特許第6143022号(P6143022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6143022
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】ホルダー
(51)【国際特許分類】
   F16B 2/10 20060101AFI20170529BHJP
   F16L 3/12 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   F16B2/10 D
   F16L3/12 Z
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-184985(P2015-184985)
(22)【出願日】2015年9月18日
(65)【公開番号】特開2017-57972(P2017-57972A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2016年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128968
【氏名又は名称】株式会社オンダ製作所
(72)【発明者】
【氏名】深尾 洋一
(72)【発明者】
【氏名】延島 大地
【審査官】 熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−097703(JP,A)
【文献】 特公平07−107406(JP,B2)
【文献】 特開平06−038342(JP,A)
【文献】 米国特許第08973880(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/00− 3/26
F16B 2/00− 2/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、第一端と第二端との間の途中部分が前記ベースに第一ヒンジ部を介して連結され、前記第一端に第一係合部が形成された湾曲状の第一アームと、第三端と第四端との間の途中部分が前記ベースに第二ヒンジ部を介して連結され、前記第一アームの前記第一端に対峙する前記第三端に第二係合部が形成された湾曲状の第二アームとを備え、前記第一係合部と前記第二係合部とが係合されることで、前記第一アームと前記第二アームとの間に物品を保持するホルダーであって、
前記第一アームにおいて前記第一ヒンジ部と前記第二端との間の途中部分と、前記第二アームにおいて前記第二ヒンジ部と前記第四端との間の途中部分とがバネ材で連結されており、
前記バネ材は、前記第一アームとの連結部分である第一円弧状部と、前記第二アームとの連結部分である第二円弧状部と、前記第一円弧状部と前記第二円弧状部とを連結する第三円弧状部とを備えており、前記第一円弧状部及び前記第二円弧状部の曲率は前記第三円弧状部の曲率よりも大きくなっていることを特徴とするホルダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば止水栓やパイプ等の配管部材を保持するために用いられるホルダーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のパイプクランプは、基台と、略半円筒状をなす一対の挟持部片とを備えている。各挟持部片において、基台側の端と、基台側とは反対側の端との間の途中部分は、ヒンジを介して連結されている。一方の挟持部片において、基台側とは反対側の端には、篏合凸部が形成されている。他方の挟持部片において、基台側とは反対側の端には、篏合凹部が形成されている。そして、一対の挟持部片間にパイプを配置し、当該パイプを各挟持部片において基台側の端に押し付けることで、各挟持部片が基台に対して傾動する。したがって、一対の挟持部片は、基台側とは反対側の端が互いに接近し、篏合凸部と篏合凹部とが係合されてパイプを挟持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4792295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記パイプクランプは、パイプを挟持した状態にて、当該パイプが基台側に強く押し付けられると、各挟持部片において基台側の端付近が大きく変形し、パイプが大きく傾いたりする問題があった。
