特許第6142541号(P6142541)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6142541
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】車両用前照灯
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/08 20060101AFI20170529BHJP
   B60Q 1/14 20060101ALI20170529BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20170529BHJP
【FI】
   B60Q1/08
   B60Q1/14 A
   F21Y115:10
【請求項の数】2
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-6217(P2013-6217)
(22)【出願日】2013年1月17日
(65)【公開番号】特開2014-136505(P2014-136505A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2015年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 恭史
【審査官】 下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−037240(JP,A)
【文献】 特開2005−170063(JP,A)
【文献】 特開2010−162960(JP,A)
【文献】 特開2012−183874(JP,A)
【文献】 特開2011−001043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/08
B60Q 1/14
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直カットオフラインを有する配光パターンを車両の前方に照射する第1ランプユニットと、
水平カットオフラインと斜めカットオフラインとを有するロービーム配光パターンを車両の前方に照射する第2ランプユニットと、
少なくとも前記第1ランプユニットを垂直軸回りに回転させるスイブル装置と、
前記車両の前部の左右両端部に備え、
前記第1ランプユニットから照射される前記配光パターンおよび前記第2ランプユニットから照射される前記ロービーム配光パターンは、ハイビーム配光パターンとADB配光パターンとを形成し、
前記ADB配光パターンから前記ハイビーム配光パターンに切り替える時間は、前記ハイビーム配光パターンから前記ADB配光パターンに切り替える時間よりも長
前記ハイビーム配光パターンは、左右の前記第1ランプユニットから前記車両の前方に照射される前記配光パターンの前記垂直カットオフラインの部分同士が重なり合って形成され、
前記ADB配光パターンは、左右の前記第1ランプユニットから前記車両の前方に照射される前記配光パターンの両方が前記車両の外側に振り向けられ、又は一方が前記車両の内側に振り向けられて形成される、
ことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前方の先行車両や対向車両の有無や状況を検出してその検出信号を出力する検出部と、
前記検出部からの検出信号により制御信号を出力する制御部と、
前記制御部からの制御信号により作動する前記スイブル装置と、
を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、遠方および路肩などの視認性に優れた配光パターンを車両の前方に照射する車両用前照灯に関するものである。特に、この発明は、自車や他車(先行車両、対向車両)のドライバー(同乗者も含む)に対して、眼精疲労や違和感を軽減することができ、交通安全に貢献することができる車両用前照灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用前照灯は、従来からある(たとえば、特許文献1)。以下、従来の車両用前照灯について説明する。従来の車両用前照灯は、遮光領域を現出させる配光パターンを車両の前方にそれぞれ照射する左右の灯具ユニットと、その左右の灯具ユニットをそれぞれ左右方向にスイブル駆動する左右の灯具駆動部と、を備え、遮光領域が前方の車両位置の変化に追従するように、左右の灯具駆動部により左右の灯具ユニットを左右方向にスイブル駆動するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−14370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記の従来の車両用前照灯は、左右の灯具ユニットを左右方向にスイブル駆動する時間(速度)、たとえば、遮光領域を有する配光パターンからハイビーム用合成配光パターンに切り替える時間、ハイビーム用合成配光パターンから遮光領域を有する配光パターンに切り替える時間、に対してなんら考慮されていない。このために、自車や他車のドライバーに対して眼精疲労や違和感を軽減することができない。
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、従来の車両用前照灯では、自車や他車のドライバーに対して眼精疲労や違和感を軽減することができない、という点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明(請求項1にかかる発明)は、垂直カットオフラインを有する配光パターンを車両の前方に照射する第1ランプユニットと、水平カットオフラインと斜めカットオフラインとを有するロービーム配光パターンを車両の前方に照射する第2ランプユニットと、少なくとも前記第1ランプユニットを垂直軸回りに回転させるスイブル装置と、を前記車両の左右に備え、前記第1ランプユニットから照射される前記配光パターンおよび前記第2ランプユニットから照射される前記ロービーム配光パターンは、ハイビーム配光パターンとADB配光パターンとを形成し、前記ADB配光パターンから前記ハイビーム配光パターンに切り替える時間は、前記ハイビーム配光パターンから前記ADB配光パターンに切り替える時間よりも長前記ハイビーム配光パターンは、左右の前記第1ランプユニットから前記車両の前方に照射される前記配光パターンの前記垂直カットオフラインの部分同士が重なり合って形成され、前記ADB配光パターンは、左右の前記第1ランプユニットから前記車両の前方に照射される前記配光パターンの両方が前記車両の外側に振り向けられ、又は一方が前記車両の内側に振り向けられて形成される、ことを特徴とする。
