特許第6142136号(P6142136)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6142136トランジスタの製造方法、表示装置の製造方法および電子機器の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6142136
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】トランジスタの製造方法、表示装置の製造方法および電子機器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20170529BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20170529BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20170529BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   H01L29/78 619A
   H01L29/78 618B
   H01L29/78 616L
   H01L29/78 626C
   H01L29/78 612D
   H05B33/14 A
   H01L29/78 627F
   H05B33/14 Z
【請求項の数】15
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2012-41561(P2012-41561)
(22)【出願日】2012年2月28日
(65)【公開番号】特開2013-179141(P2013-179141A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2015年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】514188173
【氏名又は名称】株式会社JOLED
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】特許業務法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】諸沢 成浩
【審査官】 河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−108736(JP,A)
【文献】 特開2011−228622(JP,A)
【文献】 特開2011−205017(JP,A)
【文献】 特開2011−014761(JP,A)
【文献】 特開2012−015436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 29/786
H01L 51/50
H05B 33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスの板状部材からなる基板上に、前記ガラスの板状部材に接してチャネル領域を有する酸化物半導体膜を形成する工程と、
前記チャネル領域に対向するゲート電極を形成する工程と、
前記酸化物半導体膜のチャネル領域以外に接する金属膜を形成する工程と、
前記金属膜に第1の熱処理を施して高抵抗膜を形成すると共に、前記酸化物半導体膜に低抵抗領域を形成する工程と、
前記ゲート電極および前記酸化物半導体膜を覆う絶縁膜を形成する工程と、
前記低抵抗領域にソース・ドレイン電極を電気的に接続する工程と、
前記ソース・ドレイン電極を形成した後、300℃以上で第2の熱処理を行う工程とを含み、
前記絶縁膜から前記酸化物半導体膜への水分の浸入を前記基板により抑制する
トランジスタの製造方法。
【請求項2】
基板上にチャネル領域を有する酸化物半導体膜と前記チャネル領域に対向するゲート電極とを形成する工程と、
前記酸化物半導体膜のチャネル領域以外に接する金属膜を形成する工程と、
前記金属膜に第1の熱処理を施して高抵抗膜を形成すると共に、前記酸化物半導体膜に低抵抗領域を形成する工程と、
前記ゲート電極および前記酸化物半導体膜を覆う絶縁膜を形成する工程と、
前記低抵抗領域にソース・ドレイン電極を電気的に接続する工程と、
前記ソース・ドレイン電極を形成した後、300℃以上で第2の熱処理を行う工程とを含み、
前記基板は、その表面全面に水分の拡散防止膜を有し、
前記絶縁膜から前記酸化物半導体膜への水分の浸入を前記基板により抑制する
トランジスタの製造方法。
【請求項3】
前記拡散防止膜は、無機絶縁膜により構成されている
請求項2記載のトランジスタの製造方法。
【請求項4】
前記拡散防止膜に接して前記酸化物半導体膜を形成する
請求項2または3記載のトランジスタの製造方法。
【請求項5】
前記拡散防止膜をスパッタリング法またはイオンビームスパッタ法により成膜する
請求項2乃至4のうちいずれか1つ記載のトランジスタの製造方法。
【請求項6】
前記基板を樹脂材料からなる板状部材に前記拡散防止膜を成膜することにより形成する
請求項2乃至5のうちいずれか1つ記載のトランジスタの製造方法。
【請求項7】
前記拡散防止膜は、シリコン酸化膜,シリコン窒化膜または酸化アルミニウム膜のうちのいずれか1つを含む
請求項2乃至6のうちいずれか1つ記載のトランジスタの製造方法。
【請求項8】
前記絶縁膜に有機絶縁材料を含む
請求項1乃至7のうちいずれか1つ記載のトランジスタの製造方法。
【請求項9】
表示素子および前記表示素子を駆動するトランジスタを形成し、
前記トランジスタを形成する工程は、
ガラスの板状部材からなる基板上に、前記ガラスの板状部材に接してチャネル領域を有する酸化物半導体膜を形成する工程と、
前記チャネル領域に対向するゲート電極を形成する工程と、
前記酸化物半導体膜のチャネル領域以外に接する金属膜を形成する工程と、
前記金属膜に第1の熱処理を施して高抵抗膜を形成すると共に、前記酸化物半導体膜に低抵抗領域を形成する工程と、
前記ゲート電極および前記酸化物半導体膜を覆う絶縁膜を形成する工程と、
前記低抵抗領域にソース・ドレイン電極を電気的に接続する工程と、
前記ソース・ドレイン電極を形成した後、300℃以上で第2の熱処理を行う工程とを含み、
前記絶縁膜から前記酸化物半導体膜への水分の浸入を前記基板により抑制する
表示装置の製造方法
【請求項10】
表示素子および前記表示素子を駆動するトランジスタを形成し、
前記トランジスタを形成する工程は、
基板上にチャネル領域を有する酸化物半導体膜と前記チャネル領域に対向するゲート電極とを形成する工程と、
前記酸化物半導体膜のチャネル領域以外に接する金属膜を形成する工程と、
前記金属膜に第1の熱処理を施して高抵抗膜を形成すると共に、前記酸化物半導体膜に低抵抗領域を形成する工程と、
前記ゲート電極および前記酸化物半導体膜を覆う絶縁膜を形成する工程と、
前記低抵抗領域にソース・ドレイン電極を電気的に接続する工程と、
前記ソース・ドレイン電極を形成した後、300℃以上で第2の熱処理を行う工程とを含み、
前記基板は、その表面全面に水分の拡散防止膜を有し、
前記絶縁膜から前記酸化物半導体膜への水分の浸入を前記基板により抑制する
表示装置の製造方法
【請求項11】
前記トランジスタの酸化物半導体膜を共有した保持容量素子を形成する
請求項または10記載の表示装置の製造方法
【請求項12】
前記酸化物半導体膜、前記チャネル領域に隣接する一対の低抵抗領域を形成する
請求項乃至11のうちいずれか1つ記載の表示装置の製造方法
【請求項13】
表示素子および前記表示素子を駆動するトランジスタを有する表示装置を形成し
前記トランジスタを形成する工程は、
ガラスの板状部材からなる基板上に、前記ガラスの板状部材に接してチャネル領域を有する酸化物半導体膜を形成する工程と、
前記チャネル領域に対向するゲート電極を形成する工程と、
前記酸化物半導体膜のチャネル領域以外に接する金属膜を形成する工程と、
前記金属膜に第1の熱処理を施して高抵抗膜を形成すると共に、前記酸化物半導体膜に低抵抗領域を形成する工程と、
前記ゲート電極および前記酸化物半導体膜を覆う絶縁膜を形成する工程と、
前記低抵抗領域にソース・ドレイン電極を電気的に接続する工程と、
前記ソース・ドレイン電極を形成した後、300℃以上で第2の熱処理を行う工程とを含み、
前記絶縁膜から前記酸化物半導体膜への水分の浸入を前記基板により抑制する
電子機器の製造方法
【請求項14】
表示素子および前記表示素子を駆動するトランジスタを有する表示装置を形成し
前記トランジスタを形成する工程は、
基板上にチャネル領域を有する酸化物半導体膜と前記チャネル領域に対向するゲート電極とを形成する工程と、
前記酸化物半導体膜のチャネル領域以外に接する金属膜を形成する工程と、
前記金属膜に第1の熱処理を施して高抵抗膜を形成すると共に、前記酸化物半導体膜に低抵抗領域を形成する工程と、
前記ゲート電極および前記酸化物半導体膜を覆う絶縁膜を形成する工程と、
前記低抵抗領域にソース・ドレイン電極を電気的に接続する工程と、
前記ソース・ドレイン電極を形成した後、300℃以上で第2の熱処理を行う工程とを含み、
前記基板は、その表面全面に水分の拡散防止膜を有し、
