特許第6142589号(P6142589)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6142589導電率低減システム及び導電率の低減方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6142589
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】導電率低減システム及び導電率の低減方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/00 20060101AFI20170529BHJP
   G21C 19/307 20060101ALI20170529BHJP
   C02F 1/42 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   C02F1/00 A
   G21C19/30 C
   C02F1/42 A
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-48759(P2013-48759)
(22)【出願日】2013年3月12日
(65)【公開番号】特開2014-172008(P2014-172008A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2016年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】神田 憲一
【審査官】 小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−172806(JP,A)
【文献】 特開平11−269943(JP,A)
【文献】 特開2007−144307(JP,A)
【文献】 特開2012−170906(JP,A)
【文献】 特開2009−231155(JP,A)
【文献】 特開平05−068972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00−1/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を水処理することによって製造された処理水を貯水させる第1貯水タンクと、第1貯水タンクの処理水を水処理することによって製造された処理水を貯水させるとともに、大気開放される第2貯水タンクとを備えた処理水の製造ラインに用いられ、前記第2貯水タンクに貯水される処理水の導電率を低減させる導電率低減システムであって、
前記第2貯水タンクの底部と前記第1貯水タンクの上部との間を接続する処理水循環配管と、該処理水循環配管と前記第2貯水タンクとの間を開閉させる開閉バルブと、前記第1貯水タンクからの処理水を水処理する着脱可能なカートリッジ式のイオン交換樹脂を有する脱塩装置とを備え、
前記第2貯水タンクには、排水溝まで延出されたオーバーフロー配管が接続されており、当該オーバーフロー配管を通じて前記第2貯水タンク内が大気開放されており、
前記開閉バルブを開いた状態で、前記第2貯水タンクと前記第1貯水タンクとの間の水頭圧により、前記第2貯水タンク内の処理水を前記第1貯水タンクに向けて流すことを特徴とする導電率低減システム。
【請求項2】
前記第1貯水タンク及び前記第2貯水タンクは、同一の基礎の上部に設置されるとともに、前記第2貯水タンクの高さが前記第1貯水タンクの高さよりも高く設定されており、
前記処理水循環配管の前記第1貯水タンクとの接続部には、上方に立ち上げられた前記第2貯水タンクの水位に相当する高さの逆U形状の立上部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の導電率低減システム。
【請求項3】
前記処理水は、原子力発電プラントの一次冷却系統の一次冷却水として使用される純水であることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電率低減システム。
【請求項4】
原水を水処理することによって製造された処理水を貯水させる第1貯水タンクと、第1貯水タンクの処理水を水処理することによって製造された処理水を貯水させるとともに、大気開放される第2貯水タンクとを備えた処理水の製造ラインに用いられ、前記第2貯水タンクに貯水される処理水の導電率を低減させる導電率の低減方法であって、
前記第2貯水タンクには、排水溝まで延出されたオーバーフロー配管が接続されており、当該オーバーフロー配管を通じて前記第2貯水タンク内が大気開放されており、
