特許第6142118号(P6142118)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エマオス京都の特許一覧 ▶ 独立行政法人国立高等専門学校機構の特許一覧

特許6142118多孔質膜、電解質膜、二次電池および燃料電池
<>
  • 特許6142118-多孔質膜、電解質膜、二次電池および燃料電池 図000008
  • 特許6142118-多孔質膜、電解質膜、二次電池および燃料電池 図000009
  • 特許6142118-多孔質膜、電解質膜、二次電池および燃料電池 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6142118
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】多孔質膜、電解質膜、二次電池および燃料電池
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/26 20060101AFI20170529BHJP
   C08J 9/40 20060101ALI20170529BHJP
   B32B 5/32 20060101ALI20170529BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20170529BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20170529BHJP
   H01M 2/16 20060101ALI20170529BHJP
   H01M 14/00 20060101ALI20170529BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20170529BHJP
【FI】
   C08J9/26 102
   C08J9/40CFC
   B32B5/32
   B32B27/38
   H01M10/0565
   H01M2/16 P
   H01M14/00 P
   H01M2/16 L
   H01M8/02 P
   H01M8/02 M
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-77336(P2012-77336)
(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2013-203998(P2013-203998A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】505191803
【氏名又は名称】株式会社エマオス京都
(73)【特許権者】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】石塚 紀生
(72)【発明者】
【氏名】辻井 敬亘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴哉
【審査官】 清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/046145(WO,A1)
【文献】 特開2007−125821(JP,A)
【文献】 特開2010−287380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00−9/42
B32B 1/00−43/00
H01M 2/16
H01M 8/02
H01M 10/0565
H01M 14/00
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共連続構造を有する膜状の多孔質構造体と、前記多孔質構造体の少なくとも一方の主面に、該主面を被覆してなる変性層とを備える多孔質膜の製造方法であって、
前記多孔質構造体が、エポキシ樹脂の硬化物からなり、
前記変性層が、前記多孔質構造体の空隙の平均孔径よりも小さな平均孔径を有する多孔質層であり、
前記変性層が、前記多孔質構造体を構成する化合物と異なる化合物であって、水酸基を少なくとも有する変性用化合物が、前記エポキシ樹脂の硬化物と化学結合を形成することにより構成されたものであり、
基材上に、前記変性用化合物からなる変性用化合物層を形成する工程と、
前記基材上に形成された前記変性用化合物層の上に、エポキシ樹脂からなる層を形成することで、前記基材、前記変性用化合物層および前記エポキシ樹脂からなる層がこの順に形成されてなる積層体を得る工程と、
前記積層体に対し、前記エポキシ樹脂の硬化による多孔質構造体の形成と、前記エポキシ樹脂と前記変性用化合物との反応とを同時に行う工程と、
前記多孔質構造体の一方の面上に、前記変性用化合物層を構成する前記変性用化合物のうち一部を残存させた状態にて、前記変性用化合物層を前記基材とともに除去する工程と、を備える多孔質膜の製造方法。
【請求項2】
前記変性層の厚みが、1000nm以下であることを特徴とする請求項に記載の多孔質膜の製造方法。
【請求項3】
共連続構造を有する膜状の多孔質構造体と、前記多孔質構造体の両主面に、該主面を被覆してなる変性層とを備える多孔質膜の製造方法であって、
前記多孔質構造体が、エポキシ樹脂の硬化物からなり、
前記変性層が、前記多孔質構造体の空隙の平均孔径よりも小さな平均孔径を有する多孔質層であり、
前記変性層が、前記多孔質構造体を構成する化合物と異なる化合物であって、水酸基を少なくとも有する変性用化合物が、前記エポキシ樹脂の硬化物と化学結合を形成することにより構成されたものであり、
第1の基材上に、前記変性用化合物からなる第1変性用化合物層を形成する工程と、
第2の基材上に、前記変性用化合物からなる第2変性用化合物層を形成する工程と、
前記第1の基材上に形成された前記第1変性用化合物層の上に、エポキシ樹脂からなる層を形成する工程と、
前記エポキシ樹脂からなる層の上に、前記第2の基材上に形成された前記第2変性用化合物層を重ねることで、前記第1の基材、前記第1変性用化合物層、前記エポキシ樹脂からなる層、前記第2変性用化合物層および前記第2の基材がこの順に形成されてなる積層体を得る工程と、
前記積層体に対し、前記エポキシ樹脂の硬化による多孔質構造体の形成と、前記エポキシ樹脂と前記変性用化合物との反応とを同時に行う工程と、
前記多孔質構造体の一方の面上に、前記第1変性用化合物層を構成する前記変性用化合物のうち一部を残存させた状態にて、前記第1変性用化合物層を前記第1基材とともに除去する工程と、
前記多孔質構造体の他方の面上に、前記第2変性用化合物層を構成する前記変性用化合物のうち一部を残存させた状態にて、前記第2変性用化合物層を前記第2基材とともに除去する工程と、を備える多孔質膜の製造方法。
【請求項4】
前記多孔質膜構造体の空隙中にイオン液体を含有させる工程をさらに備えることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の多孔質膜の製造方法。
【請求項5】
前記多孔質膜構造体が、骨格内に1nm〜1μmの孔径のメソポアを備えていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の多孔質膜の製造方法。
【請求項6】
前記多孔質膜構造体が、前記多孔質膜構造体を構成することとなるモノマーと、該モノマーに対して相溶性を示し、かつ、該モノマーを重合して得られる重合体に対して非相溶性を示す化合物と、を用いた重合誘起相分離によって形成されたものである請求項1〜のいずれかに記載の多孔質膜の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜のいずれかに記載の方法により得られる多孔質膜に、電解質を含浸させる工程を備える電解質膜の製造方法。
