特許第6142094号(P6142094)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6142094
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】流体冷却システム
(51)【国際特許分類】
   F01P 7/16 20060101AFI20170529BHJP
   F02F 1/10 20060101ALI20170529BHJP
   F01P 3/02 20060101ALI20170529BHJP
   F01P 11/04 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   F01P7/16 505F
   F02F1/10 D
   F01P3/02 U
   F01P3/02 P
   F01P11/04 D
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-543340(P2016-543340)
(86)(22)【出願日】2014年7月28日
(65)【公表番号】特表2016-534283(P2016-534283A)
(43)【公表日】2016年11月4日
(86)【国際出願番号】EP2014066180
(87)【国際公開番号】WO2015043800
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2016年3月17日
(31)【優先権主張番号】1317165.7
(32)【優先日】2013年9月27日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512308720
【氏名又は名称】ジャガー ランド ローバー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Jaguar Land Rover Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ハッチンス
【審査官】 北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−117614(JP,A)
【文献】 特開昭58−106122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 7/16
F01P 3/02
F01P 11/04
F02F 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン用の流体冷却システムであって、前記流体冷却システムは、ピストンシリンダヘッドの少なくとも一部を冷却するために適した第1の冷却ジャケットと、ピストンシリンダの少なくとも一部を冷却するために適した第2の冷却ジャケットと、接合部とを有し、前記接合部は、
流体を前記接合部に運ぶための一次ダクトと、
二次ダクトと三次ダクトであって、前記二次ダクトと三次ダクトは前記一次ダクトに接続されており、前記接合部から流体を運び出すのに適しているものとを有し、
前記二次ダクトはさらに前記第1の冷却ジャケットに接続されており、
前記三次ダクトはさらに前記第2の冷却ジャケットに接続されており、
前記二次ダクトは、前記二次ダクトが前記一次ダクトに合流する場所で、前記一次ダクトに対して鈍角に配置されており、
前記三次ダクトは、前記三次ダクトが前記一次ダクトに合流する場所で、前記一次ダクトに対して鋭角に配置されている、流体冷却システム。
【請求項2】
前記一次ダクトと前記二次ダクトは、一つのダクトを形成している、請求項1の流体冷却システム。
【請求項3】
前記エンジンは内燃機関である、請求項1の流体冷却システム。
【請求項4】
前記三次ダクトは、前記第2の冷却ジャケットの下部に接続されている、請求項1の流体冷却システム。
【請求項5】
前記流体冷却システムはさらに、流体を前記接合部に送るポンプを有する、請求項1の流体冷却システム。
【請求項6】
前記流体が水を有する、請求項1の流体冷却システム。
【請求項7】
前記二次ダクトは、前記一次ダクトの径と同じ径を有する、請求項1の流体冷却システム。
【請求項8】
前記三次ダクトは、前記二次ダクトの径よりも小さな径を有する、請求項1の流体冷却システム。
【請求項9】
前記第2の冷却ジャケットはヒータを有する、請求項1の流体冷却システム。
【請求項10】
