(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記弁部を通過して絞り膨張された冷媒を前記導出ポートから導出してエバポレータへ供給し、前記エバポレータから戻ってきた冷媒の圧力と温度を感知して前記弁部の開度を制御する温度式膨張弁として構成され、
前記冷媒通路とは別に前記ボディを貫通するように形成され、前記エバポレータから戻ってきた冷媒を通過させる戻り通路と、
前記駆動部として設けられ、前記戻り通路を流れる冷媒の温度および圧力を感知して動作するパワーエレメントと、
を備え、
前記作動ロッドが、前記冷媒通路と前記戻り通路との間の隔壁を貫通するように設けられ、
前記パワーエレメントは、その駆動力を前記作動ロッドを介して前記弁体に伝達して前記弁部の開度を変化させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の膨張弁。
前記ボディは、前記冷媒が通過する通路に開口端を有し前記防振ばねを収容する収容孔部を有し、当該収容孔部の前記作動ロッドの軸方向の深さは、前記防振ばねの前記作動ロッドの軸方向の長さ以上であることを特徴とする請求項4に記載の膨張弁。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。また、以下の実施形態およびその変形例について、ほぼ同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜省略することがある。
【0015】
[第1実施形態]
本実施形態は、本発明の膨張弁を自動車用空調装置の冷凍サイクルに適用される温度式膨張弁として具体化している。この冷凍サイクルには、循環する冷媒を圧縮するコンプレッサ、圧縮された冷媒を凝縮するコンデンサ、凝縮された冷媒を気液に分離するレシーバ、分離された液冷媒を絞り膨張させて霧状にして送出する膨張弁、その霧状の冷媒を蒸発させてその蒸発潜熱により車室内の空気を冷却するエバポレータが設けられている。なお、膨張弁以外の詳細な説明については省略する。
【0016】
図1は、第1実施形態に係る膨張弁の断面図である。
【0017】
膨張弁1は、アルミニウム合金からなる素材を押出成形して得た部材に所定の切削加工を施して形成されたボディ2を有する。このボディ2は例えば角柱状をなし、その内部には冷媒の絞り膨張を行う弁部が設けられている。ボディ2の長手方向の端部には、感温部として機能するパワーエレメント3が設けられている。
【0018】
ボディ2の側部には、レシーバ側(コンデンサ側)から高温・高圧の液冷媒を導入する導入ポート6、膨張弁1にて絞り膨張された低温・低圧の冷媒をエバポレータへ向けて導出する導出ポート7が設けられている。また、ボディ2の側部には、エバポレータにて蒸発された冷媒を導入する導入ポート8、膨張弁1を通過した冷媒をコンプレッサ側へ導出する導出ポート9が設けられている。導入ポート6と導出ポート9との間には、図示しない配管取付用のスタッドボルトを植設可能とするためのねじ穴(図示略)が形成されている。
【0019】
膨張弁1においては、導入ポート6、導出ポート7およびこれらをつなぐ冷媒通路により第1の通路13が構成されている。第1の通路13は、その中間部に弁部が設けられており、導入ポート6から導入された冷媒をその弁部にて絞り膨張させて霧状にし、導出ポート7からエバポレータへ向けて導出する。一方、導入ポート8、導出ポート9およびこれらをつなぐ冷媒通路により第2の通路14(「戻り通路」に該当する)が構成されている。第2の通路14は、ストレートに延びており、導入ポート8から冷媒を導入して導出ポート9からコンプレッサへ向けて導出する。
【0020】
すなわち、ボディ2における第1の通路13の中間部には弁孔16が設けられ、その弁孔16の導入ポート6側の開口端縁により弁座17が形成されている。弁座17に導入ポート6側から対向するように弁体18が配置されている。弁体18は、弁座17に着脱して弁部を開閉する球状のボール弁体と、ボール弁体を下方から支持する弁体受けとを接合して構成されている。
