特許第6142417号(P6142417)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6142417
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】巻取りロール
(51)【国際特許分類】
   B65H 75/00 20060101AFI20170529BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   B65H75/00 Z
   B32B27/00 M
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-214994(P2013-214994)
(22)【出願日】2013年10月15日
(65)【公開番号】特開2014-97889(P2014-97889A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2016年7月6日
(31)【優先権主張番号】特願2012-228020(P2012-228020)
(32)【優先日】2012年10月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中尾 龍也
【審査官】 松井 裕典
(56)【参考文献】
【文献】 実開平1−111272(JP,U)
【文献】 特開平9−142739(JP,A)
【文献】 特開平11−33626(JP,A)
【文献】 特開2011−143998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 75/00−75/50
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取り芯材に積層シートを巻き付けてなる巻取りロールであって、
前記積層シートは、粘着シートと、前記粘着シートと接するように積層された緩和層を備え、
前記粘着シートは、基材フィルムと粘着剤層とを備え、
前記粘着シートと前記緩和層との剥離力が0.02〜2N/25mmであり、
前記緩和層は、圧縮率が1.5〜15%である層を有する巻取りロール。
【請求項2】
前記積層シートの先端部が、前記巻取り芯材と接着性部材により固定されていることを特徴とする請求項1記載の巻取りロール。
【請求項3】
前記緩和層が、剥離層と、クッション層とを備え
前記クッション層は、圧縮率が1.5〜15%であることを特徴とする請求項1又は2記載の巻取りロール。
【請求項4】
前記粘着シートの厚さ(A)と前記緩和層の厚さ(B)は、(A)/(B)=0.5〜10であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の巻取りロール。
【請求項5】
前記積層シートは、前記緩和層を前記巻取り芯材側にして巻き取られていることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の巻取りロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻取り芯材に積層シートを巻き付けてなる巻取りロールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ラップフィルム等の基材フィルム、金属箔、紙、印刷物、粘着シート等のシートは、製造工程の最終段階で、長尺シートの末端を巻取り芯材に巻きつけてロール状に巻き取ることが一般的である。これらのシートは、末端部を粘着テープ等で巻取り芯材に固定してから巻取る場合が多いが、シート自体の厚みと、固定用粘着テープの厚みにより、巻取りロールの巻取り芯材付近でシートに段差が生じる場合がある。この段差の存在は、シートの全長が長くなるほど、巻取り芯材を回転させて長尺シートを巻き取っていく過程で、シート表面から巻取り芯材の中心方向に向けて荷重が生じることで(いわゆる、巻き絞まり)、シートに当該段差に起因する変形が生じる場合がある。
【0003】
