特許第6142464号(P6142464)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6142464
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/10 20060101AFI20170529BHJP
   F21S 8/12 20060101ALI20170529BHJP
   F21W 101/10 20060101ALN20170529BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20170529BHJP
【FI】
   F21S8/10 170
   F21S8/12 140
   F21W101:10
   F21Y115:10
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-36622(P2013-36622)
(22)【出願日】2013年2月27日
(65)【公開番号】特開2014-165088(P2014-165088A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2016年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】大和田 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】坂元 忠史
【審査官】 下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−026185(JP,A)
【文献】 特開2007−335301(JP,A)
【文献】 特開2013−211236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/10
F21S 8/12
F21W 101/10
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延びる光軸上に配置され、出射面と、前記出射面から出射する光が入射する入射面と、前記入射面側の基準点と、を含む投影レンズと、
前記基準点又はその近傍に配置され、前記入射面へ入射し、前記出射面から出射して前方へ照射される光を放出する光源と、
前記投影レンズの後方に配置されたヒートシンクと、を備えた車両用灯具において、
前記投影レンズは、レンズ部と脚部とを含み、
前記レンズ部は、メニスカスレンズであるとともに、前記出射面と前記入射面とを含み、
前記脚部は、前記レンズ部の周囲から前記ヒートシンク側に向かって延びて前記ヒートシンクに固定され、
前記出射面は、その上端部近傍に設定された第1屈折面とそれ以外の第2屈折面とを含んでおり、
前記第1屈折面は、水平断面形状が、前記出射面から出射する前記光源からの光が水平方向に拡散する形状とされ、鉛直断面形状が、前記出射面から出射する前記光源からの光が所定位置を下限としてそれより上方の領域を照射する形状とされ、
前記第2屈折面は、水平断面形状が、前記出射面から出射する前記光源からの光が水平方向に拡散する形状とされ、鉛直断面形状が、前記出射面から出射する前記光源からの光が所定位置を上限としてそれより下方の領域を照射する形状とされていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記第1屈折面と前記第2屈折面とは、その境界において段差無く連続していることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に係り、特に、オーバーヘッドサイン領域を照射する配光パターンを形成することが可能な車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用灯具の分野においては、オーバーヘッドサイン領域を照射する配光パターンを形成することが可能な車両用灯具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6(a)は、従来の車両用灯具200の縦断面図である。
【0004】
図6(a)に示すように、従来の車両用灯具200は、LED等の半導体発光素子を用いた光源210、光源210の前方に配置された投影レンズ220、光源210の上方に配置され、光源210から入射する光を前方斜め上方へ向けて反射してオーバーヘッドサイン領域を照射するオーバーヘッド配光パターンを形成する反射面230等を備えている。
【0005】
