特許第6142983号(P6142983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6142983
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】作業車両の走行伝動制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 48/02 20060101AFI20170529BHJP
【FI】
   F16D48/02 640P
   F16D48/02 640R
【請求項の数】2
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-278027(P2012-278027)
(22)【出願日】2012年12月20日
(65)【公開番号】特開2014-122650(P2014-122650A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2015年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078031
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 皓一
(74)【代理人】
【識別番号】100200942
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 高史
(74)【代理人】
【識別番号】100077779
【弁理士】
【氏名又は名称】牧 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100078260
【弁理士】
【氏名又は名称】牧 レイ子
(74)【代理人】
【識別番号】100086450
【弁理士】
【氏名又は名称】菊谷 公男
(74)【代理人】
【識別番号】100175891
【弁理士】
【氏名又は名称】原 一敬
(72)【発明者】
【氏名】近藤 友明
(72)【発明者】
【氏名】楫野 豊
(72)【発明者】
【氏名】村上 徹司
【審査官】 渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平2−3767(JP,A)
【文献】 特開平1−156147(JP,A)
【文献】 特開2000−213569(JP,A)
【文献】 特開2003−343713(JP,A)
【文献】 特開平11−190367(JP,A)
【文献】 実開昭54−46957(JP,U)
【文献】 特開昭62−231841(JP,A)
【文献】 特開2000−329165(JP,A)
【文献】 特開平5−312223(JP,A)
【文献】 特開2010−78104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 25/00− 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通に動力を受ける正転と逆転の2系統の走行伝動系にそれぞれ多板式のクラッチ(C1,C2)を介設し、これら両クラッチ(C1,C2)の一方を前後進切替レバー(43)の発進操作に応じて選択するとともに、所定の発進接続時間(T0)で中立圧から伝動圧まで上記クラッチ(C1,C2)を昇圧する発進昇圧特性(P0)により昇圧制御する作業車両の走行伝動制御装置において、
上記発進接続時間(T0)より長い逆行接続時間(T1)で昇圧する逆行昇圧特性(P1)を設けるとともに、上記前後進切替レバー(43)の操作が走行中の作業車両の走行方向と逆方向の場合に限り、上記逆行昇圧特性(P1)により選択側のクラッチ(C1,C2)を昇圧制御する構成を備え、かつ、
前記クラッチ(C1,C2)の接続制御について、円滑なクラッチ接続操作に適合する所定の昇圧パターンで昇圧制御するクラッチペダルレートリミッタ処理を設け、微速移動を含む停車状態におけるクラッチペダル(51)の戻し操作の検出時に、その操作速度が所定速度より遅い時に限り、上記クラッチペダルレートリミッタ処理を適用する構成を備えることを特徴とする作業車両の走行伝動制御装置。
【請求項2】
さらに、前記クラッチ(C1,C2)の接続制御について、作業車両の走行中、前後進のクラッチの無圧検出から所定時間が経過したことを条件として、前記クラッチペダルレートリミッタ処理を適用する構成を備えることを特徴とする請求項1に記載の作業車両の走行伝動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レバー等の操作に応じて前後進切換えを行う作業車両の走行伝動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
