特許第6143183号(P6143183)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6143183
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】フェライトコア内蔵防水コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20170529BHJP
   H01R 13/7193 20110101ALI20170529BHJP
【FI】
   H01R13/52 301E
   H01R13/7193
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-163710(P2013-163710)
(22)【出願日】2013年8月7日
(65)【公開番号】特開2015-32560(P2015-32560A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2015年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相澤 武史
【審査官】 竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−039584(JP,A)
【文献】 実開平02−062677(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/52
H01R 13/7193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に端子金具が取付けられた電線と、
前記端子金具を収容可能な端子収容室が複数室形成されたコネクタハウジングと、
前記コネクタハウジングに対しその後端面を覆うようにして組み付けられ、前記各端子収容室に対応して配されかつ内周面には前記電線の被覆の外周面に密着するリップが突出形成されて前記電線をシール状態で挿通可能な複数の電線挿通孔が貫通して形成された板状の一括ゴム栓と、
隣接する複数の前記電線挿通孔を個別に又は一括して囲むように形成された貫通部を有し前記一括ゴム栓内に埋設されたフェライトコアとを備え、
前記フェライトコアは前記一括ゴム栓内において前記リップの基部から同リップの突出方向とは反対方向内側に配されていることを特徴とするフェライトコア内蔵防水コネクタ。
【請求項2】
前記電線挿通孔には、前記リップが前記電線挿通孔の軸方向に沿って複数個が形成されるとともに、前記フェライトコアは、前記一括ゴム栓において前記軸方向の端部に寄せられた位置に配されていることを特徴とする請求項1に記載のフェライトコア内蔵防水コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェライトコア内蔵防水コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の車内配線などに用いられるコネクタにおいて、コネクタハウジング内に収容される電線の端部にフェライトコアを装着させることで、端子金具に重畳するノイズを除去する方法が広く知られている。下記特許文献1では、電線の端部にフェライト材が混入されたゴム材にて形成されたシール部材を装着させることで、コネクタにノイズ除去機能だけでなく、防水性を付与する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−12487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、所望とするノイズ除去能力を発揮するためには相当量のフェライト材を添加しなければならない。すると、シール部材のリップが高硬度化してシール性が低下する、という問題があった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、シール性の高いフェライトコア内蔵防水コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のフェライトコア内蔵防水コネクタは、
先端に端子金具が取付けられた電線と、
前記端子金具を収容可能な端子収容室が複数室形成されたコネクタハウジングと、
前記コネクタハウジングに対しその後端面を覆うようにして組み付けられ、前記各端子収容室に対応して配されかつ内周面には前記電線の被覆の外周面に密着するリップが突出形成されて前記電線をシール状態で挿通可能な複数の電線挿通孔が貫通して形成された板状の一括ゴム栓と、
隣接する複数の前記電線挿通孔を個別に又は一括して囲むように形成された貫通部を有し前記一括ゴム栓内に埋設されたフェライトコアとを備え、
前記フェライトコアは前記一括ゴム栓内において前記リップの基部から同リップの突出方向とは反対方向内側に配されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電線に重畳されたノイズを一括ゴム栓の内部に埋設されたフェライトコアによって効果的に除去することができる。また、フェライトコアは一括ゴム栓のリップの基部より内側に設けられるため、リップが電線被覆に密着変形する際に、フェライトコアによって変形が妨げられにくい。したがって、電線に対する良好なシール性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1に係るフェライトコア内蔵防水コネクタの正面図
図2】同じく一括ゴム栓の側断面図
図3】同じくフェライトコア内蔵防水コネクタの側断面図
図4】実施例2に係るフェライトコア内蔵防水コネクタの正面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明における好ましい実施の形態を説明する。
【0010】
本発明のフェライトコア内蔵防水コネクタは、
前記電線挿通孔には、前記リップが前記電線挿通孔の軸方向に沿って複数個が形成されるとともに、前記フェライトコアは、前記一括ゴム栓において前記軸方向の端部に寄せられた位置に配されている構成とすることが好ましい。
この構成によれば、一括ゴム栓において軸方向に関してフェライトコアが寄せられた側と反対側では、シールリップの変形時にフェライトコアの影響を受けにくいから、電線に対するシール性をより一層向上させうる。
【0011】
次に、本発明のフェライトコア内蔵防水コネクタを具体化した実施例1、2について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
<実施例1>
本実施例のフェライトコア内蔵防水コネクタ(以下では、単にコネクタと称する。)はコネクタハウジング10と、電線WHが接続された端子金具20と、フェライトコア50が内部に埋設された一括ゴム栓30と、ホルダ部材40とを備えて構成されている。尚、以下の説明において、前後方向については、図3の左側を前側、右側を後側とする。
