(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
入力部材から動力が伝達される入力要素、変速機の入力軸に連結される出力要素、および前記入力要素と前記出力要素との間でトルクを伝達する弾性体を含むダンパ機構と、該ダンパ機構を介して前記入力部材と前記変速機の前記入力軸とを連結するロックアップと該ロックアップの解除を実行可能なロックアップクラッチと、前記ダンパ機構を構成する何れかの回転要素と一体に回転する支持部材および該支持部材により揺動自在に支持される複数の振子質量体を含む遠心振子式吸振装置とを備えた発進装置において、
前記ロックアップクラッチは、前記入力部材と摩擦係合する摩擦材を有するピストンを含む単板式クラッチであり、
前記ピストンと前記ダンパ機構の前記入力要素とは、一体に回転するように前記複数の振子質量体よりも径方向内側で連結され、
前記ピストンは、曲げ部を介して前記入力要素に向けて延出されると共に周方向に間隔をおいて並ぶ複数の駆動側突起部を有し、
前記入力要素は、曲げ部を介して前記ピストンに向けて延出されると共に周方向に間隔をおいて並ぶ複数の被駆動側突起部を有し、
前記ピストンの前記駆動側突起部は、前記入力要素の互いに隣り合う前記被駆動側突起部の間に嵌め込まれ、前記入力要素の前記被駆動側突起部は、前記ピストンの互いに隣り合う前記駆動側突起部の間に嵌め込まれることを特徴とする発進装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る発進装置1を示す部分断面図である。同図に示す発進装置1は、原動機としてのエンジン(内燃機関)を備えた車両に搭載されるものであり、エンジンのクランクシャフトに連結される入力部材としてのフロントカバー3や、フロントカバー3に固定されて当該フロントカバー3と一体に回転するポンプインペラ(入力側流体伝動要素)4、ポンプインペラ4と同軸に回転可能なタービンランナ(出力側流体伝動要素)5、ダンパ機構10に連結されると共に自動変速機(AT)あるいは無段変速機(CVT)である変速機の入力軸IS(
図3参照)に固定される出力部材としてのダンパハブ7、単板油圧式クラッチであるロックアップクラッチ8、ダンパ機構10、ダンパ機構10に連結される遠心振子式吸振装置20等を含む。
【0011】
ポンプインペラ4は、フロントカバー3に密に固定されるポンプシェル40と、ポンプシェル40の内面に配設された複数のポンプブレード41とを有する。タービンランナ5は、タービンシェル50と、タービンシェル50の内面に配設された複数のタービンブレード51とを有する。タービンシェル50の内周部は、複数のリベットを介してダンパハブ7に固定される。ポンプインペラ4とタービンランナ5とは、互いに対向し合い、両者の間には、タービンランナ5からポンプインペラ4への作動油(作動流体)の流れを整流するステータ6が同軸に配置される。ステータ6は、複数のステータブレード60を有し、ステータ6の回転方向は、ワンウェイクラッチ61により一方向のみに設定される。これらのポンプインペラ4、タービンランナ5およびステータ6は、作動油を循環させるトーラス(環状流路)を形成し、トルク増幅機能をもったトルクコンバータ(流体伝動装置)として機能する。なお、発進装置1において、ステータ6やワンウェイクラッチ61を省略し、ポンプインペラ4およびタービンランナ5を流体継手として機能させてもよい。
【0012】
ロックアップクラッチ8は、ダンパ機構10を介してフロントカバー3とダンパハブ7すなわち入力軸ISとを連結するロックアップを実行すると共に当該ロックアップを解除することができるものであり、フロントカバー3と摩擦係合する環状の摩擦材81を有するロックアップピストン80を含む。ロックアップピストン80は、
図1に示すように、フロントカバー3の内部かつ当該フロントカバー3のエンジン側(
