【実施例】
【0072】
以下、実施例に基づき、本発明を詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。本実施例中、部は重量部を、%は重量%を、それぞれ表す。
【0073】
実施例及び比較例で使用したカーボンブラック(「CB」と略記することがある)、ポリビニルブチラール樹脂(「PVB」と略記することがある)、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂(「PVA」と略記することがある)、その他分散剤、アミン系化合物、バインダー、電極活物質等を以下に示す。
【0074】
また、各表には、各原料の組成のみを記載しているが、特に記載の無い残りの成分は、全てN−メチル−2−ピロリドン(NMP)である。
<カーボンブラック>
・#30(三菱化学社製):ファーネスブラック、一次粒子径30nm、比表面積74m
2/g、以下#30と略記する。
・#5(三菱化学社製):ファーネスブラック、平均一次粒子径76nm、比表面積29m
2/g、以下#5と略記する。
・MA77(三菱化学社製):酸化処理カーボンブラック、一次粒子径23nm、比表面積130m
2/g、以下MA77と略記する。
・デンカブラックHS−100(電気化学工業社製):アセチレンブラック、一次粒子径48nm、比表面積39m
2/g、以下HS−100と略記する。
・デンカブラック粒状品(電気化学工業社製):アセチレンブラック、一次粒子径35nm、比表面積69m
2/g、以下粒状品と略記する。
・EC−300J(アクゾ社製):ケッチェンブラック、一次粒子径40nm、比表面積800m
2/g、以下300Jと略記する。
(カーボンブラックの平均一次粒子径の測定方法)
カーボンブラックの平均一次粒子径(MV)は、以下に示す方法により測定(算出)した。カーボンブラックの粉末にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、樹脂型分散剤としてDisperbyk−161を少量添加し、超音波洗浄機の水浴中で1分間分散処理して測定用試料を調製した。この試料を測定用ターゲットに塗布、乾燥し、透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製透過型電子顕微鏡H−7650)により、100個以上のカーボンブラックの一次粒子が観察出来る写真を撮影した。撮影された画像にて、カーボンブラック粒子の任意の100個を選び、その一次粒子の短軸径と長軸径の平均値を粒子径(d)とし、次いで個々のカーボンブラックを、求めた粒子径(d)を有する球とみなして、それぞれの粒子の体積(V)を求め、この作業を100個のカーボンブラック粒子について行い、そこから下記式(1)を用いて算出した。
式(1) MV=Σ(V・d)/Σ(V)
<ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂>
・エスレックBL−10(積水化学工業社製): ポリビニルブチラール樹脂、水酸基28mol%、ブチラール化度71mol%、計算分子量15000。以下BL−10と略記する。
・エスレックBX−5(積水化学工業社製): ポリビニルアセタール樹脂、水酸基33mol%、アセタール化度66mol%、計算分子量130000。以下BX−1と略記する。
・エスレックKS−10(積水化学工業社製): ポリビニルアセタール樹脂、水酸基25mol%、アセタール化度74mol%、計算分子量17000。以下KS−10と略記する。
・モビタール B30HH(クラレ社製): ポリビニルブチラール樹脂、水酸基11%。以下B30HH と略記する。
<ポリビニルホルマール樹脂>
・ビニレックK(JNC社製): ポリビニルホルマール樹脂。以下ビニレックと略記する。
<ポリビニルアルコール樹脂>
・クラレポバール PVA−405(クラレ社製): ポリビニルアルコール樹脂、けん化度82mol%、平均重合度500、以下、PVA−405と略記する。