【0013】
コネクタハウジング11は合成樹脂製であり、全体として扁平なブロック状を成している。そして、ここには、端子金具20が後方より収容可能な端子収容室12A、12Bが上下方向に2段、幅方向4列に亘って前後方向に開口して設けられている(上段、下段の端子収容室をそれぞれ上段、下段端子収容室12A、12Bと称する。)。そして、上段端子収容室12Aの下壁面と、下段端子収容室の上壁面には片持ち状に延出した形態であって、上下方向に撓み変形可能な図示しないランスが形成されている。ランスは、各端子収容室12A、12B内に正規位置まで端子金具20が挿入された際に、図3に示すように、端子金具20に対して弾性係止してその抜け止めがなされる。
【0014】
一括ゴム栓30は、長辺部を有する平板状を成しており、コネクタハウジング10の後端面10Bにおける端子収容室12A、12Bの形成範囲全体を覆うことが可能である。一括ゴム栓30には、各端子収容室12A、12Bに対して個別に対応する複数の電線挿通孔31が上下左右に整列して形成されている。
【0015】
また、一括ゴム栓30の内部には、図1に示すように、略ブロック状のフェライトコア50が4つ埋設されている。フェライトコア50は長辺部を有しており、その長辺方向に沿って、2つの貫通部52が貫通形成されている。そして、図1、2に示すように、フェライトコア50は、上段端子収容室12Aの電線挿通孔31と、その直下に配される下段端子収容室12Bの電線挿通孔31に対して、保有される貫通部52がそれぞれ同軸で連通するように一括ゴム栓30内部に埋設配置されている。また、フェライトコア50は一括ゴム栓30の板厚方向の図示左端部に寄せられた位置に配置されている(図2)。
【0016】
各電線挿通孔31と各貫通部52の断面形状は真円状であり、貫通部52の直径の方が電線挿通孔31の直径よりやや大きく設定されている。また、電線挿通孔31の内周面には、図2に示すように、その周方向に伸びる複数のリップ32が貫通方向に沿って所定のピッチで突出形成されており、フェライトコア50はその内側に配されている。また、一括ゴム栓30の外周面には、共に図示しない相手方コネクタハウジングのフード部の内周面に対して液密に密着する外周リップ33が突出形成されている。
【0017】
ホルダ部材40は合成樹脂製であり、一括ゴム栓30と同じく長辺部を有する平板状を成している。ホルダ部材40には、各電線挿通孔31と対応する複数の位置決め孔41が上下左右に整列して貫通形成されている。各位置決め孔41の断面形状は真円状であり、その直径は電線挿通孔31の直径よりやや大きく設定されており、更に端子金具20が遊挿可能である。また、ホルダ部材40はその幅方向左右両端縁より図示しない略枠状のロックアームが板厚方向に沿って延出形成されている。そして、ホルダ部材40は一括ゴム栓30の後方から組み付けられ、ロックアームをコネクタハウジング10の外周面に設けられた図示しないロック突部に弾性係止させることで組み付け可能である。組み付け後の状態では、一括ゴム栓30がコネクタハウジング10の後端面10Bのホルダ部材40の前面との間で挟み付けられることにより、組み付け状態が保持される。
【0018】
コネクタハウジング10の後方からは各端子収容室12A、12Bに対して、端子金具20が挿入される。端子金具20は、全体として前後方向に細長く、前端部にタブTbが形成された周知の形態の雄端子金具である。端子金具20の後端部には、円形断面の電線WHが接続されて後方へ導出されている。また、電線WHの直径と電線挿通孔31の直径と略同じに設定されている。よって、端子金具20が各端子収容室12A、12Bに挿入されると、一括ゴム栓30の電線挿通孔31の内周面に設けられたリップ32が電線WHの被覆に対してシール状態で密着する。
【0019】
次に、実施例1の作用効果について説明する。
【0020】
本実施例によれば、コネクタハウジング10の後端面10Bを覆うように一括ゴム栓30が組み付けられており、一括ゴム栓30にはフェライトコア50が埋設される。そして、電線WHに重畳されたノイズを一括ゴム栓30の内部に埋設されたフェライトコア50によって効果的に除去することができる。また、フェライトコア50は一括ゴム栓30のリップ32の基部より内側に設けられるため、リップ32が電線WHの被覆に密着変形する際に、フェライトコア50によって変形が妨げられにくい。したがって、電線WHに対する良好なシール性を確保することができる。
【0021】
また、フェライトコア50は、一括ゴム栓30の板厚方向端部に寄せられた位置に配されているので、フェライトコア50が寄せられた側と反対側では、リップ32の変形時にフェライトコア50が存在しないことから、リップ32の圧縮変形が阻害されない。よって、電線WHの被覆に対するシール性をより一層向上させうる。
【0022】
<実施例2>
図4は本発明の実施例2を示している。実施例2と実施例1との相違点は、一括ゴム栓30内に埋設されたフェライトコア70の形状のみであり、他の構成は基本的に同じである。したがって、共通の構成は図面においては同一符号を付すことで重複した説明は省略する。
【0023】
実施例2のフェライトコア70は、図4に示すように、4つの電線挿通孔31を囲むような方形環状を成している。フェライトコア70に囲まれた電線挿通孔31に挿入される電線WHに対してのみノイズ除去がなされる。このような形態を採れば、ノイズ対策が必要な端子収容室12A、12Bと、ノイズ対策が不要な端子収容室12A、12Bを同一のコネクタハウジング10に設けることが可能となる。
【0024】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、電線挿通孔の断面形状を真円状としたが、これに限らず、楕円形、長円形であっても良い。
(2)上記実施例では、フェライトコアにブロック状と方形環状のものを用いたが、これに限らず、環状をなしていればどのような構造であっても良い。
(3)上記実施例では、端子金具に雄型のものを用いたが、これに限らず、雌型のものであっても良い。
(4)上記実施例では、端子収容室を上下2段、4列に亘って形成したが、端子収容室の数は任意である。
(5)上記実施例では、フェライトコアの内周面にもリップを形成したが、これに限らず、形成しなくても良い。
(6)上記実施例では、一括ゴム栓に外周リップを形成したが、これに限らず、形成しなくても良い。
(7)上記実施例では、フェライトコアを一括ゴム栓の板厚方向端部にに寄せて配置させたが、必ずしも板厚方向端部に寄せて配置する必要はなく、板厚方向中央部に配置させても良い。このようにすれば、一括ゴム栓の装着方向の制約をなくすことができる。
【符号の説明】
【0025】
10…コネクタハウジング
10B…後端面
12A、12B…端子収容室
20…端子金具
30…一括ゴム栓
31…電線挿通孔
32…リップ
50、70…フェライトコア
52…貫通部
WH…電線
図1
図2
図3
図4