(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の薄膜半導体装置における前記酸化アルミニウムを含む膜の上方に、前記引き出し電極と電気的に接続された下部電極、有機発光材料を含む発光層、及び上部電極を含む有機EL素子が設けられている、
有機EL表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<<本発明の一態様の概要>>
本発明の一態様に係る薄膜半導体装置は、酸化アルミニウムを含む膜と、前記基板と前記酸化アルミニウムを含む膜との間に設けられた酸化物半導体層と、を備え、前記酸化アルミニウムを含む膜には、前記酸化物半導体層と電気的に接続される引き出し電極が埋め込まれた貫通孔が少なくとも1つ設けられ、酸化アルミニウムで構成され、前記酸化アルミニウムを含む膜の膜密度は2.80g/cm
3以上3.25g/cm
3以下である、ことを特徴とする。
【0015】
また、上記薄膜半導体装置において、前記酸化アルミニウムを含む膜の膜密度は2.85g/cm
3以上2.95g/cm
3以下であってもよい。
【0016】
また、上記薄膜半導体装置における前記酸化アルミニウムを含む膜に含まれる酸化アルミニウムAlOxにおいて、1.5<x<2.0であってもよい。
【0017】
また、上記薄膜半導体装置における前記酸化アルミニウムを含む膜に含まれる酸化アルミニウムAlOxにおいて、1.79≦x≦1.85であってもよい。
【0018】
また、上記薄膜半導体装置において、前記酸化アルミニウムを含む膜を構成する酸化アルミニウムは、アモルファス構造であってもよい。
【0019】
また、上記薄膜半導体装置において、前記酸化アルミニウムを含む膜の屈折率は、1.58以上1.66以下であってもよい。
【0020】
また、上記薄膜半導体装置において、前記酸化アルミニウムを含む膜の膜厚は、3nm以上30nm以下であってもよい。
【0021】
また、上記薄膜半導体装置において、前記酸化アルミニウムを含む膜は、単層構造であってもよい。
【0022】
本発明の一態様に係る有機EL表示装置は、上記薄膜半導体装置における前記酸化アルミニウムを含む膜の上方に、前記引き出し電極と電気的に接続された下部電極、有機発光材料を含む発光層、及び上部電極を含む有機EL素子が設けられている、ことを特徴とする。
【0023】
本発明の一態様に係る薄膜半導体装置の製造方法は、基板を準備する工程と、前記基板の上方に酸化物半導体層を形成する工程と、前記酸化物半導体層の上方に、酸化アルミニウムを含む膜を形成する工程と、前記酸化アルミニウムを含む膜に、少なくとも1つの貫通孔を形成する工程と、前記酸化アルミニウムを含む膜に設けられた貫通孔に、前記酸化物半導体層と電気的に接続される引き出し電極を埋め込む工程と、を含み、前記酸化アルミニウムを含む膜の膜密度は2.80g/cm
3以上3.25g/cm
3以下である、ことを特徴とする。
【0024】
本発明の一態様に係る有機EL表示装置の製造方法は、基板を準備する工程と、前記基板の上方に酸化物半導体層を形成する工程と、前記酸化物半導体層の上方に、酸化アルミニウムを含む膜を形成する工程と、前記酸化アルミニウムを含む膜に、少なくとも1つの貫通孔を形成する工程と、前記酸化アルミニウムを含む膜に設けられた貫通孔に、前記酸化物半導体層と電気的に接続される引き出し電極を埋め込む工程と、前記酸化アルミニウムを含む膜の上方に、前記引き出し電極と電気的に接続された下部電極、有機発光材料を含む発光層、及び上部電極を含む有機EL素子を形成する工程と、を含み、前記酸化アルミニウムを含む膜の膜密度は2.80g/cm
3以上3.25g/cm
3以下である、ことを特徴とする。
<<実施の形態1>>
まず、本発明の実施の形態1に係る薄膜半導体装置10及び薄膜半導体装置10の製造方法について、
図1〜
図3を用いて説明する。なお、ここでは、薄膜半導体装置10としてTFTを例に挙げて説明する。
<薄膜半導体装置10の構成>
図1は、本発明の実施の形態1に係る薄膜半導体装置10の構成を模式的に示した断面図である。
【0025】
薄膜半導体装置10は、基板1と、ゲート電極2と、ゲート絶縁膜3と、酸化物半導体層4と、チャネル保護層5と、ソース電極6sと、ドレイン電極6dと、保護層7と、引き出し電極8と、を備える。薄膜半導体装置10は、チャネル領域の下方にゲート電極2が設けられたボトムゲート型TFTである。また、薄膜半導体装置10は、ボトムゲート型TFTのうち、半導体層上にチャネル保護層が形成されたチャネル保護型である。薄膜半導体装置10は、チャネル保護型であるため、チャネル領域を含む半導体層を薄く成膜することができる。そのため、薄膜半導体装置10では、半導体層による寄生抵抗値を低減することができ、オン特性を向上させることができる。
以下、本実施の形態に係る薄膜半導体装置10の各構成要素について詳述する。
<薄膜半導体装置10の各構成要素>
(基板1)
基板1は、例えば、石英ガラス、無アルカリガラス、高耐熱性ガラス等のガラス材料で構成されるガラス基板である。なお、ガラス基板の中に含まれるナトリウムやリン等の不純物が酸化物半導体層4に侵入することを防止するために、基板1上にシリコン窒化膜(SiN
x)、酸化シリコン(SiO
y)又はシリコン酸窒化膜(SiO
yN
x)等からなるアンダーコート層を形成してもよい。アンダーコート層の膜厚は、例えば、100nm〜2000nm程度とする。
(ゲート電極2)
ゲート電極2は、基板1上に形成される。ゲート電極2は、導電性材料及びその合金等を用いた単層構造又は多層構造とすることができ、例えば、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、タングステン(W)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、及びモリブデンタングステン(MoW)等により構成することができる。また、ゲート電極2は、酸化インジウム錫(ITO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)及びガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)等の透明導電膜から構成されてもよい。ゲート電極2の膜厚は、例えば、20nm〜500nm程度とすることができる。
(ゲート絶縁膜3)
ゲート絶縁膜3は、ゲート電極2上に形成される。薄膜半導体装置10では、ゲート絶縁膜3は、ゲート電極2を覆うように基板1上の全面に形成される。ゲート絶縁膜3は、例えば、酸化シリコン(SiO
y)、窒化シリコン(SiN
x)、シリコン酸窒化膜(SiO
yN
x)、酸化アルミニウム(AlO
z)、酸化タンタル(TaO
w)、酸化ハフニウム(HfO
x)を用いた単層構造又はこれらの積層構造等により構成することができる。積層構造により構成する場合、ゲート絶縁膜3は、例えば、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜との二層構造とすることができる。
【0026】
薄膜半導体装置10では、酸化物半導体層4を用いているので、ゲート絶縁膜3は酸化シリコンを含むことが好ましい。以下、これについて説明する。TFTにおける良好な閾値電圧特性を維持するためには、酸化物半導体層4とゲート絶縁膜3との界面の状態を良好なものにすることが好ましい。酸化シリコンは、酸化物半導体層4と同じく酸化物であるため、酸化シリコンを含むゲート絶縁膜を用いれば、酸化物半導体層4とゲート絶縁膜3との界面状態を良好なものにすることができる。ゲート絶縁膜3の膜厚は、例えば、50nm〜300nmとすることができる。
