(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6142817
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】電気掃除機
(51)【国際特許分類】
A47L 9/28 20060101AFI20170529BHJP
A47L 9/24 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
A47L9/28 D
A47L9/24 A
A47L9/28 Q
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-30886(P2014-30886)
(22)【出願日】2014年2月20日
(65)【公開番号】特開2015-154840(P2015-154840A)
(43)【公開日】2015年8月27日
【審査請求日】2016年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142642
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 次郎
(72)【発明者】
【氏名】古山 拓也
(72)【発明者】
【氏名】頼田 昌美
【審査官】
大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−191(JP,A)
【文献】
特開平6−335443(JP,A)
【文献】
特開昭62−173996(JP,A)
【文献】
特開2010−136975(JP,A)
【文献】
特開2006−320454(JP,A)
【文献】
特開2012−24173(JP,A)
【文献】
特開平4−73033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 9/00、9/22−9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
ホースと、
前記本体部を操作する手元操作部と、
ブラシ用の電動機と、
前記本体部と前記手元操作部に接続された基準電位配線と、
前記本体部と前記手元操作部に接続された通信配線と、
前記本体部から前記電動機に電力を供給する電動機電源供給線とを備え、
前記基準電位配線と前記通信配線と前記電動機電源供給線は前記ホースをつたうように配置され、
前記本体部は、
吸引風を発生させる電動送風機と、
前記電動送風機と前記電動機を制御する本体制御部と、
定電流回路と、
第1のレベルシフタとを有し、
前記手元操作部は、
使用者が動作指示を入力するスイッチ部と、
前記スイッチ部の出力を入力する手元制御部と、
第2のレベルシフタとを有し、
前記手元制御部と前記電動機は前記基準電位配線に接続され、
前記本体制御部と前記手元制御部は前記通信配線を介して通信信号をやり取りし、
前記本体制御部と前記手元制御部の非通信時に、前記定電流回路が前記通信配線を介して前記手元操作部に電力供給し、
前記第1のレベルシフタは、前記通信配線から前記本体制御部に入力される通信信号を第1の電圧にシフトし、
前記第2のレベルシフタは、前記通信配線から前記手元制御部に入力される通信信号を第2の電圧にシフトし、
前記第2の電圧は前記第1の電圧よりも低く、
前記手元操作部は、
前記手元制御部に電源電圧を供給する電圧安定化回路と、
前記基準電位配線と前記電圧安定化回路の入力との間に接続された第1のコンデンサと、
前記通信配線と前記電圧安定化回路の入力との間に接続されたダイオードと、
前記電圧安定化回路の出力と前記基準電位配線との間に接続されている第2のコンデンサとを更に有することを特徴とする電気掃除機。
【請求項2】
前記基準電位配線と前記通信配線との間の電圧は、前記電圧安定化回路の出力電圧が前記手元制御部の動作可能電圧を確保できるような前記電圧安定化回路の最低入力電圧と前記電動機の駆動による前記基準電位配線の降下電圧を足した電圧以上であることを特徴する請求項1に記載の電気掃除機。
【請求項3】
前記第2のコンデンサの容量は、前記電動機の駆動による前記基準電位配線の電圧降下によって前記手元制御部の電源電圧が動作可能電圧以下まで低下しないような容量に設定されていることを特徴する請求項1に記載の電気掃除機。
【請求項4】
前記本体部は、前記基準電位配線と前記通信配線との間の電圧が所定値を超えた場合に前記定電流回路を停止させる定電流回路停止部とを有することを特徴する請求項1〜3の何れか1項に記載の電気掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体部と手元操作部との間の配線を減らし、ブラシ用の電動機の駆動により基準電位配線の電圧が降下しても手元制御部が動作可能である電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