本発明の目的は、物品を安定して保持できるホルダーを提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、ベースと、第一端と第二端との間の途中部分が前記ベースに第一ヒンジ部を介して連結され、前記第一端に係合部が形成された湾曲状の第一アームと、第三端と第四端との間の途中部分が前記ベースに第二ヒンジ部を介して連結され、前記第一アームの前記第一端に対峙する前記第三端に第二係合部が形成された湾曲状の第二アームとを備え、前記第一係合部と前記第二係合部とが係合されることで、前記第一アームと前記第二アームとの間に物品を保持するホルダーであって、前記第一アームにおいて前記第一ヒンジ部と前記第二端との間の途中部分と、前記第二アームにおいて前記第二ヒンジ部と前記第四端との間の途中部分とがバネ材で連結されており、前記バネ材は、前記第一アームとの連結部分である第一円弧状部と、記第二アームとの連結部分である第二円弧状部と、前記第一円弧状部と前記第二円弧状部とを連結する第三円弧状部とを備えており、前記第一円弧状部及び前記第二円弧状部の曲率は前記第三円弧状部の曲率よりも大きくなっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、物品が第一アーム及び第二アームに対して強く押し付けられた場合、第一アームにおいて第一ヒンジ部よりも第二端側の部分と、第二アームにおいて第二ヒンジ部よりも第四端側の部分が過大に変形しようとし、第一アームの第二端と第二アームの第四端との間隔が一部又は全部において過大に拡がろうとする。しかし、バネ材が、第一アームにおいて第一ヒンジ部よりも第二端側の部分と、第二アームにおいて第二ヒンジ部よりも第四端側の部分とを拘束しているため、第一アームの第二端と第二アームの第四端との間隔が過大に拡がることを抑制でき、物品を所定の位置で安定して保持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態のホルダーを示す正面図。
図2】ホルダーの側面図。
図3】ホルダーの平面図。
図4】ホルダーの底面図。
図5】ホルダーが配管部材を保持した状態を示す説明図。
図6】別例のホルダーを示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を具体化した一実施形態について説明する。
図1図4に示すように、本実施形態のホルダーは、例えば家屋の壁等に敷設される水道の施工面上で、止水栓やパイプ等の配管部材を保持するために用いられるものである。ホルダーは、施工面に固定されるベース1と、当該ベース1に設けられて配管部材を保持するための第一アーム2及び第二アーム3を備えている。ベース1及び第一アーム2並びに第二アーム3は、合成樹脂により一体成型されている。
【0010】
前記ベース1は、両側縁部に取付孔5aが形成されたプレート5と、当該プレート5の中央部に立設された柱状部6とを備えている。ベース1は、プレート5の取付孔5aを介して施工面にネジ止めされる。柱状部6においてプレート5側とは反対側の端部には、一側縁(図1の左方の側縁)から延出された板状の第一連結部7と、他側縁(図1の右方の側縁)から延出された板状の第二連結部8とが設けられている。第一連結部7においてプレート5側とは反対側の端部には、薄板状の第一ヒンジ部7aが形成されている。第二連結部8においてプレート5側とは反対側の端部には、薄板状の第二ヒンジ部8aが形成されている。
【0011】
前記第一アーム2及び第二アーム3は、それぞれ半円筒状をなしている。第一アーム2は、ベース1側とは反対側の第一端2aとベース1側の第二端2bとの間の途中部分が、第一ヒンジ部7aを介して第一連結部7に連結されている。第二アーム3は、ベース1側とは反対側の第三端3aとベース1側の第四端3bとの間の途中部分が、第二ヒンジ部8aを介して第二連結部8に連結されている。
【0012】
前記第一アーム2の第一端2aには、第一係合部9が設けられている。第一アーム2の外周面において第一係合部9の近傍でかつ第一係合部9よりも第二端2b側には、第一指掛け部10が設けられている。第一指掛け部10には、第一アーム2の幅方向に第一挿通孔10aが貫通形成されている。第一係合部9の外周面には、第一アーム2の幅方向に沿って延びる鋸刃状の第一突起9aが、第一指掛け部10側から第一端2a側に向かって複数形成されている。第一係合部9の外周面において幅方向の一側縁(図3の下方の側縁)には、第一アーム2の延在方向に沿って第一ガイド壁9bが立設されている。第一係合部9の外周面において幅方向の他側縁(図3の上方の側縁)には、第一アーム2の延在方向に沿ってガイド凹部9cが形成されている。第一係合部9において一側縁側の内周面には、第一アーム2の延在方向に沿って収容凹部9dが形成されている。
