(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上部構造に上端側を接続した複数の吊り部材に吊り下げ支持された天井下地と、天井下地に取り付けて天井面を形成する板状の天井材と、前記上部構造に上端側を、前記天井下地に下端側をそれぞれ直接あるいは間接的に接続して斜設される補強ブレースとを備えてなる吊り天井を補強するための部材であって、
前記吊り部材に沿って上下方向に立設されるとともに、下端側を前記天井下地に接続して配設されるブレース部と、
前記ブレース部の上端側に一体に設けられるとともに、前記吊り部材の上端側に係合して前記ブレース部の上端側を前記吊り部材の上端側に接続する吊元側接続機構とを備えており、
前記吊元側接続機構が、前記ブレース部の上端側に一体に配設されるブレース側接続支持部と、
前記ブレース側接続支持部に、横方向の一の方向に延びる回動軸周りに回動自在に、且つ着脱可能に接続して支持され、前記上下方向に立設された状態で、前記ブレース側接続支持部から前記吊り部材側に向け、前記一の方向に直交する横方向の他の方向に突設されるとともに、前記吊り部材に案内されて上下方向に移動可能に係合して前記吊り部材を保持する吊り部材係合保持部とを備えて構成されていることを特徴とする吊り天井補強用部材。
上部構造に上端側を接続した複数の吊り部材に吊り下げ支持された天井下地と、天井下地に取り付けて天井面を形成する板状の天井材と、前記上部構造に上端側を、前記天井下地に下端側をそれぞれ直接あるいは間接的に接続して斜設される補強ブレースとを備える吊り天井構造であって、
請求項1または請求項2に記載の吊り天井補強用部材を備えていることを特徴とする吊り天井構造。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば学校、病院、生産施設、体育館、プール、空港ターミナルビル、オフィスビル、劇場、シネコン等の建物の天井として、吊り天井が多用されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。そして、吊り天井(吊り天井構造)Aには、例えば
図11及び
図12に示すように、水平の一方向T1に所定の間隔をあけて並設される複数の野縁1と、野縁1に直交し、水平の他方向T2に所定の間隔をあけて並設され、複数の野縁1に一体に接続して設けられる複数の野縁受け2と、下端を野縁受け2に接続し、上端を上階の床材等の上部構造(建物躯体)3に固着して配設される複数の吊りボルト(吊り部材)4と、野縁1の下面にビス留めなどによって一体に取り付けられ、天井面(天井部5)を形成する天井パネル(天井材)6とを備えて構成したものがある。
【0003】
また、例えば
図13に示すように、例えば、クリーンルームのようにファンフィルターユニット等の大重量の設備機器を天井部に設置する必要がある吊り天井(吊り天井構造)Aには、水平の一方向T1に所定の間隔をあけて並設され、一方向T1に直交する他方向T2に延びる複数のTバー(断面逆T型の支持部材)7と、上端側を上階の床材(上部構造)等に固着し、下端側をTバー7に接続して配設された複数の吊りボルト(吊り部材)4と、一方向T1に隣り合うTバー7に架け渡すように配設されて天井面(天井部5)を形成する天井パネル6とを備えて構成したものがある。
【0004】
一方、上記のように構成した吊り天井Aにおいては、その構造上、地震時に作用する水平力によって横揺れしやすく、この横揺れにより、天井部5の端部が壁や柱、梁などの建物構成部材に衝突し、天井パネル6に破損が生じたり、脱落が生じるおそれがあった。このため、従来、
図12、
図13に示すように、上部構造3などに上端側を接続し、下端側を吊りボルト4や、野縁1、野縁受け2、Tバー7などからなる天井下地8に接続して補強ブレース9を設け、天井下地8及び天井パネル6からなる天井部5の地震時の横揺れを抑えるようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、補強ブレース9は、例えば、
図12、