ラップフィルムのように厚さが薄く、かつ変形が使用態様に影響しにくいシートの場合、変形の影響は少ないが、例えば金属箔のように変形しやすいシートの場合、剛性が高い基材フィルムを使用したシートの場合、或いは印刷物などの場合には、シートに前記段差に起因した変形が生じる場合がある。シートの厚さや剛性にもよるが、巻取り芯材から数十m〜100m程度にわたり、シートに変形が生じることで、シートの歩留まりが低下し、商品価値が低下して販売や使用ができなくなる。シートの変形は、基材フィルムを使用した粘着シートにおいても問題になっている。特に表面の凹凸を精密に制御する必要がある粘着シートでは、シートの変形が粘着シートの歩留まり低下に大きな影響を与えていた。
【0004】
そこで、特許文献1では、シートを巻き取った際に生じるシートの段差を防止してシートの変形を軽減するために、巻取り芯材自体に段差を設ける方法が提案されている。
【0005】
また、特許文献2では、巻取り芯材の外周に弾性層を設け、取り付け箇所の段差を回避、軽減させる方法が開示されている。
【0006】
特許文献3では巻取り芯材へのシートの取り付け箇所にカバーを設けて段差を回避、軽減させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−246192号公報
【特許文献2】特開2000−351278号公報
【特許文献3】特開2008−260601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、巻取り芯材に段差を設ける方法は、シートの厚さに応じた段差を有する巻取り芯材を多数準備する必要があるため、生産コストの観点から効率が悪かった。
また、巻取り芯材に弾性層を設置する方法は、シートの全長が100m以上の長尺シートになると弾性層の存在により長尺シートの巻取り芯材にかける応力と、長尺シートが巻取りロールに接する箇所に生ずる応力を適切に制御することが難しく、シートに応力に由来する皺が発生し、歩留まりが低下する場合があった。
また、巻取り芯材にカバーを設ける方法は、繰り返し使用する必要性から、カバーの材質が金属製で、かつ段差を減らすために端部が鋭利な形状にする必要があり、カバーを取り扱う作業者がケガをしやすいなど安全性の問題があった。
【0009】
本発明は、作業者の安全性に優れ、巻取り芯材に段差加工を必要とせず、また弾性層やカバーの設置を要さずに、巻取り芯材周辺部のシートの前記段差に由来する変形を抑制し、粘着シートの歩留まりを向上できる巻取りロールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の巻取りロールは、巻取り芯材に積層シートを巻き付けてなる巻取りロールであって、前記積層シートは、粘着シートと、前記粘着シートと接するように積層された緩和層を備える。前記粘着シートは、基材フィルムと粘着剤層とを備え、前記粘着シートと前記緩和層との剥離力が0.02〜2N/25mmであり、前記緩和層の圧縮率が1.5〜15%である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、緩和層を所定の圧縮率とし、さらに緩和層と粘着シートを適切な剥離力とすることにより、積層シートを巻取る際に粘着シートに加わる巻き絞まりに由来する応力を緩和できる。その結果、積層シートの変形を生じ難くすることができる。さらに、緩和層が粘着シートに密着することで、筋またはシワ等の変形の発生を抑制できる。
【0012】
また、作業者にとって安全性が優れ、巻取り芯材に段差加工を必要とせず、また弾性層やカバーの設置を要さずに、積層シートを巻き取ったときの積層シートの巻取り先端部の段差を緩和することができる。その結果、巻取り芯材周辺部のシートの段差に由来する変形を抑制し、粘着シートの歩留まり向上を実現する巻取りロールを提供できる。従って、全長の長い粘着シート(長尺シートという)に好適に適用できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A図1Aは、本発明の積層シートの一例を示す模式的断面図である。
図1B図1Bは、本発明の積層シートの一例を示す模式的断面図である。
図2図2は、本発明の巻取りロールを説明するための部分拡大模式図である。
図3図3は、圧縮率の測定方法を側面から示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願明細書において、「シート」、「テープ」および「フィルム」は同義語である。また、「キャスト粘着テープ」は、基材または芯材が無く、粘着剤層のみで構成した粘着テープとする。また、以降において説明する図面において、同一要素部材には同一符号を付し、適宜、重複部分の説明を省略する。