上記構成の車両用灯具200においては、光源210から放出されて投影レンズ220を透過し、前方に照射される光は、図6(b)に示すように、水平線H−Hより下に、左右方向に拡散した基本配光パターンPaを形成する。一方、光源210から放出されて反射面230に入射し、当該反射面230により前方斜め上方へ向けて反射される光は、図6(b)に示すように、水平線H−Hより上のオーバーヘッドサイン領域を照射するオーバーヘッド配光パターンPbを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−277818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記構成の車両用灯具200においては、基本配光パターンPaとオーバーヘッド配光パターンPbとを形成することが可能となるものの、反射面230を用いる分、車両用灯具200のサイズ・面積が増大する、また、部品点数が増加して構造が複雑化する、という問題がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、反射面を用いることなく、基本配光パターンとオーバーヘッド配光パターンとを形成することが可能な車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、車両前後方向に延びる光軸上に配置され、出射面と、前記出射面から出射する光が入射する入射面と、前記入射面側の基準点と、を含む投影レンズと、前記基準点又はその近傍に配置され、前記入射面へ入射し、前記出射面から出射して前方へ照射される光を放出する光源と、を備えた車両用灯具において、前記出射面及び前記入射面のうち少なくとも一方は、その上端部近傍に設定された第1屈折面とそれ以外の第2屈折面とを含んでおり、前記第1屈折面は、水平断面形状が、前記出射面から出射する前記光源からの光が水平方向に拡散する形状とされ、鉛直断面形状が、前記出射面から出射する前記光源からの光が所定位置を下限としてそれより上方の領域を照射する形状とされ、前記第2屈折面は、水平断面形状が、前記出射面から出射する前記光源からの光が水平方向に拡散する形状とされ、鉛直断面形状が、前記出射面から出射する前記光源からの光が所定位置を上限としてそれより下方の領域を照射する形状とされていることを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、次の利点を生ずる。
【0011】
第1に、従来のように反射面を用いることなく、オーバーヘッドサイン領域を照射するオーバーヘッド配光パターンと基本配光パターンとを形成することが可能となる。これは、出射面が、基本配光パターンの形成に用いられる光源からの光を制御する第2屈折面に加えて、オーバーヘッド配光パターンの形成に用いられる光源からの光を制御する第1屈折面を含んでいることによるものである。
【0012】
第2に、第1屈折面を出射面のうち中央部近傍の一部領域に設定する場合と比べ、出射面(特に、第1屈折面)を必要な形状精度で作成することが容易になる。その結果、投影レンズを透明樹脂で成形(例えば、射出成形)する場合、出射面(特に、第1屈折面)に求められる形状精度を誤差範囲内に納めやすくなる。これは、第1屈折面を出射面のうち上端部近傍の一部領域に設定したことによるものである。
【0013】
第3に、第1屈折面を出射面のうち中央部近傍の一部領域に設定する場合と比べ、基本配光パターンが受ける影響を抑制することができる。これは、第1屈折面を出射面のうち上端部近傍の一部領域に設定した結果、第2屈折面が第1屈折面の片側(下側)においてのみ接することによるものである。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第1屈折面と前記第2屈折面とは、その境界において段差無く連続していることを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、次の利点を生ずる。
【0016】
第1に、オーバーヘッド配光パターンを、基本配光パターンからとぎれることなく上方に延びたパターンとして形成することができる。これは、第1屈折面と第2屈折面とが、その境界において段差無く連続(例えば、接線連続)していることによるものである。
【0017】
第2に、車両用灯具を搭載した車両(自動二輪車、自動車等)が運転中に上下動したときであっても、基本配光パターンがちらつくのを抑制することができる。これは、オーバーヘッド配光パターンが基本配光パターンからとぎれることなく上方に延びたパターンとして形成される結果、基本配光パターン中のカットオフラインが明瞭となりすぎるのを抑制することができることによるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、反射面を用いることなく、基本配光パターンとオーバーヘッド配光パターンとを形成することが可能な車両用灯具を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態である車両用灯具10の斜視図である。
