(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記樹脂供給ダイにおける前記口金との境界面、及び前記口金における前記樹脂供給ダイとの境界面の少なくとも一方に設けられる、前記複数の樹脂の溶融液を合流させる合流手段を備える請求項1又は2に記載のメルトブローン用紡糸口金装置。
前記樹脂供給ダイにおける前記分配部材との境界面、前記分配部材における前記樹脂供給ダイとの境界面、前記分配部材における前記口金本体との境界面、及び前記口金本体における前記分配部材との境界面の少なくとも一つの境界面に設けられる、前記複数の樹脂の溶融液を合流させる合流手段を備える請求項1又は2に記載のメルトブローン用紡糸口金装置。
前記合流手段が設けられた前記境界面以外の前記境界面に設けられる、前記供給孔から供給される前記複数の樹脂の溶融液を所定の前記導入孔に分配する第1の溶融液分配路又は前記導入孔から導入される前記複数の樹脂の溶融液を所定の前記紡糸孔に分配する第2の溶融液分配路を備える請求項3〜5のいずれか一項に記載のメルトブローン用紡糸口金装置。
【背景技術】
【0002】
不織布等の繊維製品の代表的な製造方法の一つとして、メルトブローン紡糸法が知られている。メルトブローン紡糸法によれば、長手方向に所定の間隔を空けて直線状に配列された複数の紡糸孔を有する口金と、口金の両側に設けられる熱風噴射スリットと、捕集用ネットとを備えるメルトブローン用紡糸口金装置を用い、樹脂溶融液を複数の紡糸孔から吐出して紡糸(繊維化)し、得られた繊維に熱風を噴射して延伸した後、該繊維を捕修用ネット上に集積することにより、不織布が製造される。メルトブローン紡糸法は、繊維径10μm以下の極細繊維を得ることができ、また紡糸と不織布の製造とを連続して実施することが可能であることから、生産効率が高いといった数々の利点を有している。
【0003】
また、最近では、メルトブローン紡糸法の特徴を活かしつつ、より高機能な不織布を製造するために、例えば、ポリプロピレンやポリエチレンテレフタレートといった異種の樹脂からなる複数の繊維や同種で溶融液の粘度等の物性が異なる複数の樹脂からなる複数の繊維を同時に紡糸して混繊するメルトブローン混繊紡糸法が以前にも増して注目を集めている。
【0004】
従来から、種々のメルトブローン用紡糸口金装置が提案されている。例えば、特許文献1及び特許文献2は、樹脂溶融液を吐出して紡糸する複数の紡糸孔と、紡糸孔に連通し、異なる2種の樹脂溶融液を交互に重層貯留する1本の導入孔と、を有する口金を備えるメルトブローン用紡糸口金装置を開示する。該装置によれば、断面視がサイドバイサイド(二層)型又はシースコア(芯鞘)型である繊維が得られる。しかしながら、該装置を用いても、紡糸孔毎に吐出される繊維の材質(樹脂種)を変更して、異なる樹脂からなる複数の繊維を混繊することはできない。
【0005】
特許文献3は、断面視がほぼ逆三角形状であり、逆三角形状の下側の頂角が先端部となる口金板であって、該口金板の中心線に対して線対称の位置に設けられ、異なる2種の樹脂の溶融液を貯留する2つの供給孔(液溜り室)と、一端が一方又は他方の供給孔に連通し、供給孔の位置から中心線に近接するように斜め方向に延びる2本の導入孔とをその内部に有し、その先端部には、導入孔に連通し樹脂溶融液を吐出して紡糸する紡糸口が設けられた口金板を備えるメルトブローン用混繊紡糸口金装置を開示している。
【0006】
特許文献3には、口金板の先端部の幅を導入孔の径よりも大きくすることにより、紡糸口から吐出された繊維状の進行方向が斜め方向から鉛直方向に変わり、かつ該繊維を構成する樹脂溶融液が少し固化した状態で該繊維が高速気流と接触するので、糸切れやショットが無い混繊紡糸が可能になると記載されている。しかしながら、該装置における繊維の紡糸方向(樹脂溶融液の吐出方向)はあくまでも斜め方向であることから、口金板先端部直下での繊維の進行方向及び高速気流に伴う随伴気流の方向はいずれも異なる上に、前記中心線に対して対称でもない。従って、口金板先端部では乱気流が発生しやすく、十分に延伸されないうちに繊維間で融着を起こし繊維塊が発生しやすいという課題がある。
【0007】
特許文献4は、凹部、凹部に連通する紡糸導入孔、及び紡糸導入孔に連通する紡糸孔を有する口金板と、側面から底面にかけて互いに離隔して斜め方向に延びる2つの導入溝を有し、口金の凹部に収納される分配部材と、口金板上部の幅方向両側において口金板の凹部内壁面と分配部材側壁面とで囲まれ、各導入溝に連通するように設けられる2つの供給溝と、を備えるメルトブローン用紡糸口金装置を開示する。該装置では、各供給溝に異なる2種の樹脂溶融液が供給され、これらの樹脂溶融液は導入溝及び紡糸導入孔を介して紡糸孔から吐出され紡糸される。また、特許文献4には、該装置における導入溝の形状を変えることにより、混繊のパターンを変更できると記載されている。
【0008】
