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特許6142029馬場及び競技施設の表層体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6142029
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】馬場及び競技施設の表層体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A63C 19/00 20060101AFI20170529BHJP
   A63K 1/00 20060101ALI20170529BHJP
   E01C 7/30 20060101ALI20170529BHJP
   E01C 7/32 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   A63C19/00 A
   A63K1/00
   E01C7/30
   E01C7/32
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-54679(P2016-54679)
(22)【出願日】2016年3月18日
【審査請求日】2016年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】592120885
【氏名又は名称】日本中央競馬会
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新 屋 勇 人
(72)【発明者】
【氏名】鹿 内 英 登
(72)【発明者】
【氏名】森 芸
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼ 田 順 一
(72)【発明者】
【氏名】浅 川 敬 之
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−145787(JP,A)
【文献】 特開2010−43417(JP,A)
【文献】 特開平7−75691(JP,A)
【文献】 特開2007−262852(JP,A)
【文献】 特開2000−154068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63C 19/00
A63K 1/00
E01C 7/30
E01C 7/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路盤の上に形成される馬場及び競技施設の表層体であって、
該表層体は、砂と、架橋ポリエチレンを含む破砕物と、バインダを有し、
前記架橋ポリエチレンを含む破砕物は、水銀圧入法による比表面積が0.003〜0.010m/gであることを特徴とする表層体。
【請求項2】
前記架橋ポリエチレンを含む破砕物のアスペクト比が1.5〜5.0であることを特徴とする請求項1に記載の表層体。
【請求項3】
前記架橋ポリエチレンを含む破砕物の混合割合は、前記表層体を構成する材料重量の5〜25重量%であることを特徴とする請求項1に記載の表層体。
【請求項4】
前記バインダの混合割合は、前記表層体を構成する材料重量の2〜10重量%であることを特徴とする請求項1に記載の表層体。
【請求項5】
架橋ポリエチレンを含む廃材を破砕して製造した水銀圧入法による比表面積が0.003〜0.010m/gの架橋ポリエチレンを含む破砕物、砂及びバインダを混合する工程を有することを特徴とする表層体の製造方法。
【請求項6】
前記架橋ポリエチレンを含む破砕物、砂及びバインダを混合する工程は、架橋ポリエチレンを含む破砕物と砂を混合する工程と、前記砂と架橋ポリエチレンを含む破砕物の混合物にバインダを加えて混合する工程と、を有することを特徴とする請求項5に記載の表層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、馬場及び競技施設の表層体及びその製造方法に係り、より詳細には、馬場、野球場、サッカー場、ラグビー場などのスポーツフィールドの表面に形成される架橋ポリエチレン弾性体を含む表層体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
馬場用舗装構造は、通常、路床の上に敷設された基礎路盤と、当該路盤の上に敷設された表層体とから主に構成されている。基礎路盤は、例えば、砕石や透水性アスファルトコンクリートなどからなり、透水性を高めるとともに、馬場用舗装構造の強度を確保する役割を担い、表層体は、例えば、芝や砂もしくは砂とゴムチップ等の混合物からなり、クッション性を高める役割を担っている。
【0003】