・クラレポバール C−506(クラレ社製):カチオン変性ポリビニルアルコール樹脂、けん化度76mol%、平均重合度600、以下C−506と略記する。
<分散剤>
[界面活性剤]
・エマルゲンA−60(花王社製):ノニオン性の界面活性剤(ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル)、以下、EmA−60と略記する。
・デモールN(花王社製):アニオン性の界面活性剤(β−ナフタレンスルホン酸−ホルマリン縮合物のナトリウム塩)、以下、DemNと略記する。
・アジスパーPB−821(味の素ファインテクノ社製):塩基性官能基含有共重合物、以下PB−821と略記する。
<アミン系化合物>
・エチルアミン: 脂肪族1級アミン。分子式C
2H
7N。分子量45。
・n−オクチルアミン: 脂肪族1級アミン。分子式C
8H
17NH
2。分子量129。以下、オクチルアミンと略記する。
・ステアリルアミン: 脂肪族1級アミン。分子式C
18H
37NH
2。分子量269.5。
・ジステアリルアミン: 脂肪族2級アミン。分子式C
36H
75N。
・ジメチルオクチルアミン: 脂肪族3級アミン。分子式C
10H
23N。分子量157。
・ジメチルヘキサデシルアミン: 脂肪族3級アミン。分子式C
18H
39N。分子量269.5。
・トリ−n−オクチルアミン: 脂肪族3級アミン。分子式C
24H
51N。分子量354。以下、トリオクチルアミンと略記する。
・トリエタノールアミン: アルカノールアミン系3級アミン。分子式C
6H
15NO
3。pKa=7.6。
・ジエタノールアミン: アルカノールアミン系2級アミン。分子式C
4H
11NO
2。pKa=8.9。
・N,N−ジメチル−2−アミノエタノール: アミノエタノール系3級アミン。分子式C
4H
11NO。pKa=9.8。以下、DMAEと略記する。
・アミート102(花王社製): ポリオキシエチレンドデシルアミン(平均EO=2モル付加、3級アミン)。
・アミート105(花王社製): ポリオキシエチレンドデシルアミン(平均EO=5モル付加、3級アミン)。
・アミート302(花王社製): ポリオキシエチレンオクタデシルアミン(平均EO=2モル付加、3級アミン)。
・アミート320(花王社製): ポリオキシエチレンオクタデシルアミン(平均EO=20モル付加、3級アミン)。
・ポリエチレンイミン 1200(純正化学社製): 分子量1200、アミン価19。以下、PEI1200と略記する。
・ポリエチレンイミン 1800(純正化学社製): 分子量1800、アミン価19。以下、PEI1800と略記する。
・ポリエチレンイミン 10000(純正化学社製): 分子量10000、アミン価18。以下、PEI10000と略記する。
・ヘキサメチレンテトラミン: 脂環式含窒素複素環化合物(3級アミン)。分子式C
6H
12N
4。
・L(+)−アルギニン: 塩基性アミノ酸。分子式C
6H
14N
4O
2。以下、アルギニンと略記する。
・L−アスパラギン酸: 酸性アミノ酸。分子式C
4H
7NO
2。以下、アスパラギン酸と略記する。
・L−アスパラギン1水和物: 中性アミノ酸。分子式C
4H
8N
2O
3。以下、アスパラギンと略記する。
<その他の含窒素化合物>
・アクリルアミド: アミド系化合物。分子式C
3H
5NO。
・アセトニトリル: ニトリル系化合物。分子式C
2H
3N。
<バインダー>
・KFポリマーW1100(クレハ社製):ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、以下、PVDFと略記する。
・KFポリマーW7300(クレハ社製):ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、以下、#7300と略記する。
<活物質>
・HLC−22(本荘ケミカル社製):正極活物質コバルト酸リチウム(LiCoO