図2】車両用灯具10の分解斜視図である。
図3】(a)投影レンズ12を、第1屈折面18a(第2屈折面18b)を通る水平面で切断した断面図、(b)投影レンズ12を、光軸AXを含む鉛直面で切断した断面図である。
図4】投影レンズ12を、光軸AXを含む鉛直面で切断した断面図である。
図5】車両用灯具10により形成される配光パターンの例である。
図6】(a)従来の車両用灯具200の縦断面図、(b)従来の車両用灯具200により形成される配光パターンの例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態である車両用灯具10について図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は本発明の一実施形態である車両用灯具10の斜視図、図2は分解斜視図、図3(a)は投影レンズ12を、光軸AXを含む水平断面で切断した断面図、図3(b)は投影レンズ12を、光軸AXを含む鉛直断面で切断した断面図、図4は投影レンズ12を、光軸AXを含む鉛直断面で切断した断面図、図5は車両用灯具10により形成される配光パターン(オーバーヘッド配光パターンPA、基本配光パターンPB)の例である。
【0022】
本実施形態の車両用灯具10は、自動二輪車や自動車等の車両用前照灯に適用することができる。
【0023】
車両用灯具10は、いわゆるダイレクトプロジェクション型(直射型とも称される)の灯具ユニットで、図1図2に示すように、投影レンズ12、光源14、ヒートシンク16等を備えている。
【0024】
投影レンズ12は、透明樹脂(アクリルやポリカーボネイト等)製で、レンズ部12a(本発明の投影レンズに相当)、レンズ部12aの左右両側からヒートシンク16側に向かって延びる一対の脚部12b、12b等を含んでいる。投影レンズ12の材質は、透明樹脂(アクリルやポリカーボネイト等)以外の、例えば、ガラスであってもよい。
【0025】
図3(a)、図3(b)に示すように、レンズ部12aは、車両前後方向に延びる光軸AX上に配置され、車両前方側の出射面18、車両後方側の入射面20、入射面20側の光学設計上の基準点Fを含んでいる。
【0026】
レンズ部12aは、例えば、出射面18が凸面で入射面20が凹面のメニスカスレンズである。レンズ部12aは、メニスカスレンズ以外の、例えば、出射面18が凸面で出射面18が平面の平凸レンズ、その他形状のレンズであってもよい。
【0027】
レンズ部12aは、例えば、基準点Fが光源14近傍(例えば、横長矩形の発光面14aの水平方向に延びる下端縁の中心近傍)に位置した状態で、一対の脚部12b、12bの先端部をヒートシンク16の前面にネジ止め固定することで、光源14の前方かつ光軸AX上に配置されている(図1参照)。光軸AXは、基準点Fを通って車両前後方向に延びている。
【0028】
図1図3(b)、図4に示すように、レンズ部12aの出射面18は、第1屈折面18a、第2屈折面18bを含んでいる。
【0029】
第1屈折面18aは、入射面20から投影レンズ12内部に入射し、出射面18(第1屈折面18a)から出射する光源14からの光を制御してオーバーヘッドサイン領域を照射するオーバーヘッド配光パターンPA(図5参照)を形成するように設計された面である。
【0030】
オーバーヘッドサイン領域とは、車両前面から約25m前方に配置された仮想鉛直スクリーン上の、水平線H−Hより上2〜4度、鉛直線V−Vから左右それぞれ4度又は8度の範囲であって、道路案内板や道路標識等が存在する領域のことである。
【0031】
具体的には、第1屈折面18aは、水平断面形状が、図3(a)に示すように、第1屈折面18aから出射する光源14からの光RayAが水平方向に拡散する形状とされ、鉛直断面形状が、図3(b)、図4に示すように、第1屈折面18aから出射する光源14からの光RayAが所定位置(例えば、下方0.6度の位置)を下限としてそれより上方の領域(例えば、下方0.6〜上方5度の範囲(オーバーヘッドサイン領域を含む範囲))を照射する形状とされている。
【0032】
第1屈折面18aは、出射面18のうち上端部近傍の一部領域(例えば、図1中、出射面18のうち点線を含む水平面より上の領域)に設定されている。
【0033】