図1における右側)の内壁面近傍に配置され、ダンパハブ7に対して軸方向に摺動自在に嵌合される。また、摩擦材81は、ロックアップピストン80の外周側かつフロントカバー3側の面に貼着される。更に、ロックアップピストン80には、図示するように、複数の環状の曲げ部(絞り部)80a,80b,80c,80d,80eが径方向に間隔をおいて形成されている。これにより、ロックアップピストン80の強度を高めて、油圧が作用した際のロックアップピストン80の変形を抑制することができる。
【0013】
ロックアップピストン80(
図1における右側の面)とフロントカバー3との間には、ロックアップ室85が画成される。当該ロックアップ室85には、入力軸ISに形成された図示しない油路等を介して油圧制御装置(図示省略)から作動油が供給され、ロックアップ室85内に供給された作動油は、当該ロックアップ室85からポンプインペラ4およびタービンランナ5等(トーラス)が収容される流体伝動室9に流入する。従って、流体伝動室9内とロックアップ室85内とが等圧に保たれれば、ロックアップピストン80は、フロントカバー3側に移動せず、ロックアップピストン80がフロントカバー3と摩擦係合することはない。これに対して、図示しない油圧制御装置によりロックアップ室85内を減圧すれば、ロックアップピストン80は、圧力差によりフロントカバー3に向けて移動してフロントカバー3と摩擦係合する。これにより、フロントカバー3は、ダンパ機構10を介してダンパハブ7に連結される。
【0014】
ダンパ機構10は、
図1に示すように、回転要素として、ロックアップクラッチ8のロックアップピストン80と一体に回転するように連結される環状のドライブ部材(入力要素)11と、変速機の入力軸ISに連結される環状のドリブン部材(出力要素)15とを含むと共に、動力伝達要素として、同心円上に等間隔に配置される複数(例えば、4個)のスプリング(弾性体)17を含む。本実施形態では、スプリング17として、荷重が加えられてないときに円弧状に延びる軸心を有するように巻かれた金属材からなるアークコイルスプリングが採用される。これにより、スプリング17をより低剛性化し(バネ定数を小さくし)、ダンパ機構10をより低剛性化(ロングストローク化)することができる。ただし、スプリング17として、荷重が加えられてないときに真っ直ぐに延びる軸心(中心線)を有するように螺旋状に巻かれた金属材からなる直線型コイルスプリングが採用されてもよいことはいうまでもない。
【0015】
ダンパ機構10の入力要素であるドライブ部材11は、ロックアップピストン80(フロントカバー3)に近接して配置される環状の第1入力プレート部材12と、第1入力プレート部材12よりもロックアップピストン80から離間して配置されると共に複数のリベットを介して当該第1入力プレート部材12に連結される環状の第2入力プレート部材14とを含む。
【0016】
フロントカバー3(ロックアップピストン80)側に配置される第1入力プレート部材12は、
図1に示すように、それぞれ対応するスプリング17の外周部をフロントカバー3(エンジン)側から支持(ガイド)する複数(本実施形態では、4個)のスプリング支持部12aと、それぞれ対応するスプリング17の内周部をフロントカバー3側から支持(ガイド)する複数(本実施形態では、4個)のスプリング支持部12bと、周方向に隣り合うスプリング支持部12a,12bの間で径方向に延びる複数(本実施形態では、4個)のスプリング当接部12cとを有する。ダンパ機構10の取付状態において、各スプリング当接部12cは、互いに隣り合うスプリング17の間で両者と当接する。
【0017】
ポンプインペラ4およびタービンランナ5側に配置される第2入力プレート部材14は、それぞれ対応するスプリング17の外周部をタービンランナ5(変速機)側から支持(ガイド)する複数(本実施形態では、4個)のスプリング支持部14aと、それぞれ対応するスプリング17の内周部をタービンランナ5側から支持(ガイド)する複数(本実施形態では、4個)のスプリング支持部14bと、周方向に隣り合うスプリング支持部14a,14bの間で径方向に延びる複数(本実施形態では、4個)のスプリング当接部14cとを有する。ダンパ機構10の取付状態において、各スプリング当接部14cは、互いに隣り合うスプリング17の間で両者と当接する。また、複数のスプリング17は、第1入力プレート部材12のスプリング支持部12a,12bと、第2入力プレート部材14のスプリング支持部14a,14bとにより支持されて、タービンシェル50の内周部に近接するように流体伝動室9内に配置される。
