように構成されている。送受信機155はまた、低出力動作モードを備えることができ、これにより定期的に起動して、受信メッセージを待ち受けし、関連する植え込み装置に割り当てられた一意装置識別子を含むメッセージのみに応答する。送受信機155は、好ましくは、植え込み装置に送信されるメッセージ又は該植え込み装置から受信されるメッセージを傍受又は偽造できないように暗号化ルーチンを利用する。
【0112】
誘導回路156は、コイル163に接続され、かつ植え込み装置のコイル84に誘導結合されて該植え込み装置のバッテリ74を再充電するように構成されている。一実施態様では、誘導回路156は、表示器158、好ましくは、コイル163と84との間の電磁結合の程度(従って、充電の質)を点灯して示し、これにより、ハンドピース151の植え込み装置に対する位置合わせを支援する複数のLEDに接続されている。好ましい一実施態様では、誘導コイル84及び163は、315 kHz以下の周波数で動作しているときに、35 mm離隔して良好な結合を確立することができる。植え込み装置が、任意である赤外線LED 83を備える実施態様では、充電及び通信システム30は、LED 83によって放出される赤外線光を検出する任意である赤外線センサ(不図示)を備えることができ、該赤外線センサは、コイル163と84との間の電磁結合を最適化するためにハンドピース151の位置合わせを更に支援し、これにより植え込み装置へのエネルギー伝送が改善される。
【0113】
本発明の一態様によると、制御装置152は、バッテリ74の誘導充電中に、定期的に植え込み装置と通信して、温度センサ78によって作成された温度データを回収してメモリ72に保存するように構成することができる。制御装置152は、バッテリの温度を分析し、所定閾値、例えば、体温よりも2℃未満高い温度よりも低く植え込み装置の温度を維持するために誘導回路163に供給される充電電力を調整するファームウエアを備えることができる。この閾値は、バッテリ、周囲の電子部品、及び機械部品の熱膨張を低減するため、例えば、モータ及びギヤポンプの構成要素の熱膨張を低減するため、並びにハウジングの下部92と上部93との間のシールに対する熱歪みを低減するために設定することができる。好ましい実施態様では、誘導コイル163に供給される電力は、植え込み装置内の測定温度に応じた充電間隔で高電力(例えば、120 mA)と低電力(例えば、40 mA)との間で循環される。
【0114】
植え込み装置の誘導回路75について上記説明されたように、誘導回路156は、任意に、ギヤポンプの閉塞を解除するために「ブースト」モード又はジョグモードで、誘導回路75及びバッテリ74を介して植え込み装置のモータ73に追加電力を伝達するように構成することができる。特に、例えば、腹水によって形成される閉塞によってモータ73が停止したというアラームが制御装置152に送信されると、患者に、閉塞を解除するために入力装置164を用いて誘導回路75からモータ73に所定時間、過電圧を加える選択肢を与えることができる。別法では、入力装置164の作動により、制御装置152が、モータ74を逆方向及び順方向に急速に作動させることによりギヤポンプをジョグ又は振動させて閉塞物を破壊するルーチンを実行するようにプロセッサ70に命令を出す。このような動作モードは、通常の動作中に予想されるよりも多くのエネルギーを消費し得るため、誘導回路156及び75は、このようなモータ動作のための追加エネルギーを、植え込み装置のバッテリ74を消耗させるのではなく、バッテリ157に蓄えられたエネルギーから直接供給するように構成することができる。
【0115】
バッテリ157は、好ましくは、例えば、最大3年、動作を持続することができるリチウムイオン電池又はリチウムポリマー電池を含む。バッテリ157は、ベース31から取り外され、植え込み装置の充電中に、制御装置152、送受信機155、誘導回路156、及び関連電子機器を作動させるためにハンドピース151に電力を供給する十分な容量を有する。好ましい実施態様では、バッテリ157は、約2〜4時間の間に、植え込み装置のバッテリ74を空の状態から満充電する十分な容量を有する。バッテリ157はまた、約2〜4時間以内に再充電できるべきである。日常の動作で液体700 mlを移動させる場合は、バッテリ157及び誘導回路156は、十分な電荷を誘導回路75を介してバッテリ74に転送して約30分以内にバッテリを再充電できることが期待される。バッテリ容量は、好ましくは、充電蓄積アルゴリズム(charge accumulator algorithm)を用いて制御装置152によって監視される。