【0021】
ボディ2の下端部には、第1の通路13に直交するように内外を連通させる連通孔19が形成されており、その上半部により弁体18を収容する弁室40が形成されている。弁室40は、その上端部にて弁孔16に連通し、側部にて小孔42を介して導入ポート6に連通しており、第1の通路13の一部を構成している。小孔42は、第1の通路13の通路断面が局部的に狭小化されて形成され、弁室40に開口している。
【0022】
連通孔19の下半部には、その連通孔19を外部から封止するようにアジャストねじ20が螺着されている。弁体18(正確には弁体受け)とアジャストねじ20との間には、弁体18を閉弁方向に付勢するスプリング23が介装されている。アジャストねじ20のボディ2への螺入量を調整することで、スプリング23の荷重を調整することができる。アジャストねじ20とボディ2との間には、冷媒の漏洩を防止するためのOリング24が介装されている。
【0023】
一方、ボディ2の上端部には、第2の通路14に直交するように内外を連通させる連通孔25が形成されており、その連通孔25を封止するようにパワーエレメント3が螺着されている。パワーエレメント3は、アッパーハウジング26とロアハウジング27との間に金属薄板からなるダイヤフラム28を挟むように介装し、そのロアハウジング27側にディスク29を配置して構成されている。アッパーハウジング26とダイヤフラム28とによって囲まれる密閉空間には感温用のガスが封入されている。パワーエレメント3とボディ2との間には、冷媒の漏洩を防止するためのOリング30が介装されている。第2の通路14を通過する冷媒の圧力および温度は、連通孔25とディスク29に設けられた溝部を通ってダイヤフラム28の下面に伝達される。
【0024】
ボディ2の中央部には、第1の通路13と第2の通路14とをつなぐ段付孔34が設けられており、この段付孔34のうち小径孔44には長尺状のシャフト33(「作動ロッド」として機能する)が摺動可能に挿通されている。シャフト33は、ディスク29と弁体18との間に介装されている。これにより、ダイヤフラム28の変位による駆動力が、ディスク29およびシャフト33を介して弁体18へ伝達され、弁部が開閉される。
【0025】
シャフト33の上半部は第2の通路14を横断し、下半部が段付孔34の小径孔44に摺動可能に貫通している。段付孔34の大径孔46は、シャフト33に軸線方向と直角な方向の付勢力、つまり横荷重(摺動荷重)を付与するための防振ばね50を収容する収容孔部70としても機能する。シャフト33が防振ばね50の横荷重を受けることにより、冷媒圧力の変動によるシャフト33や弁体18の振動が抑制されるようになっている。なお、防振ばね50の構造の詳細及び収容孔部70の構造の詳細については後述する。
【0026】
以上のように構成された膨張弁1は、エバポレータから導入ポート8を介して戻ってきた冷媒の圧力及び温度をパワーエレメント3が感知してそのダイヤフラム28が変位する。このダイヤフラム28の変位が駆動力となり、ディスク29およびシャフト33を介して弁体18に伝達されて弁部を開閉させる。一方、レシーバから供給された液冷媒は、導入ポート6から導入され、弁部を通過することにより絞り膨張されて、低温・低圧の霧状の冷媒になる。その冷媒は導出ポート7からエバポレータへ向けて導出される。
【0027】
次に、防振ばね50の具体的構造について説明する。
図2は、防振ばねの構造を示す図である。
図2(A)は防振ばね50の全体構造を示す斜視図である。
図2(B)は防振ばね50の平面図である。
図2(C)は防振ばね50の断面図である。
【0028】
図2(A)〜
図2(C)に示すように、防振ばね50は、中央領域に孔部52を有する円形の環状板からなるベース部54と、ベース部54に立設される複数のばね部56と、孔部52から外方に延設される複数の支持片58と、を備える。
図2(A)〜