【請求項8】
請求項に記載の方法により得られる電解質膜を用いる二次電池の製造方法。
【請求項9】
請求項に記載の方法により得られる電解質膜を用いる燃料電池の製造方法。
【請求項10】
請求項に記載の方法により得られる電解質膜を用いる電気二重層キャパシタの製造方法。
【請求項11】
請求項に記載の方法により得られる電解質膜を用いる色素増感型太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質膜、電解質膜、二次電池および燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元網目構造の連続した骨格と空隙とを有する多孔質体は一般的にモノリス型多孔体と呼ばれている。このようなモノリス型多孔体は、主にクロマトグラフィー分野でカラムと呼ばれる分離媒体として用いられているが、近年では、二次電池や燃料電池の電解質膜やセパレータとしての用途が検討されている。たとえば、特許文献1では、エポキシ樹脂硬化物からなる三次元網目構造の骨格と空隙とを有し、骨格内に1nm〜1μmの孔径のメソポアを備えてなるモノリス型多孔体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−269948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、上述したモノリス型多孔体を、二次電池や燃料電池の電解質膜やセパレータ用途に適用するために、たとえば、モノリス型多孔体を構成する原料を用いて塗布法などにより、基材上に、モノリス型多孔体を薄膜形状に成形すると、基材と反対側の空気と接する面に、非多孔性のスキン層が形成されてしまい、この非多孔性のスキン層の影響により、十分なイオン導電性を得ることができないという課題があった。
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、スキン層の形成が抑制され、これにより、電解質用途に用いた場合に優れたイオン導電性を発現可能な多孔質膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明によれば、
〔1〕共連続構造を有する膜状の多孔質構造体と、前記多孔質構造体の少なくとも一方の主面に、該主面を被覆してなる変性層とを備える多孔質膜の製造方法であって、
前記多孔質構造体が、エポキシ樹脂の硬化物からなり、
前記変性層が、前記多孔質構造体の空隙の平均孔径よりも小さな平均孔径を有する多孔質層であり、
前記変性層が、前記多孔質構造体を構成する化合物と異なる化合物であって、水酸基を少なくとも有する変性用化合物が、前記エポキシ樹脂の硬化物と化学結合を形成することにより構成されたものであり、
基材上に、前記変性用化合物からなる変性用化合物層を形成する工程と、
前記基材上に形成された前記変性用化合物層の上に、エポキシ樹脂からなる層を形成することで、前記基材、前記変性用化合物層および前記エポキシ樹脂からなる層がこの順に形成されてなる積層体を得る工程と、
前記積層体に対し、前記エポキシ樹脂の硬化による多孔質構造体の形成と、前記エポキシ樹脂と前記変性用化合物との反応とを同時に行う工程と、
前記多孔質構造体の一方の面上に、前記変性用化合物層を構成する前記変性用化合物のうち一部を残存させた状態にて、前記変性用化合物層を前記基材とともに除去する工程と、を備える多孔質膜の製造方法、
〕前記変性層の厚みが、1000nm以下であることを特徴とする前記〔〕に記載の多孔質膜の製造方法、
〕共連続構造を有する膜状の多孔質構造体と、前記多孔質構造体の両主面に、該主面を被覆してなる変性層とを備える多孔質膜の製造方法であって、
前記多孔質構造体が、エポキシ樹脂の硬化物からなり、
前記変性層が、前記多孔質構造体の空隙の平均孔径よりも小さな平均孔径を有する多孔質層であり、
前記変性層が、前記多孔質構造体を構成する化合物と異なる化合物であって、水酸基を少なくとも有する変性用化合物が、前記エポキシ樹脂の硬化物と化学結合を形成することにより構成されたものであり、
第1の基材上に、前記変性用化合物からなる第1変性用化合物層を形成する工程と、
第2の基材上に、前記変性用化合物からなる第2変性用化合物層を形成する工程と、
前記第1の基材上に形成された前記第1変性用化合物層の上に、エポキシ樹脂からなる層を形成する工程と、
前記エポキシ樹脂からなる層の上に、前記第2の基材上に形成された前記第2変性用化合物層を重ねることで、前記第1の基材、前記第1変性用化合物層、前記エポキシ樹脂からなる層、前記第2変性用化合物層および前記第2の基材がこの順に形成されてなる積層体を得る工程と、
前記積層体に対し、前記エポキシ樹脂の硬化による多孔質構造体の形成と、前記エポキシ樹脂と前記変性用化合物との反応とを同時に行う工程と、
前記多孔質構造体の一方の面上に、前記第1変性用化合物層を構成する前記変性用化合物のうち一部を残存させた状態にて、前記第1変性用化合物層を前記第1基材とともに除去する工程と、
前記多孔質構造体の他方の面上に、前記第2変性用化合物層を構成する前記変性用化合物のうち一部を残存させた状態にて、前記第2変性用化合物層を前記第2基材とともに除去する工程と、を備える多孔質膜の製造方法、
〕前記多孔質膜構造体の空隙中にイオン液体を含有させる工程をさらに備えることを特徴とする前記〔1〕〜〔〕のいずれかに記載の多孔質膜の製造方法、
〕前記多孔質膜構造体が、骨格内に1nm〜1μmの孔径のメソポアを備えていることを特徴とする前記〔1〕〜〔〕のいずれかに記載の多孔質膜の製造方法、
〕前記多孔質膜構造体が、前記多孔質膜構造体を構成することとなるモノマーと、該モノマーに対して相溶性を示し、かつ、該モノマーを重合して得られる重合体に対して非相溶性を示す化合物と、を用いた重合誘起相分離によって形成されたものである前記〔1〕〜〔〕のいずれかに記載の多孔質膜の製造方法、
〕前記〔1〕〜〔〕のいずれかに記載の方法により得られる多孔質膜に、電解質を含浸させる工程を備える電解質膜の製造方法、
〕前記〔〕に記載の方法により得られる電解質膜を用いる二次電池の製造方法、
〕前記〔〕に記載の方法により得られる電解質膜を用いる燃料電池の製造方法、
10〕前記〔〕に記載の方法により得られる電解質膜を用いる電気二重層キャパシタの製造方法、
11〕前記〔〕に記載の方法により得られる電解質膜を用いる色素増感型太陽電池の製造方法、
が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、スキン層の形成が抑制され、これにより、電解質用途に用いた場合に優れたイオン導電性を発現可能な多孔質膜、ならびに、この多孔質膜を備えてなる電解質膜、二次電池および燃料電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明に係る多孔質膜の一例の断面を示す模式図である。
図2図2は、本発明に係る多孔質膜の製造方法を説明するための模式図である。
図3図3は、本発明の実施例5において得られた多孔膜の多孔質構造体10(イオン液体を含有する多孔質構造体)部分のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明に係る多孔質膜の一例の断面を示す模式図である。本発明の多孔質膜は、図1に示すように、共連続構造を有する膜状の多孔質構造体10と、多孔質構造体10の両主面を被覆してなる変性層20とを備える。