前記第1貯水タンクの処理水を着脱可能なカートリッジ式のイオン交換樹脂を有する脱塩装置で水処理することによって製造され、前記第2貯水タンクに貯水された処理水を、前記第2貯水タンクと前記第1貯水タンクとの間の水頭圧によって前記第1貯水タンクに向けて流し、水処理した後に前記第2貯水タンクに戻すことを繰り返すことにより、前記第2貯水タンクに貯水された処理水の導電率を低減させることを特徴とする導電率の低減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電率低減システム及び導電率の低減方法に関し、特に、プラント建設用水や発電用プラント等で使用される純水に適用され、空気中の二酸化炭素の溶解によって導電率が上昇した用水や純水の導電率を低減させるのに有効な導電率低減システム及び導電率の低減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラント建設用水や発電用プラント等で使用される純水等の処理水は、配管や機器等が腐食するのを防止するため、導電率を含む水質の管理に基準値を設けて、導電率等を基準値内に保つように管理している。
【0003】
例えば、原子力発電プラントにおいて一次冷却水として使用される純水は、導電率の上昇が原子炉圧力容器、炉内構造物の応力腐食割れの一因になるため、純水の導電率を基準値内に保つように厳しく管理している。
【0004】
原子力発電プラントの処理水の製造ラインの一例を図3に示す。この処理水の製造ライン31は、海水淡水化装置32と、第1貯水タンク33と、移送ポンプ34と、脱塩装置35と、第2貯水タンク36とを備え、これらの設備を処理水供給配管37を介して直列に接続して構成したものである。
【0005】
このような構成の処理水の製造ライン31にあっては、海水を海水淡水化装置32により水処理することにより、導電率を約200μS/m程度に低減させた一次純水を製造し、この一次純水を第1貯水タンク33に貯水し、第1貯水タンク33から移送ポンプ34により脱塩装置35に送り、脱塩装置35を通して水処理することにより導電率を約20〜50μS/m程度まで低減させた二次純水を製造し、この二次純水を第2貯水タンク36に貯水し、必要時に第2貯水タンク36から一次冷却水としてプラントの一次冷却系統40に供給している。
【0006】
また、一次冷却水として使用される二次純水に一定の基準値(例えば、導電率:約20〜50μS/m程度)を設け、第1貯水タンク33の出口の一次純水及び第2貯水タンク36内で二次純水の導電率を測定することにより、一次冷却水として使用される二次純水の導電率を基準値内に保つように管理している。
【0007】
ところで、上記のような構成の処理水の製造ライン31にあっては、第2貯水タンク36に排水溝48まで延出されたオーバーフロー配管46が接続され、オーバーフロー配管46を通じて第2貯水タンク36の内部が大気開放され、余剰の二次純水がオーバーフロー配管を通じて排水溝48に排水されるようになっている。このため、オーバーフロー配管46を通じて第2貯水タンク36内に空気が流入し、その空気中の二酸化炭素が二次純水中に溶解することにより、第2貯水タンク36内の二次純水の導電率が上昇し、基準値を超えてしまうことがある。
【0008】
このように二次純水の導電率が基準値を超えた場合には、第2貯水タンク36には二次純水の導電率を低減させる設備が付設されていないため、導電率が上昇した二次純水を第2貯水タンク36から排水し、新たに製造した導電率が基準値内の二次純水を第2貯水タンク36に貯水させる必要があり、その作業に時間と手間と費用がかかる。
【0009】
上記のような第2貯水タンク36内の二次純水の導電率の上昇に対処するため、特許文献1に記載された技術を適用することが考えられる。特許文献1に記載の技術は、純水タンクの純水をポンプで汲み上げて加湿器に送り、加湿器で加湿後の余剰の水を圧力調整弁で減圧し、イオン交換フィルタでイオンを除去した後に、純水タンクに戻すように構成したものである。また、純水タンク内の純水の導電率が大気からのイオン溶出等により規定値を上回った場合には、切替バルブで加湿器バイパス回路に切り替え、導電率が上昇した純水を純水タンクから加湿器バイパス回路を経てイオン交換フィルタに導くことにより、導電率の上昇した純水の導電率を低減させるように構成したものである。
【0010】
