(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記決定手段が、インプラントで発生したビームハードニングの量を、前記順投影手段によって生成された順投影画像と、連続X線をインプラントに入射した場合におけるインプラントの線減弱係数の線積分とから求める請求項1または請求項2に記載のビームハードニング補正装置。
前記一定値付与手段によってインプラントの領域に一定値が与えられた再構成ボリュームデータ、前記順投影手段によって生成された順投影画像、またはインプラントで発生したビームハードニングの量に対して、平滑化処理を行う平滑化手段を備える請求項1〜3のいずれか1項に記載のビームハードニング補正装置。
前記平滑化手段が、ボクセル値の不連続、線減弱係数の線積分の勾配の不連続、またはビームハードニングの量の勾配の不連続を平滑化する請求項4に記載のビームハードニング補正装置。
【背景技術】
【0002】
X線撮影装置は、被写体に対してX線を照射するX線照射部と、前記被写体を透過したX線を検出するX線検出部とを備えている。X線照射部のX線管球から発生するX線量子は
図18に示すように様々なエネルギーを持つ。
【0003】
X線は基本的にエネルギーが高いほど減弱しにくいという性質を持つ。つまり、X線が物質を透過するとき、低エネルギーのX線がより多く減弱し、高エネルギーのX線がより多く残ることになる。従って、X線は、物質を透過すればするほど、平均エネルギーが
図19(a)→
図19(b)→
図19(c)のように推移して徐々に高くなるとともに減弱しにくくなる。この現象はビームハードニングと呼ばれている。
【0004】
もしX線照射部のX線管球から発生するX線量子がたった1つのエネルギーしか持たなかったとすれば、上述したビームハードニングは起こらない。そして、世の中で使われるX線撮影装置の再構成アルゴリズムは、X線照射部のX線管球から発生するX線量子がたった1つのエネルギーしか持たないと仮定している。
【0005】
しかし、X線照射部のX線管球から実際に発生するX線量子は
図18に示すように様々なエネルギーを持つため、ビームハードニングが発生し、再構成ボリュームデータのボクセル値にビームハードニングによる誤差が生じ、その誤差によってアーチファクトが出現する。例えば、
図20(a)はX線撮影装置の被写体をチタン製のインプラントを直線状に並べたファントムにした場合の再構成ボリュームデータであり、
図20(b)はX線撮影装置の被写体をチタン製のインプラントが埋め込まれた生体にした場合の再構成ボリュームデータであるが、いずれの再構成ボリュームデータにおいても2本以上のインプラントの間が実際より暗くなっている。この像がビームハードニングによる誤差に起因するアーチファクトである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来より、ビームハードニングによる誤差を補正し、再構成ボリュームデータに出現するアーチファクトを低減させる技術が種々開発されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0008】
しかしながら、特許文献1はインプラントで発生するビームハードニングを対象にしていない。また、特許文献2は被写体全体をビームハードニング補正するものであり、被写体がFOVから著しくはみ出す傾向にある歯科用または耳鼻科用X線撮影装置では適用できない。
【0009】
インプラントで発生するビームハードニングによる誤差があると、以下の(I)(II)のような問題が生じる。
(I) 既に埋め込まれたインプラントが複数存在し、その複数のインプラントの間に追加のインプラントを埋め込みたい場合、インプラントの埋め込み方向が骨の中にインプラントが収まる方向であるかを判断できなくなることがある。
(II) インプラントを埋め込んだ後、そのインプラントが周囲の骨の中で定着しているのかを術後診断することができない。
【0010】