【0010】
なお、以下においては、多孔質構造体10の両主面に、変性層20が形成された構成を例示して説明するが、このような構成に限定されるものではなく、多孔質構造体10の一方の主面にのみ、変性層20が形成されたような構成であってもよい。
【0011】
多孔質構造体10は、共連続構造を有する膜状の構造体である。多孔質構造体10としては、特に限定されないが、たとえば、樹脂の硬化物の三次元分岐網目構造を骨格として有し、かつ骨格間に空隙(マクロ孔)を有しているものが好ましい。
【0012】
すなわち、多孔質構造体10の基礎となる構造は、たとえば、1μm以上の骨格と空隙(マクロ孔)とがお互いに絡み合った三次元的な網目構造を有しているものが好ましい。
【0013】
本発明においては、多孔質構造体10の骨格を形成するための樹脂としては、特に限定されず、上述したような多孔質構造を形成可能な樹脂であれば何でもよいが、たとえば、エポキシ樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂などが挙げられるが、極めて微細な多孔質構造を形成することができるという点より、エポキシ樹脂が好ましく用いられる。
【0014】
なお、多孔質構造体10の空隙(マクロ孔)の平均孔径は、好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは0.1〜50μm、さらに好ましくは0.1〜10μmである。
【0015】
また、多孔質構造体10は、マクロ孔に加えて、多孔質構造体10の骨格内にメソポアを有していてもよい。骨格内に形成されるメソポアは、通常、マクロ孔よりも孔径の小さな細孔である。また、必ずしも骨格内のメソポア構造は三次元網目構造のような連続孔を形成している必要はなく、たとえば、一様な貫通孔や骨格を構成している格子間の空隙と見られる構造を有しているものであってもよい。メソポアの孔径は、好ましくは1nm〜1μmであり、より好ましくは1〜500nmであり、さらに好ましくは1〜300nmである。
【0016】
なお、空隙(マクロ孔)の平均孔径やメソポアの径は、たとえば、電子顕微鏡画像で確認することが最も簡略な方法であるが、水銀圧入法や窒素吸着法で測定することも可能である。
【0017】
変性層20は、多孔質構造体10を構成する化合物と異なる化合物からなり、多孔質構造体10の両主面を被覆してなる層である。なお、変性層20は、通常、多孔質構造体10の空隙の平均孔径よりも小さな平均孔径を有する多孔質層、または非多孔質層として形成される。
【0018】
変性層20を構成する化合物としては、多孔質構造体10を構成する化合物と反応することで、多孔質構造体10を構成する化合物と化学的な結合を形成可能な官能基を有するものが好ましい。すなわち、変性層20は、多孔質構造体10と化学的に結合していることが好ましい。
【0019】
このような変性層20を構成する化合物としては、たとえば、多孔質構造体10を形成するための化合物として、エポキシ樹脂を用いる場合を例示すると、官能基として、たとえば、1級アミノ基、2級アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、ヒドロキシ基などを有する化合物が挙げられる。これらのなかでも、二次電池や燃料電池などの電解質用途として用いた場合におけるイオン導電性の観点より、イオン溶解性の高いものが好ましく、特に、アミノ基、カルボキシル基、オキシアルキレン基、イオン性基、シアノ基、カーボネート、ハロゲン基、チオール基またはヒドロキシ基を有する化合物が好ましく、なかでも、ヒドロキシ基を有する化合物が好ましい。なお、図1に示すように、変性層20が、多孔質構造体10の両主面に形成される場合には、各変性層20は同様の化合物から構成されるものであってもよいし、あるいは、異なる化合物から構成されるものであってもよい。
【0020】
変性層20の厚みは、好ましくは1000nm以下であり、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下である。変性層20の厚みが厚すぎると、二次電池や燃料電池などの電解質用途として用いた場合におけるイオン導電性が低下してしまうおそれがある。なお、変性層20の厚みの下限は、特に限定されないが、通常10nm程度である。また、変性層20が多孔質層である場合における、変性層20の開孔率は、好ましくは40%以上であり、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは80%以上である。なお、変性層20が多孔質層である場合においては、変性層20の開孔率や変性層20を構成する材料によっては、電解質用途に用いた際においては、電解液に膨潤することで、非多孔性を有するものとなる場合がある。
【0021】
次いで、本発明の多孔膜の製造方法について説明する。
本発明の多孔膜は、たとえば、次の方法により製造することができる。すなわち、図2(A)に示すように、まず、基材30上に、変性層20を形成することとなる変性層用組成物層20aを形成することで、変性層用組成物層20aを備える基材30を準備する。次いで、図2(B)に示すように、この変性層用組成物層20aを備える基材30の変性層用組成物層20a側に、多孔質構造体10を構成することとなる多孔質構造体用組成物層10aを形成する。
【0022】
次いで、図2(C)に示すように、多孔質構造体用組成物層10a上に、変性層用組成物層20aを備える基材30を、変性層用組成物層20a側の面が、多孔質構造体用組成物層10aに接するように載せる。そして、このようにして得られた積層体について、多孔質構造体用組成物層10aを構成する硬化性の成分を硬化させる処理を行い、その後、基材30を剥離することにより、図1に示すような本発明の多孔膜を形成することができる。
【0023】
なお、本発明においては、変性層用組成物層20aは、多孔質構造体用組成物層10aと、基材30との間に形成され、これにより、基材30を剥離する際に、その一部が基材30とともに剥離されることとなる犠牲層として作用するものである。すなわち、変性層用組成物層20aは、基材30上に形成されることにより、基材30と多孔質構造体用組成物層10aとが密着してしまい、これらの間で剥離不良が発生しないようにするために設けられる層であり、その一部が基材30とともに剥離される一方で、残部が、図1に示す変性層20として残存することとなる。そして、これにより、本発明の多孔膜は、図1に示すように、多孔質構造体10の両主面に、変性層20が形成された構成をとることができるものである。
【0024】
以下、本発明の多孔膜の製造方法について、具体的に説明する。なお、以下においては、多孔質構造体10の骨格を形成するための樹脂の硬化物として、エポキシ樹脂の硬化物を用いる場合を例示して説明する。
【0025】
まず、図2(A)に示すように、基材30上に、変性層20を形成することとなる変性層用組成物層20aを形成し、変性層用組成物層20aを形成してなる基材30を準備する。基材30としては、その表面に、変性層用組成物層20aを形成可能なものでれば特に限定されないが、たとえば、ガラス板、プラスチック板等が挙げられる。
【0026】