前記絶縁膜から前記酸化物半導体膜への水分の浸入を前記基板により抑制する
電子機器の製造方法
【請求項15】
表示素子および前記表示素子を駆動するトランジスタを形成し
前記トランジスタを形成する工程は、
ガラスの板状部材からなる基板上に、前記ガラスの板状部材に接してチャネル領域を有する酸化物半導体膜を形成する工程と、
前記チャネル領域に対向するゲート電極を形成する工程と、
前記酸化物半導体膜のチャネル領域以外に接する金属膜を形成する工程と、
前記金属膜に第1の熱処理を施して高抵抗膜を形成すると共に、前記酸化物半導体膜に低抵抗領域を形成する工程と、
前記ゲート電極および前記酸化物半導体膜を覆う絶縁膜を形成する工程と、
前記低抵抗領域にソース・ドレイン電極を電気的に接続する工程と、
前記ソース・ドレイン電極を形成した後、300℃以上で第2の熱処理を行う工程とを含む
表示装置の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、酸化物半導体を用いたトランジスタおよびその製造方法、並びにこのトランジスタを備えた表示装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年はディスプレイの大型化・高精細化に伴い、駆動素子の薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)にも高い移動度が求められており、亜鉛(Zn),インジウム(In),ガリウム(Ga),スズ(Sn),アルミニウム(Al)またはチタン(Ti)の酸化物あるいはこれらの混合物の酸化物等の酸化物半導体を用いたTFTが開発されている。特に、Zn,In,Gaの複合酸化物を用いたTFTは、液晶ディスプレイなどに一般的に使用される非晶質シリコン(a−Si:H)を用いたTFTと比較してその電子移動度が大きく、優れた電気特性を示すことがわかっている。
【0003】
ところで、上記のようなアクティブ駆動方式の液晶表示装置または有機EL(Electroluminescence)表示装置等では、TFTを駆動素子として用いると共に、映像を書き込むための信号電圧に対応する電荷を保持容量に保持させている。しかし、TFTのゲート電極とソース・ドレイン電極との交差領域に生じる寄生容量が大きくなると、信号電圧が変動してしまい、画質の劣化を引き起こす場合がある。
【0004】
特に有機EL表示装置では、この寄生容量の問題に付随して製造歩留りも低下する虞があるため、寄生容量を低減するための試みがいくつかなされている(例えば、特許文献1〜3、非特許文献1,2)。特許文献1〜3および非特許文献1には、酸化物半導体膜のチャネル領域上に、ゲート電極およびゲート絶縁膜を平面視で同位置に設けた後、酸化物半導体膜のゲート電極およびゲート絶縁膜から露出された領域を低抵抗化してソース・ドレイン領域を形成する方法、所謂セルフアライン(自己整合)で形成されたトップゲート型TFTが記載されている。一方、非特許文献2には、セルフアライン構造のボトムゲート型TFTが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−228622号公報
【特許文献2】特開2012−015436号公報
【特許文献3】特開2007−220817号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J.Park、外11名,"Self-aligned top-gate amorphous gallium indium zinc oxide thin film transistors",Applied Physics Letters,American Institute of Physics,2008年,第93巻,053501
【非特許文献2】R.Hayashi、外6名,"Improved Amorphous In-Ga-Zn-O TFTs",SID 08 DIGEST,2008年,42.1,p.621−624
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようなセルフアライン構造のものを含め、酸化物半導体膜を用いたTFTでは、チャネル領域への水分等の不純物の拡散を防ぎ、より電気特性を向上させることが望まれている。
【0008】
本技術はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、酸化物半導体膜への水分の浸入を低減して電気特性を向上させたトランジスタの製造方法、表示装置の製造方法および電子機器の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本技術による第1のトランジスタの製造方法は、ガラスの板状部材からなる基板上に、ガラスの板状部材に接してチャネル領域を有する酸化物半導体膜を形成する工程と、チャネル領域に対向するゲート電極を形成する工程と、酸化物半導体膜のチャネル領域以外に接する金属膜を形成する工程と、金属膜に第1の熱処理を施して高抵抗膜を形成すると共に、酸化物半導体膜に低抵抗領域を形成する工程と、ゲート電極および酸化物半導体膜を覆う絶縁膜を形成する工程と、低抵抗領域にソース・ドレイン電極を電気的に接続する工程と、ソース・ドレイン電極を形成した後、300℃以上で第2の熱処理を行う工程とを含み、絶縁膜から酸化物半導体膜への水分の浸入を基板により抑制するものである。本技術による第2のトランジスタの製造方法は、基板上にチャネル領域を有する酸化物半導体膜とチャネル領域に対向するゲート電極とを形成する工程と、酸化物半導体膜のチャネル領域以外に接する金属膜を形成する工程と、金属膜に第1の熱処理を施して高抵抗膜を形成すると共に、酸化物半導体膜に低抵抗領域を形成する工程と、ゲート電極および酸化物半導体膜を覆う絶縁膜を形成する工程と、低抵抗領域にソース・ドレイン電極を電気的に接続する工程と、ソース・ドレイン電極を形成した後、300℃以上で第2の熱処理を行う工程とを含み、基板は、その表面全面に水分の拡散防止膜を有し、絶縁膜から酸化物半導体膜への水分の浸入を基板により抑制するものである。
【0010】
本技術による第1のトランジスタは、ガラスの板状部材からなる基板と、チャネル領域を有し、ガラスの板状部材に接する酸化物半導体膜と、チャネル領域に対向するゲート電極と、ゲート電極および酸化物半導体膜を覆う絶縁膜とを備え、絶縁膜から酸化物半導体膜への水分の浸入を基板により抑制するものである。本技術による第2のトランジスタは、基板上のチャネル領域を有する酸化物半導体膜およびチャネル領域に対向するゲート電極と、ゲート電極および酸化物半導体膜を覆う絶縁膜とを備え、基板は、その表面全面に水分の拡散防止膜を有し、絶縁膜から酸化物半導体膜への水分の浸入を基板により抑制するものである。
【0011】
本技術による第1の表示装置の製造方法は、表示素子を駆動するトランジスタの製造方法として上記第1のトランジスタの製造方法含むものである。本技術による第2の表示装置の製造方法は、表示素子を駆動するトランジスタの製造方法として上記第2のトランジスタの製造方法含むものである。本技術による第3の表示装置の製造方法は、表示素子および表示素子を駆動するトランジスタを形成し、トランジスタを形成する工程は、ガラスの板状部材からなる基板上に、ガラスの板状部材に接してチャネル領域を有する酸化物半導体膜を形成する工程と、チャネル領域に対向するゲート電極を形成する工程と、酸化物半導体膜のチャネル領域以外に接する金属膜を形成する工程と、金属膜に第1の熱処理を施して高抵抗膜を形成すると共に、酸化物半導体膜に低抵抗領域を形成する工程と、ゲート電極および酸化物半導体膜を覆う絶縁膜を形成する工程と、低抵抗領域にソース・ドレイン電極を電気的に接続する工程と、ソース・ドレイン電極を形成した後、300℃以上で第2の熱処理を行う工程とを含むものである。
【0012】
本技術による第1の電子機器の製造方法は、上記第1の表示装置の製造方法含むものである。本技術による第2の電子機器の製造方法は、上記第2の表示装置の製造方法含むものである。
【0013】
本技術の第1、第2のトランジスタの製造方法では、例えば、製造工程での熱処理により生じ得る、絶縁膜から基板を介した酸化物半導体膜への水分の浸入が遮断される。
【発明の効果】
【0014】
本技術の第1、第2のトランジスタの製造方法、並びに第1、第2、第3の表示装置の製造方法および第1、第2の電子機器の製造方法によれば、水分の浸入を抑制する基板上に絶縁膜および酸化物半導体膜を設けるようにしたので、絶縁膜から基板を介して酸化物半導体膜へ水分が透過することを防ぐことができる。よって、高い電気特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本技術の第1の実施の形態に係る表示装置の構成を表す断面図である。
図2図1に示した保持容量素子の変形例を表す図である。
図3図1に示した表示装置の周辺回路を含む全体構成を表す図である。
図4図3に示した画素の回路構成を表す図である。
図5図1に示した表示装置の製造方法を工程順に表す断面図である。
図6図5に続く工程を表す断面図である。
