【実施例】
【0029】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。なお、本実施例において、各原料及び素材の配合比率、含有比率、濃度は断りのない限り全て重量部基準である。
【0030】
[調製1]
利尻昆布(乾燥物)210gに、70%エタノール水溶液490gを加えて、30℃で30分間抽出処理を行った。抽出処理後、濾紙(No.2)を用いて固液分離を行うことで、エタノール抽出昆布エキス450g(調製1:固形分6.06%)を得た。
【0031】
[実施例1]
調製1で得られた昆布エキス100gに、水道水90gを加えて、さらに、リパーゼ製剤であるリパーゼOFを0.02g添加して、40℃で2時間酵素処理を行った。酵素処理後、70℃で30分間酵素失活処理を行うことで、本発明の酵素処理昆布エキス180g(実施例1:固形分3.1%)を得た。リパーゼ活性を有する酵素を用いた酵素処理時のエタノール濃度は、35%であった。
【0032】
[実施例2]
調製1で得られた昆布エキス100gに、水道水30gを加えて、さらに、リパーゼ製剤であるリパーゼOFを0.02g添加して、40℃で2時間酵素処理を行った。酵素処理後、70℃で30分間酵素失活処理を行うことで、本発明の酵素処理昆布エキス120g(実施例2:固形分5.1%)を得た。リパーゼ活性を有する酵素を用いた酵素処理時のエタノール濃度は、50%であった。
【0033】
[対比試験1]
実施例1及び2の本発明の酵素処理昆布エキス並びに調製1のエタノール抽出昆布エキスについて、ガスクロマトグラフィー(以下、GCという)で以下に示す測定条件にて脂肪酸エチルエステル含有量を測定し、昆布由来固形物あたりの含有量を算出した。結果を表1に示す。
さらに、実施例1の本発明の酵素処理昆布エキス及び調製1のエタノール抽出昆布エキスについて、モニター8人による官能評価(香気及び呈味)を実施した。試料は、各エキスの固形物重量の5倍量となるデキストリン(パインデックス(登録商標)#2:松谷化学工業株式会社製)をそれぞれ添加し溶解させた後、スプレードライにて乾燥させ各エキス粉末とし、得られた各エキス粉末3gを0.5%食塩水100gで希釈して調製した。結果を表2に示す。
【0034】
<GCの測定条件>
検出器:Flame Ionization Detector(FID)
カラム:BPX70(内径:0.25mm、長さ:30m、膜圧:0.25μm。SGE社製)
カラム温度:150℃→5℃/分で昇温→180℃(10分間保持)→10℃/分で昇温→220℃(5分間保持)
キャリアガス:ヘリウム(110kPa、流量:0.9ml/分)
インジェクタ温度:260℃
内部標準:n−ヘンエイコサン酸メチル
検体:試料を常法に従ってジエチルエーテル抽出・留去した後、ヘキサンに溶解した。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
表1に示すとおり、実施例1及び実施例2の本発明の酵素処理昆布エキスは、各種の脂肪酸エチルエステルを含有していたが、調製1のエタノール抽出昆布エキスは、脂肪酸エチルエステルが全く検出されなかった。さらに、表2に示すとおり、官能評価について、酵素処理により脂肪酸エチルエステルを含有させた実施例1の本発明の酵素処理昆布エキスは、熟成感のある香気が強く、その呈味も厚みがあり、まとまりのあるバランスの良い風味を有していたが、調製1のエタノール抽出昆布エキスでは、生臭い香りを有し、不快な苦味や雑味を多く感じるもので、全体としての風味のまとまりがないものであった。
【0038】
[実施例3]
利尻昆布(乾燥物)50gに、5%エタノール水溶液450gを加えた後、リパーゼ製剤であるリパーゼOFを0.025g添加し、50℃で2時間抽出処理をしながら酵素処理を行った。抽出及び酵素処理後、80℃で10分間酵素失活処理を行った後、不織布を用いて固液分離を行い、液部を回収することで、本発明の酵素処理昆布エキス265g(実施例3:固形分5.8%)を得た。リパーゼ活性を有する酵素を用いた酵素処理時のエタノール濃度は、5%であった。
【0039】
[比較例1]