作業機の走行伝動装置の前後進切換部は、特許文献1に示すように、共通に動力を受ける正転と逆転の2系統にそれぞれ多板式のクラッチを介設し、両クラッチのオフによる中立と、一方の選択による正転または逆転の伝動出力を行う。各クラッチは、中立位置からのレバー操作に応じて選択側のクラッチを所定パターンで昇圧して発進制御することにより、切換えた前後進方向への円滑な発進を可能として所定車速の走行に移行する。したがって、所定の車速で前後進走行を繰返す圃場の整地作業に際しては、中立位置へのレバー操作による走行停止を経由して逆方向へのレバー操作によって急発進を避けつつ、所定車速で効率よく作業を進めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−184990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、作業車両の走行中において、中立位置へのレバー操作による走行停止を待たずにレバーを逆行側に操作した場合は、クラッチの対応作動によって逆転側の動力に切り替ることから、低速の作業走行中であっても大きな走行ショックが避けられず、その結果、搭乗オペレータの身体的ショックによる疲労のみならず、車両機器に対する衝撃により故障を誘引するという問題があった。
【0005】
本発明の課題は、作業車両の走行中におけるレバーの逆行操作によっても走行ショックを招くことなく、円滑な逆行切換えによる走行を可能とすることにより、所定車速で前後進走行を繰返す圃場整地作業等を効率よく行うことができる作業車両の走行伝動制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、共通に動力を受ける正転と逆転の2系統の走行伝動系にそれぞれ多板式のクラッチ(C1,C2)を介設し、これら両クラッチ(C1,C2)の一方を前後進切替レバー(43)の発進操作に応じて選択するとともに、所定の発進接続時間(T0)で中立圧から伝動圧まで上記クラッチ(C1,C2)を昇圧する発進昇圧特性(P0)により昇圧制御する作業車両の走行伝動制御装置において、上記発進接続時間(T0)より長い逆行接続時間(T1)で昇圧する逆行昇圧特性(P1)を設けるとともに、上記前後進切替レバー(43)の操作が走行中の作業車両の走行方向と逆方向の場合に限り、上記逆行昇圧特性(P1)により選択側のクラッチ(C1,C2)を昇圧制御する構成を備え、かつ、前記クラッチ(C1,C2)の接続制御について、円滑なクラッチ接続操作に適合する所定の昇圧パターンで昇圧制御するクラッチペダルレートリミッタ処理を設け、微速移動を含む停車状態におけるクラッチペダル(51)の戻し操作の検出時に、その操作速度が所定速度より遅い時に限り、上記クラッチペダルレートリミッタ処理を適用する構成を備えることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2記載の発明は、さらに、前記クラッチ(C1,C2)の接続制御について、作業車両の走行中、前後進のクラッチの無圧検出から所定時間が経過したことを条件として、前記クラッチペダルレートリミッタ処理を適用する構成を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明により、前後進切替レバー(43)の発進操作時は、選択側のクラッチ(C1,C2)が所定の発進昇圧特性(P0)により昇圧制御されて正転と逆転の2系統の走行伝動系が切換えられ、また、車両走行中に切替レバー(43)を逆行側に操作した場合は、選択側のクラッチ(C1,C2)が逆行昇圧特性(P1)によって昇圧制御されることから、走行停止時の切替レバー操作による速やかな発進走行を確保しつつ、走行中の逆行操作では、大きな走行ショックを招くことなく、円滑に逆行走行に移行することができる。加えて、ペダルの戻し操作の速度が所定速度より遅い時に限り、クラッチペダルレートリミッタ処理が適用されて円滑に発進制御されることから、クラッチペダル(51)の操作速度により急発進と円滑発進との切替えができるので、オペレータの意思を確実に反映して発進することができる。
【0010】
請求項2に係る発明により、クラッチ切断直後におけるクラッチペダルレートリミッタ処理による接続の遅延による違和感を回避しつつ、走行中のクラッチ切断後の再接続の際にスムーズにクラッチが接続されてフィーリングを向上することができる
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施例の整地作業車の全体側面図
図2】ミッションケースの内部構成図
図3】伝動系統展開線図
図4】運転操作機器配置図
図5】制御システムブロック図
図6】クラッチ接続昇圧カーブの一例
図7】逆転制御例1のフローチャート
図8】クラッチ接続昇圧カーブの他の例
図9】安全停止のための制御処理例のフローチャート
図10】異常対応処理例のフローチャート
図11】異常報知処理例のフローチャート
図12】クラッチペダルによる発進制御例のフローチャート
図13】クラッチペダルによる他の制御例のフローチャート
図14】走行中の制御例のフローチャート
図15】作業機の昇降制御システム構成ブロック図
図16】作業機の昇降制御例のフローチャート
図17】作業機上昇出力対応の制御例のフローチャート
図18】作業機が上限位置にある場合の制御例のフローチャート
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に示す実施例を参照しながら説明する。