【0007】
この発明(請求項2にかかる発明)は、前方の先行車両や対向車両の有無や状況を検出してその検出信号を出力する検出部と、検出部からの検出信号により制御信号を出力する制御部と、制御部からの制御信号により作動するスイブル装置と、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の車両用前照灯は、ADB配光パターンからハイビーム配光パターンに切り替える時間を、ハイビーム配光パターンからADB配光パターンに切り替える時間よりも長くすることにより、自車や他車のドライバーに対して眼精疲労や違和感を軽減することができ、交通安全に貢献することができる。しかも、ハイビーム配光パターンからADB配光パターンに切り替える時間をADB配光パターンからハイビーム配光パターンに切り替える時間よりも短くすることができるので、他車が短時間で現れる道路状況の場合にも適する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態を示し、左右両側の車両用前照灯を搭載した車両の平面図である。
図2図2は、右側のランプユニットの主要構成部品を示す正面図である。
図3図3は、車両用前照灯の構成部品を示すブロック図である。
図4図4は、図2におけるIV−IV線断面図である。
図5図5は、図2におけるV−V線断面図である。
図6図6は、第1ランプユニットの光源の点灯時間と消灯時間とを示す説明図である。
図7図7は、右側の第1ランプユニットから車両の前方に照射される右側のADB配光パターンを示す説明図である。
図8図8は、左側の第1ランプユニットから車両の前方に照射される左側のADB配光パターンを示す説明図である。
図9図9は、右側の第1ランプユニットからの右側のADB配光パターンと左側の第1ランプユニットからの左側のADB配光パターンとをそれぞれ車両の内側に寄せた状態を示す説明図である。
図10図10は、右側の第1ランプユニットからの右側のADB配光パターンと左側の第1ランプユニットからの左側のADB配光パターンとをそれぞれ車両の外側に離した状態を示す説明図である。
図11図11は、左右両側の第2ランプユニットから車両の前方に照射される左右両側のロービーム配光パターンを示す説明図である。
図12図12は、左右両側のロービーム配光パターンが車両の前方に照射されるときの道路状況(車両走行状況)を示す説明図である。
図13図13は、左右両側のロービーム配光パターンとそれぞれ車両の内側に寄せられた左右両側のADB配光パターンとが車両の前方に照射されるときの道路状況(車両走行状況)を示す説明図である。
図14図14は、左右両側のロービーム配光パターンとそれぞれ車両の外側に離された左右両側のADB配光パターンとが車両の前方に照射されるときの道路状況(車両走行状況)を示す説明図である。
図15図15は、左右両側のロービーム配光パターンと右側のADB配光パターンとが車両の前方に照射されるときの道路状況(車両走行状況)を示す説明図である。
図16図16は、左右両側のロービーム配光パターンと左側のADB配光パターンとが車両の前方に照射されるときの道路状況(車両走行状況)を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態(実施例)の1例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。図7図11において、符号「VU−VD」は、スクリーンの上下の垂直線を示す。符号「HL−HR」は、スクリーンの左右の水平線を示す。この明細書および別紙の特許請求の範囲において、前、後、上、下、左、右は、この発明にかかる車両用前照灯を車両に搭載した際の前、後、上、下、左、右である。
【0011】
(実施形態の構成の説明)
以下、この実施形態にかかる車両用前照灯の構成について説明する。図1中、符号1L、1Rは、この実施形態にかかる車両用前照灯(たとえば、ヘッドランプなど)である。前記車両用前照灯1L、1Rは、左側通行用の車両Cの前部の左右両端部に搭載されている。以下、車両Cの右側に搭載される右側の車両用前照灯1Rについて説明する。なお、車両Cの左側に搭載される左側の車両用前照灯1Lは、右側の車両用前照灯1Rとほぼ同様の構成をなすので、説明を省略する。
【0012】
(車両用前照灯1R(1L)の説明)
前記車両用前照灯1R(1L)は、図2図3に示すように、第1ランプユニット3と、ロービームランプユニットとしての第2ランプユニット2と、スイブル装置91と、制御部90(調光制御部、スイブル装置91の制御装置)と、第1取付部材51および第2取付部材(ブラケット)52と、光軸調整装置53、54、55と、ランプハウジング5と、ランプレンズ(たとえば、素通しのアウターレンズなど)と、を備えるものである。
【0013】
前記第1ランプユニット3および前記第2ランプユニット2および前記スイブル装置91および前記制御部90および前記第1取付部材51および前記第2取付部材52および前記光軸調整装置53、54、55は、前記ランプハウジング5および前記ランプレンズにより区画されている灯室50内に、配置されている。なお、前記灯室50内には、図示されていないが、フォグランプ、コーナリングランプ、クリアランスランプ、ターンシグナルランプなどの他のランプユニットが配置されている場合がある。また、前記制御部90は、前記灯室50外に配置されている場合がある。
