【実施例】
【0018】
このクラッチ機構1は、
図2の(I)−(I)線断面である
図1および
図1の(II)−(II)線方向から見たクラッチ機構1の側断面図である
図2に示すように、円柱状空間を有する収納室11を形成した固定部材10と、収納室11に同軸状に収納された出力回転体20と、出力回転体20に対し同軸状に設けられた入力回転体30と、収納室内周面11aと出力回転体20の外周面との間に設けられた一対の係合子41,42と、一方の係合子41を周方向の一方側(
図1によれば時計方向側)へ付勢するとともに他方の係合子42を周方向の他方側(
図1によれば反時計方向側)へ付勢する付勢部材50とを備える。
そして、このクラッチ機構1は、入力回転体30の外周に噛み合う歯車xから、該入力回転体30に回転力を受けた際に、この回転力を出力回転体20に伝達して出力回転体20を回転させ、また、出力回転体20に対し外部から回転力が加わった際には、該出力回転体20を回転不能にロックする。
【0019】
固定部材10は、その内部に、出力回転体20、係合子41,42および付勢部材50を収納するための収納室11を有する。収納室11は、内周面11aにより囲まれた略円柱状空間を確保している。前記内周面11aは、凹凸のない円筒内周面状の曲面である。
この固定部材10は、
図2に示される固定板13を挟んで、図示しない不動部位(例えば、テープフィーダの支持基板等)に、回転不能に固定される。尚、設計により固定板13を配置しないで、固定部材10を前記不動部位に固定することも可能である。
図1において、符号12は、固定部材10を前記不動部位に固定するための止着孔である。
【0020】
出力回転体20は、収納室11に同芯状に配置された略円板状の部材であり、その中心側が固定部材10に対し回転自在に支持されている。この出力回転体20の軸方向の一端側(
図2によれば右端側)の部分は、固定部材10に対し回転自在に嵌め合せられるとともに、その中心部に、外部へ露出した出力軸24を一体に有する。
この出力回転体20の外周部には、周方向の一方側(
図1によれば時計方向側)へ向かって収納室11の内周面11aとの間を徐々に狭める一方のカム面21と、この一方のカム面21の前記一方側に隣接する凹部22と、前記一方のカム面21に背反するように他方側(
図1によれば反時計方向側)へ向かって収納室11の内周面11aとの間を徐々に狭める他方のカム面23と、付勢部材50を係止するための係止部25とが、所定角度(等間隔)置きに複数組(図示例によれば3組)並べ設けられる。
【0021】
カム面21とカム面23は、左右対称に設けられる。各カム面21,23は、周方向に湾曲する凸曲面状に形成され、より詳細に説明すれば、収納室内周面11aの半径から、各係合子41,42の直径を減じた値よりも大きな半径の円弧状に形成されるとともに、該円弧の中心位置を出力回転体20の中心位置からずらすようにして設けられる。
【0022】
凹部22は、出力回転体20の外周面から求心方向へ凹むとともに、出力回転体20の軸方向へ貫通している。この凹部22内の周方向の両端には、後述する入力回転体30の押圧伝達部31によって押圧される被押圧面22a,22bを有する。これら被押圧面22a,22bは、径方向へわたる平坦面状に形成され、一方の被押圧面22aは、一方のカム面21と交差し、他方の被押圧面22bは、他方のカム面23と交差している。
【0023】
係止部25は、出力回転体20の外周部において、背反する一方のカム面21と他方のカム面23との間に配置された凹部であり、詳細には、付勢部材50を挿通する挿入空間部25aと、該挿入部よりも奥側(底側)に形成された底側空間部25bとからなる。
挿入空間部25aは、一定幅の空間を形成している。また、底側空間部25bは、挿入空間部25aよりも周方向の幅の広い空間を形成している。これら挿入空間部25a及び底側空間部25bは、挿入される付勢部材50の基端側部分を、容易に引き抜けることのないように固定する。
【0024】
入力回転体30は、出力回転体20に対し軸方向へ並ぶように設けられた略円盤状の部材であり、その外周部には、駆動源側の歯車xと噛み合う歯部32が形成される。