2)、平均粒径6.6μm、比表面積0.62m
2/g、以下、LCOと略記する。
・人造黒鉛:負極活物質、平均粒径18μm、以下、黒鉛と略記する。
<カーボンブラック分散液の評価>
実施例、比較例で得られたカーボンブラック分散液の評価は、粘度、分散後平均粒径を測定することにより行った。
【0075】
粘度値の測定は、B型粘度計(東機産業社製「BL」)を用いて、分散液温度25℃、B型粘度計ローター回転速度60rpmにて、分散液をヘラで充分に撹拌した後、直ちに行った。測定に使用したローターは、粘度値が100mPa・s未満の場合はNo.1を、100以上500mPa・s未満の場合はNo.2を、500以上2000mPa・s未満の場合はNo.3を、2000以上10000mPa・s未満の場合はNo.4のものをそれぞれ用いた。得られた粘度値が10000mPa・s以上の場合については、「>10000」と記載したが、これは評価に用いたB型粘度計では評価不可能なほどに高粘度であったことを表す。低粘度であるほど分散性が良好であり、高粘度であるほど分散性が不良である。貯蔵安定性の評価は、カーボンブラック分散液を50℃にて、10日間静置して保存した後の、粘度値の変化から評価した。変化の少ないものほど安定性が良好であることを示す。
【0076】
また、分散後平均粒径の測定は、カーボンブラック分散液をNMPにより適切な濃度に希釈した後に、超音波処理を施した液を測定サンプルとして用い、動的光散乱法方式の粒度分布計(日機装社製「ナノトラックUPA−EX」、光源波長780nm)を用いて平均粒径(D50値)を測定することにより行った。各種測定条件は、上記方法によりNMP希釈した分散液のローディングインデックス値を0.7以上1.3以下に、粒子条件を、吸収性粒子、粒子形状非球形、密度1.80とし、溶媒条件を、溶媒屈折率1.47、液温20℃における溶媒粘度1.80mPa・s、液温25℃における溶媒粘度1.65mPa・sと設定し、得られたメジアン径をD50値として表記した。測定結果は、液温25℃のNMP溶剤についてバックグラウンド値を測定した後、上記方法にて調製した液温25℃のサンプルを測定容器に充填し、上記測定条件にて測定を行うことにより得た。
【0077】
同じカーボンブラックを使用した場合、D50値が小さいほど分散性が良好であり、大きいほど分散性が不良であることを示す。貯蔵安定性の評価は、カーボンブラック分散液を50℃にて、10日間静置して保存した後のD50値の変化から評価した。変化の少ないものほど安定性が良好であることを示す。
<カーボンブラック分散液の調製>
(ポリビニルブチラール樹脂またはポリビニルアセタール樹脂と、各種アミン系化合物とを用いたカーボンブラック分散液)
[実施例1−1〜実施例1−17]
表1に示す組成に従い、ガラス瓶にNMPとポリビニルブチラール樹脂またはポリビニルアセタール樹脂と各種アミン系化合物を仕込み、充分に混合溶解、または混合分散した後、各種カーボンブラックを加え、1.25mmφジルコニアビーズをメディアとして、ペイントシェーカーで2時間分散し、各カーボンブラック分散液を得た。いずれも低粘度かつD50値が小さく、貯蔵安定性も良好であった。
[比較例1−1〜比較例1−4]
表1に示す組成に従い、ガラス瓶にNMPと、BX−5または各種分散剤とを仕込み、充分に混合溶解、または混合分散した後、各種カーボンブラックを加え、1.25mmφジルコニアビーズをメディアとして、ペイントシェーカーで2時間分散した。しかし、得られた分散液は、いずれも高粘度な状態、あるいは著しく高粘度な状態であるか、または、D50値が大きいことから、カーボンブラックを十分に分散する事が出来ていないことがわかる。この結果から、各種ビニルアルコール骨格含有樹脂を分散剤として単独で用いた場合、または従来公知の分散剤を用いた場合には、所望とする高濃度かつ低粘度のカーボンブラック分散液を得る事ができないことが明らかとなった。