【0015】
本発明の巻取りロールは、以下に詳述する積層シートを巻取り芯材に巻き付けたロールからなる。図1Aおよび図1Bは、本発明の積層シートの一例を示す模式的断面図である。積層シート10は、緩和層11と、緩和層11と接するように積層された粘着シート21を少なくとも有する。
【0016】
図1Aの粘着シート21は、芯材として機能する基材フィルム23と、これを挟持する第1粘着剤層22a、第2粘着剤層22b、および表層に形成された剥離層24を有する両面粘着型のシートである。図1Bの粘着シート21は、基材として機能する基材フィルム23の片側(緩和層11側)に粘着剤層22が設けられた片面粘着型のシートである。粘着シート21は、巻取り芯材に巻き取る対象部材である。粘着シート21は、用途やニーズに応じて種々の積層構造を取ることが可能である。好ましい態様としては、芯材に基材フィルムを使用し、その両面に粘着剤層を備えた両面粘着型のシート(図1A参照)が挙げられる。粘着シート12は、マーキングフィルムやインクジェット受像層付き粘着シート等の用途にも好適である。
【0017】
粘着シート21に使用する基材フィルム23は、基材または芯材として使用できる素材である。具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリビニルアルコール、トリアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリノルボルネン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル/ウレタン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリスチレン樹脂、ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂などの樹脂、並びにこれらの樹脂を複合化した樹脂が挙げられる。また、アルミ、銅、銀および金等の展性・延性がある金属ならびにその合金の金属箔も好適である。基材フィルム23は、複数のフィルムを積層してもよく、発泡体であってもよい。基材フィルム23の厚みは、粘着テープとして一般的な厚さであれば良く特に限定されないが、2μm〜500μmが好ましく、10μm〜300μmがより好ましい。
【0018】
粘着剤層22(以降の説明において、粘着剤層22は、特に断りが無い場合においては図1Aの第1粘着剤層22a、第2粘着剤層22bも含む)は、粘着テープとして使用できる粘着剤から形成することが好ましい。具体的には、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤等が挙げられる。粘着剤層22の厚みは、1〜200μmが好ましく、5〜100μmがより好ましい。
【0019】
剥離層24は、積層シート10を巻取り芯材に巻き取る際に、緩和層11の表層と粘着シート21の表層の剥離性を高める役割を担う。剥離層24は、剥離性フィルムまたは剥離樹脂層が好ましい。
【0020】
粘着シート21の厚みは、巻取り芯材で巻き取れる程度の厚さであれば良く特に限定されないが、2μm〜1mmが好ましく、15μm〜500μmがより好ましい。
【0021】
緩和層11は、粘着シート21と密着しつつ、積層シート10を巻き取る時に粘着シート21にかかる変形応力を緩和し、粘着シート21の変形を抑制する機能を担う。この応力緩和のために、緩和層の圧縮率は、1.5〜15%の範囲とする。緩和層11の圧縮率のより好ましい範囲は、1.5〜10%である。緩和層の圧縮率を1.5〜15%とすることにより、粘着シート21を巻取り芯材に巻き取る際にかかる応力を緩和できる。その結果、粘着シートに変形が生じにくくなり、積層シート10の歩留まりが向上する。粘着シート21と緩和層11との剥離力は、0.02〜2N/25mmが好ましい。
【0022】
図1Aおよび図1Bの緩和層11は、クッション層12と剥離層13の2層の積層体からなる。但し、これは一例であり、上記特定の圧縮率および粘着シートとの適切な剥離力を満たしていれば、単層のみにより構成したり、他の層をさらに積層することも可能である。
【0023】
緩和層11の厚さは、応力緩和が可能でシート層の変形を抑制できればよく、特に限定されないが、10〜500μmが好ましく、20〜300μmがより好ましい。厚さを10〜500μmとすることで、応力を緩和して、変形をより効果的に抑制できる。また。適切な厚さであるためコスト面からも好ましい。
