(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態1)
実施形態1に係るフレキシブルプリント配線板を説明する。まず、フレキシブルプリント配線板の構成を説明する。
図1は、実施形態1に係るフレキシブルプリント配線板を例示した断面図である。
図2は、実施形態1に係るフレキシブルプリント配線板を例示した分解斜視図である。
図1及び
図2に示すように、フレキシブルプリント配線板1は、絶縁性基材層10(第1絶縁層)、信号回路21、グランド回路22、カバーコート層30(第2絶縁層)、電磁波シールドシート40、電磁波シールドシート50及び複数のビア60を有している。なお、
図2において、ビア60は省略されている。フレキシブルプリント配線板1は、フィルム状の部材、厚さが薄い部材、可撓性の部材等を含むため、フレキシブル性を有する。
【0018】
フレキシブルプリント配線板1は、フィルム状の絶縁性基材層10の一方の面11に銅箔が形成された片面フレキシブル銅張積層板(以下、片面FCCLという。)70を用いて形成されている。絶縁性基材層10は、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマーが好ましく、液晶ポリマーおよびポリイミドがより好ましい。これらの中でも高周波の信号を伝送するフレキシブルプリント配線板の用途を考慮すると比誘電率および誘電正接が低い液晶ポリマーがさらに好ましい。これらのような絶縁性基材を備えることで配線板は高い耐熱性が得られる。回路パターン20は、アースを取るグランド回路22、電子部品に電気信号を送る信号回路21を含み、両者は銅箔をエッチング処理することで形成することが一般的である。回路パターン20の厚みは、通常1〜50μm程度である。
【0019】
ここで、
図1及び
図2において、説明の便宜上、XYZ直交座標系を導入する。フレキシブルプリント配線板1を平らにした状態で、絶縁性基材層10の一方の面11に直行する方向をZ軸方向とする。Z軸方向のうち、一方の面11が面している方向を+Z軸方向、その反対方向を−Z軸方向とする。+Z軸方向を上方、−Z軸方向を下方ともいう。一方の面11に平行な面内における一方向、例えば、信号回路21における一方に延びた部分の延びる方向をX軸方向とする。X軸方向のうち、一方を+X軸方向、その反対方向を−X軸方向とする。Z軸方向及びX軸方向に直交する方向をY軸方向とする。Y軸方向のうち、一方を+Y軸方向、その反対方向を−Y軸方向とする。
【0020】
グランド回路22は、絶縁性基材層10上に、信号回路21と距離を空けて設けられている。グランド回路22は、信号回路21に沿ってX軸方向に延びている。グランド回路22は、複数本設けられ、例えば、グランド回路22a(第1グランド回路)及びグランド回路22b(第2グランド回路)を有している。例えば、グランド回路22aは信号回路21の−Y軸方向側に配置されている。グランド回路22bは、信号回路21の+Y軸方向側に配置されている。グランド回路22a及びグランド回路22bは、絶縁性基材層10上に設けられ一方向に延びた部分を有している。グランド回路22a及びグランド回路22bは、信号回路21を+Y軸方向側及び−Y軸方向側の両側から挟むように設けられている。信号回路21は、グランド回路22aとグランド回路22bとの間に配置されている。
【0021】
カバーコート層30(第2絶縁層)は、絶縁性基材層10、信号回路21及びグランド回路22上に設けられている。カバーコート層30は、信号回路21及びグランド回路22を覆う部分を有している。カバーコート層30は、配線板の信号配線を覆い、外部環境から保護する絶縁材料である。カバーコート層30は、熱硬化性接着剤付きポリイミドフィルム、熱硬化型もしくは紫外線硬化型のソルダーレジスト、または感光性カバーレイフィルムが好ましく、微細加工をするためには感光性カバーレイフィルムがより好ましい。またカバーコート層30は、ポリイミド等の耐熱性と柔軟性を備えた公知の樹脂を使用するのが一般的である。カバーコート層の厚みは、通常10〜100μm程度である。なお、カバーコート層30はモジュールの実装やコネクタとの接合のため、信号回路およびグランド回路の一部を露出させて設ける場合が多い。
【0022】
電磁波シールドシート40は、カバーコート層30上に設けられている。電磁波シールドシート40は、導電性接着剤層41(第2導電層)と絶縁層42(第3絶縁層)とを含み、導電性接着剤層41上に絶縁層42が設けられた積層構造となっている。導電性接着剤層41が、カバーコート層30側に配置されている。導電性接着剤層41はカバーコート層30上に設けられている。導電性接着剤層41はカバーコート層30上で導電層となっている。導電性接着剤層41は、電磁波シールドシート40の導電性接着剤が硬化したものである。したがって、電磁波シールドシート40は、フレキシブルプリント配線板1においては、導電性接着剤層41と絶縁層42とを含み、フレキシブルプリント配線板1の部材となる前の単体では、導電性接着剤と絶縁層42とを含んでいる。
【0023】
電磁波シールドシート50は、絶縁性基材層10の下方に設けられている。電磁波シールドシート50は、導電性接着剤層51(第1導電層)と絶縁層52とを含み、導電性接着剤層51の下方に絶縁層52が設けられた積層構造となっている。導電性接着剤層51は、絶縁性基材層10側に配置されている。よって、絶縁性基材層10は、導電性接着剤層51上に設けられている。導電性接着剤層51は、電磁波シールドシート50の導電性接着剤が硬化したものである。したがって、電磁波シールドシート50は、フレキシブルプリント配線板1においては、導電性接着剤層51と絶縁層52とを含み、フレキシブルプリント配線板1の部材となる前の単体では、導電性接着剤と絶縁層52とを含んでいる。
【0024】
絶縁層42は、導電性接着剤層41上に設けられている。絶縁層52は、導電性接着剤層51の下方に設けられている。
【0025】
以下に、導電層及び絶縁層について詳細を説明する。
《導電性接着剤層》
導電性接着剤層は、等方導電性接着剤層または異方導電性接着剤層から適宜選択できる。等方導電性接着剤層は、電磁波シールドシートを水平に置いた状態で、上下方向および水平方向に導電性を有する。また、異方導電性接着剤層は、電磁波シールドシートを水平に置いた状態で、上下方向のみに導電性を有する。
導電性接着剤層は、等方導電性あるいは異方導電性のいずれでもよく、等方導電性の場合、ビアでの接続信頼性が向上するため好ましい。
導電性接着剤層は、導電性接着剤を使用して形成できる。導電性接着剤は、熱硬化性樹脂、硬化剤、および導電性微粒子を含む従来公知のものを任意に用いることが可能である。
【0026】
<熱硬化性樹脂>
熱硬化性樹脂は、硬化剤と反応可能な官能基を複数有する樹脂である。官能基は、例えば、水酸基、フェノール性水酸基、メトキシメチル基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリン基、オキサジン基、アジリジン基、チオール基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、ブロック化カルボキシル基、シラノール基等が挙げられる。熱硬化性樹脂は、例えば、アクリル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フェノール系樹脂、アルキド樹脂、アミノ樹脂、ポリ乳酸樹脂、オキサゾリン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の公知の樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂は、単独または2種類以上併用できる。
【0027】
これらの中でも屈曲性の点から、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂が好ましい。
【0028】
熱硬化性樹脂の酸価は、1〜50mgKOH/gが好ましく、3〜30mgKOH/gがより好ましい。
【0029】
熱硬化性樹脂の重量平均分子量は、20000〜100000が好ましい。
【0030】
熱硬化性樹脂は、導電性接着剤層の固形分中の含有量が、10〜80重量%配合することが好ましく、15〜80重量%がより好ましい。
【0031】
<硬化剤>
硬化剤は、熱硬化性樹脂の官能基と反応可能な官能基を複数有している。硬化剤は、例えばエポキシ化合物、酸無水物基含有化合物、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、アミン化合物、フェノール化合物、有機金属化合物等の公知の化合物が挙げられる。
硬化剤は、単独または2種類以上併用できる。
【0032】
硬化剤は、熱硬化性樹脂100重量部に対して各種1〜50重量部含むことが好ましく、3〜30重量部がより好ましく、3〜20重量部がさらに好ましい。
【0033】
<導電性微粒子>