<バインダーを含むカーボンブラック分散液の調製>
[実施例2−1〜実施例2−31]
表2に示す組成に従い、ガラス瓶にNMPと各種ビニルアルコール骨格含有樹脂と各種アミン系化合物と各種バインダーを仕込み、充分に混合溶解、または混合分散した後、各種カーボンブラックを加え、ホモジナイザーで1時間分散し、各カーボンブラック分散液を得た。いずれも粗大粒子がなく、かつ低粘度であり、貯蔵安定性も良好であった。
[実施例2−39]
表2に示す組成に従い、ガラス瓶にNMPとBL−10とオクチルアミンを仕込み、充分に混合溶解した。次いで、粒状品とPVDFとを均質に混合した粉体混合品を調製し、これを事前に調製したBL−10とオクチルアミンのNMP溶液に添加した。その後、ホモジナイザーで1時間分散し、カーボンブラック分散液を得た。粗大粒子がなく、かつ低粘度であり、貯蔵安定性も良好であった。
[実施例2−40]
表2に示す組成に従い、ガラス瓶に実施例1−1のカーボンブラック分散液を65部、PVDFを6.5部、NMPを28.5部加え、ホモジナイザーで1時間分散し、各カーボンブラック分散液を得た。粗大粒子がなく、かつ低粘度であり、貯蔵安定性も良好であった。
[比較例2−1〜比較例2−3]
表2に示す組成に従い、ガラス瓶にNMPと各種ビニルアルコール骨格含有樹脂とPVDFを仕込み、充分に混合溶解、または混合分散した後、粒状品を加え、ホモジナイザーで1時間分散し、各カーボンブラック分散液を得た。しかし、得られた分散液の粘度は、バインダーを添加せずに調製した場合と同様に高粘度であり、カーボンブラックおよびバインダー濃度のさらなる向上はできないことが明らかとなった。
[比較例2−4〜比較例2−5]
表2に示す組成に従い、ガラス瓶にNMPと、BL−10と各種添加剤とPVDFを仕込み、充分に混合溶解、または混合分散した後、粒状品を加え、ホモジナイザーで1時間分散し、各カーボンブラック分散液を得た。しかし、得られた分散液の粘度は、各種ビニルアルコール骨格含有樹脂を単独で分散剤として用いた場合と同様に高粘度であり、カーボンブラックおよびバインダー濃度のさらなる向上はできないことが明らかとなった。
[比較例2−6、比較例2−8、比較例2−10]
表2に示す組成に従い、ガラス瓶にNMPと、各種ビニルアルコール骨格含有樹脂とオクチルアミンとPVDFを仕込み、充分に混合溶解、または混合分散した後、HS−100を加え、ホモジナイザーで1時間分散し、各カーボンブラック分散液を得た。しかし、得られた分散液の粘度は、各種ビニルアルコール骨格含有樹脂を単独で分散剤として用いた場合と同様に高粘度であり、カーボンブラック100重量部に対するオクチルアミンの添加量が0.1重量部よりも小さい場合、カーボンブラックおよびバインダー濃度のさらなる向上はできないことが明らかとなった。
[比較例2−7、比較例2−9、比較例2−11]
表2に示す組成に従い、ガラス瓶にNMPと、各種ビニルアルコール骨格含有樹脂とオクチルアミンとPVDFを仕込み、充分に混合溶解、または混合分散した後、粒状品を加え、ホモジナイザーで1時間分散し、各カーボンブラック分散液を得た。粗大粒子がなく、かつ低粘度であったが、貯蔵安定性が良好では無かった。
[比較例2−12〜比較例2−13]
表2に示す組成に従い、ガラス瓶にNMPと、BL−10とオクチルアミンとPVDFを仕込み、充分に混合溶解、または混合分散した後、粒状品を加え、ホモジナイザーで1時間分散し、各カーボンブラック分散液を得た。得られた分散液は、いずれも著しく高粘度な状態であり、D50値が大きいことから、カーボンブラックを十分に分散する事が出来ていない状態であった。
<カーボンブラック以外の粉体として正極活物質または負極活物質を含むカーボンブラック分散液の調製>
[実施例3−1〜実施例3−7]
表3に示す組成に従い、実施例2−2〜2−4、実施例2−6、実施例2−8、実施例2−9、および実施例2−11で得た、バインダーを含有するカーボンブラック分散液に対し、正極活物質であるLCOを仕込み、ディスパーにより充分に混合し、各混合液を得た。用いたカーボンブラック分散液が低粘度であるために、LCOを多量に添加することができ、また、得られた混合液も低粘度な状態であった。