図7図6に続く工程を表す断面図である。
図8】比較例に係る表示装置の要部の構成を表す断面図である。
図9図8に示したトランジスタの伝達特性を表す図である。
図10図1に示した基板の効果について説明するための断面図である。
図11図1に示したトランジスタの伝達特性を表す図である。
図12図1に示したトランジスタのストレス試験の結果を表す図である。
図13】変形例1に係る表示装置の構成を表す断面図である。
図14】変形例2に係る表示装置の構成を表す断面図である。
図15】本技術の第2の実施の形態に係る表示装置の構成を表す断面図である。
図16図15に示した表示装置の製造方法を工程順に表す断面図である。
図17】上記実施の形態等の表示装置を含むモジュールの概略構成を表す平面図である。
図18】上記実施の形態等の表示装置の適用例1の外観を表す斜視図である。
図19】適用例2の外観を表す斜視図である。
図20】適用例3の外観を表す斜視図である。
図21】(A)は適用例4の表側から見た外観を表す斜視図、(B)は裏側から見た外観を表す斜視図である。
図22】適用例5の外観を表す斜視図である。
図23】適用例6の外観を表す斜視図である。
図24】(A)は適用例7の開いた状態の正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態の正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本技術の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(基板が板状部材のみにより構成されている、有機EL表示装置の例)
2.変形例1(液晶表示装置の例)
3.変形例2(電子ペーパーの例)
4.第2の実施の形態(基板が拡散防止膜を有する例)
5.適用例
【0017】
<第1の実施の形態>
図1は本技術の第1の実施の形態に係る表示装置(表示装置1)の断面構成を表したも
のである。この表示装置1はアクティブマトリクス型の有機EL(Electroluminescence)表示装置であり、トランジスタ10Tおよびトランジスタ10Tにより駆動される有機EL素子20をそれぞれ複数有している。図1には、一のトランジスタ10Tおよび有機EL素子20に対応する領域(サブピクセル)を示す。
【0018】
表示装置1はトランジスタ10Tの酸化物半導体膜12を共有する保持容量素子10Cを有しており、このトランジスタ10Tおよび保持容量素子10C上に平坦化層18を間にして有機EL素子20が設けられている。トランジスタ10Tは、基板11、酸化物半導体膜12,ゲート絶縁膜13Tおよびゲート電極14Tをこの順に有するスタガ構造(トップゲート型)のTFTである。酸化物半導体膜12およびゲート電極14Tは層間絶縁膜16(絶縁膜)に覆われている。層間絶縁膜16の接続孔H1を介して、ソース・ドレイン電極17は酸化物半導体膜12に電気的に接続されている。
【0019】
(トランジスタ10T)
基板11は、例えば、石英,ガラス,シリコンまたはプラスチックフィルムなどの板状部材により構成されている。ここでは、酸化物半導体膜12が接しているため、基板11に水分透過率の比較的低い材料、例えばガラスを用いる。
【0020】
表示装置1では、この基板11に接してトランジスタ10T(酸化物半導体膜12)が設けられている。これにより、トランジスタ10Tの層間絶縁膜16から酸化物半導体膜12への水分の拡散を抑えることができる。
【0021】
酸化物半導体膜12は、基板11上の選択的な領域に設けられ、トランジスタ10Tの活性層としての機能を有するものである。酸化物半導体膜12は、例えば、インジウム(In),ガリウム(Ga),亜鉛(Zn)およびスズ(Sn)のうちの少なくとも1種の元素の酸化物を主成分として含むものである。具体的には、非晶質のものとして、酸化インジウムスズ亜鉛(ITZO)または酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO: InGaZnO)等、結晶質のものとして酸化亜鉛(ZnO),酸化インジウム亜鉛(IZO(登録商標)),酸化インジウムガリウム(IGO),酸化インジウムスズ(ITO)または酸化インジウム(InO)等がそれぞれ挙げられる。酸化物半導体膜12の厚み(積層方向の厚み、以下単に厚みという。)は、例えば50nm程度である。
【0022】
この酸化物半導体膜12は上層のゲート電極14Tに対向してチャネル領域12Tを有すると共に、チャネル領域12Tに隣接して、チャネル領域12Tよりも電気抵抗率の低い低抵抗領域12B(ソース・ドレイン領域)を一対有している。低抵抗領域12Bは酸化物半導体膜12の表面(上面)から厚み方向の一部に設けられたものであり、例えば、酸化物半導体材料にアルミニウム(Al)等の金属を反応させて金属(ドーパント)を拡散させることにより形成されている。この低抵抗領域12Bにソース・ドレイン電極17が電気的に接続されている。トランジスタ10Tのセルフアライン構造は、この低抵抗領域12Bにより実現される。また、低抵抗領域12Bはトランジスタ10Tの特性を安定化させる役割をも有するものである。
【0023】
ゲート電極14Tはゲート絶縁膜13Tを間にしてチャネル領域12T上に設けられて
いる。ゲート電極14Tおよびゲート絶縁膜13Tは平面視で互いに同一形状を有してい
る。ゲート絶縁膜13Tは例えば厚みが300nm程度であり、シリコン酸化膜(SiO),シリコン窒化膜(SiN),シリコン窒化酸化膜(SiON)または酸化アルミニウム膜(AlO)などのうちの1種よりなる単層膜あるいはそれらのうちの2種以上よりなる積層膜により構成されている。ゲート絶縁膜13Tには酸化物半導体膜12を還元させにくい材料、例えば、シリコン酸化膜あるいは酸化アルミニウム膜を用いることが好ましい。
【0024】
ゲート電極14Tは、トランジスタ10Tに印加されるゲート電圧(Vg)によって酸
化物半導膜12(チャネル領域12T)中のキャリア密度を制御すると共に、電位を供給
す配線としての機能を有するものである。このゲート電極14Tは、例えばモリブデン(Mo),チタン(Ti),アルミニウム,銀(Ag),ネオジウム(Nd)および銅(Cu)のうちの1種からなる単体もしくはこれらの合金により構成されている。複数の単体または合金を用いた積層構造であってもよい。ゲート電極14Tは低抵抗な金属、例えば、アルミニウムまたは銅等により構成することが好ましい。低抵抗な金属からなる層(低抵抗層)に、例えばチタンまたはモリブデンからなる層(バリア層)を積層させるようにしてもよく、低抵抗な金属を含む合金、例えばアルミニウムとネオジウムとの合金(Al−Nd)を用いるようにしてもよい。ゲート電極14TをITO等の透明導電膜により構成するようにしてもよい。ゲート電極14Tの厚みは、例えば10nm〜500nmである。
【0025】
このゲート電極14Tおよび酸化物半導膜12(低抵抗領域12B)と層間絶縁膜16との間には、高抵抗膜15が設けられている。この高抵抗膜15は保持容量素子10Cも覆っている。高抵抗膜15は後述する製造工程において酸化物半導膜12の低抵抗領域12Bに拡散される金属の供給源となる金属膜が、酸化膜となって残存したものである。高抵抗膜15は、例えば、厚みが20nm以下であり、酸化チタン,酸化アルミニウム,酸化インジウムまたは酸化スズ等により構成されている。このような高抵抗膜15は上記のようなプロセス上の役割の他、トランジスタ10Tにおける酸化物半導体膜12の電気的特性を変化させる酸素や水分の影響を低減する機能、即ちバリア機能をも有している。従って、高抵抗膜15を設けることにより、トランジスタ10Tおよび保持容量素子10Cの電気的特性を安定化させ、層間絶縁膜16の効果をより高めることが可能となる。
【0026】
層間絶縁膜16は高抵抗膜15上に設けられ、高抵抗膜15と同様に酸化物半導体膜12の外側に延在してゲート電極14Tと共に酸化物半導体膜12を覆っている。この層間絶縁膜16は例えば、アクリル樹脂,ポリイミドまたはシロキサン等の有機材料あるいはシリコン酸化膜,シリコン窒化膜,シリコン酸窒化膜または酸化アルミニウム等の無機材料により構成されている。このような有機材料と無機材料とを積層させるようにしてもよい。有機材料を含有する層間絶縁膜16は、容易にその厚みを例えば2μm程度に厚膜化することが可能となる。このように厚膜化された層間絶縁膜16は、例えばゲート絶縁膜13Tとゲート電極14Tとの間などの段差を十分に被覆して絶縁性を確保することができる。また有機材料を含む層間絶縁膜16は、金属配線により形成される配線容量を低減して、表示装置1を大型化およびハイフレームレート化することが可能となる。従って、セルフアライン構造のトランジスタ10Tでは、有機絶縁性材料を含む層間絶縁膜16を用いることが好ましい。
【0027】
