(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、砂型鋳造製のベーゴマは形状が精密ではなく回転バランスが良くない。表面もざらついており、回転中には床(とこ)との接触部の摩擦抵抗が大きい。このため、回転は通常は1分以内であり長時間は回転できない。また、表面が比較的硬いため、使用者が容易に追加工(カスタマイズ)できにくい。
【0005】
また、金型鋳造製のベーゴマは、寸法精度が良く回転バランスに優れ表面も滑らかで接触部の摩擦抵抗も少ないが、比較的柔らかい金属であるため、床との接触部は耐摩耗性及び耐衝撃性に劣り耐久性がない。外周部もコマどうしのぶつかり合いによる傷がつきやすい。耐久性のある硬質金属で金型鋳造すると切削性(加工性)に劣るので、使用者が容易に追加工(カスタマイズ)できにくくなる。
【0006】
そこで本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、寸法精度が良く回転バランスに優れたベーゴマ及びベーゴマの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によれば、回転軸と、前記回転軸と同軸に前記回転軸の外周に嵌合される回転外周部と、を有し、前記回転軸は、前記回転軸の回転中心軸に平行な円筒形状であり前記回転外周部と嵌合する平行部と、前記平行部に連なり前記回転軸の回転中心軸に対して所定角度傾斜しており前記回転外周部と嵌合するテーパー部と、前記平行部又は前記テーパー部と連なる先端部と、からなることを特徴とする、ベーゴマが提供される。
【0008】
かかる構成によれば、回転軸と回転外周部とを平行部及びテーパー部からなる嵌合面で嵌合することにより、ほぼ完全な同軸を形成することができる。このようにして、寸法精度が良く回転バランスに優れたベーゴマを提供することができる。
【0009】
本発明は以下のようなさまざまな応用が可能である。以下に説明する本発明の応用例は、適宜組み合わせることが可能である。
【0010】
例えば、前記回転軸は、金属(チタン材、超硬合金、ステンレス材など)、カーボン、又は、ホルムアルデヒドを原料としたポリアセタール樹脂(金属の代替材料であり、デルリン(登録商標)としても知られる。)、潤滑性を有する硬質材料のいずれかからなるようにしてもよい。回転軸をこのように構成することによって、回転抵抗が少なく対磨耗性、対衝撃性に優れた回転軸とすることができる。よって、長時間スムーズな回転を実現することができる。
【0011】
なお、潤滑性を有する硬質材料とは、材料の表面・表層が滑りやすく磨耗しにくい特性(物性)を指す。例えば、スポンジのように穴が多数開いている構造の多孔質金属に潤滑剤を浸み込ませた(含有させた)表面が滑りやすい金属がある。また、電動モーターやロータリーエンジン等に使われているカーボン素材も、表面が滑りやすく磨耗しにくい硬質材料である。また、電車のパンタグラフの架線との接触面も、滑りやすく磨耗しにくいカーボン製である。また例えば、金属の表面に処理を施すことにより、摩擦係数の低減を図ることができる。本発明の回転軸には、このような摩擦係数が一定以下の素材か、摩擦係数を一定程度以下に低減させた素材を用いることができる。
【0012】
また、前記回転外周部は、前記回転軸よりも比重が大きく硬度の低い素材からなるようにしてもよい。回転外周部をこのように構成することによって、長時間安定した回転力の持続を実現することができるとともに、追加工(カスタマイズ)がしやすい。
【0013】
また、前記回転軸と前記回転外周部とは組み立て分解自在であってもよい。回転軸と回転外周部とを組み立て分解自在にすることによって、例えば床(ベーゴマを回す台、土俵)の布の状態などの外的要因に応じて、回転軸と回転外周部とを適宜組み合わせたベーゴマを構成することができる。床を使用して行う競技に際しては、床の布の状態(布目の粗さや張りの強弱による凹凸や滑りやすさや回転摩擦等)に合わせて、接触部の曲率半径が異なる複数種類のベーゴマをベーゴマの「高王」、「中王」、「ペ王」などの基本形状ごとに用意することが可能である。
【0014】
また、前記回転軸と前記回転外周部との間には、Oリングが圧着されてもよい。このような構成により、回転軸と回転外周部とを組み立てやすくすることができる。なお、組み立てた状態で分解不可能にしてもよく、あるいは、組み立て分解自在にしてもよい。なお、前記Oリングは、前記平行部の全域に設けられるようにしてもよい。すなわち、平行部の領域はOリングの幅に等しいようにしてもよい。なおこのとき、平行部の領域に合わせてOリングのサイズを決めてもよく、逆に、Oリングのサイズに合わせて平行部の領域の幅を決めてもよい。
【0015】
また、前記回転軸と前記回転外周部とは、ねじにより締結されてもよい。このような構成により、回転軸と回転外周部とを組み立てやすくすることができる。なお、組み立てた状態で分解不可能にしてもよく、あるいは、組み立て分解自在にしてもよい。なお、上記と同様に、前記ねじは、前記平行部の全域に設けられるようにしてもよい。すなわち、平行部の領域はねじの幅に等しいようにしてもよい。なおこのとき、平行部の領域に合わせてねじのサイズを決めてもよく、逆に、ねじのサイズに合わせて平行部の領域の幅を決めてもよい。
【0016】
また、前記先端部には、回転対称となる位置に複数の切り欠きを設けてもよい。このような切り欠きは、回転軸を回転外周部に結合させるためのスパナ掛けに用いることができる。特に、ねじで結合させる際に好適である。また、この切り欠きは、ベーゴマを回す紐の逃げ用に用いることができる。
【0017】
また、前記先端部は、半球部とその先端に設けられた突起部とからなってもよい。このように、相対的に曲率(R)の大きい半球部と、相対的に曲率の小さい突起部からなる構成とすることによって、ベーゴマは、半球部によって床の窪みに嵌まりにくく抜け出しやすくなるとともに、突起部によって床に対する回転抵抗が少なく長時間回転することができる。
【0018】