しかしながら、該装置には、供給溝での樹脂溶融液の流れが導入溝での樹脂溶融液の流れよりも遅くなるので、樹脂溶融液が必然的に供給溝内に滞留し、樹脂が劣化し易くなるという課題がある。樹脂の劣化は、得られる繊維の特性、品質、外観などを低下させるおそれがある。また、特許文献4は導入溝を分配部材の上部まで延長して、樹脂溶融液を導入溝に直接供給する実施形態を含んでいる。この実施形態では、口金板の凹部の全内壁面と分配部材の導入溝が形成された箇所を除く全側壁面とを隙間なく密着させることが要求される。しかしながら、口金板及び分配部材が共に一方向に長い部材であり、両者の密着させる面の面積が大きいため、実際の加工は非常に困難であり、加工コストを増大させると共に、隙間が残存するのを避けることができない。この隙間には樹脂溶融液が流れ込んで滞留し、原料の歩留まりを低下させる。また、隙間に滞留して劣化した樹脂を含む溶融液が導入溝を介して又は直接紡糸導入孔及び紡糸孔に流入し、小径孔である紡糸孔を目詰まりさせるおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、異種の又は同種で物性の異なる複数の樹脂からなる複数の繊維を精度良く安定的に混繊紡糸して高機能繊維製品を得ることができ、かつ、製造が容易で製造コストを低く抑え、さらにメンテナンス性にも優れたメルトブローン用紡糸口金装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、かかる現況に鑑み、鋭意検討した結果、メルトブローン用紡糸口金装置において、外部から樹脂溶融液の供給を受ける複数の供給孔を設けると共に、該供給孔と樹脂溶融液を吐出して紡糸する紡糸孔とを繋ぐ導入孔として、口金内部において互いに離隔してほぼ平行に延びる複数の導入孔を設け、複数の供給孔から複数の導入孔に複数の樹脂の溶融液が供給されるように構成することにより、本発明の目的に叶うメルトブローン用紡糸口金装置が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、異種又は同種で物性の異なる複数の樹脂からなる複数の繊維(以下、単に「複数の樹脂」とする)を混繊して繊維製品を作製するためのメルトブローン用紡糸口金装置であって、複数の樹脂の溶融液が供給される複数の供給孔を有する樹脂供給ダイと、供給孔に連通しかつ互いに離隔してほぼ平行に延びる複数の導入孔、及び導入孔に連通しかつ複数の樹脂の溶融液を吐出して紡糸する複数の紡糸孔を有する口金と、を備えることを特徴とするメルトブローン用紡糸口金装置を構成した。
【0013】
本発明のメルトブローン用紡糸口金装置において、口金は、複数の紡糸孔及び凹部を有する口金本体と、上記複数の導入孔を有し、口金本体の凹部に着脱可能に収納される分配部材と、を備えるように構成することが好ましい。
【0014】
本発明のメルトブローン用紡糸口金装置において、樹脂供給ダイにおける口金との境界面、及び口金における樹脂供給ダイとの境界面の少なくとも一つの境界面に設けられる、供給孔から供給される複数の樹脂の溶融液を所定の導入孔に分配する第1の溶融液分配路を備えていることが好ましい。
【0015】
本発明のメルトブローン用紡糸口金装置において、分配部材における口金本体との境界面、及び口金本体における分配部材との境界面の少なくとも一つの境界面に設けられる、導入孔から導入される複数の樹脂の溶融液を所定の紡糸孔に分配する第2の溶融液分配路を備えていることが好ましい。
【0016】
別形態のメルトブローン用紡糸口金装置は、樹脂供給ダイにおける口金との境界面、及び口金における樹脂供給ダイとの境界面の少なくとも少なくとも一つの境界面に設けられる、複数の樹脂の溶融液を合流させる合流手段を備えていることが好ましい。さらに別形態のメルトブローン用紡糸口金装置は、樹脂供給ダイにおける分配部材との境界面、分配部材における樹脂供給ダイとの境界面、分配部材における口金本体との境界面、口金本体における分配部材との境界面の少なくとも一つの境界面に設けられる、複数の樹脂の溶融液を合流させる合流手段を備えていることが好ましい。
【0017】
別形態のメルトブローン用紡糸口金装置において、合流手段が設けられた境界面に、合流手段と混在するように設けられる、複数の樹脂の溶融液の合流を阻止する合流阻止手段を備えていることがさらに好ましい。
【0018】
別形態のメルトブローン用紡糸口金装置において、合流手段又は合流手段と合流阻止手段とが設けられた境界面以外の境界面に設けられる、供給孔から供給される複数の樹脂の溶融液を所定の導入孔に分配する第1の溶融液分配路又は導入孔から導入される複数の樹脂の溶融液を所定の紡糸孔に分配する第2の溶融液分配路を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
以上にしてなる本願発明によれば、複数の樹脂の溶融液が供給される複数の供給孔を有する樹脂供給ダイと、供給孔に連通しかつ互いに離隔してほぼ平行に延びる複数の導入孔、及び導入孔に連通しかつ複数の樹脂の溶融液を吐出して紡糸する複数の紡糸孔を有する口金と、を備えるようにメルトブローン用紡糸口金装置を構成することにより、複数の導入孔への複数の樹脂の溶融液の振り分けが容易になり、導入孔内の樹脂溶融液の流れる方向と紡糸孔から樹脂溶融液が吐出される方向とがほぼ一致するように導入孔を設けることが可能になり、さらに紡糸孔から吐出された樹脂溶融液に対してほぼ対称な方向から繊維を延伸させる気体を噴射できることから、繊維間の融着に伴う繊維塊の発生や繊維径の不揃い、繊維内部への空気の噛み込み等を起こすことなく、精度良くかつ安定的な混繊を実現でき、様々な機能が付与され、高機能化された不織布等の繊維製品を製造できる。さらに、複数の樹脂の溶融液が口金内部をほぼ一方向に流れるように構成できることから、樹脂の溶融液の滞留、及びそれに伴う樹脂の劣化が顕著に抑制され、原料ロスや紡糸孔の目詰まりを防止できる。
【0020】
また、該構成において口金は、その先端部に複数の紡糸孔を有すると共に、複数の導入孔が互いに離隔してほぼ平行にその内部を貫通するという要件を満たすだけで良いことから、口金の形状自由度が高まり、口金を製造が容易な形状に設計できるので、その製造が容易で製造コストを低く抑えることができる。
【0021】