導電性微粒子は、導電性接着剤層に導電性を付与する機能を有する。導電性微粒子は、素材としては、例えば金、白金、銀、銅およびニッケル等の導電性金属およびその合金、ならびに導電性ポリマーの微粒子が好ましく、価格と導電性の面から銀がより好ましい。
また単一素材の微粒子ではなく金属や樹脂を核体とし、核体の表面を被覆した被覆層を有する複合微粒子もコストダウンの観点から好ましい。ここで核体は、価格が安いニッケル、シリカ、銅およびその合金、ならびに樹脂から適宜選択することが好ましい。被覆層は、導電性金属または導電性ポリマーが好ましい。導電性金属は、例えば、金、白金、銀、ニッケル、マンガン、およびインジウム等、ならびにその合金が挙げられる。また導電性ポリマーは、ポリアニリン、ポリアセチレン等が挙げられる。これらの中でも価格と導電性の面から銀が好ましい。
【0034】
導電性微粒子の形状は、所望の導電性が得られればよく形状は限定されない。具体的には、例えば、球状、フレーク状、葉状、樹枝状、プレート状、針状、棒状、ブドウ状が好ましい。また、これらの異なる形状の導電性微粒子を2種類混合しても良い。
導電性微粒子は、単独または2種類以上併用できる。
【0035】
導電性微粒子の平均粒子径は、D50平均粒子径であり、異方性を充分に確保する観点から、2μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、7μm以上とすることが更に好ましい。一方、導電性接着剤層の薄さと両立させる観点からは、30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、15μm以下とすることが更に好ましい。D50平均粒子径は、レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置等により求めることができる。
【0036】
導電性微粒子は、熱硬化性樹脂の固形分100重量部に対して、10〜700重量部を配合することが好ましく、20〜500重量部がより好ましい。
含有量が20〜500重量部であることにより、電磁波シールド性がより良好な電磁波シールドシートとすることができる。
【0037】
導電性接着剤は、他に任意成分としてシランカップリング剤、防錆剤、還元剤、酸化防止剤、顔料、染料、粘着付与樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング調整剤、充填剤、難燃剤などを配合できる。
【0038】
導電性接着剤は、これまで説明した材料を混合し攪拌して得ることができる。攪拌は、例えばディスパーマット、ホモジナイザー等に公知の攪拌装置を使用できる。
【0039】
導電性接着剤層の作製は、公知の方法を使用できる。例えば、導電性接着剤を剥離性シート上に塗工して乾燥することで導電層を形成する方法、または、Tダイのような押出成形機を使用して導電性接着剤をシート状に押し出すことで形成することもできる。
【0040】
塗工方法は、例えば、グラビアコート方式、キスコート方式、ダイコート方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレード方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、スプレーコート方式、バーコート方式、スピンコート方式、ディップコート方式等の公知の塗工方法を使用できる。塗工に際して、乾燥工程を行うことが好ましい。乾燥工程は、例えば、熱風乾燥機、赤外線ヒーター等の公知の乾燥装置を使用できる。
【0041】
導電性接着剤層の厚みは、2〜100μmが好ましく、4〜50μmがより好ましく、6〜30μmがさらに好ましい。厚みが2〜100μmの範囲にあることで電磁波シールド性と屈曲性とのバランスを取り易くなる。
【0042】
《絶縁層》
絶縁層は、従来公知の絶縁性樹脂組成物を使用して形成できる。
絶縁性樹脂組成物は、導電性接着剤で説明した熱硬化性樹脂および硬化剤を必要に応じて任意成分を含むことができる。なお、絶縁層および導電性接着剤層に使用する熱硬化性樹脂、硬化剤は、同一、または異なっていてもよい。
【0043】
絶縁性樹脂組成物は、導電性接着剤と同様の方法で得ることが出来る。
【0044】
また、絶縁層は、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド等の絶縁性樹脂を成形したフィルムを使用することもできる。
【0045】
絶縁層の厚みは、通常2〜20μm程度である。
【0046】
ビア60は、信号回路21とグランド回路22との間において、カバーコート層30及び絶縁性基材層10を貫通したスルーホール61内に設けられている。よって、ビア60は、カバーコート層30の上面から絶縁性基材層10の下面まで貫通している。そして、ビア60は、導電性接着剤層41と導電性接着剤層51とを接続している。スルーホール61は、複数設けられ、ビア60も複数個設けられている。複数のビア60は、信号回路21の−Y軸方向側に配置されたグランド回路22aと信号回路21との間において、X軸方向(一方向)に沿って間隔を空けて並んだ列(第1のビアの列)と、信号回路21の+Y軸方向側に配置されたグランド回路22bと信号回路21との間において、X軸方向(一方向)に沿って間隔を空けて並んだ列(第2のビアの列)とを有している。信号回路21は、第1のビア60の列と第2のビア60の列との間に配置されている。また、第1のビア60の列は、信号回路21とグランド回路22aとの間に配置され、第2のビアの列は、信号回路21とグランド回路22bとの間に配置されている。X軸方向に隣り合うビア60の間の間隔を、ビア60の間隔またはビア間隔という。
【0047】
また、信号回路21の−Y軸側においてX軸方向に並んだビア60を結ぶ線と、信号回路21の+Y軸側においてX軸方向に並んだビア60を結ぶ線と、の間を、ビア60で囲まれた内側という。一方、信号回路21の−Y軸側においてX軸方向に並んだビア60を結ぶ線よりも−Y軸方向側、及び、信号回路21の+Y軸側においてX軸方向に並んだビア60を結ぶ線よりも+Y軸方向側を、ビア60の外側という。
【0048】
ビア60は、導電性接着剤層41と導電性接着剤層51との間に配置されている。ビア60の上端は導電性接着剤層41と接し、ビア60の下端は導電性接着剤層51と接している。ビア60は、電磁波シールドシート40及び50の導電性接着剤が硬化したものである。したがって、ビア60は、導電性接着剤層41及び導電性接着剤層51と同じ材料を含んでいる。したがって、ビア60は、導電性である。なお、フレキシブルプリント配線板1には、ビア60とは異なるビアであって、導電性接着剤層41と導電性接着剤層51とを接続するとともにグランド回路22に接続する少なくとも1つの図示しないビアが設けられている。これにより、電性接着剤層41及び導電性接着剤層51はアースに接続される。
【0049】
次に、実施形態1に係るフレキシブルプリント配線板1の製造方法を説明する。
図3は、実施形態1に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法を例示した工程図であり、(a)〜(c)は、断面図を示し、(d)は、端面図を示す。
図3(a)に示すように、まず、片面FCCL70を準備する。片面FCCLは、絶縁性基材層10上に回路パターン20が形成されたものである。
【0050】
次に、
図3(b)に示すように、片面FCCL70の銅箔層をエッチングして回路パターン20を形成する。これにより、絶縁性基材層10上に、一方向に延びた部分を有する信号回路21及び複数のグランド回路22を形成する。例えば、信号回路21を、グランド回路22aとグランド回路22bとの間に配置させる。
【0051】
次に、
図3(c)に示すように、絶縁性基材層10、信号回路21及びグランド回路22上に、カバーコート層30を形成する。信号回路21及びグランド回路22を覆う部分を有するようにカバーコート層30を形成する。カバーコート層30を形成する際には、カバーレイ32の片面に絶縁性接着剤層31を形成し、絶縁性接着剤層31を形成させた面で信号回路21及びグランド回路22を覆う部分を有するようにカバーレイ32を貼り付ける。このようにして、絶縁性基材層10、信号回路21及びグランド回路22上にカバーコート層30を形成する。
【0052】
次に、
図3(d)に示すように、カバーコート層30の上面から絶縁性基材層10の下面まで貫通する複数のスルーホール61を形成する。複数のスルーホール61を、信号回路21の−Y軸方向側に配置されたグランド回路22aと信号回路21との間にX軸方向に沿って間隔を空けて並んだ列(第1のスルーホールの列)と、信号回路21の+Y軸方向側に配置されたグランド回路22bと信号回路21との間にX軸方向に沿って間隔を空けて並んだ列(第2のスルーホールの列)となるように形成する。すなわち、複数のスルーホール61を、信号回路21が、第1のスルーホールの列と、第2のスルーホールの列との間に配置されるように形成する。これにより、信号回路21の両側に、第1のスルーホールの列と、第2のスルーホールの列とが配置される。
