特許第6142992号(P6142992)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6142992-海流発電装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6142992
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】海流発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03B 13/26 20060101AFI20170529BHJP
   F03B 13/10 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   F03B13/26
   F03B13/10
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-89441(P2013-89441)
(22)【出願日】2013年4月22日
(65)【公開番号】特開2014-214604(P2014-214604A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年2月23日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度から平成24年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「風力等自然エネルギー技術研究開発/海洋エネルギー技術研究開発/次世代海洋エネルギー発電技術研究開発(水中浮遊式海流発電)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【弁理士】
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】山根 善行
(72)【発明者】
【氏名】半田 典久
【審査官】 佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−099433(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/147118(WO,A1)
【文献】 特開2000−064940(JP,A)
【文献】 特開2001−248532(JP,A)
【文献】 特開2006−063967(JP,A)
【文献】 特開平09−060575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 13/26
F03B 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海流を受けて回転する水平軸型のタービンと、
前記タービンの回転により発電する発電機を備えた海流発電装置において、
少なくとも該海流発電装置自体の運用に必要な電力を得るための発電を行う補助発電部を備え
海流の流れに沿うポッドを有し、前記ポッドの下流側端部に前記タービンが配置されると共に該ポッド内に前記発電機が収容され、
前記補助発電部は、前記タービンよりも直径が小さく設定されて海流を受けて回転する水平軸型の補助タービンと、この補助タービンの回転により発電する補助発電機を具備し、前記補助タービンは、前記ポッドの上流側端部に配置され、前記補助発電機は、前記ポッド内に収容されている
ことを特徴とする海流発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海流(潮流)を受けて回転するタービンを有する発電部を備えた浮上及び沈降可能な水中浮遊式の海流発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、海流(潮流)等の海水の流れを利用して発電を行う海流発電装置が開発されている。
このような海水の流れを利用して発電を行う海流発電装置としては、例えば、特許文献1に記載されたものがあり、この海流発電装置は、いわゆる双発の水中浮遊式発電装置であって、海流を受けて回転する水平軸型のタービンと、このタービンの回転により発電する発電機と、これらの発電機同士を並列に連結する連結ビームと、この連結ビームで一体化された一対の発電機を海底に係留する係留索を備えている。
【0003】
この海流発電装置では、タービンの破損や、一体化された一対の発電機の振れ回りを回避するべく、設定深度で運用を開始するまではタービンを停止させるようにしているため、運用開始までに電力の消費を伴う作業を行う場合には、送電系統を給電に使って電源を取得したり、搭載したバッテリから電源を得たりするようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-266743号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記したような水中浮遊式の海流発電装置において、送電系統を給電に使って電源を取得する場合には、当然の如く送電系統が電源供給源に接続されていなくてはならず、独立した状態では使用することができない。また、配線するうえで様々な機器や制約が必要になるという問題がある。
【0006】
