特許第6142144号(P6142144)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6142144
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】加熱装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20170529BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20170529BHJP
   B01D 53/88 20060101ALI20170529BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20170529BHJP
   B01D 53/92 20060101ALI20170529BHJP
   B01J 37/34 20060101ALI20170529BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   F01N3/08 C
   F01N3/24 L
   B01D53/88
   B01D53/86 222
   B01D53/92 227
   B01J37/34
   B01J35/02 G
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-533696(P2013-533696)
(86)(22)【出願日】2012年9月12日
(86)【国際出願番号】JP2012073381
(87)【国際公開番号】WO2013039123
(87)【国際公開日】20130321
【審査請求日】2015年9月8日
(31)【優先権主張番号】特願2011-202187(P2011-202187)
(32)【優先日】2011年9月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504293528
【氏名又は名称】イマジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】池田 裕二
【審査官】 稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−036199(JP,A)
【文献】 特開2010−169015(JP,A)
【文献】 特開平10−286468(JP,A)
【文献】 特開2000−104538(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/008525(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00−3/38
B01D 53/86−53/96
B01J 35/02、37/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素原子又は炭素を含む分子を主成分とするマイクロコイルを有するとともに、高温ガスが流通する対象空間に設けられる前記高温ガスを浄化する触媒と一体に設けられた発熱層と、
前記対象空間に電磁波を放射する電磁波放射装置とを備え、
前記電磁波放射装置から前記対象空間へ電磁波を放射して前記マイクロコイルを発熱させることにより、前記触媒を加熱する加熱装置であって、
前記発熱層の全領域を被覆する前記触媒が設けられた被覆層を備え、
前記被覆層と前記発熱層の境界面で、前記触媒と、前記マイクロコイルが非接触の状態に保たれていることを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱装置において、
前記マイクロコイルが該マイクロコイルの発火温度以上にならないように、前記電磁波放射装置による電磁波の放射が制御されることを特徴とする加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波を利用して電磁波吸収体を発熱させることにより被加熱物を加熱する加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電磁波を利用して電磁波吸収体を発熱させることにより、被加熱物を加熱する技術が知られている。
【0003】
