特許第6142828号(P6142828)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6142828
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】自動車用電源ボックス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/16 20060101AFI20170529BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   H02G3/16
   B60R16/02 610A
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-50477(P2014-50477)
(22)【出願日】2014年3月13日
(65)【公開番号】特開2015-177589(P2015-177589A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2016年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】谷口 知弘
【審査官】 中木 努
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−027639(JP,A)
【文献】 特開2009−278741(JP,A)
【文献】 特開2012−025201(JP,A)
【文献】 特開2003−040048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/16
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの主蓄電池に基づく第一の電源と、
前記第一の電源より高い電圧を出力する第二の電源と
を備え、
前記第一の電源と、該第一の電源に接続される第一の負荷群との間に介在される第一のヒューズボックスと、
前記第二の電源と、該第二の電源に接続される第二の負荷群との間に介在される第二のヒューズボックスと
を備えた自動車用電源ボックスにおいて、
前記第二のヒューズボックスのヒューズ取付面が覆われるように該第二のヒューズボックスと前記第一のヒューズボックスを積層し、該第二のヒューズボックスと前記第一のヒューズボックスを特殊工具を必要とするボルトとした固定装置で着脱不能に固定し
前記第一のヒューズボックスの基端側と前記第二のヒューズボックスの基端側を蝶番で回動可能に連結し、前記第一のヒューズボックスの先端側と前記第二のヒューズボックスの先端側を前記ボルトで固定したことを特徴とする自動車用電源ボックス。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車用電源ボックスにおいて、
前記第一の電源は鉛電池であり、
前記第二の電源の出力電圧は60V以下としたことを特徴とする自動車用電源ボックス。
【請求項3】
請求項に記載の自動車用電源ボックスにおいて、
前記第一のヒューズボックスの先端部に、前記ボルトを挿通可能とした挿通孔を設け、前記第二のヒューズボックスに、前記第一のヒューズボックスと前記第二のヒューズボックスとを積層した状態で前記挿通孔に連通する位置に前記ボルトを螺合可能としたネジ孔を設けたことを特徴とする自動車用電源ボックス。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の自動車用電源ボックスにおいて、
前記第一のヒューズボックスには、該第一のヒューズボックスを前記第二のヒューズボックスに積層した状態で露出されるヒューズ取付面を備えたことを特徴とする自動車用電源ボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリー等の電源と各種装備との間に介在される自動車用電源ボックスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載され、バッテリーあるいはオルタネータ等からの電源の供給に基づいて動作する種々の装備は、バッテリー及びオルタネータとの間にヒューズが介在され、過電流による破損が防止されている。
【0003】
近年、通常の12Vの電源で動作する装備と、例えば48Vの高電圧系電源の供給に基づいて動作する装備が混載された自動車が実用化されている。電源電圧の高電圧化を図ることにより、当該装備への供給電力を維持しながら供給電流を削減することが可能となる。この結果、電源供給配線の線径を縮小して配線ケーブルの軽量化を図ることにより、自動車の軽量化を図ることが可能となる。
【0004】
このような自動車では、電源電圧を高電圧化した装備にも電源との間にヒューズを介在させ、過電流による破損を防止する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−29276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
各装備と電源との間に介在されるヒューズは、自動車の車室内に配設されるヒューズボックスや、エンジンルーム内でリレー等の電流開閉機器等が収容される電源ボックス内に配設される。
【0007】