特許文献1に記載された技術を適用して、図2の処理水の製造ライン31の第2貯水タンク36と脱塩装置35の入口との間に、第2貯水タンク36と脱塩装置35との間で導電率の上昇した二次純水を循環させる循環ラインを設けることにより、第2貯水タンク36内の二次純水の導電率を基準値まで低減させることはできる。
【0011】
しかし、特許文献1に記載の技術では、循環ラインを通じて二次純水を循環させる循環ポンプが必要になるとともに、そのメンテナンスが必要になり、二次純水の導電率の管理に手間と費用がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−214085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、時間と手間と費用をかけることなく、導電率が上昇した用水や純水等の処理水の導電率を低減させることができる導電率低減システム及び導電率の低減方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記のような課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、本発明は、原水を水処理することによって製造された処理水を貯水させる第1貯水タンクと、第1貯水タンクの処理水を水処理することによって製造された処理水を貯水させるとともに、大気開放される第2貯水タンクとを備えた処理水の製造ラインに用いられ、前記第2貯水タンクに貯水される処理水の導電率を低減させる導電率低減システムであって、前記第2貯水タンクの底部と前記第1貯水タンクの上部との間を接続する処理水循環配管と、該処理水循環配管と前記第2貯水タンクとの間を開閉させる開閉バルブと、前記第1貯水タンクからの処理水を水処理する着脱可能なカートリッジ式のイオン交換樹脂を有する脱塩装置とを備え、前記第2貯水タンクには、排水溝まで延出されたオーバーフロー配管が接続されており、当該オーバーフロー配管を通じて前記第2貯水タンク内が大気開放されており、前記開閉バルブを開いた状態で、前記第2貯水タンクと前記第1貯水タンクとの間の水頭圧により、前記第2貯水タンク内の処理水を前記第1貯水タンクに向けて流すことを特徴とする。
【0015】
本発明の導電率低減システムによれば、第2貯水タンク内の処理水に空気中の二酸化炭素が溶解して、第2貯水タンク内の処理水の導電率が上昇した場合には、開閉バルブを開いて、処理水循環配管と第2貯水タンクとの間を開くことにより、第2貯水タンクと第1貯水タンクとの間の水頭圧により、第2貯水タンク内の処理水を第1貯水タンクに向けて流すことができ、第1貯水タンクから水処理した後に第2貯水タンクに戻すことができる。従って、第2貯水タンク内の処理水を循環ポンプを用いることなく第1貯水タンクに流すことができるので、循環ポンプの設置に要する費用を削減できるとともに、循環ポンプのメンテナンスを削減することができ、第2貯水タンク内の処理水の管理に要する手間、費用を削減することができる。
【0016】
また、本発明において、前記第1貯水タンク及び前記第2貯水タンクは、同一の基礎の上部に設置されるとともに、前記第2貯水タンクの高さが前記第1貯水タンクの高さよりも高く設定されていることとしてもよい。
【0017】
本発明の導電率低減システムによれば、第1貯水タンクと第2貯水タンクとは同一の基礎の上部に設置され、第2貯水タンクの高さは第1貯水タンクの高さよりも高く設定されているので、第1貯水タンクと第2貯水タンクとの間に水頭圧を付与することができ、この水頭圧によって第2貯水タンク内の処理水を第1貯水タンクに向けて流すことができる。
【0018】
また、本発明において、前記処理水循環配管の前記第1貯水タンクとの接続部には、上方に立ち上げられた前記第2貯水タンクの水位に相当する高さの逆U形状の立上部が設けられていることとしてもよい。
【0019】
本発明の導電率低減システムによれば、処理水循環配管の立上部によりも低く第2貯水タンク内の処理水の水位が下がることはないので、第2貯水タンク内に所定量の処理水を確保することができる。
【0020】
また、本発明において、前記処理水は、原子力発電プラントの一次冷却系統の一次冷却水として使用される純水であることとしてもよい。
【0021】
本発明の導電率低減システムによれば、純水の導電率が上昇した場合に、時間と手間と費用をかけることなく、一次冷却水として使用される純水の導電率を低減させることができ、原子力発電プラントの原子炉圧力容器、炉内構造物の応力腐食割れを抑制することができる。
【0022】
