(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
各々が、供給される電流に応じて発光する発光素子と、輝度信号のレベルに応じた駆動電流を前記発光素子に供給する駆動トランジスタと、を有する複数の発光画素が配列されて構成される表示部と、
前記表示部に供給される駆動電圧を生成する電圧源と、
前記複数の発光画素及び前記電圧源に接続され、前記電圧源から前記各発光画素に前記駆動電圧を供給する電源線と、
前記複数の発光画素のそれぞれの発光輝度を示すデータである映像データを用いて、前記電源線において前記電圧源から前記各発光画素までに生じる電圧降下量を推定する電圧降下量推定部と、
前記駆動トランジスタが線形領域と飽和領域との双方で動作する場合に、前記発光素子が発光する輝度と前記輝度信号のレベルとの間の関係を表す補正情報を記憶している第1記憶部と、
前記駆動トランジスタが飽和領域で動作する場合の、前記発光素子が発光する輝度と前記輝度信号のレベルとの間の関係を表す基準特性情報を記憶している第2記憶部と、
前記基準特性情報に基づいて前記映像データで示される発光輝度に対応する前記輝度信号のレベルである基準レベルを、推定された前記電圧降下量に応じて前記補正情報に基づいて補正することにより補正されたレベルで前記輝度信号を生成する輝度信号補正部と、を備える、
表示装置。
前記第1記憶部は、前記駆動トランジスタが線形領域と飽和領域との双方で動作する場合に前記発光素子を所定の輝度で発光させるための前記輝度信号のレベルと、前記駆動トランジスタが飽和領域で動作する場合に前記発光素子を前記所定の輝度で発光させるための前記輝度信号のレベルとの対応を表す情報を、前記補正情報として記憶しており、
前記輝度信号補正部は、前記補正情報によって前記基準レベルに対応する前記輝度信号のレベルで、前記輝度信号を生成する、
請求項1に記載の表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本発明の基礎となった知見)
背景技術の欄において記載した表示装置に関し、特許文献2(国際公開第2012/001991号)は、次の問題を指摘している。
【0012】
特許文献1に記載の表示装置では、有機EL素子を駆動する駆動トランジスタを飽和領域で動作させるために、ディスプレイに供給される駆動電圧には、当該駆動電圧を伝達するための電源線にて生じ得る電圧降下量を補うためのマージンが上乗せされている必要がある。そのようなマージンを固定的に確保した場合、つまり電源線で生じ得る最大の電圧降下量に対応するマージンを常に駆動電圧に上乗せした場合、一般的な自然画に対して無駄な電力が消費されるという問題がある。
【0013】
この問題に対し、特許文献2に記載の表示装置は、複数の発光画素のそれぞれの発光輝度を示す映像データから電源線で生じる電圧降下量の分布を前記発光画素毎に推定し、推定した前記発光画素毎の電圧降下量の分布に基づいて前記電源線に供給する駆動電圧を調整する。これにより、駆動電圧に上乗せされるマージンが実際に表示される映像データに適応して縮小できるので、表示装置の消費電力をより高度に抑制する効果が得られる。
【0014】
特許文献1及び特許文献2に開示されるいずれの技術も、有機EL素子の駆動電流を供給する駆動トランジスタを飽和領域で、いわゆる定電流動作させている。これにより、駆動トランジスタのソースドレイン間電圧の当該駆動電流に与える影響が抑制されるので、駆動トランジスタのゲートソース間電圧のみに依存して当該駆動電流が正確に制御される。つまり、有機ELを所望の輝度で発光させることができる。
【0015】
駆動トランジスタが線形領域で動作できれば電源線に供給する駆動電圧をさらに低減できるので、表示装置の消費電力を抑制するために有用と考えられる。しかしながら、特許文献1及び特許文献2の技術では、駆動トランジスタを線形領域で動作させると、駆動トランジスタのソースドレイン間電圧が有機EL素子の駆動電流に与える影響が顕在化するため、発光素子を所望の輝度で正確に発光させることができなくなる懸念がある。
【0016】