このようなヒューズボックスあるいは電源ボックス内に配設されたヒューズのメンテナンスを行うために、ユーザーが高電圧系のヒューズを取り外すと、ヒューズ側の接続端子と、ヒューズボックスあるいは電源ボックス側の接続端子との間で火花が誘起される等の不具合が生じることがある。
【0008】
特許文献1には、高電圧機器をカバーで覆って、高電圧機器とユーザーとの不用意な接触を防ぎ、カバーを開ける際には安全性を確保するために高電圧機器の電気的導通を遮断する施錠装置を備えた高電圧機器収納箱が開示されている。
【0009】
しかし、このような高電圧機器収納箱では、12Vの通常電圧系と高電圧系のヒューズが混在する場合に、ユーザーが通常電圧系ヒューズのみのメンテナンスを可能とする思想は開示されていない。
【0010】
この発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的はユーザーによる低電圧側の第一の電源系のヒューズメンテナンスを可能としながら、ユーザーによる高電圧側の第二の電源系のヒューズメンテナンスを不能とする自動車用電源ボックスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する自動車用電源ボックスは、一つの主蓄電池に基づく第一の電源と、前記第一の電源より高い電圧を出力する第二の電源とを備え、前記第一の電源と、該第一の電源に接続される第一の負荷群との間に介在される第一のヒューズボックスと、前記第二の電源と、該第二の電源に接続される第二の負荷群との間に介在される第二のヒューズボックスとを備えた自動車用電源ボックスにおいて、前記第二のヒューズボックスのヒューズ取付面が覆われるように該第二のヒューズボックスと前記第一のヒューズボックスを積層し、該第二のヒューズボックスと前記第一のヒューズボックスを特殊工具を必要とするボルトとした固定装置で着脱不能に固定し、前記第一のヒューズボックスの基端側と前記第二のヒューズボックスの基端側を蝶番で回動可能に連結し、前記第一のヒューズボックスの先端側と前記第二のヒューズボックスの先端側を前記ボルトで固定したことを特徴とする。
【0012】
この構成により、ユーザーによるボルトとの取り外しが不能となり、ユーザーによる第二のヒューズボックスのヒューズメンテナンスが不能となる。加えて、ボルトを締めこむと、第一のヒューズボックスと第二のヒューズボックスが積層された状態で固定され、ボルトを取り外すと、第一のヒューズボックスと第二のヒューズボックスが蝶番を支点として回動する。
また、上記自動車用電源ボックスは、前記第一の電源は鉛電池であり、前記第二の電源の出力電圧は60V以下とすることが好ましい。
【0013】
この構成により、第一の電源から出力される電圧より高く、且つ60V以下の電圧が供給される第二のヒューズボックスのヒューズメンテナンスが不能となる
【0016】
また、上記自動車用電源ボックスは、前記第一のヒューズボックスの先端部に、前記ボルトを挿通可能とした挿通孔を設け、前記第二のヒューズボックスに、前記第一のヒューズボックスと前記第二のヒューズボックスとを積層した状態で前記挿通孔に連通する位置に前記ボルトを螺合可能としたネジ孔を設けることが好ましい。
【0017】
この構成により、第一のヒューズボックスの挿通孔から第二のヒューズボックスのネジ孔にボルトを螺合すると、第一のヒューズボックスと第二のヒューズボックスとが積層された状態で固定される。
【0018】
また、上記自動車用電源ボックスは、前記第一のヒューズボックスには、該第一のヒューズボックスを前記第二のヒューズボックスに積層した状態で露出されるヒューズ取付面を備えることが好ましい。
【0019】
この構成により、第一のヒューズボックスと第二のヒューズボックスが固定された状態でも、第一のヒューズボックスのヒューズ取付面が露出される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の自動車用電源ボックスによれば、ユーザーによる低電圧側の第一の電源系のヒューズメンテナンスを可能としながら、ユーザーによる高電圧側の第二の電源系のヒューズメンテナンスを不能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】自動車用電源ボックスを示すブロック図である。
図2】自動車用電源ボックスの具体的構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、自動車用電源ボックスの一実施形態を図面に従って説明する。図1に示す電源ボックス1は、12V系のヒューズボックス2と高電圧系ヒューズボックス3とが混在している。
【0023】
12V系ヒューズボックス2には、バッテリー4から12Vの電源電圧が供給され、その電源電圧は電源ボックス1内に配設されるリレー(図示しない)等を介して、多数の12V系負荷群5に供給される。
【0024】
高電圧系ヒューズボックス3には、前記バッテリー4の出力電圧をDC/DCコンバータ(図示しない)で昇圧した電源電圧を供給可能とする高電圧系電源6から60V以下、ここでは48Vの電源電圧が供給される。そして、その電源電圧は電源ボックス1内に配設されるリレー(図示しない)等を介して、多数の高電圧系負荷群7に供給される。
【0025】
前記電源ボックス1の具体的構成を図2に従って説明すると、前記12V系ヒューズボックス2と高電圧系ヒューズボックス3は、上下方向に積層可能な箱状に形成されている。そして、12V系ヒューズボックス2の下縁基端側と、高電圧系ヒューズボックス3の上縁基端側とが蝶番8で回動可能に連結され、常には高電圧系ヒューズボックス3の上面を覆うように積層されている。