また、変性層用組成物層20aを構成する化合物としては、基材30および多孔質構造体用組成物層10aとの親和性および密着性に優れる化合物であればよく、特に限定されないが、得られる多孔膜における、多孔質構造体10を構成する化合物、すなわち、エポキシ樹脂と化学的な結合を形成可能な官能基を有する化合物が好ましい。具体的には、1級アミノ基、2級アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、ヒドロキシ基を有する化合物などが挙げられる。上述したように、変性層用組成物層20aは、その一部は、犠牲層として除去される一方で、残部は、変性層20として残存することとなることから、二次電池や燃料電池などの電解質用途として用いた場合におけるイオン導電性の観点より、イオン溶解性の高いものが好ましく、特に、アミノ基、カルボキシル基、オキシアルキレン基、イオン性基、シアノ基、カーボネート基、ハロゲン基、チオール基またはヒドロキシ基を有する化合物が好ましく、とりわけ、ヒドロキシ基を有する化合物が好ましい。
【0027】
このような変性層用組成物層20aを構成する化合物の具体例としては、ポリビニルアルコール、シリコーン、フッ素系ポリマーの他、自己架橋型ポリマーなどの各種樹脂が挙げられるが、これらのなかでも、基材30および多孔質構造体用組成物層10aとの親和性および密着性が良好であり、かつ、エポキシ樹脂に対する反応性が高いという点より、ポリビニルアルコールあるいはその変性物(たとえば、多孔質構造体用組成物層10aを構成する化合物に対する反応性がより高い官能基で変性してなる変性物など)が好ましい。
【0028】
特に、ポリビニルアルコールは、水に対する溶解性が高く、水に溶解することで容易に除去ができるため、変性層用組成物層20aとして、ポリビニルアルコールを用いることにより、犠牲層として良好に作用することができる。しかも、ポリビニルアルコールは、エポキシ樹脂に対する反応性が高いため、その一部が、多孔質構造体10(多孔質構造体用組成物層10a)を構成するエポキシ樹脂と反応して、化学的な結合を形成するため、これにより、変性層用組成物層20aを除去した後も、一部が残存し、変性層20を良好に形成することができる。
【0029】
ポリビニルアルコールとしては、重量平均重合度が、1,000〜5,000のものが好ましく、より好ましくは2,000〜5,000であり、さらに好ましくは2,000〜4,000である。また、鹸化度が、80〜98%のものが好ましく、より好ましくは85〜95%であり、さらに好ましくは85〜90%である。
【0030】
基材30上に、変性層用組成物層20aを形成する方法としては、特に限定されないが、たとえば、ポリビニルアルコールを用いる場合には、1〜10重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製し、このポリビニルアルコール水溶液を基板上に流延した後、乾燥して水分を除去することによって、ポリビニルアルコールからなる変性層用組成物層20aを形成することができる。変性層用組成物層20aの厚みは、特に限定されないが、通常、10〜5000nm、好ましくは10〜1000nm、より好ましくは10〜500nmである。
【0031】
また、変性層用組成物層20aには、多孔質構造体10(多孔質構造体用組成物層10a)を構成するエポキシ樹脂との親和性を向上させるために、シランカップリング剤などの公知のカップリング剤を含有させてもよい。
【0032】
次いで、図2(B)に示すように、このようにして得られた変性層用組成物層20aを備える基材30の変性層用組成物層20a側の面に、多孔質構造体10を構成することとなる多孔質構造体用組成物層10aを形成する。
【0033】
多孔質構造体用組成物層10aは、通常、多孔質構造体10を構成することなるエポキシ樹脂の硬化物を得るためのエポキシ樹脂組成物を用いて形成される。
エポキシ樹脂組成物としては、エポキシ樹脂、硬化剤、およびポロゲンを含有するものを用いることができる。
【0034】
エポキシ樹脂としては、たとえば、芳香環由来の炭素原子を含む芳香族エポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラキス(ヒドロキシフェニル)エタンべ−スなどのポリフェニルベースエポキシ樹脂、フルオレン含有エポキシ樹脂、2,2,2,−トリ−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアネートなどのトリグリシジルイソシアヌレート、トリアジン環含有エポキシ樹脂等、複素芳香環を含むエポキシ樹脂、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミンなどを挙げることができる。
また、芳香環由来の炭素原子を含まない非芳香族エポキシ樹脂として、脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂肪族グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルエステル型エポキシ樹脂、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。
これらのなかでも、分子内にグリシジル基が二つ以上有するエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、2,2,2,−トリ−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアネート、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンがより好ましい。
【0035】
また、硬化剤としては、芳香環由来の炭素原子を含む芳香族硬化剤として、メタフェニレンジアミンやジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、ベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノメチルベンゼンなどの芳香族アミン、無水フタル酸や無水トリメット酸、無水ピロメット酸などの芳香族酸無水物、フェノール系化合物、フェノール系樹脂、フェノールホルムアルデヒド型ノボラックやフェノールアルキル型ノボラック等のノボラック型フェノール樹脂、イソフタル酸ジヒドラジドなどの芳香族ヒドラジド類、トリアジン環などの複素芳香環を有する芳香族アミン、1,1,1’,1’−テトラメチル−4,4’−(メチレン−ジ−パラ−フェニレン)ジセミカルバジド等の芳香族ポリアミン類及び芳香族ポリアミンヒドラジド類などが挙げられる。
また、芳香環由来の炭素原子を含まない非芳香族硬化剤として、エチレンジアミンやジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,3,6−トリスアミノメチルヘキサン、ポリメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ポリエーテルジアミンなどの脂肪族アミン類、アジピン酸ジヒドラジドやセバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジドなどの脂肪族ヒドラジド類、イソホロンジアミンやメンタンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンアダクト、ビス(4−アミノシクロへキシル)メタンやこれらの変性品などの脂環族ポリアミン類、1,6−ヘキサメチレンビス(N,N−ジメチルセミカルバジド)などの脂肪族ポリアミンヒドラジド類、ポリアミン類とダイマー酸からなる脂肪族ポリアミドアミン類やポリアミノアミド類など、ビューレトリートリ−(ヘキサメチレン−N,N−ジメチルセミカルバジド)を主成分とするオリゴマープロピレングリコールモノメチルエーテル溶液、ビューレトリートリ−(ヘキサメチレン−N,N−ジメチルセミカルバジド)を主成分とするオリゴマーN,N−ジメチルホルムアミド溶液、スピログリコールや2−(5−エチル−5−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキサン−2−イル)−2−メチルプロパン−1−オールなどのグリコール類、その他アミンアダクト系硬化剤などが挙げられる。