このような問題を解決するために、開示される1つの態様に係る表示装置は、各々が、供給される電流に応じて発光する発光素子と、輝度信号のレベルに応じた駆動電流を前記発光素子に供給する駆動トランジスタと、を有する複数の発光画素が配列されて構成される表示部と、前記表示部に供給される駆動電圧を生成する電圧源と、前記複数の発光画素及び前記電圧源に接続され、前記電圧源から前記各発光画素に前記駆動電圧を供給する電源線と、前記複数の発光画素のそれぞれの発光輝度を示すデータである映像データを用いて、前記電源線において前記電圧源から前記各発光画素までに生じる電圧降下量を推定する電圧降下量推定部と、前記駆動トランジスタが線形領域と飽和領域との双方で動作する場合に、前記発光素子が発光する輝度と前記輝度信号のレベルとの間の関係を表す補正情報を記憶している第1記憶部と、前記駆動トランジスタが飽和領域で動作する場合の、前記発光素子が発光する輝度と前記輝度信号のレベルとの間の関係を表す基準特性情報を記憶している第2記憶部と、前記基準特性情報に基づいて前記映像データで示される発光輝度に対応する前記輝度信号のレベルである基準レベルを、推定された前記電圧降下量に応じて前記補正情報に基づいて補正することにより補正されたレベルで前記輝度信号を生成する輝度信号補正部と、を備える。
【0017】
これにより、前記駆動トランジスタが線形領域で動作する場合でも、レベルが補正された輝度信号により模擬的に、飽和領域での動作特性を得ることができる。その結果、各発光画素に供給するための駆動電圧を前記駆動トランジスタが線形領域で動作する大きさまで低減し、かつ発光素子を所望の輝度で正確に発光させることが可能になるので、消費電力の低減効果が高い表示装置が得られる。
【0018】
また、例えば、前記第1記憶部は、異なる複数の電圧降下量のそれぞれに対応して前記補正情報を記憶しており、前記輝度信号補正部は、前記電圧降下量推定部で推定された電圧降下量に対応する補正情報を用いて前記基準レベルを補正することにより、前記輝度信号を生成してもよい。
【0019】
これにより、電圧降下量に応じて異なる特性を、高い精度で補正できる。
【0020】
また、例えば、前記第1記憶部は、前記駆動トランジスタが線形領域と飽和領域との双方で動作する場合に前記発光素子を所定の輝度で発光させるための前記輝度信号のレベルと、前記駆動トランジスタが飽和領域で動作する場合に前記発光素子を前記所定の輝度で発光させるための前記輝度信号のレベルとの対応を表す情報を、前記補正情報として記憶しており、前記輝度信号補正部は、前記補正情報によって前記基準レベルに対応する前記輝度信号のレベルで、前記輝度信号を生成してもよい。
【0021】
これにより、前記駆動トランジスタが線形領域で動作するか飽和領域で動作するかに依らず、前記発光素子を同一の輝度で発光させることができる。
【0022】
また、例えば、開示される1つの態様に係る駆動方法は、表示装置の駆動方法であって、前記表示装置は、各々が、供給される電流に応じて発光する発光素子と、輝度信号のレベルに応じた駆動電流を前記発光素子に供給する駆動トランジスタと、を含む複数の発光画素が配列されて構成される表示部と、前記表示部に供給される駆動電圧を生成する電圧源と、前記複数の発光画素及び前記電圧源に接続され、前記電圧源から前記各発光画素に前記駆動電圧を供給する電源線と、電圧降下量推定部と、前記駆動トランジスタが線形領域と飽和領域との双方で動作する場合に、前記発光素子が発光する輝度と前記輝度信号のレベルとの間の関係を表す補正情報を記憶している第1記憶部と、前記駆動トランジスタが飽和領域で動作する場合に、前記発光素子が発光する輝度と前記輝度信号のレベルとの間の関係を表す基準特性情報を記憶している第2記憶部と、輝度信号補正部と、を備え、前記駆動方法は、前記電圧降下量推定部にて、前記複数の発光画素のそれぞれの発光輝度を示すデータである映像データを用いて、前記電源線において前記電圧源から前記各発光画素までに生じる電圧降下量を推定し、前記輝度信号補正部にて、前記基準特性情報に基づいて前記映像データで示される発光輝度に対応する前記輝度信号のレベルを、推定された前記電圧降下量に応じて前記補正情報に基づいて補正することにより、前記輝度信号を生成する。
【0023】
これにより、前記駆動トランジスタが線形領域で動作する場合でも、レベルが補正された輝度信号により模擬的に、飽和領域での動作特性が得られる。その結果、各発光画素に供給するための駆動電圧を前記駆動トランジスタが線形領域で動作する大きさまで低減することが可能になるので、消費電力の低減効果が高い表示装置の駆動方法が得られる。
【0024】
なお、これらの全般的または具体的な態様は、システム、方法、または集積回路で実現されてもよく、システム、方法、または集積回路の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0025】
以下、開示される1つの態様に係る表示装置及びその駆動方法について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0026】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0027】