前記第2の冷却ジャケットからの出口ダクトと、前記出口ダクトを介して前記第2の冷却ジャケットから流れ出る流体を制御する弁とを有する、請求項1の流体冷却システム。
【請求項11】
前記流体冷却システムは使用時に所定の方向に向けられ、
前記三次ダクトは、前記流体冷却システムが前記所定の方向に向けられている状態で、前記接合部の下方にある所定の場所で前記第2の冷却ジャケットに到達する、請求項1の流体冷却システム。
【請求項12】
エンジンを冷却する方法であって、
請求項1〜11のいずれかに記載の流体冷却システムを用意する工程と、
前記エンジンに前記流体冷却システムを取り付ける工程と、
前記流体冷却システム付近に流体を送る工程、を有する方法。
【請求項13】
請求項1の流体冷却システムを有するエンジン。
【請求項14】
請求項13のエンジンを有する乗物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン用の流体冷却システムに関する。また、本発明は、このシステムを有するエンジン及び乗物に関する。
【背景技術】
【0002】
機械的摩耗を防止するために、エンジンは頻繁に潤滑剤を利用する。潤滑剤は、エンジンを構成する複数の可動部材の間に介在される。これにより、それらの可動部材は他方に対して円滑に動作できる。エンジン内の潤滑剤の粘度は温度に応じて変化する。大抵、潤滑剤は、エンジンの一般的な動作温度でうまく機能するものが選択される。しかし、内燃機関等の大量の熱を発生するエンジンの場合、通常該エンジンは外気温度で始動し、その後、エンジンが熱を発生するにつれて、典型的な動作温度まで上昇する。そのため、エンジンの始動時、エンジン内の潤滑剤が最適動作温度以下の状態にある時間が存在する。そのような事情から、ピストン内の潤滑オイルを出来るだけ効果的に機能させるために、エンジンの始動時、ピストンやシリンダなどの部材を出来るだけ早急に暖めることが望ましい。
【0003】
反面、ピストンやシリンダが過剰に熱くなる危険がある。特に、シリンダのヘッドに含まれる、スパークプラグや検出装置等の部材は、過度に加熱されることに非常に敏感である。したがって、最近のエンジンのシリンダには、流体(通常は水)を充填したアウターシェル(すなわちジャケット)が設けられている。これらの水ジャケットは、ピストンやシリンダからの熱を水で吸収して冷却する。暖められた水は、その後、ジャケットから送り出されて冷たい水に置換される。これにより、さらに熱が吸収される。
【0004】
しかし、エンジンの始動中、ジャケットは水が充満しており、そのために、ジャケットが熱を吸収する。その結果、ピストンやシリンダの加熱が遅くなる。また、潤滑剤の加熱が遅くなり、エンジン始動直後の潤滑効率が低下する。この影響は、加熱時間中に冷却液がジャケットに流れ込むと、さらに悪化する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、内燃機関の始動直後における熱損失を最小にしながら乗物を効果的な冷却する水冷ジャケットを提供することが重要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態によれば、エンジン用の液体冷却システムが提供される。この流体冷却システムは、第1の冷却ジャケットと、第2の冷却ジャケットと、接合部を有し、前記接合部は、流体を前記接合部に運ぶのに適した一次ダクトと、二次ダクト及び三次ダクトを有し、前記二次ダクトと前記三次ダクトは前記一次ダクトに接続されており、前記接合部から流体を運び出すのに適している。前記二次ダクトはさらに前記第1の冷却ジャケットに接続されており、前記三次ダクトはさらに前記第2の冷却ジャケットに接続されている。前記二次ダクトは、前記二次ダクトが前記一次ダクトに合流する場所で、前記一次ダクトに対してほぼ鈍角に配置されている。また、前記三次ダクトは、前記三次ダクトが前記一次ダクトに合流する場所で、前記一次ダクトに対してほぼ鋭角に配置される。

【0007】
このように、接合部が設けられ、そこでは流体が前記一次ダクトから前記二次ダクトに容易に移動できる。一方、三次ダクトに流れ込む流体は、流体の流れの方向が鋭角に変化するので、大きな抵抗を受ける。このように、三次ダクトよりも二次ダクトを通じて、より多くの液体が流れる。この違いは前記ダクトの形状や相互関係に基づくもので、繰り返し使用により機械的損傷を受ける複雑な弁システムを設ける必要がない。例えば流体がポンプで送られることによって加圧下で接合部を流れる場合、第2の冷却ジャケットに供給されるよりも、より多くの流体が三次ダクトを介して第1の冷却ジャケットに供給される。第1の冷却ジャケットを介して多くの流体が流れると、他の条件が同じであれば、第1の冷却ジャケットが第2の冷却ジャケットよりもより多くの熱を吸収する。したがって、使用時、第1の冷却ジャケット内に収容されたエンジン部品は、第2の冷却ジャケット内に収容されたエンジン部品よりも、より多くの熱エネルギーが奪われる。