[実施例3−8〜実施例3−10]
表3に示す組成に従い、実施例2−2、実施例2−4および実施例2−8で得た、バインダーを含有するカーボンブラック分散液に対し、負極活物質である黒鉛を仕込み、ディスパーにより充分に混合し、各混合液を得た。用いたカーボンブラック分散液が低粘度であるために、黒鉛を多量に添加することができ、また、得られた混合液も低粘度な状態であった。
[比較例3−1〜比較例3−3]
表3に示す組成に従い、比較例2−1、比較例2−6および比較例2−7で得た、バインダーを含有するカーボンブラック分散液に対し、正極活物質であるLCOを仕込み、ディスパーにより充分に混合し、各混合液を得た。いずれも、用いたカーボンブラック分散液の粘度値が高いことから、実施例3−1〜実施例3−7と比較して、LCOを添加した際の粘度値の上昇が大きく、また、安定性評価試験における粘度の上昇幅も大きかった。
[比較例3−4〜比較例3−6]
表3に示す組成に従い、比較例2−1、比較例2−6および比較例2−7で得た、バインダーを含有するカーボンブラック分散液に対し、負極活物質である黒鉛を仕込み、ディスパーにより充分に混合し、各混合液を得た。いずれも、用いたカーボンブラック分散液の粘度値が高いことから、実施例3−8〜実施例3−11と比較して、MFCを添加した際の粘度値の上昇が大きく、また、安定性評価試験における粘度の上昇幅も大きかった。
<電池電極合材層の作製>
上記の各実施例、比較例で得られた正極活物質または負極活物質を含むカーボンブラック分散液を電池電極合材液として、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にドクターブレードを用いて塗工した後、減圧下120℃で30分間乾燥し、乾燥後膜厚100μmの塗膜(電池電極合材層)を作製した。
【0078】
得られた電池電極合材層の評価は、表面抵抗と塗膜外観により行った。表面抵抗の測定にはロレスタ−GP(三菱化学アナリテック社製)を用い、JIS K7194に準じて測定した。塗膜外観は、目視で、○:問題なし(良好)、△:斑模様あり(不良)、×:粗粒の筋引きあり(極めて不良)、とした。
[実施例4−1〜実施例4−7、比較例4−1〜比較例4−2]
正極合材液として、実施例3−1〜実施例3−7、比較例3−2〜比較例3−3で得た電池電極合材液を使用して、正極合材層(電池電極合材層)を作製した。評価結果を表4に示した。
[実施例4−8〜実施例4−10、比較例4−3〜比較例4−4]
負極合材液としては、実施例3−8〜実施例3−10、比較例3−5〜比較例3−6で得た電池電極合材液を使用して、負極合材層(電池電極合材層)を作製した。評価結果を表4に示した。
【0079】
表4より、実施例4−1〜実施例4−10の電池電極合材層は、比較例4−1〜比較例4−4の電池電極合材層と比較して塗膜外観が良好であり、さらに、塗膜の表面抵抗が優れていることが明らかとなった。比較例4−1および比較例4−3では、使用した電極合材液の粘度が高すぎるために塗工が困難であった。また、比較例4−2および比較例4−4では多量に含まれるアミン系化合物が絶縁成分として機能した結果、表面抵抗値が高くなったものと考えられる。
<リチウムイオン二次電池正極評価用セルの組み立て>
[実施例5−1〜実施例5−7、比較例5−1〜比較例5−2]
先に調製した電池電極合材液(実施例3−1〜実施例3−7、比較例3−2、比較例3−3の正極合材液)を、集電体となる厚さ20μmのアルミ箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧下120℃で加熱乾燥した後、ローラープレス機にて圧延処理し、厚さ100μmの正極合材層を作製した。これを直径9mmに打ち抜き作用極とし、金属リチウム箔(厚さ0.15mm)を対極として、作用極および対極の間に多孔質ポリプロピレンフィルムからなるセパレーター(セルガード社製#2400)を挿入積層し、電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを容量比1:1で混合した混合溶媒にLiPF