(酸化物半導体層4)
酸化物半導体層4は、ゲート絶縁膜3上に形成される半導体膜であって、チャネル領域を有する。酸化物半導体層4は、例えば、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)のうち少なくとも1種を含む酸化物半導体によって構成される。このような酸化物半導体としては、例えば、アモルファス酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO、InGaZnO)が挙げられる。酸化物半導体層4の膜厚は、例えば、20nm〜200nm程度とすることができる。
(チャネル保護層5)
チャネル保護層5は、酸化物半導体層4のチャネル領域を保護する保護膜であって、酸化物半導体層4を覆うように全面に形成される。チャネル保護層5は、ソース電極6s及びドレイン電極6dを形成するときのエッチング処理時に、酸化物半導体層4のチャネル領域がエッチングされることを防止する目的で設けられるチャネルエッチングストッパ(CES)層として機能する。仮に酸化物半導体層にエッチングダメージが入ると、酸化物半導体層の表面に酸素欠損した層が形成される。この酸素欠損した層のキャリア濃度が非常に高いため、エッチングダメージが入った酸化物半導体層は導電化される。このような状態のままでは、TFTはトランジスタとして動作しない。そのため、酸化物半導体を用いたTFTにおいては、酸化物半導体層のチャネル領域にエッチングダメージの入らない構造にすることが有効となる。
【0027】
チャネル保護層5としては、例えば、酸化シリコン、酸窒化シリコン、酸化アルミニウム及び窒化シリコンを用いた単層構造、又はこれらの積層構造を用いる。チャネル保護層5の膜厚は、例えば、50nm〜500nmとすることができる。チャネル保護層5の膜厚の下限は、チャネルエッチングによるマージン及びチャネル保護層5中の固定電荷の影響を抑制することから決まる。また、チャネル保護層5の膜厚保の上限は、段差の増大に伴う製造プロセスの信頼性低下を抑制することから決まる。なお、チャネル保護層5は、シリコン、酸素及びカーボンを含む有機材料を主として含有する有機材料層を用いてもよい。
(ソース電極6s、ドレイン電極6d)
ソース電極6s及びドレイン電極6dは、それぞれ酸化物半導体層4のチャネル領域の上方にチャネル保護層5を介して形成される。また、ソース電極6s及びドレイン電極6dは、間隔をあけて対向配置されることにより、酸化物半導体層4と電気的に接続されている。すなわち、ゲート電極2に電圧が印加されると、ソース電極6s及びドレイン電極6dから酸化物半導体層4にキャリアが移動する。
【0028】
薄膜半導体装置10において、ソース電極6s及びドレイン電極6dは、それぞれ導電性材料及び合金等を用いた単層構造又は多層構造であり、例えば、アルミニウム、モリブデン、タングステン、銅、チタン、マンガン(Mn)及びクロム等の材料により構成される。薄膜半導体装置10では、ソース電極6s及びドレイン電極6dは、Mo/Cu/CuMnの三層構造によって形成されている。ソース電極6s及びドレイン電極6dの膜厚は、例えば、100nm〜500nm程度とすることができる。
(保護層7)
保護層7は、ソース電極6s及びドレイン電極6d上に形成される。薄膜半導体装置10では、保護層7は、ソース電極6s及びドレイン電極6dを覆うように全面に形成される。保護層7の具体的な構成は、第一保護層7a、第二保護層7b、及び第三保護層7cの三層構造としている。第一保護層7aは、ソース電極6s及びドレイン電極6dとの密着性がよく、膜中に水素の含有量が少ない膜が好ましい。そのため、第一保護層7aは、例えば、酸化シリコン膜により構成される。第二保護層7bは、酸化物半導体層4への水素の侵入に対してバリア性を有する膜が好ましい。そのため、第二保護層7bは、例えば、酸化アルミニウム膜(酸化アルミニウムを含む膜)により構成される。第二保護層7bとして用いる酸化アルミニウム膜として、好ましい物性については、後述する。第三保護層7cは、水分等のバリア性を有し、引き出し電極8を埋め込むための貫通孔を形成する加工性を確保できる膜が好ましい。そのため、第三保護層7cは、例えば、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、酸窒化シリコン膜を用いた単層構造又はこれらの積層構造等によって構成することができる。保護層7の合計膜厚は、例えば、200nm〜1000nmとすることができる。
(引き出し電極8)
引き出し電極8は、保護層7に設けられたコンタクトホールに埋め込まれている。また、引き出し電極8は、下部8bがソース電極6s及びドレイン電極6dに接触することにより、ソース電極6s及びドレイン電極6dと電気的に接続される。これにより、酸化物半導体層4は、引き出し電極8と電気的に接続されることとなる。なお、図面には現れていないが、薄膜半導体装置10は、ゲート電極2と電気的に接続される引き出し電極(不図示)を備える。
<薄膜半導体装置10の製造方法>
以下、薄膜半導体装置10の製造方法について、
図2、
図3を用いて説明する。
図2(a)〜
図3(c)は、本発明の実施の形態1に係る薄膜半導体装置10の製造方法における各工程の構成を模式的に示した断面図である。
(基板1、ゲート電極2、及びゲート絶縁膜3の形成工程)
まず、
図2(a)に示すように、基板1上にゲート電極2を形成する。具体的には、基板1としてガラス基板を準備した後、基板1上にゲート電極2を形成する。以下、ゲート電極2の形成工程について、詳しく述べる。
【0029】
最初に、基板1上にMo膜とCu膜が順に堆積されたゲート金属膜をスパッタリング法によって成膜する。更に、フォトリソグラフィー法により形成したレジストをマスクとして、ウェットエッチング法を用いてゲート金属膜をエッチングすることにより、ゲート電極2を形成することができる。Mo膜やCu膜のウェットエッチングは、例えば、過酸化水素水(H
2O
2)、及び有機酸を混合した薬液を用いて行うことができる。なお、ゲート電極2を形成する前に、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)等によって基板1上にシリコン窒化膜、シリコン酸化膜、及びシリコン酸窒化膜等からなるアンダーコート層を形成してもよい。
【0030】
次に、
図2(b)に示すように、ゲート電極2が形成された基板1を覆って、ゲート絶縁膜3を形成する。例えば、ゲート電極2を覆うようにして、窒化シリコンと酸化シリコンを順に堆積したゲート絶縁膜3を、プラズマCVD等によって成膜する。窒化シリコンは、例えば、シランガス(SiH
4)、アンモニアガス(NH
3)、窒素ガス(N
2)を導入することで成膜することができる。酸化シリコンは、例えば、シランガス(SiH
4)と亜酸化窒素ガス(N
2O)とを導入することで成膜することができる。
(酸化物半導体層4及びチャネル保護層5の形成工程)
図2(c)に示すように、ゲート絶縁膜3上に、酸化物半導体層4を形成する。酸化物半導体層4は、例えば、IGZO膜により構成される。具体的には、IGZO膜は、スパッタリング法等によって成膜することができる。例えば、組成比In:Ga:Zn=1:1:1のターゲット材を用いて、酸素雰囲気でスパッタリングすることによって、アモルファスIGZO膜が成膜される。更に、大気雰囲気で、アモルファスIGZO膜を200℃〜500℃程度の熱処理をすることによって、TFT特性が改善する。フォトリソグラフィー法及びウェットエッチング法を用いてアモルファスIGZO膜をパターニングすることにより、酸化物半導体層4を形成することができる。IGZO膜のウェットエッチングは、例えば、リン酸(HPO