第2屈折面18bは、入射面20から投影レンズ12内部に入射し、出射面18(第2屈折面18b)から出射する光源14からの光を制御して基本配光パターンPB(例えば、ロービーム用配光パターン。図5参照)を形成するように設計された面である。
【0034】
具体的には、第2屈折面18bは、水平断面形状が、図3(a)に示すように、第2屈折面18bから出射する光源14からの光RayBが水平方向に拡散する形状とされ、鉛直断面形状が、図3(b)に示すように、第2屈折面18bから出射する光源14からの光RayBが所定位置(例えば、下方0.6度の位置)を上限としてそれより下方の領域を照射する形状とされている。
【0035】
第2屈折面18bは、出射面18のうち第1屈折面18a以外の領域(例えば、図1中、出射面18のうち点線を含む水平面より下の領域)に設定されている。
【0036】
以下、第1屈折面18aを出射面18のうち上端部近傍の一部領域に設定することの利点について、第1屈折面18aを出射面18のうち中央部近傍の一部領域に設定する場合と対比して説明する。
【0037】
第1に、第1屈折面18aを出射面18のうち上端部近傍の一部領域(例えば、図1中、出射面18のうち点線を含む水平面より上の領域)に設定することで、第1屈折面18aを出射面18のうち中央部近傍の一部領域(例えば、出射面18のうち光軸AXを含む水平面との交線近傍の領域)に設定する場合と比べ、出射面18(特に、第1屈折面18a)に求められる形状精度を緩和することができる。その理由は、次のとおりである。
【0038】
すなわち、第1屈折面18aを出射面18のうち中央部近傍の一部領域(例えば、出射面18のうち光軸AXを含む水平面との交線近傍の領域)に設定すると、第1屈折面18aが相対的に小さい幅(上下方向に)となるため、出射面18(特に、第1屈折面18a)に高い形状精度が求められる。その結果、投影レンズ12を透明樹脂で成形(例えば、射出成形)する場合、出射面18(特に、第1屈折面18a)を精度良く作ることが困難になる。なお、第1屈折面18aが相対的に小面積となる理由は、出射面18のうち中央部近傍の一部領域から出射する光源14からの光が、出射面18のうち上端部近傍の一部領域から出射する光源14からの光と比べ、明るいことによるものである。
【0039】
これに対して、第1屈折面18aを出射面18のうち上端部近傍の一部領域(例えば、図1中、出射面18のうち点線を含む水平面より上の領域)に設定すると、第1屈折面18aが相対的に大きい幅(上下方向に)となるため、出射面18(特に、第1屈折面18a)を精度良く作ることが困難となる。その結果、投影レンズ12を透明樹脂で成形(例えば、射出成形)する場合、出射面18(特に、第1屈折面18a)に求められる形状精度を誤差範囲内に納めやすくなる。なお、第1屈折面18aが相対的に大面積となる理由は、光源の指向特性により、出射面18のうち上端部近傍の一部領域から出射する光源14からの光が、出射面18のうち中央部近傍の一部領域から出射する光源14からの光と比べ、光度が低いことによるものである。
【0040】
以上のように、第1屈折面18aを出射面18のうち上端部近傍の一部領域(例えば、図1中、出射面18のうち点線を含む水平面より上の領域)に設定することで、第1屈折面18aを出射面18のうち中央部近傍の一部領域(例えば、出射面18のうち光軸AXを含む水平面との交線近傍の領域)に設定する場合と比べ、出射面18(特に、第1屈折面18a)に求められる形状精度を緩和することができる。
【0041】
第2に、第1屈折面18aを出射面18のうち上端部近傍の一部領域(例えば、図1中、出射面18のうち点線を含む水平面より上の領域)に設定することで、第1屈折面18aを出射面18のうち中央部近傍の一部領域(例えば、出射面18のうち光軸AXを含む水平面との交線近傍の領域)に設定する場合と比べ、基本配光パターンPBが受ける影響を抑制することができる。その理由は、次のとおりである。
【0042】
すなわち、第1屈折面18aを出射面18のうち中央部近傍の一部領域(例えば、出射面18のうち光軸AXを含む水平面との交線近傍の領域)に設定すると、第2屈折面18bが第1屈折面18aの両側(上下両側)において接することとなる。第1屈折面18aの形状精度が十分でなく、その影響が両側の第2屈折面18bに及んだ場合、基本配光パターンPBは、上下両側の第2屈折面18bの影響を受けることとなる。
【0043】
これに対して、第1屈折面18aを出射面18のうち上端部近傍の一部領域(例えば、図1中、出射面18のうち点線を含む水平面より上の領域)に設定すると、第2屈折面18bが第1屈折面18aの片側(下側)においてのみ接することとなる。その結果、仮に、第1屈折面18aの形状精度が誤差範囲外となり、その影響が片側の第2屈折面18bに及んだ場合、基本配光パターンPBは、片側の第2屈折面18bのみの影響を受けることとなる。