本発明では、複数の紡糸孔及び凹部を有する口金本体と、複数の導入孔を有し、口金本体の凹部に着脱可能に収納される分配部材と、よりなる口金を構成し、かつ、供給孔から分配部材内部を通る導入孔に樹脂溶融液を供給するように構成することにより、口金本体の凹部と分配部材との間に多少の隙間が空いていても、その隙間に樹脂溶融液が流入することがないので、口金本体及び分配部材の設計自由度が顕著に高まる。その結果、口金本体(特にその凹部)及び分配部材を、直交する平面を多用した加工が容易な立体形状とすることができ、製造コストのさらなる低減化を達成できる。さらに、分配部材は口金本体の凹部に対して着脱可能に構成できるので、メンテナンス性が顕著に向上する。
【0022】
本発明では、樹脂供給ダイにおける口金との境界面、及び口金における樹脂供給ダイとの境界面の少なくとも一つの境界面に、供給孔から供給される複数の樹脂の溶融液を所定の導入孔に分配する第1の溶融液分配路を設けるように構成することにより、供給孔から導入孔への樹脂溶融液の振り分けをさらに容易にかつさらに円滑に実施することができ、所定の混繊パターンで複数の樹脂からなる複数の繊維を紡糸して、得られる繊維製品中における複数の繊維の配置やそれぞれの含有量等を調整することができ、所定の特性や外観を有する繊維製品を作製することができる。
【0023】
本発明では、分配部材における口金本体との境界面、及び口金本体における分配部材との境界面の少なくとも一つの境界面に、導入孔から導入される複数の樹脂の溶融液を所定の紡糸孔に分配する第2の溶融液分配路を設けることにより、複数の樹脂からなる複数の繊維の混繊パターンを自在に変更できるようになり、所定の特性や外観を有する繊維製品を容易に作製できる。
【0024】
また本発明では、上記樹脂供給ダイ、及び口金と共に、樹脂供給ダイにおける口金との境界面、及び口金における樹脂供給ダイとの境界面の少なくとも一つの境界面に設けられる、複数の樹脂の溶融液を合流させる合流手段を備える別形態のメルトブローン用紡糸口金装置や、上記樹脂供給ダイ、及び口金本体と分配部材とよりなる口金と共に、樹脂供給ダイにおける分配部材との境界面、分配部材における樹脂供給ダイとの境界面、分配部材における口金本体との境界面、及び口金本体における分配部材との境界面の少なくとも一つの境界面に設けられる、上記合流手段を備える別形態のメルトブローン用紡糸口金装置を構成することにより、複数の樹脂からなるサイドバイサイド型繊維を紡糸することが可能になり、さらに、複数の樹脂からなりかつ含有する樹脂種の異なる複数のサイドバイサイド型繊維を混繊することが可能になり、得られる繊維製品に別の機能を付与することができる。例えば、固化温度の異なる複数の樹脂溶融液を用いた場合、一方が固化した後に他方が固化するので、カールして嵩高くなったサイドバイサイド型繊維が得られる。
【0025】
別形態のメルトブローン用紡糸口金装置において、合流手段が設けられた境界面に、合流手段と共に、複数の樹脂の溶融液の合流を阻止する合流阻止手段を備えるように構成することにより、単一の樹脂種からなる繊維とサイドバイサイド型繊維との混繊が可能になり、得られる繊維製品にさらに別の機能を付与することができる。
【0026】
別形態のメルトブローン用紡糸口金装置において、合流手段又は合流手段と合流阻止手段とが設けられた境界面以外の境界面に、上記第1の溶融液分配路及び/又は上記第2の溶融液分配路を備えるように構成することにより、得られる繊維製品中における、複数の樹脂からなりかつ含有する樹脂種の異なる複数のサイドバイサイド型繊維や単一の樹脂種からなる繊維の組み合わせ、配置や含有量等を適宜調整することが容易になり、種々の特性や外観を有する繊維製品を容易に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0029】
図1は、本発明の第1実施形態であるメルトブローン用紡糸口金装置1の要部の構成を模式的に示す断面図である。メルトブローン用紡糸口金装置1は一方向に長い装置であって、
図1は幅方向の断面図である。
図2は、
図1に示すメルトブローン用紡糸口金装置1に備わる分配部材12の樹脂供給ダイ10との境界面(導入孔入口側表面12a)に設けられる第1の溶融液分配路26の構成を模式的に示す上面図である。
図3は、第1の溶融液分配路の変形例26A〜26Dの構成を模式的に示す上面図である。
図4は、別形態の分配部材12Cの構成を模式的に示す上面図である。
図5は分配部材12の導入孔22、23と口金本体11の紡糸孔24との接続を模式的に示す図面である。
図6は分配部材16の導入孔22、23と口金本体11の紡糸孔24との別形態の接続を模式的に示す図面である。
図7は口金本体11と分配部材12との境界面に設けられる別形態の第2の溶融液分配路28の構成を模式的に示す断面図である。
【0030】
図1に示すメルトブローン用紡糸口金装置1は、外部から樹脂溶融液A、Bの供給を受ける複数の供給孔20、21を有する樹脂供給ダイ10と、断面視がほぼT字状である凹部25及び樹脂溶融液A、Bを吐出して紡糸する複数の紡糸孔24を有する口金本体11と、断面視ほぼT字状であり、口金本体11の凹部25に隙間なく嵌入される分配部材12であって、一端が供給孔20、21に連通しかつ他端が複数の紡糸孔24に連通し、互いに離隔してほぼ平行に延び、供給孔20、21から供給された樹脂溶融液A、Bを紡糸孔24に導入する複数の導入孔22、23がその内部に設けられている分配部材12と、口金本体11の紡糸孔24から吐出される樹脂溶融液A、Bからなる繊維に対して所定角度から熱風を供給し該繊維を延伸する熱風噴射スリット13、14と、熱風噴射スリット13、14のスリット幅を調整するスリット幅調整板15と、熱風噴射スリットに熱風を供給する熱風発生手段(不図示)と、延伸後の繊維を集積するコンベア(不図示)と、を備えている。