4)、硝酸(HNO
3)、酢酸(CH
3COOH)及び水を混合した薬液を用いて行うことができる。
【0031】
次に、
図2(d)に示すように、酸化物半導体層4を覆うように、チャネル保護層材料5´を堆積する。チャネル保護層材料5´は、例えば、酸化シリコン膜により構成される。具体的には、例えば、酸化物半導体層4を覆うように酸化シリコン膜をプラズマCVD等によって成膜する。
(ソース電極6s及びドレイン電極6dの形成工程)
図3(a)に示すように、チャネル保護層5上に、ソース電極6s及びドレイン電極6dを形成する。
【0032】
具体的には、まず、フォトリソグラフィー法を用いて形成したレジストをマスクとして、ドライエッチング法を用いてチャネル保護層材料5´をエッチングすることにより、酸化物半導体層4上のソース領域及びドレイン領域として機能する領域上に、それぞれコンタクトホールを形成する。酸化シリコン膜により構成されるチャネル保護層材料5´のドライエッチングは、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)装置が用いられる。エッチングガスとしては、例えば、四フッ化炭素(CF
4)及び酸素ガス(O
2)が用いられる。ガス流量、圧力、印加電力及び周波数等の装置パラメーターは、基板サイズ、設定エッチング膜厚等によって適宜設定される。
【0033】
次に、コンタクトホールの形成されたチャネル保護層5上にソース電極6s及びドレイン電極6dを形成する。具体的には、例えば、コンタクトホールの形成されたチャネル保護層5上に、Mo膜、Cu膜、及びCuMn膜が順に堆積されたソースドレイン金属膜をスパッタリング法によって成膜する。更に、フォトリソグラフィー法を用いて形成したレジストをマスクとして、ウェットエッチング法を用いてソースドレイン金属膜をエッチングすることにより、ソース電極6s及びドレイン電極6dを形成することができる。Mo膜、Cu膜、及びCuMn膜のウェットエッチングは、例えば、過酸化水素水(H
2O
2)、及び有機酸を混合した薬液を用いて行うことができる。
(保護層7の形成工程)
図3(b)に示すように、ソース電極6s及びドレイン電極6dが形成された基板1上を覆って保護層材料7´を堆積する。例えば、保護層材料7´は、酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、窒化シリコン膜が順に堆積されている。具体的には、第一保護層材料7a´である酸化シリコン膜は、例えば、プラズマCVD等によって成膜する。第一保護層材料7a´の膜厚は、例えば、50nm〜500nm程度である。第二保護層材料7b´である酸化アルミニウムは、例えば、スパッタリング法により堆積する。酸化アルミニウム膜により構成される第二保護層材料7b´の成膜には、例えば、反応性スパッタリング装置が用いられる。ターゲットにはアルミニウムが用いられ、プロセスガスにはアルゴンガス(Ar)とO
2等が用いられる。ガス流量、圧力、印加電力及び周波数等の装置パラメーターは、基板サイズ、設定膜厚等によって適宜設定される。なお、酸化アルミニウムをターゲットとして用いることもできる。この場合、プロセスガスにはアルゴンガスが用いられる。第二保護層材料7b´の膜厚は、例えば、2nm〜50nm程度である。第三保護層材料7c´である窒化シリコン膜は、例えば、プラズマCVD等によって成膜する。第三保護層材料7c´の膜厚は、例えば、50nm〜700nm程度である。保護層材料7´の全体膜厚は、配線間におけるショートを抑制し、段差等を考慮して、300nm〜700nm程度が好ましい。
(保護層7へのコンタクトホール形成工程)
図3(c)に示すように、保護層材料7´上にレジスト9を配置する。レジスト9におけるソース電極6s及びドレイン電極6dの一部を覆う部分には、開口が設けられている。レジスト9は、例えば、レジスト材料を保護層材料7´上に積層した後、フォトリソグラフィー法を用いて露光することにより形成される。レジスト材料としては、ネガ型レジスト材料やポジ型レジスト材料等を用いることができる。レジスト9は、以下の工程で行うドライエッチング及びウェットエッチングの際のマスクとして機能する。
【0034】
その後、
図4(a)に示すように、コンタクトホールが設けられた保護層7を形成する。保護層7のコンタクトホールからは、ソース電極6s及びドレイン電極6dの一部が露出する。具体的には、まず、第三保護層材料7c´を、ドライエッチング法を用いてエッチングする。第三保護層材料7c´を構成する窒化シリコン膜のドライエッチングは、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)装置が用いられる。エッチングガスとしては、例えば、六フッ化硫黄ガス(SF
6)及び酸素ガス(O
2)が用いられる。次に、第二保護層材料7b´を、ウェットエッチング法を用いてエッチングする。第二保護層材料7b´を構成する酸化アルミニウム膜のウェットエッチングは、例えば、リン酸(HPO
4)、硝酸(HNO
3)、酢酸(CH
3COOH)及び水を混合した薬液を用いて行うことができる。さらに、第一保護層材料7a´を、ドライエッチング法を用いてエッチングする。第一保護層材料7a´を構成する酸化シリコン膜のドライエッチングは、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)装置が用いられる。エッチングガスとしては、例えば、四フッ化炭素(CF
4)及び酸素ガスが用いられる。ガス流量、圧力、印加電力及び周波数等の装置パラメーターは、基板サイズ、設定エッチング膜厚等によって適宜設定される。
(引き出し電極8形成工程)
最後に、
図4(b)に示すように、保護層7上に、引き出し電極8を形成する。具体的には、コンタクトホールの形成された保護層7上に、Mo膜、Cu膜が順に堆積された引き出し金属膜をスパッタリング法によって成膜する。フォトリソグラフィー法を用いて形成したレジストをマスクとして、ウェットエッチング法を用いて引き出し金属膜をエッチングすることにより、引き出し電極8を形成することができる。Mo膜、Cu膜のウェットエッチングは、例えば、過酸化水素水(H
2O
2)、及び有機酸を混合した薬液を用いて行うことができる。
【0035】
このようにして、基板1と、水素保護膜である第二保護層7bと、基板1と第二保護層7bとの間に設けられた酸化物半導体層4と、を備える薄膜半導体装置10を製造することができる。なお、薄膜半導体装置10として、保護層7が三層構造である例を示したが、第二保護層が含まれた構成であれば、積層数が変化してもよい。例えば、第一保護層と第二保護層との二層構造や、二層からなる第二保護層が含まれた4層構造等により構成することもできる。
<薄膜半導体装置10の第二保護層7bの詳細構成>
以下、薄膜半導体装置10の第二保護層7bの構成について、
図5〜
図16を用いて説明する。
(第二保護層7bの膜密度の好適範囲)
まず、薄膜半導体装置10における第二保護層7bの膜密度の好適範囲について検討する。
【0036】
薄膜半導体装置10では、第二保護層7bとして、酸化アルミニウム膜を用いる。ここでは、酸化物半導体層への水素の侵入による酸化物半導体層の低抵抗化を抑制しつつ、加工性を向上させることができる薄膜半導体装置を実現するための、酸化アルミニウム膜の物性に関して説明する。
【0037】
図5は、酸化アルミニウム膜の規格化したウェットエッチングレートと、酸化アルミニウム膜の膜密度との関係を示す図である。ここで、