【0116】
図8A及び
図8Bを参照すると、ハンドピース151は、好ましくは、多機能ボタン166(
図9の入力装置164に対応する)及びディスプレイ167(
図9のディスプレイ159に対応する)を有するハウジング165を備えている。複数のLED 168が、ハンドピース151の半透明部分の下に配設され、該複数のLEDは、
図9の表示器158に対応している。ポート169(
図9のポート162に対応する)により、ハンドピースを監視及び制御システム40に接続することができ、コネクタ170(
図9のコネクタ161に対応する)により、ハンドピースをベース31に接続してバッテリ157を再充電することができる。多機能ボタン166により、患者が、限られた数のコマンドを植え込み装置に入力することができる。ディスプレイ167、好ましくは、OLED又はLCDディスプレイにより、多機能ボタン166を用いて入力された所望のコマンドが受け取られたことを視認することができる。ディスプレイ167はまた、植え込み装置のバッテリ74の充電の状態及び段階、ハンドピース151のバッテリ157の充電の状態及び段階、無線通信の信号強度、充電の質、エラーメッセージ、並びにメンテナンスメッセージも表示することができる。ハウジング165の誘導コイル部分171は、誘導コイル163を収容する。
【0117】
LED 168は、点灯するとハウジング165の材料を通して視認することができ、好ましくは、各行に2つのLEDとして3行に配置される。充電中に、LEDが点灯して、例えば、誘導回路156からのエネルギー損失によって決定される誘導コイル163と84との間の電磁結合の程度を表示し、患者がこの表示を使用して、ハンドピース151を植え込み装置に対して正確に配置することができる。従って、例えば、低度の結合を2つのみのLEDの点灯に対応させ、中程度の結合を4つのLEDの点灯とし、好ましい結合の程度を6つ全てのLEDの点灯によって反映させることができる。この情報を用いて、患者は、植え込み装置が位置する領域の上にハンドピース151の位置を合わせて、ハンドピースにとって好ましい位置を得ることができ、これにより最短の再充電時間となる。好ましい一実施態様では、LED 168は、電荷結合の質を示す、ディスプレイ167上のアナログバー表示に置き換えられる。
【0118】
(監視及び制御システム)
図10を参照して、
図1Aの監視及び制御システムを実行するソフトウェアを以下に説明する。ソフトウェア180は、
図10に模式的に示されている多数の機能ブロックを含み、該多数の機能ブロックは、主ブロック184、イベントログブロック182、データダウンロードブロック183、構成セットアップブロック184、ユーザーインターフェイスブロック185、健康監視ブロック191及び感染症予測ブロック192を含むアラーム検出ブロック186、センサ校正ブロック187、ファームウエアアップグレードブロック188、装置識別子ブロック189、及び状態情報ブロック190を含む。該ソフトウェアは、好ましくは、C++言語で書かれ、オブジェクト指向形式を利用する。好ましい一実施態様では、ソフトウェアは、Microsoft Windows(登録商標)(Microsoft社, Redmond, Washingtonの登録商標)又はユニックスベースのオペレーティングシステム上で動作するように構成され、これらは、通常はデスクトップ及びラップトップコンピュータで使用される。監視及び制御システムのソフトウェア180を実行するコンピュータは、好ましくは、データポート、例えば、USBポート又は同等の無線接続を備え、これにより、充電及び通信システムのハンドピース151をポート169を介して接続することができる。別法では、上記説明されたように、コンピュータは、例えば、IEEE802.11規格に適合した無線カードを備えることができ、これにより、ハンドピース151が、ソフトウェア180を実行するコンピュータと無線通信することができる。更なる代替として、充電及び通信システムは、自動的にダイアルして、ハンドピース151からのデータ、例えば、アラームデータを担当医がアクセス可能な安全なウエブサイトにアップロードする電話回線を備えることができる。
【0119】