利尻昆布(乾燥物)50gに、水道水450gを加えて、50℃で2時間抽出処理を行った。抽出処理後、80℃で10分間加熱処理を行った後、不織布を用いて固液分離を行い、液部を回収することで、水抽出昆布エキス246g(比較例1:固形分5.9%)を得た。
【0040】
[比較例2]
利尻昆布(乾燥物)50gに、5%エタノール水溶液450gを加えて、50℃で2時間抽出処理を行った。抽出処理後、80℃で10分間加熱処理を行った後、不織布を用いて固液分離を行い液部を回収することで、エタノール抽出昆布エキス252g(比較例2:固形分6.1%)を得た。
【0041】
[比較例3]
利尻昆布(乾燥物)50gに、水道水450gを加えた後、リパーゼ製剤であるリパーゼOFを0.025g添加し、50℃で2時間抽出・酵素処理を行った。抽出・酵素処理後、80℃で10分間酵素失活処理を行った後、不織布を用いて固液分離を行い、液部を回収することで、水抽出酵素処理昆布エキス248g(比較例3:固形分6.0%)を得た。
【0042】
[対比試験2]
実施例3の本発明の酵素処理昆布エキス、比較例1の水抽出昆布エキス、比較例2のエタノール抽出昆布エキス及び比較例3の水抽出酵素処理昆布エキスについて、対比試験1と同様にしてGCで脂肪酸エチルエステル含有量を測定し、昆布由来固形物あたりの含有量を算出した。結果を表3に示す。
さらに、実施例3の本発明の酵素処理エキス及び比較例2のエタノール抽出昆布エキスについて、モニター10人による官能評価(香気及び呈味)を実施した。試料は、各エキスを0.5%食塩水で10倍に希釈して調製した。結果を表4に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
表3に示すとおり、実施例3の本発明の酵素処理昆布エキスは、脂肪酸エチルエステルを含有していたが、比較例1の水抽出昆布エキス、比較例2のエタノール抽出昆布エキス及び比較例3の水抽出酵素処理昆布エキスは、いずれも脂肪酸エチルエステルが全く検出されなかった。さらに、表4に示すとおり、官能評価においても、脂肪酸エチルエステルを酵素処理により含有させた実施例3の本発明の酵素処理昆布エキスは、比較例2のエタノール抽出昆布エキスより、その香気や呈味が顕著に強く、全体の風味もまとまっており、格別優れたものとなった。
【0046】
[実施例4]
日高昆布(乾燥物)25gに、10%エタノール水溶液475gを加えた後、リパーゼ製剤であるリパーゼA「アマノ」6を0.05g添加し、30℃で4時間抽出処理をしながら酵素処理を行った。抽出及び酵素処理後、70℃で1時間酵素失活処理を行った後、濾紙(No.2)を用いて固液分離を行い、得られた濾液をエバポレータを用いて減圧濃縮することで、本発明の酵素処理昆布エキス50g(実施例4:固形分21.0%)を得た。リパーゼ活性を有する酵素を用いた酵素処理時のエタノール濃度は、10%であった。
【0047】
[比較例4]
日高昆布(乾燥物)25gに、水道水475gを加えて、30℃で4時間抽出処理を行った。抽出処理後、70℃で1時間加熱処理を行った後、濾紙(No.2)を用いて固液分離を行い、得られた濾液をエバポレータを用いて減圧濃縮することで、水抽出昆布エキス48g(比較例4:固形分21.6%)を得た。
【0048】
[対比試験3]
実施例4の本発明の酵素処理昆布エキス及び比較例4の水抽出昆布エキスについて、対比試験1と同様にしてGCで脂肪酸エチルエステル含有量を測定し、昆布由来固形物あたりの含有量を算出した。結果を表5に示す。
さらに、実施例4の本発明の酵素処理エキス及び比較例4の水抽出昆布エキスについて、モニター10人による官能評価(香気及び呈味)を実施した。試料は各エキスを水道水で40倍に希釈して調製した。結果を表6に示す。
【0049】
【表5】
【0050】
【表6】
【0051】
表5に示すとおり、実施例4の本発明の酵素処理昆布エキスは、脂肪酸エチルエステルを含有していたが、比較例4の水抽出昆布エキスは、脂肪酸エチルエステルが全く検出されなかった。さらに、表6に示すとおり、官能評価においても、脂肪酸エチルエステルを酵素処理により含有させた実施例4の本発明の酵素処理昆布エキスは、比較例4の昆布エキスより、その香気や呈味が顕著に強く、全体の風味もまとまっており、格別優れたものとなった。
【0052】
[実施例5]
