特許第6142199号(P6142199)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許61421993価クロムめっき用アノードの再生処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6142199
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】3価クロムめっき用アノードの再生処理方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 21/00 20060101AFI20170529BHJP
   C25D 17/12 20060101ALI20170529BHJP
   C25D 3/06 20060101ALN20170529BHJP
【FI】
   C25D21/00 J
   C25D17/12 B
   !C25D3/06
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-122498(P2013-122498)
(22)【出願日】2013年6月11日
(65)【公開番号】特開2014-240506(P2014-240506A)
(43)【公開日】2014年12月25日
【審査請求日】2016年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】591021028
【氏名又は名称】奥野製薬工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 順一
(72)【発明者】
【氏名】合田 千秋
【審査官】 菅原 愛
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−013199(JP,A)
【文献】 特開2000−104199(JP,A)
【文献】 特開2012−251195(JP,A)
【文献】 特表2012−511099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D1/00−21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の電極基体上に酸化イリジウムを含む被覆を施した不溶性電極からなる3価クロムめっき用アノードの再生処理方法であって、
3価クロムめっき処理に使用したアノードを処理対象として、3価クロムめっき浴中において該アノードを陰極として電解処理を行うことを特徴とする3価クロムめっき用アノードの再生処理方法。
【請求項2】
3価クロムめっき処理の停止中に、3価クロムめっき浴中で、陽極と陰極の通電方向を変更して電解処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の3価クロムめっき用アノードの再生処理方法。
【請求項3】
3価クロムめっき用アノードが、チタン、タンタル、ジルコニウム、ニオブ又はこれらの合金からなる電極基体上に電極触媒として酸化イリジウムとともに、チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、スズ、アンチモン、ルテニウム、白金、コバルト、モリブデン及びタングステンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属又はその酸化物の被覆を施した不溶性電極である請求項1又は2に記載の3価クロムめっき用アノードの再生処理方法。
【請求項4】
3価クロムめっき用アノードが、チタンからなる電極基体上に電極触媒として酸化イリジウム及び酸化タンタルの混合酸化物の被覆を施した不溶性電極である請求項1〜のいずれかに記載の3価クロムめっき用アノードの再生処理方法。
【請求項5】
陰極電流密度0.1〜25A/dmで電解処理を行う請求項1〜のいずれかに記載の3価クロムめっき用アノードの再生処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3価クロムめっき用アノードの再生処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クロムめっきは、装飾用、工業用等の各種の分野で広く利用されており、従来から、主に、クロム成分として6価クロムを多量に含有する6価クロムめっき浴を用いてめっき処理が行われている。
【0003】