本発明の適用対象となる作業車両は、図1に全体側面図を示すように、エンジン4から変速装置5を介して左右の操舵前輪2,2と左右の後輪3,3を2WD/4WD切替可能に駆動し、機体後部のPTO軸40から作業機Wを駆動可能に構成され、これら走行系および作業系の操作具をキャビン9に内設する。
【0014】
(伝動系)
図2図3は、変速装置5のミッションケース12内の伝動機構13とその伝動線図である。変速装置5は、ミッションケース12と、このミッションケース12内に配置されてエンジン4から後輪3等へ回転動力を伝達する伝動機構13とを含んで構成される。伝動機構13は、エンジン4からの回転動力を前輪2、後輪3、及び、機体に装着した作業機に伝達し、これらをエンジン4からの回転動力によって駆動するものである。
【0015】
具体的には、伝動機構13は、入力軸14、前後進切替機構15、高低変速機構としてのHi−Lo変速機構16、主変速機構17、副変速機構18、2WD/4WD切替機構19、PTO(Power take−off)駆動機構20等を含んで構成される。
【0016】
伝動機構13は、エンジン4が発生させた回転動力を入力軸14、前後進切替機構15、Hi−Lo変速機構16、主変速機構17、副変速機構18を順に介して後輪3に伝達することができる。また、伝動機構13は、エンジン4が発生させた回転動力を入力軸14、前後進切替機構15、Hi−Lo変速機構16、主変速機構17、副変速機構18、2WD/4WD切替機構19を順に介して前輪2に伝達することができる。さらに、伝動機構13は、エンジン4が発生させた回転動力を入力軸14、PTO駆動機構20を順に介して作業機に伝達することができる。
【0017】
入力軸14は、エンジン4の出力軸に結合されており、エンジン4からの回転動力が伝達(入力)される。
【0018】
(前後進切替)
前後進切替機構15は、エンジン4から伝達された回転動力を、前進方向回転又は後進方向回転に切り替え可能なものである。前後進切替機構15は、前進側ギヤ段15a、後進側ギヤ段15b、逆転ギヤ15c、油圧多板クラッチ(前進クラッチ)C1、油圧多板クラッチ(後進クラッチ)C2を含んで構成される。
油圧多板クラッチC1、C2は、係合/解放状態を切り替えることで前後進切替機構15における動力の伝達経路を切り替え可能である。前後進切替機構15は、油圧多板クラッチC1、C2の係合/解放状態に応じて入力軸14に伝達された回転動力を、伝達経路を変えてカウンタ軸21に伝達する。前後進切替機構15は、油圧多板クラッチC1が係合状態、油圧多板クラッチC2が解放状態である場合に、入力軸14に伝達された回転動力を、前進側ギヤ段15a、油圧多板クラッチC1を介して前進方向回転でカウンタ軸21に伝達する。前後進切替機構15は、油圧多板クラッチC1が解放状態、油圧多板クラッチC2が係合状態である場合に、入力軸14に伝達された回転動力を後進側ギヤ段15b、逆転ギヤ15c、油圧多板クラッチC2を介して後進方向回転で、カウンタ軸21に伝達する。これにより、前後進切替機構15は、トラクタ1の前後進を切り替えることができる。
また、前後進切替機構15は、メインクラッチとしても機能し、油圧多板クラッチC1、C2を共に解放状態とすることで、ニュートラル状態となり、前輪2、後輪3側への動力伝達を遮断することができる。前後進切替機構15は、例えば、作業員によって前後進切替レバー43が操作されることで油圧制御によって前進、後進、ニュートラルを切り替えることができる。また、クラッチペダル51を踏み込み操作することで油圧多板クラッチC1、C2を共に解放状態にできる。
【0019】
Hi−Lo変速機構16は、エンジン4から伝達された回転動力を、高速段又は低速段で変速可能なものである。Hi−Lo変速機構16は、Hi(高速)側ギヤ段16a、Lo(低速)側ギヤ段16b、油圧多板クラッチ(Hi(高速)側クラッチ)C3、油圧多板クラッチ(Lo(低速)側クラッチ)C4を含んで構成される。油圧多板クラッチC3、C4は、係合/解放状態を切り替えることでHi−Lo変速機構16における動力の伝達経路を切り替え可能である。Hi−Lo変速機構16は、油圧多板クラッチC3、C4の係合/解放状態に応じて、カウンタ軸21に伝達された回転動力を、伝達経路を変えて変速軸22に伝達する。Hi−Lo変速機構16は、油圧多板クラッチC3が係合状態、油圧多板クラッチC4が解放状態である場合に、カウンタ軸21に伝達された回転動力を、油圧多板クラッチC3、Hi側ギヤ段16aを介して変速して変速軸22に伝達する。Hi−Lo変速機構16は、油圧多板クラッチC3が解放状態、油圧多板クラッチC4が係合状態である場合に、カウンタ軸21に伝達された回転動力を、油圧多板クラッチC4、Lo側ギヤ段16bを介して変速して変速軸22に伝達する。これにより、Hi−Lo変速機構16は、エンジン4からの回転動力をHi側ギヤ段16aの変速比、あるいは、Lo(低速)側ギヤ段16bの変速比で変速して後段に伝達することができる。Hi−Lo変速機構16は、例えば、作業員によってHi−Lo切替スイッチ(高低変速操作スイッチ)44(図7参照)がオン/オフされることで油圧制御によってHi(高速)側、Lo(低速)側を切り替えることができ、高速と低速の2段のうちのいずれかで変速することができる。また、Hi−Lo変速機構16は、上記の構成によりトラクタ1の走行中に変速可能である。