図13に示したように、上端を隣り合う吊りボルト4の一方の吊りボルト4の上端付近(吊元付近)に接続し、下端を他方の吊りボルト4の下端付近に接続してノの字状に配設するケースがある。
【0007】
しかしながら、このように補強ブレース9をノの字状に斜設した場合には、補強ブレース9の耐力が吊りボルト4の圧縮耐力に依存することになり、十分な耐力、補強効果を得にくいという問題があった。
【0008】
すなわち、大規模地震などが発生して補強ブレース9に外力が作用すると同時に吊りボルト4に圧縮力が作用し、この吊りボルト4が曲げ変形することによって補強ブレース9で負担する外力が小さくなってしまう。
【0009】
また、逆に吊りボルト4の曲げ変形に伴い、過大な外力が補強ブレース9に作用し、この補強ブレース9が座屈してしまい、大幅に且つ急激に耐力が低下して天井パネル6や天井下地8の破損や脱落を招くおそれもある。
【0010】
一方、例えば吊りボルト4に角鋼を被せるなどし、吊りボルト4を圧縮方向に補剛することも提案されているが、吊りボルト4に角鋼を被せて設置するために多大な手間と労力、時間が必要になってしまう。また、小ロットの角鋼を吊り天井補強の専用部材として発注、入手することが必要になるため、補強対策、耐震性能向上対策が高コスト化するという点でも問題がある。
【0011】
このため、この種の吊り天井に対しては、補強ブレース9の効果を確実に発揮させ、さらなる耐震性能の向上を図り、人命保護の観点から天井脱落をより確実に防止できるようにする手法、そして、その施工を容易に行える手法の開発が強く望まれていた。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑み、補強ブレースの効果を確実に発揮させて耐震性能の向上を図り、地震時の天井部の横揺れを確実に抑えることを可能にするとともに、比較的容易に補強対策を講じることを可能にする吊り天井補強用部材及びこれを備えた吊り天井構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0014】
本発明の吊り天井補強用部材は、上部構造に上端側を接続した複数の吊り部材に吊り下げ支持された天井下地と、天井下地に取り付けて天井面を形成する板状の天井材と、前記上部構造に上端側を、前記天井下地に下端側をそれぞれ直接あるいは間接的に接続して斜設される補強ブレースとを備えてなる吊り天井を補強するための部材であって、前記吊り部材に沿って上下方向に立設されるとともに、下端側を前記天井下地に接続して配設されるブレース部と、前記ブレース部の上端側に一体に設けられるとともに、前記吊り部材の上端側に係合して前記ブレース部の上端側を前記吊り部材の上端側に接続する吊元側接続機構とを備えており、前記吊元側接続機構が、前記ブレース部の上端側に一体に配設されるブレース側接続支持部と、前記ブレース側接続支持部に、横方向の一の方向に延びる回動軸周りに回動自在に、且つ着脱可能に接続して支持され、前記上下方向に立設された状態で、前記ブレース側接続支持部から前記吊り部材側に向け、前記一の方向に直交する横方向の他の方向に突設されるとともに、前記吊り部材に案内されて上下方向に移動可能に係合して前記吊り部材を保持する吊り部材係合保持部とを備えて構成されていることを特徴とする。
【0015】
この発明においては、ブレース部の上端側に一体に配設されたブレース側接続支持部に、吊り部材係合保持部が回動自在に且つ着脱可能に支持されるとともに、この吊り部材係合保持部が吊り部材に案内されながら上下方向に移動可能に係合して吊り部材を保持する。このため、補強ブレースの下端側を天井下地に接続した接続部の直近の吊り部材の下端側に吊り部材係合保持部を係合させ、さらに、この吊り部材係合保持部をブレース部の上端側に設けられたブレース側接続支持部に回動自在に取り付け、作業者がブレース部を上方に持ち上げるように操作すると、回動しつつ吊り部材に案内されて、吊り部材係合保持部を上方にスライド移動させながら、吊り部材に沿うようにブレース部(吊り天井補強用部材)を立設、設置することができる。そして、このようにブレース部を立設した状態で、ブレース部の下端側を天井下地に例えばボルト接合して接続することにより、ブレース部(吊り天井補強用部材)を、その上端側を吊元側接続機構によって吊元(吊りボルトの上端側)に、下端側を天井下地にそれぞれ接続させ、吊りボルトに沿って設置することができる。