(実施の形態)
図1は、実施の形態における表示装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【0028】
図1に示される表示装置100は、複数の発光画素のそれぞれの発光輝度を示すデータである映像データに従って映像を表示する装置であり、表示部110と、電源線112、113と、データ線ドライバ120と、データ線122と、書込走査ドライバ130と、走査線123と、コントローラ140と、電圧降下量推定部150と、輝度信号補正部160と、電圧源170と、第1記憶部181と、第2記憶部182と、を備える。
【0029】
表示部110は、各々が、供給される電流に応じて発光する発光素子と、外部から与えられる輝度信号のレベルに応じた駆動電流を前記発光素子に供給する駆動トランジスタと、を有する複数の発光画素111が配列されて構成される。複数の発光画素111は、行列状に配列されてもよい。
【0030】
電圧源170は、表示部110に供給される駆動電圧を生成する。
【0031】
電源線112、113は、発光画素111及び電圧源170に接続され、電圧源170から表示部110の各発光画素111に前記駆動電圧を供給する。
【0032】
データ線122は列ごとに設けられ、同じ列に位置する複数の発光画素111は、当該列に設けられるデータ線122を介してデータ線ドライバ120に接続される。
【0033】
走査線123は行ごとに設けられ、同じ行に位置する複数の発光画素111は、当該行に設けられる走査線123を介して書込走査ドライバ130に接続される。
【0034】
電圧降下量推定部150は、前記映像データを用いて、電源線112、113の少なくとも一方において電圧源170から各発光画素111までに生じる電圧降下量を推定する。
【0035】
第1記憶部181は、発光画素111において前記駆動トランジスタが線形領域で動作する場合の、前記輝度信号のレベルと前記発光素子の輝度との間の関係を表す補正情報を記憶している。
【0036】
第2記憶部182は、発光画素111において前記駆動トランジスタが飽和領域で動作する場合の、前記輝度信号のレベルと前記発光素子の輝度との間の関係を表す基準特性情報を記憶している。
【0037】
輝度信号補正部160は、前記基準特性情報に基づいて前記映像データで示される発光輝度に対応する前記輝度信号のレベルである基準レベルを、推定された前記電圧降下量に応じて前記補正情報に基づいて補正することにより、補正されたレベルで各列の輝度信号を生成する。
【0038】
データ線ドライバ120は、生成された輝度信号を、対応列のデータ線122に出力する。
【0039】
書込走査ドライバ130は、行ごとの走査線123に、順次、走査信号を出力する。
【0040】
コントローラ140は、データ線ドライバ120及び書込走査ドライバ130のそれぞれに、駆動タイミングを指示する。
【0041】
このように構成された表示装置100において、発光画素111は、電源線112、113から供給される駆動電圧を電源として用いて、データ線ドライバ120から供給される前記輝度信号のレベルに応じた輝度で発光する。これにより、表示部110には、映像データに従って映像が表示される。
【0042】
図2は、電源線112の等価回路の一例である。
【0043】
図2では、列方向に隣接する発光画素111と電源線112との接続点の間の電源線112の抵抗成分をRahで表し、行方向に隣接する発光画素111と電源線112との接続点の間の電源線112の抵抗成分をRavで表している。電源線112の外周部には、電圧源170から駆動電圧が印加される。このような電源線112は、例えば、1920列、1080行の大きさのマトリクス状に発光画素111を配列した表示部110に設けられ、電圧源170から印加される駆動電圧を各発光画素111に供給することができる。以下では、説明の便宜上、列番号をhで表し、行番号をvで表す。
【0044】
駆動電圧は、各発光画素111が発光するための電源であり、例えば、陽極電圧と、当該陽極電圧よりも低い陰極電圧とで構成されてもよい。例えば、陽極電圧が、電圧源170から電源線112を介して各発光画素111に供給され、また、陰極電圧が、電圧源170から電源線112と同様の等価回路で表される電源線113を介して各発光画素111に供給されてもよい。陰極電圧は、表示装置100の共通の接地電圧であってもよい。電源線112、113は、具体的に、導電材料をパターニングして形成された配線網であってもよく、透明な導電材料で構成されたベタ膜であってもよい。
