(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電気化学的方法が、光電気化学的方法であり、かつ、前記電磁エネルギー源が、200nm〜900nmの間の波長を有する可視又は不可視光エネルギーである、請求項8に記載の電気化学的方法。
【背景技術】
【0002】
グルコースは一般式C
6H
12O
6を有する単糖である。グルコースは、食物連鎖の基本的な分子であり、エネルギーの主要な源として多くの生物によって摂取される。グルコースの生産をもたらす1つのよく研究されたプロセスは、植物の光合成である。
【0003】
一般的には、光合成は、光エネルギーを化学エネルギーに変換するプロセスである。より具体的には、光合成プロセスを通して、植物は光エネルギーを使用して二酸化炭素(CO
2)及び水(H
2O)を、酸素(O
2)及びグルコースに変換する。このプロセスに対する別の重要な成分は、クロロフィルとして知られる色素である。クロロフィルは、光エネルギー又は光子を吸収することにより、光合成を開始する。吸収されたすべての光子のために、クロロフィルは1つの電子を失い、電子の流れを創りだし、それは続いて、水素イオン又はプロトン(H
+)及びO
2への水の分解を触媒作用するために必要なエネルギーを生産する。得られたプロトン勾配は、アデノシン三リン酸(ATP)の形で化学エネルギーを発生させるために使用される。その後、この化学エネルギーは、二酸化炭素及び水をグルコースに変換するために使用される。
【0004】
クロロフィルと同様に、メラニンも色素として分類される。正確な構造は完全には解明されていないが、メラニンは、窒素、酸素、水素及び炭素から構成されている。メラニンは、自然界に遍在し、メラニン合成の方法も、また、文献で公知である。長年にわたり、メラニンは、2%硫酸銅溶液のそれと同等の日焼け防止指数が低い単純な日焼け止め剤と考えられている以外、それに起因するいかなる生物学的又は生理学的機能を有していなかった。メラニンは、ほぼいかなる波長のエネルギーも吸収することができるので、最も色が濃い分子と考えられていたが、しかし、それは、いかなるエネルギーも放射しているとは見えなかった。これは、メラニンに特有なものであり、エネルギーを吸収することができる他の化合物、特に、色素は、吸収されたエネルギーの一部を放出するので、熱力学法則に矛盾していた。それ故、メラニンの電子特性は、かなり長い間、注目されていた。しかし、メラニンは、長い間、公知の最も安定した化合物の1つであり、いかなる化学反応も触媒作用することができないと思われた。
【0005】
最近、エネルギーを吸収し、吸収したエネルギーを活用して水分子を分解し、その後、再形成するという、メラニンの固有の特性が発見された。このように、メラニンは、可視及び不可視の光エネルギーを含む全ての波長の電磁エネルギーを吸収し、そして水の解離及びその結果としての再形成によって、この吸収したエネルギーを放散する。メラニン、及びメラニンの類似体、前駆体、誘導体、又は変異体を用いて、水を水素及び酸素に分解するための光電気化学プロセスは、米国特許出願公開第2011/0244345号に記載されている。
【0006】
いかなる理論に拘束されることを望まないが、メラニン内の反応は、以下のスキームIに従って起こると考えられる:
【化1】
光エネルギー(可視または不可視)などの電磁エネルギーの吸収時に、メラニンは、2原子水素(H
2)、2原子酸素(O
2)及び電子(e
-)への水の解離を触媒作用する。水素と酸素への水の分解は、エネルギーを消費するが、反応は可逆的であり、そして逆プロセスにおいて、水分子を再形成するために、酸素原子の2原子水素での還元が、エネルギーを発生する。
【0007】
