(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6142461
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】改良型水中津波減災設備
(51)【国際特許分類】
E02B 3/06 20060101AFI20170529BHJP
【FI】
E02B3/06 301
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2015-129335(P2015-129335)
(22)【出願日】2015年6月26日
(65)【公開番号】特開2017-14705(P2017-14705A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2016年7月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512108717
【氏名又は名称】▲濱▼田 英外
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 英外
【審査官】
須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−217173(JP,A)
【文献】
実開平06−043025(JP,U)
【文献】
特開平07−119129(JP,A)
【文献】
特開2008−265396(JP,A)
【文献】
特開2010−101097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/04−3/14
E04H 9/00−9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
丸竹などの軽質自然材料をワイヤーで筏状に組んだ構造体である防波筏を、その浮力によって水中に壁状態で広げ、津波に構造体とその構造体の内部空間に取り込んだ水とを併せて移動させたり、津波を構造体の筏の隙間を通り抜けさせてその力を摩擦で低減させたり進行方向を変更させることによって、津波の威力を軽減する津波減災設備であって、防波筏を繋いでいるワイヤーを、海底に設置するアンカー金具を通して海面に戻ってくる分延長して、通常時はその先に、補助浮きを設置しておき、構造体に採用している自然材料の腐食が進んで保守が必要になった時に、補助浮きを取り外して新しい防波筏を繋ぎ、古くなった防波筏を引き上げることによって、簡便に保守交換ができるようにした補助浮き付き改良型水中津波減災設備
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
津波や高波などの海からの波の威力を緩衝するために、水中に設置する設備で、保守が簡単にできるように改良したものである。
【背景技術】
【0002】
今までの津波防御用の防波堤は、鉄筋の入ったコンクリートなどを使った固定式のものが主体であり、大がかりで、材料費や工事費が膨大であった。
今までに発明されていた可動式の津波減災設備は、空気室を設置するなどにより、複雑な工夫により動作されるもので、材料費や工事費が嵩むし、信頼性が必ずしも高くなかった。
又、軽質材で水中に浮かせて津波減災を行う設備も開発されていたが、設置方法が複雑で、多くの工事を伴い、経済的でなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許公開2010−101097
【特許文献2】特許公開平7−119129
【特許文献3】特開2013−217173
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固定式の防波堤でかかる膨大な材料費や工事費を低減させること。
他の可動式の防波堤で必要である複雑な工夫や動作を避け、自然の力をうまく活用した設計により、高い信頼性で動作が行われるようにすること。
丸竹などの自然材料を使い、水中に設置することから、構造体が腐食し弱くなる可能性が高いので、水中設置の条件下でも交換し易くして、定期的に保守し耐久性を高めること。
【課題を解決するための手段】
【0005】
津波の威力をできるだけ沿岸部に伝えないように、水中で津波を減災することを考慮した。 水に浮く丸竹や木材などの自然材料で製作し、その浮力で水中に壁状に屹立させ、津波を緩衝し減災する。
丸竹は内部に空間があり、その空間に水を取り込んでも水中に浮くことができるので、積極的に水を取り込んで、重量と強度を増し、津波減災効果を高めることができるように、水の取り込み口を設けておく。
一方、丸竹は自然材料で、水中に長時間保持すると、腐食し弱くなるので、その対策として、交換し易い工夫を加え、腐食を抑え、耐久性を持たせる。
【発明の効果】
【0006】
当発明では、丸竹や木材などの軽質で環境に優しい自然材料を使うので、安価な材料費、工事費で済む。 この設備は浮体を中心としており、水中に壁形式で設置し、押し寄せる波の力を、浮体を移動させる力と、水を浮き上がらせる力に分散させ、津波の威力を緩衝、低減させる。
自然材料が水中で腐食して弱くなる問題に対して、定期的に交換し乾燥させることにより、より耐久性の高い設備を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】
図3は、本発明で、沿岸部施設に対応した構造体設置図である。
【
図4】
図4は、本発明の津波減災時の動作図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
構造体は、丸竹などの軽質自然材料をワイヤー(棕櫚などの丈夫な繊維紐を含む)でつなぎ合わせて、筏(イカダ)状に製作する。1本が破損しても機能し続けるように3本以上のワイヤーで繋ぐことで冗長性を持たせる。ワイヤーを海底に埋め込んだリング状のアンカー金具に通して繋げるので、筏状の構造体はその浮力によって、海中に壁状態に広がる。 1個の構造体は、5−10m長さで、海中に壁状に広がった時の長さは海深より長くして、その余剰分を海面に広がらせ、津波に対しての減災効果を増加させ、持続させる。(
図1及び
図2参照)
個々の構造体は、材料の長さなどの制限のため、あまり大きな構造体にできないので、海岸線を広く防御するような場合には、複数の構造体を設置する。実際には、
図3に示したように、海岸線に対して、千鳥状などにして複数層設置することで対応する。
構造体が、津波などの波の威力を緩衝する主な働きは、以下の2点で行われる。
一点は、構造体である浮体が、波によって海中深くに沈み込ませられることと、波の進行方向が上方に向くことにより、浮き上がった水の重量分も、波の進む力を低減する働きであり、もう一点は、浸水が構造体の間を通り抜ける時の抵抗分、波の進む力が低減することである。
図4参照。
一方、丸竹などの自然材料を水中で長時間使用するので、腐食して構造体が弱くなり易いので、これを防止するために、水中に設置した構造体を定期的に取り出し交換を行なう。取り出した構造体は、陸上で乾燥することにより腐食を防止し、再利用することで耐久性を高める。 これらを、設備保守として行うために、ワイヤーを海深と同等の長さ分延長して、水面上で、容易に交換できるようにする。この保守交換において、交換された防波筏に代わって補助の浮きを繋ぎ、新しく設置された防波筏が壁状に水中に広がるのを維持させる。 この補助浮きも、津波の浸水時には抵抗として動作するので、併せて津波減災に役立てることができる。
又、これらの設備は海に浮く設備となるので、海水浴客や釣り人の溺水事故防止の補助設備として、活用することもできる。
【符号の説明】
【0009】
1.防波筏:丸竹等の軽質自然材料で製作した、5−10m長さの棒状もしくは柱状の構造体を繋ぎ合わせたもの
2.ワイヤー:構造体を繋ぐ繊維紐を主体としたワイヤーで、丈夫で海水に強いもの
海深と同じ長さ分、ワイヤーを余剰に長くし、交換時に新しい防波筏を繋いで、沈みこませ、古い防波筏を浮かび上がらせて、取り出しやすくする
3.アンカー金具:リング形状で、ワイヤーを通し、構造体全体を繋ぎ留める金具。 海底に埋込み、津波が押し寄せた時に、防波筏全体が津波に耐えられるような強度を持たせる。
4.補助浮き:防波筏の保守交換をするために、ワイヤーが固定されていないので、通常時にワイヤーが移動して防波筏が機能しなくならないようにバランスをとるために設置される浮き。津波浸水が起きた時には浸水に対して抵抗となって、減災する機能を併せ持つ。