図5に示す各データは、様々な成膜方法(RFスパッタリング法、DCスパッタリング法、EB蒸着法等)にて成膜された複数のサンプルそれぞれに対するものである。例えば、酸化アルミニウム膜をスパッタリング法で成膜する場合、酸素流量を多くするほど、膜密度が小さくなるという傾向がみられる。このように、酸化アルミニウム膜の膜密度は、成膜条件により変化すると考えられる。また、成膜条件による酸化アルミニウム膜の膜密度の変化の傾向は、成膜方法により異なると考えられる。なお、同図における縦軸は基準サンプルのウェットエッチングレートにて規格化したウェットエッチングレートを示しており、横軸はX線反射率測定(XRR)結果から算出した膜密度(Film Density)を示している。
【0038】
酸化アルミニウム膜のウェットエッチングレートは、膜密度に依存することが分かる。膜密度が3.55g/cm
3以上の範囲では、ウェットエッチングレートが極めて小さい。そのため、酸化アルミニウム膜の好ましい膜密度の範囲は、ウェットエッチングレートが急激に小さくなるまでの膜密度の範囲である、3.25g/cm
3以下の範囲である。
【0039】
ここで、縦軸を基準サンプルのウェットエッチングレートで規格化している理由は、薬液の濃度や薬液の種類等によってウェットエッチングレート自身が変化するので、絶対的なウェットエッチングレートで記述して、一般化することが難しいためである。酸化アルミニウム膜のウェットエッチングレートが、膜密度に依存しているようなウェットエッチングプロセスであれば、上述の方法でデータを記述した膜密度を採用することで、同様の効果を得ることができる。なお、基準サンプルを上述のウェットエッチングプロセスにてエッチングした時のウェットエッチングレートは、約1nm/min〜50nm/min程度となる。
【0040】
図6は、酸化物半導体層4のシート抵抗値と、第二保護層7bである酸化アルミニウム膜の膜密度との関係を示す図である。薄膜半導体装置10では、酸化物半導体層4としてIGZO膜を用いる。同図における縦軸はIGZO膜のシート抵抗値を示しており、横軸は酸化アルミニウム膜の膜密度を示している。ここで、IGZO膜のシート抵抗値は、酸化アルミニウム膜の水素バリア性を示す指標として用いている。酸化アルミニウム膜の水素バリア性がない場合、上述したように、IGZO膜は低抵抗化する。つまり、IGZO膜のシート抵抗値は低くなる。IGZO膜のシート抵抗値測定は、例えば、IGZO膜上に金属電極パターンを形成し、更に酸化シリコン膜及び酸化アルミニウム膜を形成後、水素を含む保護膜を成膜したサンプルについて、シート抵抗値を測定して行った。なお、水素を含む保護膜として、プラズマCVD法で成膜した窒化シリコン膜を用いる。
【0041】
IGZO膜のシート抵抗値は、第二保護層7bである酸化アルミニウム膜の膜密度が2.80g/cm
3以下になると、急激に低下することが分かる。つまり、酸化アルミニウム膜の膜密度が2.80g/cm
3以上を示す範囲では、IGZO膜に対する水素バリア性を確保ができることが分かる。
【0042】
従って、
図5及び
図6の結果から、酸化アルミニウム膜に、第二保護層7bの加工性及び水素バリア性を確保するための膜密度の範囲は、2.80g/cm
3以上3.25g/cm
3以下であることが分かる。なお、X線反射率測定(XRR)による膜密度の誤差は、0.01g/cm
3程度である。そのため、誤差を考慮した膜密度の最小値は2.80g/cm
3から0.01g/cm
3を差し引いた2.79g/cm
3となる。また、誤差を考慮した膜密度の最大値は3.25g/cm
3に0.01g/cm
3を足し合わせた3.26g/cm
3となる。これにより、誤差を考慮した膜密度の範囲は、2.79g/cm
3以上3.26g/cm
3以下である。
【0043】
なお、当該膜密度の酸化アルミニウム膜を用いることで、従来の良質な酸化アルミニウム膜を用いる場合よりも、酸化アルミニウム膜の成膜タクトを改善できる。これは、当該膜密度の酸化アルミニウム膜をスパッタリング等で成膜する場合の成膜速度が、良質な酸化アルミニウム膜を成膜する場合よりも大きいためである。また、当該膜密度の酸化アルミニウム膜のエッチングレートが大きいためである。
(第二保護層7bの膜密度の測定)
図7は、上述した製造方法で製造した薄膜半導体装置10における、第二保護層7bである酸化アルミニウム膜のXRR(X線反射率法)測定結果及び解析結果を示す図である。XRR測定結果と、膜密度、膜厚及び表面ラフネスをパラメーターとしたシミュレーション結果とを比較し、シミュレーションパラメーターを最適化することで、酸化アルミニウムの膜密度を求めることができる。
【0044】
XRR測定結果から、酸化アルミニウム膜の膜密度が2.856g/cm
3と求めることができる。この値は、酸化アルミニウム膜の膜密度の好適範囲である2.80g/cm
3以上3.25g/cm
3以下に含まれる。
(第二保護層7bの膜密度の最適範囲)
ところで、薄膜半導体装置10を量産する場合、第二保護層7bを形成する工程で、成膜条件に誤差が出てしまう場合がある。これについて検討した結果、成膜条件の誤差に対する、第二保護層7bの膜密度の変化の大きさは、第二保護層7bである酸化アルミニウム膜の膜密度の目標値により異なることが分かった。これにより、薄膜半導体装置10における第二保護層7bの膜密度の最適範囲を、「成膜条件の誤差に対する、第二保護層7bの膜密度の変化の大きさが小さくなる範囲」として定めた。以下、具体的に第二保護層7bの膜密度の最適範囲について詳述する。
【0045】
図8は、第二保護層7bである酸化アルミニウム膜の膜密度の、成膜回数によるばらつきを示す図である。同図における縦軸は酸化アルミニウム膜の膜密度を示しており、横軸は成膜回数を示している。三角形で示すプロットは酸化アルミニウム膜の膜密度の目標値を2.75g/cm
3とした場合に対応し、四角形で示すプロットは酸化アルミニウム膜の膜密度の目標値を2.90g/cm
3とした場合に対応する。
【0046】
三角形のプロットに示すように、アルミニウム膜の膜密度の目標値を2.75g/cm
3とした場合、一回目の成膜、二回目の成膜、三回目の成膜、四回目の成膜では、膜密度がそれぞれ2.73g/cm
3、2.80g/cm
3、2.71g/cm
3、2.75g/cm
3であった。これにより、アルミニウム膜の膜密度の目標値を2.75g/cm
3とした場合の、四回の成膜におけるアルミニウム膜の膜密度のばらつきは、0.09g/cm
3であった。同様に、アルミニウム膜の膜密度の目標値を2.90g/cm
3とした場合の、四回の成膜におけるアルミニウム膜の膜密度のばらつきは、最大値2.90g/cm
3から最小値2.87g/cm
3を引くと、0.03g/cm
3であった。このように、膜密度の目標値を2.90g/cm
3とした場合、酸化アルミニウム膜の膜密度の目標値を2.75g/cm
3とした場合よりも、酸化アルミニウム膜の膜密度の、成膜回数によるばらつきは小さい。酸化アルミニウム膜の形成の再現性を鑑みると、酸化アルミニウム膜の膜密度の目標値は、最適範囲内とすることが望ましい。以下、酸化アルミニウム膜の膜密度の最適範囲について考察する。
【0047】
図9は、本発明の実施の形態1に係る酸化アルミニウム膜の膜密度と、酸化アルミニウム膜の成膜時の規格化した酸素流量比との関係を示す図である。同図における縦軸は酸化アルミニウム膜の膜密度を示しており、横軸は規格化酸素流量比を示す。ここで、酸素流量比とは、全ガス流量(アルゴンガス流量と酸素ガス流量との和)に対する酸素流量の比を示している。また、横軸の規格化した酸素流量比は、センター条件の酸素流量比に対する比を示している。規格化した酸素流量比を用いている理由は、成膜方法や装置状況により異なる酸素流量比を一般化するためである。実際の酸素流量比としては、約5%〜80%程度である。
【0048】