【0018】
ドリブン部材15は、ドライブ部材11の第1入力プレート部材12と第2入力プレート部材14との間に配置されると共に、複数のリベット16を介してタービンランナ5のタービンシェル50と共にダンパハブ7に固定される。これにより、ドリブン部材15は、ダンパハブ7を介して変速機の入力軸ISに連結される。また、ドリブン部材15は、それぞれ対応するスプリング17の端部と当接可能な複数(本実施形態では、4個)のスプリング当接部15cを有する。ダンパ機構10の取付状態において、互いに向かい合う2個のスプリング当接部15cは、両者の間のスプリング17の端部と当接(スプリング17の両端を支持)する。
【0019】
更に、ドリブン部材15は、第1および第2入力プレート部材12,14よりも径方向外側に延出された質量体支持部150を有する。そして、ドリブン部材15の質量体支持部150は、複数(例えば、3〜4個)の振子質量体21を周方向に隣り合うように揺動自在に支持する。これにより、支持部材としてのドリブン部材15と、複数の振子質量体21とにより、遠心振子式吸振装置20が構成される。遠心振子式吸振装置20は、各振子質量体21を支持する支持部材としてのドリブン部材15の回転に伴って複数の振子質量体21が当該ドリブン部材15に対して同方向に揺動することで、ダンパ機構10のドリブン部材15に対して当該ドリブン部材15の振動とは逆方向の位相を有する振動を付与する。このような遠心振子式吸振装置20の支持部材として、ダンパ機構10のドリブン部材15を兼用することで、部品点数を削減すると共に発進装置1の全体をよりコンパクト化することができる。
【0020】
図1に示すように、遠心振子式吸振装置20の複数の振子質量体21は、複数のスプリング17を囲むように当該スプリング17の外側に配置される。本実施形態において、各振子質量体21は、質量体支持部150に所定の間隔をおいて複数形成された例えば略円弧状の長穴であるガイド穴に転動自在に挿通される支軸(ころ)22と、当該支軸の両端に固定される2枚の金属板(錘)21aとから構成される。ただし、遠心振子式吸振装置20の構成は、このようなものに限られない。また、遠心振子式吸振装置20は、各振子質量体21を支持する支持部材としてドリブン部材15(ドリブン部材15)を利用することにより、ダンパ機構10のドリブン部材15に連結されるが、専用の支持部材を用いて当該支持部材をダンパ機構10のドリブン部材15に固定してもよい。
【0021】
次に、ロックアップクラッチ8のロックアップピストン80と、ダンパ機構10のドライブ部材11との連結構造について説明する。
【0022】
図1および
図2に示すように、ロックアップピストン80は、その背面(
図1における左側の面)に複数のリベット90を介して固定される環状の連結部材88を有する。連結部材88は、例えば金属板材をプレス加工することにより形成され、リベット90を挿通させるリベット孔88hが等間隔に複数配設された環状の固定部88aと、固定部88aの内周縁から連結部材88(発進装置1)の軸方向に延出された複数の駆動側突起部88pとを有する。複数の駆動側突起部88pは、それぞれ固定部88aの内周縁から曲げ部88fを介して延出されて周方向に等間隔に並び、互いに隣り合う駆動側突起部88pの間には、一定の周長を有する間隙が形成される。また、各駆動側突起部88pの軸長は、ロックアップピストン80のピストンストロークよりも十分に長く定められる。なお、複数のリベット孔88hは、必ずしも等間隔に配設される必要はない。
【0023】