しかしながら、6価クロムめっき浴を用いる場合には、めっき時に発生する6価クロムを含有するミストの有害性が問題となっており、作業環境の改善や排水処理の効率などを考慮して、毒性の少ない3価クロム化合物を用いた3価クロムめっき浴が普及してきている(下記非特許文献1等参照)。
【0004】
しかしながら、3価クロムめっき浴を用いた3価クロムめっきでは、めっき処理の経過に伴って、めっき浴中に6価クロムが蓄積し、これがめっき速度やめっき皮膜の外観等に悪影響を与えることが知られている。
【0005】
このような問題に対応すべく、めっき液の組成を改良することや、イオン交換膜等でアノードを区画し3価クロムとアノードを直接接触することを防止したアノードボックスを採用することなどによって、6価クロムの生成を抑制する試みがなされてきた。しかしながら、めっき液の組成の改良には限界があり、アノードボックスの使用はボックス内部液の更新等の管理が煩雑である。
【0006】
そこで、近年では3価クロムめっき用のアノードとして、導電性の電極基体上に、酸化イリジウム、Ir−Ta混合酸化物などの金属酸化物の被覆を施した不溶性電極等を用いることにより、3価クロムめっき浴中での6価クロムの生成を抑制する試みがなされている(下記特許文献1、2等参照)。
【0007】
しかしながら、このような電極を用いた場合であっても、めっき処理を開始してしばらくの間は6価クロムの生成を抑制することができるが、長期間めっき処理を行うことによって6価クロムの生成を避けられないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−13199号公報
【特許文献2】特開2000−104199号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】表面技術 vol.56, No.6, 302p(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、3価クロムめっき浴中での6価クロムの生成を抑制するための有効な手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、3価クロムめっき処理を行うに従って3価クロムめっき用アノードの酸素発生電位が上昇し、これがアノード上で3価クロムを酸化し6価クロムを生成させる一因となることを見出した。そして、さらに研究を重ねた結果、めっき処理に用いた3価クロムめっき浴中において、通電方向を変更して、アノードを陰極として電解処理を行うことによって電極の酸素発生電位を低下させることができ、その結果、電解処理後のアノードを用いて、引き続き3価クロムめっき処理を行う場合に6価クロムの生成を抑制することが可能となることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、下記の3価クロムめっき用アノードの再生処理方法を提供するものである。
項1. 導電性の電極基体上に金属酸化物を含む被覆を施した不溶性電極からなる3価クロムめっき用アノードの再生処理方法であって、3価クロムめっき処理に使用したアノードを処理対象として、3価クロムめっき浴中において該アノードを陰極として電解処理を行うことを特徴とする3価クロムめっき用アノードの再生処理方法。
項2. 3価クロムめっき処理の停止中に、3価クロムめっき浴中で、陽極と陰極の通電方向を変更して電解処理を行うことを特徴とする上記項1に記載の3価クロムめっき用アノードの再生処理方法。
項3. 3価クロムめっき用アノードが、導電性の金属基体上に酸化イリジウムを含む被覆を施した不溶性電極である上記項1又は2のいずれかに記載の3価クロムめっき用アノードの再生処理方法。
項4. 3価クロムめっき用アノードが、チタン、タンタル、ジルコニウム、ニオブ又はこれらの合金からなる電極基体上に電極触媒として酸化イリジウムとともに、チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、スズ、アンチモン、ルテニウム、白金、コバルト、モリブデン及びタングステンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属又はその酸化物の被覆を施した不溶性電極である上記項1〜3のいずれかに記載の3価クロムめっき用アノードの再生処理方法。
項5. 3価クロムめっき用アノードが、チタンからなる電極基体上に電極触媒として酸化イリジウム及び酸化タンタルの混合酸化物の被覆を施した不溶性電極である上記項1〜4のいずれかに記載の3価クロムめっき用アノードの再生処理方法。