また、前記先端部の上部は、前記回転外周部の最下面外径よりも大きくしてもよい。先端部の上部を回転外周部の最下面外径よりも大きくしたことで、ベーゴマに紐掛けがしやすくなる。
【0019】
また、前記回転外周部は、表面粗さを粗くしてもよい。紐を掛ける回転外周部の表面粗さを粗くしたことにより、回転外周部から紐が滑りにくくなる。よって、紐掛けがしやすくなるとともに、紐からの回転駆動力がベーゴマに適正に伝わりやすくなる。なお、回転外周部の表面粗さは、初めから表面の粗い材質を用いてもよく、あるいは、表面粗さを粗くする加工を施してもよい。
【0020】
また、前記回転外周部は、紐掛け溝を構成してもよい。例えば、回転外周部の最外周部から内側の回転軸に向かって紐掛け溝を設けることにより、回転外周部に掛けられた紐がずれにくくなる。よって、紐からの回転駆動力がベーゴマに適正に伝わる。なお、紐掛け溝は、どのような向きに設けてもよい。
【0021】
また、前記回転外周部は、貫通孔、窪み又は空洞部を設けてもよい。回転外周部に設けた貫通孔、窪み又は空洞部により、ベーゴマの回転時に音が発するようにすることもできる。回転時にベーゴマが発する音は、回転速度の低下に伴い音質と音量が変化するため、回転速度の低下度合いを推測することができる。また、貫通孔、窪み又は空洞部を設けることによって、ベーゴマの大きさや質量を調整することができる。
【0022】
前記テーパー部の形態については、前記先端部の上方に、前記テーパー部の最大外径部を有する向きであってもよく、また、前記先端部の上方に、前記テーパー部の最小外径部を有する向きであってもよい。
【0023】
上記課題を解決するため、本発明の第2の観点によれば、上記本発明の第1の観点のベーゴマに、さらに、前記回転軸と同軸に、前記回転外周部の外周に装着されるアーマー部を備えたことを特徴とするベーゴマが提供される。なお、回転外周部とアーマー部とは組立分解可能であってもよく、一体の固定型であってもよい。必要に応じてアーマー部を着脱したり、あるいは、様々な形態のアーマー部を準備したりすることができるため、複数種類の構成品から最も適切なものを選んで組み合わせ、コマの競技大会において容易にコマのセッティングができる。
【0024】
また、前記回転外周部は、前記回転軸の回転中心軸に対して所定角度傾斜しており前記アーマー部と嵌合する第2テーパー部を有してもよい。回転外周部とアーマー部とをテーパー面嵌合することができるため、回転軸と回転外周部とアーマー部とが回転時にバランスに優れた完全な同軸を実現することができる。
【0025】
本発明の第2の観点のベーゴマにおいても、上記本発明の第1の観点のベーゴマと同様の応用が可能である。
【0026】
上記課題を解決するため、本発明の第3の観点によれば、上記本発明の第1の観点のベーゴマの製造方法が提供される。本発明のベーゴマの製造方法は、前記回転軸を、旋盤(NC旋盤等)により回転切削加工して製作する工程と、前記回転外周部を、旋盤(NC旋盤等)により回転切削加工して製作する工程と、前記回転軸と前記回転外周部とを嵌合させることにより組み立てる工程と、を含むことを特徴とする。
【0027】
かかる方法によれば、回転軸は、旋盤(NC旋盤等)により回転切削加工して製作するため、回転中心軸に対する各部の同軸度がほぼ完全に実現でき、テーパー部についても精密に構成でき量産できる。また、回転外周部も旋盤(NC旋盤等)により回転切削加工して製作するため、回転中心軸に対する各部の同軸度がほぼ完全に実現でき、テーパー部についても精密に構成でき量産できる。そして、回転軸と回転外周部の組み立ては、テーパー部同士を嵌合させることにより回転中心軸に対する各部の同軸度がほぼ完全になり、回転時の振動が少なく極めてスムーズに長時間回転するベーコマを製造することが可能である。
【0028】
上記課題を解決するため、本発明の第4の観点によれば、上記本発明の第2の観点のベーゴマの製造方法が提供される。本発明のベーゴマの製造方法は、前記回転軸を、旋盤(NC旋盤等)により回転切削加工して製作する工程と、前記回転外周部を、旋盤(NC旋盤等)により回転切削加工して製作する工程と、前記アーマー部を、旋盤(NC旋盤等)により回転切削加工して製作する工程と、前記回転軸と前記回転外周部とを嵌合させ、前記回転外周部の外周に前記アーマー部を装着させることにより組み立てる工程と、を含むことを特徴とする。
【0029】
回転軸は、NC旋盤により回転切削加工して製作するため、回転中心軸に対する各部の同軸度がほぼ完全に実現でき、テーパー部についても精密に構成でき量産できる。また、回転外周部もNC旋盤等により回転切削加工して製作するため、回転中心軸に対する各部の同軸度がほぼ完全に実現でき、テーパー部についても精密に構成でき量産できる。さらに、アーマー部もNC旋盤等により回転切削加工して製作するため、回転中心軸に対する各部の同軸度がほぼ完全に実現でき、テーパー部についても精密に構成でき量産できる。回転軸、回転外周部及びアーマー部の組み立ては、テーパー部同士を嵌合させることにより回転中心軸に対する各部の同軸度がほぼ完全になり、回転時の振動が少なく極めてスムーズに長時間回転するベーゴマが実現できる。
【0030】
上記製造方法において、前記回転軸を回転切削加工して製作する工程の後に、前記回転軸に対して、焼き入れ処理、チタンコーティング処理、めっき処理又は鏡面研磨仕上げ処理のいずれか又は複数を組み合わせた処理を含むようにしてもよい。焼き入れ処理によって硬度を高めることができる。また、各種処理を行うことにより、耐摩耗性や耐衝撃性を向上させたり、長時間スムーズな抵抗の少ない回転を実現させたりすることができる。
【0031】
上記課題を解決するため、本発明の第5の観点によれば、上記本発明の第1の観点のベーゴマの他の製造方法が提供される。本発明のベーゴマの製造方法は、前記回転軸を、金型鋳造法(ダイキャスト)又は焼結法により製作する工程と、前記回転外周部を、金型鋳造法(ダイキャスト)又は焼結法により製作する工程と、前記回転軸と前記回転外周部とを嵌合させることにより組み立てる工程と、を含むことを特徴とする。