ソース・ドレイン電極17は、層間絶縁膜16上にパターン化して設けられ、層間絶縁膜16および高抵抗膜15を貫通する接続孔H1を介して酸化物半導体膜12の低抵抗領域12Bに接続されている。ソース・ドレイン電極17は、ゲート電極14Tの直上を回避して設けられていること望ましい。ゲート電極14Tとソース・ドレイン電極17との交差領域に寄生容量が形成されることを防ぐためである。このソース・ドレイン電極17は、例えば厚みが500nm程度であり、上記ゲート電極14Tで挙げた金属または透明導電膜と同様の材料により構成されている。ソース・ドレイン電極17も、アルミニウムまたは銅等の低抵抗金属材料により構成されていることが好ましく、また、低抵抗層とバリア層との積層膜であることがより好ましい。ソース・ドレイン電極17をこのような積層膜により構成することで、配線遅延の少ない駆動が可能になるためである。
【0028】
(保持容量素子10C)
保持容量素子10Cはトランジスタ10Tと共に基板11上に設けられ、例えば、後述の画素回路50Aにおいて電荷を保持する容量素子である。この保持容量素子10Cは、基板11側からトランジスタ10Tと共有の酸化物半導体膜12,容量絶縁膜13Cおよび容量電極14Cをこの順に有している。保持容量素子10C上には高抵抗膜15および層間絶縁膜16がこの順に設けられている。酸化物半導体膜12のうち、容量電極14Cと対向する領域(容量領域12C)は、チャネル領域12Tと同様に低抵抗領域12Bを有しておらず厚み方向の電気抵抗は一定である。換言すれば、酸化物半導体膜12のうち、チャネル領域12Tおよび容量領域12C以外には低抵抗領域12Bが設けられている。容量領域12Cにおいて、基板11と酸化物半導体膜12との間(図2(A))、または酸化物半導体膜12と容量絶縁膜13Cとの間(図2(B))に例えば金属材料からなる導電膜(導電膜19)を設けるようにしてもよい。これにより、容量値の印加電圧依存性をなくし、ゲート電圧の大きさに関わらず十分な容量を確保して表示特性を維持することができる。容量絶縁膜13Cを無機絶縁材料により構成することにより大きな容量の保持容量素子10Cを得ることができる。この容量絶縁膜13Cは、例えばゲート絶縁膜13Tと同一工程により形成されたものであり、ゲート絶縁膜13Tと同一材料により構成され、同一膜厚を有している。また、容量電極14Cも、例えば、ゲート電極14Tと同一工程により構成されたものであり、ゲート電極14Tと同一材料により構成され、同一膜厚を有している。容量絶縁膜13Cとゲート絶縁膜13T、容量電極14Cとゲート電極14Tをそれぞれ互いに別工程で形成するようにしてもよく、これらを互いに異なる材料、異なる膜厚で形成するようにしてもよい。
【0029】
有機EL素子20は、平坦化層18上に設けられている。この有機EL素子20は平坦化層18側から第1電極21、画素分離膜22、有機層23および第2電極24をこの順に有しており、保護層25により封止されている。保護層25上には熱硬化樹脂または紫外線硬化樹脂からなる接着層26を間にして封止用基板27が貼り合わされている。表示装置1は、有機層23で発生した光を基板11側から取り出すボトムエミッション方式
(下面発光方式)であってもよく、封止用基板27側から取り出すトップエミッション方式(上面発光方式)であってもよい。
【0030】
平坦化層18は、ソース・ドレイン電極17上および層間絶縁膜16上に、基板11の表示領域(後述の図3 表示領域50)全体に渡り設けられ、接続孔H2を有している。この接続孔H2は、トランジスタ10Tのソース・ドレイン電極17と有機EL素子20の第1電極21とを接続するためのものである。平坦化層18は、例えばポリイミドまたはアクリル系樹脂により構成されている。
【0031】
第1電極21は、接続孔H2を埋め込むように平坦化層18上に設けられている。この第1電極21は、例えばアノードとして機能するものであり、素子毎に設けられている。表示装置1がボトムエミッション方式である場合には、第1電極21を透明導電膜、例えば、酸化インジウムスズ(ITO),酸化インジウム亜鉛(IZO)またはインジウム亜鉛オキシド(InZnO)等のいずれかよりなる単層膜またはこれらのうちの2種以上からなる積層膜により構成する。一方、表示装置1がトップエミッション方式である場合には、第1電極21を、反射性の金属、例えば、アルミニウム,マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca)およびナトリウム(Na)のうちの少なくとも1種からなる単体金属、またはこれらのうちの少なくとも1種を含む合金よりなる単層膜、あるいは単体金属または合金を積層した多層膜により構成する。
【0032】
画素分離膜22は第1電極21と第2電極24との間の絶縁性を確保すると共に各素子の発光領域を区画分離するためのものであり、各素子の発光領域に対向して開口を有している。この画素分離膜22は例えば、ポリイミド,アクリル樹脂またはノボラック系樹脂などの感光性樹脂により構成されている。
【0033】
有機層23は、画素分離膜22の開口を覆うように設けられている。この有機層23は有機電界発光層(有機EL層)を含み、駆動電流の印加によって発光を生じるものである。有機層23は、例えば基板11(第1電極21)側から、正孔注入層、正孔輸送層、有機EL層および電子輸送層をこの順に有しており、電子と正孔との再結合が有機EL層で生じて光が発生する。有機EL層の構成材料は、一般的な低分子または高分子の有機材料であればよく、特に限定されない。例えば赤、緑および青色を発光する有機EL層が素子毎に塗り分けられていてもよく、あるいは、白色を発光する有機EL層(例えば、赤、緑および青色の有機EL層を積層したもの)が基板11の全面に渡り設けられていてもよい。正孔注入層は、正孔注入効率を高めると共にリークを防止するためのものであり、正孔輸送層は、有機EL層への正孔輸送効率を高めるためのものである。正孔注入層、正孔輸送層あるいは電子輸送層等の有機EL層以外の層は、必要に応じて設けるようにすればよい。
【0034】
第2電極24は、例えば、カソードとして機能するものであり、金属導電膜により構成されている。表示装置1がボトムエミッション方式である場合には、この第2電極24を反射性の金属、例えば、アルミニウム,マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca)およびナトリウム(Na)のうちの少なくとも1種からなる単体金属、またはこれらのうちの少なくとも1種を含む合金よりなる単層膜、あるいは単体金属または合金を積層した多層膜により構成する。一方、表示装置1がトップエミッション方式である場合には、第2電極24にITOやIZOなどの透明導電膜を用いる。この第2電極24は、第1電極21と絶縁された状態で例えば各素子に共通して設けられている。
【0035】
保護層25は、絶縁性材料または導電性材料のいずれにより構成されていてもよい。絶縁性材料としては、例えば、アモルファスシリコン(a−Si),アモルファス炭化シリコン(a−SiC),アモルファス窒化シリコン(a−Si(1-X)X)またはアモルファスカーボン(a−C)等が挙げられる。
【0036】
封止用基板27は、トランジスタ10T,保持容量素子10Cおよび有機EL素子20を間にして基板11と対向するよう、配置されている。封止用基板27には、上記基板11と同様の材料を用いることができる。表示装置1がトップエミッション方式である場合には、封止用基板27に透明材料を用い、封止用基板27側にカラーフィルタや遮光膜を設けるようにしてもよい。表示装置1がボトムエミッション方式である場合には、基板11を透明材料により構成し、例えばカラーフィルタや遮光膜を基板11側に設けておく。
【0037】
(周辺回路および画素回路の構成)
図3に示したように、表示装置1はこのような有機EL素子20を含む画素PXLCを複数有しており、画素PXLCは基板11上の表示領域50に例えばマトリクス状に配置されている。表示領域50の周辺には信号線駆動回路としての水平セレクタ(HSEL)51、走査線駆動回路としてのライトスキャナ(WSCN)52および電源線駆動回路としての電源スキャナ53が設けられている。
【0038】
表示領域50では、列方向に複数(整数n個)の信号線DTL1〜DTLnが、行方向に複数(整数m個)の走査線WSL1〜WSLmがそれぞれ配置されている。これら信号線DTLと走査線DSLとの各交差点に、画素PXLC(R,G,Bに対応する画素のいずれか1つ)が設けられている。各信号線DTLは、水平セレクタ51に電気的に接続され、水平セレクタ51から信号線DTLを介して各画素PXLCに映像信号が供給される。一方、各走査線WSLは、ライトスキャナ52に電気的に接続され、ライトスキャナ52から走査線WSLを介して各画素PXLCに走査信号(選択パルス)が供給される。各電源線DSLは電源スキャナ53に接続され、電源スキャナ53から電源線DSLを介して各画素PXLCに電源信号(制御パルス)が供給される。
【0039】
図4は、画素PXLCにおける具体的な回路構成例を表したものである。各画素PXLCは、有機EL素子20を含む画素回路50Aを有している。この画素回路50Aは、サンプリング用トランジスタTr1および駆動用トランジスタTr2と、保持容量素子10Cと、有機EL素子20とを有するアクティブ型の駆動回路である。なお、サンプリング用トランジスタTr1および駆動用トランジスタTr2のうち少なくともいずれか1つが、上記実施の形態等のトランジスタ10Tに相当する。