例えば特開2009−036199号公報には、マイクロ波によりマイクロ波吸収体材料を発熱させて排ガスの微粒子捕集用フィルタを加熱する技術が開示されている。マイクロ波吸収体材料は、微粒子捕集用フィルタに添加されている。マイクロ波吸収体材料としては、炭素繊維をコイル状にしたカーボンマイクロコイルが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−036199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、高温ガスが流通する空間に設けられる被加熱物の加熱に、炭素原子又は炭素を含む分子を主成分とするマイクロコイルを利用する加熱装置では、マイクロコイルが被加熱物に一体に設けられる。そのため、微粒子捕集用フィルタのように高温ガスに晒される物を加熱する場合は、マイクロコイルも高温ガスに晒される。炭素原子又は炭素を含む分子を主成分とするマイクロコイルは、排気ガスの温度レベルで発火するおそれがある。従って、マイクロコイルが焼損し、被加熱物をほとんど加熱できなくなるおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、高温ガスが流通する空間に設けられる被加熱物の加熱に、炭素原子又は炭素を含む分子を主成分とするマイクロコイルを利用する加熱装置において、マイクロコイルの焼損による機能低下を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、炭素原子又は炭素を含む分子を主成分とするマイクロコイルを有するとともに、高温ガスが流通する対象空間に設けられる被加熱物と一体に設けられた発熱層と、前記対象空間に電磁波を放射する電磁波放射装置とを備え、前記電磁波放射装置から前記対象空間へ電磁波を放射して前記マイクロコイルを発熱させることにより、前記被加熱物を加熱する加熱装置であって、前記発熱層の全領域を被覆する被覆層を備えている。
【0008】
第1の発明では、発熱層の全領域を被覆する被覆層を備えているので、発熱層に酸素がほとんど到達しない。また、発熱層が高温ガスに直接晒されないため、高温ガス流通時の発熱層の温度上昇が抑制される。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記被加熱物は、前期高温ガスを浄化する触媒であり、前記触媒は、前記被覆層に設けられている。
【0010】
第3の発明は、第2の発明において、前記被覆層と前記発熱層の境界面で、前記触媒と、前記マイクロコイルが非接触の状態に保たれている
【0011】
第3の発明では、触媒とマイクロコイルとが非接触の状態に保たれるので、触媒によりマイクロコイルの酸化が促進されることが防止される。
【0012】
第4の発明は、第1から第3の何れか1つの発明において、前記マイクロコイルが該マイクロコイルの発火温度以上にならないように、前記電磁波放射装置による電磁波の放射が制御される。
【0013】
第4の発明では、マイクロコイルがその発火温度以上にならないようにすることができる。
【0014】
第5の発明は、炭素原子又は炭素を含む分子を主成分とするマイクロコイルを有するとともに、高温ガスが流通する対象空間に設けられる被加熱物と一体に設けられた発熱層と、前記対象空間に電磁波を放射する電磁波放射装置とを備え、前記電磁波放射装置から前記対象空間へ電磁波を放射して前記発熱層のマイクロコイルを発熱させることにより、前記被加熱物を加熱する加熱装置であって、前記マイクロコイルは、炭化珪素を主成分とする。
【0015】
第5の発明では、被加熱物の加熱に、耐熱性が高く化学的に安定な炭化珪素を主成分とするマイクロコイルが用いられている。このマイクロコイルは、高温ガスが流通する空間に設けられる被加熱物と一体化されても焼損しにくい。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、被覆層が発熱層の全領域を被覆するので、発熱層に酸素がほとんど到達しない。また、発熱層が高温ガスに直接晒されないため、高温ガス流通時の発熱層の温度上昇が抑制される。発熱層のマイクロコイルは、ほとんど酸素に接触しない上に、自身の発火温度に到達しにくい。従って、発熱層のマイクロコイルが極めて焼損しにくく、その焼損による加熱装置の機能低下を抑制できる。
【0017】
第3の発明では、触媒とマイクロコイルとが非接触の状態に保たれるので、触媒によりマイクロコイルの酸化が促進されることが防止される。そのため、触媒との接触によりマイクロコイルが損傷しないため加熱装置の寿命を延ばすことができる。
【0018】
第4の発明では、マイクロコイルがその発火温度以上にならないように、電磁波の放射が制御される。そのため、被加熱物が高温ガスに晒される期間だけでなく、電磁波によりマイクロコイルを発熱させる期間も、発熱層のマイクロコイルが極めて焼損しにくく、その焼損による加熱装置の機能低下を抑制できる。
【0019】
第5の発明では、被加熱物の加熱に、耐熱性が高く化学的に安定な炭化珪素を主成分とするマイクロコイルが用いられている。そのため、高温ガスが流通する空間に設けられる被加熱物と一体化されてもマイクロコイルが焼損しにくく、加熱装置の機能低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に係る排ガス浄化装置の概略構成図である。
図2】実施形態に係る触媒担体の横断面図である。
図3】実施形態に係る触媒担体の縦断面図である。
図4】実施形態に係る触媒担体の要部の縦断面図である。
図5】変形例2に係る触媒担体の要部の縦断面図である。