【0032】
このように、回転軸及び回転外周部を、金型鋳造法(ダイキャスト)又は焼結法によって製作することもできる。これにより、回転軸及び回転外周部の組み立ては、テーパー部同士を嵌合させることにより回転中心軸に対する各部の同軸度がほぼ完全になり、回転時の振動が少なく極めてスムーズに長時間回転するベーゴマが実現できる。なお、回転軸は焼結法により製造し、回転外周部は金型鋳造法(ダイキャスト)により製造することが、コストなどの面で最適である。
【0033】
上記課題を解決するため、本発明の第6の観点によれば、上記本発明の第2の観点のベーゴマの他の製造方法が提供される。本発明のベーゴマの製造方法は、前記回転軸を、金型鋳造法(ダイキャスト)又は焼結法により製作する工程と、前記回転外周部を、金型鋳造法(ダイキャスト)又は焼結法により製作する工程と、前記アーマー部を、金型鋳造法(ダイキャスト)又は焼結法により製作する工程と、前記回転軸と前記回転外周部とを嵌合させ、前記回転外周部の外周に前記アーマー部を装着させることにより組み立てる工程と、を含むことを特徴とする。
【0034】
このように、回転軸、回転外周部及びアーマー部を、金型鋳造法(ダイキャスト)又は焼結法によって製作することもできる。これにより、回転軸、回転外周部及びアーマー部の組み立ては、テーパー部同士を嵌合させることにより回転中心軸に対する各部の同軸度がほぼ完全になり、回転時の振動が少なく極めてスムーズに長時間回転するベーゴマが実現できる。なお、回転軸は焼結法により製造し、回転外周部及びアーマー部は金型鋳造法(ダイキャスト)により製造することが、コストなどの面で最適である。
【0035】
上記製造方法において、前記回転外周部はアルミニウムからなり、前記回転外周部に(種々の色の)アルマイト処理を施してカラーリングする工程を含むようにしてもよい。アルマイト処理により、様々な色のベーゴマを製造することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、寸法精度が良く回転バランスに優れたベーゴマ及びベーゴマの製造方法を提供することが可能である。本発明のその他の効果については、以下の発明を実施するための形態の項でも説明する。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0039】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について説明する。本実施形態にかかるベーゴマ100の構成について、
図1、
図2を参照しながら説明する。
【0040】
ベーゴマ100は、
図1に示したように、回転軸110と、回転軸110と同軸に回転軸110の外周に装着される回転外周部120と、Oリング130と、を主に有する。
図1(b)は
図1(a)のOリング130部分の拡大図である。回転軸110と回転外周部120とは組み立て分解可能である。ベーゴマ100は、一般的なベーゴマと同じく、形は比較的浅い円錐形で、上面には軸が突出しておらず、上面はほぼ平らである。以下、ベーゴマ100の各構成要素について詳細に説明する。
【0041】
(回転軸110)
回転軸110は、
図1に示したように、軸AXに対して、回転対称に構成される。軸AXは、ベーゴマ100の回転軸であるとともに、回転軸110の回転軸でもある。回転軸110は、軸AXに平行な平行部112と、平行部112に連なり軸AXに対して所定角度(約5°〜50°)傾斜したテーパー部114と、テーパー部114と連なる先端部116と、からなる。平行部112の部分は円筒形状であり、テーパー部114の部分は平行部112の円筒部分から広がる略円錐形状(略山形形状)である。この平行部112とテーパー部114が、後述する回転外周部120との嵌合面となる。なお、
図1には図示していないが、平行部112の上部は、後述する回転外周部120との嵌合を容易にするために、角に丸み(R)を付けてもよい。
【0042】
回転軸110は、テーパー部114に連なって先端部116を有する。先端部116は、床と接触する部分であり、
図1に示した例では略円錐形状(略山形形状)を逆さまにした形状を有し、その先端は略半球形状を有する。先端部116の上方に、後述する回転外周部120のテーパー部124の最大外径部を有する。
【0043】
回転軸110は、
図1に示したように、回転外周部120の最下面外径よりもわずかに大きくしたことを特徴とする。これは、ベーゴマ100に紐掛けするときの便宜である。
図2に示したように、回転軸110のわずかに大きい部分があることで、紐Sが掛けやすい。
【0044】
回転軸110は、金属(チタン材、超硬合金、ステンレス材など)、カーボン、又は、ホルムアルデヒドを原料としたポリアセタール樹脂(金属の代替材料であり、デルリン(登録商標)としても知られる。)、潤滑性を有する硬質材料などで構成することができる。なお、潤滑性を有する硬質材料とは、材料の表面・表層が滑りやすく磨耗しにくい特性(物性)を指す。回転軸110には、このような摩擦係数が一定以下の素材か、摩擦係数を一定程度以下に低減させた素材を用いることができる。
【0045】
以上、回転軸110について説明した。次に回転外周部120について説明する。
【0046】
(回転外周部120)
回転外周部120は、回転軸110と同軸に回転軸110の外周に装着される。回転軸110と回転外周部120とは組み立て分解自在であってもよく、分解不可能であってもよい。回転外周部120は、軸AXに対して、回転対称に構成される。軸AXは、ベーゴマ100の回転軸であるとともに、回転外周部120の回転軸でもある。回転外周部120は、上述した回転軸110に嵌合するように、軸AXに平行な平行部122と、平行部122に連なり軸AXに対して所定角度傾斜したテーパー部124と、からなる。テーパー部124の傾斜角度は、上述した回転軸110のテーパー部114と同じである。
【0047】