【0024】
本発明の緩和層の圧縮率は、以下の方法により求めた値とする。
即ち、緩和層を直径22.4mmの円盤状に切り出し、これを10枚重ねることで測定試料とする。この測定試料を23℃50%恒温恒湿室に24時間以上静置する。その後、測定試料に第1荷重として300g/cm2をかけてから1分後の測定試料の厚さT1を計測する。次いでT1計測から連続してこの測定試料に第2荷重として1500g/cm2を追加して合計1800g/cm2をかけて1分後の厚さT2を計測する。そして、下記数式(1)より圧縮率を求める。
数式(1) 圧縮率(%)=(T1−T2)/T1×100
【0025】
緩和層の圧縮率を高めるための素材として、例えば紙、不織布、発泡体、弾性ゲル、エラストマーが例示できる。前記紙は、例えばグラシン紙、上質紙、クラフト紙、アート紙、コート紙、合成紙等が挙げられる。前記発泡体は、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。前記不織布は、例えばパルプ繊維、レーヨン繊維、麻繊維、繊維状ポリオレフィン系樹脂、繊維状ポリエチレンテレフタレート系樹脂等によって抄紙されたものが挙げられる。前記弾性ゲルは、例えばアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。前記エラストマーは、例えば天然ゴム、スチレンイソプレンブロック共重合体、スチレンブタジエンブロック共重合体、アクリルゴム、シリコーンゴム、ビニルエーテル共重合体、ウレタンゴム等が挙げられる。これらの素材のなかでも紙が好ましい。
【0026】
緩和層11は、クッション層12のみにより構成することもできるが、剥離層13を積層することが好ましい。剥離層13を積層することにより、粘着シート21との剥離力を適切にすることができる。
【0027】
剥離層13は、剥離性フィルムまたは剥離樹脂層が好ましい。剥離性フィルムは、粘着シートの粘着力により以下の通りに選択できる。例えば粘着力が高い場合は、表面にシリコーン処理、フッ素処理等の剥離処理が施されたフィルム(セパレーターともいう)が好ましい。一方、粘着力が低い場合は、ポリエチレンやポリエチレンテレフタレートなどの剥離処理が無いフィルムを使用できる。剥離樹脂層は、剥離性フィルムを使用せずに、シリコーン処理剤やフッ素処理剤等の剥離剤を緩和層に直接塗工することで形成できる。
【0028】
粘着シート21が、図1Bに示すような片面粘着型の場合、粘着剤層22と接する剥離層13の表面に、シリコーン処理、フッ素処理等の剥離処理を施すことが好ましい。また、粘着シート21が図1Aに示すような両面粘着型の場合、緩和層11の外側主面に、シリコーン処理、フッ素処理等の剥離処理を施したフィルムや紙(セパレーターともいう)を積層することもできる。また、剥離層24を設けずに第2粘着剤層22bを最表層とする場合には、粘着シート表面と緩和層11の表面11Bとが、積層シート10を巻き取る際に密着して、積層シート10を巻き出すときの剥離力が過剰になることを防止するために、緩和層11の表面11Bにシリコーン処理、フッ素処理等の剥離処理を施してもよい。
【0029】
前記剥離性フィルムを緩和層11に接着する方法は特に限定されないが、公知の接着剤、両面粘着テープまたはキャスト粘着テープを使用する方法が好ましい。
【0030】
緩和層11のより好ましい態様として、剥離層13として剥離性フィルムを、クッション層12として紙を使用する例が挙げられる。前記紙は、上質紙またはクラフト紙が好ましい。紙は雰囲気中の湿度の影響により伸縮する場合がある。そのためクッション層に紙を使用する場合、この伸縮により粘着テープに皺が生じることがあるため、伸縮を効果的に防止する観点から、紙にプラスチックスの樹脂層を形成することが好ましい。
【0031】
積層シート10は、巻取り芯材に巻き取るために、粘着シート21と緩和層11が、自然に剥離しない程度以上の密着性が必要である。具体的に剥離力は、0.02N/25mm以上であることが好ましい。剥離力の上限は粘着シートが変形しない程度であればよい。そこで剥離力は2N/25mm以下が好ましい。なお剥離力は0.05〜1.5N/25mmがより好ましい。剥離力が0.02〜2N/25mmであることで、粘着シートを巻取るときに応力が加わったときにも、粘着シートに皺が入りにくく、かつ緩和層を剥がすときに粘着シートに剥離ダメージを与え難い。以上のように緩和層は、いわゆる合紙、または単なる剥離性シートとは異なる。