図6】変形例3に係る触媒担体の要部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0022】
本実施形態の加熱装置10は、自動車のエンジンから排出される排ガスを浄化する排ガス浄化装置30の触媒32(被加熱物)を加熱する装置である。
【0023】
触媒32は、本実施形態においては、三元触媒システムの主成分となる活性金属(プラチナ、パラジウム、ロジウム)である。三元触媒システムは、ガソリンを燃料とする自動車の排ガス中に含まれる炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)を浄化する。三元触媒は、炭化水素を水と二酸化炭素に、一酸化炭素を二酸化炭素に酸化し、窒素酸化物を窒素に還元する。
【0024】
三元触媒システムは、常温では還元能力が低く、エンジンが冷えた状態で始動した直後では還元能力がほとんどない。そのため、エンジンの始動時に三元触媒システムを適切に作動させるためには、触媒32が活性化する適切な温度にまで加熱する必要がある。本実施形態においては、加熱装置10が、触媒32をすみやかに加熱して触媒32を活性化させる。
【0025】
排ガス浄化装置30は、図1に示すように、触媒32が設けられた触媒担体11と、その触媒担体11を収容するケーシング31と、触媒32の加熱装置10とを備えている。
【0026】
触媒担体11は、図2図3に示すように、外径がケーシング31の内径とほぼ同じに設定され、固定用の部材(図示省略)でケーシング31の内部に固定される。触媒担体11は、外筒12と、ハニカム構造体13と、触媒担持層35とを備えている。
【0027】
外筒12は、マイクロ波を透過可能な絶縁性の材料からなる円筒形状の部材である。本実施形態では、外筒12は、セラミック材料で構成されている。外筒12は、次に述べるハニカム構造体13を内部に収容している。
【0028】
ハニカム構造体13は、外筒12と同様、マイクロ波を透過可能な絶縁性の材料からなる外形が円柱状の部材である。本実施形態では、ハニカム構造体13が、外筒12と同じセラミック材料で構成されている。ハニカム構造体13は、円筒形状の筒部13aと、筒部13aと一体に成形された断面格子状の格子部13bとを備えている。ハニカム構造体13は、格子部13bの間の空隙を通して、図3の図中の矢印で示す方向に排ガスが流通可能に構成されている。
【0029】
触媒担持層35は、図2図3に示すように、ハニカム構造体13の筒部13aと格子部13bにそれぞれ積層されている。触媒担持層35には、触媒32が担持されている。なお、触媒担持層35のうち触媒32を除く部分は、加熱装置10の一部にもなっている。触媒32は、触媒担持層35のうち後述する被覆層15に担持されている。
【0030】
ケーシング31は、触媒担体11を収納するために設けられた、概ね筒状の金属製の部材である。ケーシング31は、自動車のエンジンの排気管の一部を構成しており、図1の図中の矢印で示す方向に、排ガスが流通する。つまり、ケーシング31の内部は、排ガスが流通する排ガス通路33(対象空間)を構成している。
【0031】
ケーシング31の下方中央付近には、後述するアンテナ17を挿通させる開口部34が形成されている。ケーシング31の内部の排ガス通路33には、アンテナ17からマイクロ波が放射される。
【0032】
加熱装置10は、前述の排ガス浄化装置30の触媒担持層35に担持された触媒32(被加熱物)を加熱する装置である。加熱装置10は、発熱層14と、被覆層15と、電磁波放射装置40とを備えている。
【0033】
発熱層14は、触媒担持層35の下層側を構成する層である。発熱層14は、図2図3に示すようにハニカム構造体13の筒部13aと格子部13bとにそれぞれ積層されている。発熱層14は、図4に詳しく示すように、セラミック系のバインダー14aの中に、マイクロコイル21が多数、混入されている。発熱層14は、セラミック系のバインダー14aと、マイクロコイル21とを混合したスラリー溶液をハニカム構造体13の表面に塗布し、ハニカム構造体13とともに焼成することによって形成される。
【0034】
ここで、マイクロコイル21は、炭素原子を主成分とするいわゆるカーボンマイクロコイル(CMC)で構成されている。カーボンマイクロコイルは、約0.01〜1μmのピッチでコイル型に巻かれた形状を持つ微細な炭素繊維である。なお、発熱層14に、炭化珪素を主成分とするマイクロコイルを使用してもよい。
【0035】
カーボンマイクロコイルは、電磁波を吸収して発熱する特性を持つ。本実施形態では、この特性を利用して後述の電磁波発生装置16からマイクロコイル21にマイクロ波(電磁波)を吸収させて、マイクロコイル21を発熱させる。そして、マイクロコイル21で発生した熱により、発熱層14と、発熱層14の上に設けられた後述する被覆層15とを加熱する。その結果、被覆層15に担持された触媒32が加熱される。
【0036】