【0016】
また、本発明の吊り天井補強用部材において、前記ブレース側接続支持部には、前記ブレース部が前記吊り部材に沿う上下方向に立設された状態で、前記他方向に突出し、前記吊り部材に当接することによって前記吊り部材係合保持部の回動を規制し、前記吊り部材係合保持部とともに前記吊り部材を保持する回動規制部が設けられていることが望ましい。
【0017】
この発明においては、回動しつつ吊り部材に案内されて、吊り部材係合保持部を上方にスライド移動させながら、吊り部材に沿うようにブレース部(吊り天井補強用部材)が立設、配置されるとともに、ブレース側接続支持部に設けられた回動規制部によって吊り部材係合保持部の回動が規制される。これにより、ブレース部が吊り部材に沿う上下方向に立設された状態で、吊り部材係合保持部とともに回動規制部によって、ブレース部の上端側を吊り部材の上端側(吊元側)に確実に保持して接続することが可能になる。
【0018】
本発明の吊り天井構造は、上部構造に上端側を接続した複数の吊り部材に吊り下げ支持された天井下地と、天井下地に取り付けて天井面を形成する板状の天井材と、前記上部構造に上端側を、前記天井下地に下端側をそれぞれ直接あるいは間接的に接続して斜設される補強ブレースとを備える吊り天井構造であって、上記のいずれかの吊り天井補強用部材を備えていることを特徴とする。
【0019】
この発明においては、上記の吊り天井補強用部材による作用効果を得ることが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の吊り天井補強用部材(及びこれを備えた吊り天井構造)においては、例えば、ノの字状に斜設された補強ブレースの下端側と天井下地の接続部付近の天井材のみを取り外し、天井足場から、吊り天井補強用部材を吊り部材(吊りボルト)に沿って容易に設置することができる。すなわち、吊元での高所作業を不要にして吊り天井補強用部材を吊り部材に沿って設置することができ、この吊り天井補強用部材のブレース部と補強ブレースとでレの字状のブレースを容易に構成することが可能になる。
【0021】
そして、このように吊り天井補強用部材を設置することにより、大規模地震などが発生して補強ブレースに外力が作用すると同時に吊り部材に作用する圧縮力を吊り天井補強用部材で負担することが可能になる。これにより、従来の吊り部材が曲げ変形して補強ブレースで負担する外力が小さくなってしまったり、逆に吊り部材が曲げ変形して過大な外力が補強ブレースに作用するなどの不都合を解消することが可能になる。
【0022】
よって、本発明の吊り天井補強用部材を用いることによって、容易に且つ確実に吊り部材に沿う上下方向の補強を施すことが可能になり、補強ブレースの効果を確実に発揮させ、大幅に耐震性能の向上を図ることが可能になる。
【0023】
また、このとき、吊り天井補強用部材のブレース部には市中汎用材を適用することができるため、従来の角鋼を用いる場合と比較し、容易に資材を入手することができる。これにより、補強対策、耐震性能向上対策を低コストで行うことが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、
図1から
図10(及び
図11、
図12)を参照し、本発明の一実施形態に係る吊り天井補強用部材及びこれを備えた吊り天井構造について説明する。
【0026】
本実施形態の吊り天井(吊り天井構造)Bは、吊り天井Aと同様(
図11及び
図12参照)、
図1に示すように、野縁1と野縁受け2と吊り部材4と天井材6と補強ブレース9とを備えて構成されている。
【0027】
野縁1は、例えば断面コ字状に形成された溝形鋼であり、水平に延設され、且つ水平の一方向の横方向T1に所定の間隔をあけ、平行に複数配設されている。
【0028】