図2(C)の例の場合、ベース部54の外縁部から等間隔、例えば120°間隔で3つのばね部56が立設されている。また、2つのばね部56の中間位置に支持片58が配置されている。したがって、
図2(A)〜
図2(C)の例では、支持片58も等間隔で3つ形成されている。
【0029】
防振ばね50は、例えば薄板ステンレス鋼板(鋼帯)の板ばね材料を打ち抜き加工した後に曲げ加工することにより形成することができる。
ばね部56は、板ばね材料を打ち抜き加工するときにベース部54とともに形成される。ばね部56は、曲げ加工のときに根元部56aからベース部54に対して例えば120°曲げ起こされ、さらに先端部56bが孔部52の軸線に向かって突出するように例えば断面C字形状に曲げ加工される。この構成により、孔部52にシャフト33(
図1参照)が挿通された場合、各ばね部56の先端部56b、具体的にはC字形状の湾曲頂点がシャフト33の外周面と実質的に点接触すると共に、根元部56aにおける屈曲状態により生じる弾性力によりシャフト33の外周面を付勢可能となる。
図2(A)〜
図2(C)の場合、ばね部56は3つ形成されているので、シャフト33は等間隔に3方向から均一の付勢力で支持され摺動荷重を受けることになる。また、摺動部分は、先端部56bによる実質的な点接触になるので、接触状態が安定し易く、付勢力のばらつき、すなわち摺動荷重のばらつきが抑制できる。なお、防振ばね50を膨張弁1の収容孔部70に組み付けたときに根元部56a(特に湾曲部)が収容孔部70と接触しないように、防振ばね50及び収容孔部70のサイズ設計が行われていることが望ましい。この構成により、ばね部56のシャフト33に対する付勢力のばらつきをさらに抑制することができる。
【0030】
支持片58も板バネ材料を打ち抜き加工のときにベース部54と同時に形成される。支持片58は、防振ばね50を収容孔部70(
図1参照)内で支持固定する機能を果たすために、所定の剛性が必要となる。ただし、本実施形態の支持片58は、ベース部54より剛性の低い低剛性部58aを含むように構成されている。低剛性部58aは、
図2(B)に示すように、例えば支持片58において、その延設方向(ベース部54の半径方向外側方向)と直交する方向の幅W1が、ベース部54の孔部52の外方の板幅W2より狭くなる部分を含むように構成することにより形成できる。
図2(A)〜
図2(C)の例の場合、低剛性部58aは、支持片58の根元近傍部分を例えば半円形状に切り欠くことにより形成している。
【0031】
低剛性部58aの形状及び機能を
図3(A)及び
図3(B)を参照しながら説明する。
図3(A)は、膨張弁1のボディ2に穿設された収容孔部70に防振ばね50が固定されるとともに、防振ばね50がシャフト33に対して付勢力を付与している状態を説明する図である。
【0032】
収容孔部70は、
図1に示すように第2の通路14(戻り通路)に開口端を有し、防振ばね50を収容可能な直径と深さを有して形成されている。前述したように、防振ばね50は、収容孔部70の内部にしっかりと固定される必要がある。そのための本実施形態では、防振ばね50を収容孔部70に圧入によって固定している。
図1に示すようにボディ2に形成された段付孔34は、大径孔46と小径孔44とで形成され、大径孔46は防振ばね50を収容する収容孔部70として機能する。収容孔部70は、防振ばね50の収容作業を考慮して、収容孔部70の深さ方向に対して圧入が可能な圧入領域と、非圧入領域とを有する段差形状に構成されている。具体的には、
図3(B)に示すように、圧入前状態の防振ばね50の支持片58の外縁部58bを結ぶ外縁径R0以上の直径R1を有する大径部70aと、この大径部70aより収容深部側(
図3(A)の防振ばね50着座側)に大径部70aより小径の直径R2を有する小径部70bとを含む構成になっている(R1≧R0>R2)。
【0033】