【0014】
前記第1ランプユニット3は、前記第1取付部材51および前記スイブル装置91を介して前記第2取付部材52に取り付けられている。前記第2ランプユニット2は、前記第2取付部材52に取り付けられている。前記第1ランプユニット3は、車両Cの内側(右側の車両用前照灯1Rの場合においては左側、左側の車両用前照灯1Lの場合においては右側)に配置されている。前記第2ランプユニット2は、車両Cの外側(右側の車両用前照灯1Rの場合においては右側、左側の車両用前照灯1Lの場合においては左側)に配置されている。
【0015】
(スイブル装置91の説明)
前記スイブル装置91は、ケーシング92内に収納されている駆動部(図示せず)および駆動力伝達機構(図示せず)と、回転軸93と、から構成されている。前記駆動部を駆動させることにより、前記駆動部の駆動力が前記駆動力伝達機構を介して前記回転軸93に伝達される。この結果、前記回転軸93が垂直軸(ほぼ垂直軸をも含む)VE−VE回りに回転する。
【0016】
前記第1取付部材51は、前記スイブル装置91の前記回転軸93に固定されている。前記スイブル装置91の前記回転軸93の前記垂直軸VE−VEは、前記第1ランプユニット3の中央もしくはほぼ中央を通る。この結果、前記第1ランプユニット3は、前記第1取付部材51を介して、前記スイブル装置91により、前記垂直軸VE−VE回りに回転可能に構成されている。
【0017】
前記スイブル装置91は、前記第2取付部材52に取り付けられている。前記第2取付部材52は、前記光軸調整装置53、54、55を介して前記ランプハウジング5に取り付けられている。前記スイブル装置91は、図3中の検出部9および図3中の前記制御部90を介して、駆動して、前記第1ランプユニット3を前記垂直軸VE−VE回りに回転させる。
【0018】
(光軸調整装置53、54、55の説明)
前記光軸調整装置53、54、55は、ピボット機構(53)と、上下用のアジャストスクリューおよびスクリューマウンティング(54)と、左右用のアジャストスクリューおよびスクリューマウンティング(55)と、から構成されている。この結果、前記第1ランプユニット3および前記第2ランプユニット2は、前記第1取付部材51および前記スイブル装置91および前記第2取付部材52を介して、一体で光軸調整可能に構成されている。
【0019】
(第1ランプユニット3の説明)
前記第1ランプユニット3は、図4に示すように、プロジェクタタイプのランプユニットである。前記第1ランプユニット3は、半導体型光源30と、リフレクタ31と、投影レンズ32と、シェード33と、ヒートシンク部材34と、ホルダ35と、から構成されている。
【0020】
前記第1ランプユニット3は、図7図10に示す左右両側のADB配光パターンLHP、RHPを車両Cの前方に照射するものである。なお、図7図9図10に示す右側のADB配光パターンRHPは、右側の前記車両用前照灯1Rの前記第1ランプユニット3から照射されるものである。また、図8図10に示す左側のADB配光パターンLHPは、左側の前記車両用前照灯1Lの前記第1ランプユニット3から照射されるものである。右側のADB配光パターンRHPと左側のADB配光パターンLHPとは、ほぼ左右対称(左右反転)である。
【0021】
前記半導体型光源30は、たとえば、LED、OELまたはOLED(有機EL)などの自発光半導体型光源である。前記半導体型光源30は、前記ヒートシンク部材34に取り付けられている。前記半導体型光源30の発光面は、下向きである。
【0022】
前記リフレクタ31には、楕円反射面(楕円を基調(基本、基準)とする自由曲面からなる反射面、あるいは、回転楕円面からなる反射面)からなる反射面310が設けられている。前記反射面310は、第1基準焦点(図示せず)と、第2基準焦点(図示せず)と、基準光軸と、を有する。前記第1基準焦点もしくはその近傍には、前記半導体型光源30の前記発光面が位置する。前記反射面310は、前記半導体型光源30の前記発光面からの光を前記シェード33および前記投影レンズ32側に反射するものである。前記リフレクタ31は、前記ホルダ35に直接、もしくは、前記ヒートシンク部材34を介して前記ホルダ35に取り付けられている。
【0023】
前記投影レンズ32は、レンズ焦点(図示せず)と、レンズ軸(図示せず)とを有する。前記レンズ焦点は、前記第2基準焦点と一致もしくはほぼ一致する。前記レンズ軸は、前記基準光軸と一致もしくはほぼ一致する。前記投影レンズ32は、前記反射面310からの反射光であって、前記シェード33により遮蔽された反射光以外の反射光を前記ADB配光パターンLHP、RHPとして車両Cの前方に照射するものである。前記投影レンズ32は、前記ホルダ35に取り付けられている。
【0024】
前記シェード33は、前記半導体型光源30および前記リフレクタ31と前記投影レンズ32との間であって、前記第2基準焦点、前記レンズ焦点もしくはその近傍に配置されている。前記シェード33は、車両Cの外側(右側の車両用前照灯1Rの場合においては右側、左側の車両用前照灯1Lの場合においては左側)に配置されている。前記シェード33は、前記リフレクタ31、前記ホルダ35のうち少なくともいずれか一方に取り付けられている。前記シェード33は、垂直エッジ(図示せず)を有する。
【0025】
前記垂直エッジは、前記シェード33の車両Cの内側(右側の車両用前照灯1Rの場合においては左側、左側の車両用前照灯1Lの場合においては右側)の垂直縁に設けられている。前記垂直エッジは、前記ADB配光パターンLHP、RHPの車両Cの内側において、垂直カットオフラインLCL、RCLを形成するものである。
【0026】
なお、前記垂直エッジの上部に凹エッジ(図示せず)を設けて、図7(A)、図8(A)中の破線にて示すように、前記ADB配光パターンLHP、RHPの前記垂直カットオフラインLCL、RCLの下部から車両Cの内側に突出する凸部配光パターンを形成しても良い。また、前記垂直エッジの下部に凸エッジ(図示せず)を設けて、図7(A)、図8(A)中の破線にて示すように、前記ADB配光パターンLHP、RHPの前記垂直カットオフラインLCL、RCLの上部から車両Cの外側に引っ込んだ光抜け部を形成しても良い。