連結部材88は、複数の駆動側突起部88pが複数のリベット90よりも径方向内側でドライブ部材11の第1入力プレート部材12に向けて発進装置1の軸方向に延びると共に、径方向に隣り合う曲げ部80cおよび80dの間かつ摩擦材81よりも僅かに径方向内側に位置するようにロックアップピストン80に固定される。これにより、複数のリベット90すなわち連結部材88の固定部88aをより径方向外側に配置することで、複数の駆動側突起部88pを径方向内側(発進装置1の軸心側)に寄せつつ、当該固定部88aに近接する環状の曲げ部80cおよび80d、特に径方向内側の曲げ部80cをより径方向外側に設けることが可能となる。更に、図示するように、複数のリベット90とダンパ機構10のスプリング17とが軸方向に並ばないように発進装置1(ダンパ機構10)を構成することができる。これにより、ロックアップピストン80の外周側領域の強度を高めて当該ロックアップピストン80の外周部の変形をより良好に抑制すると共に、軸長の増加をより良好に抑制して発進装置1をよりコンパクト化することが可能となる。
【0024】
また、ドライブ部材11を構成する第1入力プレート部材12は、外周縁からドライブ部材11(発進装置1)の軸方向に延出された複数の被駆動側突起部12pを有する。複数の被駆動側突起部12pは、それぞれ第1入力プレート部材12の外周縁から曲げ部12fを介して延出されて周方向に等間隔に並び、互いに隣り合う被駆動側突起部12pの間には間隙が形成される。各被駆動側突起部12pの周長は、互いに隣り合う駆動側突起部88p同士の間隙の周長よりも僅かに小さく定められ、互いに隣り合う被駆動側突起部12p同士の間隙の周長は、駆動側突起部88pの周長よりも僅かに大きく定められる。更に、各被駆動側突起部12pの軸長も、ロックアップピストン80のピストンストロークよりも十分に長く定められる。なお、複数の被駆動側突起部12pは、必ずしも等間隔に配設される必要はない。
【0025】
そして、
図1および
図2に示すように、ロックアップピストン80すなわち連結部材88の各駆動側突起部88pは、遠心振子式吸振装置20の複数の振子質量体21よりも径方向内側で、第1入力プレート部材12の互いに隣り合う被駆動側突起部12p同士の間隙に嵌め込まれる。また、第1入力プレート部材12の各被駆動側突起部12pは、同様に遠心振子式吸振装置20の複数の振子質量体21よりも径方向内側で、ロックアップピストン80(連結部材88)の互いに隣り合う駆動側突起部88p同士の間隙に嵌め込まれる。これにより、
図1および
図2に示すように、複数の駆動側突起部88pと複数の被駆動側突起部12pとが複数の振子質量体21よりも径方向内側で同心円上に交互に並ぶことで、ロックアップピストン80と第1入力プレート部材12すなわちドライブ部材11とが複数の振子質量体21よりも径方向内側で一体に回転するように連結(嵌め合い連結)されることになる。なお、
図2に示すように、ロックアップピストン80(連結部材88)の互いに隣り合う駆動側突起部88p同士の間隙に嵌め込まれた各被駆動側突起部12pの外表面が固定部88aの外周縁と当接するように連結部材88を構成することにより、第1入力プレート部材12をダンパハブ7に嵌合される連結部材88によって調心することが可能となる。
【0026】
引き続き、上述のように構成される発進装置1の動作について説明する。
【0027】
発進装置1のロックアップクラッチ8によりロックアップが解除されている際には、
図3からわかるように、原動機としてのエンジンからのトルク(動力)が、フロントカバー3、ポンプインペラ4、タービンランナ5、ダンパハブ7という経路を介して変速機の入力軸ISへと伝達される。また、発進装置1のロックアップクラッチ8によりロックアップが実行される際には、
図3からわかるように、エンジンからのトルク(動力)が、フロントカバー3、ロックアップクラッチ8(ロックアップピストン80)、ドライブ部材11、スプリング17、ドリブン部材15、ダンパハブ7という経路を介して変速機の入力軸ISへと伝達される。
【0028】