【0008】
「ほぼ斜め」であることによって、一次ダクトから二次ダクトに流れ込む流体の移動方向が90度未満の方向に転換される。一次ダクトから二次ダクトに流れ込む流体は、その移動方向が30度未満の方向に転換されてもよい。「ほぼ鋭角」であることによって、一次ダクトから二次ダクトに流れ込む流体の移動方向が90度を超える方向に転換される。一次ダクトから三次ダクトに流れ込む流体は、その移動方向が150度を超える方向に転換されてもよい。三次ダクトは、例えば、必要な流体の移動方向及び/又は大きさに基づいて、一次ダクト及び二次ダクトに対して配置される。これにより、一次ダクトからの流れの大部分は二次ダクトに入る。
【0009】
典型的には、一次ダクトと二次ダクトは一つのダクトを形成している。この場合、一つの穴が一次ダクトと二次ダクトを形成する単一のダクトを形成する。これに対し、その穴の箇所に三次ダクトが一次ダクトと二次ダクトに取り付けられて前記接合部が形成される。
【0010】
エンジンは内燃機関でもよい。しかし、本発明に係る冷却システムは、冷却を必要とするあらゆるエンジン又はシステム(特に、少なくとも2つの速度で冷却する必要があるエンジン又はシステム、又はそこからメリットが得られるエンジン又はシステム)と共に使用することができる。
【0011】
エンジンが内燃機関の場合、それはピストン駆動式の内燃機関であってもよい。その場合、流体冷却システムは、ピストンシリンダヘッド用の第1のウォータージャケット1を有し、第2のウォータージャケットが第1のウォータージャケットに連結される。流体冷却システムは、ピストンシリンダ用の第2のウォータージャケットを有し、三次ダクトが第2のウォータージャケットに連結される。典型的には、そのような第2のウォータージャケットは、ピストンが移動するピストンシリンダの部分を冷却する。
【0012】
三次ダクトは、第2のウォータージャケットの下部に接続される。ここで、「下」とは、重力方向に関して下を意味する。三次ダクトは、第2のウォータージャケットの下半分に接続される。三次ダクトは、第2のウォータージャケットの底部に接続してもよい。または、三次ダクトは第2のウォータージャケットの下部近傍に接続してもよい。
【0013】
典型的には、流体冷却システムはまたポンプを有する。このポンプは、一次ダクトに接続され、接合部に流体を送るために適当なものである。ポンプは、第1と第2のウォータージャケットの少なくとも一方に接続され、第1及び/又は第2のウォータージャケットから流体を送り出すために適している。
【0014】
代わりに、流体は、他の方法(例えば、対流)により、システムの周囲に送られる。
【0015】
流体は水を含む。典型的には、そのような流体は主に水である。流体は、その他の流体、例えば、水の凝固点を下げる添加物等を含んでもよい。
【0016】
二次ダクトは、一次ダクトと径とほぼ同じ径のダクトを有する。これは、両者が同じ断面積を有することを意味する。三次ダクトは、二次ダクトの径よりも小さな径を有する。三次ダクトは、一次ダクトの径よりも小さな径を有する。三次ダクトの径がより小さな断面を有することにより、三次ダクトを通る流体の流れが二次ダクトに比べて減少する。
【0017】
第2の冷却ジャケットはヒータを有する。このヒータは、第2の冷却ジャケットの内側に配置される。代わりに、ヒータは第2の冷却ジャケットの近くに配置してもよい。ヒータは電気ヒータである。
【0018】
第2の冷却ジャケットは第1の部屋と第2の部屋を有する。第2の部屋は、一つ又はそれ以上の毛細管又はダクトを介して第1の部屋に連結される。第3のダクトは、第1の部屋に接続される。ヒータを設けた場合、このヒータは典型的には第2の部屋の中又はその近くに配置される。これにより、ヒータは、第2の部屋の中の流体を加熱できる。
【0019】
流体冷却システムは使用時に所定の方向に向けられる。三次ダクトは、流体冷却システムが前記所定の方向に向けられている状態で、接合部の下方にある所定の場所で第2の冷却ジャケットに到達する。
【0020】