【0020】
主変速機構17は、エンジン4から伝達された回転動力を、複数の変速段のいずれかで変速可能である。主変速機構17は、シンクロメッシュ式の変速機構であり、ここでは、エンジン4から前後進切替機構15、及び、Hi−Lo変速機構16を介して伝達される回転動力を変速可能である。主変速機構17は、複数の変速段として第1速ギヤ段17a、第2速ギヤ段17b、第3速ギヤ段17c、第4速ギヤ段17d、第5速ギヤ段17e、第6速ギヤ段17fを含んで構成される。主変速機構17は、第1速ギヤ段17a〜第6速ギヤ段17fの変速軸22との結合状態に応じて、変速軸22に伝達された回転動力を、第1速ギヤ段17a〜第6速ギヤ段17fのいずれかを介して変速して変速軸23に伝達する。これにより、主変速機構17は、エンジン4からの回転動力を第1速ギヤ段17a〜第6速ギヤ段17fのいずれかの変速比で変速して後段に伝達することができる。主変速機構17は、例えば、作業員によって主変速操作レバー45が操作されることで複数の変速段のうちの1つを選択し切り替えることができ、第1速ギヤ段17a〜第6速ギヤ段17fの6段のうちのいずれかで変速することができる。また、主変速機構17は、上記の構成によりトラクタ1の走行中に変速可能である。
【0021】
副変速機構18は、エンジン4から前後進切替機構15、Hi−Lo変速機構16、及び、主変速機構17を順に介して伝達される回転動力を変速可能である。副変速機構18は、第1副変速機24、第2副変速機25等を含んで構成され、変速軸23に伝達された回転動力を、第1副変速機24、第2副変速機25等を介して変速して変速軸26に伝達する。第1副変速機24は、エンジン4から伝達され主変速機構17等で変速された回転動力を高速段又は低速段で変速して駆動輪である後輪3側に伝達可能である。第2副変速機25は、エンジン4から伝達され主変速機構17等で変速された回転動力を第1副変速機24よりもさらに低速の極低速段で変速して駆動輪である後輪3側に伝達可能である。
【0022】
副変速機構18の第1副変速機24は、第1ギヤ24a、第2ギヤ24b、第3ギヤ24c、第4ギヤ24d、シフタ24eを含んで構成される。第1ギヤ24aは、変速軸23と一体回転可能に結合され変速軸23からの回転動力が伝達(入力)される。第2ギヤ24bは、第1ギヤ24aと噛み合っている。第3ギヤ24cは、第2ギヤ24bと一体回転可能に結合されている。第4ギヤ24dは、第3ギヤ24cと噛み合っている。シフタ24eは、第1ギヤ24a、第4ギヤ24dと変速軸26との結合状態を切り替えるものである。シフタ24eは、第1ギヤ24aと変速軸26とを一体回転可能に結合するHi(高速)側位置、第4ギヤ24dと変速軸26とを一体回転可能に結合するLo(低速)側位置、第1ギヤ24a、第4ギヤ24dのいずれもが変速軸26と結合せず、解放される中立位置(ニュートラル位置)に移動可能である。第1副変速機24は、シフタ24eの位置に応じて、変速軸23に伝達された回転動力を、伝達経路を切り替えて変速軸26に伝達する。第1副変速機24は、シフタ24eがHi側位置にある場合、変速軸23に伝達された回転動力を、第1ギヤ24aから、第2ギヤ24b、第3ギヤ24c、第4ギヤ24dを介さずに、変速軸26に伝達する(変速軸23→第1ギヤ24a→変速軸26と伝達される)。第1副変速機24は、シフタ24eがLo側位置にある場合、変速軸23に伝達された回転動力を、第1ギヤ24aから第2ギヤ24b、第3ギヤ24c、第4ギヤ24d、シフタ24eを介して順次減速して変速軸26に伝達する。これにより、第1副変速機24は、エンジン4からの回転動力を、第2ギヤ24b、第3ギヤ24c、第4ギヤ24dを介さないHi(高速)側の変速比、あるいは、第2ギヤ24b、第3ギヤ24c、第4ギヤ24dを介したLo(低速)側の変速比で変速して後段に伝達することができる。また、第1副変速機24は、シフタ24eが中立位置にある場合、第1ギヤ24a、第4ギヤ24dのいずれもが変速軸26に対して空転する状態、すなわち、ニュートラルの状態となる。第1副変速機24は、例えば、作業員によって第1副変速操作レバー49が操作されることで、シフタ24eの位置が切り替えられてHi(高速)側、Lo(低速)側、ニュートラルを切り替えることができる。
【0023】
副変速機構18の第2副変速機25は、第1ギヤ25a、第2ギヤ25b、第3ギヤ25c、第4ギヤ25d、シフタ25eを含んで構成される。第1ギヤ25aは、第4ギヤ24dと一体回転可能に結合されている。第2ギヤ25bは、第1ギヤ25aと噛み合っている。第3ギヤ25cは、第2ギヤ25bと一体回転可能に結合されている。第4ギヤ25dは、第3ギヤ25cと噛み合っている。シフタ25eは、第4ギヤ25dと変速軸26との結合状態を切り替えるものである。シフタ25eは、第4ギヤ25dと変速軸26とを一体回転可能に結合する極Lo(極低速)側位置、第4ギヤ25dと変速軸26とが結合されず、解放される中立位置(ニュートラル位置)に移動可能である。第2副変速機25は、シフタ25eの位置に応じて、変速軸23に伝達された回転動力を、伝達経路を切り替えて変速軸26に伝達する。