本発明は、上記の状況に鑑み、インプラントで発生するビームハードニングによる誤差を適切に補正することができるビームハードニング補正装置、ビームハードニング補正方法、及びX線撮影装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明に係るビームハードニング補正装置は、再構成ボリュームデータにおけるインプラントの領域を抽出し、抽出したインプラントの領域に一定値を与える一定値付与手段と、前記一定値付与手段によってインプラントの領域に一定値が与えられた再構成ボリュームデータを順投影する順投影手段と、インプラントで発生したビームハードニングの量を前記順投影手段によって生成された順投影画像から求める決定手段と、前記決定手段が求めたビームハードニングの量を、前記一定値付与手段の処理対象である再構成ボリュームデータに対応する投影画像に加算してビームハードニング補正後の投影画像を生成する、または、前記一定値付与手段の処理対象である再構成ボリュームデータに対応する測定画像から前記決定手段が求めたビームハードニングの量を引いてビームハードニング補正後の測定画像を生成する演算手段と、前記演算手段によって生成されたビームハードニング補正後の投影画像を逆投影する、または、前記演算手段によって生成されたビームハードニング補正後の測定画像を対数変換した画像を逆投影する逆投影手段とを備える構成(第1の構成)とする。
【0012】
このような構成によると、インプラントで発生するビームハードニングの量を求めた上で、ビームハードニング補正を行っているので、インプラントで発生するビームハードニングによる誤差を適切に補正することができる。
【0013】
また、上記第1の構成のビームハードニング補正装置において、前記一定値付与手段が閾値処理によってインプラントの領域を抽出する構成(第2の構成)であることが好ましい。
【0014】
このような構成によると、簡単な処理でインプラントの領域を抽出することができる。
【0015】
また、上記第1または第2の構成のビームハードニング補正装置において、前記決定手段が、インプラントで発生したビームハードニングの量を、前記順投影手段によって生成された順投影画像と、連続X線をインプラントに入射した場合におけるインプラントの線減弱係数の線積分とから求める構成(第3の構成)であることが好ましい。
【0016】
また、上記第1〜第3のいずれかの構成のビームハードニング補正装置において、前記一定値付与手段によってインプラントの領域に一定値が与えられた再構成ボリュームデータ、前記順投影手段によって生成された順投影画像、またはインプラントで発生したビームハードニングの量に対して、平滑化処理を行う平滑化手段を備える構成(第4の構成)であることが好ましい。
【0017】
このような構成によると、逆投影手段による逆投影によって得られる再構成ボリュームデータにおけるインプラント間の領域にすじが発生することを抑制することができる。
【0018】
また、上記第4の構成のビームハードニング補正装置において、前記平滑化手段が、ボクセル値の不連続、線減弱係数の線積分の勾配の不連続、またはビームハードニングの量の勾配の不連続を平滑化する構成(第5の構成)であることが好ましい。
【0019】
また、上記目的を達成するために本発明に係るビームハードニング補正方法は、再構成ボリュームデータにおけるインプラントの領域を抽出し、抽出したインプラントの領域に一定値を与える一定値付与ステップと、前記一定値付与ステップによってインプラントの領域に一定値が与えられた再構成ボリュームデータを順投影する順投影ステップと、インプラントで発生したビームハードニングの量を前記順投影ステップによって生成された順投影画像から求める決定ステップと、前記決定ステップで求まったビームハードニングの量を、前記一定値付与ステップの処理対象である再構成ボリュームデータに対応する投影画像に加算してビームハードニング補正後の投影画像を生成する、または、前記一定値付与ステップの処理対象である再構成ボリュームデータに対応する測定画像から前記決定ステップで求まったビームハードニングの量を引いてビームハードニング補正後の測定画像を生成する演算ステップと、前記演算ステップによって生成されたビームハードニング補正後の投影画像を逆投影する、または、前記演算ステップによって生成されたビームハードニング補正後の測定画像を対数変換した画像を逆投影する逆投影ステップとを備える構成(第6の構成)とする。