一般に防振ばねのように薄板材で構成される部品を収容孔部に圧入する場合、孔部の内壁面と接触する部分に圧入方向とは逆方向の抵抗力が働き弾性変形しながら圧入されていく。ここで、本実施形態の防振ばね50のように低剛性部58aを持たない場合を考える。この場合、支持片58のベース部54からの突出長さはベース部54の幅に対して十分に短いため、支持片58の剛性は相対的に高くなる。そのため、圧入時の抵抗力により支持片58のみならずベース部54も一緒に変形してしまうことがある。防振ばね50の場合、ばね部56の立設部分で剛性が高くなるので、隣接するばね部56の端部を結ぶ線T(
図3(B))付近で曲がりの易くなる。このように、ベース部54が変形してしまうと、当該ベース部54に立設するばね部56の姿勢(シャフト33を付勢するために孔部52の軸線に向かって倒れ込む姿勢)が変化してしまう。つまり、各支持片58による付勢力にばらつきが生じてシャフト33に付与する摺動荷重にばらつきが生じてシャフト33のスムーズ摺動や、シャフト33の制振が設計通りできなくなってしまう場合がある。
【0034】
そこで、本実施形態の防振ばね50は、支持片58が受ける圧入時の抵抗力がベース部54の変形の原因にならないように、低剛性部58aを設けている。低剛性部58aが形成された支持片58の剛性は、ベース部54の剛性より低くなっているので、圧入時に支持片58は、積極的に低剛性部58aで曲げられる。この低剛性部58aの曲げ動作により圧入時の抵抗力が吸収され、ベース部54が変形することを抑制できる。
【0035】
また、防振ばね50の支持片58の場合、延設方向の根元近傍を半円形に切り欠いて低剛性部58aを形成しているので、支持片58の外縁部58bの幅は変化しない。そのため、支持片58は、収容孔部70の小径部70bとの接触面積を従前通りの状態で維持できる。つまり、低剛性部58aを形成したことにより防振ばね50の支持安定性が変化することは実質的にない。
【0036】
なお、
図2(A)、
図2(C)に示すように、防振ばね50の曲げ加工時(圧入前)に支持片58を予め圧入方向と逆方向に事前に曲げておくことにより、防振ばね50を小径部70bに圧入する際の位置決めが容易になる。また、このときの事前曲げを低剛性部58aで行っておくことにより、低剛性部58aが圧入時の曲げ動作のきっかけとなりやすく、低剛性部58aにおける積極的な曲がりを誘導することができる。つまり、ベース部54の変形抑制性を向上することができる。また、
図3(A)に示すように、大径部70aと小径部70bをテーパー形状で連続させることにより、各低剛性部58aの曲がり動作をスムーズに行うことが可能になり、小径部70bにおける防振ばね50の固定位置を安定させることに寄与できる。
【0037】
また、
図3(A)に示すように、収容孔部70の小径部70bを支持片58が収まるのに十分な程度の深さ領域(収容深部側)で形成することで、圧入作業の容易化及び圧入状態での防振ばね50の組み付け時間が短くなる。その結果、圧入時のベース部54の変形抑制性の向上に寄与できる。なお、別の実施形態では、収容孔部70を小径部70bのみでストレート形状で構成してもよい。この場合、防振ばね50の圧入状態での挿入作業距離が長くなるが、収容孔部70の加工が容易になるというメリットがある。
【0038】
ところで、収容孔部70が開口している第2の通路14にはガス状の冷媒が高速で流れる。そのため、第2の通路14に開口した収容孔部70から防振ばね50が突出していると、障害物となり異音や振動の原因になる虞がある。そこで、本実施形態の膨張弁1においては、
図3(A)に示すように、収容孔部70のシャフト33の軸方向の深さL0は、防振ばね50のシャフト33の軸方向の長さL1以上になるように構成してる(L0≧L1)。つまり、防振ばね50が第2の通路14に突出しないように収容孔部70の深さを決めている。
【0039】