また、本発明は、原水を水処理することによって製造された処理水を貯水させる第1貯水タンクと、第1貯水タンクの処理水を水処理することによって製造された処理水を貯水させるとともに、大気開放される第2貯水タンクとを備えた処理水の製造ラインに用いられ、前記第2貯水タンクに貯水される処理水の導電率を低減させる導電率の低減方法であって、前記第2貯水タンクには、排水溝まで延出されたオーバーフロー配管が接続されており、当該オーバーフロー配管を通じて前記第2貯水タンク内が大気開放されており、前記第1貯水タンクの処理水を着脱可能なカートリッジ式のイオン交換樹脂を有する脱塩装置で水処理することによって製造され、前記第2貯水タンクに貯水された処理水を、前記第2貯水タンクと前記第1貯水タンクとの間の水頭圧によって前記第1貯水タンクに向けて流し、水処理した後に前記第2貯水タンクに戻すことを繰り返すことにより、前記第2貯水タンクに貯水された処理水の導電率を低減させることを特徴とする。
【0023】
本発明の導電率の低減方法によれば、時間と手間と費用をかけることなく、導電率が上昇した第2貯水タンク内の処理水の導電率を低減させることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上、説明したように、本発明の導電率低減システム及び導電率の低減方法によれば、時間と手間と費用をかけることなく、導電率が上昇した用水や純水等の処理水の導電率を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明による導電率低減システムの一実施の形態を示したブロック構成図である。
図2図1を側方から見た説明図である。
図3】処理水の製造ラインの一例を示したブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1及び図2には、本発明による導電率低減システム及び導電率の低減方法の一実施の形態が示されている。本発明の導電率低減システム及び導電率の低減方法は、プラント建設用水や発電用プラント等で使用される純水等の処理水に適用され、空気中の二酸化炭素の溶解によって導電率が上昇した処理水の導電率を低減させるのに有効なものであって、本実施の形態においては、原子力発電プラントの一次冷却系統10の一次冷却水として使用される処理水の製造ライン1に適用している。
【0027】
原子力発電プラントの一次冷却系統10の一次冷却水として使用される処理水の製造ライン1は、例えば、図1に示すように、海水を淡水化させて一次処理水(一次純水)を製造する海水淡水化装置2と、海水淡水化装置2からの一次純水を貯水させる第1貯水タンク3と、第1貯水タンク3から一次純水を移送させる移送ポンプ4と、第1貯水タンク3からの一次純水を水処理する脱塩装置5と、脱塩装置5からの二次処理水(二次純水)を貯水させる第2貯水タンク6と、これらの設備を直列に接続する処理水供給配管7とを備えている。
【0028】
第1貯水タンク3及び第2貯水タンク6は、図2に示すように、同一基礎8の上部に設置され、第1貯水タンク3は基礎8の上面からの高さが約2mに設定され、第2貯水タンク6は基礎8の上面からの高さが約10mに設定され、第2貯水タンク6内には脱塩装置5からの二次純水が約8〜9m程度の水位となるように貯水されている。
【0029】
海水淡水化装置2は、例えば、濾過膜(逆浸透膜)を備えたものであって、海水に圧力をかけて濾過膜を通すことにより、海水に含まれる塩分等の不純物を濾過して除去することができ、導電率が約200(μS/m)程度の一次純水を製造することができる。海水淡水化装置2によって製造された一次純水は、海水淡水化装置2から第1貯水タンク3に供給され、第1貯水タンク3に貯水される。第1貯水タンク3は、オーバーフロー配管17を介して貯水槽19に接続され、このオーバーフロー配管17を介して余剰の一次純水が貯水槽19に貯水される。
【0030】
脱塩装置5は、例えば、着脱が可能なカートリッジ式のイオン交換樹脂を備えたものであって、移送ポンプ4によって第1貯水タンク3から移送された一次純水をこの脱塩装置5を通すことにより、一次純水中のイオン性不純物(炭酸イオン、その化合物等)を除去することができ、導電率が約20〜50(μS/m)程度の二次純水を製造することができる。脱塩装置5を通した二次純水は、脱塩装置5から第2貯水タンク6に供給され、第2貯水タンク6に貯水される。第2貯水タンク6に貯水された二次純水は、必要時に第2貯水タンク6からプラントの一次冷却系統10に一次冷却水として供給される。
【0031】