このように、メラニンは、植物がクロロフィルを使って光合成の間に光エネルギーを化学エネルギーに変換するプロセスと類似のプロセスで、光エネルギーを化学エネルギーへ変換することができる。従って、アナロジーにより、我々は、このプロセスを「ヒト光合成」と命名した。しかし、メラニンにより行われる水の分解反応とクロロフィルにより行われるそれとの間に、少なくとも2つの重要な差異がある。第一は、クロロフィルが水分子を再形成する逆プロセスを触媒作用することができないということである。第二は、クロロフィルによる水の分解反応が、生体細胞内で、及び、400nm〜700nm範囲の波長を有する可視光でのみ起こり得ることである。このように、その後のグルコースの生成は、また、生体細胞内でのみ起こり得る。対照的に、メラニンは、生体細胞外で、いかなる形態の電磁エネルギー、特に、200nm〜900nmの範囲の波長を有する光エネルギー(可視または不可視)を用いて、水分子を分解し、再形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書に参照される全ての特許及び刊行物は、参照することにより、本明細書に組み込まれる。特に定義されない限り、本明細書に使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が関する当業者に一般的に理解されているものと同一の意味を有する。さもなければ、本明細書に使用される特定の用語は、本明細書に記載される意味を有する。
【0016】
なお、本明細書及び添付の特許請求範囲に使用されるように、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈で明確に指示しない限り、複数も含む。
【0017】
本明細書で使われるように、用語「水の電気分解」は、水分子を酸素及び水素に分解するプロセスを言う。本明細書で使われるように、「水を電気分解する物質」は、水分子を酸素と水素に分解することができる物質を言う。本発明の実施形態によると、メラニン(天然及び合成)、メラニン前駆体、メラニン誘導体、メラニンの類似体、及びメラニン変異体を含むメラニン物質は、水を電気分解する物質である。
【0018】
本明細書で使われるように、用語「メラニン物質」は、メラニン、メラニン前駆体、メラニン誘導体、メラニン類似体、並びに、天然及び合成メラニンを含むメラニン変異体、ユーメラニン、フェオメラニン、神経メラニン、ポリヒドロキシインドール、ユーメラニン、アロメラニン、フミン酸、フラーレン、グラファイト、ポリインドールキノン、アセチレンブラック、ピロールブラック、インドールブラック、ベンゼンブラック、チオフェンブラック、アニリンブラック、水和物形態のポリキノン、セピオメラニン、ドーパブラック、ドーパミンブラック、アドレナリンブラック、カテコールブラック、4−アミノカテコールブラック、単純(simple)な直鎖状脂肪族若しくは芳香族;又はそれらのフェノールとしての前駆体、アミノフェノール、又はジフェノール、インドールポリフェノール、キノン、セミキノン若しくはヒドロキノン、L−チロシン、L−ドーパミン、モルホリン、o−ベンゾキノン、ジモルホリン、ポルフィリンブラック、プテリンブラック、及びオンモクロームブラックを言う。
【0019】
本発明の実施態様によると、グルコースを生産するための電気化学的方法は、少なくとも1つのメラニン物質及び電磁気エネルギー源の存在下で、水とそれに溶解したCO
2ガスを反応させることを含む。本発明の電気化学的方法に使用するのに適した電磁エネルギーの形態には、可視及び不可視光、γ線、X線、紫外線、赤外線、マイクロ波及び電波が挙げられる。好ましい実施態様によると、本発明に記載の電気化学的方法は、光電気化学的方法であり、ここで、電磁エネルギー源は、可視光及び不可視(紫外及び赤外)光から選択される光電気エネルギーである。
【0020】
本発明の実施態様によると、少なくとも1つのメラニン物質は、メラニン、メラニン前駆体、メラニン誘導体、メラニン類似体、及びメラニン変異体から選択される。好ましい実施態様においては、少なくとも1つのメラニン物質は、天然メラニン及び合成メラニンから選択される。
【0021】
本発明の実施態様によると、メラニンは、L−チロシンなどのメラニンのアミノ酸前駆体から合成することができる。しかし、メラニン物質は、メラニン物質を化学的に合成し、及び、メラニン物質を植物及び動物などの天然源から単離することを含む、本開示の分野で公知のいかなる方法によっても得ることができる。
【0022】