主ブロック184は、好ましくは、医師のコンピュータ上で実行される主ソフトウェアルーチンからなり、他の機能ブロックの全体の動作を制御する。主ブロック184により、医師は、ハンドピース151に接続されると、該ハンドピース151に保存されたイベントデータ及びアラーム情報を自身の診療所のコンピュータにダウンロードすることができ、かつ制御/監視ソフトウェア180が、植え込み装置の動作を直接制御することができる。主ブロックにより、医師は、ファームウエアの更新及び構成データを植え込み装置にアップロードすることもできる。
【0120】
イベントログブロック182は、植え込み装置から充電及び通信システムを介してダウンロードされた動作データの記録であり、例えば、ポンプの始動及び停止時間、モータ位置や、腹膜腔圧及び膀胱圧のセンサデータ、患者の体温、呼吸数又は液体温度、ポンプの出口圧力、湿度、ポンプ温度、バッテリ電流、バッテリ電圧、及びバッテリ状態などを含み得る。イベントログはまた、事象、例えば、ポンプの閉塞、ブーストモードもしくはジョグモードでの動作、アラーム、又は他の異常な状態の発生を含み得る。
【0121】
データダウンロードブロック183は、該ハンドピースが監視及び制御ソフトウェア180を実行するコンピュータに接続された後に、揮発性メモリ154からデータをダウンロードするハンドピース151との通信を制御するルーチンである。データダウンロードブロック183は、自動的に、又はユーザーインターフェイスブロック185を介した医師の誘導で、イベントログに保存されたデータのダウンロードを開始することができる。
【0122】
構成セットアップブロック184は、植え込み装置の動作を制御する不揮発性メモリ71に保存されたパラメーターを設定するルーチンである。間隔タイミングパラメーターは、例えば、起動して無線通信を待ち受ける前又はポンプの動作を制御する前に、プロセッサをスリープモードにどれくらいの期間維持するかを決定することができる。間隔タイミングパラメーターは、例えば、液体を腹膜から膀胱に移動させるポンプ動作の期間、並びに植え込み装置、腹膜カテーテル、及び膀胱カテーテルの閉塞を防止する定期的なチック動作の間の間隔を制御することができる。監視及び制御ソフトウェア180から植え込み装置に送信される間隔タイミング設定は、イベントデータがいつ、そしてどの程度の頻度で不揮発性メモリ71に書き込まれるか決定し、充電及び通信システムのハンドピース151のプロセッサ152によって実行されるファームウエアが使用するタイミングパラメーターを設定することもできる。ブロック184はまた、医師が使用して、プロセッサ70及びモータ73の動作に対する限界値に関する、不揮発性メモリ71に保存されたパラメーターを設定することができる。これらの値は、腹膜カテーテル及び膀胱カテーテルの最小圧力及び最大圧力、充電中の最大温度差、ポンプが動作できる時間、及びポンプが動作できない時間などを含み得る。ブロック184によって設定される限界値は、ハンドピース151のプロセッサ152の動作を制御するパラメーターも設定する。ブロック184はまた、プロセッサ70及びモータ73の動作の制御に関連した、植え込み装置の不揮発性メモリ71に保存されたパラメーターを設定することもできる。これらの値は、輸送する液体の目標とする1日の量、1回のポンプ輸送セッションで輸送される液体の量、モータ速度、及び1回のポンプ輸送セッションの期間を含み得る。ブロック184はまた、ハンドピース151に接続されたときのブーストモードでの動作中、及び植え込み装置がバッテリ74のみで動作するときの振動/ジョグモードでの動作中のモータ73の動作パラメーターを指定することができる。このようなパラメーターは、モータの速度及び電圧、順方向と逆方向との間で交互して動作するときのモータ軸の回転の期間/数などを含み得る。
【0123】
ユーザーインターフェイスブロック185は、データダウンロードブロック183を介して監視及び制御システム及び植え込み装置から回収された情報の表示を制御し、医師による評価のために直感的に理解しやすい形式で該情報を提示する。
図11〜
図15を参照して以下に説明されるように、このような情報は、植え込み装置の状態、充電/制御システムの状態、測定圧力、1回のポンプ輸送セッションで又は1日に輸送される液体の量などを含み得る。ユーザーインターフェイスブロック185は、医師が情報を入力して、ブロック184に関して上記説明された間隔タイミングパラメーター、限界値パラメーター、及びポンプの動作パラメーターを設定することができるユーザーインターフェイス画面も作成する。
【0124】