【0053】
次に、カバーコート層30の上面に、電磁波シールドシート40の導電性接着剤が形成された面を貼りつける。一方、絶縁性基材層10の下面に、電磁波シールドシート50における導電性接着剤が形成された面を貼りつける。なお、電磁波シールドシート40及び50の貼り付けの順番は、電磁波シールドシート40が先でも後でもどちらでもよい。また、同時に貼り付けてもよい。
【0054】
次に、熱プレスによって、電磁波シールドシート40及び50の導電性接着剤をスルーホール61内に充填させる。その後、電磁波シールドシート40及び50の導電性接着剤並びにスルーホール61内の導電性接着剤を硬化させる。
【0055】
上記の熱プレスは、温度150〜190℃程度、圧力1〜3MPa程度、時間1〜60分程度の条件で行うことが好ましい。熱プレスにより導電性接着剤層とカバーコート層が密着するとともに、電磁波シールドシート40および50の導電性接着剤層が流動して互いにスルーホールに充填した後硬化することで導通が取れる。熱硬化性樹脂を使用する場合、熱プレスの熱により熱硬化性樹脂と硬化剤が反応する。
なお、硬化を促進させるため、熱プレス後に150〜190℃で30〜90分間ポストキュアを行う場合もある。なお、電磁波シールドシートは、加熱圧着後に電磁波シールド層ということがある。
【0056】
これにより、
図1及び
図2に示すように、ビア60が形成され、
図1及び
図2に示すフレキシブルプリント配線板1が製造される。
【0057】
本実施形態によれば、信号回路21は、導電性のビア60によって挟まれている。そして、ビア60が電磁波シールドシート40における導電性接着剤層41と、電磁波シールドシート50における導電性接着剤層51とを接続している。したがって、フレキシブルプリント配線板1は、信号回路21を3次元的にシールドした同軸ケーブルと類似の構造となっている。よって、信号回路21からの放射ノイズが、ビア60で囲まれた内側からビア60の外側へ漏れ出すことを抑制することができる。したがって、電磁波のシールドを向上させることができる。
【0058】
また、ビア60は、導電性接着剤により形成されているので、フレキシブル性を向上させることができる。さらに、ビア60は、前述のように電磁波シールドシートを熱プレスして形成することができるため、従来のように銅メッキによるビア形成工程を省くことができ、製造工程を短縮化できる。加えて、最外層に絶縁性を担保するためのカバーコート層を貼り合わせる必要が無いため、フレキシブルプリント配線板(FPC)が薄膜化し、フレキシブル性がより向上する。
【0059】
(変形例)
次に、実施形態1の変形例に係るフレキシブルプリント配線板1aを説明する。
図4は、実施形態1の変形例に係るフレキシブルプリント配線板の電磁波シールドシートを例示した図である。
図4に示すように、変形例の電磁波シールドシート40aにおいては、電磁波シールドシート40を、絶縁層42及び導電性接着剤層41の積層構造とする代わりに、導電性接着剤層41上に設けられた金属層43と、金属層43上に設けられた絶縁層42とを含んだ積層構造としている。また、図示しない電磁波シールドシート50aにおいて、絶縁層52及び導電性接着剤層51の積層構造とする代わりに、導電性接着剤層51の下方に設けられた金属層53と、金属層53の下方に設けられた絶縁層42とを含んだ積層構造としている。これにより、高周波信号を流した際の電磁波シールド性をより向上させることができる。電磁波シールドシート40aは、フレキシブルプリント配線板1aにおいては、導電性接着剤層41と絶縁層42と金属層43とを含み、フレキシブルプリント配線板1aの部材となる前の単体では、導電性接着剤と絶縁層42と金属層43を含んでいる。また、電磁波シールドシート50aは、フレキシブルプリント配線板1aにおいては、導電性接着剤層51と絶縁層52と金属層53とを含み、フレキシブルプリント配線板1aの部材となる前の単体では、導電性接着剤と絶縁層52と金属層53とを含んでいる。
【0060】
金属層の厚みは0.2〜5μmであることが好ましい。金属層の厚みは、0.5〜4.5μmがより好ましく、1〜4μmがさらに好ましい。金属層の厚みが1〜5μmの範囲にあることで高い電磁波シールド性能と屈曲性とのバランスを取ることが可能となる。
【0061】
金属層は、例えば金属箔、金属蒸着膜、金属メッキ膜を使用できる。
金属箔に使用する金属は、例えばアルミニウム、銅、銀、金等の導電性金属が好ましく、電磁波シールド性およびコストの面から銅、銀、アルミニウムがより好ましく、銅がさらに好ましい。銅は、例えば、圧延銅箔または電解銅箔を使用することが好ましく、電解銅箔がより好ましい。電解銅箔を使用すると金属層の厚みをより薄くできる。また、金属箔はメッキで形成してもよい。金属箔の厚みは1〜5μmが好ましく、1.5〜4μmがより好ましい。
【0062】
金属蒸着膜及び金属メッキ膜に使用する金属は、例えばアルミニウム、銅、銀、金が好ましく、銅、銀がより好ましい。金属蒸着膜および金属メッキ膜の厚みは、0.2〜3μmが好ましく、0.3〜2μmがより好ましい。
金属層は薄膜化の点から蒸着膜が好ましい。電磁波シールド性の点からは金属箔が好ましい。
【0063】
なお、電磁波シールドシート40aを上方に設け、下方には、電磁波シールドシート50を設けてもよい。また、逆に、上方には、電磁波シールドシート40を設け、下方に、電磁波シールドシート50aを設けてもよい。また、本変形例は、実施形態1のみではなく、以下で説明する他の実施形態にも必要に応じて適用可能である。
【0064】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係るフレキシブルプリント配線板2を説明する。
図5は、実施形態2に係るフレキシブルプリント配線板を例示した断面図である。
図6は、実施形態2に係るフレキシブルプリント配線板を例示した分解斜視図である。
図5及び
図6に示すように、フレキシブルプリント配線板2において、ビア60は、カバーコート層30、グランド回路22及び絶縁性基材層10を貫通したスルーホール61内に設けられている。複数のビア60は、グランド回路22に沿って、X軸方向に間隔を空けて並んで設けられている。すなわち、複数のビア60は、グランド回路22aも貫通し、グランド回路22aに沿って、X軸方向(一方向)に間隔を空けて並んだ列(第1のビアの列)と、グランド回路22bを貫通し、グランド回路22bに沿って、X軸方向(一方向)に間隔を空けて並んだ列(第2のビアの列)を有している。それ以外の構成は、実施形態1と同様である。
【0065】
次に、フレキシブルプリント配線板2の製造方法を説明する。
図7は、実施形態2に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法を例示した工程端面図である。先ず、前述の第1の実施形態と同様に、
図3(a)〜
図3(c)に示す工程を実施する。これらの工程については、説明を省略する。
【0066】
次に、
図7に示すように、カバーコート層30、グランド回路22及び絶縁性基材層10を貫通する複数のスルーホール61を形成する。すなわち、複数のスルーホール61を、グランド回路22aも貫通し、グランド回路22aに沿って、X軸方向(一方向)に間隔を空けて並ぶように形成する。また、複数のスルーホール61を、グランド回路22bも貫通し、グランド回路22bに沿って、X軸方向(一方向)に間隔を空けて並ぶように形成する。
【0067】
次に、カバーコート層30の上面に、電磁波シールドシート40における導電性接着剤が形成された面を下方にして貼りつける。一方、絶縁性基材層10の下面に電磁波シールドシート50における導電性接着剤が形成された面を上方にして貼りつける。なお、実施形態1と同様に、電磁波シールドシートを貼りつける順番はどちらでもよいし、同時でもよい。
【0068】
次に、熱プレスによって、電磁波シールドシート40及び50における導電性接着剤をスルーホール61内に充填させる。その後、電磁波シールドシート40及び50の導電性接着剤並びにスルーホール61内の導電性接着剤を硬化させる。熱プレスの条件は前述の実施形態1と同様である。これにより、
図5及び
図6に示すように、ビア60が形成される。このようにして、
図5及び
図6に示すフレキシブルプリント配線板2が製造される。
【0069】
本実施形態のフレキシブルプリント配線板2によれば、信号回路21を取り囲むビア60、導電性接着剤層41及び51からなる同軸ケーブル状の構成に、グランド回路22を含んでいる。よって、より一層の電磁波のシールドを向上させることができる。それ以外の効果は、実施形態1と同様である。
【0070】
(実施形態3)
次に、実施形態3に係るフレキシブルプリント配線板3を説明する。本実施形態は、スルーホール61が、グランド回路22を貫通せずに、カバーコート層30の上面からグランド回路22の上面までと、グランド回路22の下面から絶縁性基材層10の下面まで形成されたものである。