項6. 陰極電流密度0.1〜25A/dmで電解処理を行う上記項1〜5のいずれかに記載の3価クロムめっき用アノードの再生処理方法。
【0013】
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0014】
3価クロムめっき用アノード
本発明の再生処理方法において処理対象となる3価クロムめっき用アノードは、3価クロムめっき処理において用いられる、導電性の電極基体上に金属酸化物を含む被覆を施した不溶性電極である。特に、このような不溶性電極としては、酸素発生電位が低いことから、導電性の電極基体上に電極触媒として酸化イリジウム等を含む被覆を施した不溶性電極が3価クロムめっき用アノードとして好ましく用いられている。本発明では、これらの不溶性電極をいずれも処理対象とすることができる。
【0015】
本発明の処理対象とすることができる不溶性電極についてより具体的に説明すると、例えば、チタン、タンタル、ジルコニウム、ニオブ又はこれらの合金からなる電極基体上に、電極触媒として酸化イリジウムとともに、チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、スズ、アンチモン、ルテニウム、白金、コバルト、モリブデン及びタングステンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属又はその酸化物の被覆を施した不溶性電極等を挙げることができる。
【0016】
中でも、チタンからなる電極基体上に、電極触媒として酸化イリジウム及び酸化タンタルの混合酸化物の被覆を施した不溶性電極が3価クロムめっき用アノードとして広く用いられている。本発明の再生処理方法をこの不溶性電極に適用する場合には、該不溶性電極を再生して繰り返し使用することが可能となり、該不溶性電極の優れた性能を長期間維持することができる。
【0017】
3価クロムめっき浴
本発明の再生処理方法において適用できる3価クロムめっき浴は、水溶性3価クロム化合物をクロム成分として含有する水溶液からなるめっき浴であればよく、具体的な組成については特に限定されない。
【0018】
一般的に、3価クロムめっき浴には、水溶性3価クロム化合物に加えて、陰極反応界面でのpH上昇によるクロムの水酸化物などの生成を防止することを目的としてpH緩衝剤が添加され、更に、錯化剤、電導性塩、光沢剤などの各種の添加剤が添加されている。本発明の再生処理には、このような各種の添加剤を含む3価クロムめっき浴をいずれも用いることができる。
【0019】
該3価クロムめっき浴に含まれる水溶性3価クロム化合物としては、クロム成分として3価クロムを含む水溶性化合物であれば特に限定的ではなく、硫酸クロム、塩化クロム、硝酸クロム、酢酸クロムなどを例示できる。これらの水溶性3価クロム化合物は、通常、一種単独又は二種以上混合して添加される。3価クロム化合物の濃度については、一例を挙げると、3価クロムイオン濃度として1〜50g/L程度である。
【0020】
pH緩衝剤としては、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、塩化アルミニウムなどを例示できる。これらのpH緩衝剤は、通常、一種単独又は二種以上混合して添加される。pH緩衝剤の濃度については、一例を挙げると、10〜100g/L程度である。
【0021】
また、錯化剤としては、ギ酸、酢酸などのモノカルボン酸又はその塩;シュウ酸、マロン酸、マレイン酸などのジカルボン酸又はその塩;クエン酸、リンゴ酸、グリコール酸などのヒドロキシカルボン酸又はその塩等を例示でき、電導性塩としては、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウムなどのアルカリ金属塩;硫酸アンモニウム、塩化アンモニウムなどのアンモニウム塩等を例示でき、光沢剤としては、サッカリン、サッカリンナトリウム、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸ナトリウム、ブチンジオール、プロパルギルアルコール等を例示できる。これらの添加剤は、通常、一種単独又は二種以上混合して添加される。これらの添加剤の濃度については特に限定的ではないが、一例を挙げると、錯化剤については5〜200g/L程度、電導性塩については10〜300g/L程度、光沢剤については0.5〜20g/L程度である。
【0022】
本発明の再生処理で用いる3価クロムめっき浴のpHは、通常の3価クロムめっき処理時のpHと同様の範囲内でよく、通常、pH2〜5程度の範囲内である。
【0023】
3価クロムめっき用アノードの再生処理方法