【0044】
以上のように、第1屈折面18aを出射面18のうち上端部近傍の一部領域(例えば、図1中、出射面18のうち点線を含む水平面より上の領域)に設定することで、第1屈折面18aを出射面18のうち中央部近傍の一部領域(例えば、出射面18のうち光軸AXを含む水平面との交線近傍の領域)に設定する場合と比べ、基本配光パターンPBが受ける影響を抑制することができる。
【0045】
以上の観点から、第1屈折面18aは、出射面18のうち上端部近傍の一部領域(例えば、図1中、出射面18のうち点線を含む水平面より上の領域)に設定されている。
【0046】
第1屈折面18aと第2屈折面18bとは、その境界において段差無く滑らかに連続(例えば、接線連続)している(図4参照)。これにより、オーバーヘッド配光パターンPAを、基本配光パターンPBからとぎれることなく上方に延びたパターン(図5参照)として形成することができる。
【0047】
以下、オーバーヘッド配光パターンPAを、基本配光パターンPBからとぎれることなく上方に延びたパターン(図5参照)として形成することの利点について、オーバーヘッド配光パターンを、基本配光パターンから間隔をおいて離間した位置に形成する場合(例えば、図6(b)参照)と対比して説明する。
【0048】
オーバーヘッド配光パターンが基本配光パターンから間隔をおいて離間した位置に形成されると(例えば、図6(b)参照)、基本配光パターン中のカットオフラインが明瞭となりすぎる。その結果、車両用灯具を搭載した車両(自動二輪車、自動車等)が運転中に上下動したとき、基本配光パターンがちらついてしまう。
【0049】
これに対して、オーバーヘッド配光パターンPAが基本配光パターンPBからとぎれることなく上方に延びたパターン(図5参照)として形成されると、基本配光パターンPB中のカットオフラインCLが明瞭となりすぎるのを抑制することができる。その結果、車両用灯具10を搭載した車両(自動二輪車、自動車等)が運転中に上下動したときであっても、基本配光パターンPBがちらつくのを抑制することができる。
【0050】
以上のように、オーバーヘッド配光パターンPAを、基本配光パターンPBからとぎれることなく上方に延びたパターン(図5参照)として形成することで、基本配光パターンPB中のカットオフラインCLが明瞭となりすぎるのを抑制することができる結果、車両用灯具10を搭載した車両(自動二輪車、自動車等)が運転中に上下動したときであっても、基本配光パターンPBがちらつくのを抑制することができる。
【0051】
光源14は、入射面20へ入射し、出射面18(第1屈折面18a、第2屈折面18b)から出射して前方へ照射される光を放出する光源で、基準点F(又はその近傍)に配置されている(図3(a)、図3(b)参照)。
【0052】
光源14は、例えば、LED(例えば、1mm角の発光面を含む発光ダイオード×4)等の半導体発光素子で、セラミック製(又は金属製)基板K(図2参照)の表面に所定間隔をおいて一列に実装されて、横長矩形の発光面14aを構成している。
【0053】
光源14は、LED(例えば、発光色が青系のLEDチップ)等の半導体発光素子と波長変換部材(例えば、発光色が黄系のYAG蛍光体)とを組み合わせた構造の白色光源であってもよいし、RGB三色のLEDチップを組み合わせた構造の半導体発光素子であってもよいし、その他構造の半導体発光素子であってもよい。なお、光源14(半導体発光素子)は、1以上であればよい。また、光源14は、LD(例えば、発光色が青系のレーザーダイオード)と波長変換部材(例えば、発光色が黄系のYAG蛍光体)とを組み合わせた構造の白色光源であってもよい。
【0054】
光源14は、半導体発光素子と波長変換部材とが近接して配置されてパッケージ化された構造の白色光源であってもよいし、半導体発光素子と波長変換部材とが離間して配置され、両者間に、半導体発光素子からの光を導光して波長変換部材を照射するライトガイド(例えば、光ファイバ)を配置した構造の白色光源であってもよいし、半導体発光素子と波長変換部材とが離間して配置され、両者間に、半導体発光素子からの光を集光して波長変換部材を照射する集光レンズを配置した構造の白色光源であってもよい。
【0055】
光源14は、横長矩形の発光面14aが投影レンズ12を向き、横長矩形の発光面14aの長辺と光軸AXとが直交(又は略直交)し、かつ、横長矩形の発光面14aと投影レンズ12の基準点Fとが一致(又は略一致)した状態で基板Kがヒートシンク16の前面に固定されて、投影レンズ12の後方かつ光軸AX上に配置されている。光源14の発熱は、ヒートシンク16を通過し、その放熱フィン16aから周辺空気へ放熱される。