被覆層15は、触媒担持層35の上層側を構成する層である。被覆層15は、セラミック系のバインダー材で構成された非通気性の耐熱層である。被覆層15は、発熱層14の全領域を被覆して、発熱層14に酸素が到達することを防止すると共に、ハニカム構造体13の空隙を高温ガスが流通する時の発熱層14の温度上昇を抑制する。
【0037】
被覆層15は、発熱層14の上に、触媒32を担持させたセラミック系バインダー材を塗布して、焼成することによって形成される。このようにして被覆層15の表面に、被加熱物である触媒32が設けられている。
【0038】
ここで、カーボンマイクロコイルは、空気中で500〜600℃以上で自然発火するおそれがある。一方、自動車エンジンの排ガス温度は、全負荷運転時には700℃から800℃に達し、上り坂や加速時には1000℃以上に達することもある。
【0039】
そのため、カーボンマイクロコイルの自然発火温度以上の排ガスにカーボンマイクロコイルが直接晒された場合、カーボンマイクロコイルが、発火温度以上になって、発火する恐れがある。そこで、発熱層14に酸素が到達することを防止すると共に、発熱層14の温度上昇を抑制するために、被覆層15により、マイクロコイル21がある発熱層14の全領域を被覆している。
【0040】
電磁波放射装置40は、触媒32を加熱するために、発熱層14のマイクロコイル21が吸収するマイクロ波(電磁波)を放射する装置である。電磁波放射装置40は、電磁波発生装置16と、アンテナ17と、電力供給部18と、制御装置19とを備えている。
【0041】
電磁波発生装置16では、半導体発振器(図示省略)によりマイクロ波を生成する。電磁波発生装置16は、電力供給部18から電力供給路18aを介して電力の供給を受けると、マイクロ波を生成し、生成したマイクロ波を、マイクロ波伝送路16aを介してアンテナ17に送る。
【0042】
アンテナ17は、電磁波発生装置16から出力されたマイクロ波を、ケーシング31の内部の排ガス通路33に放射するためのものである。アンテナ17は、ケーシング31に設けられた開口部34に挿通され、ケーシング31の内部の排ガス通路33に露出している。
【0043】
制御装置19は、CPU、記憶装置、入出力装置を備えた、いわゆる電子制御装置で構成されている。制御装置19は、次に述べるように、加熱装置10を制御する。
−プラズマ処理装置の動作−
【0044】
制御装置19の制御動作を含めて、加熱装置10の動作について説明する。
【0045】
制御装置19は、自動車のエンジンの始動と同時に電磁波駆動信号を電力供給部18に出力する。電力供給部18は、電磁波駆動信号を受けると、電力を電磁波発生装置16へ供給する。そうすると、電磁波発生装置16で生成された電磁波が、アンテナ17からケーシング31の内部の排ガス通路33に放射される。
【0046】
アンテナ17から排ガス通路33にマイクロ波が放射されると、発熱層14のマイクロコイル21が、マイクロ波のエネルギーを吸収して瞬時に発熱し、高温状態となる。
【0047】
高温状態のマイクロコイル21により、発熱層14と被覆層15とがすみやかに加熱され、被覆層15に担持された触媒32が加熱される。その結果、触媒32が短時間で活性温度に到達する。
【0048】
本実施形態においては、加熱装置10により、触媒が活性化する温度として、例えば、摂氏300−400度まで触媒32を加熱するように構成されている。そして、活性温度に到達した触媒32により、排ガス中に含まれる炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)が分解される。クリーンとなった排ガスは、下流側に配置した排気通路(図示省略)を流通して大気へと放出される。
−実施形態の効果−
【0049】
本実施形態では、被覆層15が発熱層14の全領域を被覆するので、発熱層14に酸素がほとんど到達しない。また、発熱層14が高温の排ガスガスに直接晒されないため、高温の排ガスの流通時の発熱層14の温度上昇が抑制される。発熱層14のマイクロコイル21は、ほとんど酸素に接触しない上に、自身の発火温度に到達しにくい。従って、発熱層14のマイクロコイル21が極めて焼損しにくく、その焼損による加熱装置10の機能低下を抑制できる。
【0050】
触媒32とマイクロコイル21とが非接触の状態に保たれるので、触媒32によりマイクロコイル21の酸化が促進されることが防止される。そのため、触媒32との接触によりマイクロコイル21が損傷しないため加熱装置10の寿命を延ばすことができる。
−実施形態の変形例1−
【0051】
変形例1では、発熱層14のマイクロコイル21として、耐熱性が高く化学的に安定な炭化珪素を主成分とするマイクロコイルが用いられている。従って、マイクロコイル21が焼損しにくく、加熱装置10の機能低下が抑制される。
−実施形態の変形例2−
【0052】
変形例2では、触媒32とマイクロコイル21との化学反応を避けるために、触媒32とマイクロコイル21との間に、絶縁体25の絶縁層が設けられている。例えば、図5においては、発熱層14に絶縁体25が蒸着されることにより、触媒32とマイクロコイル21とが、非接触の状態に保たれている。