第2副変速機25は、第1副変速機24がニュートラルの状態で、シフタ25eが極Lo側位置にある場合、変速軸23に伝達された回転動力を、第1副変速機24の第1ギヤ24aから、第2ギヤ24b、第3ギヤ24c、第4ギヤ24d、第2副変速機25の第1ギヤ25a、第2ギヤ25b、第3ギヤ25c、第4ギヤ25d、シフタ25eを介して順次減速して変速軸26に伝達する。これにより、第2副変速機25は、エンジン4からの回転動力を、第2ギヤ24b、第3ギヤ24c、第4ギヤ24d、第1ギヤ25a、第2ギヤ25b、第3ギヤ25c、第4ギヤ25dを介した極Lo(極低速)側の変速比で変速して後段に伝達することができる。また、第2副変速機25は、シフタ25eが中立位置にある場合、第4ギヤ25dが変速軸26に対して空転する状態、すなわち、ニュートラルの状態となる。第2副変速機25は、上記第1副変速機24がHi(高速)側、又は、Lo(低速)側となっている場合には、ニュートラルの状態とされる。第2副変速機25は、例えば、作業員によって第2副変速操作レバー50が操作されることで、シフタ25eの位置が切り替えられて極Lo(極低速)側、ニュートラルを切り替えることができる。
【0024】
したがって、副変速機構18は、変速軸23に伝達された回転動力を、第1副変速機24と第2副変速機25とを組み合わせることで、高速と低速と極低速の3段のうちのいずれかで変速して変速軸26に伝達することができる。すなわち、副変速機構18は、第1副変速機24がHi(高速)側、第2副変速機25がニュートラルの状態となっている場合には、Hi(高速)段で変速することができる。副変速機構18は、第1副変速機24がLo(低速)側、第2副変速機25がニュートラルの状態となっている場合には、Lo(低速)段で変速することができる。副変速機構18は、第1副変速機24がニュートラルの状態、第2副変速機25が極Lo(極低速)側となっている場合には、極Lo(極低速)段で変速することができる。副変速機構18は、トラクタ1が停車している状態で高速、低速、極低速が切り替えられる。
【0025】
そして、変速装置5の伝動機構13は、変速軸26に伝達された回転動力を、後輪デフ27、車軸(ドライブシャフト)28、遊星歯車機構29等を介して後輪3に伝達する。この結果、トラクタ1は、後輪3がエンジン4からの回転動力により駆動輪として回転駆動する。
【0026】
以上の説明を要約すると、入力軸14の回転は、まず前後進切替機構15で正転又は逆転に切り替えられ、Hi−Lo変速機構16で高速と低速の2段のうちのいずれかで変速され、主変速機構17で第1速ギヤ段17a〜第6速ギヤ段17fの6段のうちのいずれかで変速され、さらに副変速機構18で高速と低速と極低速の3段のうちのいずれかで変速されて、車軸28に伝達される。すなわち、入力軸14の回転は、変速装置5の伝動機構13によって、2×6×3=36段のいずれかで変速されて車軸28へ伝動される。
【0027】
2WD/4WD切替機構19は、変速軸26に伝達された回転動力を、前輪2側に伝達するか否かを切り替えるものである。2WD/4WD切替機構19は、伝達軸19a、第1ギヤ19b、第2ギヤ19c、伝達軸19d、シフタ19e含んで構成される。伝達軸19aは、変速軸26からの回転動力が、ギヤ30、ギヤ31、伝達軸32、カップリング33等を介して伝達(入力)される。第1ギヤ19bは、伝達軸19aが挿入され、当該伝達軸19aに対して相対回転可能に組み付けられる。第2ギヤ19cは、第1ギヤ19bと噛み合っている。伝達軸19dは、第2ギヤ19cと一体回転可能に結合されている。シフタ19eは、伝達軸19aと第1ギヤ19bとの結合状態を切り替えるものである。シフタ19eは、伝達軸19aと第1ギヤ19bとを一体回転可能に結合する4WD位置、伝達軸19aと第1ギヤ19bとが結合されず、解放される2WD位置(ニュートラル位置)に移動可能である。2WD/4WD切替機構19は、シフタ19eが4WD位置にある場合、伝達軸19aに伝達された回転動力を、第1ギヤ19b、第2ギヤ19cを介して伝達軸19dに伝達する。これにより、2WD/4WD切替機構19は、エンジン4からの回転動力を前輪2側に伝達することができる。変速装置5の伝動機構13は、伝達軸19dに伝達された回転動力を、前輪デフ34、車軸(ドライブシャフト)35、垂直軸36、遊星歯車機構37等を介して前輪2に伝達する。この結果、トラクタ1は、前輪2及び後輪3がエンジン4からの回転動力により駆動輪として回転駆動し、四輪駆動で走行することができる。2WD/4WD切替機構19は、シフタ19eが2WD位置にある場合、伝達軸19aに伝達された回転動力の伝達軸19d側への動力伝達が遮断される。この結果、トラクタ1は、二輪駆動で走行することができる。2WD/4WD切替機構19は、例えば、作業員によって2WD/4WD切替レバー46が操作されることで、シフタ19eの位置が切り替えられて、二輪駆動、四輪駆動を切り替えることができる。
【0028】
(PTO)
PTO駆動機構20は、エンジン4から伝達される回転動力を変速して機体後部のPTO軸40から作業機に出力することで、エンジン4からの動力によって作業機を駆動するものである。PTO駆動機構20は、PTOクラッチ機構38、PTO変速機構39、PTO軸40等を含んで構成される。