これらのなかでも、25℃における粘度が400mPa・s以上のポリアミノアミド系硬化剤を用いることが好ましい。
【0036】
多孔質構造体用組成物層10aを形成するためのエポキシ樹脂組成物中における、エポキシ樹脂と硬化剤との添加割合は、エポキシ基1当量に対して、硬化剤当量(アミン当量)が0.6〜1.5の範囲になるように調整することが好ましい。硬化剤当量比が0.6より少ない場合はエポキシ樹脂硬化物の架橋密度が低くなり、耐熱性、耐溶剤性などが低下する場合がある。また1.5より多くなると、未反応の官能基が多くなり、未反応のまま硬化物中に残留したり、あるいは架橋密度向上を阻害する要因となり好ましくない。
【0037】
ポロゲンは、硬化後の多孔質構造体10中に形成されるマクロ孔やメソポアの空隙を形成するための成分である。ポロゲンとしては、上述したエポキシ樹脂および硬化剤を溶解可能であり、かつ、エポキシ樹脂と硬化剤とが重合した後、反応誘起相分離を生じさせることが可能な化合物を用いることができる。
【0038】
このようなポロゲンとしては、たとえば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどエステル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールなどのグリコール類などを挙げることができる。これらのなかでも、分子量200以下のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールが好ましい。あるいは、分子量600以上のポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなど、室温中において蝋質(半固形)状であっても、重合温度においてエポキシ樹脂や硬化剤と相溶し、かつ液状となるものであれば、ポロゲンとして使用することができる。
【0039】
ポロゲンの配合量は、エポキシ樹脂100重量部に対して、好ましくは、30〜90重量部であり、より好ましくは60〜90重量部である。ポロゲンの配合量を上記範囲とすることにより、硬化後の多孔質構造体10のミクロ構造(マクロ孔やメソポアの孔径)をより適切なものとすることができる。
【0040】
また、多孔質構造体用組成物層10aを形成するためのエポキシ樹脂組成物としては、エポキシ樹脂、硬化剤、およびポロゲンに加えて、ポロゲンと同等の効果をもたらす有機高分子や、金属アルコキシドからなるゾルをさらに配合してもよい。ポロゲンと同等の効果をもたらす有機高分子としては、重合系に均一かつ溶解することが出来れば特に分子量などは限定されないが、たとえば、ポリエチレングルコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリメチルメタクリレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、およびエチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体に代表されるこれらの共重合体等が挙げられる。これらのなかでも、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体などが好ましい。これら有機高分子の配合割合は、得ようとする骨格部のメソポア径に応じて適宜調節することができる。
【0041】
また、金属アルコキシドからなるゾルを配合することで、後に溶解させ、金属アルコキシドからなるゾルが物理的に存在した孔を骨格内のメソポアとして形成することができる。金属アルコキシドからなるゾルとしては、シリカアルコキシドとして、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、1,2−ビストリメトキシシリルエタン、Si原子に1〜4つのアルコキシ基が結合したシリカアルコキシド、グリシジル基を導入したシリカアルコキシド等、チタンアルコキシドとして、チタニウムn−プロポキシド、チタニウムイソプロポキシド、チタニウムn−ブトキシド、チタニウムt−ブトキシド等、ジルコニウムアルコキシドとして、ジルコニウムプロポキシド、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、ジルコニウムt−ブトキシド等、ハフニウムアルコキシドとして、ハフニウムプロポキシド、ハフニウムイソプロポキシド、ハフニウムn−ブトキシド、ハフニウムt−ブトキシド等が挙げられる。
これらのなかでも、Si原子に1〜4つのアルコキシ基が結合したシリカアルコキシド、グリシジル基を導入したシリカアルコキシドからなるゾルが好ましく、グリシジル基を導入したシリカアルコキシドからなるゾルが特に好ましい。
【0042】
また、多孔質構造体用組成物層10aを形成するためのエポキシ樹脂組成物には、変性層20(変性層用組成物層20a)を構成する化合物(たとえば、ポリビニルアルコール)との親和性を向上させるために、シランカップリング剤などの公知のカップリング剤を含有させてもよい。
【0043】
変性層用組成物層20aを備える基材30の変性層用組成物層20a側の面に、多孔質構造体用組成物層10aを形成する方法としては特に限定されず、所望の厚みで、多孔質構造体用組成物層10aを形成可能な方法であればよいが、たとえば、多孔質構造体用組成物層10aをエポキシ樹脂を含有するものとする場合には、上述したエポキシ樹脂組成物を、変性層用組成物層20aを備える基材30の変性層用組成物層20a側の面に、ディスペンサーなどを用いて、流延する方法が挙げられる。
【0044】
次いで、多孔質構造体用組成物層10a上に、上記と同様にして作製した変性層用組成物層20aを備える基材30を、変性層用組成物層20a側の面が、多孔質構造体用組成物層10aに接するように載せることにより、図2(C)に示すような積層体を得る。
【0045】
そして、得られた積層体について、多孔質構造体用組成物層10aを構成する硬化性の成分、具体的には、エポキシ樹脂および硬化剤を反応させて硬化させる処理を行う。これらを硬化させる方法としては特に限定されず、使用する硬化剤の種類に応じて、適宜選択すればよいが、たとえば、加熱による方法や、紫外線や電子線等の電磁波を照射する方法などが挙げられる。加熱により硬化させる方法における加熱温度は、通常、25〜200℃、好ましくは30〜180℃、より好ましくは40〜160℃である。
【0046】
本発明においては、多孔質構造体用組成物層10aを構成する材料として、上述したエポキシ樹脂組成物を用いることで、エポキシ樹脂および硬化剤による重合に伴い、ポリマー成分が増大し、スピノーダル相分離が起こり、共連続構造を発現させることができる。なお、この際においては、多孔質構造体用組成物層10aと変性層用組成物層20aとの界面において、多孔質構造体用組成物層10aに含有されるエポキシ樹脂と、変性層用組成物層20aに含有されるポリビニルアルコールのヒドロキシ基とが反応することにより、これらの間に化学的な結合が形成されることとなる。
【0047】