【0031】
樹脂供給ダイ10は、樹脂供給ダイ10を厚み方向に貫通する複数の供給孔20、21を有している。その供給孔入口側表面10aには、複数の供給孔20、21の入口が、樹脂供給ダイ10の長手方向に所定の間隔を空けてほぼ直線状に1列ずつ配列され、供給孔20の入口の列と供給孔21の入口の列とがほぼ平行になっている。その供給孔出口側表面10bには、複数の供給孔20、21の出口が、これらの入口と同様に配列されている。供給孔20、21には、樹脂A、Bを押出機等により溶融させた樹脂溶融液A、Bがそれぞれ供給される。ここで、樹脂A、Bは、異なる2種の樹脂である。異なる樹脂とは、異種の樹脂であるか、又は、物性の異なる同種の樹脂である。ここで、物性としては特に限定されないが、例えば、粘度、溶融温度、軟化点等の物理的物性や各種機械物性等が挙げられる。
【0032】
本実施形態では複数の供給孔20、21は前述のように構成されているが、これに限定されず、例えば、供給孔入口側表面10aにおいて、供給孔20、21の各入口をそれぞれ連結して、樹脂供給ダイ10の長手方向に延びる溝を構成してもよい。2つの溝に供給される樹脂溶融液A、Bは、それぞれ一方の溝に繋がる供給孔20及び他方の溝に繋がる供給孔21を通って複数の導入孔22、23に供給される。
【0033】
本実施形態では、口金本体11と分配部材12とにより口金が構成される。
口金本体11は、樹脂供給ダイ10の供給孔出口側表面10bに接するように配置され、供給孔出口側表面10bに接する導入孔入口側表面11aを有する断面視ほぼ板状である板部と、該板部の導入孔入口側表面11aとは反対側の面11bの幅方向ほぼ中央部分には、板部に連続して繋がり、板部から離隔する方向に延びかつ断面視がほぼ五角形状である突出部と、よりなる。板部の導入孔入口側表面11aの幅方向ほぼ中央部分には、断面視がほぼT字状である凹部25が形成され、突出部の板部から最も離隔する先端部分11dには、口金本体11(突出部)の長手方向に所定の間隔を空けて複数の紡糸孔24が直線状に配列されている。
【0034】
分配部材12は断面視ほぼT字状の形状を有し、口金本体11の凹部25にほぼ隙間なく嵌入されている。そして、一方の端部では、そのT字状の短辺部分の表面(導入孔入口側表面12a)が口金本体11の入口側表面11aと同一面を構成して、樹脂供給ダイ10の供給孔出口側表面10bに当接し、他方の端部では、その導入孔出口側表面12bが口金本体11の紡糸孔入口側表面11cに当接するように構成されている。このように構成することにより、分配部材12の導入孔入口側表面12a、導入孔出口側表面12b、樹脂供給ダイ10の供給孔出口側表面10b、及び口金本体11の紡糸孔入口側表面11cをそれぞれ平面状に精度良く仕上げることが可能になるので、各表面の当接箇所での樹脂溶融液A、Bの漏れを確実に防止できるという利点が得られる。
【0035】
分配部材12には、互いに離隔してほぼ平行に延び、分配部材12を貫通する導入孔22、23が形成されている。
図2に示すように、分配部材12の導入孔入口側表面12aの幅方向中央部には、導入孔22、23の入口が、分配部材12の長手方向に交互に直線状に配列されている。また、後述する
図5(a)に示すように、分配部材12の導入孔出口側表面12bにおいても、該入口側表面12aに対応して導入孔22、23の出口が分配部材12の長手方向に交互に直線状に配列されている。
【0036】
このように構成することにより、樹脂溶融液A、Bは分配板12の内部に形成された導入孔22、23内を通るので、分配部材12と凹部25との間に多少の隙間が生じても、樹脂溶融液A、Bが前記隙間に流入することはない。これにより、口金本体11(特に凹部25)及び分配部材12の形状自由度が高くなり、口金本体11及び分配部材12の加工が容易になり、製造コストを顕著に低減化することができる。また、分配部材12を凹部25に対して着脱可能に構成できるので、メルトブローン用紡糸口金装置1全体としてのメンテナンス性を著しく高めることができる。また、導入孔22、23内の樹脂溶融液A、Bの流れる方向と後述する紡糸孔24からの樹脂溶融液の吐出方向とがほぼ一致するように設定できるので、紡糸をより円滑にかつより安定的に実施できる。
【0037】
分配部材12における樹脂供給ダイ10との境界面(導入孔入口側表面12a)には、導入孔22、23の入口と共に第1の溶融液分配路26が設けられ、これにより、導入孔22、23がそれぞれ樹脂供給ダイ10の供給孔20、21に連通し、樹脂溶融液A、Bの選択的な供給(振り分け)を受けるように構成されている。
【0038】
第1の溶融液分配路26は、分配部材12の導入孔入口側表面12aの幅方向両端から所定幅の周縁部を除いて分配部材12の長手方向にほぼ平行に延びるように設けられ、供給孔20、21から樹脂溶融液A、Bの供給を受ける所定幅の溶融液受給溝30a、30bと、溶融液受給溝30a、30bから分配部材12の幅方向に分岐して導入孔22、23の入口に繋がる連結溝31a、31bと、よりなる。溶融液受給溝30a、30b及び連結溝31a、31bは、分離隔壁32により互いに離隔している。溶融液受給溝30a、30b及び連結溝31a、31bは、分配部材12の導入孔入口側表面12aの前記周縁部及び分離隔壁32よりも低位になるように構成されているので、樹脂溶融液A、Bの合流が阻止される。
【0039】