【0027】
前記ヒートシンク部材34は、前記半導体型光源30において発生する熱を外部に放射させる。前記ヒートシンク部材34には、前記半導体型光源30が取り付けられている。
【0028】
前記ホルダ35は、前記リフレクタ31、前記投影レンズ32、前記シェード33、前記ヒートシンク部材34を保持するものである。前記ホルダ35と前記ヒートシンク部材34とを一体構造として兼用しても良い。
【0029】
(ADB配光パターンLHP、RHPの説明)
右側の前記車両用前照灯1Rの前記第1ランプユニット3から車両Cの前方側に照射される前記ADB配光パターンRHPは、図7に示すように、長円形の4分の1の形状をなす。すなわち、右側の前記ADB配光パターンRHPは、車両Cの内側(左側)に位置する前記垂直カットオフラインRCLを有する。右側の前記ADB配光パターンRHPは、前記垂直カットオフラインRCLにおける光度(照度、輝度)が高く、前記垂直カットオフラインRCLから車両Cの外側(右側)に行くに従って光度が低くなっている。
【0030】
右側の前記ADB配光パターンRHPの前記垂直カットオフラインRCLは、スクリーンの上下の垂直線VU−VDよりも左側に、最低約5°以上の位置に位置している。右側の前記ADB配光パターンRHPの右端は、スクリーンの上下の垂直線VU−VDよりも右側に、最低約10°以上の位置に位置している。右側の前記ADB配光パターンRHPの下端は、スクリーンの左右の水平線HL−HRよりも下側に、最低約1°以上の位置に位置している。右側の前記ADB配光パターンRHPの上端は、スクリーンの左右の水平線HL−HRよりも上側に、約5°〜約8°の位置に位置している。
【0031】
左側の前記車両用前照灯1Lの前記第1ランプユニットから車両Cの前方側に照射される前記ADB配光パターンLHPは、図8に示すように、長円形の4分の1の形状をなす。すなわち、左側の前記ADB配光パターンLHPは、車両Cの内側(右側)に位置する前記垂直カットオフラインLCLを有する。左側の前記ADB配光パターンLHPは、前記垂直カットオフラインLCLにおける光度(照度、輝度)が高く、前記垂直カットオフラインLCLから車両Cの外側(左側)に行くに従って光度が低くなっている。
【0032】
左側の前記ADB配光パターンLHPの前記垂直カットオフラインLCLは、スクリーンの上下の垂直線VU−VDよりも右側に、最低約5°以上の位置に位置している。左側の前記ADB配光パターンLHPの左端は、スクリーンの上下の垂直線VU−VDよりも左側に、最低約10°以上の位置に位置している。左側の前記ADB配光パターンLHPの下端は、スクリーンの左右の水平線HL−HRよりも下側に、最低約1°以上の位置に位置している。左側の前記ADB配光パターンLHPの上端は、スクリーンの左右の水平線HL−HRよりも上側に、約5°〜約8°の位置に位置している。
【0033】
左右両側の前記ADB配光パターンLHP、RHPは、左右両側の前記スイブル装置91が初期位置の停止状態にあるときには、図7(A)、図8(A)、図9図13に示すように、左側の前記ADB配光パターンLHPのうち垂直カットオフラインLCLの部分と、右側の前記ADB配光パターンRHPのうち垂直カットオフラインRCLの部分とが重なり合って、主に、走行車線12および対向車線13の遠方側を集光して照明するものである。このとき、左右両側の前記ADB配光パターンLHP、RHPの前記垂直カットオフラインLCL、RCLは、スクリーンの上下の垂直線VU−VDよりもそれぞれ車両Cの内側に、最低約5°以上の位置に位置している。このために、左右両側の前記ADB配光パターンLHP、RHPの前記垂直カットオフラインLCL、RCLの部分は、確実に重なり合う。これにより、中央部において暗部の縦縞(縦筋)が発生することなく、遠方の視認性に優れた十分に明るいハイビーム配光パターンが得られる。
【0034】
また、左右両側の前記ADB配光パターンLHP、RHPは、左右両側の前記スイブル装置91が車両Cの外側の回転駆動状態にあるときには、また、左右両側の前記スイブル装置91が車両Cの外側の回転駆動状態から左側(走行車線12側)への回転駆動状態あるいは右側(対向車線13側)への回転駆動状態にあるときには、図7(B)、図8(B)、図10図14図16に示すように、それぞれ別個に左右に振り向けられていて、主に、走行車線側の路肩14、対向車線側の路肩15を照明するものである。なお、図12図16中において、符号「10」は先行車両、符号「11」は対向車両、符号「16」はセンターラインである。また、図7(C)、図8(C)は、前記第1ランプユニット3の前記半導体型光源30が消灯して、左右両側の前記ADB配光パターンLHP、RHPが消えている状態を破線にて示す。
【0035】
(第2ランプユニット2の説明)
前記第2ランプユニット2は、図5に示すように、プロジェクタタイプのランプユニットである。前記第2ランプユニット2は、前記第1ランプユニット3とほぼ同様に、半導体型光源20と、リフレクタ21と、投影レンズ22と、シェード23と、ヒートシンク部材24と、ホルダ25と、から構成されている。
【0036】
前記第2ランプユニット2は、図11に示す左右両側のロービーム配光パターンLLP、RLPを車両Cの前方に照射するものである。なお、右側のロービーム配光パターンRLPは、右側の前記車両用前照灯1Rの前記第2ランプユニット2から照射されるものである。また、左側のロービーム配光パターンLLPは、左側の車両用前照灯1Lの第2ランプユニットから照射されるものである。右側のロービーム配光パターンRLPと左側のロービーム配光パターンLLPとは、ほぼ同様の配光パターンである。
【0037】
前記半導体型光源20は、たとえば、LED、OELまたはOLED(有機EL)などの自発光半導体型光源である。前記半導体型光源20は、前記ヒートシンク部材24に取り付けられている。前記半導体型光源20の発光面は、上向きである。