【0056】
上記構成の車両用灯具10によれば、第1屈折面18aから出射する光源14からの光RayAは、水平方向に拡散する(図3(a)参照)とともに、所定位置(例えば、下方0.6度の位置)を下限としてそれより上方の領域(例えば、下方0.6〜上方5度の範囲(オーバーヘッドサイン領域を含む範囲))を照射し(図3(b)、図4参照)、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)上に、オーバーヘッドサイン領域を照射するオーバーヘッド配光パターンPAを形成する(図5参照)。
【0057】
一方、第2屈折面18bから出射する光源14からの光RayBは、水平方向に拡散する(図3(a)参照)とともに、所定位置(例えば、下方0.6度の位置)を上限としてそれより下方の領域を照射し(図3(b)参照)、仮想鉛直スクリーン上の水平線H−Hより下方に、カットオフラインCLを含む水平方向に拡散した基本配光パターンPBを形成する(図5参照)。
【0058】
以上説明したように、本実施形態の車両用灯具10によれば、次の利点を生ずる。
【0059】
第1に、従来のように反射面を用いることなく、オーバーヘッドサイン領域を照射するオーバーヘッド配光パターンPAと基本配光パターンPBとを形成することが可能となる。これは、出射面18が、基本配光パターンPBの形成に用いられる光源14からの光を制御する第2屈折面18bに加えて、オーバーヘッド配光パターンPAの形成に用いられる光源14からの光を制御する第1屈折面18aを含んでいることによるものである。
【0060】
第2に、第1屈折面18aを出射面18のうち中央部近傍の一部領域(例えば、出射面18のうち光軸AXを含む水平面との交線近傍の領域)に設定する場合と比べ、出射面18(特に、第1屈折面18a)に求められる形状精度を緩和することができる。その結果、投影レンズ12を透明樹脂で成形(例えば、射出成形)する場合、出射面18(特に、第1屈折面18a)に求められる形状精度を誤差範囲内に納めやすくなる。これは、第1屈折面18aを出射面18のうち上端部近傍の一部領域(例えば、図1中、出射面18のうち点線を含む水平面より上の領域)に設定したことによるものである。
【0061】
第3に、第1屈折面18aを出射面18のうち中央部近傍の一部領域(例えば、出射面18のうち光軸AXを含む水平面との交線近傍の領域)に設定する場合と比べ、基本配光パターンPBが受ける影響を抑制することができる。これは、第1屈折面18aを出射面18のうち上端部近傍の一部領域(例えば、図1中、出射面18のうち点線を含む水平面より上の領域)に設定した結果、第2屈折面18bが第1屈折面18aの片側(下側)においてのみ接することによるものである。
【0062】
第4に、オーバーヘッド配光パターンPAを、基本配光パターンPBからとぎれることなく上方に延びたパターン(図5参照)として形成することができる。これは、第1屈折面18aと第2屈折面18bとが、その境界において段差無く滑らかに連続(例えば、接線連続)していることによるものである。
【0063】
第5に、車両用灯具10を搭載した車両(自動二輪車、自動車等)が運転中に上下動したときであっても、基本配光パターンPBがちらつくのを抑制することができる。これは、オーバーヘッド配光パターンPAが基本配光パターンPBからとぎれることなく上方に延びたパターン(図5参照)として形成される結果、基本配光パターンPB中のカットオフラインCLが明瞭となりすぎるのを抑制することができることによるものである。
【0064】
次に、変形例について説明する。
【0065】
上記実施形態では、レンズ部12aの出射面18が第1屈折面18a、第2屈折面18bを含む(図1図4参照)例について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0066】
例えば、入射面20が第1屈折面18a、第2屈折面18bを含んでいてもよいし、出射面18及び入射面20の両方が第1屈折面18a、第2屈折面18bを含んでいてもよい。
【0067】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0068】
10…車両用灯具、12…投影レンズ、12a…レンズ部、12b…脚部、14…光源、14a…発光面、16…ヒートシンク、16a…放熱フィン、18…出射面、18a…第1屈折面、18b…第2屈折面、20…入射面
図1
図2
図3
図4
図5
図6