(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記滅点顕在化工程において、前記第1部分には前記第2部分よりも大きな電流が流れることにより、前記第1部分を変質させ、前記第1部分の電気抵抗を前記第2部分の電気抵抗よりも低下させる
ことを特徴とする請求項4に記載の欠陥検出方法。
前記滅点顕在化工程において、前記第1部分には前記第2部分よりも大きな電流が流れ、前記第1部分に加わる電界強度が前記第2部分に加わる電界強度よりも大きくなることにより、前記第1部分の一部を破壊または変形させ、前記第1部分に空隙部を形成させる
ことを特徴とする請求項4に記載の欠陥検出方法。
欠陥検出方法により滅点として検出された有機EL素子において、前記第1電極および前記第2電極の少なくとも一方の前記第1部分に対応する部分の電気抵抗を高める処理を行う有機EL素子のリペア方法であって、
前記欠陥検出方法は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の欠陥検出方法である
ことを特徴とする有機EL素子のリペア方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
≪本発明の一態様の概要≫
本発明の一態様に係る欠陥検出方法は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極および前記第2電極に挟まれた機能層および発光層と、を有する有機EL素子に対して行われる欠陥検出方法であって、前記第1電極と前記第2電極間に前記発光層が非発光となる滅点を顕在化させるための電圧を印加することにより、前記有機EL素子が前記第1電極と前記第2電極との間に前記非発光を引き起こす要因となる欠陥部を有する場合には、前記機能層の前記欠陥部に対応する第1部分における電気抵抗を低下させる滅点顕在化工程と、前記滅点顕在化工程の後に、前記第1電極と前記第2電極間に前記欠陥部の無い正常な有機EL素子であれば前記発光層が発光するであろう電圧である発光所要電圧を印加して、前記滅点を検出する滅点検出工程と、を有することを特徴とする。
【0016】
欠陥部を有する有機EL素子においては、滅点顕在化工程において、機能層の欠陥部に対応する第1部分を低抵抗化させるため、続いて行われる滅点検出工程において、低抵抗化された第1部分に集中的に電流が流れるショート状態となって非発光となり、当該欠陥を有する有機EL素子を確実に滅点として検出することが出来る。
【0017】
また、本発明の一態様に係る欠陥検出方法の特定の局面では、前記機能層は、金属がドープされた有機材料から成り、前記滅点顕在化工程において、前記第1部分に通電して発熱させることにより、前記第1部分に含まれる前記有機材料を蒸発させて空隙部を形成し、前記機能層の前記空隙部を囲む側壁部分に、前記蒸発した前記有機材料にドープされていた前記金属を析出させることにより電気抵抗を低下させることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の一態様に係る欠陥検出方法の特定の局面では、前記第1電極は陽極であり、前記第2電極は陰極であり、前記第2電極には、前記第1電極に比べて高い電圧が印加されることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の一態様に係る欠陥検出方法の特定の局面では、前記滅点顕在化工程において、前記第1部分の電気抵抗が、前記機能層の前記欠陥部に対応しない第2部分の電気抵抗よりも低下するまで前記電圧を印加することを特徴とする。
【0020】
また、本発明の一態様に係る欠陥検出方法の特定の局面では、前記欠陥部は、前記機能層の下方に、突出部または凹入部または前記発光層よりも導電性が高い異物を有し、前記第1部分は、前記突出部または前記凹入部または前記異物の上方に位置し、前記第2部分よりも膜厚が薄い領域を有することを特徴とする。
【0021】
また、本発明の一態様に係る欠陥検出方法の特定の局面では、前記機能層は、当該機能層を流れる累積電流量の増加に伴って電気抵抗が低下する材料から成ることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の一態様に係る欠陥検出方法の特定の局面では、前記滅点顕在化工程において、前記第1部分には前記第2部分よりも大きな電流が流れることにより、前記第1部分を変質させ、前記第1部分の電気抵抗を前記第2部分の電気抵抗よりも低下させることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の一態様に係る欠陥検出方法の特定の局面では、前記滅点顕在化工程において、前記第1部分には前記第2部分よりも大きな電流が流れ、前記第1部分に加わる電界強度が前記第2部分に加わる電界強度よりも大きくなることにより、前記第1部分の一部を破壊または変形させ、前記第1部分に空隙部を形成させることを特徴とする。