アラーム検出ブロック186は、植え込み装置又は充電及び通信システムから回収されたデータを評価し、医師の注意を向けるために異常な状態をフラグ立てするルーチンを含み得る。例えば、アラーム検出ブロック186は、健康監視ブロック191を含み得、該健康監視ブロック191は、透析液が患者の腹膜に供給される量、時間、及び/又は頻度を変更する根拠となり得る該患者の健康のあらゆる変化を医師に警告するように構成されている。例えば、植え込み装置20によって供給されるデータが、毒素又は老廃物の蓄積を示す場合は、医師は、透析液が患者の腹膜に供給され、そして該腹膜から除去される量、時間、及び/又は頻度を増やすことができる。又は、植え込み装置20によって供給されるデータが、比較的少量の毒素又は老廃物を示す場合は、医師は、透析液が患者の腹膜に供給され、そして該腹膜から除去される量、時間、及び/又は頻度を減らすことができる。
【0125】
アラーム検出ブロック186は、これに加えて、又は別法として、感染症予測ブロック192を含み得、該感染症予測ブロック192は、例えば、所定閾値を上回る患者の体温の1回以上の上昇、所定閾値を上回る患者の呼吸数の上昇、及び/又は所定閾値を上回る液体の増加に基づいて感染症を予測又は検出するように構成されている。このようなフラグは、ユーザーインターフェイスブロック185によって示される表示器の状態を変更することによって、又はユーザーインターフェイスブロック185を介して患者の体温、呼吸数、もしくは液体の粘度の上昇についての特定の情報を医師に提示することによって医師に伝達することができる。
【0126】
センサ校正ブロック187は、例えば、経年変化又は湿度の変化による、植え込み装置に使用されているセンサ70、78〜81のドリフトを試験又は測定するルーチンを含み得る。次いで、ブロック187は、センサからの測定データを補正するためのオフセット値を計算して、この情報を不揮発性メモリ71に保存するために植え込み装置に送信する。例えば、圧力センサ104a〜104dは、経年変化又は温度変化によるドリフトを受け得る。従って、ブロック187は、オフセット値を計算することができ、次いで該オフセット値を、このようなドリフトを考慮するために植え込み装置に送信して保存する。
【0127】
ファームウエアアップグレードブロック188は、植え込み装置にインストールされたプロセッサ又はモータ制御装置のファームウエア及び/又は充電及び通信システムのプロセッサのファームウエアのバージョン番号をチェックし、アップグレードされたファームウエアが存在する否かを確認するルーチンを含み得る。存在する場合は、該ルーチンは、医師に知らせることができ、これにより医師は、不揮発性メモリ71に保存するために植え込み装置に修正ファームウエアをダウンロードする、又は不揮発性メモリ153に保存するために充電及び通信システムに修正ファームウエアをダウンロードすることができる。
【0128】
装置識別子ブロック189は、不揮発性メモリ71に保存されている植え込み装置の一意識別子、及び監視及び制御システムが充電及び通信システムを介して植え込み装置に接続されたときにこのデータを読み込むルーチンからなる。上記説明されたように、装置識別子を植え込み装置が使用して、充電及び通信システムから受信した無線通信がその特定の植え込み装置用であるかを確認する。同様に、この情報を充電及び通信システムのハンドピース151が使用して、受信メッセージがそのハンドピースに関連した植え込み装置によって作成されたものであるか否かを決定する。最後に、装置識別子情報を監視及び制御ソフトウェア180が使用して、ハンドピース及び植え込み装置が整合したセットを構成するかを確認する。
【0129】
状態情報ブロック190は、ハンドピース151を介して接続されると、植え込み装置に問い合わせて、植え込み装置及び/又はハンドピース151から現在の状態データ(current status date)を回収するルーチンを含む。このような情報は、例えば、バッテリ状態、植え込み装置及びハンドピースの内部クロックの日付及び時刻、現在使用中のファームウエア及びハードウエアのバージョン管理情報、並びにセンサデータを含み得る。
【0130】
ここで
図11〜
図15を参照して、ソフトウェア180のユーザーインターフェイスブロック187によって作成された、腹水治療システム用の例示的な画面を説明される。
図11は、監視及び制御ソフトウェア180を実行している医師に示される主画面200を示している。主画面200は、
