(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6142116
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】介護方法およびそれに用いる介護ロボット
(51)【国際特許分類】
A61G 7/10 20060101AFI20170529BHJP
A61G 1/003 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
A61G7/10
A61G1/003 702
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-206385(P2012-206385)
(22)【出願日】2012年9月19日
(65)【公開番号】特開2014-61035(P2014-61035A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2015年8月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】395018251
【氏名又は名称】マッスル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096839
【弁理士】
【氏名又は名称】曽々木 太郎
(72)【発明者】
【氏名】玉井 博文
(72)【発明者】
【氏名】玉井 智
【審査官】
井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−209970(JP,A)
【文献】
特開2008−272292(JP,A)
【文献】
特開2010−051444(JP,A)
【文献】
特開2002−253623(JP,A)
【文献】
特開2010−029420(JP,A)
【文献】
特開2011−172898(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/147832(WO,A1)
【文献】
特開平10−295744(JP,A)
【文献】
特開2007−111172(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3134185(JP,U)
【文献】
特開2001−353184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 7/10
A61G 1/003
A61G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端にロボットの腕が挿入される円筒状の被保持部を有する専用シートを用いる介護方法であって、
ベッドに寝ている要介助者を当該ベッドの上でロボットの進入側と反対方向に体位変換させ、同ベッドの上に前記シートを、一方の被保持部を頭部側に位置させ、他方の被保持部を足元側に位置させて敷く手順と、
前記シートに要介護者を寝かせる手順と、
ロボットおよびロボットの腕を前記要介護者に対して位置決めする手順と、
前記ロボットを前記ベッドに向けて前進させて前記腕を前記円筒状の被保持部に挿入して同被保持部を保持する手順と、
前記腕を所定量上昇させる手順と、
前記腕を所定量上昇させた状態で前記ロボットを前記ベッドから後退させる手順
とを含むことを特徴とする介護方法。
【請求項2】
要介護者の頭部側の被保持部の高さを足元側の被保持部の高さよりも高くする手順が付加されていることを特徴とする請求項1記載の介護方法。
【請求項3】
走行可能とされた基部と、前記基部に配設された第1および第2昇降軸と、U字状部材とを備え、
前記第1昇降軸は、前記U字状部材の底部を回動可能かつスライド不自在に保持する回動部材を有し、
前記第2昇降軸は、前記U字状部材の底部を回動可能かつスライド自在に保持する回動部材を有し、
前記底部が、前記第1昇降軸の回動部材に回動可能かつスライド不自在に保持され、かつ、前記第2昇降軸の回動部材に回動可能かつスライド自在に保持されてなる
ことを特徴とする介護ロボット。
【請求項4】
第1昇降軸に電力を供給する第1電源と、第2昇降軸に電力を供給する第2電源とが基部に配設されてなることを特徴する請求項3記載の介護ロボット。
【請求項5】
第1昇降軸と第2昇降軸との昇降を操作する操作盤が基部に配設されてなることを特徴する請求項3または4記載の介護ロボット。
【請求項6】
操作盤が第1昇降軸と第2昇降軸との中間部の後ろに配設されてなることを特徴する請求項5記載の介護ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介護方法およびそれに用いる介護ロボットに関する。さらに詳しくは、介護者および要介護者の負担を軽減できる介護方法およびそれに用いる介護ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、介護ヘルパーなどの介護者による高齢者や傷害者(以下、要介護者という)の生活を支援がなされている。要介護者の介護ヘルパーなどの介護者による生活支援においては、要介護者のトイレ介助や入浴介助の際に、ベッドから車椅子への移乗、あるいは車椅子からベッドへの移乗がなされている。
【0003】
しかるに、かかる移乗は、通常、一人の介護ヘルパーなどの介護者によりなされているところから、介護ヘルパーなどの介護者に多大の負担を強いる結果となっている。そのため、介護ヘルパーなどの介護者には、腰を痛める者が多数に上っている。腰痛は、介護ヘルパーなどの介護者の職業病とまでいわれるようになってきている。