【0024】
本発明の一態様に係る有機EL素子のリペア方法は、欠陥検出方法により滅点として検出された有機EL素子において、前記第1電極および前記第2電極の少なくとも一方の前記第1部分に対応する部分の電気抵抗を高める処理を行う有機EL素子のリペア方法であって、前記欠陥検出方法は、本発明の一態様に係る上記各局面のいずれかにおける欠陥検出方法であることを特徴とする。
【0025】
本発明の一態様に係る有機EL表示パネルは、基板上に複数の有機EL素子が形成されて成る有機EL表示パネルであって、前記複数の有機EL素子はそれぞれ、発光層と、前記発光層の上に積層され、金属がドープされた有機材料から成る機能層と、前記発光層および前記機能層を間に挟む一対の電極と、を有し、前記複数の有機EL素子のうち、少なくとも1つは、前記機能層の下方に突出部または凹入部または前記発光層よりも導電性が高い異物を有し、前記機能層の前記突出部または前記凹入部または前記異物の上方に位置する第1部分の少なくとも一部が欠損して空隙部が形成されており、前記空隙部の周囲には前記金属が析出していることを特徴とする。
【0026】
≪実施形態1≫
[1−1.全体構成]
図1は実施形態1に係る有機EL表示パネル100を有する有機EL表示装置1の構成を示す模式ブロック図である。
図1に示すように、有機EL表示装置1は、有機EL表示パネル100と、これに接続された駆動制御部20とを有し構成されている。有機EL表示パネル100は、有機材料の電界発光現象を利用したパネルであり、複数の有機EL素子が、例えば、マトリクス状に配列され構成されている。駆動制御部20は、4つの駆動回路21〜24と制御回路25とから構成されている。
【0027】
なお、実際の有機EL表示装置1では、有機EL表示パネル100に対する駆動制御部20の配置については、これに限られない。
【0028】
[1−2.有機EL表示パネルの構成]
有機EL表示パネル100の構成について、
図2を用い説明する。
【0029】
図2は、有機EL表示パネル100の表示面側から見た概略構成を模式的に示す平面図である。
図3は、有機EL表示パネル100の
図2のA−A’直線による一部拡大断面図である。有機EL表示パネル100は、Z方向側を表示面とする、いわゆるトップエミッション型である。
【0030】
図3に示すように、有機EL表示パネル100は、その主な構成として、基板11、陽極(第1電極)12、ホール注入層13、バンク14、有機発光層15、電子輸送層(機能層)16、陰極(第2電極)17、封止層18を備える。有機EL表示パネル100は、赤(R),緑(G),青(B)の何れかの発光色に対応する有機発光層15を有する有機EL素子10をサブピクセルとし、
図2に示すように、サブピクセルがマトリクス状に配設されている。なお、
図2においては、図示をわかりやすくするために、電子輸送層16、陰極17、封止層18を取り除いた状態を示している。
【0031】
また、有機EL表示パネル100は、ホール注入層13に欠陥部3を有する。
【0032】
<基板>
基板11は有機EL表示パネル100の基材となる部分であり、例えば、無アルカリガラス、ソーダガラス、無蛍光ガラス、燐酸系ガラス、硼酸系ガラス、石英、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、シリコーン系樹脂、またはアルミナ等の絶縁性材料のいずれかで形成することができる。
【0033】
また、図示していないが、基板11の表面には有機EL素子を駆動するためのTFT(薄膜トランジスタ)層が形成されており、その上に形成された層間絶縁層を介してその上方に陽極12が形成されている。層間絶縁層は、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等の有機絶縁材料や、SiO(酸化シリコン)やSiN(窒化シリコン)等の無機絶縁材料からなり、TFT層と陽極との間の電気的絶縁性を確保するとともに、TFT層の上面の段差を平坦化するためのものである。
【0034】
本実施形態においては、TFTの極性はNチャネル型であり、基板11側が陽極12であり、表示面側が陰極17である。
【0035】