【0032】
また、粘着シート21と緩和層11との厚さの関係は、緩和層21の厚みが極端に粘着シート厚みを上回らないことが好ましい。粘着シート21の厚さ(A)と緩和層11の厚さ(B)は、(A)/(B)=0.5〜10が好ましく、1〜5がより好ましい。
【0033】
前記剥離力の測定は、積層シートを25mm幅、200mm長さに切り出しして試料とする。そして、この試料の粘着シート側を変形しにくい板材、例えばアルミニウム板に両面粘着テープで固定した上で、緩和層11を剥離速度300mm/min、剥離角180°で剥離することにより行う。なお剥離力は、JIS−Z0237に準拠して温度23℃、湿度50%RH雰囲気下で測定する。
【0034】
本発明の巻取りロールの粘着シートに変形が生じたか否かを評価する方法は、例えば、巻取り芯材の巻き付けた端部から1m毎に粘着シートを切り取って試料とし、その試料の背後に設置した電球等からに光を光源として、試料に筋やムラが生じた箇所の端部からの長さにより粘着シートの変形を評価することができる。
【0035】
本発明の巻取りロールの粘着シートを例えば、内部に光源を設置した光透過看板に使用する場合は、粘着シートに生じた斑がその視認性を低下させ、商品性を損なう可能性がある。この視認性を評価する方法は、例えば、巻取り芯材の巻き付けた端部から90mの位置で粘着シートを切り取り、厚さ2mmのアクリル板に貼り付けた積層板を試料として、その試料の背後に設置した電球等からの光を光源として、試料に斑が生じているか否かで評価することができる。
【0036】
本発明の巻取り芯材は特に限定されないが、例えば紙管、金属管、プラスチック管が例示できる。一般に印刷機、塗工機、成形機、抄しゃ機等の製造装置に付随する巻取り装置で使用される横幅方法に長い管である。前記巻取り芯材は、一般的に直径1〜40cm程度が好ましい。また巻取り芯材の横幅は、巻取り装置に設置できる幅であればよく特に限定されない。一般的には2mm〜6m程度である。
【0037】
積層シート10は、その先端部を巻取り芯材に押し当てつつ巻き取ることで、巻取りロールを得ることができる。図2に、本発明の巻取りロールの部分拡大説明図を示す。巻取りロール30は、巻取り芯31に積層シート10が巻き付けられた構成を成す。積層シート10は、緩和層11を下側に、粘着シート21を上側になるように巻き付けている。図2の例とは反対に、積層シートの粘着シート21を下側にしてもよい。
【0038】
従来、粘着シートを巻取り芯材に巻き取る際に段差部分により、基材フィルムおよび粘着剤層が変形し、粘着シートの歩留まりが低下するという問題があった。しかしながら、本発明の積層シートによれば、図2に示すように、積層シート10の巻き始めの先端部分に積層シート10を巻き重ねることによって生じる段差部分を、厚み方向において圧縮が可能な緩和層11を設けることによって縮小している。その結果、粘着シートの変形を最小限に抑制できる。
【0039】
積層シート10の別の巻取り方法として、積層シート10の先端部を、接着性部材を使用して巻取り芯材に固定して巻き取る方法も例示できる。接着性部材には両面粘着テープ、キャスト粘着テープ、片面粘着テープがある。第1の方法として、積層シート10の緩和層11B面の先端部を、両面粘着テープを使用して巻取り芯材に固定する方法が例示できる。また、第2の方法として、積層シート10の粘着シート21を下側にし、その先端部を、粘着テープを使用して巻取り芯材と固定する方法が例示できる。接着性部材を使用する場合、図2の段差構造が粘着テープの厚み分だけ大きくなるが、緩和層11を設けることによって、厚み方向において圧縮を促し、段差を縮小することができる。
【0040】
また、従来、マーキングフィルムやインクジェット受像層付き粘着シートの用途に用いる場合、例えば内部に光源を設置した光透過型看板に使用した場合、斑(uneven)が生じることがあった。当該斑があると、内部の光により斑が明確に視認できるため、美観が重要なこれら用途では商品価値が損なわれてしまうという問題があった。しかしながら、本発明の積層シートによれば、緩和層11を用いることにより上記変形を抑制して斑等が視認されるのを抑制できる。