第1の溶融液分配路26によれば、供給孔20、21からそれぞれ溶融液受給溝30a、30bに供給された樹脂溶融液A、Bが連結溝31a、31bを流れて導入孔22、23の入口に至るように構成されている。第1の溶融液分配路26により、供給孔20、21から導入孔22、23への樹脂溶融液A、Bの振り分けを容易かつ円滑に実施することができ、複数の樹脂A、Bからなる異なる繊維A、Bを所定のパターンで混繊し、得られる繊維製品中における繊維A、Bの配置やそれぞれの含有量を調整することが可能になり、所定の特性や外観を有する繊維製品を作製することができる。
【0040】
図3(a)〜(d)は、それぞれ、第1の溶融液分配路26の変形例である第1の溶融液分配路26A〜26Dを示している。なお、これらの実施形態では、後述するように分配部材12における導入孔22、23の配列パターンも変形されており、これにより、繊維Aと繊維Bとを種々のパターンで混繊できるようになる。
【0041】
図3(a)に示す第1の溶融液分配路26Aは、分配部材12Aにおける樹脂供給ダイ10との境界面の幅方向ほぼ中央部に、2個の導入孔22と1個の導入孔23とが分配部材12Aの長手方向に交互に直線状に配列された実施形態において、溶融液受給溝30a、30bと、溶融液受給溝30aから分配部材12Aの幅方向に分岐し、2つ並んだ導入孔22の各入口に別個に繋がる連結溝31aと、溶融液受給溝30bから分配部材12Aの幅方向に分岐し、1つの導入孔23の入口に繋がる連結溝31bと、よりなる。分離隔壁32Aは、溶融液受給溝30a、30b及び連結溝31a、31bを互いに離隔している。
【0042】
図3(b)に示す第1の溶融液分配路26Bは、分配部材12Bにおける樹脂供給ダイ10との境界面の幅方向ほぼ中央部に、2個の導入孔22と2個の導入孔23とが分配部材12Bの長手方向に交互に直線状に配列された実施形態において、溶融液受給溝30a、30bと、溶融液受給溝30a、30bから分配部材12Bの幅方向に分岐し、2つ並んだ導入孔22、23の各入口に別個に繋がる連結溝31a、31bと、よりなる。分離隔壁32Bは、溶融液受給溝30a、30b及び連結溝31a、31bを互いに離隔している。
【0043】
図3(c)に示す第1の溶融液分配路26Cは、分配部材12Aにおける樹脂供給ダイ10との境界面の幅方向ほぼ中央部に、2個の導入孔22と1個の導入孔23とが分配部材12Aの長手方向に交互に直線状に配列された実施形態において、溶融液受給溝30a、30bと、溶融液受給溝30aから分配部材12Aの幅方向に分岐し、2つ並んだ導入孔22の各入口に一体的に繋がる連結溝31xと、溶融液受給溝30bから分配部材12Aの幅方向に分岐し、1つの導入孔23の入口に繋がる連結溝31bと、よりなる。分離隔壁32Cは、溶融液受給溝30a、30b及び連結溝31x、31bを互いに離隔している。
【0044】
図3(d)に示す第1の溶融液分配路26Dは、分配部材12Bにおける樹脂供給ダイ10との境界面の幅方向ほぼ中央部に、2個の導入孔22と2個の導入孔23とが分配部材12Bの長手方向に交互に直線状に配列された実施形態において、溶融液受給溝30a、30bと、溶融液受給溝30a、30bから分配部材12Bの幅方向に分岐し、2つ並んだ導入孔22、23のそれぞれの各入口に一体的に繋がる連結溝31x、31yと、よりなる。分離隔壁32Dは、溶融液受給溝30a、30b及び連結溝31x、31yを互いに離隔している。
【0045】
第1の溶融液分配路26、26A〜26Dが簡易な構造を有する分離隔壁32、32A〜32Dを用いて構成されることにより、メルトブローン用紡糸口金装置1の低コスト性や高メンテナンス性等を損なうことなく、樹脂溶融液A、Bの振り分けパターンを増やすことができ、様々な特性や外観を有する繊維製品を容易に作製できる
【0046】
本実施形態では、第1の溶融液分配路26、26A〜26Dは、分配部材12、12A、12Bにおける樹脂供給ダイ10との境界面に設けられているが、これに限定されず、樹脂供給ダイ10における分配部材12、12A、12Bとの境界面である供給孔出口側表面10bに設けてもよい。また、本実施形態では、分離隔壁32、32A〜32Dを用いて第1の溶融液分配路26、26A〜26Dを構成しているが、これに限定されず、例えば、いずれかの境界面に所定の寸法を有する空間であるキャビティを設け、このキャビティに接続する供給孔又は導入孔の本数や位置を調整することにより、樹脂溶融液A、Bを振り分けることもできる。
【0047】
本実施形態では、供給孔20内の樹脂溶融液Aが導入孔22に選択的に導入され、供給孔21内の樹脂溶融液Bが導入孔23に選択的に導入されるように、第1の溶融液分配路26を設けているが、これに限定されず、分離隔壁やキャビティを備え、複数の樹脂の溶融液(本実施形態では樹脂溶融液A、B)を合流させる合流手段を用いることもできる。
【0048】
図4は、合流路33を備える別形態の分配部材12Cの構成を模式的に示す上面図である。分配部材12Cは、分配部材12Cにおける樹脂供給ダイ10との境界面(導入孔入口側表面)に、第1の溶融液分配路26と合流手段としての合流路33とが該境界面の長手方向に所定の間隔を空けて交互に配列されている。また、本実施形態では、分離隔壁32が合流阻止手段の機能を有しているので、分配部材12Cの該境界面に合流手段と合流阻止手段とが混在している。
【0049】