近年、砂とゴムチップ等の粒状物質とを混合したクッション性を有する表層材料を用いることが、施工コスト、メンテナンスコストの面から注目され、種々の表層体が提案されている。
例えば、特許文献1には、路盤層上に、特定の大きさで、比重が1.8〜3.5の弾性チップと川砂との混合物を敷設したグランド表面の構造において、弾性チップの中央部が塊状で、その周辺がのし烏賊状あるいは挽肉状に変形したことを特徴とした競馬場のダートコースの構造が開示されている。
【0004】
表層体に用いるチップ材は、砂との分離性の観点から砂の比重に近い高比重のものが用いられる。これは、馬場や競技場のトラックの表層が使用中に表面からの衝撃を受けるため、チップ材が表面に浮きあがり砂と分離する現象が発生し、砂とチップ材が分離すると表層のクッション性が低下してしまうという問題があるためである。しかしながら、比重の小さな材料においては、高比重の材料を添加して比重を高めているため、材料自体のクッション性が減少し、十分なクッション性を得るために、表層に多量のチップ材を混入させる必要があった。
【0005】
このようなチップ材の分離を抑制するために、表層にワックス等のバインダ(結合剤)を添加する方法が行われ、特許文献2には、路床上に微細粒透過阻止層と、単粒砕石層と、透水性アスファルト層を形成し、最上層としてプラスチック粉粒体20〜40重量%、繊維体0.05〜0.6重量%、砂50〜70重量%およびこれらの結合剤を4〜12重量%とからなる馬場用表層材が開示され、特許文献3には、熱可塑性バインダと砂とを加熱しながら混合する第一混合工程と、固形又は半固形のバインダを乳化して水性エマルジョンを生成する水性エマルジョン生成工程と、第一混合工程で混合された混合物と、水性エマルジョンと、弾性を有する粒状物質とを常温で混合する第二混合工程と、第二混合工程で混合された混合物を施工面に敷き均す敷設工程を含む表層体の施工方法が記載されている。
【0006】
しかしながら、バインダによるチップ材の分離性の改良は、バインダが砂とチップ材の間に充填されて、表層中の空隙を低下させ、表層のクッション性、透水性を低下させてしまうため、表層体のクッション性、透水性、チップ分離性のすべてにおいて十分に満足できるものは得られていない。
【0007】
一方、架橋ポリエチレンは、優れた電気特性と耐熱性を有し、耐候性や耐薬品性、低温時における柔軟性に優れ、電線・ケーブル、配管等の被覆材として広く用いられており、その端材やリサイクル材の入手が容易であることから、表層体に用いるチップ材として好適である。
【0008】
しかしながら、架橋ポリエチレンは、比重が0.9〜1.1と低く、表層体表面に繰り返しの衝撃負荷を繰り返すと、表層体用チップ材が表層体表面に浮かび上がり易いという欠点を有しているため、優れたクッション性、透水性を有しながら、チップ分離性が改良された架橋ポリエチレンチップ材を用いた表層体が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−145787号公報
【特許文献2】特開平11−123287号公報
【特許文献3】特開2010−43417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、クッション性、透水性、チップ分離性に優れた馬場及び競技施設などに用いられる表層体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様による表層体は、路盤の上に形成される馬場及び競技施設の表層体であって、該表層体は、砂と、架橋ポリエチレンを含む破砕物と、バインダを有し、前記架橋ポリエチレンを含む破砕物は、水銀圧入法による比表面積が0.003〜0.010m/gであることを特徴とする。
【0012】
前記架橋ポリエチレンを含む破砕物のアスペクト比が1.5〜5.0であることが好ましく、前記架橋ポリエチレンを含む破砕物の前記表層体における割合は、前記表層体を構成する材料重量の5〜25重量%であることが好ましい。
【0013】
前記バインダの前記表層体における割合は、前記表層体を構成する材料重量の2〜10重量%であることが好ましい。
【0014】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様による表層体の製造方法は、架橋ポリエチレンを含む廃材を破砕して製造した水銀圧入法による比表面積が0.003〜0.010m/gの架橋ポリエチレンを含む破砕物、砂及びバインダを混合する工程を有することを特徴とする。