電気掃除機において本体部と手元操作部との間の通信は配線を介して行われる。この配線はホースをつたうように配置される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−240100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本体部と手元操作部との間の配線の数が多いとホースが重たくなったり、固くなったりする。また、手元操作部にある手元制御部とブラシ用の電動機が基準電位配線に接続されているため、ブラシ用の電動機の駆動により基準電位配線の電圧が降下すると手元制御部が動作不能となるという問題があった。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は本体部と手元操作部との間の配線を減らし、ブラシ用の電動機の駆動により基準電位配線の電圧が降下しても手元制御部が動作可能である電気掃除機を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、本体部と、ホースと、前記本体部を操作する手元操作部と、ブラシ用の電動機と、前記本体部と前記手元操作部に接続された基準電位配線と、前記本体部と前記手元操作部に接続された通信配線と、前記本体部から前記電動機に電力を供給する電動機電源供給線とを備え、前記基準電位配線と前記通信配線と前記電動機電源供給線は前記ホースをつたうように配置され、前記本体部は、吸引風を発生させる電動送風機と、前記電動送風機と前記電動機を制御する本体制御部と、定電流回路と、第1のレベルシフタとを有し、前記手元操作部は、使用者が動作指示を入力するスイッチ部と、前記スイッチ部の出力を入力する手元制御部と、第2のレベルシフタとを有し、前記手元制御部と前記電動機は前記基準電位配線に接続され、前記本体制御部と前記手元制御部は前記通信配線を介して通信信号をやり取りし、前記本体制御部と前記手元制御部の非通信時に、前記定電流回路が前記通信配線を介して前記手元操作部に電力供給し、前記第1のレベルシフタは、前記通信配線から前記本体制御部に入力される通信信号を第1の電圧にシフトし、前記第2のレベルシフタは、前記通信配線から前記手元制御部に入力される通信信号を第2の電圧にシフトし、前記第2の電圧は前記第1の電圧よりも低
く、前記手元操作部は、前記手元制御部に電源電圧を供給する電圧安定化回路と、前記基準電位配線と前記電圧安定化回路の入力との間に接続された第1のコンデンサと、前記通信配線と前記電圧安定化回路の入力との間に接続されたダイオードと、前記電圧安定化回路の出力と前記基準電位配線との間に接続されている第2のコンデンサとを更に有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、本体制御部と手元制御部が通信配線を介して通信信号をやり取りし、非通信時に定電流回路が通信配線を介して手元操作部に電力供給する。このように通信配線で通信と電力供給を行うことにより、本体部と手元操作部との間の配線を減らすことができる。
【0008】
また、第1及び第2のレベルシフタにより本体制御部と手元制御部の電源電圧が異なる環境下でも相互通信が可能となる。さらに、手元制御部側の第2の電圧を本体制御部側の第1の電圧よりも低くすることで、手元制御部の動作可能な電源電圧を低くできる。これにより、ブラシ用の電動機の駆動により基準電位配線の電圧が降下しても手元制御部が動作可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係る電気掃除機を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る電気掃除機を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る電気掃除機のポーリング処理シーケンス図である。
【
図4】基準電位配線と通信配線との間の電圧、AC電源の電圧、ブラシ用の電動機の電流を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の実施の形態に係る電気掃除機を示す斜視図である。電気掃除機の本体部1には、ダストボックス(図示せず)が設けられている。本体部1の後部からは、電源コード2が引き出される。電源コード2の後端には電源プラグ3が設けられている。本体部1の前部にはホース4の後端が接続されている。ホース4は中空状かつ蛇腹状である。ホース4の前端には延長管5の後端が直列に接続されている。延長管5は円筒状である。延長管5の後端には本体部1を操作する手元操作部6が設けられている。延長管5の前端には吸込具7(ブラシ部)が設けられている。