本発明の別の実施態様によると、電気化学的方法は、少なくとも1つのメラニンデバイスの存在下で行うことができる。メラニンデバイスは、メラニン物質が基体上又はその中で保持されるように、基体と少なくとも1つのメラニン物質で構成される。メラニン物質は基体にわたって分散し又は基体上に吸着することができる。好ましくは、基体は、光エネルギーの形態で、増加した電磁エネルギーの移動、及びその結果増加したグルコース生産を可能にするために透明である。メラニンデバイスは、1タイプのメラニン物質、又は1タイプ以上のメラニン物質を含むことができる。例えば、本発明で使用するメラニンデバイスは、メラニン及びユーメラニンを含むことができる。本発明の別の実施態様によると、別タイプのメラニン物質を含む各デバイスと一緒に、1つ以上のメラニンデバイスを使用することができる。例えば、メラニンを含む第一のメラニンデバイス、及びユーメラニンを含む第二のメラニンデバイスは、両方とも、本発明に記載のグルコースを生産する方法で使用することができる。
【0023】
本発明の電気化学的方法でメラニンデバイスを使用する目的は、メラニン物質が、水に溶解し、水を通して拡散し、又は水全体に亘って自由に漂うことを防ぐことである。メラニンデバイスは、水がその透明性を保持し、水や二酸化炭素を補給している間、又はグルコースを除去している間、メラニンが失われないことを保証する。このように、メラニン物質は、メラニンデバイスが水に溶解せず水と接触したままであることを可能になる。メラニンデバイスの基体は、それに限定されないが、シリカ、プラスチック及びガラスを含むどのような不活性物質であってもよい。メラニンデバイスは、例えば、シリカの接着混合物(cementing mixture)を水性メラニン溶液と組み合わせることにより作成できるメラニン/シリカプレートであり得る。好ましくは、本発明で使用するメラニンデバイスは、シリカと混合したメラニンである。
【0024】
本発明の実施形態によれば、メラニンデバイスは、それに限定されないが、ロッド(円筒状)、板、球、又は立方体形状を含む如何なるサイズ又は形状をも取ることできる。少なくとも1つのメラニンデバイスが使用できるが、メラニンデバイスの数又はメラニンデバイスのサイズ及び形状は、何ら限定されるものではない。反応速度は、メラニン物質のサイズ、形状、表面積、量、及び反応で使用されるメラニンデバイスの数により制御される。好ましい実施態様によると、メラニンデバイスのサイズ、形状及び数は、電気化学的方法の所望の反応速度に基づき選択される。例えば、多くのメラニンデバイスを使用することは、グルコース生産のより速い速度をもたらす。別の例示的な例として、メラニンデバイスにおける多くの量のメラニン物質は、グルコース生産の速い速度をもたらすであろう。
【0025】
メラニン物質が、電磁エネルギーを吸収し、水のH
2及びO
2への電気分解を触媒作用するとき、本発明の実施形態に記載の電気化学方法が開始される。本発明の一実施形態(バッチプロセス)によれば、二酸化炭素ガスは、光電気化学方法の開始より前に、一度だけ水に溶解する。本発明の別の実施形態(連続プロセス)によれば、光電気化学的方法は、更に、連続的に、それが消費され、グルコースに変換されるにつれて、連続的にCO
2ガスを水に補給するために、CO
2ガスを水に溶解させることを含む。連続的にCO
2ガスを水に溶解させるためのいかなる適切な方法も用いることができる。例えば、CO
2ガスを、気体ポンプに接続されたパイプまたはチューブにより、連続的に水に注入することができる。パイプ又はチューブは、それに限定されないが、ポリエチレンを含むCO
2ガスに対して、不活性で、そして、実質的に不透過性の如何なる材料ででも作ることができる。
【0026】
本発明の特定の実施態様によれば、グルコースを生産する方法は、光電気エネルギー源を必要とする光電気化学的方法である。好ましくは、光電気エネルギー源は、200nm〜900nmの範囲の波長を有する可視光又は不可視光のいずれかである。より好ましい実施形態おいて、光電気エネルギー源は自然光である。
【0027】