<陽極>
陽極12は、サブピクセル毎に個別に設けられた画素電極であり、例えば、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、アルミニウム合金、Mo(モリブデン)、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、MoW(モリブデンとタングステンの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)、ACL(アルミニウム、コバルト、ゲルマニウム、ランタンの合金)等の光反射性導電材料からなる。
【0036】
なお、陽極12の表面にさらに公知の透明導電膜を設けてもよい。透明導電膜の材料としては、例えば酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛(IZO)を用いることができる。透明導電膜は、陽極12とホール注入層13の間に介在し、各層間の接合性を良好にする機能を有する。
【0037】
<ホール注入層>
ホール注入層13は、例えば、銀(Ag)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、イリジウム(Ir)などの酸化物、あるいは、PEDOT(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)などの導電性ポリマー材料からなる層である。上記の内、酸化金属からなるホール注入層13は、ホールを安定的に、またはホールの生成を補助して、有機発光層15に対しホールを注入および輸送する機能を有する。
【0038】
ここで、ホール注入層13を遷移金属の酸化物から構成する場合には、複数の酸化数をとるためこれにより複数の準位をとることができ、その結果、ホール注入が容易になり駆動電圧を低減することができる。
【0039】
<バンク>
ホール注入層13の表面には、有機発光層15の形成領域となる開口部14aを区画するためのバンク14が設けられている。バンク14は一定の台形断面を持つように形成されており、絶縁性の有機材料(例えばアクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等)からなる。バンク14は、有機発光層15を塗布法で形成する場合には塗布されたインクがあふれ出ないようにするための構造物として機能し、有機発光層15を蒸着法で形成する場合には蒸着マスクを載置するための構造物として機能する。
【0040】
また、開口部14aにより規定された領域が発光領域であり、各発光領域が、1サブピクセルに相当する。
【0041】
<有機発光層>
有機発光層15は、キャリア(正孔と電子)の再結合による発光を行う部位であり、R,G,Bのいずれかの色に対応する有機材料を含むように構成されている。有機発光層15は、バンク14の開口部14a内にそれぞれ形成されており、そのため、サブピクセル毎に形成されていることになる。
【0042】
有機発光層15として用いることが可能な材料としては、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリフルオレンや、例えば、特許公開公報(特開平5−163488号公報)に記載のオキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体等の蛍光物質等が挙げられる。
【0043】
<電子輸送層>
電子輸送層16は、陰極17から注入された電子を有機発光層15へ輸送する機能を有し、例えば、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナンスロリン誘導体(BCP、Bphen)などの有機材料16a(
図4各図参照)に金属16b(
図4各図参照)をドープさせた材料を用い形成されている。有機材料16aにドープさせる金属16bとしては、例えば、リチウム(Li)等のアルカリ金属やバリウム(Ba)等のアルカリ土類金属が用いられる。有機材料16aへの金属16bのドープは、共蒸着法が一般的であるが、スパッタ法により行われてもよいし、金属微粒子を有機材料中に分散させることにより行ってもよい。本実施形態においては、有機材料16aにオキサジアゾール誘導体が、金属16bにバリウムが用いられている。即ち、電子輸送層16は、バリウムをドープしたオキサジアゾール誘導体から形成されている。
【0044】
<陰極>
陰極17は、各サブピクセル共通に設けられており、例えば、ITO、IZO等の導電性を有する光透過性材料で形成されている。トップエミッション型の有機EL表示パネルの場合においては、光透過性の材料で形成されることが好ましい。