酸化アルミニウム膜を成膜する時に酸素流量比は、酸化アルミニウム膜の膜密度に影響を与える。酸素流量比を小さくして成膜すると、酸化アルミニウム膜の膜密度が大きくなる傾向がある。酸素流量比が0.85〜1.16の間で変化しても、酸化アルミニウム膜の膜密度は2.85g/cm
3以上2.95g/cm
3以下の範囲となる。
【0049】
一方、
図10は、酸化アルミニウム膜の膜密度と、酸化アルミニウム膜の成膜時の規格化した圧力との関係を示す図である。縦軸は酸化アルミニウム膜の膜密度を示しており、横軸は規格化圧力を示す。ここで、横軸の規格化した圧力は、センター条件の圧力に対する比を示している。上述の酸素流量比と同様に圧力も、成膜方法や装置状況により異なる。従って、一般化するために、規格化圧力を用いている。実際の圧力としては、約0.2Pa〜2.0Pa程度である。
【0050】
図10に示すように、酸化アルミニウム膜を成膜する時の圧力は、酸化アルミニウム膜の膜密度に影響を与える。圧力が0.90〜1.10の間で変化しても、酸化アルミニウム膜の膜密度は2.85g/cm
3以上2.95g/cm
3以下の範囲となる。
【0051】
従って、
図9及び
図10に示すように、酸化アルミニウム膜の膜密度の最適範囲は、2.85g/cm
3以上2.95g/cm
3の範囲にするとよい。前述の通りXRRによる膜密度の誤差は、0.01g/cm
3程度である。そのため、膜密度の最適範囲は、最大誤差を考慮すると、2.84g/cm
3以上2.96g/cm
3以下である。膜密度が最適範囲に含まれる酸化アルミニウム膜を成膜することで、成膜条件が多少変化しても、安定した膜密度の酸化アルミニウム膜を成膜することが可能となる。そのため、酸化アルミニウム膜の膜密度の成膜回数によるばらつきを小さくすることができる。
(酸化アルミニウム膜の屈折率)
図11は、酸化アルミニウム膜の屈折率と、酸化アルミニウム膜の膜密度との関係を示す図である。ここで、同図に示す各データは、
図5で示されたものと同じサンプルにおける屈折率の測定値である。また、
図11における縦軸は波長633nmにおける酸化アルミニウム膜の屈折率を示しており、横軸は酸化アルミニウム膜の膜密度を示している。
【0052】
酸化アルミニウム膜の屈折率と膜密度とは、正の相関があることが分かる。膜密度が2.80g/cm
3以上3.25g/cm
3以下である範囲を見ると、加工性及び水素バリア性を確保できる膜密度範囲を満たすための屈折率の範囲は、1.58以上1.66以下であることが分かる。
(酸化アルミニウム膜の膜厚)
図12は、薄膜半導体装置10における酸化物半導体層4であるIGZO膜のシート抵抗値と、酸化アルミニウム膜の膜厚との関係を示す図である。ここで、IGZO膜のシート抵抗値測定は、例えば、IGZO膜上に金属電極パターンを形成し、更にSiO保護膜及び異なる厚みの酸化アルミニウム膜を形成後、水素を含む保護膜を成膜したサンプルの、シート抵抗値を測定することで行った。また、同図における縦軸はIGZO膜のシート抵抗値を示しており、横軸は酸化アルミニウム膜の膜厚を示している。
【0053】
IGZO膜のシート抵抗値は、酸化アルミニウム膜の膜厚が3nm未満になると、急激に低下することが分かる。これに対し、酸化アルミニウム膜の膜厚が3nm以上になると、IGZOのシート抵抗値の膜厚保依存性がほぼなくなり、IGZO膜のバリア性を確保できることが分かる。なお、酸化アルミニウム膜の膜厚は、30nm以下であることが好ましい。これは、30nm以上の酸化アルミニウム膜になると、所望の膜密度を実現することが困難であるためである。例えば、スパッタ法で成膜する場合、膜厚が厚くなるに従って膜密度が高くなる。このため、所望の加工性能を実現することが困難となる。また、各サンプルにおける酸化アルミニウム膜の膜密度は、すべて2.80g/cm
3以上3.25g/cm
3以下の範囲を満たす等しい値である。
(酸化アルミニウム膜の構造)
図13は、本実施の形態に係る酸化アルミニウム膜の規格化したウェットエッチングレートと、酸化アルミニウム膜の成膜条件との関係を示す図である。ここで、酸化アルミニウム膜のウェットエッチングレートは、
図5と同様に、基準サンプルで規格化した値である。また、
図13における縦軸は酸化アルミニウム膜の規格化ウェットエッチングレートを示しており、横軸は酸化アルミニウム膜の成膜条件を示している。as−depoは、成膜直後でアニールしていないサンプルを示し、500℃、600℃、700℃、800℃は、それぞれの温度でアニールした後のサンプルを示す。なお、500℃、600℃、700℃、800℃のアニールは、アニール処理をそれぞれ20分間ずつ行なっている。
【0054】
酸化アルミニウム膜のウェットエッチングレートは、アニールしていない場合は、1.0である。また、アニール温度が、500℃、600℃、700℃、800℃と上昇するとともに、酸化アルミニウム膜のウェットエッチングレートは、それぞれ0.5、0.45、0.3、0.12と低下することが分かる。酸化アルミニウム膜をアニールすると、アモルファス構造から結晶構造へ変化すると考えられる。以下、これについて考察する。
【0055】
図14は、
図13に示した800℃でのアニール後のサンプル(比較例)とアニール前のサンプル(実施例1)とのX線回折測定(XRD)結果を、それぞれ点線、実線で示す図である。
図14の縦軸は規格化強度を示しており、横軸が角度を示している。比較例では、酸化アルミニウムの(311)、(400)、(440)に対応した回折ピークが認められる。つまり、800℃のアニール処理によって、酸化アルミニウムが結晶化することが分かる。一方、本発明の実施の形態1では、酸化アルミニウムの(311)、(400)、(440)に対応した回折ピークは存在しない。つまり、アニール前の酸化アルミニウム膜はアモルファス構造である。ここでいうアモルファス構造とは、XRDで結晶性の回折ピークが見られない程度のものをいう。そして、アニール温度が500℃〜700℃であっても、アニール温度が800℃であるときと同様に、酸化アルミニウム膜の少なくとも一部は結晶化すると考えられる。
【0056】
図13に示すように、酸化アルミニウムがアニールにより結晶化すると、ウェットエッチングレートが急激に低下することが分かる。従って、薄膜半導体装置10における第二保護層7bである酸化アルミニウム膜は、加工性の観点から、アモルファス構造であることが好ましい。アモルファス構造の酸化アルミニウム膜の加工性が良好である理由は、アモルファス構造の酸化アルミニウム膜には、結晶構造の酸化アルミニウム膜よりもウェットエッチングで用いる薬液が侵入しやすいためと考えられる。
(考察)
上述のように、酸化アルミニウム膜に加工性及び水素バリア性を確保するための膜密度の範囲は、2.80g/cm
3以上3.25g/cm
3以下である。一方、酸化アルミニウム膜の膜密度が2.80g/cm
3以上3.25g/cm
3以下であっても、種々の要素により酸化アルミニウム膜の性質が異なる可能性がある。以下、これについて考察する。
(酸化アルミニウム膜の屈折率についての考察)
酸化アルミニウム膜の膜密度は、単に単位体積当たりの質量で定義される物理量なので、AlOxの原子の緻密性や組成比xを反映しているとは言えるものの、原則、結晶構造かアモルファス構造かを反映するものではない。同じ膜密度の酸化アルミニウム膜であっても、結晶構造のものと、アモルファス構造のものとがあると考えられる。そして、結晶構造の酸化アルミニウム膜の屈折率と、アモルファス構造の酸化アルミニウム膜の屈折率とは異なることが知られている。また、X線回折測定の説明でも上述したように、アモルファス構造の酸化アルミニウム膜の加工性は、結晶構造の酸化アルミニウム膜の加工性と異なるという結果が得られている。従って、同じ膜密度の酸化アルミニウム膜であっても屈折率が異なれば、結晶構造であるかアモルファス構造であるかが異なり、それに伴い加工性が異なる可能性がある。