本発明の別の実施態様によると、電気化学的方法は、室温(約25℃)で、好ましくは、0℃〜25℃の範囲の室温以下の温度で、より好ましくは、2℃〜8℃の範囲の温度で行うことができる。低温は、水分子の分解及び再形成の回転率を減らすことができるが、低温でのインキュベーションは、プロセスの開始時に導入されたCO
2の気泡を保持し、そして、CO
2ガスを連続的に水に注入する必要がなくなる。このように、低温を使うことは、電気化学的方法を技術的により簡単に実行させる主要な利点を有している。
【0028】
本発明に記載の電気化学的方法は、更に、二酸化炭素、水及び少なくとも1つのメラニン物質の反応から得られたグルコースを単離する工程を含むことができる。例示的な例として、グルコースは、水性反応液を蒸発させることにより単離することができる。しかし、グルコースは、例えば、分光光度法により、単離されることなく、同定し、定量することができる。
【0029】
本発明は、また、C
nH
2nO
n種を生産するための電気化学的方法に関し、ここで、nは整数である。好ましくは、C
nH
2nO
n種がグルコース前駆体又はそれ自体グルコースであるように、nは、1、2、3、4、5又は6である。本発明の実施態様によると、C
nH
2nO
n種を生産するための電気化学的方法は、グルコースを生産するために使用されるものと同一であり得て、そして、少なくとも1つのメラニン物質及び電磁エネルギー源の存在下で、水とその中に溶解したCO
2ガスを反応させることを含む。好ましくは、電磁エネルギー源は、可視光及び不可視光(紫外線及び赤外線)から選択された光電気エネルギーである。本発明に記載のC
nH
2nO
n種を生産するための方法の他の実施態様は、本発明のグルコースを生産するための電気化学的方法について記載したものと同一であり得る。好ましくは、C
nH
2nO
n種を生産するための電気化学的方法は、光電気化学的方法である。
【0030】
メラニンが、本発明の実施態様に記載の電気化学的方法で、CO
2及び水から、グルコース、グルコース前駆体及び他のC
nH
2nO
n種を生産するために電磁エネルギーを使用することができる正確なメカニズムは、まだ十分に理解されていない。いかなる理論に拘束されることを望まないが、メラニンが電磁エネルギーを吸収し、低エネルギー電子の高エネルギー電子への変換を促進すると信じられている。高エネルギー電子は、メラニン物質内の可動電子キャリアーにより移動される。この電子移動は、エネルギーを放出し、4つの高エネルギー電子の放出と一緒に2原子水素(H
2)及び2原子酸素(O
2)への水の分解を開始するのに十分なプロトン勾配を確立する。このように、メラニンは、H
2及びO
2の分子、並びに、拡散により制御された、すべての方向への高エネルギー電子の流れを放出する。放出された水素及び高エネルギー電子は、異なった種類のエネルギーを有し、両タイプのエネルギーは、CO
2及び水の、グルコース及び他のC
nH
2nO
n種への変換において役割を果たすと考えられる。H
2及びO
2への水の分解は、エネルギーを消費するが、反応は可逆的であり、水分子を再形成するためのO
2のH
2による還元は、エネルギーを放出する。このように、水分子の分解後に、水分子は、CO
2と水の融合から生じるグルコース生産反応にエネルギーを提供するために再形成されなければならない。
【0031】
多くの因子は、本発明の実施態様に記載のグルコースを生産するための電気化学的方法の速度及び効率に影響を与える。これらの因子としては、それに限定されないが、水分子を分解及び再形成することにより放出されるエネルギーの量、溶解したCO
2ガスのエントロピー、溶解したCO
2ガスの量、温度、圧力、反応に供給される電磁エネルギーの波長、及びメラニン物質により吸収される電磁エネルギーの量が挙げられる。
【0032】
本発明の好ましい実施態様によると、グルコースを生産するための電気化学的方法は無菌状況下で行われ、それは、反応中に実質的にいかなる細菌も存在しないことを意味する。細菌がグルコースを消費することがあるので、細菌の存在は、本発明に記載の電気化学的方法により生産したグルコースの量を減らすことがある。反応物は、本開示に鑑み、当該技術分野で公知の、それに限定されないが、濾過滅菌、加熱殺菌を含む、いずれの方法によっても滅菌できる。