ロックアップクラッチ8によりロックアップが実行されている際、エンジンの回転に伴ってロックアップクラッチ8によりフロントカバー3に連結されたドライブ部材11が回転すると、第1入力プレート部材12のスプリング当接部12cや第2入力プレート部材14のスプリング当接部14cが対応するスプリング17の一端を押圧し、各スプリング17の他端が対応するドリブン部材15のスプリング当接部15cを押圧する。これにより、フロントカバー3に伝達されるエンジンからのトルクが変速機の入力軸ISへと伝達されると共に、当該エンジンからのトルクの変動が主にダンパ機構10のスプリング17により減衰(吸収)される。また、発進装置1では、ロックアップに伴ってロックアップクラッチ8によりフロントカバー3に連結されたダンパ機構10がフロントカバー3と共に回転すると、ダンパ機構10のドリブン部材15も発進装置1の軸心周りにフロントカバー3と同方向に回転し、ドリブン部材15の回転に伴って遠心振子式吸振装置20を構成する各振子質量体21がドリブン部材15に対して同方向に揺動することになる。これにより、遠心振子式吸振装置20からドリブン部材15に対して当該ドリブン部材15の振動(共振)とは逆方向の位相を有する振動を付与し、それによりフロントカバー3とダンパハブ7との間で遠心振子式吸振装置20によっても振動を減衰(吸収)することが可能となる。
【0029】
そして、発進装置1では、上述のようにロックアップピストン80とドライブ部材11とが遠心振子式吸振装置20の複数の振子質量体21よりも径方向内側で連結されることから、ロックアップピストン80と複数の振子質量体21との間や、複数の振子質量体21の径方向外側に、ロックアップピストン80とドライブ部材11とを連結する部材を配置する必要がない。従って、発進装置1では、特に軸長の増加を抑制すると共に、複数の振子質量体21の配置スペースを発進装置1の軸方向および径方向の双方において充分に確保することができる。この結果、発進装置1の全体のコンパクト化を図りつつ、振子質量体21のサイズすなわち重量をより大きくして遠心振子式吸振装置20の振動減衰性能をより向上させることが可能となる。
【0030】
また、ロックアップクラッチ8のロックアップピストン80は、それぞれ複数の曲げ部88fおよび駆動側突起部88pを有すると共に複数のリベット90を介してロックアップピストン80に固定される環状の連結部材88を含む。かかる連結部材88は、複数の駆動側突起部88pが複数のリベット90よりも径方向内側でドライブ部材11に向けて延びるようにロックアップピストン80に固定される。これにより、発進装置1では、ロックアップクラッチ8と第1入力プレート部材12との間に延在する駆動側突起部88pおよび被駆動側突起部12pの径方向外側のスペースをより大きくすることができるので、複数の振子質量体21の配置スペースをより大きく確保することが可能となる。
【0031】
更に、上述のように、ロックアップピストン80(連結部材88)の複数の駆動側突起部88pと、第1入力プレート部材12(ドライブ部材11)の複数の被駆動側突起部12pとを嵌め合わせることによりロックアップピストン80と第1入力プレート部材12とを連結すれば、ロックアップピストン80と第1入力プレート部材12すなわちドライブ部材11との接触面積をより大きくすることができる。これにより、ロックアップピストン80とドライブ部材11との連結部、すなわち駆動側突起部88pおよび被駆動側突起部12pの耐久性を良好に確保しつつ、ロックアップピストン80からドライブ部材11により大きなトルクを伝達することが可能となる。加えて、ロックアップピストン80および第1入力プレート部材12から曲げ部88f,12fを介して駆動側突起部88pまたは被駆動側突起部12pを延出することにより、ロックアップピストン80とドライブ部材11との連結部、すなわち駆動側突起部88pや被駆動側突起部12pの周辺の強度をより高めることができる。
【0032】
また、発進装置1では、ダンパ機構10のドリブン部材15に複数のリベット16を介してタービンランナ5が連結(固定)されていることから、ロックアップの実行時に、フロントカバー3と変速機の入力軸ISとの間におけるトルクの伝達に関与しないタービンランナ5が、いわゆるタービンダンパとし機能する。従って、ロックアップの実行時には、遠心振子式吸振装置20およびタービンランナ5により構成されるタービンダンパの双方によりドリブン部材15の振動ひいてはダンパ機構10全体の振動を良好に吸収することが可能となる。