第1の溶融液分配路26は、分配部材12Cの入口側表面における幅方向のほぼ中央部に導入孔22、23の各入口が分配部材12Cの長手方向に向けて交互にほぼ直線状に配列された実施形態において、供給孔20、21から樹脂溶融液A、Bの供給を受ける溶融液受給溝30a、30bと、溶融液受給溝30a、30bから分岐して分配部材12Cの長手方向に隣り合う一対の導入孔22、23の入口に繋がる連結溝31a、31bと、よりなる。これにより、一部の導入孔22、23には樹脂溶融液A、Bがそれぞれ選択的に分配される。合流路33は、分配部材12Cの長手方向に隣り合う前記一対の導入孔22、23の両側に配置される導入孔22又は導入孔23の入口に連結溝31a、31bの両方が連結された流路である。これにより、一部の導入孔22、23には樹脂溶融液A、Bが両方とも供給される。
【0050】
本実施形態では、合流手段33を設けることにより、樹脂Aと樹脂Bとからなるサイドバイサイド型繊維を紡糸することが可能になる。また、本実施形態では、合流手段33と、合流阻止手段として機能する分離隔壁32とが混在してもよい。これにより、一部の導入孔22、23には樹脂溶融液A、Bがそれぞれ選択的に供給され、残部の導入孔22、23には樹脂溶融液A、Bが共に供給されるように構成できる。従って、繊維Aと繊維Bとサイドバイサイド型繊維とを混繊させ、繊維製品に含まれる各繊維の量や配列、分散のさせ方を選択できるので、得られる繊維製品の機能の調整が容易になる。
【0051】
このような合流手段又は合流手段と合流阻止手段とは、樹脂供給ダイ10における分配部材12との境界面、分配部材12における樹脂供給ダイ10との境界面、口金本体11における分配部材12との境界面、及び分配部材12における口金本体11との境界面から選ばれる少なくとも1つの境界面に設けることができる。
【0052】
図5(a)は、分配部材12における口金本体11との境界面である導入孔出口側表面12bの外観を概略的に示す平面図である。
図5(b)は、分配部材12の導入孔22、23と口金本体11の紡糸孔24との接続を模式的に示すメルトブローン用紡糸口金装置1の長手方向の断面図である。
図5(a)に示すように、分配部材12の導入孔出口側表面12bでは、その幅方向中央部に、導入孔22、23の各出口が所定の間隔を空けて分配部材12の長手方向に交互にほぼ直線状に配列されている。
【0053】
分配部材12の導入孔出口側表面12bに、
図5(b)に示すように口金本体11の紡糸孔入口側表面11cを密接させると、導入孔22には比較的大きな径を有する1本の紡糸孔24が接続され、導入孔23には比較的小さな径を有する3本の導入孔24が接続される。なお、紡糸孔24の孔径は、いずれも導入孔22、23の孔径よりも小さくなっているが、導入孔22、23の紡糸孔24と接続されていない部分は、口金本体11の紡糸孔入口側表面11cにより塞がれるので、この部分から樹脂溶融液A、Bが漏れ出すことはない。
【0054】
本実施形態では、導入孔22に接続される1本の紡糸孔24の径を、導入孔23に接続される3本の紡糸孔24の径よりも大きくなるように構成しているが、同径に構成してもよい。また、本実施形態では、導入孔22に1本の紡糸孔24を接続し、導入孔23に複数の紡糸孔24を接続しているが、これに限定されず、導入孔22、23の両方にそれぞれ1本又は複数の紡糸孔24を接続してもよく、導入孔22に複数の紡糸孔24を接続しかつ導入孔23に1本の紡糸孔24を接続してもよい。
【0055】
この構成により、導入孔22内を流過する樹脂溶融液Aは1本の紡糸孔24から吐出され、樹脂Aからなる比較的大きな径の繊維Aが得られ、導入孔23内を流過する樹脂溶融液Bは3本の紡糸孔24から吐出され、樹脂Bからなる比較的小さな径の繊維Bが得られる。すなわち、1本の繊維Aと3本の繊維Bとが長手方向に交互に並んで混繊される。これにより、導入孔22、23内を流過する樹脂溶融液A、Bを所望の紡糸孔24に振り分けて繊維化することが可能になるので、繊維Aと繊維Bとを所望のパターンで混繊することが可能になり、種々の特性を有する繊維製品を容易に得ることができる。
【0056】
図6(a)は、別形態の分配部材16における口金本体11との境界面である導入孔出口側表面16bの外観を概略的に示す平面図である。
図6(b)は、分配部材16の導入孔22、23と口金本体11の紡糸孔24との別形態の接続を模式的に示すメルトブローン用紡糸口金装置の長手方向の断面図である。
図6(a)に示すように、分配部材16の導入孔出口側表面16bでは、その幅方向中央部に、導入孔22、及び導入孔23の出口に接続されたキャビティ35(第2の溶融液分配路27)の各出口が所定の間隔を空けて分配部材16の長手方向に交互にほぼ直線状に配列されている。
【0057】
第2の溶融液分配路27は、分配部材16における口金本体11との境界面である導入孔出口側表面16bに設けられ、導入孔23に接続されて、導入孔23の出口側孔径を拡大すると共に5本の紡糸孔24が接続される空間であるキャビティ35を備えている。キャビティ35は、導入孔23の分配部材16の長手方向両側に隣り合う導入孔22とは合流しないように所定の寸法で設けられる。導入孔23を流過してきた樹脂溶融液Bは、キャビティ35内に一旦貯留された後、瞬時に5本の紡糸孔24に導入され、吐出及び紡糸される。なお、キャビティ35の紡糸孔24と接続されていない部分は、口金本体11の紡糸孔入口側表面11cにより塞がれるので、この部分から樹脂溶融液Bが漏れ出すことはない。
【0058】
図7は、別形態の第2の溶融液分配路28の構成を模式的に示す、メルトブローン用紡糸口金装置の長手方向の断面図である。