【0033】
引き続いて、二酸化炭素及び水からグルコースを生産するために使用されるエネルギーを生産するための水分子の分解及び再形成は、少なくとも1つのメラニン物質により触媒作用を受けることができ、ここで、少なくとも1つのメラニン物質は、反応液中に存在する唯一の、水を電気分解する物質である。このように、本発明の特別の実施態様では、少なくとも1つのメラニン物質は、グルコースを生産するための電気化学的方法に使用される唯一の、水を電気分解する物質である。好ましい実施態様によれば、メラニン(合成または天然の)は、グルコースを生産する方法で使用される唯一の、水を電気分解する物質である。
【0034】
本発明の別の態様は、電気化学的方法を介してグルコースを生産するためのシステムを提供する。本発明の実施態様によれば、システムは、反応セル及び電磁エネルギー源で構成される。本明細書で使用されているように、用語「反応セル」は、水とその中に溶解した二酸化炭素を受けて、保持することができるいかなる容器をも言う。反応セルは、それに限定されないが、プラスチック、ガラス、及び、電気化学的方法が起こることができるように、望ましい波長の電磁エネルギーを反応セルに移動することを可能するいかなるその他の物質を含む、いかなる好適な物質からでも作ることができる。反応セルの物質は可視光の透過を可能にするために、好ましくは透明である。反応セルの物質は同様に、好ましくは、二酸化炭素に実質的に不透過性である。
【0035】
別の実施形態によれば、反応セルは、密閉反応セルである。密閉反応セルは、二酸化炭素ガスが反応セルから漏れるのを防ぐために密封され、そして上記で述べたとおり、いかなる適切な材料でも作ることができる。好ましくは、反応セルは、密閉される。反応セルは、水とその中に溶解したCO
2ガス及び少なくとも1つのメラニン物質を受け入れる。少なくとも1つのメラニン物質は、メラニン、メラニン前駆体、メラニン誘導体、メラニン類似体、メラニン変異体から選択され、そして、好ましくは、メラニン(合成又は天然)である。本発明の別の実施態様では、システムは、少なくとも1つのメラニンデバイスの一部としての少なくとも1つのメラニン物質を含み、そのデバイスは、上記で述べた基体及びメラニン物質から構成される。好ましくは、メラニンデバイスは、メラニン(天然又は合成)及びシリカを含む。
【0036】
本発明に記載のシステムは、好ましくは無菌であり、そしていかなる細菌も存在しない。1つ又はそれ以上のその構成部品(反応セル、チューブなど)を含むシステムは、熱、化学物質、放射線、圧力、又は濾過の適用などの、細菌を排除する、又は死滅させる、当技術分野で公知のいずれかの方法により滅菌することができる。
【0037】
本発明の実施形態によれば、電磁エネルギー源により反応セルに供給されたエネルギーは、それがメラニン物質によって吸収されるように、反応セルを透過して移動される。好ましい実施態様において、電磁エネルギー源は、200nm〜900nmの間の波長を有する不可視光又は可視光エネルギーを反応セルに提供する。
【0038】
本発明の別の実施態様によると、システムは、更に、CO
2ガスを連続的に反応セル内に注入するためのデバイスを含むことができる。デバイスは、例えば、気体ポンプであってよい。デバイスは、パイプ又はチューブにより、反応セルに連結することができる。反応セルが密閉している場合、デバイスは、好ましくは、密閉された反応セルがCO
2ガスが漏れるのを防ぐために密封されたままにすることを可能にするような方法で連結することができる。このように、密閉した反応セルを使用することは、容器が二酸化炭素ガスが漏れるのを防ぐために十分に密封されているなら、二酸化炭素を連続的に反応セル内に注入する必要性を排除する利点を有する。
【0039】
本発明の実施態様によれば、電気化学的方法を介してグルコースを生産するためのシステムは、また、C
nH
2nO
n種を生産するために使用することができる。好ましくは、C
nH
2nO
n種は、グルコースの前駆体であり、ここで、nは、1、2、3、4又は5を表す。