回転外周部120は、金属製又は潤滑性を有する硬質材料で構成される。より具体的には、金属であれば、例えば、チタン材、超硬合金又はステンレス材を用いることができる。また、潤滑性を有する硬質材料としては、ホルムアルデヒドを原料としたポリアセタール樹脂(金属の代替材料であり、デルリン(登録商標)としても知られる。)を用いることができる。
【0048】
回転外周部120の材質は、回転軸110と同じ材質であってもよく、異なる素材であってもよい。例えば、回転外周部120の材質として、回転軸110よりも比重が大きい金属とすることができる。回転外周部120をこのように構成することによって、長時間安定した回転力の持続を実現することができる。また、回転外周部120の材質として、回転軸110よりも硬度の低い金属であってもよい。回転外周部120をこのように構成することによって、追加工(カスタマイズ)がしやすい。また、回転外周部120は、回転軸110と比較して安価で回転切削加工に優れる一般的な材料を用いてもよい。
【0049】
回転外周部120の外周面は、ベーゴマ100の外周面を構成する部分である。回転外周部120の外周面は、任意の形状とすることができるとともに、様々な装飾を施すことができる。また、回転外周部120の上面は、回転軸110の上面と面一(つらいち)であり、ベーゴマ100の上面は平坦な面として構成される。
【0050】
(Oリング130)
Oリング130は、
図1に示したように、回転軸110と回転外周部120との間に位置する。回転軸110と回転外周部120とを嵌合させたときに、回転軸110と回転外周部120との間に圧着され双方を固定する。このような構成により、回転軸110と回転外周部120とを組み立てやすくすることができる。
図1に示した一例では、回転外周部120に溝が設けられ、その溝にOリング130が設けられている。ただし、回転軸110の側にOリング130を設けてもよい。また、Oリングに代えて、C字やU字のリングやこれらと同等品を用いてもよい。
【0051】
以上、本実施形態にかかるベーゴマ100の構成について説明した。次に、ベーゴマ100の製造方法について説明する。
【0052】
まず、ベーゴマ100の製造方法の概略を説明する。
回転軸110を、NC旋盤により棒材から回転切削加工して製作し、回転外周部120を、NC旋盤により回転切削加工して製作し、回転軸110と回転外周部120とを、テーパー部114、124どうしを嵌合させることにより組み立てる。組み立て時には、回転軸110を回転外周部120の下方から挿入する。分解時には、回転軸110を上面から押圧することにより、回転軸110を回転外周部120から取り外す。なお、ベーゴマ100の回転時には、回転軸110には下方からのみ力が掛かるので、意図せずに分解することはない。
【0053】
NC旋盤は、各種の旋盤に数値制御(Numerical Control)装置を取り付け、刃物台の移動距離や送り速度を数値で指示できるようにしたものである。現在では、コンピュータを用いての制御(CNC)が主流である。NC旋盤によれば、0.005mm以下の精度で作成できるため、回転軸110と回転外周部120のテーパー部114、124どうしの嵌合を厳密に行うことが可能である。ただし、必ずしもNC旋盤を用いなくてもよく、必要とされる精度に応じて、適切な旋盤を用いることができる。
【0054】
回転軸110を回転切削加工して製作する工程の後に、回転軸110に対して、焼き入れ処理、チタンコーティング処理、めっき処理、鏡面研磨仕上げ処理のいずれか又は複数を組み合わせた処理を行うようにしてもよい。焼き入れ処理によって硬度を高めたり、各種処理を行ったりすることにより、耐摩耗性や耐衝撃性を向上させたり、長時間スムーズな抵抗の少ない回転を実現させたりすることができる。
【0055】
より詳細には、以下の方法が好ましい。
(1)チタン材又は超硬合金から削り出し、先端部を鏡面研磨仕上げ
(2)潤滑性を有する硬質材料から削り出し、先端部を鏡面研磨仕上げ
(3)SK材(炭素工具鋼鋼材)等焼き入れ可能材から削り出し、研磨仕上げ後焼き入れ処理
(4)ステンレス材等から削り出し、研磨仕上げ後、チタンコーティング処理
(5)ステンレス材等から削り出し、研磨仕上げ後、テフロン(登録商標)コーティング処理
(6)ステンレス材等から削り出し、研磨仕上げ後、めっき処理
【0056】
次に、回転外周部120の製造方法について説明する。回転外周部120は、長時間安定した回転力の持続を安価に実現するために、一般に入手できる比重が大きく切削しやすい丸棒材又は多角形の棒材からベーゴマ100の外周部形状に適するように回転切削して製造する。回転外周部120は、SK材(炭素工具鋼鋼材)等の焼き入れ処理に適した材料を用いることができる。
【0057】
具体的には、回転外周部120は、直径25mm〜60mmの丸棒材又は多角形の棒材をNC旋盤を用いた回転切削加工により製造し、外周部又は上面の形状をプレス加工により形成し、材料特性を生かした後処理を施して製造する。また、回転外周部120がアルミニウムであるときには、種々の色のアルマイト処理を施してカラーリングすることができる。
【0058】
以上、NC旋盤を用いた回転切削工程によるベーゴマ100の製造方法について説明した。なお、ベーゴマ100は、金型鋳造法(ダイキャスト)又は焼結法によって製造することも可能である。すなわち、回転軸110を、金型鋳造法又は焼結法により製作し、回転外周部120を、金型鋳造法又は焼結法により製作し、回転軸110と回転外周部120とを、テーパー部114、124どうしを嵌合させることにより組み立てるようにしてもよい。なお、回転軸110は焼結法により製造し、回転外周部120は金型鋳造法により製造することが、コストなどの面で最適である。
【0059】
(第1の実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、回転軸110と回転外周部120とを平行部112、122及びテーパー部114、124からなる嵌合面で嵌合することにより、ほぼ完全な同軸を形成することができる。このようにして、寸法精度が良く回転バランスに優れたベーゴマ100を提供することができる。