【0045】
図3は、表示部110の構成を模式的に示す斜視図である。
【0046】
図3に示されるように、表示部110は、複数の発光画素111と、電源線112、113と、を有する。h列v行に位置する発光画素111について、発光画素111と電源線112との接続点の電圧をva(h,v)で表し、発光画素111と電源線113との接続点の電圧をvc(h,v)で表し、発光画素111に流れる電流をi(h,v)で表す。電源線113もまた、電源線112と同様に、隣接する発光画素111と電源線113との接続点の間の抵抗成分Rch、Rcvを用いた等価回路によって記述される。
【0047】
各発光画素111は、電源線112、113から供給される駆動電圧を電源として用いて、流れる電流量に応じた輝度で発光する。
【0048】
図4は、発光画素111の構成の一例を示す回路図である。
【0049】
図4に示されるように、発光画素111は、発光素子121と、選択トランジスタ124と、駆動トランジスタ125と、保持容量126と、を有している。
【0050】
発光素子121は、駆動トランジスタ125から供給される電流に応じて発光する素子であり、例えば、有機EL素子で構成されてもよい。
【0051】
選択トランジスタ124は、書込走査ドライバ130から走査線123を介して供給される走査信号に応じて導通することにより、データ線ドライバ120からデータ線122を介して供給される輝度信号を保持容量126に記憶させる素子であり、例えば、薄膜トランジスタで構成されてもよい。
【0052】
駆動トランジスタ125は、保持容量126に記憶されている輝度信号のレベルに応じた駆動電流を発光素子121に供給する素子であり、例えば、薄膜トランジスタで構成されてもよい。
【0053】
なお、
図4に示される発光画素111の構成は一例であって、必須ではない。発光画素111は、発光素子121と駆動トランジスタ125とが直列に接続されてなる回路を有し、当該回路の両端に電源線112、113から駆動電圧を供給され、当該駆動電圧を電源として用いて発光する限り、任意に変形されてもよい。例えば、選択トランジスタ124及び駆動トランジスタ125は、それぞれ走査信号及び輝度信号の極性に応じてP型トランジスタ及びN型トランジスタの何れで構成されてもよい。また、例えば、発光素子121は、電源線112、113から供給される駆動電圧に応じて
図4に示される方向とは逆に接続されてもよい。
【0054】
図5は、発光画素111の動作点を説明する図であり、発光素子121と駆動トランジスタ125とのそれぞれの電流電圧特性が示されている。以下では説明の簡明のため、輝度信号と駆動トランジスタ125のゲートソース間電圧とが等しいとする。
【0055】
図5には、駆動トランジスタ125の電流電圧特性として、異なる複数のゲートソース間電圧のそれぞれについて、ドレイン電流とソースドレイン間電圧との間の関係が示されている。駆動トランジスタ125は、ドレイン電流がソースドレイン間電圧及びソースゲート間電圧に依存する線形領域、及びドレイン電流が実質的にソースゲート間電圧のみに依存する飽和領域の双方で動作し得る。
【0056】
また、発光素子121の電流電圧特性として、発光画素111に印加される異なる複数の駆動電圧のそれぞれについて、アノードカソード間電流と駆動電圧から発光素子121のアノードカソード間電圧を減じた電圧との間の関係が示されている。ここで、複数の駆動電圧は、電源線112、113において電圧源170から発光画素111までに生じる電圧降下量に対応付けて表されている。
【0057】
発光画素111は、発光画素111に印加された駆動電圧に対応する発光素子121の特性曲線と発光画素111に印加された輝度信号に対応する駆動トランジスタ125の特性曲線との交点である動作点で動作する。駆動電圧が低いほど、つまり、電源線112、113で生じる電圧降下の量が大きいほど、発光画素111の動作点は、駆動トランジスタ125の線形領域に入りやすくなる。
【0058】
図6は、発光画素111の発光特性を説明する図であり、発光画素111の発光輝度と輝度信号との間の関係が示されている。
【0059】
図6は、発光画素111に等しい輝度信号を印加したとき、発光画素111の動作点が駆動トランジスタ125の線形領域にある場合と、発光画素111の動作点が駆動トランジスタ125の飽和領域にある場合とで、発光輝度が一致しないことを表している。
【0060】
