(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6142534
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】X線撮影装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20170529BHJP
【FI】
A61B6/00 310
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-946(P2013-946)
(22)【出願日】2013年1月8日
(65)【公開番号】特開2014-132922(P2014-132922A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2015年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100101753
【弁理士】
【氏名又は名称】大坪 隆司
(72)【発明者】
【氏名】代田 健
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊晶
【審査官】
安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−273827(JP,A)
【文献】
実開平05−015601(JP,U)
【文献】
国際公開第2011/027381(WO,A1)
【文献】
特開2002−093596(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/019030(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0256872(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車と、前記台車に配設された支柱に対して昇降可能に配設されたX線管と、前記台車に配設された車輪を回転駆動するための駆動用モータと、を備えた回診用のX線撮影装置であって、
前記X線管に接続され、X線管からX線を発生させるために必要な電力を短時間の間に前記X線管に供給する第1バッテリーと、
前記駆動用モータに接続され、充放電を繰り返しても前記第1バッテリーよりも劣化の少ない第2バッテリーと、
前記駆動用モータに接続された回生ブレーキ回路と、
前記回生ブレーキ回路からの電力を利用して前記第2バッテリーを充電する充電回路と、
を備えたことを特徴とするX線撮影装置。
【請求項2】
台車と、前記台車に配設された支柱に対して昇降可能に配設されたX線管と、前記台車に配設された車輪を回転駆動するための駆動用モータと、を備えた回診用のX線撮影装置であって、
前記X線管に接続され、X線管からX線を発生させるために必要な電力を短時間の間に前記X線管に供給する第1バッテリーと、
前記駆動用モータに接続され、充放電を繰り返しても前記第1バッテリーよりも劣化の少ない第2バッテリーと、
前記X線管における陽極を回転させるための陽極用モータに接続された回生ブレーキ回路と、
前記回生ブレーキ回路からの電力を利用して前記第2バッテリーを充電する充電回路と、
を備えたことを特徴とするX線撮影装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のX線撮影装置において、
前記第1バッテリーと前記第2バッテリーとの間で互いに出力を変換することにより、前記第1バッテリーと前記第2バッテリーとの間で相互に充電を可能とする変換回路を備えるX線撮影装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のX線撮影装置において、
前記第1バッテリーは、鉛蓄電池であるX線撮影装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のX線撮影装置において、
前記第2バッテリーは、リチウム蓄電池であるX線撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、病室を巡回して撮影を行うための回診用のX線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような回診用のX線撮影装置は、台車に配設された支柱に対して昇降可能なアームの先端にX線管を配設するとともに、台車に設けられた駆動用モータにより車輪を回転させることにより、電動で病室間を移動する構成となっている。この駆動用モータのための電源としては、台車内の配設されたバッテリーが使用される。また、X線管に高電圧を供給するための電源としても、このバッテリーが使用される。このため、バッテリーの容量によってこのX線撮影装置の使用時間が制限を受けることになる。
【0003】
特許文献1には、複数の蓄電池を備えた回診用のX線撮影装置が開示されている。特許文献2には、X線管に電流を供給する鉛蓄電池と、この鉛蓄電池を充電するためのリチウムイオン電池等とを備えた移動型X線装置が開示されている。特許文献3には、緊急ブレーキ解除専用の電源として、メインバッテリーとは別に電池を備えた回診用X線撮影装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−336227号公報
【特許文献2】特開2010−273827号公報
【特許文献3】特開2011−131089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜特許文献3に記載されたように、同一機能または機能が異なる複数のバッテリーを備えた場合、その総容量に応じてX線撮影装置の使用時間が長くはなるが、いずれにしろ、それらの総容量によってX線撮影装置の使用時間が制限を受けることにかわりはない。