図7に示す第2の溶融液分配路28は、口金本体11における分配部材12との境界面である口金本体11の紡糸孔入口側表面11cに設けられ、一方では1本の導入孔23及び他方では5本の紡糸孔24が接続されるキャビティ36を備えている。キャビティ36は、樹脂溶融液Aを導入する導入孔22に接続された紡糸孔24とは合流しないように設けられる。導入孔23を流過してきた樹脂溶融液Bは、キャビティ36内に一旦貯留された後、瞬時に5本の紡糸孔24に導入され、吐出及び紡糸される。なお、キャビティ36の導入孔23と接続されていない部分は、分配部材12の導入孔出口側表面12bにより塞がれるので、この部分から樹脂溶融液Bが漏れ出すことはない。
【0059】
このようなキャビティ35、36を備える第2の溶融液分配路27、28を設けることにより、第1の溶融液分配路26、26A〜26Dと同様の効果が得られると共に、このキャビティ35、36に複数の紡糸孔24を接続できるので、所定の紡糸孔24に樹脂溶融液A、Bを振り分けることができる。したがって、繊維Aと繊維Bとの混繊パターンをさらに増やすことができる。
【0060】
図6(b)及び
図7に示す実施形態では、分配部材12、16の導入孔出口側表面12b、16b又は口金本体11の紡糸孔入口側表面11cにおいて、導入孔23に接続されるキャビティ35、36を設けているが、これに限定されず、導入孔22に接続されるキャビティを設けてもよい。更に、一部の導入孔22、23が合流するように、合流手段としてのキャビティを設けてもよい。また、本実施形態では、キャビティ35、36の出口形状はほぼ楕円形状又はほぼ長円形状となっているが、これに限定されず、ほぼ多角形、ひし形等の種々の形状とすることができる。
【0061】
熱風噴射スリット13、14は、口金本体11の先端部11dからその板部に向けて、メルトブローン用紡糸口金装置1の中心線αに対して徐々に離隔する斜め方向に対称に延びる2つの斜面と、スリット幅調整板15の前記2つの斜面に対してほぼ平行に延びる2つの斜面とにより構成される。中心線αは、口金本体11の先端11dを通り、樹脂供給ダイ10の供給孔出口側表面10bに対してほぼ垂直な仮想線である。熱風発生装置(不図示)より発生する熱風は、熱風供給溝13a、14a及び熱風噴射スリット13、14を介して、紡糸孔24から吐出される繊維に対して所定の角度で噴射され、該繊維を所定の延伸度に延伸する。延伸された繊維は、混繊された状態でドラムやコンベア等の平坦な表面を有する集積手段上に集積され、繊維製品となる。
【0062】
スリット幅調整板15は、図示しない駆動手段により、口金本体11に対して近接及び離隔可能に支持され、熱風噴射スリット13、14のスリット幅を調整する。熱風噴射スリット13、14のスリット幅は、例えば、樹脂溶融液A、Bの種類や物性差等に応じて適宜調整される。
メルトブローン用紡糸口金装置1は、上記した各部材が所定の箇所でねじ止めされることにより、一体化されている。
【0063】
本実施形態のメルトブローン用紡糸口金装置1によれば、複数の供給孔から複数の導入孔に供給される樹脂溶融液の振り分け、複数の導入孔から複数の紡糸孔に導入される樹脂溶融液の振り分けを樹脂溶融液の滞留やロスなく容易に実施できる。また、導入孔内の樹脂溶融液の流れる方向と紡糸孔からの樹脂溶融液の吐出方向とがほぼ一致するような導入孔の設計が容易であり、紡糸孔から吐出される繊維に対してほぼ対称な方向から乱流を発生させることなく熱風を噴射できることから、繊維間の融着に伴う繊維塊の発生や繊維径の不揃い、繊維内部への空気の噛み込み等を起こすことなく、精度良くかつ安定的な混繊を実現でき、様々な機能が付与され、高機能化された不織布等の繊維製品を製造できる。
【0064】
図8は、本発明の第2実施形態であるメルトブローン用紡糸口金装置2の要部の構成を模式的に示す幅方向の断面図である。メルトブローン用紡糸口金装置2は、メルトブローン用紡糸口金装置1の変形例である。
図8において、メルトブローン用紡糸口金装置1、2の共通部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0065】
メルトブローン用紡糸口金装置2は、口金本体11と分配部材12とが一体化された口金11Aを備えることを特徴とし、それ以外の構成はメルトブローン用紡糸口金装置1と共通している。口金11Aにおける樹脂供給ダイ10との境界面(導入孔入口側表面11e)には、第1の溶融液分配路26が設けられ、供給孔20、21から導入孔22、23への樹脂溶融液A、Bの振り分けが実施されている。このような構成でも、導入孔22、23(導入孔23は不図示)が口金11Aの内部に形成されていることにより、口金11Aの形状自由度が高まり、製造コストの低減化を図ることができる。また、メルトブローン用紡糸口金装置1と同様の効果が得られる。
【0066】
図9は、本発明の第3実施形態であるメルトブローン用紡糸口金装置3の要部の構成を模式的に示す幅方向の断面図である。メルトブローン用紡糸口金装置3は、メルトブローン用紡糸口金装置1の変形例である。
図9において、メルトブローン用紡糸口金装置1、3の共通部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0067】
メルトブローン用紡糸口金装置3は、樹脂供給ダイ10における分配部材12との境界面である供給孔出口側表面10bに、第1の溶融液分配路29が設けられていることを特徴とし、それ以外の構成はメルトブローン用紡糸口金装置1と同じである。
【0068】
。