本実施の形態においては、一次冷却水として使用される二次純水に基準値(例えば、導電率:約20〜50μS/m)を設け、第1貯水タンク3の出口及び第2貯水タンク6の内部で一次純水及び二次純水の導電率を測定することで、第2貯水タンク6に貯水されている二次純水の導電率を基準値内に保つように管理している。
【0032】
第2貯水タンク6の二次純水の導電率を基準値内に保つことにより、一次冷却水として使用される二次純水の導電率の上昇によってプラントの原子炉圧力容器や炉内構造物が応力腐食割れを起こすのを抑制することができる。
【0033】
なお、第1貯水タンク3の入口には第1開閉バルブ11、第2貯水タンク6の入口には第2開閉バルブ12、第2貯水タンク6のプラント側の出口には第3開閉バルブ13がそれぞれ設けられている。また、脱塩装置5と第2貯水タンク6との間を接続する処理水供給配管7は、途中から分岐されて濾過水タンク9に接続されている。濾過水タンク9の入口には第4開閉バルブ14が設けられている。
【0034】
第2貯水タンク6の上部には、オーバーフロー配管16が接続され、このオーバーフロー配管16は排水溝18まで延出され、このオーバーフロー配管16を通じて第2貯水タンク6内が大気開放されている。また、このオーバーフロー配管16を通じて第2貯水タンク6内の余剰の二次純水が排水溝18に排水されるようになっている。
【0035】
オーバーフロー配管16が大気開放されていることにより、オーバーフロー配管16を通じて第2貯水タンク6内に空気が流入し、この空気中の二酸化炭素が第2貯水タンク6の二次純水に溶解されることにより、二次純水の導電率が基準値を超えて約120(μS/m)程度まで上昇することがある。
【0036】
このため、本実施の形態においては、第2貯水タンク6の導電率が上昇した二次純水の導電率を基準値まで低減させるために、第2貯水タンク6と第1貯水タンク3との間に導電率低減システム20を設けている。
【0037】
導電率低減システム20は、第2貯水タンク6の底部と第1貯水タンク3の上部との間を接続する処理水循環配管21と、処理水循環配管21と第2貯水タンク6との間を開閉させる第5開閉バルブ15とを備えている。
【0038】
この場合、上述したように、第1貯水タンク3及び第2貯水タンク6は、同一基礎8の上部に設置され、第1貯水タンク3は、基礎8の上面からの高さが約2mに設定され、第2貯水タンク6は、基礎8の上面からの高さが約10mに設定され、第2貯水タンク6の二次純水の水位は8〜9m程度に設定されているので、第5開閉バルブ15を開くことにより、ポンプを使用することなく水頭圧によって第2貯水タンク6から第1貯水タンク3に向けて二次純水を流すことができる。
【0039】
また、図2に示すように、処理水循環配管1の第1貯水タンク3との接続部を逆U字状に上方に立ち上げ、この立上部22の基礎8の上面からの高さを約7〜8m程度に設定することにより、第2貯水タンク6の二次純水の水位をそれと同一レベルに保つことができる。
【0040】
そして、上記のように構成した処理水の製造ライン1の海水淡水化装置2により海水を水処理して、導電率が約200(μS/m)程度の一次純水を製造し、この一次純水を第1貯水タンク3に供給して貯水し、第1貯水タンク3から移送ポンプ4により移送して脱塩装置5を通すことにより、導電率を低減させて導電率が約20〜50(μS/m)程度の二次純水を製造し、この二次純水を第2貯水タンク6に貯水し、必要時に、第2貯水タンク6の第3開閉バルブ13を開くことにより、第2貯水タンク6の二次純水を一次冷却水としてプラントの一次冷却系統10に供給することができる。
【0041】
また、第1貯水タンク3の出口及び第2貯水タンク6の内部で一次純水及び二次純水の導電率を逐次測定して、第2貯水タンク6の二次純水の導電率を基準値(約20〜50μS/m程度)に保つように管理することで、プラントの原子炉圧力容器や炉内構造物が応力腐食割れを起こすのを抑制することができる。
【0042】
また、第2貯水タンク6の二次純水の導電率が、オーバーフロー配管16を通じて第2貯水タンク6に流入した空気中の二酸化炭素が溶解することによって基準値を超える値まで上昇した場合には、第1開閉弁11、第2開閉弁12、第3開閉弁13、第4開閉弁14を閉じ、導電率低減ライン20の第5開閉弁15を開いた状態とする。
【0043】
これにより、第2貯水タンク6の導電率の上昇した二次純水が水頭圧によって処理水循環配管21内に流入し、処理水循環配管21を介して第1貯水タンク3に戻される。第1貯水タンク3に戻された二次純水は、第1貯水タンク3から移送ポンプ4により脱塩装置5に供給され、脱塩装置5を通すことで、二次純水中に溶解した二酸化炭素、炭酸水素イオン、炭酸イオン等のイオン性不純物が除去されて導電率が低減され、この導電率が低減された二次純水が第2貯水タンク6に供給される。