【0071】
図8は、実施形態3に係るフレキシブルプリント配線板を例示した断面図である。
図8に示すように、実施形態3に係るフレキシブルプリント配線板3は、スルーホールがグランド回路22を貫通していない。スルーホール61aは、カバーコート層30の上面からグランド回路22aの上面まで貫通している。スルーホール61bは、グランド回路22aの下面から絶縁性基材層10の下面まで貫通している。スルーホール61cは、カバーコート層30の上面からグランド回路22bの上面まで貫通している。スルーホール61dは、グランド回路22bの下面から絶縁性基材層10の下面まで貫通している。
【0072】
ビア60a(第1上部のビア)は、カバーコート層30の上面からカバーコート層30の下面まで
、すなわち、カバーコート層30の上面からグランド回路22aの上面まで貫通し、導電性接着剤層41とグランド回路22aとを接続している。また、ビア60b(第1下部のビア)は、絶縁性基材層10の上面から絶縁性基材層10の下面まで貫通し、グランド回路22aと導電性接着剤層51とを接続している。ビア60c(第2上部のビア)は、カバーコート層30の上面からカバーコート層30の下面まで
、すなわち、カバーコート層30の上面からグランド回路22bの上面まで貫通し、導電性接着剤層41とグランド回路22bとを接続している。また、ビア60d(第2下部のビア)は、絶縁性基材層10の上面から絶縁性基材層10の下面まで貫通し、グランド回路22bと導電性接着剤層51とを接続している。
【0073】
複数のビア60a及び複数のビア60bは、グランド回路22aに沿って間隔を空けて並んで配置されている。複数のビア60c及び複数のビア60dは、グランド回路22bに沿って間隔を空けて並んで配置されている。これ以外の構成は、実施形態2と同様である。
【0074】
次に、実施形態3に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法を説明する。
図9は、実施形態3に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法を例示した工程端面図である。先ず、前述の第1の実施形態と同様に、
図3(a)〜
図3(c)に示す工程を実施する。これらの工程については、説明を省略する。
【0075】
次に、
図9に示すように、カバーコート層30を貫通し、グランド回路22a及び22bの上面まで到達するスルーホール61a及び61cを形成する。スルーホール61a及び61cを、それぞれグランド回路22a及び22bに沿って、X軸方向に間隔を空けて並ぶように複数個形成する。また、絶縁性基材層10を貫通し、グランド回路22a及び22bの下面まで到達するスルーホール61b及び61dを形成する。スルーホール61b及び61dを、それぞれグランド回路22a及び22bに沿って、X軸方向に間隔を空けて並ぶように複数個形成する。
【0076】
次に、カバーコート層30の上面に、電磁波シールドシート40における導電性接着剤が形成された面を貼りつける。一方、絶縁性基材層10の下面に電磁波シールドシート50における導電性接着剤が形成された面を上方にして貼りつける。
【0077】
次に、熱プレスによって、電磁波シールドシート40の導電性接着剤をスルーホール61a及び61c内に充填させる。それとともに、電磁波シールドシート50の導電性接着剤をスルーホール61b及び61d内に充填させる。その後、導電性接着剤を硬化させる。これにより、
図8に示すように、スルーホール61a、61b、61c及び61d内の導電性接着剤は硬化してビア60a、60b、60c及び60dが形成される。また、電磁波シールドシート40及び50の導電性接着剤は固化して導電性接着剤層41及び51となる。このようにして、
図8に示すフレキシブルプリント配線板3が製造される。
【0078】
本実施形態3に係るフレキシブルプリント配線板3によれば、グランド回路22a及び22bを貫通させずにビア60を形成している。この形態では、グランド回路22への導電性接着剤の導通の接続信頼性がより向上する。これ以外の効果は、実施形態1及び2と同様である。
【0079】
なお、ビア60a〜60dのうち、上部のビアまたは下部のビア、例えば、ビア60a(第1上部のビア)及びビア60c(第2上部のビア)が、導電性接着剤を硬化させたものであり、ビア60b(第1下部のビア)及びビア60d(第2下部のビア)が、スルーホールをメッキすることにより形成されたものとしてもよい。この場合には、
図9に示す工程の後に、スルーホール61b及び61dの内部に、
図26(b)に示す工程を行う。ビア60a(第1上部のビア)及びビア60c(第2上部のビア)を、スルーホールをメッキすることにより形成されたものとし、ビア60b(第1下部のビア)及びビア60d(第2下部のビア)を、導電性接着剤を硬化させたものとしてもよい。
【0080】
(実施形態4)
次に、実施形態4に係るフレキシブルプリント配線板を説明する。
図10は、実施形態4に係るフレキシブルプリント配線板を例示した断面図である。
図10に示すように、フレキシブルプリント配線板4のグランド回路22は、ビア60と信号回路21との間に設けられている。
【0081】
複数のビア60は、−Y軸方向側のグランド回路22aから−Y軸方向側に離れた位置において、X軸方向(一方向)に沿って間隔を空けて並んだ列(第1のビアの列)と、+Y軸方向側のグランド回路22bから+Y軸方向側に離れた位置において、X軸方向(一方向)に沿って間隔を空けて並んだ列(第2のビアの列)とを有している。よって、グランド回路22aは、信号回路21と第1のビアの列との間に配置され、グランド回路22bは、信号回路21と第2のビアの列との間に配置される。なお、フレキシブルプリント配線板4には、ビア60とは異なるビアであって、導電性接着剤層41と導電性接着剤層51とを接続するとともにグランド回路22に接続する少なくとも1つの図示しないビアが設けられている。これにより、導電性接着剤層41及び導電性接着剤層51はアースに接続される。これ以外の構成は、実施形態1と同様である。
【0082】
実施形態4に係るフレキシブルプリント配線板4の製造方法については、スルーホール61を形成する位置が異なる以外は実施形態1と同様である。すなわち、スルーホール61を、−Y軸方向側のグランド回路22aから−Y軸方向側に離れた位置において、X軸方向(一方向)に沿って間隔を空けて並び、カバーコート層30及び絶縁性基材層10を貫通するように形成するとともに、+Y軸方向側のグランド回路22bから+Y軸方向側に離れた位置において、X軸方向(一方向)に沿って間隔を空けて並び、カバーコート層30及び絶縁性基材層10を貫通するように形成する。
【0083】
本実施形態に係るフレキシブルプリント配線板4によれば、ビア60に囲まれた内側に信号回路21とともにグランド回路22も配置しているので、グランド回路22における放射ノイズの影響を抑制することができる。これ以外の効果は、実施形態1〜3と同様である。
【0084】
(実施形態5)
次に、実施形態5に係るフレキシブルプリント配線板を説明する。
図11は、実施形態5に係るフレキシブルプリント配線板を例示した断面図である。
図11に示すように、実施形態5のフレキシブルプリント配線板5は、両面FCCL80を用いて形成されたものであり、実施形態1に係るフレキシブルプリント配線板1における電磁波シールドシート50の代わりに、銅層23が設けられたものである。銅層23は、絶縁性基材層10の下面に全面に設けられている。絶縁性基材層10及びカバーコート層30を貫通したビア60は、導電性接着剤層41(第1導電層)と銅層23(第2導電層)とを接続している。なお、フレキシブルプリント配線板5には、ビア60とは異なるビアであって、導電性接着剤層41と銅層23とを接続するとともにグランド回路22に接続する少なくとも1つの図示しないビアが設けられている。これにより、導電性接着剤層41及び銅層23はアースに接続される。これ以外の構成は、実施形態1と同様である。
【0085】
次に、実施形態5に係るフレキシブルプリント配線板5の製造方法を説明する。
図12は、実施形態5に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法を例示した工程図であり、(a)〜(c)は、断面図を示し、(d)は、端面図を示す。
図12(a)に示すように、まず、両面FCCL80を用意する。両面FCCL80は、絶縁性基材層10の両面に銅層20および23が設けられたものである。
【0086】
次に、
図12(b)に示すように、両面FCCL80における銅層20を加工して、信号回路21及びグランド回路22を形成する。このようにして、銅層23(第1導電層)上に設けられた絶縁性基材層10(第1絶縁層)上に一方向に延びた部分を有する信号回路21及びグランド回路22を形成する。
【0087】
次に、