【0029】
PTOクラッチ機構38は、PTO軸40側への動力の伝達と遮断とを切り替えるものである。PTOクラッチ機構38は、ギヤ38a、油圧多板クラッチC5、伝達軸38bを含んで構成される。ギヤ38aは、入力軸14と一体回転可能に結合されたギヤ41と噛み合っている。油圧多板クラッチC5は、係合/解放状態が切り替わることで、ギヤ38aと伝達軸38bとの間の動力の伝達状態を切り替えるものである。PTOクラッチ機構38は、油圧多板クラッチC5が係合状態となることでPTO軸40側へ動力を伝達するPTO駆動状態となり、入力軸14からギヤ41を介してギヤ38aに伝達された回転動力を、油圧多板クラッチC5を介して伝達軸38bに伝達する。PTOクラッチ機構38は、油圧多板クラッチC5が解放状態となることでPTO軸40側への動力の伝達が遮断されたPTO非駆動状態(ニュートラル状態)となり、ギヤ38aに伝達された回転動力の伝達軸38b側への伝達が遮断される。PTOクラッチ機構38は、例えば、作業員によってPTO切替スイッチ47がオン/オフされることで油圧制御によってPTO駆動状態、PTO非駆動状態を切り替えることができる。なお、このトラクタ1は、ギヤ38aと噛み合うギヤ70a、当該ギヤ70aと噛み合うギヤ70b等を介してギヤポンプ70が設けられている。ギヤポンプ70は、伝動機構13等の油圧系統に油圧を付与するものである。
【0030】
PTO変速機構39は、PTO軸40側に動力を伝達する際に変速を行うものである。PTO変速機構39は、Hi(高速)側ギヤ段39a、Lo(低速)側ギヤ段39b、伝達軸39c、シフタ39dを含んで構成さる。PTO変速機構39は、シフタ39dの位置に応じて、伝達軸38bに伝達された回転動力を、Hi側ギヤ段39a、あるいは、Lo側ギヤ段39bを介して変速して、伝達軸39cに伝達する。シフタ39dは、Hi側ギヤ段39a、Lo側ギヤ段39bと伝達軸39cとの結合状態を切り替えるものである。シフタ39dは、Hi側ギヤ段39aと伝達軸39cとを結合するHi(高速)側位置、Lo側ギヤ段39bと伝達軸39cとを結合するLo(低速)側位置、Hi側ギヤ段39a、Lo側ギヤ段39bのいずれもが伝達軸39cと結合せず、解放される中立位置(ニュートラル位置)に移動可能である。PTO変速機構39は、シフタ39dがHi側位置にある場合、伝達軸38bに伝達された回転動力を、Hi側ギヤ段39aを介して伝達軸39cに伝達する。PTO変速機構39は、シフタ39dがLo側位置にある場合、伝達軸38bに伝達された回転動力を、Lo側ギヤ段39bを介して伝達軸39cに伝達する。これにより、PTO変速機構39は、エンジン4からの回転動力を、Hi側ギヤ段39aの変速比、あるいは、Lo側ギヤ段39bの変速比で変速して後段に伝達することができる。また、PTO変速機構39は、シフタ39dが中立位置にある場合、Hi側ギヤ段39a、Lo側ギヤ段39bのいずれもが伝達軸39cに対して空転する状態、すなわち、ニュートラルの状態となる。PTO変速機構39は、例えば、作業員によって後述のPTO変速操作レバー48が操作されることで、シフタ39dの位置が切り替えられてHi(高速)側、Lo(低速)側、ニュートラルを切り替えることができ、高速と低速の2段のうちのいずれかで変速することができる。
【0031】
PTO軸40は、作業機が結合され、エンジン4からの回転動力を作業機に伝達するものである。PTO軸40は、伝達軸39cに伝達された回転動力が第1ギヤ41、第2ギヤ42等を介して伝達されることで回転駆動する。
【0032】
以上の説明を要約すると、入力軸14の回転は、PTOクラッチ機構38を介してPTO変速機構39に伝達され、このPTO変速機構39で高速と低速の2段のうちのいずれかで変速されて、PTO軸40に伝達され、このPTO軸40を回転駆動する。この結果、トラクタ1は、エンジン4から伝達される回転動力を変速してPTO軸40から作業機に出力し、作業機を駆動することができる。
【0033】
(運転操作部)
トラクタ1は、図4に示すように、キャビン9内や機体後部1Rに各種操作レバーが配置されている。トラクタ1は、キャビン9内に、前後進切替レバー43、Hi−Lo切替スイッチ44、主変速操作レバー45、2WD/4WD切替レバー46、PTO切替スイッチ47が設けられる。また、トラクタ1は、機体後部1RにPTO変速操作レバー48が設けられる。前後進切替レバー43は、前後進切替機構15の前後進切替操作を行うものであり、作業員がこの前後進切替レバー43を操作することで、前後進切替機構15を前進、後進、ニュートラルに切り替えることができる。Hi−Lo切替スイッチ44は、Hi−Lo変速機構16のHi−Lo変速操作(高低変速操作)を行うものであり、作業員がこのHi−Lo切替スイッチ44を操作することで、Hi−Lo変速機構16を高速、低速に切り替えることができる。主変速操作レバー45は、主変速機構17の主変速操作を行うものであり、作業員がこの主変速操作レバー45を操作することで、主変速機構17を第1速ギヤ段17a〜第6速ギヤ段17fの6段のうちのいずれか、あるいは、ニュートラルに切り替えることができる。2WD/4WD切替レバー46は、2WD/4WD切替機構19の2WD/4WD切替操作を行うものであり、作業員がこの2WD/4WD切替レバー46を操作することで、2WD/4WD切替機構19を二輪駆動、四輪駆動に切り替えることができる。PTO切替スイッチ47は、PTOクラッチ機構38のクラッチ切替操作を行うものであり、作業員がこのPTO切替スイッチ47を操作することで、PTOクラッチ機構38をPTO駆動状態、PTO非駆動状態に切り替えることができる。PTO変速操作レバー48は、PTO変速機構39のPTO変速操作を行うものであり、作業員がこのPTO変速操作レバー48を操作することで、PTO変速機構39を高速、低速、ニュートラルに切り替えることができる。