このように本実施形態によれば、防振ばね50を収容孔部70に圧入する際に、ベース部54より剛性の低い支持片58の低剛性部58aが優先的に曲がる。つまり、ベース部54の変形を抑制し、ばね部56の姿勢維持を可能にする。その結果、防振ばね50の組み付け作業時にベース部54の変形防止を過剰に配慮する必要が無くなり組付作業性が向上できる。また、シャフト33に適切な摺動荷重を付与する本来の防振ばねの機能は維持できるので、膨張弁1の品質維持にも寄与できる。
【0040】
[第2実施形態]
本実施形態の膨張弁は、防振ばねにおける支持片の低剛性部の構造が異なる点を除き、第1実施形態と同様の構成を有する。
図4(A)は、第2実施形態に係る防振ばね150の全体構造を示す斜視図である。
図4(B)は防振ばね150の平面図である。
図4(C)は防振ばね150の断面図である。なお、第2実施形態の防振ばね150と第1実施形態の防振ばね50の基本的な機能は同じなので、対応する部材の符号は100番台に読み替えて図示し詳細な説明は省略する。例えば、第1実施形態のばね部56は、第2実施形態においてばね部156とする。また、以下に示す第3〜第5実施形態においても同様に、200番台〜400番台に符号を読み替え、詳細な説明は省略する。
【0041】
図4(A)〜
図4(C)に示す防振ばね150は、支持片158の低剛性部158aを孔を打ち抜くことによって形成している。第1実施形態の低剛性部58aの場合、支持片58の両側を半円形に切り欠いているが、第2実施形態の低剛性部158aは円形の孔を1つ形成するのみなので、打ち抜き加工用の金型の簡略化ができる。
【0042】
この場合も防振ばね150を収容孔部70に圧入する際に、ベース部154より剛性の低い支持片158の低剛性部158aが先に曲がる。つまり、ベース部154の変形抑制及びばね部156の姿勢維持を可能にする。その結果、防振ばね150の組み付け作業時にベース部154の変形防止を過剰に配慮する必要が無くなり組付作業性が向上できる。また、シャフト33に適切な摺動荷重を付与する本来の防振ばねの機能は維持できるので、膨張弁1の品質維持にも寄与できる。
【0043】
[第3実施形態]
本実施形態の膨張弁は、防振ばねにおける支持片の低剛性部の構造が異なる点を除き、第1、第2実施形態と同様の構成を有する。
図5(A)は、第3実施形態に係る防振ばね250の全体構造を示す斜視図である。
図5(B)は防振ばね250の平面図である。
図5(C)は防振ばね250の断面図である。
【0044】
図5(A)〜
図5(C)に示す防振ばね250は、支持片258の低剛性部258aを当該支持片258の延設方向に延びる切欠部を形成することによって実現している。したがって、支持片258は、第1実施形態の支持片58に比べて延設方向と直交する方向の板幅が狭い支持片が2本形成されていることになる。この場合、2本に分離された支持片は板幅が狭いので、延設方向の切欠部を含まない支持片より低剛性となる。この構成により、防振ばね250を小径部70bに圧入する際にベース部254側に過剰な負荷をかけることなく、支持片258を容易に変形させることができる。その結果、圧入時のベース部254の変形を抑制することができる。また、板幅の狭い支持片を1本設ける場合に比べ、小径部70bの壁面との接触面積を多く確保できるので防振ばね250の支持力の確保を容易にできる。また、支持片258は、延設方向に延びる切欠部を形成するだけなので、第2実施形態と同様に打ち抜き加工用の金型の簡略化ができる。
【0045】
[第4実施形態]
本実施形態の膨張弁は、防振ばねにおける支持片の低剛性部の構造が異なる点を除き、第1〜第3実施形態と同様の構成を有する。
図6(A)は、第4実施形態に係る防振ばね350の全体構造を示す斜視図である。
図6(B)は防振ばね350の平面図である。
図6(C)は防振ばね350の断面図である。
【0046】
図6(A)〜