図12(c)に示すように、絶縁性基材層10、信号回路21及びグランド回路22上に、カバーコート層30を形成する。信号回路21及びグランド回路22を覆う部分を有するようにカバーコート層30を形成する。カバーコート層30を形成する際には、カバーレイ32の片面に絶縁性接着剤層31を形成し、絶縁性接着剤層31を形成させた面で信号回路21及びグランド回路22を覆う部分を有するようにカバーレイ32を貼り付ける。このようにして、絶縁性基材層10、信号回路21及びグランド回路22上にカバーコート層30を形成する。
【0088】
次に、
図12(d)に示すように、信号回路21とグランド回路22との間において、カバーコート層30の上面から絶縁性基材層10の下面まで貫通し、銅層23に到達する複数のスルーホール61を形成する。複数のスルーホール61を、信号回路21の−Y軸方向側に配置されたグランド回路22aと信号回路21との間にX軸方向に沿って間隔を空けて並んだ列(第1のスルーホールの列)と、信号回路21の+Y軸方向側に配置されたグランド回路22bと信号回路21との間にX軸方向に沿って間隔を空けて並んだ列(第2のスルーホールの列)となるように形成する。すなわち、複数のスルーホール61を、信号回路21が、第1のスルーホールの列と、第2のスルーホールの列との間に配置されるように形成する。また、信号回路21の両側において、第1のスルーホールの列と、第2のスルーホールの列とが配置される。
【0089】
次に、カバーコート層30の上面に、電磁波シールドシート40の導電性接着剤が形成された面を貼りつける。次に、熱プレスによって、電磁波シールドシート40の導電性接着剤をスルーホール61内に充填させる。その後、電磁波シールドシート40の導電性接着剤及びスルーホール61内の導電性接着剤を硬化させる。これにより、
図11に示すように、スルーホール61内の導電性接着剤は硬化してビア60が形成される。また、電磁波シールドシート40の導電性接着剤は硬化して導電性接着剤層41になる。このようにして、
図11に示すフレキシブルプリント配線板5が製造される。フレキシブルプリント配線板5は銅層23の表面にカバーコート層を形成することが好ましい。
【0090】
本実施形態に係るフレキシブルプリント配線板5によれば、両面FCCLを用いているので、銅層23をシールドとすることができる。また必要に応じて銅層23に回路パターンを形成することができるため、フレキシブルプリント配線板を短小薄膜化することができる。その他の効果は実施形態1〜4と同様である。
【0091】
(実施形態6)
次に、実施形態6に係るフレキシブルプリント配線板を説明する。
図13は、実施形態6に係るフレキシブルプリント配線板を例示した断面図である。
図13に示すように、本実施形態に係るフレキシブルプリント配線板6は、両面FCCL80を用いたものであり、実施形態2に係るフレキシブルプリント配線板2における電磁波シールドシート50の代わりに、銅層23が設けられたものである。銅層23は、絶縁性基材層10の下面に全面に設けられている。絶縁性基材層10、グランド回路22及びカバーコート層30を貫通したビア60は、導電性接着剤層41(第2導電層)と銅層23(第1導電層)とを接続している。その他の構成は、実施形態2と同様である。
【0092】
次に、実施形態6に係るフレキシブルプリント配線板6の製造方法を説明する。
先ず、前述の第5の実施形態と同様に、
図12(a)〜
図12(c)に示す工程を実施する。これらの工程については、説明を省略する。次に、カバーコート層30、グランド回路22及び絶縁性基材層10を貫通し、銅層23に到達する複数のスルーホール61を形成する。すなわち、複数のスルーホール61を、グランド回路22aも貫通し、グランド回路22aに沿って、X軸方向(一方向)に間隔を空けて並ぶように形成する。また、複数のスルーホール61を、グランド回路22bも貫通し、グランド回路22bに沿って、X軸方向(一方向)に間隔を空けて並ぶように形成する。
【0093】
次に、カバーコート層30の上面に、電磁波シールドシート40における導電性接着剤が形成された面を貼りつける。次に、熱プレスによって、電磁波シールドシート40の導電性接着剤をスルーホール61内に充填させる。その後、電磁波シールドシート40の導電性接着剤及びスルーホール61内の導電性接着剤を硬化させる。これにより、スルーホール61内の導電性接着剤は硬化してビア60が形成される。また、電磁波シールドシート40の導電性接着剤は硬化して導電性接着剤層41になる。このようにして、
図13に示すフレキシブルプリント配線板6が製造される。本実施形態に係るフレキシブルプリント配線板6の効果は、実施形態2及び5と同様である。
【0094】
(実施形態7)
次に、実施形態7に係るフレキシブルプリント配線板を説明する。
図14は、実施形態7に係るフレキシブルプリント配線板を例示した断面図である。
図14に示すように、本実施形態に係るフレキシブルプリン配線板7は、両面FCCL80を用いたものであり、実施形態4に係るフレキシブルプリント配線板4における電磁波シールドシート50の代わりに、銅層23が設けられたものである。銅層23は、絶縁性基材層10の下面に全面に設けられている。フレキシブルプリント配線板7のグランド回路22は、ビア60と信号回路21との間に設けられている。絶縁性基材層10及びカバーコート層30を貫通したビア60は、導電性接着剤層41(第2導電層)と銅層23(第1導電層)とを接続している。なお、フレキシブルプリント配線板7には、ビア60とは異なるビアであって、導電性接着剤層41と銅層23とを接続するとともにグランド回路22に接続する少なくとも1つの図示しないビアが設けられている。これにより、導電性接着剤層41及び銅層23はアースに接続される。これ以外の構成は、実施形態2と同様である。
【0095】
次に、実施形態7に係るフレキシブルプリント配線板7の製造方法を説明する。
先ず、前述の第5の実施形態と同様に、
図12(a)〜
図12(c)に示す工程を実施する。これらの工程については、説明を省略する。次に、−Y軸方向側のグランド回路22aから−Y軸方向側に離れた位置において、X軸方向(一方向)に沿って間隔を空けて並び、カバーコート層30の上面から絶縁性基材層10の下面まで貫通し、銅層23に到達する複数のスルーホール61と、+Y軸方向側のグランド回路22bから+Y軸方向側に離れた位置において、X軸方向(一方向)に沿って間隔を空けて並び、カバーコート層30の上面から絶縁性基材層10の下面まで貫通し、銅層23に到達する複数のスルーホール61を形成する。
【0096】
次に、カバーコート層30の上面に、電磁波シールドシート40における導電性接着剤が形成された面を貼りつける。次に、熱プレスによって、電磁波シールドシート40の導電性接着剤をスルーホール61内に充填させる。その後、電磁波シールドシート40の導電性接着剤及びスルーホール61内の導電性接着剤を硬化させる。これにより、スルーホール61内の導電性接着剤は硬化してビア60が形成される。また、電磁波シールドシート40の導電性接着剤は硬化して導電性接着剤層41になる。このようにして、
図14に示すフレキシブルプリント配線板7が製造される。本実施形態に係るフレキシブルプリント配線板7の効果は、実施形態4及び5と同様である。
【0097】
(実施形態8)
次に、実施形態8に係るフレキシブルプリント配線板8について説明する。
図15は、実施形態8に係るフレキシブルプリント配線板を例示した断面図である。
図15に示すように、本実施形態に係るフレキシブルプリン配線板8は、両面FCCL80を用いたものであり、両面FCCL80における一方の面11に信号回路21及びグランド回路22が設けられるとともに、一方の面11の反対側の他方の面12にも信号回路21及びグランド回路22が設けられている。また、他方の面12の信号回路21は、一方の面11の信号回路21の下方に位置し、他方の面12のグランド回路22は、一方の面11のグランド回路22の下方に位置している。
そして、他方の面12側においても、一方の面11側と同様に、絶縁性基材層10に近い順に、絶縁性接着剤層31、カバーレイ32、導電性接着剤層51、絶縁層52が積層されている。絶縁性接着剤層31及びカバーレイ32は、カバーコート層30を構成し、導電性接着剤層51及び絶縁層52は、電磁波シールドシート50を構成している。
【0098】
複数のビア60は、一方の面11側におけるカバーコート層30、絶縁性基材層10及び他方の面12側におけるカバーコート層30を貫通したスルーホール61内に設けられている。また、複数のビア60は、導電性接着剤層41と、導電性接着剤層51とを接続している。
【0099】