【0060】
また、回転軸110の先端部116の上部を、回転外周部120の最下面外径よりも大きくしたことによって、紐Sが掛けやすい。なお、本発明はこれに限定されず、回転軸110の先端部の上部を、回転外周部120の最下面外径と同じか、小さくしてもよい。
【0061】
ここで、本実施形態のテーパー部114、124による嵌合(テーパー面嵌合)と、一般的な独楽の楔結合との差異について説明する。本実施形態のテーパー面嵌合と、独楽の回転軸と外周部の嵌合に用いられる楔効果とは、その用途・目的・効果において全く異なる。その差異は以下のとおりである。
【0062】
回転軸のテーパーの角度が緩くなるほど(直径の変化率が少なくなるほど)楔の効果が大きく現れ、一度嵌合させると楔効果により回転軸を対象物(外周部)から引く抜くことが次第に困難となる。通常の独楽の回転軸と外周部の嵌合に用いる楔嵌合においては、楔の効果が十分に発揮されて回転軸が外周部から抜け出ないように(脱落しないように)直径の変化率を十分に小さくする(テーパーの角度を緩くする)とともに回転軸を外周部に大きな力で打ち込むか強い力で押し込んで固着させる(固定する)。日本古来の形式の独楽では回転軸を緩いテーパーに構成して回転外周部に打ち込んで楔効果によって嵌合させた構造のものが存在するが、回転軸は楔効果により回転外周部にきつく食いついており容易には分離できない。
【0063】
これに対して本実施形態の回転軸110と回転外周部120とのテーパー面嵌合は、楔効果が明確に現れない比較的急なテーパー角度に設定して容易に着脱(結合・分離)できること、及び回転軸110と回転外周部120を回転の中心軸AXに対して同軸に嵌合されることを実現した。テーパー面嵌合のテーパーの角度は、回転軸と外周部の材質により多少異なるが片側の角度でおおよそ5°〜50°(テーパーの開き角度ではおおよそ10°〜100°)が適する。
【0064】
以下に、上記第1の実施形態の応用例について説明する。以下の実施形態では、ベーゴマの構造について、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。ベーゴマの製造方法についても、上記第1の実施形態と実質的に同様の点については、重複説明を省略する。
【0065】
(第2の実施形態)
上記第1の実施形態では、回転軸110と回転外周部120とを組み立て分解自在にするための構成として、Oリング130について説明した。本実施形態のベーゴマ200は、
図3に示したように、回転軸210と回転外周部220とを組み立て分解自在にするための構成として、ねじ230を設けたことを特徴とする。なお、回転軸210及び回転外周部220については、上記第1の実施形態の回転軸110及び回転外周部120と実質的に同様である。すなわち、
図2において平行部212、テーパー部214、先端部216、平行部222及びテーパー部224は、上記第1の実施形態の平行部112、テーパー部114、先端部116、平行部122及びテーパー部124と実質的に同様である。
【0066】
上記第1の実施形態と同様に、回転外周部220に対して、回転軸210を下方から挿入する。そして、ねじ230によって、回転軸210と回転外周部220が組み立てられる。ベーゴマ200の回転始動時には紐によりねじの締まる方向に回転力が伝わるので、回転時にベーゴマ200が分解することはない。
【0067】
以上説明したように、本実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様に、回転軸210と回転外周部220とを組み立て分解自在にすることができる。
【0068】
(第3の実施形態)
本実施形態のベーゴマ300は、
図4に示したように、回転軸310と、回転軸310と同軸に回転軸310の外周に装着される回転外周部320と、を主に有する。以下、回転軸310及び回転外周部320について、上記第1の実施形態の回転軸110及び回転外周部120と異なる点を中心に説明する。
【0069】
本実施形態のベーゴマ300は、
図4に示したように、回転軸310の先端部316の回転対称となる位置に、2つの切り欠き316aを設けたことを特徴とする。
図4(a)は斜視図であり、
図4(b)は側面図であり、
図4(c)は底面図である。この2つの切り欠き316aは、回転軸310を回転外周部320に結合させるためのスパナ掛けに用いることができる。また、この切り欠き316aは、ベーゴマ300を回す紐の逃げ用に用いられる。
【0070】
図4に示した一例では、切り欠き316aは、2つ設けられているが、切り欠き316aの数は2つに限定されない。1つでもよく、3つ以上でもよい。ただし、切り欠き316aの数が偶数個であれば、回転対称となるため、ベーゴマの回転時のバランスがよい。また、スパナ掛けもしやすい。特に、上記第2の実施形態(
図3)のように、ねじ230で結合させる場合は、スパナ掛けの際に偶数個の切り欠き316aが有効である。
【0071】
(第4の実施形態)
本実施形態のベーゴマは、
図4に示したように、上記第1の実施形態のベーゴマ100(
図1)の回転軸110の先端部116に対応する部分の形状を変えたことを特徴とする。その他の点については、上記第1の実施形態と実質的に同様である。
図5(a)は半径小の先端部416aを示し。
図5(b)は半径大の先端部416bを示し。
図5(c)、(d)は半球部の先端に突起部を設けた先端部416cを示す。
【0072】
図5(a)に示したように、先端部416aの曲率(R)の半径が小さいと、床の窪みから抜け出せない。また、
図5(b)に示したように、先端部416bの曲率が大きいと、床の窪みから抜け出せるが、回転時の床との抵抗が大きくなり長時間回転しない。そこで、
図5(c)、(d)に示したように、大きな半径の先端部に小さな半径の突起を設けることにより、大きな半径の先端部によって窪みから抜け出せる(
図5(c))とともに、小さな半径の突起によって回転抵抗が少なく長時間回転する(
図5(d))。
【0073】
(第5の実施形態)
本実施形態のベーゴマ500は、