【0033】
図4は、本発明の他の実施形態に係る発進装置1Bを示す部分断面図である。なお、発進装置1Bの構成要素のうち、上述の発進装置1と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。同図に示す発進装置1Bにおいて、ロックアップピストン80の連結部材88Bは、複数のリベット90が挿通される環状の固定部の外周縁から連結部材88(発進装置1)の軸方向に延出された複数の駆動側突起部88pを有する。また、連結部材88Bは、複数の駆動側突起部88pが複数のリベット90よりも径方向外側でドライブ部材11の第1入力プレート部材12Bに向けて発進装置1の軸方向に延びると共に径方向に隣り合う曲げ部80cおよび80dの間かつ摩擦材81よりも僅かに径方向内側に位置するようにロックアップピストン80に固定される。更に、ドライブ部材11を構成する第1入力プレート部材12Bは、上記発進装置1の第1入力プレート部材12よりも大きい外径を有し、当該第1入力プレート部材12Bの外周縁からドライブ部材11B(発進装置1)の軸方向に延出される複数の被駆動側突起部12pは、発進装置1の被駆動側突起部12pよりも径方向外側に位置する。
【0034】
そして、ロックアップピストン80すなわち連結部材88Bの各駆動側突起部88pは、遠心振子式吸振装置20の複数の振子質量体21よりも径方向内側で、第1入力プレート部材12Bの互いに隣り合う被駆動側突起部12p同士の間隙に嵌め込まれる。また、第1入力プレート部材12Bの各被駆動側突起部12pは、同様に遠心振子式吸振装置20の複数の振子質量体21よりも径方向内側で、ロックアップピストン80(連結部材88)の互いに隣り合う駆動側突起部88p同士の間隙に嵌め込まれる。この場合も、複数の駆動側突起部88pと複数の被駆動側突起部12pとは、複数の振子質量体21よりも径方向内側で同心円上に交互に並ぶ。これにより、発進装置1Bでは、複数の振子質量体21の配置スペースを確保しつつ、ロックアップピストン80とドライブ部材11との連結部、すなわち駆動側突起部88pおよび被駆動側突起部12pをより径方向外側に設けることができるので、いわゆるトルク半径を大きくしてロックアップピストン80からドライブ部材11により一層大きなトルクを伝達することが可能となる。
【0035】
図5は、本発明の他の実施形態に係る発進装置1Cを示す部分断面図である。なお、発進装置1Bの構成要素のうち、上述の発進装置1と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。同図に示す発進装置1Cにおいて、ロックアップピストン80の連結部材88Cは、複数のリベット90が挿通される環状の固定部の外周縁から当該固定部の径方向(外側)に延出された複数の駆動側突起部88pを有する。そして、ロックアップピストン80すなわち連結部材88Cの各駆動側突起部88pは、遠心振子式吸振装置20の複数の振子質量体21よりも径方向内側で、第1入力プレート部材12の互いに隣り合う被駆動側突起部12p同士の間隙に両者と直交するように嵌め込まれる。また、第1入力プレート部材12の各被駆動側突起部12pは、同様に遠心振子式吸振装置20の複数の振子質量体21よりも径方向内側で、ロックアップピストン80(連結部材88)の互いに隣り合う駆動側突起部88p同士の間隙に両者と直交するように嵌め込まれる。このように、ロックアップピストン80(連結部材88)の駆動側突起部88pと、ドライブ部材11の被駆動側突起部12pとは、遠心振子式吸振装置20の複数の振子質量体21よりも径方向内側で互いに直交するように嵌め合わされるように構成されてもよい。
【0036】