また、本発明においては、多孔質構造体用組成物層10aの両面を、変性層用組成物層20aを備える基材30で挟んだ状態で、多孔質構造体用組成物層10aの硬化処理を行うため、多孔質構造体用組成物層10aの主面を空気に接触しない状態で、硬化処理を行うことができ、これにより、非多孔性のスキン層がその表面に形成されてしまうことを有効に防止することができる。なお、非多孔性のスキン層は、非多孔性であるために、電解質を含浸することができず、そのため、非多孔性のスキン層が形成されると、イオン導電性を阻害してしまうこととなる。これに対して、本発明によれば、このようなスキン層の形成を有効に防止することができる。
【0048】
次いで、硬化反応を行った積層体について、硬化後の多孔質構造体用組成物層10a中に含まれるポロゲンを抽出する処理、および基材30を取り除く処理を行う。なお、これらポロゲンを抽出する処理、および基材30を取り除く処理は、別々に行ってもよいし、同時に行ってもよい。たとえば、変性層用組成物層20aを構成する化合物として、ポリビニルアルコールを用いるとともに、ポロゲンとして、上記にて例示した成分を用いた場合には、これらは共に水溶性であるため、硬化反応を行った積層体を、水中に入れることにより、ポロゲンを抽出する処理、および基材30を取り除く処理を行うことができる。
【0049】
そして、硬化後の多孔質構造体用組成物層10a中に含まれるポロゲンが抽出されることで、上述したような共連続構造を有する多孔質構造体10が構成され、しかも、犠牲層としての変性層用組成物層20aが、その一部が残存した状態で、基材30とともに除去されることで、図1に示すような本発明の多孔膜を得ることができる。
【0050】
あるいは、このような方法に代えて、たとえば、多孔質構造体用組成物層10aを構成する材料として、多孔質構造体10を構成することとなるモノマー(たとえば、エポキシ樹脂)と、該モノマーに対して相溶性を示し、かつ、該モノマーを重合して得られる重合体に対して非相溶性を示す化合物とを含有するものとを用いて、これを重合することにより重合誘起相分離を起こさせることにより、多孔質構造体10を得るような方法を採用してもよい。
【0051】
このようにして得られる本発明の多孔膜は、たとえば、二次電池用の電解質や、燃料電池用の電解質などの電解質を含浸させることで、電解質膜とすることができる。このようにして得られる本発明の電解質膜は、上述した本発明の多孔膜を用いて得られるものであり、本発明の多孔膜は、その表面において、イオン導電性を阻害するスキン層の形成が抑制されており、その代わりに、イオン溶解性の高い変性層20を備えるものである。そして、このような本発明の多孔膜は、共連続構造を有する多孔質構造体10に形成されたマクロ孔(メソポアが存在する場合には、マクロ孔およびメソポア)に電解質を適切に保持することでき、しかも、その表面には、イオン溶解性の高い変性層20を備えるものであるため、優れたイオン導電性を発現することができ、このような優れた特性を活かし、リチウムイオン二次電池などの各種二次電池の電解質膜や、燃料電池の電解質膜用途として好適に用いることができる。
【0052】
また、このようにして得られる本発明の多孔膜は、たとえば、上記製造方法により得られるものであるため、通常は、その両主面のみ(あるいは、一方の主面のみ)に、変性層20が形成されることとなり、厚み方向を規定する面(すなわち、両主面と垂直な面)には、変性層20は形成されないこととなる。
【0053】
さらに、このようにして得られる本発明の多孔膜は、たとえば、上記製造方法により得られるものであるため、多孔質構造体10の変性層20との界面近傍において、変性層20を構成する化合物(たとえば、ポリビニルアルコール)が、多孔質構造体10内部に含浸することにより形成される混合領域の厚みが薄いものとして形成されることとなる。すなわち、たとえば、本発明の多孔膜においては、混合領域の厚みが、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは1μm以下の厚みで形成されることとなる。
【0054】
一方で、変性層20を、多孔質構造体10の表面に、変性層20を構成する化合物を塗布法などにより形成した場合には、多孔質構造体10内に、変性層20を構成する化合物が、多孔質構造体10内部に浸潤してしまい、混合領域の厚みが厚くなってしまい、導電性を阻害するおそれがあり、さらには、塗布法により、変性層20を形成した場合には、主面以外の面、すなわち、厚み方向を規定する面(すなわち、両主面と垂直な面)にも、変性層20が形成されてしまうこととなる。特に、変性層20を構成する化合物が、電解液に対して高い膨潤性を有するものである場合には、多孔質構造体10内部における混合領域の厚みが厚い場合には、変性層20を構成する化合物が膨潤することによるサイズ変化によって、多孔質構造体10内に形成されている多孔構造が変形してしまうため、好ましくない。加えて、塗布法により形成する場合には、変性層20を構成する化合物を溶媒などに溶解し、塗布に適した粘度に調整する必要があるため、このような傾向が顕著になってしまう。一方で、本発明によれば、このような不具合の発生を有効に防止することができるものである。
【0055】
なお、たとえば、変性層用組成物層20aを備える基材30を用いずに、多孔質構造体用組成物層10aの主面が空気中に晒した状態で、硬化処理を行い、得られた多孔質構造体の表面処理を行うことで、本発明と同様に、イオン溶解性の高い変性層を、得られた多孔質構造体の表面に形成する方法も考えられる。しかしながら、このような方法においては、硬化処理時に、空気の影響により、非多孔性のスキン層が形成されてしまい、非多孔性のスキン層によりイオン導電性が阻害されてしまい、結果として、イオン導電性が悪化してしまうという不具合が発生してしまう。
【0056】
また、非多孔性のスキン層を除去するために、スキン層の形成された多孔質構造体の表面について、研磨処理などの機械的な方法などを行う方法も考えられるが、多孔質構造体を、二次電池や燃料電池の電解質用途として用いる場合には、薄膜化する必要があるため、機械的な方法によりスキン層を除去することは極めて困難となる。これに対し、本発明によれば、このような問題も有効に解決できるものである。
【0057】
なお、上述した製造方法においては、多孔質構造体用組成物層10aの両面を、変性層用組成物層20aを備える基材30で挟むような製造工程を採用する方法を例示したが、たとえば、多孔質構造体用組成物層10aの上面については、変性層用組成物層20aを備える基材30を載せる方法に代えて、変性層用組成物層20aのみを形成するような方法を採用してもよい。
【0058】
また、上述した製造方法においては、多孔質構造体用組成物層10aの両面に接触する変性層用組成物層20aの両方とも、多孔質構造体用組成物層10aを構成する化合物と反応し、得られる多孔質膜において、多孔質構造体10の両面に、変性層20が形成されるような構成を例示したが、多孔質構造体用組成物層10aの両面に接触する変性層用組成物層20aのうち一方のみが、多孔質構造体用組成物層10aを構成する化合物と反応するような構成としてもよい。すなわち、この場合には、得られる多孔質膜において、多孔質構造体10の片面のみに、変性層20が形成されることとなる。
【0059】
さらに、上述した製造方法においては、多孔質構造体用組成物層10aを構成する化合物として、エポキシ樹脂組成物を用い、かつ、変性層用組成物層20aを構成する化合物として、ポリビニルアルコールを用いるような態様を特に例示して説明したが、これらに限定されず、種々の化合物を、種々の組み合わせで用いることができるのは、もちろんである。
【0060】