【0034】
そして、本実施形態のトラクタ1は、副変速機構18の第1副変速機24の第1副変速操作を行う第1副変速操作レバー49と、副変速機構18の第2副変速機25の第2副変速操作を行う第2副変速操作レバー50とが別個に設けられることで、汎用性の向上を図っている。第1副変速操作レバー49、第2副変速操作レバー50は、ともにキャビン9内に設けられる。本実施形態のトラクタ1は、例えば、副変速機構18において、第1副変速機24に対して第2副変速機25を後付で追加することで変速段(例えば、極低速段)を追加可能に構成し、この第2副変速機25の追加による変速段を操作する第2副変速操作レバー50を第1副変速操作レバー49とは別個に設ける。
【0035】
(制御系)
制御系の構成は、ブロック図を図5に示すように、クラッチペダル51の操作を検出するクラッチペダルセンサ51p、リニアレバーと略称される前後進切替レバー43の選択信号、クラッチペダルスイッチ51s、クラッチペダルリレー入力51rおよび、車速その他のセンサー信号をコントローラCに入力し、これらの入力条件に応じて前後進切替機構15を切替え駆動する前後進クラッチC1,C2のソレノイド出力と、その昇圧制御用の比例ソレノイドであるリニア昇圧ソレノイド15c、その他の機器を制御可能に構成する。
【0036】
(前後進切替制御)
前後進切替制御は、走行中に前後進切替レバー43を逆行方向に急速操作したときに、激しいショックを生じないように、発進時に適用するクラッチ昇圧カーブによることなく、別途設定した逆行操作用のクラッチ接続昇圧カーブを適用して円滑に逆行動作するように昇圧制御する。
【0037】
詳細には、クラッチ接続昇圧カーブの一例を図6に示すように、発進時に適用するためのクラッチ昇圧カーブとして、所定の発進接続時間T0で伝動接続に至る発進昇圧特性P0と、逆行操作時に適用するために、上記発進接続時間T0を越える逆行接続時間T1で伝動接続に至る逆行昇圧特性P1とを切替え可能に構成した上で、条件に応じてクラッチ昇圧カーブを切替える制御処理を設ける。
【0038】
切替え制御は、逆転制御例1のフローチャートを図7に示すように、切替レバー43が中立でないことの判定を行う第一の処理ステップ(以下において、「S1」の如く略記する。)により該当判定の場合、すなわち、前進または後進の場合について、一定時間以内(例えば500ms内)の前後進の切替えの判定(S2)がされた場合に、長時間の逆行接続時間T1で伝動接続に至る逆行昇圧特性P1に切替え、また、前後進の切替え判定(S2)に該当しない場合に、発進接続時間T0で伝動接続に至る発進昇圧特性P0を適用する。
【0039】
このように制御処理を構成することにより、前後進切替レバー43を中立位置から急速操作した場合は、選択側のクラッチが発進昇圧特性P0により昇圧制御され、また、車両走行中に切替レバー43を逆行側に急速操作した場合は、選択側のクラッチが逆行昇圧特性P1によって長い逆行接続時間T1を経て昇圧制御されることから、停車時の切替レバー操作による円滑な発進走行を確保しつつ、走行中の逆行操作では、大きな走行ショックを招くことなく、円滑な逆走行に移行することができる。
【0040】
また、クラッチ接続昇圧カーブの他の例を図8に示すように、伝動接続直前の圧力増分について、発進時に適用するために所定の発進接続増分H0の昇圧を経て接続後に所定の接続圧まで昇圧する発進昇圧特性P0と、逆行操作時に適用するために発進接続増分H0より大なる逆行接続増分H2の昇圧を経て接続後の昇圧無しを含む小幅の昇圧による逆行昇圧特性P2とを切替え可能に構成した上で、前記同様の切替え制御を行うことにより、大なる逆行接続増分H2の昇圧を経て接続後の昇圧幅が小さく抑えられることから、発進伝動時の急激な接続増圧による走行ショックが緩和されて前記同様の効果を得ることができる。
この圧力増分の切替えと前述の接続時間の切替えとの適宜の組合わせにより、前後進切替え操作時の走行ショックのさらなる緩和が可能である。
【0041】
(停車制御)
次に、安全停止制御について説明する。
安全停止のための制御処理例のフローチャートを図9に示すように、クラッチペダル51の非操作によりペダルスイッチがオフの場合(S11)に、前後進切替レバー43の中立判定(S12)により中立位置であればその範囲でクラッチソレノイド出力オンによって動力を遮断(S13a)する制御処理を設ける。この制御処理により、切替レバー43の中立操作で確実に停止することができる。したがって、切替ソレノイドの出力をオフにして停止させようとしても、バルブ故障によって停止できないという危険な事態を回避して安全停止を確保することができる。