本発明の再生処理方法は、3価クロムめっき浴中において3価クロムめっき用アノードを陰極として、後述する条件で電解処理を行えばよい。通常は、3価クロムめっき処理中の3価クロムめっき浴中において、めっき操作を一旦停止し、通電方向を変更して、アノードを陰極として電解処理を行えばよい。この方法によれば、3価クロムめっき浴中において3価クロムめっき用アノードを陰極として電解処理を行うという極めて簡単な操作によってアノードの酸素発生電位を低下させることができ、6価クロムの生成を抑制することができる。
【0024】
本発明の再生処理方法では、3価クロムめっき用アノードを陰極として電解処理を行えばよく、陽極については特に限定はないが、通常は、3価クロムめっき処理におけるカソードである被めっき物を陽極として、そのまま電解処理を行えばよい。このように3価クロムめっき処理において用いた陽極と陰極の通電方向を変更して電解処理を行うという簡単な方法によって再生処理を行うことから、再生処理を行うために3価クロムめっき用アノードを取り外す等の手間が省け、効率的にアノードの再生処理を行うことができる。
【0025】
なお、被めっき物を陽極とする場合、被めっき物の種類によっては3価クロムめっき浴や被めっき物等に悪影響を及ぼすことがあるが、この場合には、必要に応じて、被めっき物に代えてカーボン、チタン−白金電極等の不溶性電極を陽極として電解処理を行ってもよい。また、不溶性電極を用いる場合には、再生処理時において3価クロムめっき浴中での6価クロムの生成を防止するために、上記した導電性の電極基体上に金属酸化物の被覆を施した不溶性電極を陽極として電解処理を行ってもよい。
【0026】
再生処理を行う場合の陰極電流密度については特に限定的ではないが、電流密度が極端に低い場合には良好な再生処理効果が得られず、再生処理後に短時間で酸素発生電位が上昇することがあるため好ましくない。このため、通常は0.1〜25A/dm程度とすることが好ましく、1〜10A/dm程度とすることがより好ましい。
【0027】
再生処理を行う時間については特に限定的ではないが、処理時間が極端に短い場合には十分な再生処理効果が得られないことがあるため好ましくない。このため、通常は1〜30分程度の電解処理時間とすればよく、5〜20分程度の電解処理時間とすることが好ましい。
【0028】
再生処理時の3価クロムめっき浴の浴温については特に限定的ではなく、通常は、めっき処理を一旦停止して電解処理を行えばよく、3価クロムめっき処理時の処理温度と同様の範囲とすればよい。例えば、25〜60℃程度とすればよく、30〜55℃程度とすることが好ましい。
【0029】
上記した通り、本発明の再生処理方法では、3価クロムめっき処理中に、一旦めっき操作を停止して、陽極と陰極の通電方向を変更して再生処理を行うことができる。このように、3価クロムめっき処理中に陽極と陰極の通電方向を変更することによって、3価クロムめっき処理から再生処理へと簡単に切り替えることができるため、安定した3価クロムめっき処理を連続的に行うことが可能となる。
【0030】
3価クロムめっき用アノードの再生処理を行う時期については特に限定的ではなく、作業環境、作業条件等に応じて適宜決めればよい。例えば、特定の条件において3価クロムめっき処理を行ったときに、6価クロムの蓄積が確認される基準が経験的に分かっているような場合には、その基準に基づいて3価クロムめっき処理と再生処理を切り替えればよい。このような基準については現場の作業条件等によって異なるが、例えば、めっき処理時間、総通電量等を基準とすることができる。なお、後述するように、3価クロムめっき浴中に6価クロムの蓄積が生じた場合や、3価クロムめっき用アノードの酸素発生電位が上昇した場合等を基準としてもよい。また、明確な基準によらずに、例えば、昼休み、夜間、休日等の3価クロムめっき処理の停止中に再生処理を行ってもよい。
【0031】
3価クロムめっき浴中に6価クロムの蓄積が生じた場合を本発明の再生処理を行う時期の目安とする場合、基準となる6価クロムイオンの濃度は目的とするめっき液の性能に応じて適宜決めればよい。通常、3価クロムめっき浴中の6価クロムイオン濃度が200ppm程度以上となると、3価クロムめっき処理のめっき速度やめっき皮膜の外観等に悪影響を及ぼすことがある。このため、3価クロムめっき浴中の6価クロムイオン濃度が200ppm程度以上となった場合に再生処理を行えばよいが、より高いめっき品質を望む場合には、100ppm程度以上となった時期を本発明の再生処理を行う時期の目安とすることが好ましい。3価クロムめっき浴中の6価クロム濃度は、ジフェニルカルバジドを用いた吸光度分析法等により測定することができる。