この入力回転体30は、中心側において、軸方向の一端側(
図2によれば右端側)を出力回転体20に対し双方向へ回動するように嵌め合せ、また、軸方向の他端側に、軸部33を突設している。軸部33は、前記歯部32に代えて回転力を入力するための入力軸として用いてもよいし、該入力回転体30をより安定的に回転支持するための支持軸として用いてもよい。
また、入力回転体30における出力回転体20側の側面には、凹部22毎に対応するように、周方向に所定間隔を置いて複数(図示例によれば3つ)の押圧伝達部31が突設されている。
【0025】
押圧伝達部31は、出力回転体20の凹部22に対し周方向の遊びを有する状態で嵌り合うとともに凹部22内から遠心方向へ突出する略扇形状に形成され、周方向の両端部に、出力回転体20の被押圧面22a,22bに当接可能であって、且つ係合子41,42にも当接可能な当接面31a,31bを有する。
【0026】
当接面31a,31bの各々は、凹部22内から凹部22外へわたって径方向へ連続している。一方の当接面31aは、凹部22における一方の被押圧面22aと略平行な平坦面状に形成され、他方の当接面31bは、凹部22における他方の被押圧面22bと略平行な平坦面状に形成される。
両当接面31a,31b間の周方向の幅は、出力回転体20における被押圧面22a,22b間の周方向の幅よりも若干小さく設定されている。
【0027】
係合子41,42は、円柱状又は球状(図示例によれば円柱状)に形成され、一方及び他方のカム面21,23に対応して一対に設けられている。
一対の係合子41,42のうち、一方の係合子41は、一方のカム面21および収納室内周面11aに接触するように配置され、他方の係合子42は、他方のカム面23および収納室内周面11aに接触するように配置される。そして、各係合子41,42は、後述する付勢部材50に押圧された状態で、凹部22の各被押圧面22a,22bよりも凹部22内側へ若干突出した位置で静止している。
【0028】
付勢部材50は、長尺平板状のばね材を略Y字状に曲げ成形してなり、出力回転体20の係止部25に止着固定された止着部51と、該止着部51から二股状に分かれるようにして延設された二つの押圧部52,52とからなり、押圧部52,52によって一対の係合子41,42を引き離すように付勢する。
止着部51は、出力回転体20外周の係止部25における底側空間部25bにならう略円形状の部分と、同係止部25における挿入空間部25aにならう幅狭の平行板状の部分とからなる。
各押圧部52は、止着部51から延設されてカム面21側(又はカム面23側)へ傾斜し、その傾斜方向の面を、対応する係合子41(又は係合子42)の外周面に当接させている。
【0029】
次に、上記構成のクラッチ機構1について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
先ず、出力回転体20及び入力回転体30の何れにも回転力が加わっていない状態(
図1参照)では、係合子41,42が、それぞれ、付勢部材50に押圧されて、カム面21,23と収納室11の内周面11aとの間の楔状部分に押し付けられる。
したがって、出力回転体20は、一方向(
図1によれば時計方向)と他方向(
図1によれば反時計方向)の何れにも回転しないように、静止した状態に維持される。
【0030】
前記状態から、出力回転体20に、外部から、例えば前記一方向(
図1によれば時計方向)の回転力が加わった場合には、前記一方向へ回転しようとする出力回転体20の他方のカム面23と収納室内周面11aとの間に、他方の係合子42が食い込むようにして強く押し付けられるため、出力回転体20の前記一方向への回転が阻まれる。
同様にして、出力回転体20に、外部から、例えば前記他方向(
図1によれば反時計方向)の回転力が加わった場合には、前記他方向へ回転しようとする出力回転体20の一方のカム面21と収納室内周面11aとの間に、一方の係合子41が食い込むようにして強く押し付けられるため、出力回転体20の前記他方向への回転が阻まれる。
【0031】
また、例えば、
図3に示すように、入力回転体30に、前記一方向の回転力が加わった場合〔
図3(a)〕には、入力回転体30の押圧伝達部31が、先ず一方の係合子42に当接する〔