【0042】
また、バルブ異常の発生時は、異常対応処理例のフローチャートを図10に示すように、クラッチソレノイド出力がONの場合(S21)において、クラッチリレー入力がオフ(S22)であればその範囲で昇圧ソレノイド出力オフによって動力を遮断(S23a)する制御処理を設けることにより、安全停止が可能となることから、クラッチソレノイド出力の断線によって動力遮断できないという危険な事態を回避することができる。
【0043】
この場合において、異常報知処理例のフローチャートを図11に示すように、クラッチソレノイド出力がオンの場合(S31)に、クラッチリレー入力がオフ(S32)であればその範囲でブザーにより異常発報(S33a)する制御処理を設けることにより、前後進切替レバー43を中立操作するとブザーによりシステム異常を知ることができるので、迅速な対処が可能となる。
【0044】
(ペダル対応制御)
次に、ペダル操作の対応制御について説明する。
停車状態からクラッチペダル51を戻して発進するためのクラッチの接続制御について、円滑なクラッチ接続操作に適合する所定の昇圧パターンで昇圧制御するクラッチペダルレートリミッタ処理を適用可能に設け、クラッチペダル51による発進制御例のフローチャートを図12に示すように、クラッチペダル51の戻し操作が検出された場合(S41)に車速が0km/h近傍範囲の実質的な停車状態(S42)であれば、クラッチペダルレートリミッタ処理を適用(S43a)する制御処理を設けることにより、クラッチペダル操作に煩わされることなく円滑な発進が可能となるので、車速設定や作業機設定の調整によって新たな作業条件による作業走行に迅速に対応することができる。
【0045】
また、クラッチペダル51による他の制御例のフローチャートを図13に示すように、クラッチペダル51の戻し操作が検出された場合(S51)に、その操作速度が遅い時、例えば、500msの間の戻し操作量が所定量以下の時(S52)に限り、クラッチペダルレートリミッタ処理を適用(S53a)する制御処理を設けることにより、オペレータの意思を反映して確実に発進切替えが可能となる。
【0046】
また、走行中の取扱いについては、その制御例のフローチャートを図14に示すように、前後進のクラッチの無圧検出(S61)により、所定時間の経過、例えば5秒間の経過(S62)の後について、クラッチペダルレートリミッタ処理の適用(S63a)を可能とする制御処理を設けることにより、クラッチ切断直後におけるクラッチペダルレートリミッタ処理による接続の遅延による違和感を回避しつつ、走行中のクラッチ切断後の再接続の際にスムーズにクラッチが接続されてフィーリングを向上することができる。
【0047】
(作業機対応制御)
次に、作業機の昇降制御について説明する。
作業機Wの昇降制御システムは、そのブロック図を図15に示すように、リフトアームによる昇降機構61を駆動する上昇下降ソレノイド出力をコントローラCによって制御可能に、かつ、比例ソレノイドによって昇降速度を制御可能に構成し、コントロールレバーセンサ62s等による上昇下降の手動操作信号、およびその他の関係するセンサー信号を入力することにより、コントロールレバー62の操作およびその他の条件に応じて作業機Wを昇降制御可能に構成する。
【0048】
具体的な昇降制御は、そのフローチャートを図16に示すように、作業機下降出力が検出された場合(S71)において、その後に所定時間が経過した時、例えば10秒経過時(S72)に作業機の微少下降出力(S73a)を行うバルブ固着対応のための制御処理を設ける。
【0049】
上記微少下降出力は、作業機が移動しない範囲、例えば、50msの微少時間の下降出力、または、0.8Aの微少電流の下降出力を繰返すことにより、油圧バルブのスプールの長期停止による固着によって下降動作不能となる事態を防止することができので、次の下降出力に対応する下降動作を確保することができる。
【0050】
また、作業機上昇出力と競合する場合の制御については、その制御例のフローチャートを図17に示すように、上記微少下降出力要求(S81)があった場合に、作業機上昇出力(S82)と競合しない範囲で、微少下降出力(S83a)を行う制御処理を設けることにより、作業機上昇の一時的停止によるおかしな挙動を防止することができる。
【0051】
また、作業機が上限位置にある場合の制御例のフローチャートを図18に示すように、上記微少下降出力要求(S91)があった場合に、作業機が上限位置に達して作業機上昇出力中の時(S92)に限り上昇出力を中断(S93a)した上で微少下降出力を行う制御処理を設けることにより、上限位置におけるバルブ固着を防止することができる。
【符号の説明】
【0052】
15 前後進切替機構
43 前後進切替レバー
51 クラッチペダル
C1 前進クラッチ
C2 後進クラッチ
H0 発進接続増分
H2 逆行接続増分
P0 発進昇圧特性
P1 逆行昇圧特性
P2 逆行昇圧特性
T0 発進接続時間
T1 逆行接続時間
S43 クラッチペダルレートリミッタ処理
図1
図2
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