【0040】
本発明の実施態様記載のグルコースを生産するための電気化学的方法及びシステムは、水に溶解したCO
2ガスに加えて、メラニン物質と電磁エネルギー、好ましくは、光電気エネルギーの存在、及び、より好ましくは光エネルギーの存在のみを必要とし、従って、自然環境中に存在するもの以外の外部エネルギー源を必要としないので環境にやさしい。更にその上、複雑な組立(setup)やメンテナンスも必要でない。唯一の必要なメンテナンスは、一旦、CO
2が消費されグルコースに変換したときの、水及び溶解したCO
2ガスの交換である。メラニンは、数百万年のオーダーであると推定された半減期を有する、公知の最も安定な分子の一つであるので、メラニン物質又はメラニンデバイスは、それを交換する必要がある前の数十年の間、使用することができる。
【0041】
好ましい実施態様においては、システム内の少なくとも1つのメラニン物質は、メラニン(天然または合成)である。別の好ましい実施形態においては、メラニンは、システム内に存在する唯一の、水を電気分解する物質である。
【0042】
本発明の実施形態に記載の、グルコースを生産するための電気化学的方法及びシステムは、少なくとも2つの重要な用途を有する。第一の用途は、上述したように、食物連鎖の基本的な分子であるグルコースの生産である。第二の用途は、大気中のCO
2の制御に関連する。本発明の実施形態によると、グルコースの生産は、CO
2の消費を必要とする。このように、本発明は、更に、大気中のCO
2レベルを減少させる方法を提供する。
【0043】
二酸化炭素(CO
2)は、人間の活動に起因する主要な温室効果ガスであり、大気中のCO
2の濃度は加速度的に増加し、地球温暖化及び気候変動の原因となっている。大気中のCO
2に対する安全性の上限は、350ppmに設定されているが、大気中のCO
2レベルは、1988年初期以来、この限界を超えまま留まっている。また、古気候の証拠及び継続的な気候変動は、地球上の生命が適応してきた状態での惑星を維持するために、CO
2レベルを低下させる必要があることを示唆している。
【0044】
更にその上、NASAの研究者による計算では、2005年〜2010年の間の異常に低い太陽活動にもかかわらず、地球が宇宙に戻したよりも、多くのエネルギーを吸収し続けたことを示している。このように、気候の安定化にも、地球のエネルギーのバランスの回復、並びに、CO
2レベルの低下を必要とする。換言すれば、地球温暖化を遅くするために、地球は、太陽から吸収するのと同じ量のエネルギーを宇宙に放射する必要がある。
【0045】
従って、大気中のCO
2のレベルを制御し、吸収した太陽エネルギーを消費するための新しい方法が、非常に必要となる。本発明の実施態様に記載の光電気化学方法では、唯一の光エネルギー、及びメラニン(合成または天然)、メラニン類似体、又はメラニン前駆体などの少なくとも1つのメラニン物質が、CO
2及び水をグルコースに変換するために必要とされる。このように、CO
2及び太陽エネルギーの両方が、吸収した太陽エネルギーを同時に使う間に、CO
2レベルの低減化に寄与する本発明の光電気化学的方法により、グルコースの生産に消費される。
【実施例】
【0046】
[実施例1]:
メラニンにより触媒作用を受けた水分子の解離及び再形成
ポリエチレンテレフタレート製の、2つの1リットルの密閉容器(密閉反応セル)が、それぞれ1リットルの純水を含有する滅菌状態下で形成された。CO
2ガスを、5atmの初期圧力で各容器内の水に溶解し、そしてシリカと混合したメラニンを、2つの容器の1つに入れた。容器を、可視光に、6週間曝露し、約2℃〜8℃(35.6°F〜46.4°F)の温度でインキュベートした。
【0047】
5日後、シリカと混合したメラニンを含有する容器のプラスチック包装の変形が観察された。対照的に、可視光への6週間の曝露後に、シリカと混合したメラニンがない容器のプラスチック包装は、眼に見える変形を示さなかった。
【0048】