図3(b)〕ことで、該係合子42とカム面23との摩擦、および該係合子42と収納室内周面11aとの摩擦が小さくなり、その後で、押圧伝達部31が凹部22内の被押圧面22bに当接して出力回転体20を押動する〔
図3(c)〕ため、出力回転体20が前記他方向へスムーズに回転する。
また、入力回転体30に前記一方向の回転力が加わった場合には、図示を省略するが、入力回転体30の押圧伝達部31が、先ず他方の係合子41に当接することで、該係合子41とカム面21との摩擦、および該係合子42と収納室内周面11aとの摩擦が小さくなり、その後で、押圧伝達部31が凹部22内の被押圧面22aに当接して出力回転体20を押動するため、出力回転体20が前記他方向へスムーズに回転する。
【0032】
上記のような係合子41,42による係脱作用は、各カム面21,23と収納室内周面11aとの角度を適正に設定することで良好に得ることができる。このため、本実施例では、収納室内周面11aと各係合子41,42との接線と、各係合子41,42と各カム面21,23との接線とがなす角度をθとし、収納室内周面11aと各係合子41,42との静摩擦係数と、各係合子41,42と各カム面21,23との静摩擦係数とのうち、何れか小さい方の静摩擦係数をμとした場合に、sinθ/(cosθ+1)≦μの関係が成り立つようにしている。以下に、このことについて詳細に説明する。
【0033】
なお、以下の説明では、他方の係合子42及び他方のカム面23を用いた説明としているが、一方の係合子41及び一方のカム面21についても、左右対称が対象となって同様に作用するのは勿論である。
【0034】
図4および
図5は、収納室内周面11aと係合子42とカム面23との関係を示す模式図である。
図5中、y軸は、一対の係合子41,42について、図上で出力回転体20の右回転を係止する係合子42を左側、左回転を係止する係合子41を右側に配置されるように見たときに、これら左右の係合子42,41の中間線であって、且つ出力回転体20の中心点Oを通る直線とする。x軸は、y軸に直交し、且つ出力回転体20の中心点Oを通る直線とする。
【0035】
また、
図4〜5中及び数式中の記号の意味は、次の通りである。
A:係合子42と収納室内周面11aとの接線(
図4参照)
B:係合子42とカム面23との接線
h:x軸から、係合子42と出力回転体20の接触点までの高さ(
図5参照)
L:モーメントアーム(出力回転体20の中心Oと、出力回転体20が係合子42から受ける荷重の作用線との最短距離)
L
POFF:出力回転体20の中心Oから、出力回転体20が係合子42から受ける荷重の作用線とy軸との交点までの距離
L
OFF:出力回転体20の中心Oから、係合子42の接触点位置での法線とy軸との交点までの距離
P:係合子42がカム面23から受ける荷重(
図4参照)
P
s:係合子42が付勢部材50から受ける荷重
R
1:係合子42が収納室内周面11aから受ける荷重
R
2:収納室内周面11aと係合子42の摩擦力
R
p:係合子42とカム面23の摩擦力
r:係合子42と出力回転体20の接触点から、その接触点位置での法線とy軸が交わる点までの距離(
図5参照)
θ:係合子42と収納室内周面11aとの接線Aと、係合子42と他方のカム面23との接線Bとの角度(
図4参照)
θ
1:係合子42と収納室内周面11aとの接線Aと、x軸との角度
θ
2:係合子42と他方のカム面23との接線Bと、x軸との角度
θ
POFF:出力回転体20が係合子42から受ける荷重の作用線とy軸との角度(
図5参照)
α:定数
μ:収納室内周面11aと係合子42との静摩擦係数と、係合子42とカム面23との静摩擦係数のうち、何れか小さい方の静摩擦係数
【0036】
先ず、保持トルクを発生させる係合子42周辺の力の静バランスを考える。前提条件として、係合子42は回転しないで滑り、付勢部材50からの荷重は一定で、付勢部材50と係合子42との摩擦は無視できるものとし、収納室内周面11a、カム面23及び係合子42は、弾性変形しないものとする。
【0037】
係合子42は回転せず、付勢部材50との接触部の摩擦は無視できることから、係合子42中心のモーメントのつり合いから、