図6(C)に示す防振ばね350は、支持片358の低剛性部358aを当該支持片358とベース部354との接続部近傍(支持片358の根元部近傍)で底面側に当該支持片358の板幅方向に凹条溝を形成することによって実現している。言い換えれば、支持片358は、板幅方向に板材の肉厚が薄い薄厚部分が形成されている。この構成により、防振ばね350を小径部70bに圧入する際にベース部354側に過剰な負荷をかけることなく、支持片358を容易に変形させることができる。その結果、圧入時のベース部354の変形を抑制することができる。なお、
図6(A)〜
図6(C)では、支持片358の板幅を第1実施形態〜第3実施形態の支持片に比べ狭く形成した例を示し、凹条溝による低剛性化の効果と板幅の狭小化による低剛性化の効果を組み合わせて総合的な低剛性化を実現する例を示している。別の例では、支持片358の板幅を第1実施形態等と同じにしつつ、凹条溝の深さや溝幅を調整することにより同様な低剛性化を実現してもよい。この場合、小径部70bに対する防振ばね350の支持力の確保を容易にできる。また、支持片358は、延設方向と直交する方向に凹条溝を形成するだけなので、防振ばね350を打ち抜き加工する段階またはその後の追加工でプレスや切削により容易に形成することができる。
【0047】
[第5実施形態]
本実施形態の膨張弁は、防振ばねにおける支持片の低剛性部の構造が異なる点を除き、第1〜第4実施形態と同様の構成を有する。
図7(A)は、第5実施形態に係る防振ばね450の全体構造を示す斜視図である。
図7(B)は防振ばね450の平面図である。
図7(C)は防振ばね450の断面図である。
【0048】
図7(A)〜
図7(C)に示す防振ばね450の支持片458は、第1実施形態の支持片58に比べて延設方向と直交する方向の板幅を狭くすることによって低剛性部358aを形成している。この構成により、防振ばね450を小径部70bに圧入する際にベース部454側に過剰な負荷をかけることなく、支持片458を容易に変形させることができる。その結果、圧入時のベース部454の変形を抑制することができる。また、この場合、他の実施形態のように、支持片に切欠部や孔、溝等を設ける必要がないため、金型構成を簡略化できると共に、加工工程も簡略化できる。なお、支持片458の板幅が狭くなることで、小径部70bと接触面積が減少する。そのため、防振ばね350の小径部70bに対する支持力が他の実施形態に比べ低下すると考えられる。そこで、支持力を増大させたい場合には、支持片458の形成本数を増加させることによって支持力を補う異ができる。
【0049】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。例えば、上記実施形態および変形例において一部の構成要素を組み合わせてもよいし、各実施形態および変形例から一部の構成要素を削除してもよい。
【0050】
上記第1〜第5実施形態では、ばね部56,156,256,356,456を等間隔に3本形成して、シャフト33に摺動荷重を付加する例を説明した。防振ばねは3点以上のばね部でシャフト33の外周面に接触することで円筒形状のシャフト33の挿通時の偏りを抑制しつつバランスよく弾性支持することができる。したがって、防振ばねは、ばね部で3点以上で接触することが好ましい。また、防振ばねを構成するばね鋼材の特性に応じてばね部の形成本数を調節して付加する摺動荷重を調整するようにしてもよい。例えば、ばね特性の低い材料を用いる場合は、ばね部の本数を増やすことで対応することができる。
【0051】
同様に、上記第1〜第5実施形態では、支持片58,158,258,358,458を等間隔に3本形成してた例を説明したが、その形成本数も小径部70bに対して確保したい防振ばねの支持力に応じて適宜選択してもよい。
【0052】
また、各実施形態では、ベース部54,154,254,354,454の形状を円形の環形状として説明したが、多角形状でもよい。
【0053】