野縁受け2は、例えば断面コ字状に形成された溝形鋼であり、水平に延設され、且つ水平の他方向の横方向T2に所定の間隔をあけ、平行に複数配設されている。また、このとき、野縁受け2は、野縁1と交差するように配設されるとともに、複数の野縁1上に載置した状態で配設される。そして、各野縁受け2は、野縁1と交差する交差部で、クリップ10を使用することにより野縁1に接続されている。
【0029】
吊り部材4は、円柱棒状に形成されるとともに外周面に雄ネジの螺刻を有する吊りボルトであり、アンカー等の固定具を用い、上端を上階の床材等の上部構造3に固着して垂下され、下端側を、ハンガー11を用いることにより野縁受け2に接続して複数配設されている。また、複数の吊り部材4は、所定の間隔をあけて分散配置されている。
【0030】
天井材(天井パネル)6は、例えば、2枚のボードを貼り付けて一体に積層形成したものであり、天井付帯設備等の重量と併せて1m
2あたり20kg程度の重量で形成されている。そして、この天井材6は、複数の野縁1の下面にビス留めなどして設置されている。なお、天井材6は、1枚および3枚以上のボードで構成されていてもよい。
【0031】
補強ブレース9は、例えば断面コ字状に形成された溝形鋼であり、その上端側を、隣り合う吊りボルト4のうち一方の吊りボルト4の上端側付近(吊元付近)に、下端側を、吊りボルト4の下端側付近(ハンガー11付近の野縁受け2など)に接続して斜設されている。すなわち、補強ブレース9は、上部構造3に上端側を、天井下地8に下端側をそれぞれ直接あるいは間接的に接続して斜設されている。
【0032】
また、この吊り天井Bでは、吊り部材4を介して建物の上部構造3に、野縁1と野縁受け2と天井材6とが吊り下げ支持されている。また、野縁1と野縁受け2によって天井下地8が形成され、この天井下地8に取り付けた天井材6によって下階の天井面が、また、天井下地8と天井材6によって天井部5が形成されている。そして、地震時など、天井下地8と天井材6からなる天井部5に作用する外力を補強ブレース9によって建物構成部材(建物躯体)に伝達させることで天井部5の横揺れが抑制される。
【0033】
一方、本実施形態の吊り天井Bにおいては、
図1に示すように、補強ブレース9の下端側を接続した接続部12の直近に位置する吊り部材4の下端付近の天井下地8に下端を接続し、この吊りボルト4に沿って、上下方向T3に吊り天井補強用部材15が延設(立設)されている。
【0034】
また、この吊り天井補強用部材15は、
図1及び
図2に示すように、例えば、市中汎用材の断面子字状の溝形鋼を用いて形成され、吊りボルト4に沿って上下方向T3に立設されるとともに、下端側を天井下地8に接続して配設されるブレース部16と、ブレース部16の上端側に一体に設けられるとともに、吊りボルト4の上端側に係合してブレース部16の上端側を吊りボルト4の上端側(吊元側)に接続する吊元側接続機構17とを備えている。
【0035】
ブレース部16は、下端側に野縁受け2等の天井下地8にボルト接合するための下側ボルト挿通孔を設けて形成され、上端側に、吊元側接続機構17を着脱可能に一体にボルト接合するための上側ボルト挿通孔16a(
図2参照)を設けて形成されている。
【0036】
一方、吊元側接続機構17は、金属製であり、
図2に示すように、ブレース部16の上側ボルト挿通孔16aにボルトを挿通し、ナットを螺着することによってブレース部16の上端側に着脱可能に一体に配設されるブレース側接続支持部18と、ブレース側接続支持部18に、横方向の一の方向(他方向)T2に延びる回動軸O1周りに回動自在に、且つ着脱可能に接続して支持され、上下方向T3に立設された状態で、ブレース側接続支持部18から吊りボルト4側に向け、一の方向T2に直交する横方向の他の方向(一方向)T1に突設される吊り部材係合保持部19とを備えて構成されている。
【0037】
また、本実施形態の吊元側接続機構17のブレース側接続支持部18は、
図3から
図6に示すように、略U字状に形成され、一対の側壁部18a、18bにそれぞれボルト挿通孔18cが貫通形成されている。さらに、底板部18dに、下面から上面に貫通するボルト挿通孔18eが形成され、