図6の実線に示したように、回転軸510と、回転軸510と同軸に回転軸510の外周に装着される回転外周部520と、を主に有する。本実施形態のベーゴマは、
図6の実線に示したように、回転軸510及び回転外周部520の形状を変えたことを特徴とする。その他の点については、上記第1の実施形態と実質的に同様である。
【0074】
本実施形態のベーゴマ500は、
図6の実線に示したように、斜めになって回転しても、回転軸510の先端部の半球部の曲率半径が同じ部分が当たるように、半球部から円錐部である回転外周部520までの高さを半球の曲率半径ごとに十分に取ったことを特徴とする。なお
図6の破線は、対比のために従来のベーゴマの形状を示す。
【0075】
以上説明したように本実施形態によれば、ベーゴマ500が斜めになって回転しても、回転外周部520が床に接触することを防止することができる。
【0076】
(第6の実施形態)
本実施形態のベーゴマは、
図7に示したように、上記第1の実施形態のベーゴマ100(
図1)の回転外周部120に対応する部分の形状を変えたことを特徴とする。その他の点については、上記第1の実施形態と実質的に同様である。
【0077】
本実施形態のベーゴマは、
図7に示したように、同じ回転軸610に異なる形状の回転外周部620a、620b、620cを任意に選択することができる。NC旋盤を用いる回転切削加工により、ベーゴマの基本形状の「高王」620a、「中王」620b、「ペ王」620cなどに加えて任意の形状に加工することができ、多くのバリエーションのベーゴマを製造することが可能である。
【0078】
以上説明したように本実施形態によれば、NC旋盤を用いる回転切削加工により、任意の形状に加工された回転外周部620a、620b、620cを構成することができるため、多くのバリエーションのベーゴマを構成することができる。
【0079】
(第7の実施形態)
本実施形態のベーゴマ700は、
図8に示したように、回転軸710と、回転軸710と同軸に回転軸710の外周に装着される回転外周部720と、を主に有する。以下、回転軸710及び回転外周部720について、上記第1の実施形態の回転軸110及び回転外周部120と異なる点を中心に説明する。
【0080】
本実施形態のベーゴマ700は、
図8に示したように、回転外周部720の表面粗さを粗くしたことを特徴とする。具体的な加工処理としては、バイトの刃先を鋭角に作り、必要な部分に細かな連続した溝を入れることで滑り止め加工が実施できる。また、NC旋盤に使用するバイトの刃先形状を巾約2mm程度の半球状にして、必要な部分を加工することにより、溝を構成することができる。このような溝は、ベーゴマ700を回すための紐のガイド溝として機能する。回転外周部720の円錐部の最大外周から下方(回転軸方向)に順次ガイド溝を設けることにより、
図8に示したように、7〜8列の紐掛け用のガイド溝が形成できる。ガイド溝に紐を掛けることにより、ベーゴマ700と紐との接触面積が大きくなり、従って摩擦も大きくなり滑りにくくなる。
【0081】
なお、回転外周部720の表面を粗くする加工としては、単に、回転外周部720のNC旋盤加工後に必要な部分をサンドブラスト等で梨地加工すること等により、表面を粗く仕上げる(滑り止め処理する)ことも可能である。
【0082】
以上説明したように本実施形態によれば、紐を掛ける回転外周部720の表面粗さを粗くしたことにより、回転外周部720から紐が滑りにくくなる。よって、紐からの回転駆動力がベーゴマ700に適正に伝わる。
【0083】
(第8の実施形態)
本実施形態のベーゴマ800は、
図9に示したように、回転軸810と、回転軸810と同軸に回転軸810の外周に装着される回転外周部820と、を主に有する。以下、回転軸810及び回転外周部820について、上記第1の実施形態の回転軸110及び回転外周部120と異なる点を中心に説明する。
【0084】
本実施形態のベーゴマ800は、
図9に示したように、回転外周部820に、紐Sを掛けるための紐掛け溝820aが形成されたことを特徴とする。紐掛け溝820aは、回転外周部820の最外周部から内側の回転軸810に向かって設けられる。なお、紐掛け溝の向きは、
図9に示した一例に限定されず、任意の向きに形成することができる。
【0085】
以上説明したように本実施形態によれば、紐掛け溝820aが回転外周部820の最外周部から内側の回転軸810に向かって設けられているため、回転外周部820に掛けられた紐Sがずれにくくなっている。よって、紐Sからの回転駆動力がベーゴマ800に適正に伝わる。
【0086】
(第9の実施形態)
本実施形態のベーゴマ900は、
図10に示したように、回転軸910と、回転軸910と同軸に回転軸910の外周に装着される回転外周部920と、を主に有する。以下、回転軸910及び回転外周部920について、上記第1の実施形態の回転軸110及び回転外周部120と異なる点を中心に説明する。
【0087】
本実施形態のベーゴマ900は、
図10に示したように、回転外周部920に、貫通孔又は窪み920aを設けたことを特徴とする。貫通孔又は窪み920aは、1つ設けてもよく、複数個設けてもよい。ただし、貫通孔又は窪み920aは、形状又は個数を調整して回転対称に設けることによって、ベーゴマ900の回転バランスに影響を与えない。
【0088】
ベーゴマ900は、回転外周部920に設けた貫通孔又は窪み920aにより、回転時に音を発する。回転時にベーゴマ900が発する音は、回転速度の低下に伴い音質や音量が変化するため、回転速度の低下度合いが推測できる。
【0089】
以上説明したように本実施形態によれば、回転時にベーゴマ900が発する音によって、回転速度の低下に伴い音質や音量が変化するため、回転速度の低下度合いが推測できる。
【0090】
(第10の実施形態)
本実施形態のベーゴマ1000は、
図11に示したように、回転軸1010と、回転軸1010と同軸に回転軸1010の外周に装着される回転外周部1020と、を主に有する。以下、回転軸1010及び回転外周部1020について、上記第1の実施形態の回転軸110及び回転外周部120と異なる点を中心に説明する。