複数のビア60は、信号回路21の−Y軸方向側に配置されたグランド回路22aと信号回路21との間において、X軸方向(一方向)に沿って間隔を空けて並んだ列(第1のビアの列)と、信号回路21の+Y軸方向側に配置されたグランド回路22bと信号回路21との間において、X軸方向(一方向)に沿って間隔を空けて並んだ列(第2のビアの列)とを有している。信号回路21は、第1のビア60の列と第2のビア60の列との間に配置されている。また、第1のビア60の列は、信号回路21とグランド回路22aとの間に配置され、第2のビアの列は、信号回路21とグランド回路22bとの間に配置されている。なお、フレキシブルプリント配線板8には、ビア60とは異なるビアであって、導電性接着剤層41と導電性接着剤層51とを接続するとともにグランド回路22に接続する少なくとも1つの図示しないビアが設けられている。これにより、導電性接着剤層41及び51はアースに接続される。これ以外の構成は、実施形態1及び5と同様である。
【0100】
次に、実施形態8に係るフレキシブルプリント配線板8の製造方法を説明する。
図16は、実施形態8に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法を例示した工程図であり、(a)〜(c)は、断面図を示し、(d)は、端面図を示す。
図16(a)に示すように、まず、両面FCCL80を用意する。両面FCCL80は、絶縁性基材層10の一方の面11に回路パターン20が設けられ、他方の面12に銅層23が設けられたものである。
【0101】
次に、
図16(b)に示すように、両面FCCL80における回路パターン20を加工して、信号回路21及びグランド回路22を形成する。また、銅層23を加工して信号回路21及びグランド回路22を形成する。
【0102】
次に、
図16(c)に示すように、絶縁性基材層10の一方の面11側の信号回路21及びグランド回路22上にカバーコート層30を形成する。また、他方の面12側の信号回路21及びグランド回路22の下方に、カバーコート層30を形成する。両面側とも信号回路21及びグランド回路22を覆う部分を有するようにカバーコート層30を形成する。カバーコート層30を形成する際には、カバーレイ32の片面に絶縁性接着剤層31を形成し、絶縁性接着剤層31を形成させた面で信号回路21及びグランド回路22を覆う部分を有するようにカバーレイ32を貼り付ける。なお、カバーコート層30を形成する場合には、一方の面11側からカバーコート層30を形成してもよいし、他方の面12側からカバーコート層30を形成してもよい。同時に形成してもよい。
【0103】
次に、
図16(d)に示すように、信号回路21とグランド回路22との間において、一方の面11側のカバーコート層30、絶縁性基材層10及び他方の面12側のカバーコート層30を貫通する複数のスルーホール61を形成する。複数のスルーホール61を、信号回路21の−Y軸方向側に配置されたグランド回路22aと信号回路21との間にX軸方向に沿って間隔を空けて並んだ列(第1のスルーホールの列)と、信号回路21の+Y軸方向側に配置されたグランド回路22bと信号回路21との間にX軸方向に沿って間隔を空けて並んだ列(第2のスルーホールの列)となるように形成する。すなわち、複数のスルーホール61を、信号回路21が、第1のスルーホールの列と、第2のスルーホールの列との間に配置されるように形成する。また、信号回路21の両側において、第1のスルーホールの列と、第2のスルーホールの列とが配置される。
【0104】
次に、一方の面11側のカバーコート層30の上面に、電磁波シールドシート40の導電性接着剤が形成された面を貼りつける。また、他方の面12側のカバーコート層30の下面に電磁波シールドシート50の導電性接着剤が形成された面を貼りつける。次に、熱プレスによって、電磁波シールドシート40及び50の導電性接着剤をスルーホール61内に充填させる。その後、電磁波シールドシート40及び50の導電性接着剤及びスルーホール61内の導電性接着剤を硬化させる。これにより、
図15に示すように、スルーホール61内の導電性接着剤は硬化してビア60が形成される。また、電磁波シールドシート40及び50の導電性接着剤は硬化して導電性接着剤層41及び51になる。このようにして、
図15に示すフレキシブルプリント配線板8が製造される。
【0105】
本実施形態によれば、絶縁性基材層10の他方の面12側にも信号回路21及びグランド回路を設けることができる。これにより、フレキシブルプリント配線板8の集積度を向上させることができる。その他の効果は、実施形態1及び5と同様である。
【0106】
(実施形態9)
次に、実施形態9に係るフレキシブルプリント配線板9を説明する。
図17は、実施形態9に係るフレキシブルプリント配線板9を例示した断面図である。
図17に示すように、フレキシブルプリント配線板9は、両面FCCL80を用いたものであり、フレキシブルプリント配線板8とは、複数のビア60の位置が異なっている。
【0107】
フレキシブルプリント配線板9において、複数のビア60は、一方の面11側のカバーコート層30、一方の面11側のグランド回路22、絶縁性基材層10、他方の面12側のグランド回路22及び他方の面12側のカバーコート層30を貫通したスルーホール61内に設けられている。また、複数のビア60は、導電性接着剤層41と、導電性接着剤層51とを接続している。
【0108】
複数のビア60は、一方の面11側及び他方の面12側のグランド回路22に沿って、X軸方向に間隔を空けて並んで設けられている。すなわち、複数のビア60は、一方の面11側及び他方の面12側のグランド回路22aを貫通し、グランド回路22aに沿って、X軸方向(一方向)に間隔を空けて並んだ列(第1のビアの列)と、一方の面11側及び他方の面12側のグランド回路22bを貫通し、グランド回路22bに沿って、X軸方向(一方向)に間隔を空けて並んだ列(第2のビアの列)を有している。それ以外の構成は、実施形態2、6及び8と同様である。
【0109】
次に実施形態9に係るフレキシブルプリント配線板9の製造方法を説明する。先ず、前述の第8の実施形態と同様に、
図16(a)〜
図16(c)に示す工程を実施する。これらの工程については、説明を省略する。次に、一方の面11側のカバーコート層30、一方の面11側のグランド回路22、絶縁性基材層10、他方の面12側のグランド回路22及び他方の面12側のカバーコート層30を貫通する複数のスルーホール61を形成する。すなわち、複数のスルーホール61を、一方の面11側及び他方の面12側のグランド回路22aも貫通し、グランド回路22aに沿って、X軸方向(一方向)に間隔を空けて並ぶように形成する。また、複数のスルーホール61を、一方の面11側及び他方の面12側のグランド回路22bも貫通し、グランド回路22bに沿って、X軸方向(一方向)に間隔を空けて並ぶように形成する。
【0110】
次に、一方の面11側のカバーコート層30の上面に、電磁波シールドシート40の導電性接着剤が形成された面を貼りつける。また、他方の面12側のカバーコート層30の下面に電磁波シールドシート50の導電性接着剤が形成された面を貼りつける。次に、熱プレスによって、電磁波シールドシート40及び50の導電性接着剤をスルーホール61内に充填させる。その後、電磁波シールドシート40及び50の導電性接着剤及びスルーホール61内の導電性接着剤を硬化させる。これにより、
図17に示すように、スルーホール61内の導電性接着剤は硬化してビア60が形成される。また、電磁波シールドシート40及び50の導電性接着剤は硬化して導電性接着剤層41及び51になる。このようにして、
図17に示すフレキシブルプリント配線板9が製造される。本実施形態に係るフレキシブルプリント配線板9の効果は、実施形態2、6及び8と同様である。
【0111】
(実施形態10)
次に、実施形態10に係るフレキシブルプリント配線板を説明する。
図18は、実施形態10に係るフレキシブルプリント配線板を例示した断面図である。
図18に示すように、本実施形態に係るフレキシブルプリン配線板
9aは、両面FCCL80を用いたものであり、フレキシブルプリント配線板8とは、複数のビア60の位置が異なっている。
【0112】
フレキシブルプリント配線板
9aにおいて、複数のビア60は、一方の面11側のカバーコート層30、絶縁性基材層10、及び他方の面12側のカバーコート層30を貫通したスルーホール61内に設けられている。また、複数のビア60は、導電性接着剤層41と、導電性接着剤層51とを接続している。
【0113】
複数のビア60は、−Y軸方向側のグランド回路22aから−Y軸方向側に離れた位置において、X軸方向(一方向)に沿って間隔を空けて並んだ列(第1のビアの列)と、+Y軸方向側のグランド回路22bから+Y軸方向側に離れた位置において、X軸方向(一方向)に沿って間隔を空けて並んだ列(第2のビアの列)とを有している。よって、グランド回路22aは、信号回路21と第1のビアの列との間に配置され、グランド回路22bは、信号回路21と第2のビアの列との間に配置される。なお、フレキシブルプリント配線板
9aには、ビア60とは異なるビアであって、導電性接着剤層41と導電性接着剤層51とを接続するとともにグランド回路22に接続する少なくとも1つの図示しないビアが設けられている。これにより、導電性接着剤層41及び導電性接着剤層51はアースに接続される。これ以外の構成は、実施形態4、7及び8と同様である。
【0114】