【0045】
陰極17の形成に用いる材料としては、上記の他に、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらのハロゲン化物を含む層と銀を含む層とをこの順で積層した構造を用いることもできる。上記において、銀を含む層は、銀単独で形成されていてもよいし、銀合金で形成されていてもよい。また、光取り出し効率の向上を図るためには、当該銀を含む層の上から透明度の高い屈折率調整層を設けることもできる。
【0046】
<封止層18>
封止層18は、有機EL表示パネル100内に浸入した水分又は酸素からホール注入層13、有機発光層15、電子輸送層16、陰極17を保護するために設けられている。
【0047】
なお、
図3においては、図示を省略しているが、封止層18の上に、ブラックマトリクス、カラーフィルター等が形成されていてもよい。
【0048】
<欠陥部>
欠陥部3は、陽極12と陰極17との間に存在する異物又は突出部である。欠陥部3の存在により、その上に形成される各層の欠陥部3に対応する部分(欠陥部3の上方に位置する部分)が上方(Z方向側)に突出する態様で形成される。さらには、欠陥部3に対応する部分の一部が形成されない場合も有る。本実施形態においては、欠陥部3は、異物であり、具体的には、塵や埃等の微小なゴミである。
【0049】
図2,3に示すように、本実施形態に係る有機EL表示パネル100においては、欠陥部3はホール注入層13上に位置している。そして、有機発光層15は、欠陥部3の上方に位置する部分においては形成されていないか、もしくは他の部分と比べて非常に薄い状態である、所謂ピンホールが形成された状態となっている。電子輸送層16が有機発光層15および欠陥部3上に形成されており、電子輸送層16の欠陥部3の上方に位置する部分である第1部分16cの膜厚は、欠陥部3の上方に位置しない部分(欠陥部3に対応しない部分)である第2部分16dの膜厚よりも薄くなっている。
【0050】
本実施形態においては、欠陥部3は、有機物から成り、有機発光層15よりも高い導電性を有する。
【0051】
なお、
図2,3には、欠陥部3を有する有機EL素子10を示しているが、有機EL表示パネル100に形成された全ての有機EL素子10が欠陥部3を有しているというわけではない。有機EL表示パネル100に形成された複数の有機EL素子10のうちのいくつかのみが欠陥部3を有しており、欠陥部3を有する有機EL素子がゼロである可能性もある。欠陥部3を有する有機EL素子10が所定の割合以上存在する有機EL表示パネル100は、不良品として処理される。
【0052】
[1−3.欠陥検出方法およびリペア方法]
次に、本発明の一態様に係る欠陥部検出方法について説明する。ここでは、有機EL表示パネル100に対して行われる欠陥検出方法について以下に説明する。
【0053】
図4は、本実施形態における欠陥検出方法の概要を示す断面図であって、
図3の破線Bで囲まれた部分の拡大断面図である。
【0054】
まず、有機EL素子10の陽極12と陰極17との間に、逆バイアス電圧を印加する。欠陥部3は有機発光層15が存在しないかもしくは非常に薄いため、欠陥部3を有する有機EL素子10は、欠陥部3を有しない有機EL素子10よりも低い逆バイアス電圧でブレークダウンが発生して、電流が流れることとなる。そして、
図4(a)に示すように、第1部分16cに集中的に逆バイアス電流Ir1が流れる。
【0055】
なお、
図4(a)においては、第1部分16cに流れる逆バイアス電流Ir1は太線の矢印で示し、第2部分16dに流れる逆バイアス電流Ir2は破線の矢印で示している。これは、破線で表した逆バイアス電流Ir2は小さな電流であり、太線で示す逆バイアス電流Ir1は大きな電流であることを表している。
【0056】
そして、第1部分16cに集中的に逆バイアス電流Ir1が流れることにより、第1部分16cが発熱して温度が上昇し、
図4(b)に示すように、第1部分16cにおいて有機材料16aが昇華して空隙部4が形成される。そして、昇華した有機材料16aにドープされていた金属16bが空隙部4の側壁部分に析出し、陰極17と欠陥部3との間の電流路となるチャネル部5が形成される。チャネル部5は、析出した金属から成り、高い導電性を有するため、チャネル部5が形成されることにより、第1部分16cの電気抵抗が低下し、定常的なショート状態となる。これにより、潜在的な滅点が顕在化される。
【0057】