【0091】
本実施形態のベーゴマ1000は、
図11に示したように、回転外周部1020に、1又は2以上の空洞部1020aを設けたことを特徴とする。
図11に示した一例では、空洞部1020aは、回転外周部1020の上面から内部に向かって設けられており、さらに、外部から分からないように蓋1030が設けられている。ただし、蓋1030は設けなくてもよい。このように、複数の空洞部1020aを設けたことによって、空洞部1020aの数や形状を変えることで、空洞部1020a全体の大きさが変えられる。なお、空洞部1020aは、回転対称に設けることによって、ベーゴマ1000の回転バランスに影響を与えない。
【0092】
ここで、ベーゴマの外周部外径と重量との関係について説明する。
図12は、ベーゴマの外周部外径と重量の関係を示す図である。
図12に示したように、ベーゴマの重量は外周部外径の2乗に比例して大きくなる。ベーゴマの競技では、ゴマ同士が床の上でぶつかり合い対戦相手のコマをはじき出して勝敗を競う。1/2×(コマの慣性重量)×(回転数の2乗)で近似算出されるベーゴマの運動エネルギーがいかに大きいかが勝敗を決する重要な要素である。
【0093】
本実施形態(及び他の実施形態)のベーゴマは、回転軸に対して回転外周部を取り換えることができるため、コマの運動エネルギーが最も大きく(回転数が最も高く、重量が適度に重い)になるように、使用者の力量に合わせて回転外周部の大きさと重量を選ぶことができる。
【0094】
以上説明したように本実施形態によれば、空洞部1020aを設けたことによって、ベーゴマの大きさや質量を調整することができる。例えば、空洞部1020aの数や形状を変えることで、回転外周部1020の寸法を変えずに重量を変えることができる。
【0095】
なお、本実施形態では、空洞部1020aを設けることによってベーゴマの質量を変えることについて説明した。これは、ベーゴマの所持者が、ベーゴマをカスタマイズすることを想定したものである。単に質量の異なるベーゴマの種類を増やすだけであるなら、例えば、ベーゴマの材質を変えることによって、ベーゴマの質量を変えてもよい。また、上記第9の実施形態で説明した貫通孔又は窪み920aによっても、ベーゴマの質量を変えることができる。
【0096】
(第11の実施形態)
本発明の第11の実施形態について、主に
図13〜
図16を参照しながら説明する。上記第1の実施形態では、回転軸110と同軸に回転外周部120を設けた構成について説明した。本実施形態では、さらに、回転軸と同軸に、回転外周部の外側にアーマー部を設けたことを特徴とする。本実施形態では、上記第1の実施形態と同様の点については重複説明を省略し、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0097】
本実施形態にかかるベーゴマ1100は、
図13に示したように、回転軸1110と、回転軸1110と同軸に回転軸1110の外周に装着される回転外周部1120と、を有し、さらに、アーマー部1130を備えたことを特徴とする。アーマー部1130は、回転軸1110と同軸に回転外周部1120の外周に装着される。以下、順に説明する。
【0098】
回転軸1110は、上記第1の実施形態の回転軸110と実質的に同様である。回転外周部1120は、上記第1の実施形態の回転外周部120と異なる点としては、
図13に示したように、回転軸1110とのテーパー面嵌合のためのテーパー部1124を有するとともに、アーマー部1130を同軸に外周側にテーパー面嵌合できるようにテーパー部1126を有する。
【0099】
アーマー部1130は、
図13に示したように、回転外周部1120の外周側から上面にかけて設けられる。回転外周部1120とアーマー部1130とは、回転軸部1120の上部とアーマー部1130の上部とを固定ねじ1140でねじ止めすることによって、固定されている。
【0100】
アーマー部1130は、上記第1の実施形態の回転軸110と同じ材質であってもよく、異なる素材であってもよい。例えば、アーマー部1130の材質として、回転軸110よりも比重が大きい金属とすることができる。アーマー部1130をこのように構成することによって、長時間安定した回転力の持続を実現することができる。また、アーマー部1130の材質として、硬度の低い金属であってもよい。アーマー部1130をこのように構成することによって、追加工(カスタマイズ)がしやすい。また、アーマー部1130は、回転軸110と比較して安価で回転切削加工に優れる一般的な材料を用いてもよい。
【0101】
アーマー部1130は、
図14(a)に示したように、回転軸1110は、先端部の半径の大きさを、小、中、大に変更することができる。また、14(b)に示したように、回転外周部1120の径寸法も、小(図中の破線)、中(図中の実線)、大(図中の破線)に変更することができる。さらに、
図14(c)に示したように、アーマー部1130の径寸法も、小、中、大に変更することができる。なお、本実施形態にかかるベーゴマ1100も、回転軸1110、回転外周部1120、及びアーマー部1130を、それぞれ組み立て分解自在としてもよく、組み立て後に固定して分解不可能としてもよい。
【0102】
図15は、本実施形態の他のベーゴマ1200を示す図である。ベーゴマ1200は、
図15に示したように、回転軸1210と、回転軸1210と同軸に回転軸1210の外周に装着される回転外周部1220と、を有し、さらに、アーマー部1230を備えたことを特徴とする。アーマー部1230は、回転軸1210と同軸に回転外周部1220の外周に装着される。
【0103】
回転軸1210は、上記第1の実施形態の回転軸110と実質的に同様である。回転外周部1220は、
図15に示したように、回転軸1210とのテーパー面嵌合のためのテーパー部1224を有するとともに、アーマー部1230を同軸に外周側にテーパー面嵌合できるようにテーパー部1226を有する。