【0040】
サンプリング用トランジスタTr1は、そのゲートが対応する走査線WSLに接続され、そのソースおよびドレインのうちの一方が対応する信号線DTLに接続され、他方が駆動用トランジスタTr2のゲートに接続されている。駆動用トランジスタTr2は、そのドレインが対応する電源線DSLに接続され、ソースが有機EL素子20のアノードに接続されている。また、この有機EL素子20のカソードは、接地配線5Hに接続されている。なお、この接地配線5Hは、全ての画素PXLCに対して共通に配線されている。保持容量素子10Cは、駆動用トランジスタTr2のソースとゲートとの間に配置されている。
【0041】
サンプリング用トランジスタTr1は、走査線WSLから供給される走査信号(選択パルス)に応じて導通することにより、信号線DTLから供給される映像信号の信号電位をサンプリングし、保持容量素子10Cに保持するものである。駆動用トランジスタTr2は、所定の第1電位(図示せず)に設定された電源線DSLから電流の供給を受け、保持容量素子10Cに保持された信号電位に応じて、駆動電流を有機EL素子20へ供給するものである。有機EL素子20は、この駆動用トランジスタTr2から供給された駆動電流により、映像信号の信号電位に応じた輝度で発光するようになっている。
【0042】
このような回路構成では、走査線WSLから供給される走査信号(選択パルス)に応じてサンプリング用トランジスタTr1が導通することにより、信号線DTLから供給された映像信号の信号電位がサンプリングされ、保持容量素子10Cに保持される。また、上記第1電位に設定された電源線DSLから駆動用トランジスタTr2へ電流が供給され、保持容量素子10Cに保持された信号電位に応じて、駆動電流が有機EL素子20(赤色、緑色および青色の各有機EL素子)へ供給される。そして、各有機EL素子20は、供給された駆動電流により、映像信号の信号電位に応じた輝度で発光する。これにより、表示装置1において、映像信号に基づく映像表示がなされる。
【0043】
この表示装置1は、例えば次のようにして製造することができる。
【0044】
(トランジスタ10Tおよび保持容量素子10Cを形成する工程)
まず、図5(A)に示したように、板状部材からなる基板11に接して、上述した材料よりなる酸化物半導体膜12を形成する。具体的には、基板11の全面にわたって、例えばスパッタリング法により、酸化物半導体材料膜(図示せず)を例えば50nm程度の厚みで成膜する。この際、ターゲットとしては、成膜対象の酸化物半導体と同一組成のセラミックを用いる。また、酸化物半導体中のキャリア濃度は、スパッタリングの際の酸素分圧に大きく依存するので、所望のトランジスタ特性が得られるように酸素分圧を制御する。酸化物半導体膜12を例えば、ZnO,IZO,IGO等の結晶性材料により構成しておくと、後述のゲート絶縁膜13T(または容量絶縁膜13C)のエッチング工程において、容易にエッチング選択性を向上させることができる。次いで、例えばフォトリソグラフィおよびエッチングにより、成膜した酸化物半導体材料膜を所定の形状にパターニングする。その際、リン酸、硝酸および酢酸の混合液を用いたウェットエッチングにより加工することが好ましい。リン酸、硝酸および酢酸の混合液は、下地との選択比を十分に大きくすることが可能であり、比較的容易に加工が可能となる。
【0045】
続いて、図5(B)に示したように、基板11の全面に渡って例えば厚み200nmのシリコン酸化膜または酸化アルミニウム膜よりなる絶縁膜13および厚み500nmモリブデン,チタンまたはアルミニウム等の金属材料からなる導電膜14をこの順に成膜する。絶縁膜13は、例えばプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition ;化学気相成長)法により成膜することができる。シリコン酸化膜からなる絶縁膜13はプラズマCVD法のほか、反応性スパッタリング法により形成することも可能である。また、絶縁膜13に酸化アルミニウム膜を用いる場合には、上記反応性スパッタリング法,CVD法に加え、原子層成膜法を用いることも可能である。導電膜14は、例えばスパッタリング法により形成することができる。
【0046】
導電膜14を形成したのち、この導電膜14を、例えばフォトリソグラフィおよびエッチングによりパターニングし、酸化物半導体膜12上の選択的な領域にゲート電極14Tおよび容量電極14Cを形成する。次いで、形成したゲート電極14T、容量電極14Cをマスクとして絶縁膜13をエッチングする。これにより、ゲート絶縁膜13Tがゲート電極14Tと、容量絶縁膜13Cが容量電極14Cとそれぞれ平面視で略同一形状にパターニングされる(図5(C))。酸化物半導体膜12が上記結晶性材料により構成されている場合には、このエッチング工程でフッ酸等の薬液を用いることにより、非常に大きなエッチング選択比を維持して容易に加工することができる。保持容量素子10Cの容量絶縁膜13Cおよび容量電極14Cは、ゲート電極14Tおよびゲート絶縁膜13Tを形成した後、絶縁膜13、導電膜14とは別の材料を用いて形成するようにしてもよい。
【0047】
続いて、図6(A)に示したように、基板11上の全面に渡って、例えばスパッタリング法により、例えばチタン,アルミニウム,スズまたはインジウム等からなる金属膜15Aを例えば5nm以上10nm以下の厚みで成膜する。金属膜15Aは酸素と比較的低温で反応する金属により構成し、ゲート電極14T,容量電極14Cが形成された部分以外の酸化物半導体膜12に接触させて形成する。
【0048】
次いで、図6(B)に示したように、例えば200℃程度の温度で熱処理(第1の熱処理)を行うことにより金属膜15Aが酸化され、これによって金属酸化膜からなる高抵抗膜15が形成される。この際、酸化物半導体膜12のチャネル領域12Tおよび容量領域12C以外の領域には、その厚み方向の高抵抗膜15側の一部に低抵抗領域12B(ソース・ドレイン領域を含む)が形成される。この金属膜15Aの酸化反応には、酸化物半導体膜12に含まれる酸素の一部が利用されるため、金属膜15Aの酸化の進行に伴って、酸化物半導体膜12では、その金属膜15Aと接する表面(上面)側から酸素濃度が低下していく。一方、金属膜15Aからアルミニウム等の金属が酸化物半導体膜12中に拡散する。この金属元素がドーパントとして機能し、金属膜15Aと接する酸化物半導体膜12の上面側の領域が低抵抗化される。これにより、チャネル領域12Tおよび容量領域12Cよりも電気抵抗の低い低抵抗領域12Bが形成される。
【0049】
金属膜15Aの熱処理としては、上述のように200℃程度の温度でアニールすることが好ましい。その際、酸素等を含む酸化性のガス雰囲気でアニールを行うことで、低抵抗領域12Bの酸素濃度が低くなりすぎるのを抑え、酸化物半導体膜12に十分な酸素を供給することが可能となる。これにより、後工程で行うアニール工程を削減して工程の簡略化を行うことが可能となる。
【0050】
高抵抗膜15は、上記アニール工程に代えて、例えば、基板11上に金属膜15Aを形成する際の基板11の温度を比較的高めに設定することにより形成するようにしてもよい。例えば、図6(A)の工程で、基板11の温度を200℃程度に保ちつつ金属膜15Aを成膜すると、熱処理を行わずに酸化物半導体膜12の所定の領域を低抵抗化することができる。この場合には、酸化物半導体膜12のキャリア濃度をトランジスタとして必要なレベルに低減することが可能である。
【0051】
金属膜15Aは、上述のように10nm以下の厚みで成膜することが好ましい。金属膜15Aの厚みを10nm以下とすれば、熱処理によって金属膜15Aを完全に酸化させる(高抵抗膜15を形成する)ことができるからである。金属膜15Aが完全に酸化されていない場合には、この未酸化の金属膜15Aをエッチングにより除去する工程が必要となる。十分に酸化されていない金属膜15Aがゲート電極14T上および容量電極14C上などに残存しているとリーク電流が発生する虞があるためである。金属膜15Aが完全に酸化され、高抵抗膜15が形成された場合には、そのような除去工程が不要となり、製造工程の簡略化が可能となる。つまり、エッチングによる除去工程を行わなくとも、リーク電流の発生を防止できる。なお、金属膜15Aを10nm以下の厚みで成膜した場合、熱処理後の高抵抗膜15の厚みは、20nm以下程度となる。
【0052】
金属膜15Aを酸化させる方法としては、上記のような熱処理のほか、水蒸気雰囲気での酸化またはプラズマ酸化などの方法を用いることも可能である。特にプラズマ酸化の場合、次のような利点がある。高抵抗膜15の形成後、層間絶縁膜16をプラズマCVD法により形成するが(後述の図7(A))、金属膜15Aに対してプラズマ酸化処理を施した後、続けて(連続的に)、層間絶縁膜16を成膜可能である。従って、工程を増やす必要がないという利点がある。プラズマ酸化は例えば、基板11の温度を200℃〜400℃程度にし、酸素および二窒化酸素の混合ガス等の酸素を含むガス雰囲気中でプラズマを発生させて処理することが望ましい。このような工程により、酸素や水分の影響を低減する機能を有する高抵抗膜15を形成することができる。