R
p=R
2 ・・・・・(1)
【0038】
x方向、y方向それぞれの力の静バランスより、
-P
s-Psinθ
2-R
Pcosθ
2+R
1sinθ
1-R
2cosθ
1=0
Pcosθ
2-R
Psinθ
2-R
1cosθ
1-R
2sinθ
1=0 ・・・・・(2)
【0039】
(2)式に(1)式を代入し、
R
1sinθ
1-R
2(cosθ
1+cosθ
2)=P
s+Psinθ
2
R
1cosθ
1+R
2(sinθ
1+sinθ
2)=Pcosθ
2 ・・・・・(3)
【0040】
ここで、係合子42がすべらないぎりぎりの荷重が負荷された場合を想定すると、
R
2=μR
1 ・・・・・(4)
【0041】
(3)式に(4)式を代入し、
R
1(sinθ
1-μ(cosθ
1+cosθ
2))=P
s+Psinθ
2
R
1(cosθ
1+μ(sinθ
1+sinθ
2))=Pcosθ
2 ・・・・・(5)
【0042】
辺々をそれぞれ除し、
{sinθ
1-μ(cosθ
1+cosθ
2)}/{cosθ
1+μ(sinθ
1+sinθ
2)}=(P
s+Psinθ
2)/Pcosθ
2【0043】
簡単のため、構造が決まれば定数となる左辺をαと置く。
{sinθ
1-μ(cosθ
1+cosθ
2)}/{cosθ
1+μ(sinθ
1+sinθ
2)}=α
α=(P
s+Psinθ
2)/Pcosθ
2【0044】
Pについて解くと、
P=P
s/(αcosθ
2−sinθ
2) ・・・・・(6)
【0045】
係合子42からの反力が出力回転体20に及ぼすトルクは、3ヶ所の係合子42が同時に接触する場合、
T=3Lsqrt(P
2+R
P2) ・・・・・(7)
(なお、sqrt()は平方根を表す。)
【0046】
ここで、モーメントアームLは、
L=L
POFFsinθ
POFF ・・・・・(8)
【0047】
θ
POFFは係合子42と出力回転体20接触面の角度θ
2に、P、R
P合力角度を加算したものであるから、
θ
POFF=θ
2+Tan
-1(R
P/P) ・・・・・(9)
【0048】
また、出力回転体20の中心Oを通るx軸から、係合子42と出力回転体20の接触点までの高さをh、係合子42と出力回転体20の接触点から、その法線とy軸が交わる点までの距離をrとすると、以下の式が成り立つ。
rsinθ
2=(L
POFF+h)tanθ
POFF
h=rcosθ
2-L
OFF【0049】
上式より、
L
POFF=(rsinθ
2/tanθ
POFF)-rcosθ
2+L
OFF ・・・・・(10)
【0050】
以上より、与えられるP
sおよび各構造の寸法、角度および静摩擦係数μから、(6)式、(4)、(5)式を使用してP、R
1、R
2を求め、(7)〜(10)式で係合子42が耐えられる最大トルクを算出できる。
【0051】
ところで、(6)式に注目すると、右辺分母が0に近づくにつれて滑らないぎりぎりの荷重Pは大きくなり続け、やがては無限大に発散する。すなわち、ある条件ではトルクをいくらかけても理論上滑ることはないと言える。
【0052】
(6)式右辺分母が正の値をとる場合は、有限の荷重で滑り出す。
αcosθ
2-sinθ
2>0
【0053】
上記以外の条件では、有限の荷重で滑り出すことはない。
αcosθ
2-sinθ
2≦0
ここで、αを元に戻すと、
{sinθ
1-μ(cosθ
1+cosθ
2)}cosθ
2/{cosθ
1+μ(sinθ
1+sinθ
2)}-sinθ
2≦0
これを解くと、
sin(θ
1-θ
2)/{cos(θ
1-θ
2)+1}≦μ ・・・・・(11)
【0054】
(11)式の条件を満たすθ
1、θ
2の組み合わせとすると、いくらトルクをかけても滑らない固定部材10、係合子42および出力回転体20が設計できる。できるだけθ
1とθ
2の角度差がない状態になるように設定することが重要である。
【0055】
ここで、θ
1-θ
2=θだから、
sinθ/(cosθ+1)≦μ ・・・・・(11)
が成り立つ。
【0056】
よって、本実施例では、(11)式を満たすように、角度θを設定することで、係合子41,42による係脱作用を良好に得るようにしている。