6を1Mの濃度で溶解させた非水電解液)を満たして二極密閉式金属セル(宝泉社製HSフラットセル)を組み立てた。セルの組み立ては、アルゴンガス置換したグローブボックス内で行った。
<リチウムイオン二次電池負極評価用セルの組み立て>
[実施例5−8〜実施例5−10、比較例5−3〜比較例5−4]
先に調製した電池電極合材(実施例3−8〜実施例3−10、比較例3−5、比較例3−6の負極合材液)を、集電体となる厚さ20μmのアルミ箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧下120℃で加熱乾燥した後、ローラープレス機にて圧延処理し、厚さ100μmの負極合材層を作製した。これを直径9mmに打ち抜き作用極とし、金属リチウム箔(厚さ0.15mm)を対極として、作用極および対極の間に多孔質ポリプロピレンフィルムからなるセパレーター(セルガード社製#2400)を挿入積層し、電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを容量比1:1で混合した混合溶媒にLiPF
6を1Mの濃度で溶解させた非水電解液)を満たして二極密閉式金属セル(宝泉社製HSフラットセル)を組み立てた。セルの組み立ては、アルゴンガス置換したグローブボックス内で行った。
<リチウムイオン二次電池正極特性評価>
作製した正極評価用セルを25℃で、充放電装置(北斗電工社製SM−8)を使用して、充電レート1.0Cの定電流定電圧充電(上限電圧4.2V)で満充電とし、充電時と同じレートの定電流で、放電下限電圧3.0Vまで放電を行う充放電を1サイクル(充放電間隔休止時間30分)とし、このサイクルを合計50サイクル行い、充放電を行った。評価後のセルを分解し、電極塗膜の外観(50サイクル後の塗膜外観)を目視にて確認した。塗膜外観の評価基準は、剥がれが認められず外観に全く変化が無い場合を○(極めて良好)、剥がれてはいないが外観に変化が認められる場合を△(良好)、部分的に合材が集電体より剥がれが認められる場合を×(不良)とした。また、容量維持率は、1サイクル目の放電容量に対する50サイクル目の放電容量の百分率であり、数値が100%に近いものほど良好であることを示す。ショート等により正常な充放電曲線が得られず、容量が求められなかった場合は数値無し(−)とした。評価結果を表5に示した。
<リチウムイオン二次電池負極特性評価>
作製した負極評価用セルを25℃で、充放電装置(北斗電工社製SM−8)を使用して、充電レート1.0Cの定電流定電圧充電(下限電圧0.5V)で満充電とし、充電時と同じレートの定電流で電圧が1.5Vになるまで放電を行う充放電を1サイクル(充放電間隔休止時間30分)とし、このサイクルを合計50サイクル行い、充放電サイクルを行った。評価後のセルを分解し、電極塗膜の外観(50サイクル後の塗膜外観)について、正極特性評価と同じ基準で評価した。また、容量維持率についても正極特性と同様に求めた。評価結果を表5に示した。
【0080】
表5より、本発明の電極を使用した実施例5−1〜実施例5−7および実施例5−8〜実施例5−10は、比較例5−1〜比較例5−2および比較例5−3〜比較例5−4と比較して、塗膜外観が良好であり、かつ、50サイクル後の容量維持率についても、良好な結果であった。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
但し、アクリルアミド、アセトニトリルはその他の含窒素化合物である。
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【0086】
【表5】