図2に示すように、このボルト挿通孔18eとブレース部16の上側ボルト挿通孔16aを連通させ、互いのボルト挿通孔18e、16aにボルトを挿通してナットを螺着することで、ブレース側接続支持部18がブレース部16の上端側に着脱可能に接続される。
【0038】
さらに、ブレース側接続支持部18には、
図2、
図3から
図6に示すように、前記他の方向T1に突出し、吊りボルト4に当接することによって吊り部材係合保持部19の回動を規制し、吊り部材係合保持部19とともに吊りボルト4を保持する回動規制部20が設けられている。すなわち、回動規制部20は、吊りボルト4に沿って、上下方向T3に吊り天井補強用部材15を立設した状態で、吊りボルト4の外周面と、ボルト挿通孔18e(ひいてはブレース部16)との横方向T1の距離を規定し、且つ、吊り部材係合保持部19とともに吊りボルト4を保持するように突出して形成されている。
【0039】
そして、本実施形態では、回動規制部20が、ブレース側接続支持部18の底板部18dの一側端部から、底板部18dの上面及び下面に沿う横方向T1外側に突出して設けられている。さらに、本実施形態の回動規制部20は、底板部18dの一側端部から横方向T1に突出する突出部20aと、突出部20aの突出方向先端から上方に垂直に折れ曲がって延設され、その上方への延出長さによって吊り天井補強用部材の取り付け作業時の傾動可能な傾斜角度を規定し、また、吊りボルト4を保持するボルト保持部20bとを備えて、L字状に形成されている。
【0040】
なお、本実施形態では、回動規制部20がブレース側接続支持部18に一体形成されているものとしたが、回動規制部20は、ブレース側接続支持部18と別部材とし、ブレース側接続支持部18に着脱可能に取り付けるように形成されていてもよい。
【0041】
吊り部材係合保持部19は、
図2、
図7及び
図8に示すように、一対の側壁部19a、19bと連結保持部19cを備えてU字状に形成され、一対の側壁部19a、19bにそれぞれ、ボルト挿通孔19dが貫通形成されている。さらに、吊り部材係合保持部19は、連結保持部19cが円柱棒状の吊りボルト4の外周面に沿うように、すなわち、吊りボルト4の外周面と略同等の曲率をもつ円弧状に形成されている。また、吊り部材係合保持部19は、一対の側壁部19a、19bの外面の間の幅寸法d1(
図8参照)が、ブレース側接続支持部18の一対の側壁部18a、18bの内面の間の幅寸法d2(
図5参照)よりも小さく形成されている。
【0042】
そして、この吊り部材係合保持部19は、
図2(
図3から
図8)に示すように、一対の側壁部19a、19bをブレース側接続支持部18の一対の側壁部18a、18bの間に挿入し、ブレース側接続支持部18と互いの側壁部18a、18b、19a、19bに形成されたボルト挿通孔18c、19cを連通させるとともにボルトを挿通し、ナットを螺着して、ブレース側接続支持部18に着脱可能に且つボルト軸周りに回動自在に接続される。
【0043】
また、吊り部材係合保持部19は、この状態で、一対の側壁部19a、19bがブレース側接続支持部18の底板部18dの一側端部よりも横方向T1に突設され、ひいては連結保持部19cが横方向T1外側に配されている。
【0044】
そして、この吊り部材係合保持部19の連結保持部19cの内面と、ブレース側接続支持部18の回動規制部20との横方向T1の間に吊りボルト4が挿通され、連結保持部19cが円柱棒状の吊りボルト4の外周に沿うように形成され、吊りボルト4を挿通するとともにこの吊りボルト4を内包して巻き掛けるように係合する。これにより、吊元側接続機構17(吊り部材係合保持部19)が吊りボルト4に案内されて上下方向T3に移動可能に係合して吊りボルト4を保持し、且つ、吊り部材係合保持部19とブレース側接続支持部18の回動規制部20とで吊りボルト4が挟み込むように係合し、吊元側接続機構17ひいては吊り天井補強用部材15の上端側が吊りボルト4に接続される。
【0045】