なお、連結部材88,88B等は、必ずしも上述のような環状部材として構成される必要はなく、それぞれ少なくとも1つの曲げ部88fおよび駆動側突起部88pを有する複数の連結部材が周方向に(環状に)並ぶようにリベット90を介してロックアップピストン80に固定されてもよい。また、複数の駆動側突起部を有する連結部材をロックアップピストンに固定する代わりに、複数の駆動側突起部をロックアップピストンと一体に形成してもよい。更に、上述の発進装置1〜1Cに含まれるダンパ機構10は、入力要素としてのドライブ部材11,11Bから複数のスプリング17を介して出力要素としてのドリブン部材15にトルクを伝達するものであるが、本発明による発進装置に含まれるダンパ機構は、ドライブ部材(入力要素)、第1スプリング(第1弾性体)、中間部材(中間要素)、第2スプリング(第2弾性体)、ドリブン部材(出力要素)という経路を介してトルク(動力)を伝達する直列式ダンパ機構として構成されてもよい。この場合、遠心振子式吸振装置は、ダンパ機構の中間要素に連結されてもよい。また、本発明による発進装置に含まれるダンパ機構は、例えば径方向に離間して配置される複数のスプリング(弾性体)が並列に作用するように構成された並列式ダンパ機構であってもよい。
【0037】
以上説明したように、本発明による発進装置は、入力部材から動力が伝達される入力要素、変速機の入力軸に連結される出力要素、および前記入力要素と前記出力要素との間でトルクを伝達する弾性体を含むダンパ機構と、該ダンパ機構を介して前記入力部材と前記変速機の前記入力軸とを連結するロックアップと該ロックアップの解除を実行可能なロックアップクラッチと、前記ダンパ機構を構成する何れかの回転要素と一体に回転する支持部材および該支持部材により揺動自在に支持される複数の振子質量体を含む遠心振子式吸振装置とを備えた発進装置において、前記ロックアップクラッチは、前記入力部材と摩擦係合する摩擦材を有するピストンを含む単板式クラッチであり、前記ピストンと前記ダンパ機構の前記入力要素とは、一体に回転するように前記複数の振子質量体よりも径方向内側で連結されることを特徴とする。
【0038】
この発進装置は、ダンパ機構、入力部材と摩擦係合する摩擦材を有するピストンを含む単板式のロックアップクラッチ、支持部材および当該支持部材により揺動自在に支持される複数の振子質量体を含む遠心振子式吸振装置とを備える。そして、ロックアップクラッチのピストンとダンパ機構の入力要素とは、一体に回転するように遠心振子式吸振装置の複数の振子質量体よりも径方向内側で連結される。このように、ピストンと入力要素とを複数の振子質量体よりも径方向内側で連結することにより、ロックアップクラッチのピストンと複数の振子質量体との間や、複数の振子質量体の径方向外側に、ピストンと入力要素とを連結する部材を配置する必要がなくなる。これにより、発進装置の特に軸長の増加を抑制すると共に、複数の振子質量体の配置スペースを発進装置の軸方向および径方向の双方において充分に確保することができる。従って、この発進装置では、装置全体のコンパクト化を図りつつ、振子質量体のサイズすなわち重量をより大きくして遠心振子式吸振装置の振動減衰性能をより向上させることが可能となる。
【0039】
また、前記入力要素は、前記ピストンに近接して配置される第1入力プレート部材と、該第1入力プレート部材よりも前記ピストンから離間して配置されると共に前記第1入力プレート部材に連結される第2入力プレート部材とを含んでもよく、前記遠心振子式吸振装置の前記支持部材と一体に回転する前記回転要素は、前記第1および第2入力プレート部材の間に配置されてもよく、前記ピストンは、曲げ部を介して前記入力要素に向けて延出されると共に周方向に間隔をおいて並ぶ複数の駆動側突起部を有してもよく、前記第1入力プレート部材は、曲げ部を介して前記ピストンに向けて延出されると共に周方向に間隔をおいて並ぶ複数の被駆動側突起部を有してもよく、前記ピストンの前記駆動側突起部は、前記第1入力プレート部材の互いに隣り合う前記被駆動側突起部の間に嵌め込まれ、前記第1入力プレート部材の前記被駆動側突起部は、前記ピストンの互いに隣り合う前記被駆動側突起部の間に嵌め込まれてもよい。このように、ピストンの複数の駆動側突起部と、第1入力プレート部材の複数の被駆動側突起部とを嵌め合わせることによりピストンと入力要素とを連結すれば、ピストンと入力要素すなわち第1入力プレート部材との接触面積をより大きくすることができる。これにより、ピストンと入力要素との連結部、すなわち駆動側突起部および被駆動側突起部の耐久性を良好に確保しつつ、ピストンから入力要素により大きなトルクを伝達することが可能となる。加えて、ピストンおよび第1入力プレート部材から曲げ部を介して駆動側突起部または被駆動側突起部を延出することにより、ピストンと入力要素との連結部、すなわち駆動側突起部や被駆動側突起部の周辺の強度をより高めることができる。