【0038】
前記リフレクタ21には、楕円反射面(楕円を基調(基本、基準)とする自由曲面からなる反射面、あるいは、回転楕円面からなる反射面)からなる反射面210が設けられている。前記反射面210は、第1基準焦点(図示せず)と、第2基準焦点(図示せず)と、基準光軸と、を有する。前記第1基準焦点もしくはその近傍には、前記半導体型光源20の前記発光面が位置する。前記反射面210は、前記半導体型光源20の前記発光面からの光を前記シェード23および前記投影レンズ22側に反射するものである。前記リフレクタ21は、前記ホルダ25に直接、もしくは、前記ヒートシンク部材24を介して前記ホルダ25に取り付けられている。
【0039】
前記投影レンズ22は、レンズ焦点(図示せず)と、レンズ軸(図示せず)とを有する。前記レンズ焦点は、前記第2基準焦点と一致もしくはほぼ一致する。前記レンズ軸は、前記基準光軸と一致もしくはほぼ一致する。前記投影レンズ22は、前記反射面210からの反射光であって、前記シェード23により遮蔽された反射光以外の反射光を前記ロービーム配光パターンLLP、RLPとして車両の前方に照射するものである。前記投影レンズ22は、前記ホルダ25に取り付けられている。
【0040】
前記シェード23は、前記半導体型光源20および前記リフレクタ21と前記投影レンズ22との間であって、前記第2基準焦点、前記レンズ焦点もしくはその近傍に配置されている。前記シェード23は、図5に示すように、前記半導体型光源20(前記基準光軸、前記レンズ軸)に対して下側に配置されている。前記シェード23は、前記リフレクタ21、前記ホルダ25のうち少なくともいずれか一方に取り付けられている。
【0041】
前記シェード23の上縁には、水平エッジと、斜めエッジと、が設けられている。前記水平エッジは、前記ロービーム配光パターンLLP、RLPの水平カットオフラインCL1を形成するものである。前記斜めエッジは、前記ロービーム配光パターンLLP、RLPの斜め(約15°)のカットオフラインCL2を形成するものである。前記水平カットオフラインCL1と前記斜めカットオフラインCL2との交点には、エルボー点Eが形成されている。前記水平カットオフラインCL1は、スクリーンの左右の水平線HL−HRよりも若干下側に位置している。なお、前記ロービーム配光パターンLLP、RLPのカットオフラインとしては、下水平カットオフラインと上水平カットオフラインと斜めカットオフラインとからなるZカットオフラインであっても良い。
【0042】
前記ロービーム配光パターンLLP、RLPは、図12に示すように、主に、左側の走行車線12および右側の対向車線13の手前側を広範囲に亘って拡散させて照明するものである。
【0043】
前記ヒートシンク部材24は、前記半導体型光源20において発生する熱を外部に放射させる。前記ヒートシンク部材24には、前記半導体型光源20が取り付けられている。
【0044】
前記ホルダ25は、前記リフレクタ21、前記投影レンズ22、前記シェード23、前記ヒートシンク部材24を保持するものである。前記ホルダ25と前記ヒートシンク部材24とを一体構造として兼用しても良い。
【0045】
(車両用前照灯システムの説明)
車両用前照灯システムは、前記車両用前照灯1L、1Rと、前方の先行車両10や対向車両11の有無を検出する検出部9と、前記検出部9からの検出信号に基づいて前記車両用前照灯1L、1Rに制御信号を出力する前記制御部90と、を備える。
【0046】
前記検出部9は、前方の先行車両10や対向車両11の有無や状況を検出して、その検出信号を前記制御部90に出力するものである。前記検出部9は、たとえば、CCDカメラ(カメラセンサ)や操舵角センサなどを使用する。
【0047】
前記制御部90は、たとえば、ECUなどを使用する。前記制御部90は、前記検出部9からの検出信号により制御信号を前記車両用前照灯1L、1Rの前記半導体型光源20、30および前記スイブル装置91に出力するものである。前記制御部90は、前記スイブル装置91の前記制御装置と、前記調光制御部と、から構成されている。
【0048】
前記車両用前照灯1L、1Rは、前記検出部9からの検出信号に基づいた前記制御部90からの制御信号により、前記半導体型光源20、30の点灯消灯の制御、および、前記スイブル装置91の駆動停止の制御が行われる。
【0049】
たとえば、前記制御部90からの第1制御信号により、前記第2ランプユニット2の前記半導体型光源20が点灯状態に制御され、かつ、前記第1ランプユニット3の前記半導体型光源30が消灯状態に制御され、かつ、前記スイブル装置91が初期位置の停止状態に制御される。
【0050】
前記制御部90からの第2制御信号により、前記第2ランプユニット2の前記半導体型光源20および前記第1ランプユニット3の前記半導体型光源30が点灯状態に制御され、かつ、前記スイブル装置91が初期位置の停止状態に制御される。
【0051】
前記制御部90からの第3制御信号により、前記第2ランプユニット2の前記半導体型光源20および前記第1ランプユニット3の前記半導体型光源30が点灯状態に制御され、かつ、前記スイブル装置91が初期位置の停止状態から車両Cの外側への回転駆動状態に制御される。
【0052】
前記制御部90からの第4制御信号により、前記第2ランプユニット2の前記半導体型光源20および右側の前記第1ランプユニット3の前記半導体型光源30が点灯状態に制御され、かつ、左側の前記第1ランプユニット3の前記半導体型光源30が消灯状態に制御され、かつ、前記スイブル装置91が左側(走行車線12側)への回転駆動状態に制御される。ここで、前記スイブル装置91が左側の回転範囲に達した時点で、左側の前記第1ランプユニット3の前記半導体型光源30が消灯状態に制御される。
【0053】
前記制御部90からの第5制御信号により、前記第2ランプユニット2の前記半導体型光源20および左側の前記第1ランプユニット3の前記半導体型光源30が点灯状態に制御され、かつ、右側の前記第1ランプユニット3の前記半導体型光源30が消灯状態に制御され、かつ、前記スイブル装置91が右側(対向車線13側)への回転駆動状態に制御される。ここで、前記スイブル装置91が右側の回転範囲に達した時点で、右側の前記第1ランプユニット3の前記半導体型光源30が消灯状態に制御される。