【0044】
そして、処理水循環配管21を通じて第2貯水タンク6と第1貯水タンク3との間で二次純水を複数回循環させることにより、導電率が上昇した二次純水の導電率を徐々に低減させることができ、第2貯水タンク6の二次純水の導電率を基準値(約20〜50μS/m程度)まで低減させることができる。
【0045】
上記のように構成した本実施の形態の導電率低減システム及び導電率の低減方法にあっては、処理水の製造ライン1の第2貯水タンク6の底部と第1貯水タンク3の上部との間を処理水循環配管21で接続して、水頭圧によって第2貯水タンク6から二次純水を第1貯水タンク3に向けて流すように構成したので、導電率が上昇した二次純水を循環させるための循環ポンプを処理水循環配管21の途中に設ける必要がなくなる。
【0046】
従って、循環ポンプの設置に要する費用、及び循環ポンプのメンテナンスに要する手間と費用を削減することができ、二次純水の導電率を基準値内に保つ管理に要する時間と手間と費用を削減することができ、運用管理面での負荷を軽減させることができる。
【0047】
また、処理水循環配管21の第1貯水タンク3との接続部に逆U字状の立上部22を設けたことにより、第2貯水タンク6の二次純水の水位が立上部22の高さ以下に低下するのを防止でき、プラントの一次冷却系統10に二次純水を一次冷却水として供給する際に、第2貯水タンク6の二次純水の貯水量が不足するのを防止できる。
【0048】
また、導電率の上昇した二次純水を第2貯水タンク6から排水して廃棄し、新たに製造した導電率が基準値内の二次純水を第2貯水タンク6に供給する必要がないので、第2貯水タンク6の二次純水の管理に要する費用を削減できる。
【0049】
また、第2貯水タンク6の二次純水の導電率が上昇して基準値を超えた場合に、処理水循環配管21の第5開閉バルブ15を開くだけでよいので、二次純水の導電率が上昇した場合に迅速に対応することができる。
【0050】
また、第2貯水タンク6から導電率の上昇した二次純水を排水させて廃棄する必要がなく、また、廃棄する二次純水を薬品処理や濃縮処理する必要がないので、環境負荷を低減させることができるとともに、プラント運転の安全性を向上させることができる。
【0051】
また、脱塩装置5として、着脱可能なカートリッジ式のイオン交換樹脂を備えたものを使用しているので、イオン交換樹脂のメンテナンスを容易に、低コストで行うことができ、これによっても、運用管理面での負荷を軽減させることができる。
【0052】
なお、前記の説明においては、原水に海水を使用し、海水から純水を製造する場合に適用したが、原水に雨水、渓流水、排水等を使用し、純水を製造する場合に適用してもよい。
【0053】
また、第1貯水タンク3の出口の一次純水及び第2貯水タンク6内の二次純水の導電率を所定の時間ごとにサンプリングして、第2貯水タンク6内の二次純水の導電率が基準値を超えた場合に、第5開閉バルブ15を開いて、第2貯水タンク6内の二次純水を導電率低減ライン20を循環させ、第2貯水タンク6内の二次純水の導電率が基準値まで低減したときに、第5開閉バルブ15を閉じるように自動制御してもよい。
【0054】
また、プラントの一次冷却系統10への二次純水の供給がなく、第2貯水タンク6が大気開放されている場合に、第5開閉バルブ15を開いた状態として、第2貯水タンク6内の二次純水を導電率低減システム20を循環させて、導電率を基準値内に維持するように制御してもよい。
【0055】
また、前記の説明においては、本発明による導電率低減システム及び導電率の低減方法を原子力発電プラントの一次冷却系統10の一次冷却水として使用される二次純水の製造ライン1に適用したが、プラント建設用水の用水製造ライン等、タンクに水処理した純水や用水を貯水させておく各種の処理水の製造ラインに適用してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1、31 処理水の製造ライン
2、32 海水淡水化装置
3、33 第1貯水タンク
4、34 移送ポンプ
5、35 脱塩装置
6、36 第2貯水タンク
7、37 処理水供給配管
8 基礎
9 濾過水タンク
10 一次冷却系統
11 第1開閉バルブ
12 第2開閉バルブ
13 第3開閉バルブ
14 第4開閉バルブ
15 第5開閉バルブ
16、17、46 オーバーフロー配管
18 排水溝
19 貯水槽
20 導電率低減システム
21 処理水循環配管
22 立上部
図1
図2
図3