【0020】
また、上記目的を達成するために本発明に係るX線撮影装置は、被写体に対してX線を照射するX線照射部と、前記被写体を透過したX線を検出するX線検出部と、前記X線検出部の検出結果を用いて測定画像および投影画像を生成する画像生成部と、前記測定画像または前記投影画像に対してビームハードニング補正を行う上記第1〜第4のいずれかの構成のビームハードニング補正装置とを備える構成(第7の構成)とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、インプラントで発生するビームハードニングの量を求めた上で、ビームハードニング補正を行っているので、インプラントで発生するビームハードニングによる誤差を適切に補正することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0024】
まず始めに、本発明の一実施形態に係るX線撮影装置の本体部1(以下、「X線撮影装置の本体部1」と称す)の構成について
図1を参照して説明する。
図1はX線撮影装置の本体部1の外観を示す図であり、
図1(a)は上面図、
図1(b)は正面図、
図1(c)は側面図である。
【0025】
X線撮影装置の本体部1は、歯科用あるいは耳鼻科用等のX線撮影装置の本体部であって、床面に載置されるベース2と、ベース2から鉛直方向に立設された下部ポール3と、鉛直方向にスライド可能に下部ポール3に接続される上部ポール4と、上部ポール4の上端部に固定されている固定アーム5と、回転可能に固定アーム5に接続される旋回アーム6と、上部ポール4の中央部に固定されており被写体(例えば歯など)を含む人体の頭部を保持する頭部保持部7とを備えている。実施形態では、固定アーム5が上部ポール4に固定されているが、例えば、X線撮影装置の本体部1を設置する部屋の壁や天井に固定アーム5が直接あるいは部屋の壁や天井との距離を調整することができる調整機構を介して取り付けられる態様であってもよい。
【0026】
旋回アーム6は、被写体に対してX線を照射するX線照射部8と、被写体を透過したX線を検出するX線検出部9とを対向して配置している。本実施形態では、X線検出部9として、照射されたX線に応じて電気信号を生成する変換素子が二次元状に配置されている二次元X線検出器を用いる。
【0027】
X線撮影装置の本体部1の撮影モードは特に限定されないが、例えば、パノラマ撮影モードやCT撮影モードを挙げることができる。パノラマ撮影モードでは、X線照射部8及びX線検出部9が歯列弓の形状に沿った所定の軌跡を描くように、旋回アーム6の旋回軸を旋回軸に垂直な方向(X方向、Y方向)に移動させ、旋回アーム6を旋回軸回りに旋回させながら断層撮影を行う。CT撮影モードでは、頭部の対象撮影領域(画像再構成範囲)を中心にして旋回アーム6を回転させながら、対象撮影領域(画像再構成範囲)の断層撮影を行う。
【0028】
ここで、CT撮影モードについて
図2〜
図7を参照してより詳細に説明する。
【0029】
局所CT撮影モードは、歯顎領域内の上下歯牙領域全体よりも狭い特定の領域を撮影対象とするCT撮影モードである。局所CT撮影モードの画像再構成範囲は例えば直径51mm高さ55mmの円柱形状の空間領域である。
図2は局所CT撮影モードの軌道を示している。局所CT撮影モードでは、
図2に示すように、X線検出部9の中心がX線照射部8と旋回アーム6の旋回軸中心206とを結ぶラインの延長線上にくるように旋回アーム6を旋回させながら複数の撮影位置で撮影が行われる。また、局所CT撮影モードでは、通常、
図2に示すように、旋回アーム6の旋回軸中心206は定位置になっている。なお、
図2には撮影位置として4箇所が図示されているが、これはあくまで例示であり撮影位置は図示された箇所に限定されるものではない。
【0030】
局所CT撮影モードは、後述する全歯CT撮影モードや全顎CT撮影モードに比べてX線検出部9上でのX線ビーム幅Wが狭いため、X線検出部9のサイズが小さくても実施可能である。
【0031】
なお、局所CT撮影モードでは、撮影対象部位(関心領域)の中心を何処に設定するかに応じて旋回アーム6の旋回軸中心206の位置を変えるようにしており、通常、