また、本実施形態の吊り天井補強用部材15においては、ブレース部16の下端側に設けられた下側ボルト挿通孔(不図示)にボルトを挿通し、ナットを螺着することで、ブレース部16の下端側が野縁受け2等の天井下地8に接続される。
【0046】
そして、本実施形態の吊り天井補強用部材15を上記のように設置して吊り天井Bの耐震性能のさらなる向上を図る際には、
図9(及び
図2)に示すように、まず、ノの字状に設置された補強ブレース9の下端側を接続した接続部12の直近に位置する吊りボルト4が臨めるように、この吊りボルト4付近の天井パネル6を局所的(部分的)に取り外す。
【0047】
次に、仮設足場や天井足場を用い、作業者Mが吊りボルト4に吊元側接続機構17を取り付ける。このとき、
図2に示すように、例えば、ブレース部16の上端に予めブレース側接続支持部18を接続しておき、吊りボルト4の下端側に巻き掛けるように(内包するように)U字状の吊り部材係合保持部19を取り付けるとともに、この吊り部材係合保持部19をブレース側接続支持部18にボルトで接続する。これにより、吊りボルト4が吊り部材係合保持部19とブレース側接続支持部18の回動規制部20との間に挿通した形となり、吊りボルト4に吊元側接続機構17を介してブレース部16の上端側が接続される。
【0048】
一方、このとき、ブレース側接続支持部18の回動規制部20が、突出部20aと、この突出部20aの先端から上方に垂直に折れ曲がり、その上方への延出長さによって吊り天井補強用部材15の取り付け作業時の傾動可能な傾斜角度を規定し、また、吊りボルト4を保持するボルト保持部20bとを備えている。このため、上記のように吊り天井補強用部材15の吊元側接続機構17を吊りボルト4の下端側に取り付ける際には、
図2に示すように、回動規制部20のボルト保持部20bの長さに応じ、作業者Mが吊り天井補強用部材15(ブレース部16)を吊りボルト4に対して斜めにしながら取り付け作業が行える。
【0049】
そして、作業者Mがこの斜めにした状態から吊り天井補強用部材15(ブレース部16)を上方に押し上げると、吊り部材係合保持部19とブレース側接続支持部18の回動規制部20の間に挿通した吊りボルト4に案内されて、吊元側接続機構17が上方にスライド移動する。また、吊元側接続機構17が吊りボルト4の上方に進出するほどに、吊りボルト4に対するブレース部16の傾斜角度が小さくなってゆき、吊り天井補強用部材15、ブレース部16が吊りボルト4に沿って立設するとともに(吊りボルト4に対するブレース部16の角度が0度になるとともに)、吊元側接続機構17が吊りボルト4の上端側(吊元側)の所定位置に配設される。
【0050】
このようにブレース部16が吊りボルト4に沿って立設し、吊元側接続機構17が吊りボルト4の上端側の所定位置に配設されるとともに、吊り部材係合保持部19とブレース側接続支持部18の回動規制部20とで挟み込んで吊りボルト4と吊元側接続機構17が係合する。すなわち、ブレース部16が吊りボルト4に沿う上下方向T3に立設された状態で、変形が生じても回動規制部20が吊りボルト4に当接するため、この回動規制部20によって吊り部材係合保持部19の回動が規制され、吊り部材係合保持部19と回動規制部20とによって確実に吊りボルト4が保持される。これにより、吊り天井補強用部材15を上方にスライド移動するだけで、吊り天井補強用部材15の上端側を吊りボルト4の上端側の吊元に接続することができる。
【0051】
また、このように上端側が吊りボルト4に接続されたブレース部16の下端側を天井下地8の野縁受け2にボルト接合することによって、
図1に示すように、吊りボルト4に沿って吊り天井補強用部材15(ブレース部16)を立設した状態で固定して設置することができる。
【0052】