【0053】
このように、変形例2においては、触媒32とマイクロコイル21とが絶縁体25により非接触の状態に保たれるので、触媒32によりマイクロコイル21の酸化が促進されることが防止される。そのため、触媒32との接触によりマイクロコイルが損傷しないため、加熱装置10の寿命を延ばすことができる。
−実施形態の変形例3−
【0054】
カーボンマイクロコイルの代わりに例えば、炭化珪素を主成分とするマイクロコイル21を用いる場合、図6のように、被覆層15を省略して、マイクロコイル21と触媒32とを共に発熱層14に設けることができる。
触媒32の加熱に、耐熱性が高く化学的に安定な炭化珪素を主成分とするマイクロコイル21が用いられている。そのため、高温の排ガスが流通する空間に設けられる触媒32と一体化されてもマイクロコイル21が焼損しにくく、加熱装置10の機能低下を抑制できる。また、実施形態に比べて、マイクロコイル21が触媒32に近接しているため、触媒32を短時間で昇温することができる。
−実施形態の変形例4−
【0055】
変形例4では、マイクロコイル21が該マイクロコイル21の発火温度以上にならないように、電磁波放射装置40においてマイクロ波の放射制御が実行される。制御装置19には、電磁波放射装置40がマイクロ波の放射を継続した場合に、マイクロコイル21がその発火温度より低い上限温度に到達するまでに要する時間が、終了設定時間として設定されている。上限温度は、発火温度よりも例えば50℃低い温度である。
【0056】
制御装置19は、エンジンの始動と同時にマイクロ波の放射を開始した時点から終了設定時間が経過した時点で、電力供給の停止を指示する停止指令を電力供給部18に出力する。そうすると、電力供給部18が電磁波発生装置16への電力の供給を停止し、電磁波放射装置40によりマイクロ波の放射が停止される。
【0057】
このように、変形例4では、マイクロコイル21がその発火温度以上にならないようにマイクロ波の放射が制御されるため、触媒32が高温の排ガスに晒される期間だけでなく、マイクロ波によりマイクロコイル21を発熱させる期間も、マイクロコイル21が極めて焼損しにくく、その焼損による加熱装置10の機能低下を抑制できる。
【0058】
なお、発熱層14の温度を検出する温度センサを設けて、その温度センサの出力値に基づいて、制御装置19が停止指令を電力供給部18に出力するようにしてもよい。
−その他の実施形態−
【0059】
前記実施形態は、以下のように構成してもよい。
【0060】
本実施形態の加熱装置10は、自動車の排ガスを浄化する触媒32を加熱するものに限定されない。例えば、燃焼炉の排ガスを浄化する触媒を加熱するものなど、高温ガスが流通する空間に設けられる種々の触媒に採用可能である。
【0061】
ケーシング31の形状や、マイクロ波を受け入れるための開口部34の位置などは、必ずしも本実施形態の形状、位置に限定されない。例えばケーシング31の形状は、角筒状でもよい。また、開口部34の位置も、ケーシング31の上方に設けてもよいなど、種々の設計変更が可能である。
【0062】
触媒32も、三元触媒に用いられる触媒に限定されない。例えば、活性化するのに昇温が必要となるSCR触媒などにも適用可能である。
【0063】
発熱層14のバインダー14aもセラミック系のものに限らない。耐熱性を有し、マイクロコイル21をハニカム構造体13に定着させることができるものであれば、種々のバインダーが採用可能である。
【0064】
また、被覆層15に用いられるバインダーも、セラミック系のものに限らない。触媒32を発熱層14に定着させるとともに、発熱層14の全領域を被覆することができるものであれば、種々のものが採用可能である。
【0065】
電磁波発生装置16は、マイクロ波の生成に当って半導体発振器の代わりに、マグネトロンを使用してもよい。
【0066】
制御装置19は、例えば寒冷時などの場合は、自動車のエンジンが始動する前から、電力供給部18を制御して、マイクロコイル21にマイクロ波を放射するように構成してもよい。そうすれば、エンジンの始動時から排ガスをクリーンなものにすることができる。
【0067】
また、被加熱物は、触媒32以外のもの(排気通路に設けられるセンサ)であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上説明したように、本発明は、高温ガスが流通する対象空間へ電磁波を放射してマイクロコイルを発熱させることにより、被加熱物を加熱する加熱装置について有用である。
【符号の説明】
【0069】
10 加熱装置
14 発熱層
15 被覆層
21 マイクロコイル
25 絶縁体
32 触媒(被加熱物)
33 排ガス通路(対象空間)
40 電磁波放射装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6