【0054】
(調光制御部の説明)
前記第1ランプユニット3の前記半導体型光源30および前記第2ランプユニット2の前記半導体型光源20には、前記制御部90の前記調光制御部が接続されている。前記調光制御部は、前記ロービーム配光パターンLLP、RLPおよび前記ADB配光パターンLHP、RHPの光度を徐々に増加させたり徐々に減少させたりするために、前記半導体型光源20、30を調光制御するものである。前記半導体型光源20、30の調光制御は、たとえば、2進法パルス幅変調であって、ONのパルス幅のデュティ比あるいはOFFのパルス幅のデュティ比を減少増加させることにより行われる。
【0055】
前記調光制御部は、前記第1ランプユニット3の前記半導体型光源30の点灯時間を、前記第1ランプユニット3の前記半導体型光源30の消灯時間よりも、長く制御するものである。
【0056】
(スイブル装置91の制御装置の説明)
前記スイブル装置91には、前記制御部90の前記制御装置が接続されている。前記制御装置は、前記CCDカメラや前記操舵角センサの検出信号が入力されると、前記スイブル装置91に制御信号を出力する。この結果、前記スイブル装置91は、駆動して、前記第1ランプユニット3を前記垂直軸VE−VE回りに回転させる。左右両側の前記スイブル装置91の初期位置の停止状態とは、左右両側の前記第1ランプユニット3が車両Cの軸方向(正面方向)に向いている状態である。
【0057】
前記制御装置は、図14図15図16に示すADB配光パターンから図13に示すハイビーム配光パターンに切り替える時間TA(図6(A)参照)を、図13に示すハイビーム配光パターンから図14図15図16に示すADB配光パターンに切り替える時間TB(図6(B)参照)よりも、長く制御するものである。
【0058】
(実施形態の作用の説明)
この実施形態にかかる車両用前照灯1L、1Rは、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0059】
まず、図12図16に示すように、左右両側の車両用前照灯1L、1Rの第2ランプユニット2から左右両側のロービーム配光パターンLLP、RLPが車両C(この実施形態の作用の説明においては自車両)の前方に照射されている。
【0060】
ここで、図12に示すように、車両Cの前方に1台もしくは複数台の先行車両10および対向車両11が有ると、検出部9が第1検出信号を制御部90に出力し、制御部90が第1制御信号を車両用前照灯1L、1Rおよびスイブル装置91に出力する。すると、第2ランプユニット2の半導体型光源20が点灯状態に制御され、かつ、第1ランプユニット3の半導体型光源30が消灯状態に制御され、かつ、スイブル装置91が初期位置の停止状態に制御される。
【0061】
これにより、図12に示すように、左右両側の車両用前照灯1L、1Rの第2ランプユニット2から左右両側のロービーム配光パターンLLP、RLPのみが車両Cの前方に照射されることとなる。この結果、左右両側のロービーム配光パターンLLP、RLPにより、走行車線12および対向車線13の手前側を広範囲に亘って照明することができる。一方、左右両側のロービーム配光パターンLLP、RLPの水平カットオフラインCL1および斜めカットオフラインCL2により、車両Cの前方の1台もしくは複数台の先行車両10および対向車両11に対して、配光パターンを照射するようなことがなく、安全走行に貢献することができる。
【0062】
つぎに、図13に示すように、車両Cの前方に先行車両10および対向車両11が無いと、検出部9が第2検出信号を制御部90に出力し、制御部90が第2制御信号を車両用前照灯1L、1Rおよびスイブル装置91に出力する。すると、第2ランプユニット2の半導体型光源20および第1ランプユニット3の半導体型光源30が点灯状態に制御され、かつ、スイブル装置91が初期位置の停止状態に制御される。
【0063】
これにより、図13に示すように、左右両側の車両用前照灯1L、1Rの第2ランプユニット2から左右両側のロービーム配光パターンLLP、RLP、および、左右両側の車両用前照灯1L、1Rの第1ランプユニット3から左右両側のADB配光パターンLHP、RHPが車両Cの前方に照射されることとなる。この結果、左右両側のロービーム配光パターンLLP、RLP、および、垂直カットオフラインLCL、RCLの部分が相互に重なり合っている左右両側のADB配光パターンLHP、RHPにより、走行車線12および対向車線13の手前側および遠方、さらに、走行車線側の路肩14および対向車線側の路肩15を広範囲に亘って照明することができ、安全走行に貢献することができる。
【0064】
ここで、左右両側のロービーム配光パターンLLP、RLPの水平カットオフラインCL1の下側と、右側のADB配光パターンRHPの下側とは、重なり合っている。このために、このロービーム配光パターンLLP、RLPと右側のADB配光パターンRHPとの重なり合い部分Oにおいては、強い光のラインもしくは光の抜けのラインが発生することがない。この結果、この重なり合い部分Oにおける視認性が向上されて、安全走行に貢献することができる。この左右両側のロービーム配光パターンLLP、RLPおよび左右両側のADB配光パターンLHP、RHPは、通常のハイビーム配光パターンと同様もしくはほぼ同様の配光パターンである。すなわち、左右両側のロービーム配光パターンLLP、RLPおよび左右両側のADB配光パターンLHP、RHPは、ハイビーム配光パターンを形成する。
【0065】
つづいて、図14に示すように、車両Cの前方に1台もしくは複数台の先行車両10が遠方に有りかつ対向車両11が無いと、検出部9が第3検出信号を制御部90に出力し、制御部90が第3制御信号を車両用前照灯1L、1Rおよびスイブル装置91に出力する。すると、第2ランプユニット2の半導体型光源20および第1ランプユニット3の半導体型光源30が点灯状態に制御され、かつ、スイブル装置91が初期位置の停止状態から車両Cの外側への回転駆動状態に制御される。