図2に示すように、撮影対象部位(関心領域)の中心と旋回アーム6の旋回軸中心206の位置とが一致するように位置調整がなされる。局所CT撮影モードにおける撮影対象部位(関心領域)の中心は任意に設定することができる。
図2に示した位置設定の他にも、例えば、
図3に示すように撮影対象部位(関心領域)の中心208を仮想歯列弓201上の前歯の位置に設定することもでき、
図4に示すように撮影対象部位(関心領域)の中心208を仮想歯列弓201上の左顎の位置に設定することもでき、
図5に示すように撮影対象部位(関心領域)の中心208を仮想歯列弓201上の右第2小臼歯の位置に設定することもでき、その他種々の位置設定が可能である。
【0032】
全歯CT撮影モードは、上下歯牙領域全体を撮影対象とするCT撮影モードである。全歯CT撮影モードの画像再構成範囲は例えば直径97mm高さ100mmの円柱形状の空間領域である。
図6は全歯CT撮影モードの軌道を示している。全歯CT撮影モードでは、
図6に示すように、X線検出部9の中心がX線照射部8と旋回アーム6の旋回軸中心206とを結ぶラインの延長線上にくるように旋回アーム6を旋回させながら複数の撮影位置で撮影が行われる。また、全歯CT撮影モードでは、通常、
図6に示すように、旋回アーム6の旋回軸中心206は定位置になっている。なお、
図6には撮影位置として4箇所が図示されているが、これはあくまで例示であり撮影位置は図示された箇所に限定されるものではない。
【0033】
全歯CT撮影モードは、上述した局所CT撮影モードに比べて撮影対象が広範囲になりX線検出部9上でのX線ビーム幅Wが広くなるため、その広いX線ビーム幅Wに見合ったX線検出部9のサイズを必要とする。
【0034】
全顎CT撮影モードは、歯顎領域の全ての範囲を撮影対象とするCT撮影モードである。全顎CT撮影モードの画像再構成範囲は例えば直径161mm高さ100mmの円柱形状の空間領域である。
図7は全顎CT撮影モードの軌道を示している。全顎CT撮影モードでは、
図7に示すように、X線検出部9の中心がX線照射部8と旋回アーム6の旋回軸中心206とを結ぶラインの延長線上からずれるように旋回アーム6を旋回させながら複数の撮影位置で撮影が行われる。また、全顎CT撮影モードでは、通常、
図7に示すように、旋回アーム6の旋回軸中心206は定位置になっている。なお、
図7には撮影位置として4箇所が図示されているが、これはあくまで例示であり撮影位置は図示された箇所に限定されるものではない。
【0035】
全顎CT撮影モードは、X線検出部9の中心をX線照射部8と旋回アーム6の旋回軸中心206とを結ぶラインの延長線上からずらして撮影を行っているので、上述した全歯CT撮影モードよりも画像再構成範囲207を拡大することができる。したがって、X線検出部9のサイズアップを抑えながら歯顎領域の全ての範囲を撮影対象とすることができる
【0036】
なお、全顎CT撮影モードにおいて、X線検出部9をサイズアップして、X線検出部9上でのX線ビーム幅Wを
図7に示す場合よりも拡大し、画像再構成範囲を例えば直径230mm高さ164mmの円柱形状の空間領域にすることで、歯顎領域の全ての範囲のみならず、頭頸部領域の全ての範囲を撮影対象とすることも可能である。
【0037】
上述したCT撮影モードでは、撮影時に患者歯列弓203が想定した位置(
図2、
図6、
図7に図示した位置)に存在することで、撮影者が意図していた通りの撮影を行うことができる。患者歯列弓203の想定した位置への位置合わせを容易に実現する方法としては、例えば、光ビームを利用する方法を挙げることができる。当該光ビームとしては、例えば、頭の正中線の位置を示す正中線光ビーム、眼窩下縁と外耳道を結ぶ線の位置を示す水平線光ビーム、犬歯の位置(断層撮影の基準位置)を示す断層基準線光ビームなどがあり、これらの光ビームの出力部をX線撮影装置に設け、これらの光ビームを参考にして患者が頭の位置を微調整するとよい。
【0038】