【0057】
上記構成のクラッチ機構1によれば、一体状の押圧伝達部31を凹部22内外の単一空間に嵌め合せ、押圧伝達部31における平坦面状の当接面31a,31bを被押圧面22a,22bと係合子41,42に順次に当接する構造としているため、柱部や、ピンおよびピン孔等の分離した部材を用いる従来技術と比較し、構造が簡素である。この構造により、小型化が容易な上、生産性も良好であり、異物等に起因する作動不良も生じ難く、耐久性も良好である。
【0058】
また、カム面21,23を、収納室内周面11aの半径から係合子41,42の直径を減じた値よりも大きな半径の円弧状の凸曲面に形成しているため、収納室内周面11aと係合子41,42との接線と、係合子41,42とカム面21,23とがなす角度θを、カム面を平坦状に形成した従来技術と比較して、より広い範囲の中で適切に設定できる。よって、例えば、係合子41,42を前記楔状部分の奥側へ寄せるようにして小型化した場合でも、前記角度θを比較的大きく確保して、係合子41,42が収納室内周面11aとカム面21,23とがなす楔状部分に食い込み易い設計にできる。これにより、係合子41,42による係脱作用を良好に維持した上で、当該クラッチ機構1全体の小型化が可能となる。
小型化が可能となることについて、より具体的には、従来の構成では実現が困難であった外径φ12mm以下にまで小型化することを可能とした。
【0059】
また、付勢部材50を出力回転体20に止着される止着部51と該止着部51からY字状に延設され傾斜する両押圧部52,52とから構成し、各押圧部52の傾斜方向側の面により係合子41,42を押圧するようにしているため、一方の係合子41(又は42)から付勢部材50に受ける反力が他方の係合子42(又は41)に伝わり難くい。これにより、付勢部材50に意図しない力が作用することを防ぎ、各押圧部52の付勢力を安定的に維持することができる。
【0060】
なお、上記クラッチ機構1によれば、外部から、出力回転体20に対し一方向と他方向(時計方向と反時計方向)の何れの方向の回転力を加えた場合でも、係合子41,42等の作用によって出力回転体20が拘束されるようにしたが、他例としては、何れか一方向の回転力を加えた場合のみ出力回転体20を拘束する態様とすることが可能である。
この態様は、例えば、上記クラッチ機構1から一方の係合子41を全て省いた構成とすればよい。この構成によれば、出力回転体20に対し一方向(
図1によれば時計方向)の回転力を加えた場合には、各係合子42が収納室内周面11aとカム面23の間の狭まる楔状部分に押し付けられるため、出力回転体20の回転を阻止することができる。
また、出力回転体20に対し他方向(
図1によれば反時計方向)の回転力を加えた場合には、各係合子42が収納室内周面11aとカム面23の間の楔状部分から離れようとし、各係合子42と収納室内周面11a及びカム面23との摩擦が小さくなるため、出力回転体20をスムーズに回転させることができる。
また、入力回転体30に対し前記一方向の回転力が加わった場合には、押圧伝達部31が係合子42に当接した後に凹部22の被押圧面22bを押圧し、また同入力回転体30に対し前記他方向の回転力が加わった場合には、押圧伝達部31が何れの係合子にも当接することなく凹部22の被押圧面22aを押圧するため、何れの回転方向であっても、入力回転体30の回転力を出力回転体20へスムーズに伝達することができる。
【0061】
また、上記クラッチ機構1によれば、固定部材10に対し出力回転体20を回転自在に支持し、さらに出力回転体20に対し入力回転体30を回転自在に支持する構成としたが、この支持構造は、出力回転体20と入力回転体30がそれぞれ双方向へ回転する支持構造であればよく、他例としては、単一の軸部材によって出力回転体20と入力回転体30をそれぞれ回転自在に支持する構造等とすることが可能である。
【0062】
また、上記クラッチ機構1によれば、出力回転体20の外周部に、カム面21,22、凹部22、係合子41,42及び付勢部材50等を3組並べ設けたが、他例としては、これらを2組又は4組以上設けることも可能である。