【0041】
また、本発明の巻取りロールによれば、巻取り芯材に段差加工を必要とせず、弾性層やカバーの設置を要さないので、製造工程の簡便化を図ることができる。また、作業者の安全性に優れる。本発明によれば、積層シートの巻取りはじめに由来する段差に起因する段差部分を緩和層により緩和することで、段差に由来する粘着シートの変形を抑制し、粘着シートの歩留まりを向上できるので、長尺シートを巻き取る巻取りロールにおいて特に好適である。
【0042】
なお、上記実施形態は、本発明の一形態であり、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお実施例は、全て、長さ100m、幅1000mmの積層シートが巻き取られた巻取りロールが得られるように行った。
また、剥離性フィルムとして厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートシートの片側に剥離力が異なるシリコーン樹脂で剥離処理した剥離性フィルムを用意した(Y1(軽剥離力)、Y2(中軽剥離力)、Y3(中剥離力)、Y4(重剥離力))。
【0044】
<実施例1>
剥離性フィルム(Y1)の剥離処理非形成面にアクリル系粘着剤を塗工して乾燥厚さ15μmの粘着剤層(51)を形成した。この粘着剤層(51)にクッション層として圧縮率6.6%、厚さ75μmのクラフト紙(1)を貼り合せることで緩和層(a1)を得た。
得られた緩和層(a1)の剥離処理面アクリル系粘着剤を塗工して乾燥厚さ40μmの粘着剤層(61)を形成した。この粘着剤層に長さ200m、幅1000mm、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートシート(X1)に貼合せた。
別途、長さ200mの前記剥離性フィルム(Y1)の剥離処理面にアクリル系粘着剤を塗工して乾燥厚さ40μmの粘着剤層(71)を形成した。この粘着剤層(71)を前記ポリエチレンテレフタレートシート(X1)に貼り合わせることで、積層シート(b1)を得た。
得られた積層シート(b1)のうち100mを、横幅1050mm、内径76.5mm、外径92.5mmのアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂製のプラスチック管に、厚さ5μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを芯材として厚さ5μmの粘着剤層を有する両面粘着テープを貼り付けた部分に、当該積層シートの先端部を固定しつつ巻取り、巻取りロール(c1)を得た。
粘着シートと緩和層との剥離力、巻取り芯材段差跡による不良m数、および面全体のムラに関する評価結果を表2に示した。
【0045】
<実施例2>
クラフト紙(1)に代えて、片面にポリエチレン樹脂を厚さ30μm積層した圧縮率3.6%、総厚さ95μmのクラフト紙(2)を使用し、前記ポリエチレン樹脂非積層面に粘着剤層(51)を形成した以外は実施例1と同様に行うことで巻取りロール(c2)を得た。
【0046】
<実施例3>
ポリエチレンテレフタレート(X1)に代えて、厚さ188μmのポリエチレンテレフタレートシート(X2)を使用した以外は実施例2と同様に行うことで巻取りロール(c3)を得た。
【0047】
<実施例4>
剥離性フィルム(Y1)に代えて剥離性フィルム(Y2)を用い、クラフト紙(2)に代えて、片面にポリエチレン樹脂を厚さ30μm積層した圧縮率3.1%、総厚さ65μmのクラフト紙(3)を使用し、(3)のポリエチレン樹脂非積層面に粘着剤層(51)を形成した以外は実施例3と同様に行うことで巻取りロール(c4)を得た。
【0048】
<実施例5>
剥離性フィルム(Y1)に代えて剥離性フィルム(Y2)を用い、クラフト紙(1)に代えて、圧縮率2.6%、厚さ88μmの上質紙(4)を使用した以外は実施例1と同様に行うことで巻取りロール(c5)を得た。
【0049】
<実施例6>
ポリエチレンテレフタレート(X1)に代えて、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートシート(X3)を使用した以外は実施例5と同様に行うことで巻取りロール(c6)を得た。
【0050】
<実施例7>