実施形態10に係るフレキシブルプリント配線板
9aの製造方法においては、スルーホール61を形成する位置が異なる以外は実施形態8と同様である。すなわち、スルーホール61を、−Y軸方向側のグランド回路22aから−Y軸方向側に離れた位置において、X軸方向(一方向)に沿って間隔を空けて並び、一方の面11側のカバーコート層30、絶縁性基材層10及び他方の面12側のカバーコート層30を貫通するように形成するとともに、+Y軸方向側のグランド回路22bから+Y軸方向側に離れた位置において、X軸方向(一方向)に沿って間隔を空けて並び、一方の面11側のカバーコート層30、絶縁性基材層10及び他方の面12側のカバーコート層30を貫通するように形成する。本実施形態の効果は、実施形態4、7及び8と同様である。
【0115】
次に、フレキシブルプリント配線板において、ビア60の隙間から漏れ出す放射ノイズをシミュレーションした結果を示す
【0116】
図19は、ビア60が信号回路21とグランド回路22との間に配置されたフレキシブルプリント配線板において、信号回路に伝送される信号の周波数が1[GHz]の場合にビアの隙間から漏れ出す放射ノイズをシミュレーションした結果を例示した図であり、(a)は、ビア間隔が47[mm]であり、(b)は、ビア間隔が7[mm]であり、(c)は、ビア間隔が3[mm]であり、(d)は、ビア間隔が1[mm]である。
【0117】
図20は、ビア60が信号回路21とグランド回路22との間に配置されたフレキシブルプリント配線板において、信号回路に伝送される信号の周波数が10[GHz]の場合にビアの隙間から漏れ出す放射ノイズをシミュレーションした結果を例示した図であり、(a)は、ビア間隔が47[mm]であり、(b)は、ビア間隔が7[mm]であり、(c)は、ビア間隔が3[mm]であり、(d)は、ビア間隔が1[mm]である。
【0118】
図19及び
図20で示すシミュレーションに用いられるフレキシブルプリント配線板は、例えば、実施形態1及び5のフレキシブルプリント配線板に相当する。
図19及び
図20に示すように、ビア60の隙間から漏れ出す放射ノイズの量を、黒から白のコントラストで示す。白い部分が放射ノイズの大きい部分である。中央の線の部分は、信号回路21を示し、信号回路21の両側の線の部分は、グランド回路22を示す。
【0119】
シミュレーションにおける信号回路21、グランド回路22及びビア60のY軸方向の幅を1[mm]、信号回路21とビア60との間の距離及びグランド回路22とビア60との間の距離を0.5[mm]、ビア60のX軸方向の幅を1[mm]としている。また、フレキシブルプリント配線板のY軸方向の長さを10[mm]、X軸方向の長さを50[mm]としている。
【0120】
絶縁性基材層10に相当する部分は、ポリイミドフィルム(厚さ12.5[μm]、誘電率3.5、誘電正接0.007)、絶縁性接着剤(厚さ25[μm]、誘電率3.4、誘電正接0.021)及びポリイミドフィルム(厚さ25[μm]、誘電率3.5、誘電正接0.007)を含むものとしている。カバーコート層30に相当する部分は、ポリイミドフィルム(厚さ12.5[μm]、誘電率3.5、誘電正接0.007)及び絶縁性接着剤(厚さ25[μm]、誘電率3.4、誘電正接0.021)を含むものとしている。導電性接着剤層41及び51の厚さを13[μm]としている。グランド回路22の導電率を5.80E+07としている。
また、シミュレーションは、グランド回路22の最端部にグランド設置した条件で行った。
【0121】
図19(a)に示すように、信号回路21に伝送される信号の周波数が1[GHz]の場合において、ビア間隔が47[mm]の場合には、信号回路21から見て−Y軸方向側に2つのビア60が設定され、+Y軸方向側に2つのビア60が設定されている。信号回路21とビア60を結ぶ線との間がグレー色(一部白もあり)となっており、ビア60の隙間から漏れ出す放射ノイズは、わずかである。
【0122】
このように、信号回路21とビア60を結ぶ線との間がグレー色(一部白もあり)の場合には、ビア60の隙間から漏れ出す放射ノイズはわずかで許容範囲内として、フレキシブルプリント配線板の評価をAとする。
【0123】
図19(b)に示すように、ビア間隔が7[mm]の場合には、信号回路21から見て−Y軸方向側に7つのビア60が設定され、+Y軸方向側に7つのビア60が設定されている。信号回路21とビア60を結ぶ線との間全面が濃いグレーとなっており、ビア60の隙間から漏れ出す放射ノイズは、無視できる程度まで小さくなっている。このように、信号回路21とビア60を結ぶ線との間全面が濃いグレーの場合には、ビア60の隙間から漏れ出す放射ノイズは、無視できるとして、フレキシブルプリント配線板の評価をA+とする。
【0124】
図19(c)に示すように、ビア間隔が3[mm]の場合には、信号回路21から見て−Y軸方向側に13個のビア60が設定され、+Y軸方向側に13個のビア60が設定されている。
【0125】
図19(d)に示すように、ビア間隔が1[mm]の場合には、信号回路21から見て−Y軸方向側に25個のビア60が設定され、+Y軸方向側に25個のビア60が設定されている。
図19(c)及び(d)においても、ビア60の隙間から漏れ出す放射ノイズは、無視できる程度まで小さくなっている。
図19(c)及び(d)に示すフレキシブルプリント配線板の評価はA+である。
【0126】
一方、
図20(a)及び(b)に示すように、信号回路に伝送される信号の周波数が10[GHz]の場合において、ビア間隔が47[mm]及び7[mm]の場合には、信号回路21とビア60を結ぶ線との間が完全に白色となっており、ビア60の隙間から漏れ出す放射ノイズは、許容値よりも大きくなっている。このように、信号回路21とビア60を結ぶ線との間が完全に白色の場合には、ビア60の隙間から漏れ出す放射ノイズは、許容値よりも大きいとして、フレキシブルプリント配線板の評価をBとする。
【0127】
図20(c)及び(d)に示すように、ビア間隔が3[mm]及び1[mm]の場合には、ビア60の隙間から漏れ出す放射ノイズは、無視できる程度まで小さくなっている。
図20(c)及び(d)に示すフレキシブルプリント配線板の評価はA+である。
【0128】
信号回路に伝送される信号の周波数を1[GHz]及び10[GHz]の他、5[GHz]及び20[GHz]の場合についてもシミュレーションを行った(シミュレーション1)。
【0129】
また、ビア60が、グラウンド回路22に接続したフレキシブルプリント配線板(実施形態2、3及び6に相当)において、信号回路に伝送される信号の周波数が1[GHz]、5[GHz]、10[GHz] 及び20[GHz]の場合に、ビアの隙間から漏れ出す放射ノイズのシミュレーションを行った(シミュレーション2)。
【0130】
さらに、ビア60が、グランド回路22及び信号回路21を囲むように配置したフレキシブルプリント配線板(実施形態4及び7に相当)において、信号回路に伝送される信号の周波数が1[GHz]、5[GHz]、10[GHz] 及び20[GHz]の場合にビアの隙間から漏れ出す放射ノイズのシミュレーションを行った(シミュレーション3)。
【0131】
図21(a)は、信号回路に伝送される信号の周波数を1[GHz]、5[GHz]、10[GHz]及び20[GHz]とし、ビア間隔を47[mm]、7[mm]、3[mm]及び1[mm]とした場合のビアの隙間から漏れ出す放射ノイズのシミュレーション結果を例示した図である。上述のように、放射ノイズの漏れ出しによるフレキシブルプリント配線板のシミュレーション評価結果を、見た目による官能評価を用いてA+、A及びBで分類した。シミュレーション1〜3に示す結果は、
図21に示す通りであり、シミュレーション1〜3において、顕著な差は見られないものであった。
【0132】
図21(a)に示すように、信号回路21に伝送される信号の周波数を1[GHz]とした場合には、ビア間隔が47[mm]において、放射ノイズはわずかであり、許容値よりも小さく(A)、ビア間隔が7[mm]、3[mm]及び1[mm]において、放射ノイズは、無視できる程度まで小さい(A+)。
【0133】
信号回路21に伝送される信号の周波数を5[GHz]とした場合には、ビア間隔が47[mm]において、放射ノイズは、許容値よりも大きく(B)、ビア間隔が7[mm]において、放射ノイズはわずかであり、許容値よりも小さく(A)、ビア間隔が3[mm]及び1[mm]において、放射ノイズは、無視できる程度まで小さい(A+)。
【0134】
信号回路21に伝送される信号の周波数を10[GHz]とした場合には、ビア間隔が47[mm]及び7[mm]において、放射ノイズは、許容値よりも大きく(B)、ビア間隔が3[mm]及び1[mm]において、放射ノイズは、無視できる程度まで小さい(A+)。
【0135】
信号回路21に伝送される信号の周波数を20[GHz]とした場合には、ビア間隔が47[mm]及び7[mm]において、放射ノイズは、許容値よりも大きく(B)、ビア間隔が3[mm]において、放射ノイズはわずかであり、許容値よりも小さく(A)、ビア間隔が1[mm]において、放射ノイズは、無視できる程度まで小さい(A+)。