【0057】
このように、膜密度のみでは加工性が良好な酸化アルミニウム膜を特定できないこともある。しかし、仮にそのような場合でも、膜密度と屈折率とを併用することで、加工性の良好な酸化アルミニウム膜を特定することができる。
(酸化アルミニウム膜の組成)
本実施の形態1に係る酸化アルミニウム膜に含まれるAlOxの組成について検討するために、酸化アルミニウム膜をArガスでエッチングしつつ、XPS(X線蛍光分析法)でスペクトル測定を行った。なお、酸化アルミニウム膜の膜厚は35nmである。当該解析の結果、深さ0nm、9nm、19nm、28.8nmでのAlOxのスペクトルを得た。各スペクトルから半定量解析を行うことで、OとAlとの相対強度を得て、酸化アルミニウム膜に含まれるOの原子数比と、酸化アルミニウム膜に含まれるAlの原子数比とを求めた。
図15は、当該酸化アルミニウム膜に含まれるAlOxの膜厚方向の深さと組成との関係を示すグラフである。グラフの横軸が膜厚方向の深さを示し、グラフの縦軸がOとAlとの原子数比を示す。深さ0nm、9nm、19nm、28.8nmでのアルミニウムの原子数比は、それぞれ32.92atm%、34.86atm%、35.02atm%、35.05atm%である。そのため、アルミニウムは、32.92atm%以上35.05atm%以下の比率を取るといえる。また、深さ0nm、9nm、19nm、28.8nmでの酸素の原子数比は、それぞれ58.96atm%、64.62atm%、64.50atm%、64.81atm%である。そのため、酸素は58.96atm%以上64.81atm%以下の比率を取るといえる。
【0058】
AlOxにおけるxは、58.96を32.92で除して得られる1.79、64.62を34.86で除して得られる1.85、64.50を35.02で除して得られる1.84、64.81を35.05で除して得られる1.85がある。これらのxは、いずれも1.5より大きく2.0より小さい。さらに、これらのxについてさらに細かく見ると、1.8よりも大きく1.9よりも小さい。
【0059】
xが1.5よりも大きい理由は、上述のように、本実施の形態1に係る酸化アルミニウム膜が、アモルファス構造であるためと考えられる。結晶構造の酸化アルミニウム膜に含まれるAlOx(Al
2O
3)におけるxは1.5である。本実施の形態1に係る酸化アルミニウム膜がアモルファス構造であるため、いずれの原子とも結合していない酸素原子が、結晶構造の酸化アルミニウム膜よりも多く含まれていると考えられる。
【0060】
xが2.0よりも小さい理由は、酸化アルミニウム膜に含まれるAlOxにおけるxとして現実的に存在し得るものは2.0までであると考えられるためである。
【0061】
膜内に含まれる酸素原子が多いほど、酸化アルミニウム膜をウェットエッチングする際に用いられる、例えば、リン酸(HPO
4)、硝酸(HNO
3)、酢酸(CH
3COOH)及び水を混合した薬液と、酸化アルミニウム膜は反応しやすくなる。そのため、アモルファス構造の酸化アルミニウム膜の方が、結晶構造の酸化アルミニウム膜よりも加工性を向上できる。従って、本実施の形態1に係る酸化アルミニウム膜の方が、結晶構造の酸化アルミニウム膜よりも加工性を向上できる。
【0062】
ところで、酸化アルミニウム膜の膜密度が変化すると、膜内のアルミニウムと酸素との原子数比も変化すると考えられる。仮に膜密度が異なる複数の層からなる多層構造の酸化アルミニウム膜では、膜厚方向に視るとアルミニウムと酸素との原子数比が大きく変化する箇所があると考えられる。一方、
図15に示したように、本実施の形態の酸化アルミニウム膜におけるアルミニウムと酸素との原子数比は、膜厚方向に視るとほぼ一定である。このことから、当該酸化アルミニウム膜は、単層構造であるといえる。
(酸化アルミニウム膜の層構造)
図16は、本実施の形態1に係る酸化アルミニウム膜を含む三層構造の保護層の断面TEM(Transmission Electron Microscope)画像である。同図には、酸化シリコン膜7a(第1保護層)と、酸化アルミニウム膜7b(第2保護層)と、酸化シリコン膜7c(第3保護層)と、が現れている。なお、同図は、厚さ30nmの酸化アルミニウム膜の近傍を撮像したものである。酸化アルミニウム膜7bは、厚み方向に視ると、どの箇所においても濃淡の差がほぼ無く一定の濃さで現れている。一般的に、酸化アルミニウム膜の膜密度が小さいとTEM画像では薄く現れ、酸化アルミニウム膜の膜密度が大きいとTEM画像では濃く現れる。そのため、酸化アルミニウム膜7bの厚み方向の膜密度は膜全体で一定であり、酸化アルミニウム膜7bは単層構造である。ところで、酸化アルミニウム膜には、膜密度が等しい一層のみからなる単層構造のものと、膜密度が異なる複数の層からなる多層構造のどちらも作製可能である。第二保護層7bを構成する酸化アルミニウム膜は、単層構造である。そのため、第二保護層7bを構成する酸化アルミニウム膜は、多層構造の酸化アルミニウム膜と比べて、膜厚方向における加工性や水素バリア性が均一である。従って、第二保護層7bを構成する酸化アルミニウム膜では、膜厚方向において良好な加工性を確保できる。そのため、当該酸化アルミニウム膜に貫通孔を設けるためにウェットエッチングを行う際、当該酸化アルミニウム膜の表面から底面まで同一の薬液でウェットエッチングを行うことができる。また、第二保護層7bを構成する酸化アルミニウム膜では、膜厚方向において良好な水素バリア性を確保できる。そのため、酸化物半導体層に水素が入り込むことを抑制できる。
【0063】
また、仮に酸化アルミニウム膜が結晶構造である場合には、同図と同じ倍率において模様が現れる。しかしながら、酸化アルミニウム膜7bには当該模様は現れていない。そのため、酸化アルミニウム膜7bはアモルファス構造であると考えられる。
<薄膜半導体装置の実証>
本発明の実施の形態1に係る薄膜半導体装置を実際に作成し、その効果について実証した。まず、
図1の記号を用いて、薄膜半導体装置の構成について説明する。
【0064】
基板1は、無アルカリガラス基板を用いた。ゲート電極2は、基板1の上方に形成される。ゲート電極2は、Cu膜とMo膜との積層膜を用いた。ここで、Mo膜は基板1との密着層として機能する。Cu膜及びMo膜の膜厚は、それぞれ300nm、20nmとした。
【0065】
ゲート絶縁膜3は、ゲート電極2上に形成され、ゲート電極2を覆うように基板1上の全面に形成される。酸化物半導体層4を用いているので、酸化物半導体層4と接するゲート絶縁膜3に酸化シリコン膜を用いた。
【0066】
酸化物半導体層4は、アモルファス酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)を用いた。IGZO膜の膜厚は、60nmとした。
【0067】
チャネル保護層5は、酸化シリコンを用いた。チャネル保護層5の膜厚は、200nmとした。
【0068】
ソース電極6s及びドレイン電極6dは、Mo/Cu/CuMnの三層構造を用いた。
【0069】
保護層7は、ソース電極6s及びドレイン電極6d上に形成され、ソース電極6s及びドレイン電極6dを覆うように全面に形成される。本実施の形態において、保護層は、第一保護層7a、第二保護層7b、及び第三保護層7cの三層構造としている。第一保護層7aは、酸化シリコン膜により構成される。第二保護層7bは、酸化アルミニウム膜により構成される。酸化アルミニウム膜は、膜密度2.90g/cm
3、屈折率1.60の膜を用いた。酸化アルミニウム膜の膜密度が、2.80g/cm
3以上3.25g/cm