【0040】
更に、前記ピストンは、前記曲げ部および前記駆動側突起部を有すると共にリベットを介して該ピストンに固定される連結部材を含んでもよく、前記連結部材は、前記駆動側突起部が前記リベットよりも径方向内側で前記入力要素に向けて延びるように前記ピストンに固定されてもよい。これにより、ピストンと第1入力プレート部材との間に延在する駆動側突起部および被駆動側突起部の径方向外側のスペースをより大きくすることができるので、複数の振子質量体の配置スペースをより大きく確保することが可能となる。
【0041】
また、前記ピストンは、前記曲げ部および前記駆動側突起部を有すると共にリベットを介して該ピストンに固定される連結部材を含んでもよく、前記連結部材は、前記駆動側突起部が前記リベットよりも径方向外側で前記入力要素に向けて延びるように前記ピストンに固定されてもよい。これにより、複数の振子質量体の配置スペースを確保しつつ、ピストンと入力要素との連結部、すなわち駆動側突起部および被駆動側突起部をより径方向外側に設けることができるので、いわゆるトルク半径を大きくしてピストンから入力要素により一層大きなトルクを伝達することが可能となる。
【0042】
更に、前記ピストンは、前記リベットよりも径方向内側に位置するように形成された環状の曲げ部を有してもよい。これにより、ピストンの強度を高めて当該ピストンの変形をより良好に抑制することが可能となる。特に、駆動側突起部がリベットよりも径方向内側で前記入力要素に向けて延びるように連結部材がピストンに固定される場合には、リベットをより径方向外側に配置することで、駆動側突起部を径方向内側(発進装置の軸心側)に寄せつつ、環状の曲げ部もより径方向外側に設けることができるので、ピストンの外周側領域の強度を高めて当該ピストンの外周部の変形をより良好に抑制することが可能となる。
【0043】
また、前記発進装置は、前記リベットと前記ダンパ機構の前記弾性体とが軸方向に並ばないように構成されてもよい。これにより、軸長の増加をより良好に抑制して発進装置をよりコンパクト化することが可能となる。
【0044】
更に、前記発進装置は、前記入力部材と一体に回転可能なポンプインペラと、前記ダンパ機構の前記出力要素に連結されるタービンランナとを更に備えてもよく、前記ダンパ機構の前記出力要素には、前記弾性体を介して前記入力要素からトルクが伝達されてもよく、前記ダンパ機構の前記出力要素は、前記遠心振子式吸振装置の前記支持部材として兼用されてもよい。このように、タービンランナをダンパ機構の出力要素に連結することで、ロックアップクラッチによりロックアップが実行されている際、入力部材と変速機の入力軸との間におけるトルクの伝達に関与しないタービンランナが、いわゆるタービンダンパとして機能する。従って、ロックアップの実行時には、遠心振子式吸振装置およびタービンランナにより構成されるタービンダンパの双方により出力要素の振動ひいてはダンパ機構全体の振動を良好に吸収することが可能となる。また、ダンパ機構の出力要素を遠心振子式吸振装置の支持部材として兼用することで、部品点数を削減すると共に発進装置全体をよりコンパクト化することができる。
【0045】
そして、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記発明を実施するための形態は、あくまで課題を解決するための手段の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、課題を解決するための手段の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。