図10のブロック190に対応するルーチンによって植え込み装置及び充電及び通信システムから回収した状態情報を表示する状態領域を有する。より詳細には、状態領域は、充電及び通信システム用の状態領域201(「スマート充電器」と呼ばれる)、及び植え込み装置用の状態領域202(「ALFAポンプ」と呼ばれる)を含む。各状態領域は、チェックマークによって示される、各システムが正常に動作しているか否かを示すアイコン、各システムの装置識別子、及び各システムが接続されている又は作動しているか否かを含む。アラーム検出ブロック186によって評価されるパラメーターが仕様範囲外であると、アイコンは、代わりに警告記号を含み得る。メニューバー203は、各メニューアイテムを強調表示することによって医師が移動できる様々な画面を示す。作業スペース領域204は、状態領域の下側に設けられ、選択されるメニューアイテムによって変化する表示を含む。作業スペース領域204の下側には、ナビゲーションパネル205が表示され、該ナビゲーションパネルは、ソフトウェア180のバージョン番号、及び作業スペース領域204の表示をリフレッシュすることができるラジオボタンを含む。
【0131】
図11では、メニューバー203において、メニューアイテム「情報」のサブメニューアイテム「植え込み装置」が強調表示されている。このメニューアイテムの選択では、作業スペース領域204は、植え込み装置についてのバッテリ状態ウィンドウ204a、測定圧力ウィンドウ204b、及びファームウエアバージョン管理ウィンドウ204cを例示的に示している。バッテリ状態ウィンドウ204aは、バッテリ74の残量を表すアイコンを含み、かつ満充電、3/4充電、1/2充電、1/4充電として表しても良いし、又はバッテリがほぼ空の状態であるというアラームを示しても良い。ウィンドウ204aの時間成分は、植え込み装置から受信したときの現在の時刻を示し、日付は、日/月/年の形式で表され、時刻は、24時制に基づいた時/分/秒の形式で表される。測定圧力ウィンドウ204bは、膀胱圧、腹膜腔圧、周囲圧力をそれぞれ、センサ104a、104b、及び104d(
図6Aを参照)で測定されたmBar単位で表示する。バージョン管理ウィンドウ204cは、プロセッサ70のファームウエアバージョン、モータ制御装置のバージョン、及び植え込み装置のハードウエアバージョンを示す。患者パラメーターウィンドウ204dは、患者の体温、呼吸数、及び液体粘度を表示する。植え込み装置が、他のタイプのセンサ、例えば、液体中の毒素及び/又は老廃物のレベルを測定するセンサを含む場合は、このようなセンサによって測定されるパラメーターを、ウィンドウ204dに表示することができることに留意されたい。
【0132】
アラーム状態ウィンドウ204eは、患者の健康の変化、例えば、起こり得る感染症の発症、又は患者の肝臓の健康の改善もしくは悪化を示唆し得るパラメーターのあらゆる変化を表示する(
図10のブロック191及び192)。例えば、例示されているように、アラーム状態ウィンドウ204eは、患者の体温が異常に高いことを医師に知らせることができ、これにより医師が、感染症の可能性について患者を経過観察することができる。一部の実施態様では、ウィンドウ204b、204d、及び/又は204eに表示される情報に基づいて、医師が、例えば、
図14を参照して以下に更に説明されるインターフェイスを用いて、ポンプの動作パラメーターを調整することができる。
【0133】
図12を参照すると、
図11の「スマート充電器」サブメニューアイテムの選択に対応する画面表示206が示されている。
図12は、
図11を参照して上記説明された充電及び通信システム用の状態領域201、植え込み装置用の状態領域202、メニューバー203、作業スペース領域204、及びナビゲーションパネル205を含む。画面表示206は、「スマート充電器」サブメニューアイテムが強調表示されている点で画面表示200とは異なり、作業スペース領域204は、充電/制御システムについてのバッテリ状態ウィンドウ207a及びバージョン管理ウィンドウ207bを表示している。バッテリ状態ウィンドウ207aは、バッテリ157の残量を表すアイコンを含み、かつ満充電、3/4充電、1/2充電、1/4充電として表しても良いし、又はバッテリがほぼ空の状態であるというアラームを示しても良い。ウィンドウ207aの時間成分は、ハンドピース151から受信したときの現在の時刻を示し、日付は、日/月/年の形式で表され、時刻は、24時制に基づいた時/分/秒の形式で表される。バージョン管理ウィンドウ207bは、プロセッサ152のファームウエアバージョン、及び充電/制御システムのハードウエアバージョンを示す。
【0134】
ここで
図13を参照すると、