利尻昆布(乾燥物)40gに、50%エタノール水溶液160gを加えて、40℃で1時間抽出処理を行った後、水道水160gを加えて、さらに、リパーゼ製剤であるリパーゼOFを0.02g添加して、40℃で2時間さらに抽出処理しながら酵素処理を行った。抽出及び酵素処理後、70℃で30分間酵素失活処理を行った後、濾紙(No.2)を用いて固液分離を行うことで、本発明の酵素処理昆布エキス280g(実施例5:固形分7.3%)を得た。リパーゼ活性を有する酵素を用いた酵素処理時のエタノール濃度は、25%であった。
【0053】
[比較例5]
利尻昆布(乾燥物)40gに、50%エタノール水溶液160gを加えて、40℃で1時間抽出処理を行った後、水道水160gを加えて、さらに、40℃で2時間抽出処理を行った。抽出処理後、70℃で30分間加熱処理を行った後、濾紙(No.2)を用いて固液分離を行うことで、エタノール抽出昆布エキス280g(比較例5:固形分6.2%)を得た。
【0054】
[対比試験4]
実施例5の本発明の酵素処理昆布エキス及び比較例5のエタノール抽出昆布エキスについて、対比試験1と同様にしてGCで脂肪酸エチルエステル含有量を測定し、昆布由来固形物あたりの含有量を算出した。結果を表7に示す。
【0055】
【表7】
【0056】
表7に示すとおり、実施例5の本発明の酵素処理昆布エキスは、脂肪酸エチルエステルを含有していたが、比較例5のエタノール抽出昆布エキスは、脂肪酸エチルエステルが全く検出されなかった。さらに、0.5%食塩水で10倍希釈した各エキスについて香気及び呈味をモニターにより評価したところ、いずれについても、実施例5の本発明の酵素処理昆布エキスの方が好ましいと評価した人数が、比較例5の昆布エキスの方が好ましいと評価した人数を上回った。脂肪酸エチルエステルを酵素処理により含有させた実施例5の本発明の酵素処理昆布エキスは、比較例5の昆布エキスよりも、その香気や呈味が顕著に強く、全体の風味もまとまっており、格別優れたものとなった。
【0057】
[実施例6]
真昆布(乾燥物)50gに、食塩25g、15%エタノール水溶液425gを加えた後、リパーゼ製剤であるリリパーゼA−10Dを0.01g添加し、40℃で2時間抽出及び酵素処理を行った。抽出及び酵素処理後、80℃で30分間酵素失活処理を行った後、目開き75μmのふるいを用いて固液分離を行い、濾液(固形分:6.7%)を回収した。得られた濾液50gに、デキストリン(パインデックス#2:松谷化学工業株式会社製)20gを加えて溶解させた後、フリーズドライにて乾燥させることで、本発明の酵素処理昆布エキス粉末20g(実施例6)を得た。リパーゼ活性を有する酵素を用いた酵素処理時のエタノール濃度は、15%であった。
【0058】
[比較例6]
真昆布(乾燥物)50gに、食塩25g、水道水425gを加えて、40℃で2時間抽出処理を行った。抽出処理後、80℃で1時間加熱処理を行った後、目開き75μmのふるいを用いて固液分離を行い、濾液(固形分:7.3%)を回収した。得られた濾液50gに、デキストリン(パインデックス#2:松谷化学工業株式会社製)20gを加えて溶解させた後、フリーズドライにて乾燥させることで、水抽出昆布エキス粉末20g(比較例6)を得た。
【0059】
[対比試験5]
実施例6の本発明の酵素処理昆布エキス粉末及び比較例6の水抽出昆布エキス粉末について、対比試験1と同様にしてGCで脂肪酸エチルエステル含有量を測定し、昆布由来固形物あたりの含有量を算出した。結果を表8に示す。
【0060】
【表8】
【0061】
表8に示すとおり、実施例6の本発明の酵素処理昆布エキス粉末は、脂肪酸エチルエステルを含有していたが、比較例6の水抽出昆布エキス粉末では、脂肪酸エチルエステルが全く検出されなかった。さらに、各エキス粉末5gを水道水100gで希釈した試料について香気及び呈味をモニターにより評価したところ、いずれについても、実施例6の本発明の酵素処理昆布エキス粉末の方が好ましいと評価した人数が、比較例6の水抽出昆布エキス粉末の方が好ましいと評価した人数を上回った。脂肪酸エチルエステルを酵素処理により含有させた実施例6の本発明の酵素処理昆布エキス粉末は、比較例6の水抽出昆布エキス粉末より、その香気や呈味が顕著に強く、全体の風味もまとまっており、格別優れたものとなった。