【0053】
また、酸化物半導体膜12の所定の領域を低抵抗化させる手法としては、上記のような金属膜15Aと酸化物半導体膜12との反応による手法の他にも、プラズマ処理によって低抵抗化する手法、プラズマCVD法によりシリコン窒化膜を成膜し、このシリコン窒化膜からの水素拡散等により低抵抗化させる手法などを用いてもよい。
【0054】
高抵抗膜15を形成した後、図7(A)に示したように、高抵抗膜15上の全面にわたって、層間絶縁膜16を形成する。層間絶縁膜16が無機絶縁材料を含む場合には、例えばプラズマCVD法,スパッタリング法あるいは原子層成膜法を用い、層間絶縁膜16が有機絶縁材料を含む場合には、例えばスピンコート法やスリットコート法などの塗布法を用いることができる。塗布法により、厚膜化された層間絶縁膜16を容易に形成することができる。続いて、露光、現像工程を行い、層間絶縁膜16の所定の箇所に接続孔H1を形成する。層間絶縁膜16に感光性樹脂を用いた場合には、この感光性樹脂により露光、現像を行い、所定の箇所に接続孔H1を形成することが可能である。
【0055】
続いて、層間絶縁膜16上に、例えばスパッタリング法により、上述した材料等よりなるソース・ドレイン電極17となる導電膜(図示せず)を形成し、この導電膜によりコンタクトホールH1を埋め込む。そののち、この導電膜を例えばフォトリソグラフィおよびエッチングにより所定の形状にパターニングする。これにより、層間絶縁膜16上にソース・ドレイン電極17が形成されると共に、ソース・ドレイン電極17が接続孔H1を介して酸化物半導体膜12の低抵抗領域12Bに電気的に接続される(図7(B))。以上により、基板11上に、トランジスタ10Tおよび保持容量素子10Cを形成する。
【0056】
(トランジスタ10Tおよび保持容量素子10Cのアニール工程)
トランジスタ10Tおよび保持容量素子10Cを形成した後、アニール処理(第2の熱処理)を行う。本実施の形態では、層間絶縁膜16から酸化物半導体膜12への水分の浸入が基板11により抑えられるので、この工程においてトランジスタ10Tの電気特性を向上させることができる。以下、これについて説明する。
【0057】
図8は、比較例に係る表示装置(表示装置100)のトランジスタ100Tおよび保持容量素子100Cの断面構成を表したものである。このトランジスタ100Tの基板111は、例えばガラスまたは樹脂材料からなる板状部材の表面に例えばシリコン酸化膜,シリコン窒化膜またはシリコン酸窒化膜からなる絶縁膜111Aを有しており、この絶縁膜111Aに酸化物半導体膜12が接している。絶縁膜111Aは、プラズマCVD法により形成されたものである。
【0058】
このようなトランジスタ100Tを酸素雰囲気中でアニールした後、測定した伝達特性を図9(A)、図9(B)に表す。図9(A)は200℃、図9(B)は300℃でそれぞれアニールしたものである。これはドレイン電圧10Vで基板111の面内12点の測定を行った結果であり、縦軸はドレイン電流(Id)、横軸はゲート電圧(Vg)を表す。測定に用いたトランジスタ100Tのチャネル長は4μm、チャネル幅は10μmであり、絶縁膜111AにはプラズマCVD法により形成した厚み300nmのシリコン酸化膜を使用した。
【0059】
この結果より、200℃のアニールでは面内のTFT特性が均一であるのに対し(図9(A))、300℃のアニールではばらつき(図9(B))、マイナス方向に変化する傾向があることがわかる。これは、プラズマCVD法により形成した絶縁膜111Aは水分の透過率が高く、比較的高温の300℃でアニールを行うことにより、層間絶縁膜16中に含まれる水分が酸化物半導体膜12の外側から絶縁膜111Aを介して酸化物半導体膜12に拡散することに起因するものと考えられる(図8)。酸化物半導体膜12に拡散した水分は還元反応を引き起こして、TFT特性を低下させる。特に、セルフアライン構造のトランジスタ100Tには、有機絶縁材料からなる層間絶縁膜16を用いることが好ましいが、有機絶縁材料は無機絶縁材料に比較してより多くの水分を含んでいる虞がある。
【0060】
また、プラズマCVD法で使用する原料ガスには水素が含まれるため、これにより形成した絶縁膜111Aは多量の水素を含有している。この水素が絶縁膜111Aから酸化物半導体膜12に拡散すると、水素がドナーとして働き、チャネル領域12Cのキャリア濃度を増加させてTFT特性を低下させる虞もある。
【0061】
これに対し、本実施の形態のトランジスタ10Tでは透過率の低いガラス等の板状部材のみからなる基板11に酸化物半導体膜12が接している。即ち、基板11はプラズマCVD法により形成された絶縁膜を有していない。これにより、層間絶縁膜16の水分は基板11で遮断され、酸化物半導体膜12への水分の拡散を防ぐことができる(図10)。
【0062】
上記トランジスタ100Tと同様の条件下で測定したトランジスタ10Tの伝達特性を図11(A),図11(B)に示す。図11(A)は200℃、図11(B)は300℃でアニールした結果である。この結果より、トランジスタ10Tでは300℃のアニール工程においても面内のTFT特性が均一に維持されていることがわかる。
【0063】
図9および図11では200℃、300℃下でのアニール処理後の伝達特性を調べたが、このようなアニール工程の温度は、トランジスタ10Tの信頼性に影響を与える。以下、これについて説明する。図12は、トランジスタ10T,100Tのストレス試験の結果であり、縦軸は閾値電圧(Vth)の変化量、横軸はストレス時間を表している。酸素雰囲気中、200℃または300℃でトランジスタ10T,100Tをアニールした後、ストレス温度50℃、バイアス電圧はゲート電圧15Vで測定を行った。破線が200℃でアニールした場合、実線が300℃でアニールした場合をそれぞれ示している。この結果から、より高い温度(300℃)でトランジスタ10T,100Tをアニールすることにより、Vthの変化量が低減されることがわかる。従ってトランジスタ10Tは、面内のTFT特性を均一に維持できると共に、より高い温度でのアニール処理により高い信頼性を得ることができる。また、基板11に絶縁膜を成膜する必要がないため、製造工程を簡便化することができる。
【0064】
(平坦化層18を形成する工程)
トランジスタ10Tおよび保持容量素子10Cをアニール処理した後、層間絶縁膜16およびソース・ドレイン電極17を覆うように、上述した材料よりなる平坦化膜18を、例えばスピンコート法やスリットコート法により成膜し、ソース・ドレイン電極層17に対向する領域の一部に接続孔H2を形成する。
【0065】
(有機EL素子20を形成する工程)
続いて、この平坦化膜18上に、有機EL素子20を形成する。具体的には、平坦化膜18上に、接続孔H2を埋め込むように、上述した材料よりなる第1電極21を例えばスパッタリング法により成膜した後、フォトリソグラフィおよびエッチングによりパターニングする。この後、第1電極21上に開口を有する画素分離膜22を形成した後、有機層23を例えば真空蒸着法により成膜する。続いて、有機層23上に、上述した材料よりなる第2電極24を例えばスパッタリング法により形成する。次いで、この第2電極24上に保護層25を例えばCVD法により成膜した後、この保護層25上に、接着層26を用いて封止用基板27を貼り合わせる。以上により、図1に示した表示装置1を完成する。
【0066】
この表示装置1では、例えばR,G,Bのいずれかに対応する各画素PXLCに、各色の映像信号に応じた駆動電流が印加されると、第1電極21および第2電極24を通じて、有機層23に電子および正孔が注入される。これらの電子および正孔は、有機層23に含まれる有機EL層においてそれぞれ再結合され、発光を生じる。このようにして、表示装置1では、例えばR,G,Bのフルカラーの映像表示がなされる。また、この映像表示動作の際に保持容量素子10Cの一端に、映像信号に対応する電位が印加されることにより、保持容量素子10Cには、映像信号に対応する電荷が蓄積される。
【0067】
ここでは、基板11が板状部材のみにより構成されているので、層間絶縁膜16から酸化物半導体膜12への水分の拡散が抑えられる。
【0068】
このように本実施の形態では、基板11が層間絶縁膜16から酸化物半導体膜12への水分の拡散を抑えるので、トランジスタ10Tの電気特性を向上させることができる。
【0069】
また、より高い温度でトランジスタ10Tをアニールしても、基板11の面内のTFT特性が均一に維持される。従って、閾値電圧の変化量を低減してトランジスタ10Tの信頼性を向上させることもできる。
【0070】
以下、本実施の形態の変形例および他の実施の形態について説明するが、以降の説明において上記実施の形態と同一構成部分については同一符号を付してその説明は適宜省略する。
【0071】
<変形例1>
図13は、上記第1の実施の形態の変形例1に係る表示装置(表示装置1A)の断面構成を表したものである。この表示装置1Aは、表示装置1の有機EL素子20に代えて液晶表示素子30を有するものである。この点を除き、表示装置1Aは上記実施の形態の表示装置1と同様の構成を有し、その作用および効果も同様である。