また、旋回アーム6から離れた位置に設置するセファロ用ユニット(不図示)を用い、セファロ撮影モードでの撮影が行えるようにしてもよい。セファロ用ユニットは、被写体を透過 したX線を検出して、被写体をセファロ撮影するためのセファロ用X線検出部と、頭部を固定するための頭部固定部とを備える。セファロ撮影は、歯科矯正の診断等に用いられ、頭部規格X線撮影法(セファロ撮影法)を用いて撮影する。セファロ撮影では、例えば、頭部固定部のイヤーロッドを頭部の左右の外耳孔部に挿入して固定し、旋回アーム6に設けられたX線照射部8からX線を照射して、被写体を透過したX線をセファロ用X線検出部で検出する。
【0039】
本発明の一実施形態に係るX線撮影装置は、X線撮影装置の本体部1の他に、
図8に示す画像処理装置10も備えている。
【0040】
画像処理装置10は、ROM102やHDD107に格納されているプログラムに従って画像処理装置10全体を制御するCPU101と、固定的なプログラムやデータを記録するROM102と、作業メモリを提供するRAM103と、X線撮影装置の本体部1内に格納されX線撮影装置の本体部1の各部を制御する制御部(不図示)との間で通信を行うための通信インターフェース部104と、画像データを一時的に記憶するVRAM105と、VRAM105に記憶された画像データに基づいて画像を表示する表示部106と、前記制御部及びCPU101が協働してX線撮影動作を制御するための撮影制御プログラム、再構成ボリュームデータを生成するための画像再構成処理プログラム、ビームハードニング補正処理を行うためのビームハードニング補正処理プログラム等の各種プログラム、各種プログラムを実行する際に用いられる各種パラメータの設定値、並びに、再構成ボリュームデータ等の各種データを記憶するHDD107と、キーボード、ポインティングデバイス等の入力部108とを備えている。
【0041】
画像処理装置10は、画像処理装置10と前記制御部との通信方法は、有線通信でもよく、無線通信でもよく、有線と無線を組み合わせた通信であってもよい。画像処理装置10としては、例えば、パーソナルコンピュータを挙げることができる。なお、画像処理装置10は、画像処理以外に、X線撮影装置の本体部1の遠隔操作、画像表示も行う。HDD107に記憶されている各プログラムは、画像処理装置10にプリインストールされていてもよく、光ディスク等の記憶媒体に格納された形態で流通されて画像処理装置10にインストールされてもよく、ネットワークを介して流通されて画像処理装置10にインストールされてもよい。
【0042】
ビームハードニング補正処理プログラムを実行すると、画像処理装置10はビームハードニング補正装置として機能する。ビームハードニング補正処理は画像再構成処理中に割り込んで実施される。
【0043】
X線検出部9から出力され、画像処理装置10が受信する画像は、測定画像と呼ばれる。測定画像の各画素値は、X線検出部9の各検出素子に到達したX線量子の個数に近似的に比例した値を表しているとみなすことができる。
【0044】
画像再構成処理プログラムで使用される再構成アルゴリズムは、X線量子の個数ではなく、X線の線減弱係数の線積分を用いて断面を再構成する。このため、画像再構成処理において、X線量子の個数の分布を示す測定画像を、線減弱係数の線積分の分布を示す画像(投影画像)に変換する必要がある。以下、測定画像から投影画像への変換(対数変換)について詳述する。
【0045】
画素のラベルをi、被写体が存在しないときの測定画像の画素値をI
0(i)、今回再構成を所望する被写体を置いたときの測定画像の画素値をI(i)、X線の経路をs、位置sにおける線減弱係数をμ(s)とすると、次の式(1)が成り立つ。この式(1)は、X線の減弱の様子を表す方程式である。
【数1】
【0046】
式(1)の左辺が測定画像の画素値であるのに対し、右辺の指数関数の中身は投影画像の画素値を正負反転したものである。よって、式(1)を指数関数の中身に関して解くことで、測定画像から投影画像への変換(対数変換)の変換式が求まる。よって、対数変換の変換式は次の式(2)のようになる。
【数2】
【0047】
ここで、測定画像の一例を
図9(a)に示し、
図9(a)の測定画像を対数変換して得られる投影画像を
図9(b)に示す。
【0048】
次に、画像処理装置10が実施するビームハードニング補正処理について
図10のフローチャートを参照して説明する。
【0049】
まず、画像処理装置10は、従来の一般的な再構成アルゴリズムによって