3以下であるため、加工性を向上した薄膜半導体装置10を提供できる。酸化アルミニウム膜の膜厚は、30nmとした。第三保護層7cは、窒化シリコン膜を用いた。保護層7の(合計)膜厚は、600nmとすることができる。
【0070】
図17に、上記構成の薄膜半導体装置10におけるTFTの伝達特性を実線で示す。また、比較例として、保護膜として酸化アルミニウム膜を形成していないTFTを点線で示す。同図における縦軸はドレイン電流を示しており、横軸はゲート電圧を示している。
【0071】
比較例(保護膜として酸化アルミニウム膜を形成していない)では、ゲート電圧を小さくしてもドレイン電流が十分に小さくならず、トランジスタのオン/オフ特性の劣化が認められる。比較例では、今回測定したゲート電圧の範囲において、酸化物半導体層が導体化していると考えられる。一方、実施例1(保護膜として酸化アルミニウム膜を形成している)では、ゲート電圧を小さくするとドレイン電流が十分に小さくなり、トランジスタのオン/オフ特性が良好であることが分かる。従って、薄膜半導体装置10における第二保護層7bとして酸化アルミニウムを保護膜に形成することで、水素の侵入による酸化物半導体層4であるIGZO膜の低抵抗化が抑制された。これにより、薄膜半導体装置10において、酸化物半導体層4への水素の侵入を抑制できる。
<<実施の形態2>>
次に、本発明の実施の形態2に係る薄膜半導体装置20及び薄膜半導体装置20の製造方法について説明する。
<薄膜半導体装置20の構成>
図18は、薄膜半導体装置20の構成を模式的に示した断面図である。実施の形態2は、実施の形態1に対して、水素のバリアを目的とした保護層11bがチャネル保護層11の中に含まれている点が異なる。また、保護層11bは、薄膜半導体装置10における第二保護層7bと同じ酸化アルミニウム膜で構成される。なお、同図において、
図1に示す構成要素と同じ構成要素については同じ符号を付している。
【0072】
図18に示すように、薄膜半導体装置20は、チャネル保護層11と、保護層12とを備える。薄膜半導体装置20は、ボトムゲート型のTFTである。
【0073】
以下、薄膜半導体装置20と薄膜半導体装置10との相違点であるチャネル保護層11と保護層12を詳述する。
【0074】
チャネル保護層11は、酸化物半導体層4のチャネル領域を保護する保護膜であって、酸化物半導体層4を覆うように全面に形成される。薄膜半導体装置20において、チャネル保護層11は、第一チャネル保護層11a、第二チャネル保護層11b、及び第三チャネル保護層11cの三層構造としている。第一チャネル保護層11aは、酸化物半導体層4との密着性がよく、酸化物半導体層4の膜質に影響を与えないような膜(含有水素が少ない、含有酸素量が多い)が好ましい。そのため、第一チャネル保護層11aは、例えば、酸化シリコン膜により構成される。第二チャネル保護層11bは、酸化物半導体層4への水素のバリア性を有する膜が好ましい。そのため、第二チャネル保護層11bは、例えば、酸化アルミニウム膜により構成される。第二チャネル保護層11bとして用いる酸化アルミニウムとして、上述した膜密度を有することが好ましい。第三チャネル保護層11cは、ソース電極6s及びドレイン電極6dとの密着性がよい膜が好ましい。そのため、第三チャネル保護層11cは、例えば、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、酸窒化シリコン膜によって構成することができる。チャネル保護層11の合計膜厚は、例えば、50nm〜300nmとすることができる。
【0075】
保護層12は、ソース電極6s及びドレイン電極6d上に形成される。薄膜半導体装置20では、ソース電極6s及びドレイン電極6dを覆うように全面に形成される。薄膜半導体装置20において、保護層12は、ソース電極6s及びドレイン電極6dとの密着性がよく、水分等のバリア性を有する膜であることが好ましい。そのため、保護層12は、例えば、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、及び酸窒化シリコン膜を用いた単層構造又はこれらの積層構造等によって構成することができる。保護層12の合計膜厚は、例えば、200nm〜1000nmとすることができる。
<薄膜半導体装置20の製造方法>
次に、本発明の実施の形態2に係る薄膜半導体装置20の製造方法について、
図19(a)〜
図21(c)を用いて説明する。
図19(a)〜
図21(c)は、薄膜半導体装置20の製造方法における各工程の構成を模式的に示した断面図である。
【0076】
まず、
図19(a)〜
図19(c)に示すように、
図2(a)〜
図2(c)と同様に、基板1としてガラス基板を準備し、基板1上にゲート電極2を形成し(
図19(a))、ゲート電極2を覆ってゲート絶縁膜3を形成し(
図19(b))、ゲート絶縁膜3上に、IGZO膜等の酸化物半導体層4を形成する(
図19(c))。
【0077】
図19(d)に示すように、酸化物半導体層4が形成された基板1上を覆ってチャネル保護層材料11´を形成する。チャネル保護層材料11´は、酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化シリコン膜が順に堆積された三層構造である。第一チャネル保護層材料11a´である酸化シリコン膜は、例えば、プラズマCVD等によって成膜する。酸化シリコン膜の膜厚は、例えば、50nm〜200nm程度である。第二チャネル保護層材料11b´である酸化アルミニウム膜は、例えば、スパッタリング法により堆積する。酸化アルミニウム膜の成膜には、例えば、反応性スパッタリング装置が用いられる。酸化アルミニウム膜の膜厚は、例えば、3nm〜50nm程度である。第三チャネル保護層材料11c´である酸化シリコン膜は、例えば、プラズマCVD等によって成膜する。酸化シリコン膜の膜厚は、例えば、50nm〜200nm程度である。チャネル保護層11の全体膜厚は、配線間ショートや段差等を考慮して、100nm〜400nm程度が好ましい。
【0078】
図20(a)に示すように、チャネル保護層材料11´上に、酸化物半導体層4の上方に開口を設けたレジスト19を積層する。レジスト19は、薄膜半導体装置10の製造工程における
図3(c)で示したレジスト9と同様に形成される。
【0079】
次に、
図20(b)に示すように、酸化物半導体層4の上方にコンタクトホールが設けられたチャネル保護層11を形成する。具体的には、
図4(a)で示した製造工程と同様に、チャネル保護層11の各層を、ドライエッチング法又はウェットエッチング法を用いてエッチングし、コンタクトホールを形成する。
【0080】
図20(c)に示すように、
図3(a)と同様に、チャネル保護層11上にソース電極6s及びドレイン電極6dを形成する。
【0081】
図21(a)に示すように、ソース電極6s及びドレイン電極6dを覆うように、保護層材料12´を堆積する。例えば、ソース電極6s及びドレイン電極6dを覆うように窒化シリコン膜をプラズマCVD等によって成膜する。ソース電極6s及びドレイン電極6dの膜厚は、例えば、50nm〜500nm程度である。
【0082】
最後に、
図21(b)に示すように、
図3(b)と同様に、保護層12上に引き出し電極8を形成する。
<効果>
薄膜半導体装置20は、薄膜半導体装置10における第二保護層7bと同じく、膜密度が2.80g/cm
3以上3.25g/cm
3以下である酸化アルミニウム膜を、第二チャネル保護層11bとしてチャネル保護層11に含んだ構成である。そのため、酸化物半導体層4への水素の侵入を抑制しつつ、加工性を向上させることができる。更に、薄膜半導体装置20では、第二チャネル保護層11bを用いることで、適切なエッチングレートを確保することができるため、量産性のある製造方法を実現することができる。