また、従来の海流発電装置において、搭載したバッテリから電源を得る場合には、バッテリ容量を少なくすれば電力不足となり、一方、バッテリ容量を大きくすれば装置全体の重量バランスに悪影響を及ぼしかねないという問題を有しており、これらを解決することが従来の課題となっている。
【0007】
本発明は、上記した従来の課題に着目してなされたもので、送電系統を外部電力供給源として接続したり、大容量のバッテリを搭載したりすることなく、本格発電開始までに必要な電力を補うことができる海流発電装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明の請求項1に係る発明では、海流を受けて回転する水平軸型のタービンと、前記タービンの回転により発電する発電機を備えた海流発電装置において、少なくとも該海流発電装置自体の運用に必要な電力を得るための発電を行う補助発電部を備え、海流の流れに沿うポッドを有し、前記ポッドの下流側端部に前記タービンが配置されると共に該ポッド内に前記発電機が収容され、前記補助発電部は、前記タービンよりも直径が小さく設定されて海流を受けて回転する水平軸型の補助タービンと、この補助タービンの回転により発電する補助発電機を具備し、前記補助タービンは、前記ポッドの上流側端部に配置され、前記補助発電機は、前記ポッド内に収容されている構成としたことを特徴としており、この構成の海流発電装置を前述した従来の課題を解決するための手段としている。
【0009】
ここで、海流を受けて回転する水平軸型のタービンには、直径約数十mのものが用いられ、このタービンの回転により発電する発電機は、水深数十m程度の位置にて係留され、いわゆる双発の水中浮遊式発電装置の場合、発電容量はおおよそ数MWである。なお、この発電容量は仕様等の違いに応じて上下する。
【0010】
本発明に係る海流発電装置では、少なくとも装置自体の運用に必要な電力を得るための発電を行う補助発電部を備えているので、外部から電力供給を受けたり、バッテリを搭載したりすることなく、本格発電開始までに必要な電力を補い得ることとなる。加えて、本格発電を開始した後の通常の運用時において補助発電部を用いれば、装置全体の出力の増加に貢献し得ることとなる。
【0012】
この場合、タービンのブレードの根本側(根本からブレードの長さ寸法の2〜3割の範囲)は、通常断面円形状に形成されるので発電に寄与しない。したがって、補助発電部の補助タービンの直径は、この発電に寄与しない範囲に収まる程度に設定することが望ましい。
【0013】
また、本発明の請求項に係る海流発電装置では、発電機と補助発電部の補助発電機とが互いに独立しているので、ポッド内での電気的取り回しが容易なものとなる。
【0014】
さらに、本発明の請求項に係る海流発電装置では、補助発電部の補助タービンの直径が、タービンよりも小さく設定されているので、タービンの発電効率に及ぼす影響が少なくて済むうえ、この補助発電部の補助タービンによる発電時には、この発電に伴うポッド側への負荷が少ない分だけ、装置全体のバランスが崩れることが回避される。
【0015】
加えて、補助発電部の補助タービンの直径が小さく設定されているので、比較的堅牢な構造を採用し得ることとなり、その結果、海面にて浮沈を繰り返す状況において回転させたとしても、強度的に支障を来す虞が少ないこととなる。
【0016】
さらにまた、本発明の請求項に係る海流発電装置では、ポッドの下流側端部にタービンや発電機が配置される一方で、ポッドの上流側端部に補助タービンや補助発電機が配置されるので、重量がポッドの下流側に集中して、重心が下流側に偏ることが少なからず回避されることとなる。
【0017】
さらにまた、本発明の請求項に係る海流発電装置では、双発の水中浮遊式発電装置の場合に、補助発電部における左右の補助タービンのトルクバランスを制御すれば、左右のタービンの微妙なトルクバランスのズレを補正し得ることとなり、この際、補助発電部で発電した電力をトルクバランス制御に使用することで、左右のタービンの発電効率の低下を阻止し得ることとなる。
【0018】
本発明の参考例に係る海流発電装置は、海流の流れに沿い且つ並列状態で連結ビームにより互いに連結される一対のポッドを有し、前記一対のポッドに前記タービンがそれぞれ配置されると共に該一対のポッド内に前記発電機がそれぞれ収容され、前記補助発電部は、海流を受けて回転する垂直軸型の補助タービンと、この垂直軸型の補助タービンの回転により発電する補助発電機を具備し、前記垂直軸型の補助タービンは、前記連結ビームに配置され、前記補助発電機は、前記連結ビーム内又は前記ポッド内に収容されている構成としている。
【0019】
本発明の参考例に係る海流発電装置は、垂直軸型の補助タービンが連結ビームに配置されているので、タービンの発電効率に及ぼす影響がより一層少なくて済むこととなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る海流発電装置では、送電系統の外部電力供給源への接続や、大容量のバッテリの搭載を必要とすることなく、本格発電開始までに必要な電力を補うことが可能であり、加えて、装置全体の供給電力量を増加させることができると共に、水平軸型のタービン及び補助発電部を海流の下流側及び上流側に互いに分けて配置することで、重量バランスを改善することが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施例による海流発電装置を示す全体斜視説明図である。