【0006】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、回生エネルギーを使用することにより、装置の使用時間をより長期化させることが可能なX線撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、台車と、前記台車に配設された支柱に対して昇降可能に配設されたX線管と、前記台車に配設された車輪を回転駆動するための駆動用モータと、を備えた回診用のX線撮影装置であって、前記X線管に接続され、X線管からX線を発生させるために必要な電力を短時間の間に前記X線管に供給する第1バッテリーと、前記駆動用モータに接続され、充放電を繰り返しても前記第1バッテリーよりも劣化の少ない第2バッテリーと、前記駆動用モータに接続された回生ブレーキ回路と、前記回生ブレーキ回路からの電力を利用して前記第2バッテリーを充電する充電回路と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、台車と、前記台車に配設された支柱に対して昇降可能に配設されたX線管と、前記台車に配設された車輪を回転駆動するための駆動用モータと、を備えた回診用のX線撮影装置であって、前記X線管に接続され、X線管からX線を発生させるために必要な電力を短時間の間に前記X線管に供給する第1バッテリーと、前記駆動用モータに接続され、充放電を繰り返しても前記第1バッテリーよりも劣化の少ない第2バッテリーと、前記X線管における陽極を回転させるための陽極用モータに接続された回生ブレーキ回路と、前記回生ブレーキ回路からの電力を利用して前記第2バッテリーを充電する充電回路と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記第1バッテリーと前記第2バッテリーとの間で互いに出力を変換することにより、前記第1バッテリーと前記第2バッテリーとの間で相互に充電を可能とする変換回路を備える。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明において、前記第1バッテリーは、鉛蓄電池である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明において、前記第2バッテリーは、リチウム蓄電池である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1から請求項5に記載の発明によれば、駆動用モータについての回生エネルギーを使用して充放電を繰り返しても劣化の少ない第2バッテリーに対する充電を実行することにより、装置の使用時間をより長期化させることが可能となる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、第1バッテリーと第2バッテリーのいずれかの残容量がなくなった場合においても、他方のバッテリーを利用して一部の機能を補完的に継続して使用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明に係るX線撮影装置の側面概要図である。
【
図2】この発明に係るX線撮影装置の制御系を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明に係るX線撮影装置の側面概要図である。
【0016】
このX線撮影装置は、台車15に配設された支柱14と、この支柱14に対して昇降可能な状態で配設されたアーム13と、このアーム13の先端に配設されたX線管3と、X線管3の下方に配設されたコリメータ12とを備える。このX線撮影装置は、病室において、図示を省略したフラットパネルディテクタ等のX線検出器やX線フィルムを収納したカセッテと、X線管3との間に被検者を配置して、X線撮影を実行する構成となっている。
【0017】
また、このX線撮影装置は、方向変更用の車輪である一対の前輪17と、駆動用の車輪である一対の後輪16とを備える。さらに、このX線撮影装置は、台車15の進行方向を操作するための操作ハンドル18を備える。
【0018】
図2は、この発明に係るX線撮影装置の制御系を示すブロック図である。
【0019】
このX線撮影装置は、台車15内に、装置全体を制御するための制御部40を有する。また、このX線撮影装置は、台車15内に、第1バッテリー51と第2バッテリー52とを備える。
【0020】
第1バッテリー51は充電回路53を介して商用電源62と接続可能となっており、第2バッテリー52は充電回路54を介して商用電源62と接続可能となっている。これらの第1バッテリー51および第2バッテリー52は、台車15に設けられた電源コードを商用電源62のコンセントに接続することにより、商用電源62から充電可能な構成となっている。また、第1バッテリー51と第2バッテリー52との間には、第1バッテリー51と第2バッテリー52との間で互いに出力を変換することにより、第1バッテリー51と第2バッテリー52との間で相互に充電を可能とする変換回路55が配設されている。
【0021】
ここで、第1バッテリー51は、主として、X線管3に電力を供給するために使用される。この第1バッテリー51としては、X線管3からX線を発生させるために必要な大きさの電流を、例えば、1秒程度の短時間の間にX線管3に供給し得るものが使用される。このような目的を達成するために、この第1バッテリー51としては、鉛蓄電池が使用される。
【0022】
一方、第2バッテリー52は、第1バッテリー51から電力を供給されない後述する駆動用モータ43a、43bとコンソール部61に電力を供給するために使用される。ここで、コンソール部61には、X線検出器により検出した画像を表示するための表示部が配設されている。この第2バッテリー52は、後述する回生ブレーキ回路39、44a、44bおよび充電回路56の作用により回生エネルギーを利用して充電される構成を有する。このため、この第2バッテリー52としては、第1バッテリー51と比較して、充放電を繰り返しても劣化の少ないリチウム蓄電池が使用される。
【0023】
台車15を駆動するための一対の後輪16のうち、右側の後輪16aは、エンコーダ42aを介して駆動用モータ43aと接続されている。同様に、左側の後輪16bは、エンコーダ42bを介して駆動用モータ43bと接続されている。これらのエンコーダ42a、42bおよび駆動用モータ43a、43bは制御部40と接続されており、制御部40は、エンコーダ42a、42bにより検出した後輪16a、16bの回転速度に基づいて、駆動用モータ43a、43bの回転制御信号を送信する。