図11の「ダウンロード」メニューアイテム及び「ログファイル」サブメニューアイテムの選択に対応する画面表示208が示され、ソフトウェア180のブロック183の機能が実行される。
図13は、それぞれが上記説明された充電及び通信システムの状態領域201、植え込み装置の状態領域202、メニューバー203、作業スペース領域204、及びナビゲーションパネル205を含む。画面表示208は、「ログファイル」サブメニューアイテムが強調表示されている点で「情報」画面表示とは異なり、作業スペース領域204は、ダウンロード進行ウィンドウ209a及び保存経路ウィンドウ209bを表示している。ウィンドウ209aは、充電及び通信システムを介して植え込み装置からイベントログをダウンロードすることができるディレクトリの経路を含む。ウィンドウ209aはまた、イベントログがダウンロードされるディレクトリ経路を医師が選択できる「ダウンロードホルダを開く」ラジオボタン、及びダウンロードされたデータの量を反映するべく更新されるプログレスバーも含む。ウィンドウ209bは、作動させてイベントログをウィンドウ209aの指定された経路にダウンロードすることができるラジオボタンを含み、かつダウンロード処理を中断する「中断」ラジオボタンも含む。
【0135】
図14は、
図11の「ポンプ設定」メニューアイテム及び「液体輸送」サブメニューアイテムの選択に対応する画面表示210の例示的な表現であり、ソフトウェア180のブロック184及び190の機能が実行される。
図14は、それぞれが上記説明された充電及び通信システムの状態領域201、植え込み装置の状態領域202、メニューバー203、作業スペース領域204、及びナビゲーションパネル205を含む。画面表示210は、「液体輸送」サブメニューアイテムが強調表示されている点で「情報」画面表示とは異なり、作業スペース領域204は、セッション量ウィンドウ211a、液体輸送プログラムウィンドウ211b、1日の最小量ウィンドウ211c、圧力ウィンドウ211d、並びにウィンドウ211a、211b、及び211dで入力された値を植え込み装置の不揮発性メモリ71に送信して保存することができるナビゲーションパネル205内のラジオボタンを含む。
【0136】
セッション量ウィンドウ211aは、植え込み装置によってポンプ輸送される1日の最大量、ポンプ輸送セッション間の時間間隔、ポンプを作動させることができる1日の回数、1日の合計ポンプ動作時間、及び1回のポンプ輸送セッションのセッション量についての現在の設定を表示する。ウィンドウ211aに表示される1日の最大量は、ポンプが24時間の間に腹膜及び/又は膀胱に輸送する液体の上限に対応するが、植え込み装置が低い液体の状態を検出した場合は、ポンプ輸送される実際の量を低くすることができる。医師は、認識された患者の健康に基づいてこの値を最初に設定することができ、該値は、例えば、20 ml〜4000 mlの許容範囲を有し得る。ウィンドウ211aに表示されるドウェル時間により、医師が、腹膜透析液が腹膜内に維持される時間を設定することができる。ウィンドウ211aに表示される時間間隔により、医師が、腹膜透析液が腹膜に導入されて膀胱に送られる頻度(及びタンクから該腹膜に送られる頻度)を設定することができる。1日の量及び時間間隔を、構成セットアップルーチン(
図10のブロック184)が使用してセッション量を計算し、該セッション量は、好ましくは、500 ml〜2,500 mlの範囲である。ウィンドウ211aに表示される、ポンプが作動できる時間区間を、任意に使用して植え込み装置が液体を膀胱に確実に移動させることができる時間枠を定義することができる:これらの時間区間以外では、植え込み装置は、液体を移動させることができないが、上記説明されたポンプチック動作を実行して定期的にギヤ回転させてギヤの動きが悪くなるのを防止することができる。認識された患者の健康に基づいて、医師は、ある状況では健康の維持が利便性を上回り得るため、1日中又は夜間中、ポンプが動作できるように時間区間を設定することができる。ウィンドウ211aに表示される1日のポンプ作動時間は、時間区間ボックスで入力される時間区間の総計であるため、読み取り専用形式で示される。最後に、ウィンドウ211aに表示されるセッション量は、1回のポンプ輸送セッションで膀胱に移送される液体の量としてブロック183によって計算される。
【0137】