剥離性フィルム(Y1)に代えて剥離性フィルム(Y3)を用い、クラフト紙(2)に代えて、両面にそれぞれポリエチレン樹脂を厚さ30μm積層した長さ200m、圧縮率2.1%、総厚さ95μmの上質紙(5)を使用した以外は実施例3と同様に行うことで巻取りロール(c7)を得た。
【0051】
<実施例8>
剥離性フィルム(Y3)に代えて剥離性フィルム(Y4)を用い、両面にそれぞれポリエチレン樹脂を積層した上質紙(5)に代えて、圧縮率11.3%、厚さ37μmのマニラ麻繊維不織布(6)を使用した以外は実施例7と同様に行うことで巻取りロール(c8)を得た。
【0052】
<実施例9>
不織布(6)に代えて、圧縮率11.1%、厚さ100μmの繊維状ポリエチレンテレフタレート樹脂繊維不織布(7)を使用した以外は実施例8と同様に行うことで巻取りロール(c9)を得た。
【0053】
<実施例10>
クラフト紙(1)に代えて、圧縮率9.5%、厚さ100μmのポリウレタン樹脂発泡体(8)を使用し、粘着剤層(51)を形成した以外は実施例1と同様に行うことで巻取りロール(c10)を得た。
【0054】
<実施例11>
クラフト紙(2)に代えて、圧縮率12.4%、総厚さ100μmのポリウレタン樹脂系ゲル(9)を使用し、粘着剤層(51)を形成した以外は実施例3と同様に行うことで巻取りロール(c11)を得た。
【0055】
<実施例12>
剥離性フィルム(Y1)の剥離処理非形成面にアクリル系粘着剤を塗工して乾燥厚さ80μmの粘着剤層(52)を形成した、この粘着剤層(52)に厚さ6μmのポリエチレンテレフタレートシート(X4)を積層させて、圧縮率1.8%、総厚さ111μmの緩和層(a12)を得た。
得られた緩和層(a12)を用いた以外は実施例3と同様に行うことで巻取りロール(c12)を得た。
【0056】
<実施例13>
厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートシート(X5)の片側面にアクリル系粘着剤を塗工して乾燥厚さ15μmの粘着剤層(51)を形成した、この粘着剤層(51)にクッション層として両面にそれぞれポリエチレン樹脂を厚さ30μm積層した圧縮率2.2%、総厚さ130μmの上質紙(10)と貼り合せて緩和層(a13)を得た。
厚さ188μmのポリエチレンテレフタレートシート(X2)にアクリル系微粘着性粘着剤を塗工して乾燥厚さ15μmの粘着剤層(62)を形成し得られた緩和層(a13)と貼合せた。
別途、剥離性フィルム(Y1)の剥離処理面にアクリル系粘着剤を塗工して乾燥厚さ40μmの粘着剤層(71)を形成した。この粘着剤層(71)を前記ポリエチレンテレフタレートシート(X2)に貼り合わせることで、積層シート(b13)を得た以外は実施例1と同様に行うことで巻取りロール(c13)を得た。
【0057】
<実施例14>
上質紙(10)に代えて、両面にそれぞれポリエチレン樹脂を厚さ30μm積層した圧縮率2.4%、総厚さ180μmの上質紙(11)を使用し、ポリエチレンテレフタレートシート(X2)の代わりにポリエチレンテレフタレートシート(X1)を使用し、乾燥厚さ40μmとした粘着剤層(71)の代わりに乾燥厚さ25μmとした粘着剤層(72)を形成した以外は実施例13と同様に行うことで巻取りロール(c14)を得た。
【0058】
<実施例15>
ポリエチレンテレフタレートシート(X2)にアクリル系微粘着性粘着剤を塗工して乾燥厚さ15μmの粘着剤層(62)を形成し、両面にそれぞれポリエチレン樹脂を厚さ30μm積層した圧縮率2.2%、総厚さ130μmの上質紙(10)と積層することで緩和層(a15)を得た。
別途、剥離性フィルム(Y1)の剥離処理面にアクリル系粘着剤を塗工して乾燥厚さ40μmの粘着剤層(71)を形成した。この粘着剤層(71)をポリエチレンテレフタレートシート(X2)に貼り合わせることで、積層シート(b15)を得た以外は実施例1と同様に行うことで巻取りロール(c15)を得た。
【0059】
<実施例16>
クラフト紙(2)の代わりに両面にポリエチレン樹脂を厚さ30μm積層し、ポリエチレン樹脂層の片側にシリコーン樹脂で剥離処理した圧縮率2.2%、総厚さ130μmの上質紙(12)を使用して緩和層(a16)とした以外は実施例3と同様に行うことで巻取りロール(c16)を得た。
【0060】
<実施例17>