一例を挙げると、変性層用組成物層20aを構成する化合物として、二次電池や燃料電池に用いられる電解質溶媒に溶解する化合物を用いることができ、この場合には、変性層用組成物層20aの一部を、基材30とともに除去した後、乾燥工程等を経ることなく、電解質用途として用いることが可能となる。
【0061】
また、本発明の多孔膜をこのような電解質用途に用いる場合において、たとえば、電解質としてイオン液体を用いる場合には、多孔質構造体用組成物層10aを形成するためのエポキシ樹脂として、ポロゲンの代わりにイオン液体を用いてもよい。この場合においては、イオン液体は、本発明の多孔膜中に残存させることが好ましいため、ポロゲンの場合とは異なり、抽出せずに、多孔質構造体10中に残存させることが望ましい。
【0062】
イオン液体としては、たとえば、下記一般式(1)で示され、融点が50℃以下、好ましくは25℃以下であるものを用いることができる。
【化1】
〔上記一般式(1)中、R〜Rは互いに同一もしくは異種の炭素数1〜5のアルキル基、またはR’−O−(CH−で表されるアルコキシアルキル基(R’はメチル基またはエチル基を示し、nは1〜4の整数である。)を示し、これらR、R、RおよびRのいずれか2個の基が環を形成していても構わない。ただし、R〜Rの内少なくとも1つは上記アルコキシアルキル基である。Xは窒素原子またはリン原子を示し、Yは一価のアニオンを示す。〕
【0063】
炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、2−プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。R’−O−(CH−で表されるアルコキシアルキル基としては、メトキシまたはエトキシメチル基、メトキシまたはエトキシエチル基、メトキシまたはエトキシプロピル基、メトキシまたはエトキシブチル基等が挙げられる。
【0064】
また、R、R、RおよびRのいずれか2個の基が環を形成している化合物としては、Xに窒素原子を採用した場合には、アジリジン環、アゼチジン環、ピロリジン環、ピペリジン環等を有する4級アンモニウム塩、一方、Xにリン原子を採用した場合には、ペンタメチレンホスフィン(ホスホリナン)環等を有する4級ホスホニウム塩等が挙げられる。
【0065】
特に、置換基として、上記R′がメチル基であり、nが2のメトキシエチル基を少なくとも1つ有する4級アンモニウム塩が好適である。
また、置換基として、メチル基、2つのエチル基、およびアルコキシエチル基を有する下記一般式(2)で示される4級塩も好適に用いることができる。
【化2】
〔上記一般式(2)中、R’はメチル基またはエチル基を示し、Xは窒素原子またはリン原子を示し、Yは一価のアニオンを示す。また、Meはメチル基を、Etはエチル基を意味する。〕
【0066】
上記一般式(1),(2)における一価のアニオンYとしては、特に限定されるものではなく、BF、PF、AsF、SbF、AlCl、NbF、HSO、ClO、CHSO、CFSO、CFCO、(CFSO、Cl、Br、I等のアニオンを用いることができるが、非水系有機溶媒中での解離度、安定性および移動度等を考慮すると、特に、BF、PF、(CFSO、CFSO、またはCFCOであることが好適である。
【0067】
本発明において、上記一般式(1),(2)で示される4級塩のうち、好適に用いられる4級アンモニウム塩および4級ホスホニウム塩の具体例としては、以下の化合物(3)〜(11)が挙げられ(Meはメチル基、Etはエチル基を示す。)、特に、低温特性等に優れた蓄電デバイスを得ることを考慮すると、下記式(3)または(8)で示される4級アンモニウム塩を用いることがより好ましい。
【化3】
【0068】
なお、ポロゲンの代わりにイオン液体を用いる場合には、イオン液体とともに、電解質塩(たとえば、二次電池用の電解質塩や、燃料電池用の電解質塩)を含有させることが好ましい。
【0069】
また、ポロゲンの代わりにイオン液体を用いる場合においては、イオン液体と、共連続構造を有する多孔質構造体10との間の親和性を良好なものとするために、硬化前の多孔質構造体用組成物層10aを形成するためのエポキシ樹脂組成物中に、イオン液体との親和性が高く、しかも、エポキシ樹脂および/または硬化剤と重合可能な単量体を含有させることが好ましい。このような単量体を用いることで、多孔質構造体10中に、イオン液体と親和性の高い官能基を導入することができ、これにより、多孔質構造体10とイオン液体との親和性を高めることができる。このような単量体としては、特に限定されないが、たとえば、下記一般式(12)に示す化合物などが挙げられる。
【化4】
〔上記一般式(12)中、mは、1以上10以下の整数を示す。nは、1以上5以下の整数を示す。Rは、水素原子、または炭素数1〜3のアルキル基を示す。R、R、Rは、炭素数1〜5のアルキル基を示す。R、R、Rは、酸素原子、硫黄原子、フッ素原子から選ばれる1種以上のヘテロ原子を含んでいてもよく、R、R、Rは、2つ以上が連結して環状構造であってもよい。また、Yは上記一般式(1)と同様である。〕
【0070】
上記一般式(12)で表される化合物のなかでも、下記一般式(13)〜(20)で表される化合物が特に好適に用いることができる。
【化5】
〔上記一般式(13)〜(20)中、m、R、R、Yは、上記一般式(12)と同様である。〕
【0071】
また、硬化前の多孔質構造体用組成物層10aを形成するためのエポキシ樹脂組成物中に、上記一般式(12)で表される化合物を配合した場合には、エポキシ樹脂組成物中にイオン液体を含有させず、代わりに、上述したポロゲンを含有させ、多孔質構造体用組成物層10aについて硬化処理を行った後、ポロゲンを抽出し、ポロゲンが抽出された部分に、電解質塩とともに、イオン液体を含浸させるような構成としてもよい。
【実施例】
【0072】
以下に、実施例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0073】
《実施例1》
ポリビニルアルコール溶液の調製
平均重合度nが3500、鹸化度が86〜90%であるポリビニルアルコール(PVA)の水溶液(和光純薬工業株式会社製)を2重量%水溶液に調製し、使用した。
【0074】
エポキシ樹脂組成物の調製
エポキシ当量が95〜110(平均102)である下記式(21)で表されるエポキシ化合物(商品名「テトラドC」、日産化学工業株式会社)4重量部、アミン価が520〜550である下記式(22)で表されるビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン(東京化成工業株式会社製)0.575重量部、および、平均重合度nが200である下記式(23)で表されるポリエチレングリコール200(和光純薬工業株式会社製)1重量を混合することで、エポキシ樹脂組成物を得た。
【化6】
【0075】
多孔膜の製造
上記にて調製したポリビニルアルコール2重量%水溶液を、75mm×75mmのガラス板2枚に、スピンコーターを用いて2,000rpm、20秒の条件で塗布した後、105℃で1時間のアニール処理を施すことによって、ポリビニルアルコール層(変性層用組成物層20a)を形成したガラス板を2枚得た。
【0076】
次いで、ポリビニルアルコール層を形成したガラス板の、ポリビニルアルコール層形成面に、上記にて調製したエポキシ樹脂組成物640mgを流延することで、エポキシ樹脂組成物層(多孔質構造体用組成物層10a)を形成し、次いで、この上に、ポリビニルアルコール層を形成したガラス板を、ポリビニルアルコール層形成面が、エポキシ樹脂組成物層と接触するように、直接、エポキシ樹脂組成物層上に載せ、これにより図2(C)に示す積層体を得た。