したがって、本実施形態の吊り天井補強用部材15(及び吊り天井構造B)では、ブレース部16の上端側に一体に配設されたブレース側接続支持部18に、吊り部材係合保持部19が回動自在に且つ着脱可能に支持されるとともに、この吊り部材係合保持部19が吊りボルト4に案内されながら上下方向T3に移動可能に係合して吊りボルト4を保持する。このため、補強ブレース9の下端側を天井下地8に接続した接続部12の直近の吊りボルト4の下端側に吊り部材係合保持部19を係合させ、さらに、この吊り部材係合保持部19をブレース側接続支持部18に回動自在に取り付け、作業者Mがブレース部16を上方に持ち上げるように操作すると、回動しつつ吊りボルト4に案内されて、吊り部材係合保持部19を上方にスライド移動させながら、吊りボルト4に沿うようにブレース部16(吊り天井補強用部材15)を立設、設置することができる。
【0053】
そして、このようにブレース部16を立設した状態で、ブレース部16の下端側を天井下地8に例えばボルト接合して接続することにより、ブレース部16(吊り天井補強用部材15)を、その上端側を吊元側接続機構17によって吊元(吊りボルト4の上端側)に、下端側を天井下地8にそれぞれ接続させ、吊りボルト4に沿って設置することができる。
【0054】
これにより、本実施形態の吊り天井補強用部材15(及びこれを備えた吊り天井構造B)においては、例えば、ノの字状に斜設された補強ブレース9の下端側と天井下地8の接続部付近の天井パネル6のみを取り外し、天井足場から、吊り天井補強用部材15を吊りボルト4に沿って容易に設置することができる。すなわち、吊元での高所作業を不要にして吊り天井補強用部材15を吊り部材に沿って設置することができ、この吊り天井補強用部材15のブレース部16と補強ブレース9とでレの字状のブレースを容易に構成することが可能になる。
【0055】
そして、このように吊り天井補強用部材15を設置することにより、大規模地震などが発生して補強ブレース9に外力が作用すると同時に吊りボルト4に作用する圧縮力を吊り天井補強用部材15で負担することが可能になる。これにより、従来の吊りボルト4が曲げ変形して補強ブレース9で負担する外力が小さくなってしまったり、逆に吊りボルト4が曲げ変形して過大な外力が補強ブレース9に作用するなどの不都合を解消することが可能になる。
【0056】
ここで、例えば、
図10に示すように、通常のノの字の補強ブレース9のみである場合には(
図10(a))、ノの字の補強ブレース9の耐力が吊りボルト4の圧縮耐力に依存することになり、約9mm径(3分)の吊りボルト4を用いると、110N程度の水平力(慣性力)を負担することしかできない。
これに対し、吊り天井補強用部材15を設置した場合には(
図10(b))、ブレース9、15がレの字の状態で配置された状態となり、上下方向T3に配設された吊り天井補強用部材15(ブレース部16)の圧縮耐力で負担できる水平力が決まることになる。そして、C−40×20×1.6mmの溝形鋼をブレース部16として備えた吊り天井補強用部材15を設置すると、負担できる水平力が約918Nとなる。
【0057】
よって、本実施形態の吊り天井補強用部材15を用いることによって、容易に且つ確実に吊りボルト4に沿う上下方向T3の補強を施すことが可能になり、補強ブレース9の効果を確実に発揮させ、大幅に耐震性能の向上を図ることが可能になる。
【0058】
また、このとき、吊り天井補強用部材15のブレース部16には市中汎用材を適用することができるため、従来の角鋼を用いる場合と比較し、容易に資材を入手することができる。これにより、補強対策、耐震性能向上対策を低コストで行うことが可能になる。
【0059】
以上、本発明に係る吊り天井補強用部材及びこれを備えた吊り天井構造の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0060】
例えば、本実施形態では、吊り天井構造が、野縁1と野縁受け2を格子状に組み付けてなる天井下地8と、この天井下地8にビス留めして取り付け、天井面を形成する天井材6とを備えるものとして説明を行ったが、例えば
図13に示したTバー7で天井下地8が形成される吊り天井構造に対しても、本実施形態の吊り天井補強用部材15を適用することで、本実施形態と同様の作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明にかかる天井下地は、特にその構成を本実施形態のように限定する必要はない。