他の形態では、本発明はエンジンを冷却する方法を提供する。この方法は、上述の流体冷却システムを用意する工程と、前記エンジンに前記流体冷却システムを取り付ける工程と、前記流体冷却システム付近に流体を送る工程、を有する。
【0021】
一つの形態では、本発明はエンジンを提供する。このエンジンは、上述の流体冷却システムを有する。この発明はエンジンを有する乗物を提供する。該エンジンは、上述の流体冷却システムを有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明に係る第1の冷却システムの図を示す。
図2図2は、第2の冷却システムを示す。
図3図3は、第2の冷却システムを示す。
図4図4は、第3の冷却システムを示す。
図5図5は、第3の冷却システムを示す。
図6図6は、第3の冷却システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図1は、本発明に係る第1の冷却システム101の図を示す。
冷却システム101は、ピストン駆動式内燃機関(図示せず)とともに使用されるもので、第1の一次ダクト102、第1の二次ダクト103,及び第1の三次ダクト104を有する。これらのダクトは、接合点105で連結されている。図1は、第1の冷却システムを、これが車両に搭載される方向とほぼ同じ方向で示しており、図の上部に表れる部分は、第1の冷却システム101を設けた車両において、重力方向に関してより上方に配置される部分を表している。
【0024】
第1の二次ダクトはさらに、第1のウォータージャケット106に接続されている。この第1のウォータージャケットは、ピストンシリンダヘッド(図示せず)の近傍にあって該ピストンシリンダヘッドを冷却することを目的とする。第1のウォータージャケット106には、第1の流出部107が設けられる。
【0025】
第1の三次ダクト104はさらに、第2のウォータージャケット108に接続されている。第2のウォータージャケットは、ピストンシリンダの一部の近傍にあってそれ冷却することを目的とする。ピストンシリンダを介してピストンヘッドが移動する(図示せず)。第2のウォータージャケット108には第2の流出部109が設けられる。第2の流出部は、弁110を有する。
【0026】
使用時、第1の冷却システム101の近傍では、矢印111で示す方向に水が送られる。水は、ピストンシリンダとピストンシリンダヘッドから余分な熱を吸収する。その後、水は第1の二次流出部107,109を介してラジエータに移動し、そこで第1の冷却システム101を通じて送られる前に冷却する。これにより、ピストンシリンダとピストンシリンダヘッドはそこに含まれる部品が損傷する程に熱くなることがない。
【0027】
しかし、エンジンが冷たい状態(この状態は、通常エンジンが始動直後に起こる。)では、ピストンシリンダを急速に暖めることが有利である。したがって、エンジンが冷たい場合、弁110が閉鎖され、第2のウォータージャケット108から第2の流出部109を介して水が流出するのを防止する。第2のウォータージャケット108の水は、そこに閉じ込められる。第2のウォータージャケット108に閉じ込められた水は、その後、ピストンシリンダから熱を吸収する。これにより、ピストンシリンダの昇温速度が低下する。しかし、暖められた水はピストンシリンダの近くに保持されるので、ピストンシリンダは、弁110が開放されたときに暖められるよりも一段と速く加熱できる。
【0028】
一般的に、スタートアップ直後であっても、第1の一次ダクト102と第1の二次ダクト103を介して第1のウォータージャケット106に水を送ることは依然として必要である。これは、シリンダヘッドが、急速に大量の熱を生成する傾向にあり、オーバーヒートに敏感な装備を含むからである。
【0029】
第1の三次ダクト104と第2のウォータージャケット108は、第2のウォータージャケット108に入る又そこから出る水のサイフォン現象を減じ、極めて効率良く水(特に、暖かい水)を第2のウォータージャケット108に閉じ込めるように、設計されている。
【0030】
まず、第1の三次ダクト104は、接合点105に、第1の一次ダクト102に対して鋭角に接続されている。これにより、第1の三次ダクト104を通る水の流れが生じた場合、その流れは第1の一次ダクト102を流れる水の流れに対して鋭角をなす。したがって、第1の一次ダクト102を介して接合部105に流れる水は、矢印111で示すように、第1の三次ダクト104に入るためには、その進路を大きく変えなければならない。対照的に、第1の二次ダクト103は、第1の一次ダクト102の延長として配置されている。これにより、第1の一次ダクト102から第1の二次ダクト103に流れ込む水は、その進路を変更する必要がない。発明者は、ダクト間のこの関係は、特に弁110が閉じられているとき、第2のウォータージャケット108に流れ込む水の量を減少するものであることを知見した。