【0026】
12V系ヒューズボックス2の上面に設けられたヒューズ取付面は上方へ開放され、そのヒューズ取付面に12V系の複数のヒューズ9が着脱可能に取着されている。このヒューズ9は、電源配線経路上で前記バッテリー4と12V系負荷群5との間にそれぞれ介在されるものである。
【0027】
高電圧系ヒューズボックス3の上面に設けられたヒューズ取付面は上方へ開放され、そのヒューズ取付面に高電圧系の複数のヒューズ10が着脱可能に取着されている。このヒューズ10は、電源配線経路上で前記高電圧電源6と高電圧系負荷群7との間にそれぞれ介在されるものである。
【0028】
そして、ヒューズ10を取着した高電圧系ヒューズボックス3の上方に12V系ヒューズボックス2を積層させた状態では、高電圧系ヒューズボックス3のヒューズ取付面が12V系ヒューズボックス2の下面に覆われるため、ヒューズ10の着脱は不能となる。
【0029】
前記12V系ヒューズボックス2の先端部下縁には、前記高電圧系ヒューズボックス3と積層した状態で高電圧系ヒューズボックス3の前端に沿って下方に延びる固定片11が設けられ、その固定片11にはボルト12のネジ軸部を挿通可能とした挿通孔13が設けられている。
【0030】
高電圧系ヒューズボックス3の前端部には、12V系ヒューズボックス2を積層させた状態で前記挿通孔13に連通するネジ孔14が形成されている。そして、前記ボルト12のネジ軸部を前記挿通孔13に挿通するとともにネジ孔14に螺入して締め付けると、12V系ヒューズボックス2と高電圧系ヒューズボックス3が積層された状態で固定される。
【0031】
前記ボルト12は、六角形の頭部と+型あるいは−型のドライバー係合溝を備えた一般に広く使用されるボルトではなく、特殊工具でのみ取付け及び取り外しを可能としたボルトである。従って、通常のユーザーはボルト12を取り外して12V系ヒューズボックス2を回動させて高電圧系ヒューズボックス3のヒューズ10を露出させることができないようになっている。
【0032】
前記12V系ヒューズボックス2と高電圧系ヒューズボックス3の基端部から、ワイヤハーネス15,16がそれぞれ延設されている。そして、12V系ヒューズボックス2はワイヤハーネス15を介してバッテリー4と12V系負荷群5との間に介在され、高電圧系ヒューズボックス3はワイヤハーネス16を介して高電圧系電源6と高電圧系負荷群7との間に介在される。
【0033】
次に、上記のように構成された電源ボックスの作用を説明する。
電源ボックス1は、自動車の製造時に12V系ヒューズボックス2にヒューズ9及びリレー等が取着され、高電圧系ヒューズボックス3にヒューズ10及びリレー等が取着される。そして、12V系ヒューズボックス2と高電圧系ヒューズボックス3が積層され状態でボルト12で固定され、エンジンルーム内の所定位置に配設される。
【0034】
この状態では12V系ヒューズボックス2と高電圧系ヒューズボックス3は互いに回動不能に固定され、高電圧系ヒューズボックス3のヒューズ10は取り外し不能となる。
また、12V系ヒューズボックス2のヒューズ9は電源ボックス1の上面に露出されているので、ユーザーが任意に着脱してメンテナンス可能である。
【0035】
高電圧系ヒューズボックス3は、ユーザーがボルト12を取り外すことができないため、ディーラーでのみメンテナンス可能である。
上記のような電源ボックスでは、次に示す効果を得ることができる。
(1)12V系ヒューズボックス2のヒューズ9は、ユーザーによりメンテナンス可能である。
(2)高電圧系ヒューズボックス3のヒューズ10は、ユーザーによるメンテナンスを不能としている。従って、ユーザーによる高電圧系のヒューズ10のメンテナンス操作にともなう不具合を未然に防止することができる。
(3)高電圧系ヒューズボックス3のヒューズ取付面を覆うように12V系ヒューズボックス2を積層してボルト12を締め付けることにより、高電圧系ヒューズボックス3のヒューズ10のユーザーによるメンテナンスを不能とすることができる。
(4)12V系ヒューズボックス2と高電圧系ヒューズボックス3を蝶番8で回動可能に連結しているので、高電圧ヒューズボックス3のヒューズ10をメンテナンスした後、12V系ヒューズボックス2と高電圧系ヒューズボックス3を積層してボルト12が挿通可能となる位置に容易に位置決めすることができる。
【0036】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・ボルト12以外の、ユーザーが取り外しできない留め具で12V系ヒューズボックス2と高電圧系ヒューズボックス3とを上記のように積層状態に固定してもよい。
・12V系ヒューズボックス2と高電圧系ヒューズボックス3とを蝶番で連結せず、ボルトあるいは留め具を取り外したとき、12V系ヒューズボックス2と高電圧系ヒューズボックス3が別体となるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1…電源ボックス、2…第一のヒューズボックス(12V系ヒューズボックス)、3…第二のヒューズボックス(高電圧系ヒューズボックス)、4…第一の電源(主蓄電池、バッテリー)、5…第一の負荷群(12V系負荷群)、6…第二の電源(高電圧系電源)、7…第二の負荷群(高電圧系負荷群)、8…蝶番、12…固定装置(ボルト)、13…挿通孔、14…ネジ孔。
図1
図2