図11に示す投影画像を再構成し、
図12に示す再構成ボリュームデータを生成する(ステップS1)。なお、ステップS1の処理は画像再構成処理プログラムに従って実施される。
【0050】
ステップS1に続くステップS2において、画像処理装置10は、再構成ボリュームデータに対して閾値処理を行い、閾値以上の値であるボクセルをインプラントの領域とみなし、インプラントの領域に属するボクセルに一定値(第1の一定値)を与え、インプラントの領域に属していないボクセルに第1の一定値よりも小さい一定値(第2の一定値)を与えることによって、つまり二値化処理を行うことによって、
図13に示す二値化した再構成ボリュームデータを得る。第2の一定値はX線の減弱が全くない場合の値にすればよい。
【0051】
金属クラウンや金属詰め物に用いられる金銀パラジウム合金等はX線を殆ど通さない金属であるのに対して、インプラントに用いられるチタン或いはチタン合金はX線をある程度通す金属である。したがって、第1閾値以上第2閾値未満の値であるボクセルをインプラントの領域とみなすようにしてもよい(ただし、第1閾値<第2閾値)。なお、閾値処理以外の領域分割処理によってインプラントの領域とインプラント以外の領域とを分割してもよい。閾値処理以外の領域分割処理としては、例えば、ウォーターシェッド法による領域分割処理やレベルセット法による領域分割処理等を挙げることができる。
【0052】
上述した閾値、第1閾値の具体的な値は、インプラントの材質とX線照射部8から照射されるX線のエネルギーとに基づいて決定すればよい。同様に、第2閾値の具体的な値は、金属クラウンや金属詰め物の材質とX線照射部8から照射されるX線のエネルギーとに基づいて決定すればよい。
【0053】
ステップS2に続くステップS3において、画像処理装置10は、
図13に示す二値化した再構成ボリュームデータを順投影し、
図14に示す順投影画像を生成する。
図14に示す順投影画像は、インプラントの領域に属するボクセルに第1の一定値を与えた再構成ボリュームデータを順投影した画像であるため、任意のエネルギーを仮定した単色X線をインプラントに入射して得られる投影画像に等しい。
【0054】
ステップS3に続くステップS4において、画像処理装置10は、インプラントで発生するビームハードニング量を上述した順投影画像から求める。
【0055】
インプラントの材質はチタンあるいはチタン合金であると分かっているのでX線のエネルギー毎の線減弱係数も分かっている。したがって、上述した第1の一定値と上述した順投影画像を得るための単色X線の任意のエネルギーとの関係は分かっている。このため、上述した第1の一定値の具体的な値は、X線照射部8から照射されるX線のエネルギーに基づいて決定すればよい。
【0056】
また、X線がインプラントに入射したときのスペクトルの形を仮定することによって、連続X線をインプラントに入射した場合におけるインプラントの線減弱係数の線積分も計算できる。
【0057】
画像処理装置10は、単色X線をインプラントに入射した場合におけるインプラントの線減弱係数の線積分(順投影画像の画素値)から連続X線をインプラントに入射した場合におけるインプラントの線減弱係数の線積分を引いた値、つまりインプラントで発生するビームハードニングの量を求める。
【0058】
ステップS4に続くステップS5において、画像処理装置10は、被写体を撮影して得られる測定画像を対数変換した投影画像(
図11に示す投影画像)にステップS4で求めたビームハードニングの量を加算することによって、
図15に示すビームハードニング量が加算された投影画像を得る。
【0059】
ステップS5に続くステップS6において、画像処理装置10は、ステップS5で得られたビームハードニング量が加算された投影画像を従来の一般的な再構成アルゴリズムによって再構成し、
図16に示す再構成ボリュームデータすなわちビームハードニング補正後の再構成ボリュームデータを生成する。なお、ステップS6の処理は画像再構成処理プログラムに従って実施される。
【0060】
なお、
図20と同じ被写体を撮影して本実施形態のビームハードニング補正を行った場合、
図17に示すビームハードニング補正後の再構成ボリュームデータが生成される。