【0011】
電気掃除機を使用する場合は、使用者が電源プラグ3をコンセント(図示せず)に接続する。その後、使用者が手元操作部6を操作すると、本体部1は吸引風を発生させる。この吸引風により床面のごみが吸込具7から吸い込まれる。この際、吸込具7のブラシがごみを掻きとる。ごみは延長管5とホース4を順に通過し、本体部1内に吸引され、ダストボックスに捕集される。なお、電気掃除機はサイクロン式、紙パック式、スタンド式、コードレス式の何れの方式であってもよい。
【0012】
図2は、本発明の実施の形態に係る電気掃除機を示すブロック図である。本体部1とその本体部1を操作する手元操作部6に基準電位配線8と通信配線9が接続されている。吸込具7にブラシ用の電動機10が設けられている。電動機10がブラシを回転させることで床面のごみを自動的に掻きとる。電動機電源供給線11が本体部1から電動機10に電力を供給する。基準電位配線8と通信配線9と電動機電源供給線11はホース4の外周をつたうように配置されている。さらに、基準電位配線8と電動機電源供給線11は手元操作部6と延長管5の内部を通って吸込具7内の電動機10に接続されている。基準電位配線8と電動機電源供給線11はそれぞれ電源コード2の100V+線と100V−線に対応する。
【0013】
本体部1は、電動送風機12(ブロワモーター)、本体制御部13、スイッチ14,15、電源回路16、定電流回路17、第1のレベルシフタ18、及び定電流回路停止部19を有する。手元操作部6は、スイッチ部20、表示部21、手元制御部22、電圧安定化回路23(レギュレータ)、第1のコンデンサ24、ダイオード25、第2のコンデンサ26、第2のレベルシフタ27を有する。
【0014】
電動送風機12は電源コード2に接続される。電動送風機12は、動作した際にごみを吸引する吸引風を発生させる。本体制御部13はそれぞれスイッチ14,15を切り替えて電動送風機12と電動機10の動作を制御する。スイッチ14,15は例えばサイリスタであり、本体制御部13からスイッチ14,15をONする点弧位相角を指示する点弧位相角信号を受信し、電動送風機12と電動機10に入力される電力を制御する。電源回路16は電源コード2に接続され、電源プラグ3がコンセントに接続された際にAC電源(商用電源)を直流低圧電源に変換して本体制御部13に−5Vの電力を供給する。
【0015】
スイッチ部20は、使用者が動作指示を入力するスイッチであり、具体的には電動送風機12を動かしたり停止したりする入/切スイッチ、押下された際に電動送風機12の回転数を変化させるパワースイッチ等である。表示部21は、電動送風機12の動作状態を表示する吸引力表示LEDと、ダストボックスがごみで一杯になったときに使用者にダストボックスを空にするように促すために点灯するダストセンサ表示LED等である。手元制御部22はスイッチ部20と表示部21を制御し、スイッチ部20の出力を入力する。
【0016】
電圧安定化回路23(レギュレータ)が手元制御部22に電源電圧−3Vを供給する。第1のコンデンサ24が基準電位配線8と電圧安定化回路23の入力との間に接続されている。ダイオード25が通信配線9と電圧安定化回路23の入力との間に接続されている。第2のコンデンサ26が電圧安定化回路23の出力と基準電位配線8との間に接続されている。
【0017】
本体制御部13、電源回路16、手元制御部22、及び電動機10等は基準電位配線8に接続されている。本体制御部13と手元制御部22は通信配線9を介して通信信号をやり取りする。この通信は非同期式シリアルインターフェースの方式で行われるため、本体制御部13と手元制御部22を同期させる必要がない。
【0018】
本体制御部13と手元制御部22の非通信時に、定電流回路17は、電源回路16から−12Vの電圧を入力し、通信配線9を介して手元操作部6に電力として一定の電流を供給する。これにより電荷が第2のコンデンサ26に蓄積される。一方、本体制御部13と手元制御部22の通信時には、定電流回路17から手元操作部6への電力供給は停止する。この際、第2のコンデンサ26を電源として手元制御部22等が動作する。定電流回路停止部19は、基準電位配線8と通信配線9との間の電圧が所定値を超えた場合に定電流回路17を停止させる。
【0019】