剥離性フィルム(Y1)の剥離処理非形成面にアクリル系粘着剤を塗工して乾燥厚さ10μmの粘着剤層(53)を形成し、この粘着剤層(53)にクッション層として不織布(6)の代わりに圧縮率10.9%、総厚さ32μmのパルプ繊維不織布(14)を貼り合せることで緩和層(a17)を得た。また、ポリエチレンテレフタレートシート(X2)の代わりに厚さ250μmのポリエチレンテレフタレートシート(X6)を用いた以外は実施例8と同様に行うことで巻取りロール(c17)を得た。
【0061】
<比較例1>
クラフト紙(1)に代えて、圧縮率1.3%、厚さ60μmの2軸延伸ポリプロピレン樹脂シート(15)を使用し、この片面側に粘着剤層(51)を形成した以外は実施例1と同様に行うことで巻取りロール(c21)を得た。
【0062】
<比較例2>
2軸延伸ポリプロピレン樹脂シート(15)に代えて、圧縮率28.5%、厚さ105μmのポリエチレン樹脂発泡体シート(16)を使用し、この片面側に粘着剤層(51)を形成した以外は比較例1と同様に行うことで巻取りロール(c22)を得た。
【0063】
<比較例3>
緩和層を使用せず、粘着剤層(61)のポリエチレンテレフタレートシート(X1)と接しない面に、剥離性フィルム(Y1)の剥離処理面を貼り合わせた以外は実施例1と同様に行うことで巻取りロール(c23)を得た。
【0064】
<比較例4>
剥離性フィルム(Y1)に代えて、厚さ25μmのアルキッド樹脂で剥離処理した剥離性フィルム(Y5)を用いた以外は比較例1と同様に行うことで巻取りロール(c24)を得た。
【0065】
実施例1〜17および比較例1〜4で得られた巻取りロールを下記に項目について評価した。
【0066】
<剥離力>
得られた巻取りロールから積層シートを巻き出して、幅25mm、長さ100mmの試料を作成した。この試料の緩和層を厚さ2mm、幅30mm、長さ110mmのステンレス板に両面テープに固定した。試料の粘着テープを剥離角180℃、剥離速度300mmで剥離力を測定した。なお剥離力はJISZ−0237に準拠して23℃−50%RH雰囲気で測定した。
【0067】
<圧縮率>
図3を使用して圧縮率の測定方法を示す。試料台9に緩和層を直径22.4mmの円盤状に切り出し、これを10枚重ねて測定試料2として設置した。直径5mmの円柱3に第1荷重4および第2荷重5は、円柱3に設けた落下防止ストッパーでそれぞれ固定している。その第1荷重4は荷重抑え6で、また第2荷重5は荷重抑え7を使用して円柱3に荷重が係らない状態で準備する。
圧縮率測定は、円柱3の下端を測定試料2に接触させた状態で、荷重抑え6を取り、第1荷重4が円柱3に加わる(荷重:300g/cm2)。その1分後の測定試料の厚さ(T1)を測定する。次いで第1荷重をかけてから1分後に荷重抑え7を取り第2荷重5が円柱3に加わる(荷重:1500g/cm2)。第2荷重をかけてから1分後に測定試料の厚さ(T2)を測定する。T1およびT2の測定は円柱の上方に設置したレーザー変位計1を使用して、各測定時間で円柱3の上端の位置変動8から求めた。圧縮率は、下記数式(1)で求めた。
数式(1) 圧縮率(%)=(T1−T2)/T1×100
【0068】
<歩留まり>
得られた巻取りロールから積層シートを巻き出して、巻取り芯材の巻き付けた端部から1m毎に100cm四方の積層シートを切り取り試料とする。この試料から緩和層を剥がし、目視で粘着シートに変形が確認できた端部からの長さを歩留まりとする。この歩留まり評価は、数値が少ないほど良好である。
【0069】
<視認性>
得られた巻取りロールから積層シートを10m巻き出し100cm四方を切り取り試料とする。この試料から緩和層を剥がし厚さ2mmのPMMA板(アクリル板)に貼り付けた積層板に対して、当該積層板の背後に設置した電球から光を当てることで、試料に斑が生じるか否か評価した。評価基準は以下の通りである。
○:積層板に斑が無い。
△:積層板にわずかに斑がある。
×:積層板に斑がある。実用不可。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
本発明の巻取りロールは、粘着シートを巻取り芯材に巻き取った巻取りロールを用いる分野全般において好適に利用できる。特に長尺シートを巻取り芯材に巻き取った巻取りロールにおいて好適である。
【符号の説明】
【0073】
10:積層シート
11:緩和層
12:クッション層
13:剥離層
21:粘着シート
22:粘着剤層
23:基材フィルム
24:剥離層
30:巻取りロール
31:巻取り芯材
図1A
図1B
図2
図3