【0031】
次に、第1の三次ダクト104は、第2のウォータージャケット108の底部に接続されている。第2のウォータージャケット108内の水はピストンシリンダから熱を吸収するので、非常に熱い水が第2のウォータージャケット108の上部(これは図1に示す図の上部でもある。)に上昇する傾向がある。このように、非常に熱い水は、第1の三次ダクト104との流体接続部から第2のウォータージャケット108の反対側端部で閉じ込められる。これにより、第2のウォータージャケット108からの、熱サイフォン現象による水のくみ上げが防止される。このような熱サイフォン現象は、ピストンシリンダの急速な初期加熱が好ましい状況では、望ましくないものである。
【0032】
ピストンシリンダが所望温度になると、弁110が開き、第2のウォータージャケット108から水が流出する。第1の一次ダクト102を通じて送られる冷たい水の一部は、第1の三次ダクト104を流下して第2のウォータージャケット108に入り、そこでピストンシリンダからの熱を吸収し、ピストンシリンダの温度を制限する。
【0033】
しかし、弁110が開いたとき、第1の三次ダクト104を通る水の流れは第1の二次ダクト103を通る水の流れよりも弱い。これは、第1の三次ダクト104と第1の一次ダクト102との間の角度が鋭角であることによる。このように、より多くの冷却水が第2のウォータージャケット108よりも第1のウォータージャケット106に送られる。ピストンシリンダから奪われる熱は少ないので、該ピストンシリンダはピストンシリンダヘッドよりも高い温度に保たれる。一次ダクトに対する三次ダクトの角度を調整することで、二次ダクトと三次ダクトを通じて送られる水の正確な関係が制御される。
【0034】
第1の三次ダクト104はまた、第1の二次ダクト103よりも狭い、すなわち、より小さな断面積の穴を有する。これは、第2のウォータージャケット108に流れ込む水をさらに制限する効果を有する。したがって、第1の二次ダクト103と第1の三次ダクト104を通じて送られる水の関係も、二次ダクトの径に対する三次ダクトの径の大きさを変えることによって調整される。
【0035】
図2、3は、本発明に係る第2の冷却システム201の断面を示す。第1の冷却システム101と同一の部材は、100番台の符号ではなく、200番台の同じ符号を付す。第2の冷却システム201は、第2の一次ダクト202と、第2の二次ダクト203と、第2の三次ダクト204を有する。これらのダクトは、図1のダクトと同様に配置される。ダクトを通る水の流れは、図2に矢印211で示してある。第2の二次ダクト203は、ピストンシリンダヘッド(図示せず)用の第3のウォータージャケットに接続されている。第2の三次ダクト204は、複数のピストンシリンダの近くに設けられる第4のウォータージャケット208に接続されている。
【0036】
第1の冷却システム101と同様に、第2の三次ダクトは、熱によるサイフォン現象の影響を減じるために、第4のウォータージャケットの底部に接続されている。第2の三次ダクト204はまた、第2の一次ダクト22から第2の三次ダクト204への水の流れを低下させるために、第2の一次ダクト202に鋭角に配置されている。
【0037】
図4,5は、本発明に係る第3の冷却システム301の断面を示す。第1の冷却システム101と同一の部材は、100番台の符号ではなく、300番台の同じ符号を付す。第3の冷却システム301は、第3の一次ダクト302と、第3の二次ダクト303と、第3の三次ダクト304を有する。これらのダクトは、図1,2のダクトと同様に配置されている。水は、図4に矢印311で示すように、複数のパイプを通じて流れる。第3の二次ダクト303は、ピストンシリンダヘッド(図示せず)のための第5のウォータージャケットに接続されている。第3の三次ダクト304は、4つの要素からなる2つのダクト312に分かれている。各ダクト312は、4つのピストンシリンダの近くに設けられる第6のウォータージャケット308に接続されている。
【0038】
図6は、第3の冷却システムの平面図で、そこには、4つで一組のダクト312と第6のウォータージャケット308との間の接続が示されている。水は、図6に矢印311で示すように、第6のウォータージャケット308に流入するとともにそこから流出する。