<<実施の形態3>>
次に、本発明の実施の形態3に係る薄膜半導体装置30について説明する。
<薄膜半導体装置30の構成>
実施の形態3は、保護層7における第二保護層7bとして実施の形態1で示したものと同じ酸化アルミニウム膜を用いている。一方、薄膜半導体装置30は、
図1の薄膜半導体装置10に対して、チャネルエッチング型TFTである点が異なる。
図22は、薄膜半導体装置30の構成を模式的に示した断面図である。なお、同図において、
図1に示す構成要素と同じ構成要素については同じ符号を付している。
【0083】
酸化物半導体層34のうちソース電極36s及びドレイン電極36dから露出した部分の表面は、他の部分の表面よりも凹んでいる。このように、薄膜半導体装置30は、チャネルエッチング型TFTである。チャネルエッチング型の薄膜半導体装置30ではチャネル保護層は不要であるため、製造プロセスを簡素化することができる。
【0084】
薄膜半導体装置30の構成にすることで、チャネルエッチング型TFTであっても、酸化物半導体層34への水素の侵入を抑制しつつ、加工性を向上させることができる。
<<実施の形態4>>
本発明の実施の形態4に係る薄膜半導体装置40の構成について説明する。
<薄膜半導体装置40の構成>
図23は、薄膜半導体装置40の構成を模式的に示した断面図である。実施の形態4は、保護層7における第二保護層7bとして、実施の形態1で示したものと同じ酸化アルミニウム膜を用いている。一方、薄膜半導体装置40は、
図1の薄膜半導体装置10に対して、トップゲート型TFTである点が異なる。なお、同図において、
図1に示す構成要素と同じ構成要素については同じ符号を付している。
【0085】
酸化物半導体層44の上側に、ゲート電極2が形成されている。これにより、チャネル領域の大部分がゲート電極2に覆われている。このように、薄膜半導体装置40は、トップゲート型TFTである。薄膜半導体装置40は、トップゲート型構造にすることで、チャネル領域の大部分がゲート電極2によって覆われるため、酸化物半導体層44の抵抗値の変化を抑制することができる。
【0086】
薄膜半導体装置40の構成にすることで、トップゲート型TFTであっても、酸化物半導体層34への水素の侵入を抑制しつつ、加工性を向上させることができる。
<<実施の形態5>>
次に、本発明の実施の形態5に係る表示装置について説明する。本実施の形態は、上記の実施の形態1に係る薄膜半導体装置10を表示装置に適用した例である。なお、本実施の形態では、有機EL表示装置への適用例について説明する。
【0087】
図24は、薄膜半導体装置10を用いた有機EL表示装置50の外観を例示する図である。
【0088】
また、
図25は、有機EL表示装置50の模式的な断面図である。有機EL表示装置50は複数の画素を有するが、同図では、一画素分のみを示している。有機EL表示装置50はアクティブマトリクス駆動型であり、薄膜半導体装置10が駆動トランジスタとして用いられている。
【0089】
有機EL表示装置50は、薄膜半導体装置10と、絶縁層51と、下部電極52と、隔壁層53と、有機EL層54と、上部電極55(透明電極)と、パッシベーション層56と、を備える。絶縁層51にはコンタクトホール51aが設けられ、コンタクトホール51aに下部電極52の下部が埋め込まれている。下部電極52は、引き出し電極8を介して、ソース電極6sと電気的に接続されている。隔壁層53には開口53aが設けられ、開口53aに有機EL層54が埋め込まれている。有機EL層54は、有機発光材料を含む発光層を含んで構成されている。有機EL層54は、更に、電子輸送層や正孔輸送層等を含んで構成してもよい。上部電極55は、有機EL層54を覆うように、全部の画素に亘って形成されている。パッシベーション層56は、上部電極55を覆うように、全部の画素に亘って形成されている。絶縁層51からパッシベーション層56までの各層をまとめて有機EL素子57と呼ぶ。
【0090】
上記有機EL表示装置50における一画素分の回路構成について、
図26を用いて説明する。同図は、実施の形態1に係る薄膜半導体装置10を用いた有機EL表示装置の一画素分の回路構成を示す図である。ここでは、薄膜半導体装置10を駆動トランジスタ61と呼ぶ。有機EL素子57のアノード及びカソードは、それぞれ
図25における下部電極52及び上部電極55に対応している。
【0091】
一画素には、有機EL素子57と、駆動トランジスタ61と、スイッチングトランジスタ62と、コンデンサ63が存在する。駆動トランジスタ61は、有機EL素子57を駆動するトランジスタであり、また、スイッチングトランジスタ62は、画素を選択するためのトランジスタである。
【0092】
駆動トランジスタ61において、ゲート電極61Gがスイッチングトランジスタ62のドレイン電極62Dに接続され、ソース電極61Sが有機EL素子57のアノードに接続され、ドレイン電極61Dが電源線69に接続される。
【0093】
また、スイッチングトランジスタ62において、ゲート電極62Gは選択線67に接続され、ソース電極62Sは信号線68に接続され、ドレイン電極62Dはコンデンサ63及び駆動トランジスタ61のゲート電極61Gに接続されている。
【0094】
この構成において、選択線67にゲート信号が入力されて、スイッチングトランジスタ62がオン状態になると、信号線68を介して供給された映像信号電圧がコンデンサ63に印加される。そして、コンデンサ63に印加された映像信号電圧は、1フレーム期間を通じて保持される。この保持された映像信号電圧により、駆動トランジスタ61のコンダクタンスがアナログ的に変化し、映像信号電圧に対応した駆動電流が、有機EL素子57のアノードからカソードへと流れて有機EL素子57が発光する。これにより、有機EL表示装置50において、画像を表示することができる。
【0095】
以上、実施の形態5に係る有機EL表示装置50について説明したが、当該表示装置はこれに限定されない。薄膜半導体装置10を駆動トランジスタのみならず、スイッチングトランジスタとして用いてもよい。また、実施の形態5は、液晶表示素子等、アクティブマトリクス基板が用いられる他の表示素子を備えた表示装置として利用することができ、このような表示装置はテレビジョンセット、パーソナルコンピュータ、携帯電話等の表示装置を有するあらゆる電子機器に適用することができる。
<<変形例>>
以上、本発明に係る薄膜半導体装置及びその製造方法等について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。例えば、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
<基板>
上記実施の形態等では、基板としてガラス基板を用いた。しかしながら、これに限らず、例えば、プラスティック基板等を用いてもよい。また、基板が水素を通す材料で構成される場合には、基板と酸化物半導体層との間に水素保護膜を設ければよい。
【0096】
なお、基板上に窒化シリコン等からなるアンダーコート層を形成する場合には、酸化物半導体層に水素が侵入することを防止するために、基板と酸化物半導体層との間に水素保護膜を設ければよい。
<薄膜半導体装置>
上記実施の形態等では、薄膜半導体装置の例として、薄膜トランジスタを挙げて説明した。しかしながら、これに限らず、本発明の薄膜半導体装置は、基板と酸化アルミニウムを含む膜との間に酸化半導体層が設けられ、酸化アルミニウムを含む膜に貫通孔が設けられる薄膜半導体装置であればよい。例えば、2つの電極に酸化物半導体層が挟まれた薄膜太陽電池等にも、本発明を利用することができる。