【0024】
また、上述した操作ハンドル18の左右両端付近には、この操作ハンドル18に付与された操作力を検出するための一対のセンサ41a、41bが配設されている。このセンサ41a、41bは、各々、前後方向に配設された圧力センサの間にレバーが配設された構成を有し、オペレータにより操作ハンドル18の右端または左端付近に付与された前方または後方への操作力を検出するものである。
【0025】
制御部40は、これらのセンサ41a、41bの信号に基づいて一対の後輪16a、16bの回転を制御する。すなわち、操作ハンドル18の右端付近のセンサ41aが前方への操作力を検出したときには、制御部40は後輪16aを正転させるような信号を駆動用モータ43aに送信し、操作ハンドル18の右端付近のセンサ41aが後方への操作力を検出したときには、制御部40は後輪16aを逆転させるような信号を駆動用モータ43aに送信する。同様に、操作ハンドル18の左端付近のセンサ41bが前方への操作力を検出したときには、制御部40は後輪16bを正転させるような信号を駆動用モータ43bに送信し、操作ハンドル18の左端付近のセンサ41bが後方への操作力を検出したときには、制御部40は後輪16bを逆転させるような信号を駆動用モータ43bに送信する。そして、この時の制御部40からの信号は、各駆動用モータ43a、43bの回転速度が操作ハンドル18への操作力の大きさと比例するような信号となっている。このため、X線撮影装置は、オペレータが操作ハンドル18に付与した操作力に応じて、その操作方向に進行することになる。
【0026】
駆動用モータ43aには回生ブレーキ回路44aが接続されており、駆動用モータ43bには回生ブレーキ回路44bが接続されている。これらの回生ブレーキ回路44a、44bは、後輪16a、16bが、駆動用モータ43a、43bから駆動力を受けることなく回転している状態において、回生ブレーキ作用により電力を発電するためのものである。後輪16a、16bの回転により台車15が走行中に駆動用モータ43a、43bへの電力の供給が遮断された場合には、これらの回生ブレーキ回路44a、44bにより、後輪16a、16bの回転に対して制動力が付与され、これに伴って回生ブレーキ回路44a、44bの作用により発電がなされる。そして、発電された電力は充電回路56を介して第2バッテリー52に充電される。なお、上述したようにこの充電回路56は、X線管3における回生ブレーキ回路39にも接続されている。
【0028】
このX線管3は、放射窓37を有し、X線を遮蔽するために鉛が内張されたケーシング36を備える。このケーシング36内には、真空排気されたガラスバルブ31が配設されている。このガラスバルブ31内には、一対の図示を省略したフィラメントを有し、熱電子Aを発生させる陰極32と、この陰極32から放出された熱電子Aを受けてX線Bを発生する回転陽極(ターゲット)33とが配設されている。この回転陽極33は、モータロータ34と接続されている。このモータロータ34は、ガラスバルブ31の外部に配設されたモータステータ35により高速回転される。このX線管3においては、回転陽極33から発生したX線Bは、ケーシング36に設けられた放射窓37から放射される。
【0029】
モータロータ34およびモータステータ35から成る陽極用モータには、上述した回生ブレーキ回路39が接続されている。この回生ブレーキ回路39は、回転陽極33が、モータロータ34およびモータステータ35から成る陽極用モータから駆動力を受けることなく回転している状態において、回生ブレーキ作用により電力を発電するためのものである。回転陽極33の回転中に陽極用モータへの電力の供給が遮断された場合には、この回生ブレーキ回路39により回転陽極33の回転に対して制動力が付与され、これに伴って回生ブレーキ回路39の作用により発電がなされる。そして、発電された電力は充電回路56を介して第2バッテリー52に充電される。
【0030】
以上のような構成を有するX線撮影装置においては、後輪16a、16bへの駆動力の付与が停止された状態においては、回生ブレーキ回路44a、44bの作用により後輪16a、16bに制動力が付与されるとともに、これにより生じた電力は第2バッテリー52に充電される。また、回転陽極33への駆動力の付与が停止された状態においては、回生ブレーキ回路39の作用により回転陽極33に制動力が付与されるとともに、これにより生じた電力は第2バッテリー52に充電される。このため、X線撮影装置の使用中に、駆動用モータ43a、43bやコンソール部61に電力を供給する第2バッテリー52に対して充電を実行することができる。これにより、X線撮影装置の使用時間を長期化させることが可能となる。このとき、第2バッテリー52としてリチウム蓄電池を使用していることから、放充電を繰り返した場合にも劣化を最小に抑えることが可能となる。
【0031】
また、これに伴って、第1バッテリー51は、X線管3への電力供給専用に使用することが可能となることから、X線撮影をより多く実行することが可能となる。
【0032】
なお、第1バッテリー51と第2バッテリー52との間には、第1バッテリー51と第2バッテリー52との間で互いに出力を変換することにより、第1バッテリー51と第2バッテリー52との間で相互に充電を可能とする変換回路55が配設されていることから、例えば、第2バッテリー52が電力を使い切り、台車15の移動が不可能となるような緊急事態が生じた場合においては、第1バッテリー51に残存する電力を用いて台車15を移動させることも可能となる。
【符号の説明】
【0033】
3 X線管
12 コリメータ
13 アーム
14 支柱
15 台車
16 後輪
17 前輪
18 操作ハンドル
31 ガラスバルブ
32 陰極
33 回転陽極
34 モータロータ
35 モータステータ
37 放射窓
39 回生ブレーキ回路
40 制御部
41 センサ
42 エンコーダ
43 駆動用モータ
44 回生ブレーキ回路
51 第1バッテリー
52 第2バッテリー
53 充電回路
54 充電回路
55 変換回路
56 充電回路
61 コンソール部
62 商用電源