前記架橋ポリエチレンを含む破砕物、砂及びバインダを混合する工程は、架橋ポリエチレンを含む破砕物と砂を混合する工程と、前記砂と架橋ポリエチレンを含む破砕物の混合物にバインダを加えて混合する工程と、を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の表層体及びその製造方法によれば、砂と水銀圧入法による比表面積が0.003〜0.010m/gである架橋ポリエチレンを含む破砕物とバインダを有する表層体とすることで、当該破砕物と砂とがよく絡み合い積層体に良好な空隙を形成し、バインダにより、その空隙を長期にわたって確保することができるので、表層体のクッション性の低下、透水性の低下及びチップ材の分離について長期にわたって防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る表層体を用いた舗装構造を説明するための模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態を以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本実施形態の表層体は、主として馬場、野球場、サッカー場、ラグビー場などのスポーツフィールドの表層体として採用することができるが、本実施形態では、馬場に採用した場合を例にして説明する。
【0018】
図1に、本発明の一実施形態の表層体5を用いた舗装構造を説明するための模式的な断面図を示す。
本実施形態の表層体5を用いた舗装構造は、最下層から、主に路床土を用いて形成された路床1、単粒砕石2、透水性を有するポーラスアスファルトにより形成された透水性アスファルト舗装3、不織布等からなる透水性を有する透水シート4を順に敷設して基礎路盤を形成し、その基礎路盤上に表層体5を敷設した構造を有し、表層体5は、砂6と、架橋ポリエチレンを含む破砕物7とバインダ(図示していない)を含む。
【0019】
このような舗装構造における表層体5は、表層体5内に良好な空隙を形成することにより、良好なクッション性が得られるが、その空隙構造は、空隙の量が大きいことと共に長期にわたってその量を維持できる構造であることが必要である。
発明者らは、舗装構造における表層体5の空隙構造について鋭意検討の結果、銀圧入法による適度な比表面積を有する架橋ポリエチレンを含む破砕物7をチップ材として用い、砂6と混合して表層体中に良好な空隙を形成し、バインダによりこの空隙を固定させることにより、長期にわたって良好なクッション性を維持し、バインダを用いているにもかかわらず良好な透水性を有する表層体5を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0020】
比表面積の測定は、通常、BET法によるものと水銀圧入法によるものが行われるが、上記空隙構造の検討において、架橋ポリエチレンを含む破砕物7の、表面の微細構造が影響するBET法による比表面積が同じでも、表面形状が影響する水銀圧入法による比表面積が異なれば、表層体5のクッション性、透水性が大きく異なる結果となった。
これは、クッション性、透水性に影響を与える表層体5中の空隙が、砂6と架橋ポリエチレンを含む破砕物7による空隙であり、当該空隙の良好な形成に架橋ポリエチレンを含む破砕物7のマクロな表面形状が影響しているためと推測される。
水銀圧入法による比表面積の測定は、市販の水銀ポロシメータによる細孔容積の測定により求めることができる。
【0021】
本実施形態の表層体5に用いる架橋ポリエチレンを含む破砕物7は、水銀圧入法による比表面積が0.003〜0.010m/gである。
架橋ポリエチレンを含む破砕物7の水銀圧入法による比表面積が0.003m/g未満であると、表層体5中の空隙量が少なくクッション性、透水性が劣り、水銀圧入法による比表面積が0.010m/gを超えるものであると、表層体5中の空隙量が多いにもかかわらずクッション性、透水性が劣る。
水銀圧入法による比表面積が大きすぎると空隙量が多いにもかかわらず表層体5のクッション性、透水性が劣る理由は、表層体5の内部で架橋ポリエチレンを含む破砕物7が分散不良を起こし、均一な空隙形成ができず不均一化しているためと考えられる。
【0022】
本実施形態における架橋ポリエチレンを含む破砕物7の形状はフレーク状や絨たんの短い毛のような形状であることが好ましく、架橋ポリエチレンを含む破砕物7の縦横比もしくは太さと長さの比を表わすアスペクト比で、1.5〜5.0であることが好ましい。
アスペクト比の測定は、粒度分布画像解析装置を用いて、破砕物の投影画像を長方形で囲んだ時の最小長方形である外接長方形の長さと幅の比を測定することで求められる。
アスペクト比が1.5より小さい粒子状、球、方形状であると、表層体5の内部の空隙を良好な状態にすることができず、クッション性、透水性が低下し、5.0より大きいと、表層体5の内部で良好に分散させることが難しく均一な空隙形成ができないため、クッション性、透水性が低下する。
【0023】
本実施形態の表層体5に用いられる架橋ポリエチレンを含む破砕物7は、過酸化物を添加しての加熱や放射線照射等の方法により架橋したポリエチレンを含む材料を破砕することにより製造される。