【0104】
ベーゴマ1200は、
図15に示したように、アーマー部1230が、回転外周部1220の上面には設けられず、外周側のみに設けられる。このような構成の場合、固定板1250でアーマー部1230及び回転外周部1220の上面を覆い、固定板1250とアーマー部1230の上面を固定ねじ1240によりねじ止めすることができる。これにより、アーマー部1230と回転外周部1220が固定される。
【0105】
このように固定板1250を設けた場合は、回転軸1210の形状を逆向きにすることができる。すなわち、ベーゴマ1200の回転軸1210は、
図15に示したように、床と接触する下方(前方)部分は略半球形状を有し、この略半球形状の部分から少し上方(後方)にテーパー部1224の最小外径部及びそれに続くテーパー部1224を有する形状である。ベーゴマ1200が回転するときには、下方から力を受けるが、固定板1250によって、回転軸1210が分解することはない。なお、アーマー部が無いベーゴマであっても、このような固定板を設けること等によって、回転軸の向きを逆にすることができる。
【0106】
以上、本実施形態にかかるベーゴマ1100(ベーゴマ1200)の構造について説明した。次に、ベーゴマ1100の製造方法について、
図16を参照しながら説明する。なお、回転軸1110と回転外周部1120については、上記第1の実施形態と同様に製造できるため、本実施形態ではアーマー部1130を中心に説明する。
【0107】
アーマー部1130は、NC旋盤などにより回転切削加工が施される。回転切削加工が施された後、アーマー部1130は、
図16に示したように、成形機下部1310と成形機上部1320とからなるプレス成形機1300でプレス加工が施されて完成する。なお、プレス加工を行わずに回転切削加工のみでもよい。また、回転切削加工を行わずにプレス加工のみを行うことにしてもよい。
【0108】
(第11の実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、上記実施形態の効果に加えて、必要に応じてアーマー部を着脱したり、あるいは、様々な形態のアーマー部を準備したりすることができるため、複数種類の構成品から最も適切なものを選んで組み合わせ、コマの競技大会において容易にコマのセッティングができる。
【0109】
また、回転外周部1120とアーマー部1130とをテーパー面嵌合することができるため、回転軸1110と回転外周部1120とアーマー部1130とが回転時にバランスに優れた完全な同軸を実現することができる。ただし、アーマー部の取り付けは、必ずしもテーパー面嵌合でなくてもよい。また、アーマー部は組み立て分解可能ではなく、ねじやその他の固着手段により、回転外周部に固着するようにしてもよい。また、アーマー部1130の製造方法は、NC旋盤などによる回転切削加工ではなく、金型鋳造法又は焼結法により製作してもよい。
【0110】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0111】
例えば、上記実施形態では、回転軸と回転外周部が組み立て分解可能である例について説明したが、本発明はこれに限定されない。回転軸と回転外周部とは一体に組み立て分解不可能であってもよい。例えば、
図1又は
図3に示したように、Oリング130やねじ230によって回転軸と回転外周部とを一体化した後、分解不可能なように固着してもよい。
【0112】
また、上記実施形態では、回転軸と回転外周部の間にOリングを設ける構成(
図1)や、ねじを設ける構成(
図3)について説明したが、本発明はこれに限定されない。Oリングやねじ以外の手段により、回転軸と回転外周部を組み立て分解可能にしてもよい。また、回転軸と回転外周部を組み立て分解可能としない場合は、Oリングやねじなどを設けなくてもよい。また、Oリングは、回転軸の平行部の全域に設けられるようにしてもよい。
【0113】
また、上記実施形態では、ベーゴマの上方に平行部があり、ベーゴマの下方にテーパー部がある例について説明したが、本発明はこれに限定されない。ベーゴマの上方にテーパー部があり、ベーゴマの下方に平行部があってもよい。この場合、回転軸において、先端部は平行部と連なることになる。
【0114】
また、上記実施形態では、先端部の上部が、回転外周部の最下面外径よりも大きい構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。先端部の上部が、回転外周部の最下面外径と同じ又は小さい形状であってもよい。
【0115】
また、上記実施形態では、回転軸は、金属(チタン材、超硬合金、ステンレス材など)、カーボン、又は、ホルムアルデヒドを原料としたポリアセタール樹脂(金属の代替材料であり、デルリン(登録商標)としても知られる。)、潤滑性を有する硬質材料などで構成する例について説明したが、本発明はこれに限定されず、任意の素材を用いることができる。回転外周部とアーマー部についても同様に、任意の素材を用いることができる。
【0116】
以上説明した各実施形態、変更例及び応用例の内容は、適宜組み合わせて実施できる。例えば、アーマー部を設けたベーゴマ(第11の実施形態)の回転軸の先端部に切り欠きを設ける(第3の実施形態)など、任意の組み合わせが可能である。
【解決手段】ベーゴマ100は、回転軸110と、回転軸110と同軸に回転軸110の外周に嵌合される回転外周部120と、を有し、回転軸110は、回転軸110の回転中心軸AXに平行な円筒形状であり回転外周部120と嵌合する平行部112と、平行部112に連なり回転軸110の回転中心軸AXに対して所定角度傾斜しており回転外周部120と嵌合するテーパー部114と、平行部112又はテーパー部114と連なる先端部116と、からなることを特徴とする。回転軸110と回転外周部120とを平行部112及びテーパー部114からなる嵌合面で嵌合することにより、ほぼ完全な同軸を形成することができる。このようにして、寸法精度が良く回転バランスに優れたベーゴマを提供することができる。