従来の構成では、そのような発光輝度の不統一を回避するために、電源線112、113で生じ得る電圧降下量をあらかじめ上乗せした駆動電圧を電圧源170で生成して、電源線112、113に供給する。それにより、発光画素111の動作点が駆動トランジスタ125の線形領域に入らないようにしている。
【0061】
前述したように、駆動トランジスタ125が線形領域で動作できれば、電源線112、113に供給する駆動電圧をさらに低減できるので、表示装置100の消費電力を抑制するために有用である。
【0062】
そこで、表示装置100では、発光画素111の動作点が駆動トランジスタ125の線形領域及び飽和領域の何れにある場合でも、同じ発光輝度を表す映像データに応じて同じ発光輝度で発光画素111が発光するように、輝度信号のレベルを補正する。
【0063】
図7は、輝度信号の補正処理の考え方を説明する図である。
【0064】
図7において、発光画素111を所望の輝度で発光させるための輝度信号のレベルは、駆動トランジスタ125が飽和領域で動作する場合には基準レベル(A点)であり、駆動トランジスタ125が線形領域で動作する場合には補正レベル(B点)である。ここで、所望の輝度とは、例えば映像データによって表される輝度である。
【0065】
すなわち、輝度信号のレベルを補正することにより、駆動トランジスタ125が線形領域及び飽和領域の何れで動作する場合でも、同じ発光輝度で発光画素111を発光させることができる。
【0066】
このような補正は、具体的に、駆動トランジスタ125が飽和領域で動作する場合の輝度信号のレベルを、駆動電圧の電圧降下量に応じて駆動トランジスタ125が線形領域で動作する場合の発光画素の発光特性に基づいて、補正することにより行ってもよい。
【0067】
次に、上述のように構成された表示装置100の動作について説明する。
【0068】
図8は、表示装置100の動作の一例を示すフローチャートである。
【0069】
図8のフローチャートは、例えば、映像データによって表される映像を構成するピクチャごとに実行されてもよい。
【0070】
ステップS11において、電圧降下量推定部150は、映像データを用いて、駆動電圧の各発光画素111での電圧降下量を推定する。ここで、駆動電圧の各発光画素111での電圧降下量とは、例えば、電源線112において電圧源170から各発光画素111までに生じる電圧降下量である。従来、このような電圧降下量を推定するための方法が知られている(例えば、特許文献2)。
【0071】
以下では、特許文献2の開示に従って、電源線112と複数の発光画素111との接続点における電圧分布を計算することにより、電源線112における電圧降下量を推定する方法について説明する。
【0072】
電圧降下量推定部150は、画素の輝度値と画素電流との間の関係を表す変換式又は変換テーブルを用いて、映像データによって表される1つのピクチャの各画素の輝度値から、各発光画素111に流すべき電流量を特定する。
【0073】
そして、電圧降下量推定部150は、特定された各発光画素111の電流量から、発光画素111と電源線112との接続点における電圧の分布を、次のようにして計算する。
【0074】
図2及び
図3の表記法を用いて、h列v行に位置する発光画素111の画素電流i(h,v)は、式1で表される。
【0075】
Rah×{va(h−1,v)−va(h,v)}+
Rah×{va(h+1,v)−va(h,v)}+
Rav×{va(h,v−1)−va(h,v)}+
Rav×{va(h,v+1)−va(h,v)}=i(h,v)
・・・(式1)
【0076】
ここで、発光画素111が、例えば、1920列、1080行のマトリクス状に配列されている場合、hは1から1920までの整数であり、vは1から1080までの整数である。
【0077】
va(0,v)、va(1921,v)、va(h,0)、及びva(h,1081)は、電源線112の外周部の電圧であり、電圧源170から電源線112の外周部までの電圧降下量を0で近似することにより、電圧源170で生成される駆動電圧と等しい定数で表す。
【0078】
Rah、Ravは、隣接する発光画素111と電源線112との接続点の間の抵抗成分であり、電源線112の設計値又は実測値に基づいて定められる定数である。
【0079】
これらの定数は、例えば、電圧降下量推定部150にあらかじめ記憶され、電圧降下量を推定する際に参照されてもよい。
【0080】
式1を各発光画素111について立てて、変数va(h,v)に関する連立方程式として解くことによって、各発光画素111と電源線112との接続点における電圧va(h,v)が求まる。そして、電圧源170から出力される駆動電圧とva(h,v)との差分により、電源線112において電圧源170から各発光画素111までに生じる電圧降下量が求まる。