【0077】
そして、得られた積層体を110℃で1時間加熱することにより、エポキシ樹脂組成物層中のエポキシ化合物を硬化させ、硬化積層体を得た。次いで、加熱後の硬化積層体を温度50〜60℃に調整した温水中に投入し、5〜20分間放置することにより、加熱後のエポキシ樹脂組成物層中に含有するポリエチレングリコール200を抽出するとともに、ポリビニルアルコール層の一部を、ガラス板とともに剥離させることで、図1に示すような構成を有する多孔膜を得た。そして、得られた多孔膜を、フッ素フィルム(日東電工株式会社製)上に採取し、メタノールで約30分間洗浄した後、105℃の真空下で1晩乾燥させた。
【0078】
このようにして得られた多孔膜は、総厚みが25μmであり、走査型電子顕微鏡観察により測定した多孔質構造体10のマクロ孔の平均孔径が、0.3〜0.6μmであった。また、得られた多孔膜について、赤外吸収分光法により分析したところ、多孔質構造体10の両主面に、ポリビニルアルコールからなる変性層が形成されていることが確認できた。具体的には、ポリビニルアルコールからなる変性層を形成した多孔膜と、ポリビニルアルコールからなる変性層を形成していない多孔膜とのそれぞれについて、FT−IR測定を行い、これらの差スペクトルをとることにより、ポリビニルアルコールに含まれているエステル結合(鹸化されずに残存しているエステル結合)に基づくピーク(1730cm−1付近のピーク)に基づいて、ポリビニルアルコールからなる変性層の形成を確認した。また、得られた多孔膜について、複素インピーダンス測定によりイオン導電性を測定したところ、10−4S/cm以上となり高いイオン導電性を有していることが確認できた。
【0079】
《実施例2》
ポリビニルアルコール層を形成するためのポリビニルアルコール水溶液として、3重量%水溶液を用い、かつ、ポリビニルアルコール層を形成したガラス板の、ポリビニルアルコール層形成面に、流延するエポキシ樹脂組成物の量を480mgとした以外は、実施例1と同様にして、図1に示すような構成を有する多孔膜を得た。
【0080】
そして、このようにして得られた多孔膜は、総厚みが20μmであり、実施例1と同様にして測定したマクロ孔の平均孔径が、0.3〜0.6μmであった。また、実施例1と同様にして、得られた多孔膜について、赤外吸収分光法により分析したところ、多孔質構造体10の両主面に、ポリビニルアルコールからなる変性層が形成されていることが確認できた。また、得られた多孔膜について、実施例1と同様にしてイオン導電性を測定したところ、10−4S/cm以上となり高いイオン導電性を有していることが確認できた。
【0081】
《実施例3》
ポリビニルアルコール層を形成するためのポリビニルアルコール水溶液として、3重量%水溶液を用い、かつ、ポリビニルアルコール層を形成したガラス板の、ポリビニルアルコール層形成面に、流延するエポキシ樹脂組成物の量を720mgとした以外は、実施例1と同様にして、図1に示すような構成を有する多孔膜を得た。
【0082】
そして、このようにして得られた多孔膜は、総厚みが40〜50μmであり、実施例1と同様にして測定したマクロ孔の平均孔径が、0.3〜0.6μmであった。また、実施例1と同様にして、得られた多孔膜について、赤外吸収分光法により分析したところ、多孔質構造体10の両主面に、ポリビニルアルコールからなる変性層が形成されていることが確認できた。また、得られた多孔膜について、実施例1と同様にしてイオン導電性を測定したところ、10−4S/cm以上となり高いイオン導電性を有していることが確認できた。
【0083】
《実施例4》
ポリビニルアルコール層を形成するためのポリビニルアルコール水溶液として、1重量%水溶液を用い、ガラス板として25mm×25mmのサイズのものを用い、かつ、ポリビニルアルコール層を形成したガラス板の、ポリビニルアルコール層形成面に、流延するエポキシ樹脂組成物の量を32mgとした以外は、実施例1と同様にして、図1に示すような構成を有する多孔膜を得た。
【0084】
そして、このようにして得られた多孔膜は、総厚みが10μmであり、実施例1と同様にして測定したマクロ孔の平均孔径が、0.3〜0.6μmであった。また、実施例1と同様にして、得られた多孔膜について、赤外吸収分光法により分析したところ、多孔質構造体10の両主面に、ポリビニルアルコールからなる変性層が形成されていることが確認できた。また、得られた多孔膜について、実施例1と同様にしてイオン導電性を測定したところ、10−4S/cm以上となり高いイオン導電性を有していることが確認できた。
【0085】
《実施例5》
イオン液体を含有するエポキシ樹脂組成物の調製
芳香族エポキシ樹脂(商品名「TEPIC−S」、日産化学工業株式会社製)2.4重量部を、イオン液体としての(N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(関東化学株式会社製)6.0重量部、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(東京化成工業株式会社製)0.54重量部、およびグリシジルトリメチルアンモニウムクロライド(商品名「SY−GTA−80」、阪本薬品工業株式会社製)0.3重量部を混合することで、イオン液体を含有するエポキシ樹脂組成物を得た。
【0086】
多孔膜の製造
上記にて調製したポリビニルアルコール2重量%水溶液を、75mm×75mmのガラス板2枚に、スピンコーターを用いて2,000rpm、20秒の条件で塗布した後、105℃で1時間のアニール処理を施すことによって、ポリビニルアルコール層(変性層用組成物層20a)を形成したガラス板を2枚得た。
【0087】
次いで、ポリビニルアルコール層を形成したガラス板の、ポリビニルアルコール層形成面に、上記にて調製したイオン液体を含有するエポキシ樹脂組成物640mgを流延することで、イオン液体を含有するエポキシ樹脂組成物層(多孔質構造体用組成物層10a)を形成し、次いで、この上に、ポリビニルアルコール層を形成したガラス板を、ポリビニルアルコール層形成面が、イオン液体を含有するエポキシ樹脂組成物層と接触するように、直接、イオン液体を含有するエポキシ樹脂組成物層上に載せ、これにより図2(C)に示す積層体を得た。
【0088】
そして、得られた積層体を110℃で1時間加熱することにより、イオン液体を含有するエポキシ樹脂組成物層中のエポキシ化合物を硬化させ、硬化積層体を得た。次いで、硬化積層体から、ポリビニルアルコール層の一部を、ガラス板とともに剥離させることで、図1に示すような構成を有する多孔膜を得た。
【0089】
このようにして得られた多孔膜は、総厚みが25μmであり、走査型電子顕微鏡観察により測定した多孔質構造体10は、イオン液体としての(N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを含有するものであり、そのマクロ孔の平均孔径が、0.3〜0.6μmであった。また、得られた多孔膜について、赤外吸収分光法により分析したところ、多孔質構造体10の両主面に、ポリビニルアルコールからなる変性層が形成されていることが確認できた。また、得られた多孔膜について、複素インピーダンス測定によりイオン導電性を測定したところ、10−4S/cm以上となり高いイオン導電性を有していることが確認できた。なお、実施例5において、得られた多孔膜の多孔質構造体10部分のSEM写真を図3に示す。
【符号の説明】
【0090】
10…多孔質構造体
10a…多孔質構造体用組成物層
20…変性層
20a…変性層用組成物層
30…基材
図1
図2
図3