架橋ポリエチレンを含む破砕物7は、未架橋のポリエチレン、ポリエチレンとの共重合成分、他の合成樹脂材料、充填材等の配合剤を含んでもよい。
架橋ポリエチレンを含む破砕物7は、使用済み架橋ポリエチレンの破砕により製造することが好ましく、電力・ケーブル製造時における端材でもよい。
また、このような架橋ポリエチレン廃材を使用することで、材料コストを低減することができる。同時に、架橋ポリエチレンは耐久性、耐候性、耐薬品性が高く、表層体として使用された後も、繰り返し利用することができるため、地球環境にも優しい。
【0024】
架橋ポリエチレンを含む破砕物7の表層体5内の割合は、表層体5を構成する材料重量の5〜25重量%であることが好ましく、5重量%より少ない量では、十分なクッション性が得られず、25重量%を超える量では、架橋ポリエチレンを含む破砕物7の分離が起きやすくなり、表層体5内の不均一化を招き馬場や競技場表面層の性能を低下させる。
【0025】
架橋ポリエチレンを含む破砕物7の大きさは、表層体5の配合に応じて適宜設定すればよく特に制限はないが、通常約5〜30mmである。
架橋ポリエチレンを含む破砕物7の製造方法は、プラスチック材料の粉砕等で用いる粉砕機を用いて行うことができる。例えば、架橋ポリエチレンを含む成形体を一軸回転刃式粉砕機で粉砕する際に、カッター刃を鈍化させて切断粉砕の比率を低下させ、せん断粉砕の比率を高めることによる方法、カッター型粉砕機で所定の大きさに一次カッティングした後、押出スクリューや混練ロールにより擂り潰すせん断粉砕などの方法により、所定範囲の水銀圧入法による比表面積を有する架橋ポリエチレンを含む破砕物7を製造することができる。
また、アスペクト比を調整するには、カッター型粉砕機による一次粉砕においてアスペクト比を調整し、せん断粉砕機による二次粉砕を行うことにより、所定範囲のアスペクト比と水銀圧入法による比表面積を有する架橋ポリエチレンを含む破砕物7を製造することができる。
【0026】
表層体5に用いる砂6の種類は、特に限定されるものではないが、川砂、レイクサンド、海砂、砂丘砂、火山砂利、硅砂、洗い砂、スラグなどの骨材等を適宜選択して用いることができる。
【0027】
表層体5に用いるバインダの種類は、特に限定されるものではないが、流動パラフィンなどの液状有機物、水不溶性合成樹脂、ゴムアスファルト、樹脂アスファルト、ワックスなどを使用することができる。
バインダの表層体5における割合は、表層体5を構成する材料重量の2〜10重量%であることが好ましい。2重量%未満であると砂6と架橋ポリエチレンを含む破砕物7の接着が十分でなく表層体5に繰り返し衝撃が加えられることにより砂6と架橋ポリエチレンを含む破砕物7の分離が発生しやすくなり、10重量%より多いとクッション性、透水性の低下を招く。
【0028】
バインダと砂6及び架橋ポリエチレンを含む破砕物7との混合は、3者を混合機に仕込み常温で混合することができるが、バインダが固形の場合には、液状態に溶融(溶解)して混合することが好ましく、アスファルト、ワックス類の場合などでは、バインダを加熱液化させ、加熱した被混合物に添加して混合することがさらに好ましく、水不溶性合成樹脂などは、水に乳化させた乳化液もしくは水に懸濁させた懸濁液として混合することが好ましい。
バインダを液状化して混合することにより、表層体5を効果的に一体化することができる。
【0029】
次に、表層体5の製造方法について説明する。本実施形態に係る表層体5は、砂6と架橋ポリエチレンを含む破砕物7とバインダとが適度な空隙を有して一体化させることにより、砂6に比べて比重の小さい架橋ポリエチレンを含む破砕物7の浮き上がりによる分離を防止することができ、長期間にわたって表層体5の空隙が良好な状態に維持されて、クッション性、透水性、チップ分離性が良好な状態に維持される。
【0030】
本実施形態の表層体5の製造は、砂6と架橋ポリエチレンを含む成形物を破砕して製造した水銀圧入法による比表面積が0.003〜0.010m/gの架橋ポリエチレンを含む破砕物7とバインダを混合して路盤上に敷設することで製造することができる。
架橋ポリエチレンを含む破砕物7と砂6とバインダの混合は、通常、常温で行い、破砕物と砂とバインダが均一に混合されるよう、適宜状態観察をしながら混合する。
また、バインダを加熱混合する場合には、加熱手段を有する混合機を用い、液状化したバインダと、破砕物と砂の予め加熱した混合物を混合することが好ましい。
また、架橋ポリエチレンを含む破砕物7と砂6とを混合した後、その混合物にバインダを添加することは、均一な表面体5を得る上で好ましい。
本実施形態において、架橋ポリエチレンを含む破砕物7と砂6とワックスの混合物は、最下層から、路床1、単粒砕石2、透水性アスファルト舗装3、透水シート4の順に形成された路盤上に表層体5として敷設される。