なお、ここでは、空隙部4が形成されるまで逆バイアス電圧の印加を継続して行う。具体的には、例えば、逆バイアス電圧の印加は、10〜30[V]で10分間行う。
【0058】
また、有機材料16aの昇華は、第1部分16c全体に亘って発生しなくてもよい。欠陥部3と陰極17とを電気的に接続するに十分な長さ(電子輸送層16の厚さ方向における長さ)のチャネル部5が形成されるに十分な量の金属16bが析出することが出来る量の有機材料16aが昇華すればよい。即ち、第1部分16cの一部の有機材料16aのみが昇華して、第1部分16cの一部に空隙部4が形成されてもよい。
【0059】
上記空隙部4およびチャネル部5の形成に続いて、通常の滅点検出工程と同様にして、有機EL素子10の陽極12と陰極17との間に順バイアス電圧を印加する。すると、
図4(c)に示すように、順バイアス電流Ifは、チャネル部5を通じて専ら第1部分16cに集中的に流れて有機発光層15にはほとんど流れないため、当該有機EL素子10は非発光となり、滅点検出工程において、滅点として検出される。
【0060】
そして、滅点として検出された有機EL素子10に対しては、陽極12および陰極17の欠陥部3に対応する部分にレーザー光を照射する公知の方法により電極を焼き切ったり変質させたりして、当該部分を高抵抗化または絶縁化してリペア処理を行う。
【0061】
なお、滅点検出は、CCDカメラ等を用いた公知の方法により行われる。具体的には、特許文献1の発光状態検査の項目等を参照されたし。
【0062】
また、リペアの方法は、レーザー光による方法に限られず、例えば、超音波等を用いてもよく、高抵抗化または絶縁化させることができれば何れの方法を用いてもよい。
【0063】
[1−4.実施形態1のまとめ]
以上説明したように、本実施形態に係る有機EL表示パネル100は、有機材料16aに金属16bをドープした材料を用いて機能層としての電子輸送層16が形成されている。そして、本実施形態に係る欠陥検出方法によると、滅点検出工程に先立って有機EL素子10の陽極12と陰極17との間に逆バイアス電圧を印加して、有機EL素子10が欠陥部3を有する場合には、電子輸送層16の欠陥部3に対応する部分である第1部分16cを低抵抗化させる。この低抵抗化は、次のような仕組みにより成される。有機EL素子10に逆バイアス電圧を印加した際に、電子輸送層16の欠陥部3に対応する部分である第1部分16cに集中的に電流が流れて温度が上昇する。第1部分16cの温度が上昇すると、やがて第1部分16cの有機材料16aが昇華して当該部分に空隙部4が形成される。それと同時に、昇華した有機材料16aにドープされていた金属16bが空隙部4の側壁部分に析出して、高い導電性を有するチャネル部5が形成される。このようにして、第1部分16cが低抵抗化される。これにより、第1部分16cが定常的なショート状態となり、潜在的な滅点が顕在化される。そして、続いて行われる滅点検出工程において、欠陥部3を有する有機EL素子を滅点として確実に検出することができる。
【0064】
このようにして、潜在的に滅点となる可能性のある有機EL素子10を強制的に滅点化させて確実に検出することが出来るため、滅点を予めリペアすることにより、ユーザの使用中に滅点が発生して品質が劣化するという事態の発生を抑制することが出来る。
【0065】
≪実施形態2≫
実施形態1では、TFTの極性がNチャネル型の有機EL表示パネル100について説明した。実施形態2では、TFTの極性がPチャネル型の場合について説明する。
【0066】
なお、説明の重複を避けるため、実施形態1と同じ構成要素については、同符号を付して、その説明を省略する。以下、実施形態3および各変形例についても同様である。
【0067】
[2−1.有機EL表示パネルの構成]
図5は、実施形態2に係る有機EL表示パネル200の概略構成を示す部分断面図である。
図5においては、
図2のA−A’線に相当する位置における断面図を示す。
【0068】
図5に示すように、有機EL表示パネル200は、基板11上に、陰極17、電子輸送層16、バンク14がこの順に積層成膜されており、開口部14a内に有機発光層15が形成されている。そして、バンク14および有機発光層15上に、ホール注入層(機能層)13、陽極12、封止層18がこの順に積層成膜されている。本実施形態においては、陰極17が画素電極である。
【0069】