【0072】
表示装置1Aは、表示装置1と同様のトランジスタ10Tおよび保持容量素子10Cを有するものであり、このトランジスタ10Tおよび保持容量素子10Cの上層に平坦化層18を間にして液晶表示素子30が設けられている。
【0073】
液晶表示素子30は、例えば、画素電極31と対向電極32との間に液晶層33を封止したものであり、画素電極31および対向電極32の液晶層33側の各面には、配向膜34A,34Bが設けられている。画素電極31は、画素毎に配設されており、例えばトランジスタ10Tのソース・ドレイン電極17に電気的に接続されている。対向電極32は、対向基板35上に複数の画素に共通の電極として設けられ、例えばコモン電位に保持されている。液晶層33は、例えばVA(Vertical Alignment:垂直配向)モード,TN(Twisted Nematic)モードあるいはIPS(In Plane Switching)モード等により駆動される液晶により構成されている。
【0074】
また、基板11の下方には、バックライト36が備えられており、基板11のバックライト36側および対向基板35上には、偏光板37A,37Bが貼り合わせられている。
【0075】
バックライト36は、液晶層33へ向けて光を照射する光源であり、例えばLED(Light Emitting Diode)やCCFL(Cold Cathode Fluorescent Lamp )等を複数含むものである。このバックライト36は、図示しないバックライト駆動部によって、点灯状態および消灯状態が制御されるようになっている。
【0076】
偏光板37A,37B(偏光子,検光子)は、例えば互いにクロスニコルの状態で配置されており、これにより、例えばバックライト36からの照明光を電圧無印加状態(オフ状態)では遮断、電圧印加状態(オン状態)では透過させるようになっている。
【0077】
この表示装置1Aでは、上記実施の形態の表示装置1と同様に、層間絶縁膜16から酸化物半導体膜12への水分の浸入が基板11により抑えられる。これにより、本変形例においても、トランジスタ10Tの電気特性を向上させることができる。
【0078】
<変形例2>
図14は、上記第1の実施の形態の変形例2に係る表示装置(表示装置1B)の断面構成を表したものである。この表示装置1Bは所謂電子ペーパーであり、表示装置1の有機EL素子20に代えて電気泳動型表示素子40を有している。この点を除き、表示装置1Bは上記実施の形態の表示装置1と同様の構成を有し、その作用および効果も同様である。
【0079】
表示装置1Bは、表示装置1と同様のトランジスタ10Tおよび保持容量素子10Cを有するものであり、このトランジスタ10Tおよび保持容量素子10Cの上層に平坦化層18を間にして電気泳動型表示素子40が設けられている。
【0080】
電気泳動型表示素子40は、例えば、画素電極41と共通電極42との間に電気泳動型表示体よりなる表示層43を封止したものである。画素電極41は、画素毎に配設されており、例えばトランジスタ10Tのソース・ドレイン電極17に電気的に接続されている。共通電極42は、対向基板44上に複数の画素に共通の電極として設けられている。
【0081】
この表示装置1Bでは、上記実施の形態の表示装置1と同様に、層間絶縁膜16から酸化物半導体膜12への水分の浸入が基板11により抑えられる。これにより、本変形例においても、トランジスタ10Tの電気特性を向上させることができる。
【0082】
<第2の実施の形態>
図15は、本技術の第2の実施の形態に係る表示装置(表示装置2)の断面構成を表したものである。この表示装置2では、基板(基板71)がその表面に拡散防止膜71Aを有している。この点を除き、表示装置2は上記第1の実施の形態の表示装置1と同様の構成を有し、その作用および効果も同様である。
【0083】
表示装置2のトランジスタ(トランジスタ70T)は、基板71上に酸化物半導体膜12、ゲート絶縁膜13T、ゲート電極14Tをこの順に有するトップゲート型のTFTであり、酸化物半導体膜12が基板71の拡散防止膜71Aに接している。基板71は、板状部材71Bの表面に拡散防止膜71Aを有するものである。拡散防止膜71Aは、アニール工程において層間絶縁膜16から酸化物半導体膜12への水分の透過を防ぐためのものであり、水分透過率の低い膜により構成されている。板状部材71Bは、例えば、石英,ガラス,シリコンまたは樹脂フィルムなどにより構成されている。上記第1の実施の形態で説明したようにスパッタ法により、基板71を加熱することなく酸化物半導体膜12を成膜可能なため、板状部材71Bに安価な樹脂材料を用いることができる。この樹脂材料としては、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)またはPEN(ポリエチレンナフタレート)などが挙げられる。板状部材71Bを、目的に応じてステンレス鋼(SUS)等の金属基板により構成するようにしてもよい。ここでは、板状部材71Bに例えばガラスよりも水分透過率の高い樹脂材料を用いることができる。
【0084】
拡散防止膜71Aは、例えばスパッタリング法またはイオンビームスパッタ法等により形成したシリコン酸化膜,シリコン窒化膜または酸化アルミニウム膜等の無機絶縁膜により構成されている。トランジスタ70Tおよびトランジスタ70Tと酸化物半導体膜12を共有する保持容量素子70Cの上層には平坦化層18を間にして有機EL素子20が設けられている。有機EL素子20に代えて、液晶表示素子30(図13)または電気泳動型表示素子40(図14)を設けるようにしてもよい。
【0085】
このような表示装置2は、まず、板状部材71Bを用意し(図16(A))、この板状部材71Bの表面に、スパッタリング法またはイオンビームスパッタ法等の物理薄膜形成法により拡散防止膜71Aを形成する(図16(B))。スパッタリング法またはイオンビームスパッタ法を用いることにより、プラズマCVD法を用いた場合よりも拡散防止膜71Aに含有される水素の量を抑え、水分に加えて酸化物半導体膜12への水素の拡散をも防ぐことができる。拡散防止膜71Aを形成した後、この拡散防止膜71A上に、トランジスタ10Tと同様にして酸化物半導体膜12を形成する(図16(C))。以降、上記第1の実施の形態と同様にしてゲート絶縁膜13T、ゲート電極14T、高抵抗膜15、層間絶縁膜16およびソース・ドレイン電極17を設けトランジスタ70Tを形成する。また、このトランジスタ70Tと共に保持容量素子70Cを形成した後、有機EL素子20を形成して表示装置2を完成させる。
【0086】
この表示装置2では、板状部材71Bが樹脂材料など比較的水分透過率の高い材料により構成されている場合にも、拡散防止膜71Aにより層間絶縁膜16から酸化物半導体膜12への水分の拡散を防ぐことができる。これにより、本実施の形態においても、トランジスタ70Tの電気特性および信頼性を向上させることができる。
【0087】
(適用例)
以下、上記のような表示装置(表示装置1,1A,1B,2)の電子機器への適用例について説明する。電子機器としては、例えばテレビジョン装置,デジタルカメラ,ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラ等が挙げられる。言い換えると、上記表示装置は、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、画像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。
【0088】
(モジュール)
上記表示装置は、例えば図17に示したようなモジュールとして、後述の適用例1〜7
などの種々の電子機器に組み込まれる。このモジュールは、例えば、基板11の一辺に、封止用基板27または対向基板35,44から露出した領域61を設け、この露出した領域61に、水平セレクタ51、ライトスキャナ52および電源スキャナ53の配線を延長して外部接続端子(図示せず)を形成したものである。この外部接続端子には、信号の入出力のためのフレキシブルプリント配線基板(FPC;Flexible Printed Circuit)62が設けられていてもよい。
【0089】
(適用例1)
図18(A)および図18(B)はそれぞれ、上記実施の形態の表示装置が適用される電子ブックの外観を表したものである。この電子ブックは、例えば、表示部210および非表示部220を有しており、この表示部210が上記実施の形態の表示装置により構成されている。
【0090】
(適用例2)
図19は、上記実施の形態の表示装置が適用されるスマートフォンの外観を表したものである。このスマートフォンは、例えば、表示部230および非表示部240を有しており、この表示部230が上記実施の形態の表示装置により構成されている。
【0091】
(適用例3)
図20は、上記実施の形態の表示装置が適用されるテレビジョン装置の外観を表したものである。このテレビジョン装置は、例えば、フロントパネル310およびフィルターガラス320を含む映像表示画面部300を有しており、この映像表示画面部300は、上記実施の形態の表示装置により構成されている。
【0092】