【0061】
ビームハードニング補正前後の再構成ボリュームデータ(
図12と
図16あるいは
図20と
図17)を比較すると分かるように、暗かったインプラント間がビームハードニング補正によって明るくなっている。これにより、インプラント間の骨の構造の確認や、インプラントとその周りの骨との定着状態の術後診断が可能になることが期待できる。
【0062】
図10に示すフローチャートにおいて、ステップS2とステップS3との間、ステップS3とステップS4との間、あるいはステップS4とステップS5との間に平滑化処理を設けてもよい。ステップS2とステップS3との間に設けられる平滑化処理は二値化した再構成ボリュームデータを平滑化し、ステップS3とステップS4との間に設けられる平滑化処理は順投影画像を平滑化し、ステップS4とステップS5との間に設けられる平滑化処理はビームハードニングの量を平滑化する。平滑化の具体的な手法は特に限定されないが、例えば注目画素を取り囲む周囲画素の平均値を注目画素の値とすればよい。同様に、例えば注目ビームハードニングの量を取り囲む周囲ビームハードニングの量の平均値を注目ビームハードニングの量とすればよい。平滑化処理を実施することで、
図17(a)に現れているインプラント間において上下方向に延びる濃いすじや、
図17(b)に現れているインプラント間において左下から右上方向に延びる薄いすじを目立たなくすることができる。
【0063】
ここで、
図17においてすじが現れる原因について説明する。
図13に示す二値化した再構成ボリュームデータでは、領域分割処理が行われているため、インプラントの領域とインプラント以外の領域との境界でボクセル値が不連続になる。したがって、
図13に示す二値化した再構成ボリュームデータを順投影することで得られる
図14に示す順投影画像では、インプラントの領域とインプラント以外の領域との境界で線減弱係数の線積分の勾配が不連続になる。その結果、ステップS4において求めるビームハードニングの量の勾配もインプラントの領域とインプラント以外の領域との境界で不連続になる。ビームハードニングの量の勾配が不連続になっているため、
図17にすじが現れる。
【0064】
ステップS2とステップS3との間に平滑化処理を設けた場合、ボクセル値の不連続を平滑化する平滑化処理が行われ、その平滑化処理に伴ってビームハードニングの量の勾配の不連続も結果的に平滑化され
図17に現れるすじが目立たなくなる。
【0065】
ステップS3とステップS4との間に平滑化処理を設けた場合、線減弱係数の線積分の勾配の不連続を平滑化する平滑化処理が行われ、その平滑化処理に伴ってビームハードニングの量の勾配の不連続も結果的に平滑化され
図17に現れるすじが目立たなくなる。
【0066】
ステップS4とステップS5との間に平滑化処理を設けた場合、ビームハードニングの量の勾配の不連続を平滑化する平滑化処理が行われ、ビームハードニングの量の勾配の不連続が平滑化され
図17に現れるすじが目立たなくなる。
【0067】
また、
図10に示すフローチャートではステップS5において投影画像にビームハードニングの量を加算したが、測定画像からビームハードニングの量を引いた画像(ビームハードニング補正後の測定画像)を生成し、ビームハードニング補正後の測定画像を対数変換してビームハードニング補正後の投影画像を得るようにしてもよい。ただし、測定画像からビームハードニングの量を引いた画像(ビームハードニング補正後の測定画像)を生成し、ビームハードニング補正後の測定画像を対数変換してビームハードニング補正後の投影画像を得る場合、ビームハードニングの量(便宜上「測定画像用ビームハードニングの量」と称す)は、上述したステップS4で求めたビームハードニングの量(便宜上「投影画像用ビームハードニングの量」と称す)を上述した式(1)の
の値として上述した式(1)に放り込んだときに得られる
の値である。
【0068】
上述した実施形態では、インプラントの例として所謂デンタルインプラントを取り上げたが、被写体がデンタルインプラント以外のインプラントを含んでいてもよい。デンタルインプラント以外のインプラントとしては、例えば、骨をつなぐボルト等を挙げることができる。