【0066】
これにより、図14に示すように、左右両側の車両用前照灯1L、1Rの第2ランプユニット2から左右両側のロービーム配光パターンLLP、RLPが車両Cの前方に照射され、かつ、左右両側の車両用前照灯1L、1Rの第1ランプユニット3から左右両側のADB配光パターンLHP、RHPが、車両Cの内側から外側に水平方向に振り向けられて、車両Cの前方に照射されることとなる。この結果、車両Cの前方に照射されている左右両側のロービーム配光パターンLLP、RLPにより、走行車線12および対向車線13の手前側を広範囲に亘って照明することができ、かつ、車両Cの外側に振り向けられた左右両側のADB配光パターンLHP、RHPにより、走行車線側の路肩14および対向車線側の路肩15を照明することができる。一方、右側のロービーム配光パターンRLPの斜めカットオフラインCL2、および、左右両側のADB配光パターンLHP、RHPの垂直カットオフラインLCL、RCLにより、車両Cの前方の1台もしくは複数台の先行車両10に対して、配光パターンを照射するようなことがなく、安全走行に貢献することができる。このように、左右両側のロービーム配光パターンLLP、RLPおよび左右両側のADB配光パターンLHP、RHPは、ADB配光パターンをも形成するものである。
【0067】
ここで、左右両側のロービーム配光パターンLLP、RLPの水平カットオフラインCL1の下側と、右側のADB配光パターンRHPの下側との重なり合い部分Oにおいては、強い光のラインもしくは光の抜けのラインが発生することがない。この結果、この重なり合い部分Oにおける視認性が向上されて、安全走行に貢献することができる。
【0068】
ここで、図14に示す車両Cの外側に配光されている左右両側のADB配光パターンLHP、RHPを、図13に示す車両Cの内側に配光されている左右両側のADB配光パターンLHP、RHP(ハイビーム配光パターン)に、切り替える時間(第1ランプユニット3を車両Cの外側から車両Cの内側に回転させる時間)TAは、図13に示す車両Cの内側に配光されている左右両側のADB配光パターンLHP、RHP(ハイビーム配光パターン)を、図14に示す車両Cの外側に配光されている左右両側のADB配光パターンLHP、RHPに、切り替える時間(第1ランプユニット3を車両Cの内側から車両Cの外側に回転させる時間)TBよりも長い。
【0069】
それから、図15に示すように、車両Cの前方に1台もしくは複数台の先行車両10が近接して有り対向車両11が無いと、検出部9が第4検出信号を制御部90に出力し、制御部90が第4制御信号を車両用前照灯1L、1Rおよびスイブル装置91に出力する。すると、第2ランプユニット2の半導体型光源20および右側の第1ランプユニット3の半導体型光源30が点灯状態に制御され、かつ、左側の第1ランプユニット3の半導体型光源30が消灯状態に制御され、かつ、スイブル装置91が左側(走行車線12側)に回転駆動状態に制御される。ここで、スイブル装置91が左側の回転範囲に達した時点で、左側の第1ランプユニット3の前記半導体型光源30が消灯状態に制御される。このとき、第1ランプユニット3の半導体型光源30の消灯時間は、点灯時間よりも短い。
【0070】
これにより、図15に示すように、左右両側の車両用前照灯1L、1Rの第2ランプユニット2から左右両側のロービーム配光パターンLLP、RLP、および、右側の車両用前照灯1Rの第1ランプユニット3から右側のADB配光パターンRHPが車両Cの前方に照射され、かつ、右側のADB配光パターンRHPが左側に振り向けられることとなる。この結果、左右両側のロービーム配光パターンLLP、RLPにより、走行車線12および対向車線13の手前側と、走行車線側の路肩14と、を広範囲に亘って照明することができ、かつ、左側に振り向けられた右側のADB配光パターンRHPにより、走行車線12の右側および対向車線13の遠方を照明することができる。一方、左右両側のロービーム配光パターンLLP、RLPの斜めカットオフラインCL2、および、左側に振り向けられた右側のADB配光パターンRHPの垂直カットオフラインRCLにより、車両Cの前方の1台もしくは複数台の近接している先行車両10に対して、配光パターンを照射するようなことがなく、安全走行に貢献することができる。このように、左右両側のロービーム配光パターンLLP、RLPおよび左右両側のADB配光パターンLHP、RHPは、ADB配光パターンをも形成するものである。
【0071】
ここで、左右両側のロービーム配光パターンLLP、RLPの水平カットオフラインCL1の下側と、右側のADB配光パターンRHPの下側との重なり合い部分Oにおいては、強い光のラインもしくは光の抜けのラインが発生することがない。この結果、この重なり合い部分Oにおける視認性が向上されて、安全走行に貢献することができる。
【0072】
そして、図16に示すように、車両Cの前方に先行車両10が無くかつ1台もしくは複数台の対向車両11が接近して有ると、検出部9が第5検出信号を制御部90に出力し、制御部90が第5制御信号を車両用前照灯1L、1Rおよびスイブル装置91に出力する。すると、第2ランプユニット2の半導体型光源20および左側の第1ランプユニット3の半導体型光源30が点灯状態に制御され、かつ、右側の第1ランプユニット3の半導体型光源30が消灯状態に制御され、かつ、スイブル装置91が右側(対向車線13側)に回転駆動状態に制御される。ここで、スイブル装置91が右側の回転範囲に達した時点で、右側の第1ランプユニット3の半導体型光源30が消灯状態に制御される。このとき、第1ランプユニット3の半導体型光源30の消灯時間は、点灯時間よりも短い。
【0073】