本体制御部13の送信端子TxDと受信端子RxDは第1のレベルシフタ18を介して通信配線9に接続されている。手元制御部22の送信端子TxDと受信端子RxDは第2のレベルシフタ27を介して通信配線9に接続されている。第1のレベルシフタ18は、通信配線9から本体制御部13に入力される通信信号を第1の電圧にシフトする。第2のレベルシフタ27は、通信配線9から手元制御部22に入力される通信信号を第2の電圧にシフトする。第2の電圧は第1の電圧よりも低い。
【0020】
図3は、本発明の実施の形態に係る電気掃除機のポーリング処理シーケンス図である。本体部1は周期的にデータを送信する。本体部1がデータを送信している際、本体部1の本体制御部13はデータの読み取りを行わない。手元操作部6は本体部1からのデータを受信してから一定時間後にデータを送信する。手元操作部6がデータを送信している際、手元制御部22はデータの読み取りを行わない。これにより、データの衝突が抑制され、通信配線9上の信号が双方のデータの論理積となることはない。このため、送信した信号とは異なった信号となることを防止できる。また、通信信号が読み取れない波形となることを防止できる。
【0021】
スイッチ部20の入/切スイッチが押下されると、そのスイッチ部20の出力を手元制御部22が入力し、本体制御部13に送信する。本体制御部13は電動送風機12と電動機10をそれぞれONにする。本体制御部13から手元制御部22にLED_ON指令が送信され、手元制御部22は表示部21のLEDをONにする。
【0022】
以上説明したように、本実施の形態では、本体制御部13と手元制御部22が通信配線9を介して通信信号をやり取りし、非通信時に定電流回路17が通信配線9を介して手元操作部6に電力供給する。このように通信配線9で通信と電力供給を行うことにより、本体部1と手元操作部6との間の配線を減らすことができる。具体的には、基準電位配線8、通信配線9、及び電動機電源供給線11の3本のみで電力供給と双方向通信を実現できる。これにより、ホース4における配線の重量が減少するため、ホース4の操作性が向上する。また、手元操作部6を動作させるためのバッテリを不要とすることができる。さらに、送受信部の汚れ、障害物の介在、外部機器からの通信信号によらない安定した双方向通信を実現することができる。
【0023】
また、第1及び第2のレベルシフタ18,27により本体制御部13と手元制御部22の電源電圧が異なる環境下でも相互通信が可能となる。さらに、手元制御部22側の第2の電圧を本体制御部13側の第1の電圧よりも低くすることで、手元制御部22の動作可能な電源電圧を低くできる。これにより、ブラシ用の電動機10の駆動により基準電位配線8の電圧が降下しても手元制御部22が動作可能である。
【0024】
図4は、基準電位配線と通信配線との間の電圧、AC電源の電圧、ブラシ用の電動機の電流を示す図である。ブラシ用の電動機10に電流が流れると、基準電位配線8と通信配線9との間の電圧Aが降下してしまう。従って、この電圧Aは、電圧安定化回路23の出力電圧が手元制御部22の動作可能電圧を確保できるような電圧安定化回路23の最低入力電圧Bと電動機10の駆動による基準電位配線8の降下電圧Cを足した電圧以上(A≧B+C)であることが好ましい。これにより、電動機10の駆動による基準電位配線8の電圧降下によって手元制御部22の電源電圧が動作可能電圧以下まで低下するのを防ぐことができる。例えば電圧Aが8V、電圧Bが7Vである。
【0025】
また、第2のコンデンサ26の容量は、電動機10の駆動による基準電位配線8の電圧降下によって手元制御部22の電源電圧が動作可能電圧以下まで低下しないような容量に設定することが好ましい。これにより、基準電位配線8と通信配線9との間の電圧Aを上記条件ほど高く設定しない場合(A<B+C)でも、電動機10の駆動による基準電位配線8の電圧降下によって手元制御部22の電源電圧が動作可能電圧以下まで低下するのを防ぐことができる。
【0026】
また、定電流回路停止部19が定電流回路17の動作と停止を繰り返させることで基準電位配線と通信配線との間の電圧を非通信時に一定に保ちつつ、電圧安定化回路23の損失を低減させることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 本体部、6 手元操作部、8 基準電位配線、9 通信配線、10 電動機、11 電動機電源供給線、12 電動送風機、13 本体制御部、17 定電流回路、18 第1のレベルシフタ、19 定電流回路停止部、20 スイッチ部、22 手元制御部、23 電圧安定化回路、24 第1のコンデンサ、25 ダイオード、26 第2のコンデンサ、27 第2のレベルシフタ