【0004】
このため、介護関係者から介護ヘルパーなどの介護者の負担、とりわけ移乗の際の負担を軽減できる介護方法および介護ロボットが熱望されている。
【0005】
なお、特許文献1には、介護用キャリアの提案がなされているが、構成が複雑であるため、操作性に難点があるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−136549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑みなされたものであって、簡易にしてしかも介護ヘルパーなどの介護者の負担、とりわけ移乗の際の負担を軽減できる介護方法および介護ロボットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の介護方法は、
両端にロボットの腕が挿入される円筒状の被保持部を有する専用シートを用いる介護方法であって、 ベッドに寝ている要介助者を当該ベッドの上でロボットの進入側と反対方向に体位変換させ、同ベッドの上に
前記シートを、
一方の被保持部を頭部側に位置させ、他方の被保持部を足元側に位置させて敷く手順と、前記シートに要介護者を寝かせる手順と、ロボットおよびロボットの腕を前記要介護者に対して位置決めする手順と、前記ロボットを前記ベッドに向けて前進させて前記腕
を前記円筒状の被保持部に挿入して同被保持部を保持する手順と、前記腕を所定量上昇させる手順と、前記腕を所定量上昇させた状態で前記ロボットを前記ベッドから後退させる手順とを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の介護方法においては、要介護者の頭部側の被保持部の高さを足元側の被保持部の高さよりも高くする手順が付加されているのが好ましい。
【0010】
本発明の介護ロボットは、走行可能とされた基部と、前記基部に配設された第1および第2昇降軸と、U字状部材とを備え、前記第1昇降軸は、前記U字状部材の底部を回動可能かつスライド不自在に保持する回動部材を有し、前記第2昇降軸は、前記U字状部材の底部を回動可能かつスライド自在に保持する回動部材を有し、前記底部が、前記第1昇降軸の回動部材に回動可能かつスライド不自在に保持され、かつ、前記第2昇降軸の回動部材に回動可能かつスライド自在に保持されてなることを特徴とする。
【0011】
本発明の介護ロボットにおいては、第1昇降軸に電力を供給する第1電源と、第2昇降軸に電力を供給する第2電源とが基部に配設されてなるのが好ましい。
【0012】
また、本発明の介護ロボットにおいては、第1昇降軸と第2昇降軸との昇降を操作する操作盤が基部に配設されてなるのが好ましい。その場合、操作盤が第1昇降軸と第2昇降軸との中間部の後ろに配設されてなるのがさらに好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は前記の如く構成されているので、要介護者をベッドから車椅子などへの移乗の際に、介護者が要介護者をベッドから持ち上げる必用がなくなるため、介護者の負担が軽減されるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の介護方法による介護の手順を示す概略図である。
【
図5】U字状部材の保持部の一例の概略図であって、同(a)は固定部を示し、同(b)はスライド部を示す。
【
図8】専用シートの被保持部の変形例の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施形態に基づいて説明するが、本発明はかかる実施形態のみに限定されるものではない。
【0016】
概要
本発明の介護方法は、介護ロボットにより概略次のような手順によりベッドに寝ている要介護者の車椅子などへの移乗を支援するものである。つまり、車椅子などへの移乗を移乗支援ロボット(介護ロボット)によりなすものである。なお、以下の操作は介護者によりなされるものとされる。
【0017】
手順1:ベッドに寝ている要介護者を当該ベッドの上で移乗支援ロボット(以下、単にロボットという)の進入側と反対方向に体位変換をさせ、つまり体全体を半分起こした状態としてベッドの端付近に専用シートを敷く(
図1(a)参照)。
【0018】
手順2:要介護者の体位を元に戻して要介護者を専用シートに寝かせた後、
ロボットを前進させてベッドに進入させ、そのアーム(腕)で専用シートを保持する(
図1(b)参照)。
【0019】
手順3:専用シートを持ち上げる。つまり、要介護者をベッドから浮かせる (
図1 (c)参照)。
【0020】
手順4:ロボットを後退させて要介護者をベッド脇に移動させる(
図1(d)参照)。
【0021】
しかして、このようにすることにより、要介護者をベッドから車椅子などへ移乗する際における介護ヘルパーなどの介護者の負担が軽減される。
【0022】
以下、図を参照しながら、ロボットの構成について説明する。
【0023】
ロボットRは、
図2〜
図5に示すように、前後方向に走行自在とされた基部Bと、基部Bに立設された第1昇降軸1と、基部Bに第1昇降軸1に一定の間隔を設けて立設された第2昇降軸2と、第1昇降軸1の上端部に装着された主回動部材3と、第2昇降軸2の上端部に装着された従回動部材4と、主回動部材3にスライド不自在に装着され、かつ従回動部材4にスライド自在に装着されたU字状部材5と、駆動用電源6と、操作盤10とを主要構成要素として備えてなるものとされる。
【0024】
基部Bは、