(適用例4)
図21は、上記実施の形態の表示装置が適用されるデジタルカメラの外観を表したものである。このデジタルカメラは、例えば、フラッシュ用の発光部410、表示部420、メニュースイッチ430およびシャッターボタン440を有しており、この表示部420が上記実施の形態の表示装置により構成されている。
【0093】
(適用例5)
図22は、上記実施の形態の表示装置が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を表したものである。このノート型パーソナルコンピュータは、例えば、本体510,文字等の入力操作のためのキーボード520および画像を表示する表示部530を有しており、この表示部530が上記実施の形態の表示装置により構成されている。
【0094】
(適用例6)
図23は、上記実施の形態の表示装置が適用されるビデオカメラの外観を表したものである。このビデオカメラは、例えば、本体部610,この本体部610の前方側面に設けられた被写体撮影用のレンズ620,撮影時のスタート/ストップスイッチ630および表示部640を有している。そして、この表示部640が上記実施の形態の表示装置により構成されている。
【0095】
(適用例7)
図24は、上記実施の形態の表示装置が適用される携帯電話機の外観を表したものである。この携帯電話機は、例えば、上側筐体710と下側筐体720とを連結部(ヒンジ部)730で連結したものであり、ディスプレイ740,サブディスプレイ750,ピクチャーライト760およびカメラ770を有している。そして、これらのうちのディスプレイ740またはサブディスプレイ750が、上記実施の形態の表示装置により構成されている。
【0096】
以上、実施の形態および変形例を挙げて本技術を説明したが、本技術はこれら実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態等では、高抵抗膜15を設けた構造を例に挙げて説明したが、この高抵抗膜15は、低抵抗領域12Bを形成したのちに除去することも可能である。ただし、上述のように、高抵抗膜15を設けた場合の方が、トランジスタ10Tおよび保持容量素子10Cの電気特性を安定的に保持することができるため望ましい。
【0097】
また、上記実施の形態等では、基板11(または基板71)上に酸化物半導体膜12、ゲート絶縁膜13Tおよびゲート電極14Tをこの順に有するトップゲート型のトランジスタ10T(またはトランジスタ70T)について説明したが、本技術は、基板11上にゲート電極14T、ゲート絶縁膜13Tおよび酸化物半導体膜12をこの順に有するボトムゲート型のトランジスタにも適用可能である。ただし、本技術は、基板11により近い位置に酸化物半導体膜12が配置された場合、即ちトップゲート型のトランジスタ10Tにおいて、より効果的に水分の浸入を防止することができる。
【0098】
更に、上記実施の形態等では、製造過程でのアニール工程により層間絶縁膜16から酸化物半導体膜12への水分拡散が生じる場合について説明したが、使用時についても同様に基板11は水分の透過を防ぐことができる。
【0099】
加えて、上記実施の形態等では、低抵抗領域12Bが、酸化物半導体膜12のチャネル領域12C以外の領域の表面(上面)から厚み方向の一部に設けられている場合について説明したが、低抵抗領域12Bは、酸化物半導体膜12の表面(上面)から厚み方向の全部に設けることも可能である。
【0100】
また、上記実施の形態等において説明した各層の材料および厚み、または成膜方法および成膜条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、または他の成膜方法および成膜条件としてもよい。
【0101】
更にまた、上記実施の形態等では、有機EL素子20,液晶表示素子30,電気泳動型表示素子40,トランジスタ10Tおよび保持容量素子10Cの構成を具体的に挙げて説明したが、全ての層を備える必要はなく、また、他の層を更に備えていてもよい。
【0102】
加えてまた、本技術は、有機EL素子20,液晶表示素子30,電気泳動型表示素子40のほか、無機エレクトロルミネッセンス素子などの他の表示素子を用いた表示装置にも適用可能である。
【0103】
更にまた、例えば、上記実施の形態において表示装置の構成を具体的に挙げて説明したが、全ての構成要素を備える必要はなく、また、他の構成要素を更に備えていてもよい。
【0104】
なお、本技術は以下のような構成を取ることも可能である。
(1)基板上にチャネル領域を有する酸化物半導体膜と前記チャネル領域に対向するゲート電極とを形成する工程と、前記ゲート電極および前記酸化物半導体膜を覆う絶縁膜を形成する工程とを含み、前記絶縁膜から前記酸化物半導体膜への水分の浸入を前記基板により抑制するトランジスタの製造方法。
(2)前記基板はガラスからなる前記(1)記載のトランジスタの製造方法。
(3)前記絶縁膜に有機絶縁材料を含む前記(1)または(2)記載のトランジスタの製造方法。
(4)前記基板に接して前記酸化物半導体膜を形成する前記(1)乃至(3)のうちいずれか1つに記載のトランジスタの製造方法。
(5)前記酸化物半導体膜のチャネル領域以外に接する金属膜を形成し、前記金属膜に第1の熱処理を施して高抵抗膜を形成すると共に、前記酸化物半導体膜に低抵抗領域を形成する前記(1)乃至(4)のうちいずれか1つに記載のトランジスタの製造方法。
(6)前記低抵抗領域にソース・ドレイン電極を電気的に接続する前記(5)記載のトラ ンジスタの製造方法。
(7)前記ソース・ドレイン電極を形成した後、第2の熱処理を行う前記(6)記載のトランジスタの製造方法。
(8)前記第2の熱処理を200℃以上で行う前記(7)記載のトランジスタの製造方法 。
(9)前記第2の熱処理を300℃以上で行う前記(7)または(8)記載のトランジス タの製造方法。
(10)前記基板は、その表面に水分の拡散防止膜を有する前記(1)記載のトランジスタの製造方法。
(11)前記拡散防止膜に接して前記酸化物半導体膜を形成する前記(10)記載のトランジスタの製造方法。
(12)前記拡散防止膜をスパッタリング法またはイオンビームスパッタ法により成膜する前記(10)または(11)記載のトランジスタの製造方法。
(13)前記基板を樹脂材料からなる板状部材に前記拡散防止膜を成膜することにより形成する前記(10)乃至(12)のうちいずれか1つに記載のトランジスタの製造方法。(14)前記拡散防止膜は、シリコン酸化膜,シリコン窒化膜または酸化アルミニウム膜のうちのいずれか1つを含む前記(10)乃至(13)のうちいずれか1つに記載のトランジスタの製造方法。
(15)基板上のチャネル領域を有する酸化物半導体膜および前記チャネル領域に対向するゲート電極と、前記ゲート電極および前記酸化物半導体膜を覆う絶縁膜とを備え、前記絶縁膜から前記酸化物半導体膜への水分の浸入を前記基板により抑制するトランジスタ。
(16)表示素子および前記表示素子を駆動するトランジスタを備え、前記トランジスタは、基板上のチャネル領域を有する酸化物半導体膜および前記チャネル領域に対向するゲート電極と、前記ゲート電極および前記酸化物半導体膜を覆う絶縁膜とを備え、前記絶縁膜から前記酸化物半導体膜への水分の浸入を前記基板により抑制する表示装置。
(17)前記トランジスタの酸化物半導体膜を共有した保持容量素子を有する前記(1
6)記載の表示装置。
(18)前記酸化物半導体膜は、前記チャネル領域に隣接する一対の低抵抗領域を有する前記(16)または(17)記載の表示装置。
(19)表示素子および前記表示素子を駆動するトランジスタを有する表示装置を備え、前記トランジスタは、基板上のチャネル領域を有する酸化物半導体膜および前記チャネル領域に対向するゲート電極と、前記ゲート電極および前記酸化物半導体膜を覆う絶縁膜とを備え、前記絶縁膜から前記酸化物半導体膜への水分の浸入を前記基板により抑制する電子機器。
【符号の説明】
【0105】
1,1A,1B,2・・・表示装置、10T,70T・・・トランジスタ、10C,70C・・・保持容量素子、11,71・・・基板、12・・・酸化物半導体膜、12T・・・チャネル領域、12C・・・低抵抗領域、13T・・・ゲート絶縁膜、14T・・・ゲート電極、15・・・高抵抗膜、15A・・・金属膜、16・・・層間絶縁膜、17・・・ソース・ドレイン電極、18・・・平坦化膜、20・・・有機EL素子、21・・・第1電極、22・・・画素分離膜、23・・・有機層、24・・・第2電極、25・・・保護層、26・・・接着層、27・・・封止用基板、H1,H2・・・接続孔、50・・・表示領域、51・・・水平セレクタ、52・・・ライトスキャナ、53・・・電源スキャナ、DSL・・・走査線、DTL・・・信号線、50A・・・画素回路、30・・・液晶表示素子、31,41・・・画素電極、32・・・対向電極、33・・・液晶層、34A,34B・・・配向膜、35,44・・・対向基板、36・・・バックライト、37A,37B・・・偏光板、40・・・電気泳動型表示素子、42・・・共通電極、43・・・表示層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24