実験の結果は、メラニンが、光エネルギーの存在で水分子を解離及び再形成する固有の能力を有するという主張を支持する。メラニンを含有した唯一の密閉容器のプラスチック包装の変形によって示されるように、この水分子の解離と再形成は、真空を作り出した。メラニンによって触媒作用を受けた水分子の分解及び再形成から生成されるエネルギーは、その後、二酸化炭素及び水をグルコースに変換するために使用することができる。
【0049】
[実施例2]:
水に溶解したCO2、メラニン及び光エネルギーからのグルコースの生産
ポリエチレン製の、10個の3リットル密閉容器(密閉反応セル)が、それぞれ1800mlの純水を含有する滅菌状態下で形成された。CO
2ガスの多数の気泡が容易に観察するに十分な量で、CO
2を、約2.20PSIの圧力下で各容器内の水に溶解した。5個の容器は対照群の役割を果たし、メラニンデバイスを含まず、他の5つの容器は実験群の役割を果たした。実験群に対して、シリカと混合したメラニンのプレートを、各容器の底部に置いた。メラニン/シリカプレートを、シリカとの接着混合物をメラニンの水溶液と組み合わせることにより作製した。使用したメラニンは実験室で化学的に合成した。
【0050】
対照群と実験群の両方の容器は冷蔵庫に入れ、4週間、2℃〜8℃の範囲の温度(35.6°F〜46.4°F)でインキュベートした。容器を冷蔵する目的は、初期に水に溶解したCO
2ガスを維持することであった。これによって、実験の間に、連続して又は数回、CO
2を水に溶解させる必要により、容器の連続的な操作の必要性を除けた。冷蔵庫が金属壁で構成されているので、容器に供給されるエネルギー源は、冷蔵庫内に存在するほとんど目に見えない光であった。容器は、実験の間、密閉したまま保存され、そして4週間のインキュベーションを通して対照群の容器中のCO
2の気泡の視覚的な観察により、容器が適切に密封されたことを確認した。
【0051】
溶解したCO
2の気泡を毎日観察した。最初の週の終わりに、対照群の全ての容器のCO
2の泡は、未だ存在し、そして実験の開始時から変化を示さなかった。一方、実験群の全ての容器において、溶解した二酸化炭素の泡が、数時間以内に完全に消えた。これは、二酸化炭素がメラニンの存在下でのみ、消費されたことを示した。他の生成物又は沈殿物が形成されたかどうかを決定するために、実験容器中の二酸化炭素の泡が、数時間以内に消失したにもかかわらず、実験は4週間継続した。4週目の終わりには、実験群及び対照群の両方の各容器のシールを、滅菌条件下で破壊し、10mLのサンプル水を、各容器から取り出した。また、なお、4週目の終わりに、対照群の容器中の二酸化炭素は、実験の開始からの変化を示さなかった。
【0052】
対照群及び実験群の容器のそれぞれから取り出した10mLのサンプル水は、透明及び無臭であると認められた。実験群では、メラニンがメラニン/シリカプレートから分散していなかったことを示す、いずれかの群のサンプルで観察される沈殿物が存在しなかった。密度、pH、及びグルコース濃度を含む、追加のパラメータを、各サンプルで測定した。
【0053】
各サンプル中のグルコース濃度を、標準化されたグルコースオキシダーゼ(GOD)アッセイを用いて分光光度法により決定した。簡単に述べると、各サンプルを、グルコースを酸化するグルコースオキシダーゼで処理して、グルコン酸と過酸化水素を生成した。次いで、過酸化水素を、ペルオキシダーゼの存在下で4−アミノアンチピレン(4−AAP)及びフェノールと酸化カップリングさせて、赤色色素キノンイミンを生成した。次いで、グルコースの濃度に正比例する、505nmでの吸光度におけるキノンイミンの吸光度を測定し、サンプル中のグルコースの濃度を決定するのに使った。結果を下記の表1に示す。
【表1】
【0054】
上記の実験の結果は、グルコースが、二酸化炭素と水から、メラニン及び不可視光などの電磁エネルギーのみを必要として、生産することができることを実証している。
【0055】
広範囲のその発明の概念から逸脱することなく、上に記載した実施態様に対して変更を実施できることは、当業者により理解されるであろう。従って、この発明は、開示された特定の実施態様に限定されるものではなくて、添付の特許請求範囲により定義される本発明の精神及び範囲内での改変を包含することを意図している、ということが理解されるであろう。