これにより、図16に示すように、左右両側の車両用前照灯1L、1Rの第2ランプユニット2から左右両側のロービーム配光パターンLLP、RLP、および、左側の車両用前照灯1Lの第1ランプユニット3から左側のADB配光パターンLHPが車両Cの前方に照射され、かつ、左側のADB配光パターンLHPが右側に振り向けられることとなる。この結果、左右両側のロービーム配光パターンLLP、RLPにより、走行車線12および対向車線13の手前側と、対向車線側の路肩15と、を広範囲に亘って照明することができ、かつ、右側に振り向けられた左側のADB配光パターンLHPにより、走行車線12および対向車線13の遠方および走行車線側の路肩14を照明することができる。一方、左右両側のロービーム配光パターンLLP、RLPの水平カットオフラインCL1、および、右側に振り向けられた左側のADB配光パターンLHPの垂直カットオフラインLCLにより、車両Cの前方の1台もしくは複数台の近接している対向車両11に対して、配光パターンを照射するようなことがなく、安全走行に貢献することができる。このように、左右両側のロービーム配光パターンLLP、RLPおよび左右両側のADB配光パターンLHP、RHPは、ADB配光パターンをも形成するものである。
【0074】
図12図16は、直線路の場合について説明するものである。曲路の場合においては、車両Cの左右操舵旋回に合わせて、左右両側のADB配光パターンLHP、RHPが水平方向(左右方向)に振り向けられる。
【0075】
(実施形態の効果の説明)
この実施形態にかかる車両用前照灯1L、1Rは、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0076】
この実施形態にかかる車両用前照灯1L、1Rは、図14図15図16に示すADB配光パターンから図13に示すハイビーム配光パターンに切り替える時間TAを、図13に示すハイビーム配光パターンから図14図15図16に示すADB配光パターンに切り替える時間TBよりも長くすることにより、自車や他車のドライバーに対して眼精疲労や違和感を軽減することができ、交通安全に貢献することができる。しかも、図13に示すハイビーム配光パターンから図14図15図16に示すADB配光パターンに切り替える時間TBを図14図15図16に示すADB配光パターンから図13に示すハイビーム配光パターンに切り替える時間TAよりも短くすることができるので、他車が短時間で現れる道路状況の場合にも適する。
【0077】
この実施形態にかかる車両用前照灯1L、1Rは、検出部9および制御部90により、左右両側の第2ランプユニット2の半導体型光源20の点灯消灯、第1ランプユニット3の半導体型光源30の点灯消灯、スイブル装置91の作動を確実にかつ迅速に行うことができる。
【0078】
この実施形態にかかる車両用前照灯1L、1Rは、左右両側の第2ランプユニット2の半導体型光源20の点灯消灯、第1ランプユニット3の半導体型光源30の点灯消灯、スイブル装置91の駆動停止により、複数機能の配光パターン(左右両側のロービーム配光パターンLLP、RLP、および、左右両側のADB配光パターンLHP、RHPおよび、左右両側のADB配光パターンLHP、RHPの水平方向の振り向けなどを、組み合わせた複数機能の配光パターン)が得られる。
【0079】
この実施形態にかかる車両用前照灯1L、1Rは、第1ランプユニット3の半導体型光源30の点灯時間を消灯時間よりも長くすることにより、自車や他車のドライバーに対して眼精疲労や違和感を軽減することができ、交通安全に貢献することができる。しかも、第1ランプユニット3の半導体型光源30の消灯時間を点灯時間よりも短くすることができるので、他車が短時間で現れる道路状況の場合にも適する。
【0080】
(実施形態以外の例の説明)
この実施形態においては、車両Cが左側通行の場合の車両用前照灯1L、1Rについて説明するものである。ところが、この発明においては、車両Cが右側通行の場合の車両用前照灯にも適用することができる。
【0081】
また、この実施形態においては、ADB配光パターンLHP、RHPが長円形の4分の1の形状をなすものである。ところが、この発明においては、ADB配光パターンの形状は特に限定しない。たとえば、垂直カットオフラインを1辺とする三角形形状、あるいは、垂直カットオフラインで切断した長円形の2分の1の形状などであっても良い。
【0082】
さらに、この実施形態においては、第1ランプユニット3がスイブル装置91により左右に回転するものである。ところが、この発明においては、第1ランプユニットと第2ランプユニットとがスイブル装置により同時に左右に回転するものであっても良い。
【0083】
さらにまた、この実施形態においては、第1ランプユニット3の光源として半導体型光源30を使用するものである。ところが、この発明においては、第1ランプユニットの光源として、半導体型光源以外の光源、たとえば、HIDなどの放電光源、ハロゲン光源などのバルブ光源などを使用するものであっても良い。
【符号の説明】
【0084】
1L 左側の車両用前照灯
1R 右側の車両用前照灯
10 先行車両
11 対向車両
12 走行車線
13 対向車線
14 走行車線側の路肩
15 対向車線側の路肩
16 センターライン
2 第2ランプユニット
20 半導体型光源
21 リフレクタ
210 反射面
22 投影レンズ
23 シェード
24 ヒートシンク部材
25 ホルダ
3 第1ランプユニット
30 半導体型光源
31 リフレクタ
310 反射面
32 投影レンズ
33 シェード
34 ヒートシンク部材
35 ホルダ
5 ランプハウジング
50 灯室
51 第1取付部材
52 第2取付部材
53、54、55 光軸調整装置
9 検出部
90 制御部(調光制御部、スイブル装置の制御装置)
91 スイブル装置
92 ケーシング
93 回転軸
C 車両
CL1 水平カットオフライン
CL2 斜めカットオフライン
E エルボー点
HL−HR スクリーンの左右の水平線
LCL、RCL 垂直カットオフライン
LHP、RHP 左右両側のADB配光パターン
LLP、RLP 左右両側のロービーム配光パターン
O 重なり合い部分
VE−VE 垂直軸
VU−VD スクリーンの上下の垂直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16