第1の溶融液分配路29は、第1の溶融液分配路26と同様に、樹脂供給ダイ10の供給孔出口側表面10bにおいて、樹脂供給ダイ10の長手方向に延びて複数の供給孔20、21の出口を連結するように設けられ、供給孔20、21から樹脂溶融液A、Bの供給を受ける所定幅の溶融液受給溝37a、37bと、溶液受給溝37a、37bから樹脂供給ダイ10の幅方向に分岐して、導入孔22、23(導入孔23は不図示)の入口に繋がる連結溝38a、38b(連結溝38bは不図示)と、よりなる。溶融液受給溝37a、37b及び連結溝38a、38bは、樹脂溶融液A、Bの合流を阻止するために、分離隔壁(不図示)により互いに離隔するように構成されている。溶融液受給溝37a、37b及び連結溝38a、38bは、導入孔22、23の入口に繋がる部分を除いて、分配部材12の導入孔入口側表面12aにより塞がれているので、溶融液受給溝37a、37b及び連結溝38a、38bから樹脂溶融液A、Bが漏れ出すことはない。このように構成しても、メルトブローン用紡糸口金装置1と同様の効果が得られる。
【0069】
図10は、本発明の第4実施形態であるメルトブローン用紡糸口金装置4の要部の構成を模式的に示す幅方向の断面図である。メルトブローン用紡糸口金装置4は、メルトブローン用紡糸口金装置1の変形例である。
図10において、メルトブローン用紡糸口金装置1、4の共通部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0070】
メルトブローン用紡糸口金装置4は、分配部材17を有することを特徴とし、それ以外の構成はメルトブローン用紡糸口金装置1と同じである。分配部材17は、断面視ほぼT字状の形状を有し、分配部材17における樹脂供給ダイ10との境界面である導入孔入口側表面17aの幅方向両端から所定幅の周縁部を除いて分配部材17の長手方向に互いに離隔してほぼ平行に延びる所定幅の溶融液受給溝40a、40bと、分配部材17の内部において溶融液受給溝40a、40bにそれぞれ連通し、メルトブローン用紡糸口金装置4の中心線αに近接するように斜め方向に延びて互いに離隔する連結孔41a、41b(連結孔41bは不図示)と、一端が連結孔41a、41bかつ他端が複数の紡糸孔24にそれぞれ連通し、互いに離隔して中心線αにほぼ平行に延びる導入孔42、43(導入孔43は不図示)と、を備えている。
【0071】
該装置4では、溶融液受給溝40a、40bと導入孔42、43とを連結する連結孔41a、41bが斜め方向に延びるように構成されているが、導入孔42、43が連結孔41a、41bに比べて十分に長くなっているので、導入孔42、43の出口付近での樹脂溶融液A、Bの流過方向は、紡糸孔24から樹脂溶融液A、Bが吐出される方向とほぼ同方向になり、樹脂溶融液A、Bは安定的に流れる。したがって、紡糸孔24から吐出される樹脂溶融液A、Bからなる繊維A、Bは、熱風噴射スリット13、14から所定の角度で熱風の噴射を受け、所定の延伸度に延伸される。
【0072】
本実施形態では、分配部材17の導入孔入口側表面17aに溶融液受給溝40a、40bが設けられ、かつ、分配部材17の内部で溶融液受給溝40a、40bと連結孔41a、41bとが連結され、供給孔20、21から導入孔42、43への樹脂溶融液A、Bの選択的な供給を安定的にかつ容易に実施できるので、原料ロスを最小限に留めながら、繊維Aと繊維Bとの所定パターンでの混繊を安定的かつ効率的に実施することができる。さらに、メルトブローン用紡糸口金装置1と同様の効果が得られる。
【0073】
図11は、本発明の第5実施形態であるメルトブローン用紡糸口金装置5の要部の構成を模式的に示す幅方向の断面図である。メルトブローン用紡糸口金装置5は、メルトブローン用紡糸口金装置4の変形例である。
図11において、メルトブローン用紡糸口金装置4、5の共通部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0074】
メルトブローン用紡糸口金装置5は、分配部材18を有することを特徴とし、それ以外の構成はメルトブローン用紡糸口金装置4と同じである。分配部材18は、断面視ほぼT字状の形状を有し、分配部材18における樹脂供給ダイ10との境界面である導入孔入口側表面18aには、その幅方向両端から所定幅の周縁部を除いて分配部材18の長手方向に互いに離隔してほぼ平行に延びる所定幅の溶融液受給溝44a、44bと、分配部材18の内部において溶融液受給溝44a、44bにそれぞれ連通し、メルトブローン用紡糸口金装置5の中心線αに近接するように斜め方向に延びる連結孔45a、45bと、一端が連結孔45a、45bかつ他端が複数の紡糸孔24にそれぞれ連通しかつ互いに離隔して中心線αにほぼ平行に延びる導入孔46、47と、を備えている。
【0075】
さらに、分配部材18は、導入孔46、47がこれらの出口付近で連結され、樹脂溶融液A、Bが同時に紡糸孔24に導入されるという特徴を有している。これにより、サイドバイサイド型繊維を混繊することが可能になる。本実施形態では、導入孔46、47を直接連結する合流手段が用いられている。
【0076】
また、本実施形態では、一部の導入孔46、47を直接連結することなく、紡糸孔24に直接連結するという合流阻止手段を設けることにより、サイドバイサイド型繊維、繊維A及び繊維Bを混繊することが可能になる。これにより、得られる繊維製品の特性を容易に変更できるようになり、所望の特性を有する繊維製品を容易にかつ効率的に得ることができる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、例えば、樹脂供給ダイに異なる3種以上の樹脂の溶融液の供給を受ける供給孔をそれぞれ複数ずつ設け、それに対応して導入孔の数を増やすことにより、一度に3種以上の繊維を混繊させた繊維製品を得るメルトブローン用紡糸口金装置を構成すること等、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。