図2および
図4に示すように、両端部に走行部材20が平行に装着され、同走行部材20により前後方向に走行可能とされている。走行部材20は、両端部にキャップが装着されたパイプ21の両端部に走行車輪22が装着されてなるものとされる。
【0025】
なお、走行車輪22はパイプ21に旋回自在に装置されてもよい。そうすることにより、ロボットRは前後のみならず左右にも走行可能とされる。
【0026】
第1昇降軸1および第2昇降軸2は、例えば電動シリンダーからなるものとされる。
【0027】
U字状部材5は、底部5aと底部5aから突出させられている腕5bとを含むものとされ、底部5aは主回動部材3および従回動部材4に前述したよう保持されている。また、両腕5b,5bの間隔は、専用シート30の端部に設けられている被保持部31(
図7参照)の間隔と一致させられている。
【0028】
図5に、固定部およびスライド部の一例を示す。固定部においては、底部5aは
図5(a)に示すように、第1昇降軸1の上端部に装着された主回動部材3の把持部3aにより把持されてスライド不自在とされる。一方、スライド部においては、底部5aは
図5(b)に示すように、第2昇降軸2の上端部に装着された従回動部材4のスライド部4aに挿通させてスライド自在とされる。なお、図中、符号4bはローラーベアリングを示す。
【0029】
駆動用電源6は、例えばバッテリーとされ、これによりロボットRをいわゆるコードレスとすることができる。また、駆動用電源6は、第1昇降軸1を駆動する第1駆動用電源6Aと、第2昇降軸2を駆動する第2駆動用電源6Bとを含むものとされ、第1昇降軸1と第1駆動用電源6Aとは電気的に接続され、第2昇降軸2と第2駆動用電源6Bとは電気的に接続されている。
【0030】
操作盤10は、
図6に示すように、第1駆動用電源6Aをオンオフする第1駆動用電源スイッチ11と、第2駆動用電源6Bをオンオフする第2駆動用電源スイッチ12と、第1昇降軸1を上昇させる第1上昇用ボタン13と、第1昇降軸1を下降させる第1下降用ボタン14と、第2昇降軸2を上昇させる第2上昇用ボタン15と、第2昇降軸2を下降させる第2下降用ボタン16とを有するものとされる。操作盤10は、例えば、第1昇降軸1と第2昇降軸2との中間部の後ろに配設される。
【0031】
図7に、専用シート30の一例を示す。
【0032】
専用シート30は、
図7に示すように、両端にロボットRの腕5bが挿入される円筒状の被保持部31を有するものとされる。
【0033】
被保持部31は、基材32と基材32の外側に配設されたクッション性を有する素材からなるクッション層33と、合成樹脂シートからなる表層34とからなるものとされる。
【0034】
次に、かかる構成とされたロボットRによる要介護者の移乗について説明する。
【0035】
手順11:ロボットRを適宜移動させ、U字状部材5の両腕5b,5bを専用シート30の両端部に設けられた被保持部31の位置に位置合わせする。この場合、第1昇降軸1が要介護者の頭に近くなるようロボットRの位置合わせをする。
【0036】
手順12:操作盤10のボタンを適宜押下してU字状部材5の両腕5b,5bの高さを、要介護者が寝かさせている専用シート30の両端部に設けられた被保持部31,31の高さに合わせる。
【0037】
手順13:ロボットRを前進させてU字状部材5の両腕5b,5bをそれぞれ専用シート30の両端部に設けられた被保持部31,31に挿入する。
【0038】
手順14:第1上昇用ボタン13および第2上昇用ボタン15を押下してU字状部材5の両腕5b,5bをベッドから所定の高さとする。
【0039】
手順15:ロボットRを後退させてロボットをベッドから離す。つまり、要介護者をベッド脇に移動させる。
【0040】
手順16:介護者を要介護者の足元側に位置させた状態で、第1上昇用ボタン13を適宜押下して要介護者の頭を高くするとともに、要介護者を介護者に預ける。
【0041】
手順17:介護者は要介護者を、例えば車椅子に移乗させる。
【0042】
このように、本実施形態のロボットRによれば、介護者が要介護者をベッドから持ち上げる必用がなくなり、介護者の負担が軽減される。例えば、介護者の職業病と称される腰痛の解消が図られる。
【0043】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明してきたが、本発明はかかる実施形態のみに限定されるものではなく、種々改変が可能である。
【0044】
例えば、
図8に示すように、専用シート30の被保持部31のロボットRの腕5bが挿入される側にラッパ状の案内部32aを形成するようにされてもよい。
【0045】
また、本実施形態では、電力はロボットが保持するバッテリーによりなされるようにされているが、コードにより商用電源から電力が供給されるようにされてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、介護産業に適用できる。
【符号の説明】
【0047】
B 基部
R ロボット
1 第1昇降軸
2 第2昇降軸
3 主回動部材
3a 把持部
4 従回動部材
4a スライド部
4b ローラーベアリング
5 U字状部材
5a 底部
5b 腕
6 電源
10 操作盤
11 第1駆動用電源スイッチ
12 第2駆動用電源スイッチ
13 第1上昇用ボタン
14 第1下降用ボタン
15 第2上昇用ボタン
16 第2下降用ボタン
20 走行部材
21 パイプ
22 走行車輪
30 専用シート
31 被保持部
32 基材
32a 案内部
33 クッション層
34 表層