また、第1実施形態においては、低剛性部58aを半円形の切欠部によって形成したが、低剛性化ができれば,その形状は適宜選択可能であり、例えば矩形や三角形状、その他の形状でも同様な効果を得ることができる。同様に、第2実施形態では、低剛性部158aを円形の孔で形成したが、低剛性化ができれば,その形状は適宜選択可能であり、例えば長孔や矩形、その他の形状でも同様な効果を得ることができる。また、第2実施形態の場合、比較的大きな孔を1つ形成した例を説明したが、孔の大きさや個数も低剛性化の程度に応じて適宜選択可能である。孔を複数個設ける場合は、孔の配列を適宜選択することで、低剛性の程度の調整も可能になり、設計の自由度が広がる。
【0054】
また、第4実施形態において、
図6(C)等に示す低剛性部358aの凹条溝は断面半円形状のものを例示しているが、その形状は適宜選択可能であり、断面形状が矩形や三角形であっても同様な効果を得ることができる。また、ニードルなどの鋭角工具により線を引くのみでも所定の深さと溝幅が確保できれば同様な効果を得ることができる。また、第4実施形態では、低剛性部358aを支持片358の底面側(収容深部側)に形成しているが、支持片358の上面側に低剛性部358aを形成しても同様な効果を得ることができる。
【0055】
また、第2実施形態で支持片158に孔を設ける場合、孔の形状として所定のマークや文字を用いてもよい。この場合、膨張弁の機種ごとに防振ばねの大きさや形状が異なる場合、その孔の形状を各機種に対する識別マークとして利用することが可能になる。同様に、第1実施形態や第3実施形態の切欠部の形状を識別マークとして利用できるように構成してもよい。この場合、他機種の部品混入の防止にも寄与できる。
【0056】
また、上述した各実施形態では、防振ばねのベース部と支持片を一体形成する例を示したが、別体で形成し支持片を蝋付け等によりベース部に固定するようにしてもよい。この場合、ベース部の材質と支持片の材質を異ならせることが可能であり、低剛性部を有する支持片を容易に構成することができる。なお、この場合、支持片は板状に限らず、例えば、円筒形状等のピンを用いてもよい。
【0057】
また、
図1の場合、第2の通路14に開口した収容孔部70を有する膨張弁1を示したが、収容孔部の形成位置は、防振ばねがシャフト33に対して摺動荷重を付与できれば、適宜選択できる。例えば第1の通路13に収容孔部が開口端を有する構成としてもよく、上述した各実施形態で説明した効果と同様の効果を得ることができる。この場合、膨張弁1の設計自由度の向上に寄与できる。また、防振ばねは、収容孔部70の小径部70bに圧入することにより収容孔部70内部に支持固定する例を説明したが、シャフト33の摺動動作や振動等により着座位置から動かないように例えば、ストッパで固定維持を行うようにしてもよい。ストッパは、例えば小径部70bの内周面に形成した溝部や突起部とすることができる。
【0058】
上記実施形態では述べなかったが、
図1に示される段付孔34とシャフト33との間にOリング等のシール部材を設け、第1の通路13から第2の通路14への冷媒の漏洩を防止または抑制するようにしてもよい。具体的には、段付孔34の大径孔46の深さを大きくし、大径孔46の底部側にOリングを配置し、その上方に防振ばねを配置してもよい。その場合、防振ばねを、その底面により上方からOリングを係止するストッパとして機能させることができる。
【0059】
上記実施形態の膨張弁は、冷媒として代替フロン(HFC−134a)など使用する冷凍サイクルに好適に適用されるが、本発明の膨張弁は、二酸化炭素のように作動圧力が高い冷媒を用いる冷凍サイクルに適用することも可能である。その場合には、冷凍サイクルにコンデンサに代わってガスクーラなどの外部熱交換器が配置される。その際、パワーエレメント3を構成するダイヤフラムの強度を補うために、例えば金属製の皿ばね等を重ねて配置してもよい。あるいは、ダイヤフラムに置き換えて皿ばね等を配置してもよい。また、上記実施形態では、膨張弁を温度式膨張弁として構成した例を挙げたが、温度を感知しない膨張弁として構成することもできる。例えば、駆動部としてソレノイドを用いる電磁式膨張弁として構成してもよい。あるいは、駆動部としてステッピングモータ等の電動機を用いる電動膨張弁として構成してもよい。