【0013】
前記第二アーム3において第一アーム2の第一端2aに対峙する第三端3aには、第二係合部11が設けられている。第二アーム3の外周面において第二係合部11の近傍でかつ第二係合部11よりも第四端3b側には、第二指掛け部13が設けられている。第二指掛け部13には、第二アーム3の幅方向に第二挿通孔13aが貫通形成されている。第二係合部11の内周面には、第二アーム3の幅方向に沿って延びる鋸刃状の第二突起11aが、第二指掛け部13側から第三端3a側に向かって複数形成されている。第二係合部11の内周面において幅方向の一側縁(図1の紙面奥側の側縁)には、第二アーム3の延在方向に沿って第二ガイド壁11bが立設されている。第二係合部11の他側縁(図1の紙面手前側の側縁)側において第二突起11aよりも内周側には、第二指掛け部13の近傍から舌状片11cが延出されている。
【0014】
図5に示すように、上記構成のホルダーにおいては、前記第一アーム2と第二アーム3との間に配管部材Hを配置し、当該配管部材Hを第一アーム2の第二端2b側及び第二アーム3の第四端3b側に押し付けることで、第一アーム2が第一ヒンジ部7aを支点として、また第二アーム3が第二ヒンジ部8aを支点として傾動する。この際、第一指掛け部10及び第二指掛け部13を利用して、第一アーム2と第二アーム3の傾動を補助することも可能である。したがって、第一アーム2の第一端2aと第二アーム3の第三端3aとが互いに接近し、やがては第一係合部9の第一突起9aと第二係合部11の第二突起11aとが凹凸係合されて配管部材Hを挟持する。
【0015】
当該挟持状態では、前記第一アーム2のガイド凹部9cに第二アーム3の第二ガイド壁11bが収容されかつ、第一アーム2の収容凹部9dに第二アーム3の舌状片11cが収容されることで、第一突起9aと第二突起11aとの係合が外れる方向へ第一係合部9と第二係合部11とが相対移動することを当接規制している。第一ガイド壁9b及び第二ガイド壁11bは、第一突起9aと第二突起11aとの係合部分の両側縁を覆って、当該係合部分に外部の何かが接触して係合が解除されないようにしている。
【0016】
前記第一指掛け部10の第一挿通孔10aと第二指掛け部13の第二挿通孔13aとの間には、二又状のピンやワイヤ等の拘束部材Wが挿し渡されている。当該拘束部材Wによって、第一アーム2の第一端2a側と第二アーム3の第三端3a側とが互いに拘束され、第一アーム2と第二アーム3との係合がより強固となっている。それに対して、特許文献1のパイプクランプは、篏合凸部と篏合凹部との係合のみであるため、一方の挟持部片と他方の挟持部片との係合が弱い。
【0017】
さて、図1に示すように、本実施形態においては、前記第一アーム2において第一ヒンジ部7aと第二端2bとの間の途中部分と、第二アーム3において第二ヒンジ部8aと第四端3bとの間の途中部分とが、バネ材12で連結されている。バネ材12は、ベース1等と一体成型された、プレート5側に凸となる円弧状の板バネよりなっている。バネ材12は、ホルダーの柱状部6においてプレート5側とは反対側の端面と、第一連結部7と、第二連結部8と、第一アーム2において第一ヒンジ部7aよりも第二端2b側の部分と、第二アーム3において第二ヒンジ部8aよりも第四端3b側の部分とで囲まれた空間Kに収容されている。
【0018】
前記のように、バネ材12を、第二端2bよりも第一ヒンジ部7aに近い位置で第一アーム2に連結しかつ、第四端3bよりも第二ヒンジ部8aに近い位置で第二アーム3に連結することで、第一アーム2及び第二アーム3の傾動に連動するバネ材12の移動距離(図1の上下方向への移動距離)を短くできる。これは、当該方向への空間Kの寸法を小さくすることに寄与する。
【0019】