【0031】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
〔架橋ポリエチレンを含む破砕物の調製〕
架橋ポリエチレンを含む破砕物の調製は、使用済み架橋ポリエチレン成形体を一軸回転刃式粉砕機で一次粉砕し、その一次粉砕物を二本ロールによりロール粉砕して、サンプルAを調製した。
同様の組成の使用済み架橋ポリエチレン成形体を一軸回転刃式粉砕機で粉砕し塊状形状のサンプルBを調製した。
【0032】
〔架橋ポリエチレンを含む破砕物サンプルの性状〕
得られたサンプルについて、粒度分布画像解析装置により外接長方形の長さと幅の比であるアスペクト比の測定及びポロシメータを用いた水銀圧入法による比表面積の測定を行った。
測定結果を〔表1〕に示す。
表1に示すように、サンプルAの架橋ポリエチレンを含む破砕物のアスペクト比、比表面積は、サンプルBの架橋ポリエチレンを含む破砕物よりも大きいことが分かる。
【0033】
【表1】
【0034】
〔表層体の調製〕
調製した架橋ポリエチレンを含む破砕物のサンプルAは、温度調節用ジャケット付きで自転及び公転を行う撹拌軸を有する混合機を用いて、表層体全体重量に対し、砂が72重量%、架橋ポリエチレンを含む破砕物が18重量%の割合で常温混合した。
次いで、混合機を80℃に昇温して砂と架橋ポリエチレンを含む破砕物の混合物を加温し、そこに100℃に熱したワックスを表層体全体重量に対し10重量%の量を投入して混合し、表層体サンプル1を得た。
調製した架橋ポリエチレンを含む破砕物のサンプルBも、上記サンプルAと同様にして砂及びワックスと混合し、表層体サンプル2を得た。
【0035】
〔表層体の評価〕
クッション性の評価は、衝撃加速度計(HUMBOLDT社製 クレッグインパクトソイルテスター測定器2.25kg)を用いて、衝撃加速度を測定することで行った。衝撃加速度は、値が低いほどクッション性が良好であることを示す。
透水性の評価は、直径10cmのコア(JISA1218内径10cm、長さ12cm)に表層体サンプルを充填し、定水位法(JISA1218)で透水係数を測定することで行った。透水係数は、値が高いほど透水性が良好であることを示す。
砂と混合した架橋ポリエチレンを含む破砕物の分離性の評価は、直径15cmのコアに表層体サンプルを一定容積充填し、上部から4.5kg重のランマー(重錘)を92回落とし、表層体サンプルから浮き出してくる架橋ポリエチレンを含む破砕物の浮き出し重量を測定することで行った。架橋ポリエチレンを含む破砕物の浮き出し重量は、値が小さいほど分離性が良好(分離し難いサンプル)であることを示す。
【0036】
【表2】
【0037】
表2に示したように、実施例の表層体サンプル1は、比較例の表層体サンプル2よりもクッション性が高く、透水性も優れている。分離性については、どちらもランマーの落下衝撃による砂と架橋ポリエチレンを含む破砕物が分離する状況は認められなかった。
【0038】
以上の結果より、本発明の架橋ポリエチレンを含む破砕物と砂とバインダを有する表層体が分離せず一体化し、かつクッション性と透水性に優れていることを示している。
サンプルAの表層体は、架橋ポリエチレンを含む破砕物が含まれているため、長期間放置したとしても、砂と架橋ポリエチレン類破砕物との間の空隙が潰れにくく密になりにくい。即ち、サンプルAの表層体で用いる架橋ポリエチレンを含む破砕物は、形状が比較的複雑であり、また、様々な角度(方向)で砂に埋没されるため、表層体内の空隙を長期にわたって確保することができ、表層体のクッション性及び透水性の低下を防止することができる。
【0039】
また、本実施形態では、馬場に使用する場合を例にしたが、これに限定されず、他の運動場、さらには、公園や広場の散歩道、遊歩道、駐車場、屋上の歩道、ゴルフ場等の表層体として用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の表層体は、クッション性がよく、透水が速く、資材間の分離がしにくいことによって、全天候に使用することができる。馬場、運動場、公園や広場の散歩道、遊歩道、駐車場、屋上の歩道、ゴルフ場等の表層体として適用できる。
【符号の説明】
【0041】
1 路床
2 単粒砕石
3 透水性アスファルト舗装
4 透水シート
5 表層体
6 砂
7 架橋ポリエチレンを含む破砕物
【要約】      (修正有)
【課題】クッション性、透水性、チップ分離性に優れた馬場及び競技施設の表層体及びその製造方法の提供。
【解決手段】路盤の上に形成される馬場及び競技施設の表層体5であって、表層体は、砂6と、架橋ポリエチレンを含む破砕物7と、バインダを有し、架橋ポリエチレンを含む破砕物は、水銀圧入法による比表面積が0.003〜0.010m/gであることを特徴とする。
【選択図】図1
図1