【0081】
電圧降下量推定部150は、同様の考え方で、電源線113において電圧源170から各発光画素111までに生じる電圧降下量を求めることができる。
【0082】
このようにして、電圧降下量推定部150は、電源線112、113の何れか一方又は両方において電圧源170から各発光画素111までに生じる電圧降下量を推定する。
【0083】
ステップS12において、輝度信号補正部160は、第2記憶部182に記憶されている基準特性情報によって映像データで示される輝度値に対応付けられる輝度信号のレベルを、各発光画素111について特定する。
【0084】
基準特性情報は、発光画素111において駆動トランジスタ125が飽和領域で動作する場合の、発光素子121の発光輝度と輝度信号のレベルとの間の関係を表す情報である。
【0085】
図9は、基準特性情報の一例を示す図である。基準特性情報の具体的な表現形式は限定されないが、基準特性情報は、一例として
図9に示されるように、映像データによって示される画素の輝度値と、輝度信号の電圧値との間の関係を表す変換テーブルであってもよい。輝度信号のレベルは、実際の電圧値でも、電圧値を表す符号でもよく、また、基準特性情報は、変換式で表されてもよい。
【0086】
このような基準特性情報を用いて、輝度信号補正部160は、映像データで示される発光輝度に対応付けられる輝度信号のレベルを、発光画素ごとに特定する。
【0087】
なお、基準特性情報は、例えば、全ての発光輝度において駆動トランジスタ125が飽和領域で動作する程度に大きな駆動電圧を印加しながら、既定の輝度値を示す映像データに従って各発光画素111を発光させ、発光輝度を実測することにより取得してもよい。各発光画素111の発光輝度は、例えば、表示部110をカメラで撮影することにより測定されてもよい。
【0088】
ステップS13において、輝度信号補正部160は、特定された輝度信号のレベルを補正情報に基づいて、発光画素ごとに補正する。
【0089】
補正情報は、発光画素111において駆動トランジスタ125が線形領域と飽和領域との双方で動作する場合の、発光素子121の発光輝度と輝度信号のレベルとの間の関係を表す情報である。
【0090】
図10は、補正情報の一例を示す図である。補正情報の具体的な表現形式は限定されないが、補正情報は、一例として
図10に示されるように、駆動トランジスタ125が飽和領域で動作する場合と、線形領域と飽和領域との双方で動作する場合とで、発光素子121が互いに等しい輝度で発光するための、輝度信号の基準レベルと補正レベルとの間の関係を示す情報であってもよい。発光素子121の発光輝度と基準レベルとの間の関係は、前述の基準特性情報によって対応付けられているから、このような補正情報によって、駆動トランジスタ125が線形領域で動作する場合の、発光素子121の発光輝度と輝度信号の補正レベルとの間の関係が表される。
【0091】
なお、補正情報は、より直接的に、映像データによって示される画素の輝度値と、輝度信号の補正レベルとの間の関係を表してもよい。補正情報は、
図10に示されるように、異なる複数の電圧降下量のそれぞれに対応して設けられてもよい。補正情報は、
図11に示されるように、変換テーブルで表されてもよい。
【0092】
輝度信号補正部160は、映像データによって示される画素の輝度値に対応する輝度信号の基準レベルを、電圧降下量推定部150で推定された電圧降下量に応じて補正情報に基づいて補正する。
【0093】
ステップS14において、輝度信号補正部160は、補正レベルで輝度信号を生成する。
【0094】
ステップS15において、各発光画素111は、補正レベルの輝度信号に従って発光する。
【0095】
その結果、
図12に示されるように、駆動トランジスタ125が実際には線形領域で動作している場合であっても、レベルが補正された輝度信号によって模擬的に、飽和領域で動作している場合の発光特性が得られる。
【0096】
なお、このような輝度信号の補正は、推定された電圧降下量に応じて、例えば実質的に0でない電圧降下量が推定された場合にのみ、行ってもよい。実質的に0である電圧降下量が推定された場合は、このような輝度信号の補正を行わず、基準レベルで輝度信号を生成してもよい。また、複数の補正情報のなかから、推定された電圧降下量に対応する補正情報を用いて行ってもよい。
【0097】
図13は、表示装置100を用いて構成されるテレビジョン受信機の一例を示す外観図である。このようなテレビジョン受信機では、表示装置100を用いることによって、優れた消費電力の低減効果が得られる。