なお、ホール注入層13は、有機材料13aとしてα―NPD(N,N’−ビス(1−ナフチルエニル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン;N,N’−Bis(1−naphthylenyl)−N,N’−diphenyl−1,1’−biphenyl−4,4’−diamine)などの導電性ポリマー材料に、リチウム等のアルカリ金属やバリウム等のアルカリ土類金属をドープさせた材料を用いて形成されている。実施形態2においては、ホール注入層13は、バリウムをドープしたα―NPDから形成されている。即ち、実施形態2においては、有機材料13a(
図6各図参照)はα―NPDであり、金属13b(
図6各図参照)はバリウムである。
【0070】
また、実施形態2においても、実施形態1と同様に、欠陥部3は異物であり、具体的には塵や埃等の微小なゴミである。
【0071】
また、
図5には、欠陥部3を有する有機EL素子210を示しているが、有機EL表示パネル200に形成された全ての有機EL素子210が欠陥部3を有しているというわけではない。有機EL表示パネル200に形成された複数の有機EL素子210のうちのいくつかのみが欠陥部3を有しており、欠陥部3を有する有機EL素子がゼロの場合もある。
【0072】
[2−2.欠陥検出方法およびリペア方法]
次に、実施形態2に係る有機EL表示パネル200に対して行われる欠陥検出方法について以下に説明する。
【0073】
図6は、本実施形態における欠陥検出方法の概要を示す断面図であって、
図5の破線Cで囲まれた部分の拡大断面図である。
【0074】
まず、有機EL素子210の陽極12と陰極17との間に、逆バイアス電圧を印加する。すると、欠陥部3は有機発光層15よりも導電性が高く、ホール注入層13の第1部分13cは、第2部分13dよりも膜厚が薄く導電性が高い。そのため、
図4に示す実施形態1の場合と同様に、欠陥部3を有する有機EL素子210は、欠陥部3を有しない有機EL素子210よりも低い逆バイアス電圧で、欠陥部3の上方に位置する部分においてブレークダウンが発生し、電流が流れることとなる。そして、
図6(a)に示すように、第1部分13cに集中的に逆バイアス電流Ir1が流れる。第1部分13cに集中的に逆バイアス電流Ir1が流れることにより、第1部分13cが発熱して温度が上昇し、
図6(b)に示すように、第1部分13cにおいて有機材料13aが昇華して空隙部4が形成される。そして、昇華した有機材料13aにドープされていた金属13bが空隙部4の側壁部分に析出し、陽極12と欠陥部3との間の電流路となるチャネル部205が形成される。チャネル部205は、析出した金属から成り、高い導電性を有するため、チャネル部205が形成されることにより、第1部分13cの電気抵抗が低下し、定常的なショート状態となる。これにより、潜在的な滅点が顕在化される。
【0075】
上記空隙部4およびチャネル部205の形成に続いて、通常の滅点検出工程と同様にして、有機EL素子10の陽極12と陰極17との間に順バイアス電圧を印加する。すると、
図6(c)に示すように、順バイアス電流Ifは、チャネル部205を通じて専ら第1部分13cに集中的に流れて有機発光層15にはほとんど流れないため、当該有機EL素子210は非発光となり、滅点検出工程において、滅点として検出される。
【0076】
その後、実施形態1と同様にして、滅点検出された有機EL素子210に対してリペア処理を行う。
【0077】
なお、実施形態2においても、空隙部4が形成されるまで逆バイアス電圧の印加を継続して行う。具体的には、例えば、逆バイアス電圧の印加は、10〜30[V]で10分間行う。
【0078】
また、実施形態2においても実施形態1と同様に、有機材料13aの昇華は、第1部分13c全体に亘って発生しなくてもよい。欠陥部3と陽極12とを電気的に接続するチャネル部205が形成される限り、第1部分13cの一部の有機材料13aのみが昇華して、第1部分13cの一部に空隙部4が形成されてもよい。
【0079】
[2−3.実施形態2のまとめ]
以上説明したように、実施形態2に係る有機EL表示パネル200においても、欠陥部3の上方に形成されるホール注入層13を機能層として、ホール注入層13が有機材料13aに金属13bをドープした材料を用いて形成されている。これにより、実施形態1の場合と同様に、有機EL素子210に逆バイアスを印加して欠陥部3を有する場合には第1部分13cを低抵抗化させて潜在的な滅点を顕在化させることができ、滅点検出工程において、欠陥部3を有する有機EL素子を滅点として確実に検出することができる。
【0080】
このようにして、実施形態2に係る有機EL表示パネル200においても、潜在的に滅点となる可能性のある有機EL素子210を強制的に滅点化させて確実に検出することが出来るため、滅点を予めリペアすることにより、ユーザの使用中に滅点が発生して品質が劣化するという事態の発生を抑制することが出来る。