前記バネ材12は、第一アーム2との連結部分である第一円弧状部12aと、第二アーム3との連結部分である第二円弧状部12bと、第一円弧状部12aと第二円弧状部12bとを連結する第三円弧状部12cとを備えている。第一円弧状部12aは、四半円筒状をなしており、第一アーム2に対して垂直に連結されている。第二円弧状部12bは、第一円弧状部12aと同一寸法の四半円筒状をなしており、第二アーム3に対して垂直に連結されている。第一円弧状部12aと第三円弧状部12cとは滑らかに連結されている。第二円弧状部12bと第三円弧状部12cとは滑らかに連結されている。
【0020】
前記第一円弧状部12aの曲率と第二円弧状部12bの曲率は同じでかつ、第三円弧状部12cの曲率よりも大きくなっている。曲率の小さな第三円弧状部12cは、曲率の大きな第一円弧状部12aと第二円弧状部12bとの配置間隔が広くても、バネ材12を図1の上下方向に小型化でき、当該方向への空間Kの寸法を小さくすることに寄与する。また、曲率の大きな第一円弧状部12a及び第二円弧状部12bは、円弧方向への短い延在距離でバネ材12を第一アーム2及び第二アーム3から大きく離間させることができ、バネ材12が第一アーム2及び第二アーム3の傾動の妨げとなることを防止できる。
【0021】
さて、図5に示すように、前記ホルダーに配管部材Hを保持させる作業の際、第一アーム2と第二アーム3が傾動すると、バネ材12が弾性変形して、当該傾動を妨げる方向への反力を生じる。この反力は、第一係合部9の第一突起9aと第二係合部11の第二突起11aとの噛み合いを強くする方向に作用されるため、第一係合部9と第二係合部11の係合、つまりは配管部材Hの挟持が確実となる。
【0022】
そして、当該作業の際に、前記配管部材Hが第一アーム2及び第二アーム3に対して強く押し付けられる等した場合、第一アーム2において第一ヒンジ部7aよりも第二端2b側の部分と、第二アーム3において第二ヒンジ部8aよりも第四端3b側の部分が大きく変形しようとし、第一アーム2の第二端2bと第二アーム3の第四端3bとの間隔が一部又は全部において過大に拡がろうとする。しかし、バネ材12が、第一アーム2において第一ヒンジ部7aよりも第二端2b側の部分と、第二アーム3において第二ヒンジ部8aよりも第四端3b側の部分とを拘束しているため、第一アーム2の第二端2bと第二アーム3の第四端3bとの間隔が過大に拡がることを抑制でき、配管部材Hを所定の位置で安定して保持することが可能となる。
【0023】
本発明は次のように具体化してもよい。
図6に示すように、バネ材12の中央部を、プレート5とは反対側に凸となる円弧状とすること。
○バネ材12を、全体として同一曲率の円弧状とすること。
○バネ材12を、ベース1及び第一アーム2並びに第二アーム3等とは別体に構成すること。この場合、金属製のバネ材12を用いてもよい。
○バネ材12として、棒状体を円弧状に曲折したものを用いること。
○第一挿通孔10a及び第二挿通孔13aつまり凹状部を、第一アーム2及び第二アーム3の側縁から突出する凸状部に変更し、当該一対の凸状部をワイヤ等で互いに拘束すること。
【0024】
上記実施形態から把握できる技術的思想について記載する。
(1)ベースと、第一端と第二端との間の途中部分が前記ベースに第一ヒンジ部を介して連結され、前記第一端に第一係合部が形成された湾曲状の第一アームと、第三端と第四端との間の途中部分が前記ベースに第二ヒンジ部を介して連結され、前記第一アームの前記第一端に対峙する前記第三端に第二係合部が形成された湾曲状の第二アームとを備え、前記第一係合部と前記第二係合部とが係合されることで、前記第一アームと前記第二アームとの間に物品を保持するホルダーであって、前記第一アームにおいて前記第一ヒンジ部と前記第一端との間に設けられ、拘束部材を係合させるための第一拘束部(第一挿通孔10a)と、前記第二アームにおいて前記第二ヒンジ部と前記第三端との間に設けられ、前記拘束部材を係合させるための第二拘束部(第二挿通孔13a)とを備え、前記第一拘束部と前記第二拘束部との間で前記拘束部材が渡されることで、当該拘束部材によって前記第一アームの前記第一端側と前記第二アームの前記第三端側とが互いに拘束されるようにしたことを特徴とするホルダー。
【符号の説明】
【0025】
1…ベース、2…第一アーム、2a…第一端、2b…第二端、3…第二アーム、3a…第三端、3b…第四端、7a…第一ヒンジ部、8a…第二ヒンジ部、9…第一係合部、11…第二係合部、12…バネ材、12a…第一円弧状部、12b…第二円弧状部、12c…第三円弧状部、H…物品としての配管部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6