【0039】
上述の実施例と同様に、4つで一組のダクト312は、熱的なサイフォン減少を低下させるために、第6のウォータージャケット308の底部に接続されている。第3の三次ダクト304はまた、第3の一次ダクト302から第3の三次ダクト304への水の流れを減少させるために、第2の一次ダクト302に鋭角に配置されている。
【0040】
実施例では、4つで一組のダクト312の一つは、水を通さないようにシールしてもよい。したがって、水は、開放された4つで一組のダクト312を通じて第6のウォータージャケット308に達する。一方、シールされたダクト312は、第6のウォータージャケット308とダクト302,303,304,312との間の空間上の関係を維持することによって、
【0041】
図7は、本発明に係る第4の冷却システム401を示す。第1の冷却システム101と同一の部材は、100番台の符号ではなく、400番台の同じ符号を付す。第4の冷却システム401は、同一のダクト構成をもって水をウォータージャケット406,408に導入し又そこから導出するために、第1の冷却システム101と同様に動作する。
【0042】
極めて冷たい状況では、内燃機関を起動するのが非常に難しくなることがある。特に、摂氏−40度以下では、ガソリンエンジンは始動できないことがある。したがって、これらの条件下でエンジンを補助する手段を提供することは有益である。
【0043】
第4の冷却システム401は、第7のウォータージャケット406と第8のウォータージャケット408を有する。第8のウォータージャケット408は、第1の部屋413と第2の部屋414を有する。第1の部屋413と第2の部屋414は複数の毛細管415によって連結されている。これにより、毛細管を介して第1の部屋と第2の部屋の間を液体が流れる。
【0044】
第4の冷却システム401はさらに加熱要素416を有する。加熱要素は、第2の部屋414に配置されている。加熱要素416は、電流が供給されると熱を発する導体を有する。加熱要素416は、第8のウォータージャケット408の中で該要素が冷却液に放電するのを防止するために、加熱要素416の中の液体から電気的に絶縁されている。
【0045】
したがって、摂氏−40度程度の極寒の大気温度で、加熱要素416は、第8のウォータージャケット408内で液体を加熱するために利用される。加熱された液体は、その後、ピストンシリンダを暖め、エンジンの起動を手助けする。
【0046】
加熱要素416で加熱された液体は、矢印417で示すように上昇する。加熱要素416で加熱された液体はまた、矢印418で示すように、毛細管415を介して第2の部屋414から第1の部屋413に流れ込む。しかし、毛細管415は小さいため、特に、弁410が閉じている場合、2つの部屋の間の液体の移動はゆっくりしている。そのため、第8のウォータージャケット408を通る液体が全体的に流れることがない。また、加熱された液体は、第4の三次ダクト404から十分に離れて、第2の部屋414の上部に溜まる。これにより、第8のウォータージャケット408から暖かい液体を熱的サイフォン現象によってくみ出すことがない。このように、他の実施例を参照して説明したように、第4の三次ダクト404はまた、ピストンシリンダの温度を維持し上昇するのに役立つ。
【0047】
本願明細書の説明及び請求の範囲を通じて、「有する」及び「含む」の文言及びそれらの文言を含む表現は、「〜を含むがそれに限定されるものでない」という意味であり、それらの文言や表現はその他の部分、付加部分、部材、一体化物、又はステップを排除することを意図するものでない。明細書の記載及び請求の範囲を通じて、単数形で表された部材又は部分は、内容からそのように単数であることが必要である場合を除いて、複数を含むものである。特に、不定冠詞が使用されている場所では、明細書は複数と単数の両方を意味するものと理解すべきである。
【0048】
特定の形態、実施例、本発明の形態に関連して説明した特徴、化合物等は、不適合である場合を除いて、他の形態等に適用可能であると理解すべきである。本願明細書で説明したすべての特徴、及び/又は、開示された方法のすべての工程は、互いに共存し得ない場合を除いて、他のものと組み合わせてもよい。本発明は、上述した具体的な実施例に限定されるものでない。本発明は、本願明細書に開示した新規な個々の特徴及びそれらの組み合わせに及ぶものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7