図2】本発明の他の実施例による海流発電装置の補助発電部における補助タービンを示す斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る海流発電装置の一実施例を示している。
【0023】
図1に示すように、この海流発電装置1は、いわゆる双発の水中浮遊式発電装置であって、白抜き矢印で示す海流を受けて回転する水平軸型のタービン3を有する一対のポッド4,4と、これらのポッド4,4同士を並列に連結する連結ビーム5を具備した装置本体2を備えていると共に、この装置本体2を図示しない海底に係留する2本の係留索6,6を備えており、タービン3は、海流の流れに沿う一対のポッド4,4の各下流側(図示左側)に配置されている。
【0024】
一対のポッド4,4の各下流側端部には、タービンシャフト7と連結する発電機9がそれぞれ内蔵されており、これらのポッド4,4の各タービン3,3は、各々の回転トルクを相殺するべく互いに反対方向に回転する。なお、タービンシャフト7と発電機9との間には、必要に応じて増速機を介在させることができる。
【0025】
この場合、一対のポッド4,4の各上流側(図示右側)端部には、補助発電部10,10がそれぞれ配置されている。この補助発電部10は、海流を受けて回転する水平軸型の補助タービン11と、タービンシャフト12と連結する補助発電機14を具備している。なお、タービンシャフト12と補助発電機14との間にも、必要に応じて増速機を介在させることができる。
【0026】
ここで、タービン3のブレード3aの根本側(根本からブレードの長さ寸法の2〜3割の範囲)は、断面円形状に形成されている、すなわち、発電に寄与しない形状に形成されているので、補助発電部10の補助タービン11の直径は、この発電に寄与しない範囲に収まる程度に設定してある。
【0027】
上記したように、この実施例による海流発電装置1では、補助発電部10を備えているので、外部から電力供給を受けたり、バッテリを搭載したりすることなく、本格発電開始までに必要な電力を補い得ることとなる。加えて、本格発電を開始した後の通常の運用中においても補助発電部10を用いれば、装置1全体の出力の増加に貢献し得ることとなる。
【0028】
また、この実施例による海流発電装置1では、発電機9と補助発電部10の補助発電機14とが互いに独立しているので、ポッド4内での電気的取り回しが容易なものとなる。
【0029】
さらに、この実施例による海流発電装置1では、補助発電部10の補助タービン11の直径をタービン3の直径よりも小さく設定しているので、タービン3の発電効率に及ぼす影響が少なくて済むうえ、この補助発電部10による発電時に、ポッド4側への負荷が少ない分だけ装置全体のバランスが崩れることが回避されることとなる。
【0030】
加えて、補助タービン11の直径をタービン3の直径よりも小さく設定していることから、補助タービン11に比較的堅牢な構造を採用し得ることとなって、海面にて回転させたとしても、強度的に支障を来す虞が少ないこととなる。
【0031】
さらに、この実施例による海流発電装置1では、ポッド4の下流側端部にタービン3や発電機9を配置する一方で、ポッド4の上流側端部に補助タービン11や補助発電機14を配置しているので、重量がポッドの下流側に集中して、重心が下流側に偏ることが回避されることとなる。
【0032】
さらにまた、この実施例による海流発電装置1では、左右のタービン3,3間に微妙なトルクバランスのズレが生じたとしても、補助発電部10における左右の補助タービン11,11のトルクバランスを制御することで、上記タービン3,3間のトルクバランスのズレを補正し得ることとなり、この際、補助発電部10で発電した電力をトルクバランス制御に使用すれば、左右のタービン3,3の発電効率の低下を阻止し得ることとなる。
なお、左右の補助タービン11,11のトルクバランス制御は、例えば、タービンシャフト12と補助発電機14との間に介在させ得る増速機を用いて行うことができる。
【0033】
図2は本発明に係る海流発電装置の一参考例を示している。
この参考例による海流発電装置では、図2に部分的に示すように、補助発電部10Aが、海流を受けて連結ビーム5上に配置した垂直軸12A回りに回転する垂直軸型の補助タービン11Aと、この垂直軸型の補助タービン11Aの回転により発電する補助発電機(図示省略)を具備しており、他の構成は、先の実施例による海流発電装置1と同じである。
【0034】
この参考例による海流発電装置では、垂直軸型の補助タービン11Aを連結ビーム5上に配置しているので、タービン3の発電効率に及ぼす影響がより一層少なくて済むこととなる。
【0035】
本発明に係る海流発電装置の構成は、上記した実施例に限定されるものではなく、例えば、補助発電部10の水平軸型の補助タービン11として、ブレード数を増やしたものや、ブレード形状をスクリュー形状としたものを採用してもよいほか、補助タービン11をダクトで覆う構成としてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 海流発電装置
3 タービン
4 ポッド
5 連結ビーム
9 発電機
10 補助発電部
11 補助タービン
14 補助発電機
図1
図2