【0032】
また、上記した3価クロムめっき浴中の6価クロムイオン濃度を測定する方法だけでなく、3価クロムめっき用アノードの酸素発生電位を測定することによって本発明の再生処理を行う時期を決定してもよい。電極の酸素発生電位を測定する方法は特に限定されないが、例えば、簡易的な方法として、図1に示すような電位測定装置を用いて測定した電位を酸素発生電位の目安とすることができる。
【0033】
具体的には図1に示すように、対極としてチタンを用い、水銀/硫酸第一水銀電極を参照電極として、25℃の98%硫酸中で、測定対象物を陽極として、電流密度が50A/dmとなるように一定電流を流した場合の3価クロムめっき用アノードの電位を測定すればよい。
【0034】
上記した方法で測定した場合の未使用の3価クロムめっき用アノードの電位は、通常0.95V程度である。本発明者の研究によれば、上記した方法で測定した電位が0.97V程度以上の3価クロムめっき用アノードを用いると、3価クロムめっき浴中で6価クロムの生成が確認された。このため、たとえば、上記した方法で測定した電位が0.97V程度以上となった場合に再生処理を行えばよい。なお、より高いめっき品質を望む場合には、0.96V程度以上となった時期を本発明の再生処理を行う時期の目安とすればよい。
【発明の効果】
【0035】
本発明の3価クロムめっき用アノードの再生処理方法によれば、3価クロムめっき浴中においてアノードを陰極として電解処理を行うという極めて簡単な方法によって、上昇した3価クロムめっき用アノードの酸素発生電位を低下させることができる。その結果、3価クロムめっき用アノードの性能を回復させて繰り返し使用することが可能となり、高価な3価クロムめっき用アノードを長期間継続して使用することができる。
【0036】
また、3価クロムめっき用アノードの性能を回復させることによって、3価クロムめっき浴中で6価クロムが生成することを抑制することができるため、3価クロムめっき浴を長期間使用することができ、安定した3価クロムめっき処理を行うことが可能となる。
【0037】
さらに、3価クロムめっき処理中に陽極と陰極の通電方向を変更することにより3価クロムめっき処理から再生処理に簡単に切り替えることができるため、電極を取り外すことなく効率的にアノードの再生処理を行うことができ、連続的に安定した3価クロムめっき処理を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】電位測定装置の概略を示す図面。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0040】
実施例1〜4
チタンからなる電極基体上に酸化イリジウムを含む被覆を施した電極(TCPアノード、ペルメレック電極(株)製)をアノードとし、ニッケルめっき皮膜を形成した鉄鋼板を被めっき物として、下記表1に記載した実施例1〜4の3価クロムめっき浴中で、総通電量が約200Ah/Lとなるまで3価クロムめっき処理を行った。
【0041】
次いで、処理対象として上記した3価クロムめっき処理で使用したアノードを用いて、以下の方法で再生処理を行った。再生処理方法としては、下記表1に記載した実施例1〜4の3価クロムめっき浴中で、上記したアノードを陰極とし、未使用のTCPアノード(ペルメレック電極(株)製)を陽極として、表1に記載した処理条件で電解処理を行った。
【0042】
【表1】
【0043】
上記した方法で再生処理を行った電極の内で、陰極として用いた電極について、再生処理前及び再生処理後に、以下の方法で電位を測定した。
【0044】
処理対象アノードの電位の測定方法
処理対象アノードの電位の測定は、図1に示す電位測定装置を用いて、下記表2に示す条件で一定電流を流したときの電位をテスターにより測定し、得られた電位を酸素発生電位の目安とした。なお、この電位が低いほど、6価クロムの生成が起こりにくい電極であることを示す。
【0045】
【表2】
【0046】
上記した方法で測定した再生処理前及び再生処理後の電位を下記表3に示す。
【0047】
【表3】
【0048】
表3から明らかなように、実施例1〜4の3価クロムめっき浴中で電解処理を行った場合には、上記方法で測定した上記方法で測定した酸素発生電位の目安となる電位の低下が確認できた。上記した方法で測定した場合の未使用の3価クロムめっき用アノードの電位は0.95V程度であることから、本発明の再生処理方法によって、3価クロムめっき用アノードの酸素発生電位を新品と同程度にまで再生できたことが分かる。
図1