【0136】
図21(b)は、シミュレーションの結果により求めた必要なビア間隔を例示した図である。
図21(b)に示すように、信号回路21に伝送される信号の周波数を1[GHz]とした場合には(波長は300[mm])、放射ノイズの影響を抑制するために必要なビア間隔は、47[mm]である。信号回路21に伝送される信号の周波数を5[GHz](波長は60[mm])、10[GHz](波長は30[mm])及び20[GHz](波長は15[mm])とした場合には、放射ノイズの影響を抑制するために必要なビア間隔は、それぞれ、7[mm]、3[mm]及び3[mm]である。
【0137】
図22(a)は、信号回路に伝送される信号の周波数と放射ノイズの影響を抑制するために必要なビア間隔との関係を例示したグラフであり、横軸は、周波数を示し、縦軸は、ビア間隔を示し、(b)は、信号回路に伝送される信号の波長と放射ノイズの影響を抑制するために必要なビア間隔との関係を例示したグラフであり、横軸は、波長を示し、縦軸は、ビア間隔を示す。
【0138】
図22(a)に示すように、シミュレーション1〜3により求めた信号回路を伝送する信号の周波数と必要なビア間隔をフィッティングすることにより、X軸方向において隣り合うビアの間隔をY[mm]とし、信号回路に伝送する信号の周波数をf[GHz]として、以下の関係式(3)を導くことができる。相関係数Rは、0.9437である。
【0139】
<数3> Y=40.25・f
−0.98・・・(3)
【0140】
また、
図22(b)に示すように、シミュレーション1〜3により求めた信号回路を伝送する信号の波長と必要なビア間隔をフィッティングすることにより、X軸方向において隣り合うビアの間隔をY[mm]とし、信号回路を伝送する信号の波長をX[mm]として、以下の関係式(4)を導くことができる。相関係数Rは0.9959である。
【0141】
<数4> Y=0.16・X−1.17・・・(4)
【0142】
したがって、
図22(b)に示すように、放射ノイズの影響を抑制するためには、以下の式(5)を満たすようなビアの間隔で、ビアを配置することが望ましい。
【0143】
<数5> Y≦0.16・X−1.17・・・(5)
【0144】
なお、シミュレーションにおいて、絶縁性基材層10の厚さを62.5μm、カバーコート層30の厚さを37.5μmとしている。よって、導電性接着剤層41と導電性接着剤層51との間隔(実施形態1〜4のプリン配線板の場合)または導電性接着剤層41と銅層23との間隔(実施形態5〜7の場合)よりもビアの間隔の方が格段と大きい。したがって、放射ノイズの漏れ出しは、上下の導電層の間隔よりもビア間隔に依存するものと考えられる。
【0145】
また、ビア間隔が47[mm]、7[mm]、3[mm]及び1[mm]のときのビアのX軸方向の幅は1[mm]である。よって、ビア間隔が47[mm]、7[mm]、3[mm]及び1[mm]の場合には、X軸方向において隣り合うビア60の間隔は、ビア60のX軸方向における幅に対して47倍、7倍、3倍及び1倍に対応する。さらに、信号回路21を伝送する信号の波長が15[mm]、30[mm]、60[mm]及び300[mm]の場合には、信号回路21を伝送する信号の波長は、ビア60のX軸方向における幅に対して15倍、30倍、60倍及び300倍に対応する。
【0146】
以下にシミュレーションより得られた結果を説明する。
ビア60のX軸方向における幅が略1[mm]の条件にて、信号回路21を伝送する信号の波長が、15[mm]〜300[mm]であるとき、信号回路21を伝送する信号の波長が、ビア60のX軸方向における幅に対して15〜300倍であるとき、放射ノイズの漏れを抑制することができた。
【0147】
また、ビア60のX軸方向における幅が略1[mm]の条件にて、X軸方向において隣り合うビア60の間隔が、1[mm]〜3[mm]であるとき、X軸方向において隣り合うビア60の間隔が、ビア60のX軸方向における幅に対して1〜3倍であるとき、放射ノイズの漏れを抑制することができた。
【0148】
さらに、ビア60のX軸方向における幅が略1[mm]の条件にて、X軸方向において隣り合うビア60の間隔が、略1[mm]であるとき、X軸方向において隣り合うビア60の間隔が、ビア60のX軸方向における幅に対して略1倍であるとき、放射ノイズの漏れを抑制することができた。
【0149】
また、ビア60のX軸方向における幅が略1[mm]の条件にて、信号回路21を伝送する信号の波長が、60[mm]〜300[mm]であるとき、信号回路21を伝送する信号の波長が、ビア60のX軸方向における幅に対して60〜300倍であるとき、放射ノイズの漏れを抑制することができた。
【0150】
また、ビア60のX軸方向における幅が略1[mm]の条件にて、X軸方向において隣り合うビア60の間隔が、1[mm]〜7[mm]であるとき、X軸方向において隣り合うビア60の間隔が、ビア60のX軸方向における幅に対して1〜7倍であるとき、放射ノイズの漏れを抑制することができた。
【0151】
さらに、ビア60のX軸方向における幅が略1[mm]の条件にて、信号回路21を伝送する信号の波長が、略300[mm]であるとき、信号回路21を伝送する信号の波長が、ビア60のX軸方向における幅に対して略300倍であるとき、放射ノイズの漏れを抑制することができた。
【0152】
ビア60のX軸方向における幅が略1[mm]の条件にて、X軸方向において隣り合うビア60の間隔が、1[mm]〜47[mm]であるとき、X軸方向において隣り合うビア60の間隔が、ビア60のX軸方向における幅に対して1〜47倍であるとき、放射ノイズの漏れを抑制することができた。
【0153】
シミュレーション1において、信号回路21とビアとの間の距離は、0.5[mm]である。シミュレーション2において、信号回路21とビアとの間の距離は、2.0[mm]である。シミュレーション3において、信号回路21とビアとの間の距離は、3.5[mm]である。シミュレーション1〜3の結果に顕著な差がなかったことより、信号回路21とビア60との間の距離が、0.5[mm]〜3.5[mm]の範囲では、波長とビア間隔の上記の式が成立するものと考えられる。
【0154】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、実施形態1の変形例に係る電磁波シールドシート40aを実施形態1に係るフレキシブルプリント配線板1以外のフレキシブルプリント配線板2〜10に適用してもよい。また、シミュレーション結果における信号回路21を伝送する信号の波長及びX軸方向において隣り合うビア60の間隔の数値範囲は、
図21及び22の記載から最適な値を適用することができる。
【0155】
例えば、周波数が略1[GHz](波長300[mm])のときには、ビアの間隔は、47[mm]〜1[mm]が好ましく、7[mm]〜1[mm]であるとさらに好ましい。また、周波数が略5[GHz](波長60[mm])のときには、ビアの間隔は、7[mm]〜1[mm]が好ましく、3[mm]〜1[mm]であるとさらに好ましい。これらのような場合に、周波数の範囲を広げて、周波数が略1〜5[GHz](波長60〜300[mm])のときには、ビアの間隔は、7[mm]〜1[mm]が好ましく、3[mm]〜1[mm]であるとさらに好ましいということができることは当然のことである。
図21及び
図22の他の数値についても、適宜最適な数値範囲を選択して適用することができる。
【0156】
また、本発明のフレキシブルプリント配線板が接続された電子機器は、フレキシブルプリント配線板から放射される高周波ノイズを効果的に抑制すると同時に、外部からの高周波ノイズを遮蔽することができる。
【0157】
本明細書で示した実施形態において、ビア60の間隔が等間隔でなくてもよい。また、信号回路21を挟む第1のビアの列と第2のビアの列とが同じ間隔となっていなくてもよい。このようにすることで、共振を抑制することができる。
【0158】
本明細書中で示した周波数は、真空中の波長で記載されている。
【課題】放射ノイズを抑制することができ、フレキシブル性を向上させることができるフレキシブルプリント配線板、フレキシブルプリント配線板の製造方法及び電子機器を提供する。
【解決手段】本発明に係るフレキシブルプリント配線板は、導電性接着剤層51と、導電性接着剤層51上に設けられた絶縁性基材層10と、絶縁性基材層10上に設けられ、一方向に延びた部分を有する信号回路21と、絶縁性基材層10及び信号回路21上に設けられたカバーコート層30と、カバーコート層30上に設けられた導電性接着剤層41と、カバーコート層30の上面から絶縁性基材層10の下面まで貫通し、導電性接着剤層41と導電性接着剤層51とを接続する導電性の複数のビア60と、を備え、ビア60の間隔をYとし、信号回路21を伝送する信号の波長をXとしたときにY≦0.16・X−1.17を満たすものである。