【0081】
≪実施形態3≫
実施形態1および2では、欠陥部はゴミ等の異物であった。しかし、潜在的な滅点を引き起こす原因となる欠陥部は、異物に限られない。例えば、画素電極を形成する際に、蒸着の不具合により画素電極表面に凹凸が生じ、突出の大きな部分が欠陥部となる場合がある。実施形態3においては、欠陥部3が画素電極表面の突出部である場合について説明する。
【0082】
[3−1.有機EL表示パネルの構成]
図7は、実施形態3に係る有機EL表示パネル300の概略構成を示す部分断面図である。
図7においては、
図2のA−A’線に相当する位置における断面図を示す。
【0083】
図7に示すように、有機EL表示パネル300は、実施形態1における有機EL表示パネル100と同様に、主な構成要素として基板11、陽極12、ホール注入層13、バンク14、有機発光層15、電子輸送層(機能層)16、陰極17、封止層18を備える。有機EL表示パネル300は、欠陥部303が異物ではなく陽極12の表面に形成された突出部である点、ホール注入層13の欠陥部303の上方に位置する部分(欠陥部303に対応する部分)が上方(Z方向側)に突出する態様で形成されている点、および有機発光層15が欠陥部303の上方に位置する部分にも上方(Z方向側)に突出する態様で形成されている点以外は、基本的な構成は実施形態1における有機EL表示パネル100と同じである。
【0084】
なお、ホール注入層13および有機発光層15は、欠陥部303の上方に位置する部分においては形成されていないか、もしくは他の部分と比べて非常に薄い状態である、所謂ピンホールが形成された状態となっている。
【0085】
また、
図7には、欠陥部303を有する有機EL素子310を示しているが、有機EL表示パネル300に形成された全ての有機EL素子310が欠陥部303を有しているというわけではない。有機EL表示パネル300に形成された複数の有機EL素子310のうちのいくつかのみが欠陥部303を有しており、欠陥部303を有する有機EL素子がゼロの場合もある。さらには、欠陥部303(突出部)と実施形態1および2における欠陥部3(異物)とが混在していてもよい。
【0086】
なお、実施形態3においては、陽極12が画素電極である。また、本実施形態においては、実施形態1と同様、TFTの極性はNチャネル型である。
【0087】
[3−2.欠陥検出方法およびリペア方法]
次に、実施形態3に係る有機EL表示パネル300に対して行われる欠陥検出方法について以下に説明する。
【0088】
図8は、本実施形態における欠陥検出方法の概要を示す断面図であって、
図7の破線Dで囲まれた部分の拡大断面図である。
【0089】
まず、有機EL素子310の陽極12と陰極17との間に、逆バイアス電圧を印加する。ここで、欠陥部303は陽極12の一部であり、ホール注入層13よりも導電性が高い。また、ホール注入層13,有機発光層15,電子輸送層16の欠陥部303の上方に位置する部分は、欠陥部303の上方に位置していない部分と比較して膜厚が薄く、導電性がより高くなっている。従って、実施形態1および2の場合と同様に、欠陥部303を有する有機EL素子310は、欠陥部303を有しない有機EL素子310よりも低い逆バイアス電圧で、欠陥部303の上方に位置する部分においてブレークダウンが発生し、電流が流れることとなる。そして、
図8(a)に示すように、電子輸送層16の第1部分16cに集中的に逆バイアス電流Ir1が流れる。第1部分16cに集中的に逆バイアス電流Ir1が流れることにより、第1部分16cが発熱して温度が上昇し、
図8(b)に示すように、第1部分16cにおいて有機材料16aが昇華して空隙部4が形成される。そして、実施形態1と同様に、昇華した有機材料16aにドープされていた金属16bが空隙部4の側壁部分に析出し、陽極12と有機発光層15との間の電流路となるチャネル部305が形成される。チャネル部305は、析出した金属から成り、高い導電性を有するため、チャネル部305が形成されることにより、第1部分16cの電気抵抗が低下し、定常的なショート状態となる。これにより、潜在的な滅点が顕在化される。
【0090】
上記空隙部4およびチャネル部205の形成に続いて、有機EL素子310の陽極12と陰極17との間に順バイアス電圧を印加すると、
図8(c)に示すように、順バイアス電流Ifは、チャネル部305を通じて専ら第1部分16cに集中的に流れる。これにより、当該有機EL素子310は非発光となり、滅点検出工程において滅点として検出される。