液体輸送プログラムウィンドウ211bは、ソフトウェア180のブロック184を用いたパラメーターセットに基づいて植え込み装置のポンプの動作を制御するプログラムの状態を表示する。ポンプの動作が何らかの理由で停止しなければならない場合は、ウィンドウ211bの「オフ」ボタンをクリックすることによって液体輸送プログラムを停止することができ、これにより、手動でオンに切り替えられるまでポンプはポンプ輸送を停止する。一実施態様では、液体輸送プログラムは、ウィンドウ211bの「オン」ボタンを押圧することによって再びスイッチをオンにすることができる。植え込み装置は、好ましくは、ポンプのスイッチが切られた状態で植え込まれるため、医師又は外科医は、植え込み装置が最初に植え込まれた後に、ウィンドウ211bを使用して液体輸送プログラムを作動させることができる。
【0138】
1日の最小量ウィンドウ211cは、植え込み装置によって膀胱にポンプ輸送される液体の予想量を表示し、該予想量は、構成セットアップルーチンによって、ウィンドウ211aで入力される規定時間区間の長さ及び時間間隔のタイミングに基づいて、セッション量に1日のセッション回数を乗じて計算される。
【0139】
図14の圧力ウィンドウ211dにより、医師が、植え込みポンプの動作を制御するために使用される最大膀胱圧及び最小腹膜腔圧の値を入力することができる。従って、例えば、プロセッサ70は、圧力センサによって検出される膀胱圧がウィンドウ211dの指定された値を超えると、モータ73に命令して、現在のポンプ輸送セッションを停止する、又はウィンドウ211aで確認できる時間区間中の計画されたポンプ輸送セッションをスキップする。同様に、プロセッサ70は、圧力センサによって検出される腹膜腔圧がウィンドウ211dの指定された値よりも低いと、モータ73に命令して、現在のポンプ輸送セッションを停止する、又はウィンドウ211aで確認できる時間区間中の計画されたポンプ輸送セッションをスキップする。上記説明された要領で動作するように構成されている場合は、植え込み装置は、患者の膀胱の過度の膨張による患者の不快感をもたらすことも、腹膜腔を過度に乾燥させることもない。
【0140】
ここで
図15を参照すると、
図11の「試験」メニューアイテム及び「手動試験運転」サブメニューアイテムの選択に対応する画面表示212の例示的な表現が示されている。
図15は、それぞれが上記説明された充電及び通信システムの状態領域201、植え込み装置の状態領域202、メニューバー203、作業スペース領域204、及びナビゲーションパネル205を含む。画面表示212は、「手動試験運転」サブメニューアイテムが強調表示されている点で「情報」画面表示とは異なり、作業スペース領域204が、手動ポンプサイクルウィンドウ213を含む。手動ポンプサイクルウィンドウ213は、ラジオボタン「試験開始」を含み、該ラジオボタン「試験開始」は、充電及び通信システムを介して植え込み装置にコマンドを送信して、プロセッサ70がポンプを所定時間の間、例えば、数秒間作動させるようにする。プロセッサ70は、モータ73のホール効果センサからの位置データ、及び圧力センサ104c及び104dによる測定圧力データを受信する。プロセッサ70は、セッション量を計算し、その情報を充電及び通信システムを介してソフトウェア10に送り返し、該ソフトウェアが、測定データを目標セッション量と比較して、試験結果、例えば、達成された目標セッション量のパーセンテージ又は合格/不合格のアイコンを提示する。測定セッション量、目標セッション量、及び試験結果は、ウィンドウ213に表示される。
【0141】
本発明の様々な例示的な実施態様を上記説明されたが、当業者であれば、本発明から逸脱することなく、様々な変更及び改良が本発明の範囲内で可能であることを理解できよう。例えば、システム10は、患者の肉体的及び/又は精神的な健康を評価するように構成された追加の装置、例えば、患者の血中の毒素及び/又は老廃物、例えば、アンモニア、c反応性タンパク質、血漿レニン、血清ナトリウム、血清クレアチニン、プロトロンビン時間、及び/又はビリルビンのレベルの低下を測定するハンドヘルドバイオセンサを含むように変更することができる。又は、例えば、システム10は、対象の心理学的健康又は電気生理学的活性を測定する心理試験で患者の状態を示すハンドヘルドもしくはコンピュータベースの装置を含むように変更することができる。このような装置は、植え込み装置20の動作パラメーターを調整する潜在的な必要性及び患者の健康の評価に医師が使用するために監視及び制御システム40に結果を無線送信するように構成することができる。添付の特許請求の範囲は、本発明の真の概念及び範囲内に含まれる全てのこのような変化及び変更を含むものとする。