【0091】
その後、実施形態1および2と同様にして、滅点検出された有機EL素子310に対してリペア処理を行う。
【0092】
なお、実施形態3においても、空隙部4が形成されるまで逆バイアス電圧の印加を継続して行う。具体的には、例えば、逆バイアス電圧の印加は、10〜30[V]で10分間行う。
【0093】
また、実施形態3においても実施形態1,2と同様に、有機材料16aの昇華は、第1部分16c全体に亘って発生しなくてもよい。
【0094】
[3−3.実施形態3のまとめ]
以上説明したように、実施形態3に係る有機EL表示パネル300においても、欠陥部303の上方に形成される電子輸送層16を機能層として、電子輸送層16が有機材料16aに金属16bをドープした材料を用いて形成されている。これにより、実施形態1および2の場合と同様に、有機EL素子310に逆バイアスを印加して欠陥部303を有する場合には第1部分16cを低抵抗化させて潜在的な滅点を顕在化させることができ、滅点検出工程において、欠陥部303を有する有機EL素子を滅点として確実に検出することができる。
【0095】
このようにして、実施形態3に係る有機EL表示パネル300においても、潜在的に滅点となる可能性のある有機EL素子310を強制的に滅点化させて確実に検出することが出来るため、滅点を予めリペアすることにより、ユーザの使用中に滅点が発生して品質が劣化するという事態の発生を抑制することが出来る。
【0096】
[変形例]
以上、本発明の構成を実施形態1〜3に基づいて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限られない。例えば、以下のような変形例を実施することができる。
【0097】
(1)実施形態3においては、電子輸送層16が、有機材料に金属がドープされた材料から成る機能層であったが、これに限られない。例えば、電子輸送層16の代わりに、ホール注入層13を有機材料に金属がドープされた材料を用いて形成してもよい。この場合においても、ホール注入層13の欠陥部303の上方に位置する部分に逆バイアス電流Ir1が集中的に流れるため、当該部分において実施形態2における第1部分13cと同様に空隙部およびチャネル部が形成されて、低抵抗化させることができる。これにより、確実に滅点化させてリペア処理を施すことが出来る。
【0098】
(2)上記各実施形態においては、有機材料に金属がドープされた材料から成る機能層は、1層のみであったが、これに限られない。例えば、電子輸送層16とホール注入層13の両方を、有機材料に金属をドープした材料を用いて形成してもよい。
【0099】
このようにすると、例えば、実施形態3のように欠陥部が電極表面の突出部である場合、欠陥部の上方において有機発光層15を挟み込むようにチャネル部を形成することができ、より低抵抗化することができる。これにより、潜在的滅点欠陥をより確実に滅点化させて、リペア処理を施すことができる。
【0100】
(3)実施形態1および2においては、欠陥部が具体的には異物である場合について説明した。実施形態3においては、欠陥部が具体的には画素電極(実施形態3においては、陽極12)表面の突出部である場合について説明した。しかし、欠陥部の具体例については、これらに限られない。例えば、欠陥部が凹入部であってもよい。凹入部は、例えば、画素電極をエッチングする際に、レジストに塗布むらやピンホール等の不具合がある場合、それにより画素電極表面に形成される。
【0101】
凹入部が形成されると、その上に形成された層が、凹入部のエッジ部分において断絶したり膜厚が極度に薄くなったりして、リーク電流が発生する原因となる。
【0102】
このような場合においても、有機材料に金属をドープした材料を用いて電子輸送層16またはホール注入層13(またはその両方)を形成することにより、上記各実施形態および各変形例と同様の効果を得ることができる。即ち、欠陥部(この場合、凹入部)を有し、潜在的に滅点となる可能性のある有機EL素子を強制的に滅点化させて確実に検出することが出来る。そして、滅点を予めリペアすることにより、ユーザの使用中に滅点が発生して品質が劣化するという事態の発生を抑制することが出来る。
【0103】
(4)本発明の一態様に係る有機EL表示パネルは、ホール輸送層、電子注入層、パッシベーション膜、透明導電層などの他の層を更に含む構成とすることもできる。
【0104】
(5)また、各実施形態に係る有機EL表示パネルにおいて、ホール注入層13および電子輸送層16のうち、機能層として機能していない方の層を欠く構成とすることもできる。